説明

出没式柵柱

【課題】外筒内に昇降自在に収納される柱体が、柱体の重量よりも大きい釣合い定力を有する定荷重バネの巻上力により上昇方向に付勢される出没式柵柱において、従来よりも簡素で安価な制動手段により柱体の上昇速度を安定化させる。
【解決手段】本発明の出没式柵柱1は、柱体3の底部に柱体3の外径よりも大きい底板31が取り付けられる一方、外筒2の内面に、上下方向に延びるブレーキシュー52をバネ部材の弾性力で外筒2の内方へ押し出すように構成された制動装置5が取り付けられ、上記ブレーキシュー52の制動面54と上記底板31の縁部との接触摩擦によって柱体3の上昇速度が抑制されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された外筒内に収納され、必要に応じ地上へ引き上げて立設させることにより車両や人の通行を規制するように構成された出没式柵柱に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の出没式柵柱に関しては、柱体の昇降操作を容易にするために、定荷重バネを利用して柱体に上昇方向の付勢力を与える技術が提案されている(例えば、特許文献1等。)。この技術によれば、重量の大きい柱体でも軽い力で引き上げたり、あるいは自動的に上昇させたりすることができるのに加え、収納時に柱体が急激に落下するのを防ぐことができる。
【0003】
さらに、特許文献2、3には、定荷重バネを利用して柱体を上昇させるに際し、柱体が急激に上昇して危険な状態になるのを防ぐ手段として、トルクダンパーや油圧ダンパーを用いた制動装置により柱体の上昇スピードを安定化する技術が記載されている。
【特許文献1】実開平2−29915号公報
【特許文献2】実開平6−24013号公報
【特許文献3】登録実用3017261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定荷重バネの釣合い定力を柱体の重量よりも大きく設定することにより、柱体を自動的に上昇させるように構成された出没式柵柱において、柱体を上昇させるときのスピードを安定的に制御することは、安全管理上からも重要である。しかし、上記従来のような、トルクダンパーや油圧ダンパーを用いた制動装置は、その構造が複雑になり、低価格化が困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、柱体の上昇速度を安定化させるために、従来よりも簡素で安価な制動手段を利用した出没式柵柱を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するため、本発明の出没式柵柱は、地中に埋設される外筒と、外筒内に昇降自在に収納される柱体とを備え、柱体の重量よりも大きい釣合い定力を有する定荷重バネが、その回転軸を横向きにして柱体の下部に取り付けられ、この定荷重バネの先端が外筒の上部に連結されて、定荷重バネの巻上力により柱体が上昇方向に付勢されるように構成された出没式柵柱において、
柱体の底部に柱体の外径よりも大きい底板が取り付けられる一方、外筒の内面に、上下方向に延びるブレーキシューをバネ部材の弾性力で外筒の内方へ押し出すように構成された制動装置が取り付けられ、上記ブレーキシューの制動面と上記底板の縁部との接触摩擦により柱体の上昇速度が抑制されることを特徴とする。
【0007】
すなわち、この発明は、柱体の底板と、外筒側に取り付けたブレーキシューとの接触摩擦によって柱体の上昇に抵抗を与えるものである。摩擦力を利用するので、構造が簡素ですむ。制動力の調整は、ブレーキシューを押し出すバネ部材のバネ定数を適宜に選択することで可能となる。
【0008】
制動装置の具体的な構成としては、外筒の内面に上下方向に沿って取り付けられた、内向きに開口する横断面略溝形のシュー受け部材と、このシュー受け部材の内側に収納されたブレーキシューと、外筒の内側からシュー受け部材及びブレーキシューに被せて取り付けられた、外向きに開口する横断面略溝形のシュー押え部材とを具備し、シュー押え部材の正面に形成された縦長の開口部からブレーキシューの制動面が露出するとともに、シュー受け部材とブレーキシューとの間に取り付けられた複数個のバネ部材がブレーキシューを外筒の内方へ付勢状態で押し出すように形成することかできる。このような構成により、部材の加工形態が単純になり、組み立ても容易になって、製造コストを節減することができる。
【0009】
上記の発明においては、ブレーキシューの上端部近傍及び下端部近傍における制動が柱体から離隔する方向に傾斜したテーパ面となされ、柱体の上昇開始時及び上昇終了時にはブレーキシューと底板との接触が解除されるのが好ましい。静止状態に拘束された柱体が、その拘束を解かれて定荷重バネの巻上力により上昇し始めるとき、外筒の内部に入り込んだ土砂やゴミ等の抵抗を受けて、上昇開始に要する力が大きくなることから、上昇開始時には定荷重バネの巻上力を全て利用するのが望ましく、また、上昇終端付近では、柱体を上昇状態で拘束するロック装置を確実に作動させる必要があるからである。
【発明の効果】
【0010】
上述のように構成される本発明の出没式柵柱は、簡素な構造で柱体の上昇速度を安定化できるので、部材の加工や組み立てに要するコストを節減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る出没式柵柱の具体的構成について、図面を参照しつつ説明する。図1、図3、図4は、出没式柵柱1の外筒2を縦断面として表し、柱体3を正面図として表した図であって、図1は柱体3の収納状態、図4は柱体3の上昇状態、図3は上昇または下降の途中状態を示している。また、図2は、図1の収納状態を側方から見た図である。図5は出没式柵柱1の中間付近における横断面を示している。
【0012】
地中に埋設される外筒2は、略円筒形状をなし、下端部が外筒底板21により閉塞されている。柱体3の上端部には、柱体3を挿通させるブッシュ22を備えた蓋体23が、外方へ張り出すようにして取り付けられている。
【0013】
外筒2に収納される柱体3は、外筒2よりもふた回りほど細い円柱形状をなし、その長さは外筒2とほぼ同じである。柱体3の底部には、柱体3の外径よりもやや大きい略円板状の底板31が取り付けられている。この底板31の上には、対面が開口した略箱状のバネ取付部材32が取り付けられている。バネ取付部材32には、図2に示すように、コイル状に巻回された一対の定荷重バネ33が、その略半部を柱体3の下部に形成された切欠部34内に収納した状態で、回転軸を横向きにして取り付けられている。定荷重バネ33の先端は、柱体3と外筒2との間を上方に延び、外筒2の上部に設けられたバネ連結片24に連結されている。定荷重バネ33の釣合い定力は、柱体3の重量よりもやや大きくなるように設定されている。そのため、柱体3を拘束する外力が作用しない状態では、定荷重バネ33の巻上力により柱体3が自動的に上昇することとなる。
【0014】
外筒2と柱体3との間には、柱体3の昇降操作に使用する縦長の操作ロッド4が配置されている。この操作ロッド4は、外筒2の上方から適宜の棒状操作具7を介して軸回りに回動させ得るように保持されている。図6に操作ロッド4の要部を拡大して示す。操作ロッド4の下部には第一の係止爪41が突設されている。一方、柱体3のバネ取付部材32には第一の係止具35が取り付けられており、この第一の係止具35は、横向きの回動軸を介して取り付けられた爪具が斜め上方に突出し、かつ、上方にのみ遊動するように形成されている。そして、図1に示すように、第一の係止具35が第一の係止爪41に係合することにより、柱体3が下降状態で拘束される。操作ロッド4を所定角度だけ回動させると、第一の係止具35と第一の係止爪41との係合が解除されて柱体3が上昇可能になる。
【0015】
また、操作ロッド4の上部には第二の係止具42が設けられている。第二の係止具42は、横向きの回動軸を介して取り付けられた爪具が斜め上方に突出し、かつ、上方にのみ遊動するように形成されるとともに、上記した第一の係止爪41に対して、操作ロッド4の軸回りに略90度、突出方向を相違させて取り付けられている。一方、柱体3のバネ取付部材32には第二の係止爪36が突設されており、この第二の係止爪36が、図4に示すように、柱体3が上昇した状態で第二の係止具42に係合することにより、柱体3が降下不能となる。操作ロッド4を所定角度だけ回動させると、第二の係止具42と第二の係止爪36との係合が解除されて柱体3が降下可能になる。
【0016】
図7は、本発明の要部をなす制動装置5の構成を拡大して示す。例示の制動装置5は、外筒2の内面に上下方向に沿って取り付けられた横断面略溝形のシュー受け部材51と、このシュー受け部材51の内側に収納されたブレーキシュー52と、外筒2の内側からシュー受け部材51及びブレーキシュー52に被せて取り付けられた横断面略溝形のシュー押え部材53とを具備する。
【0017】
シュー受け部材51は、開口面を内側に向け、背面側が外筒2の内面に固着されている。
【0018】
ブレーキシュー52は、横断面略T字形に形成されて、T字の脚端にあたる正面部分が制動面54となされ、この制動面54を内側に向けてシュー受け部材51の開口内に収納されている。制動面54は、ブレーキシュー52の上端部近傍及び下端部近傍において外筒2側へ後退するように傾斜したテーパ面55、56となされている。このブレーキシュー52は、接触相手材への攻撃性が低くて耐摩耗性や耐水性に優れる合成樹脂(例えば、ポリアセタール、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネイト系樹脂等)により成形されている。
【0019】
シュー押え部材53は、その溝幅がシュー受け部材51の横幅よりもやや大きく形成され、開口面を外側に向けて、シュー受け部材51及びブレーキシュー52に被せられる。シュー押え部材53の正面には縦長の開口部57が形成され、この開口部57からブレーキシュー52の制動面54が露出する。さらに、シュー受け部材51とブレーキシュー52との間には複数個のバネ部材58が取り付けられ、このバネ部材58の反発弾性によりブレーキシュー52の制動面54が内方へ付勢状態で押し出される。
【0020】
一方、柱体3の底部に取り付けられる底板31は、図5及び図7に示すように、制動装置5に面する部分が制動装置5の横断面形状に合わせて略コ字状に切り欠かれており、この切り欠きの内側縁部37がブレーキシュー52の制動面54と接触するように形成されている。このため、上昇または下降しようとする柱体3は、底板31とブレーキシュー52との接触摩擦による抵抗を受けて、その上昇速度または下降速度が抑制され、ゆっくりと安全に移動する。ブレーキシュー52を押し出すバネ部材58のバネ定数を適宜に変えて制動力を加減すれば、柱体3の移動速度を調整することもできる。
【0021】
なお、収納状態で拘束されている柱体3が、その拘束を解かれて定荷重バネ33の巻上力により上昇を始める際には、外筒2の内部に入り込んだ土砂やゴミ等の抵抗を受けて、柱体3の上昇開始に要する力が大きくなる。そこで本発明では、ブレーキシュー52の下端部近傍にテーパ面55を形成して、柱体3の上昇開始時におけるブレーキシュー52と底板31との接触摩擦を低減させ、定荷重バネ33の巻上力を全て柱体3の上昇に利用しようとしている。また、柱体3が上昇端に近づいた際には、上記したような第二の係止爪36と第二の係止具42との係合等による柱体3のロック操作を確実にするため、柱体3に適当な上昇力を加えることが望ましい。そこで本発明では、ブレーキシュー52の下端部近傍にもテーパ面56を形成して、柱体3の上昇端におけるブレーキシュー52と底板31との接触摩擦を低減させるようにしている。このような構成により、柱体3の昇降動作はさらに円滑になる。
【0022】
本発明の出没式柵柱1は上記のように構成されるので、部材の加工形態は単純なもので済み、組み立ても容易で、製造コストの節減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る出没式柵柱の収納状態を示す図であって、外筒を縦断面として柱体の正面を表した図である。
【図2】出没式柵柱の収納状態を図1の側方から見た図である。
【図3】出没式柵柱の上昇途中の状態または下降途中の状態を、図1と同様の図法で表した図である。
【図4】出没式柵柱の上昇状態を図1と同様の図法で表した図である。
【図5】出没式柵柱の中間付近における横断面図である。
【図6】柱体下部の部分拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る制動装置の構成を、一部を破断して示した斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
2 外筒
3 柱体
33 定荷重バネ
1 出没式柵柱
31 底板
52 ブレーキシュー
58 バネ部材
5 制動装置
54 制動面
51 シュー受け部材
53 シュー押え部材
57 開口部
55 テーパ面
56 テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される外筒と、外筒内に昇降自在に収納される柱体とを備え、柱体の重量よりも大きい釣合い定力を有する定荷重バネが、その回転軸を横向きにして柱体の下部に取り付けられ、この定荷重バネの先端が外筒の上部に連結されて、定荷重バネの巻上力により柱体が上昇方向に付勢されるように構成された出没式柵柱において、
柱体の底部に柱体の外径よりも大きい底板が取り付けられる一方、
外筒の内面に、上下方向に延びるブレーキシューをバネ部材の弾性力で外筒の内方へ押し出すように構成された制動装置が取り付けられ、上記ブレーキシューの制動面と上記底板の縁部との接触摩擦により柱体の上昇速度が抑制されることを特徴とする出没式柵柱。
【請求項2】
制動装置は、外筒の内面に上下方向に沿って取り付けられた、内向きに開口する横断面略溝形のシュー受け部材と、このシュー受け部材の内側に収納されたブレーキシューと、外筒の内側からシュー受け部材及びブレーキシューに被せて取り付けられた、外向きに開口する横断面略溝形のシュー押え部材とを具備し、シュー押え部材の正面に形成された縦長の開口部からブレーキシューの制動面が露出するとともに、シュー受け部材とブレーキシューとの間に取り付けられた複数個のバネ部材がブレーキシューを外筒の内方へ付勢状態で押し出すように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の出没式柵柱。
【請求項3】
ブレーキシューの上端部近傍及び下端部近傍における制動面が柱体から離隔する方向に傾斜したテーパ面となされ、柱体の上昇開始時及び上昇終了時にはブレーキシューと底板との接触が解除されることを特徴とする請求項1又は2に記載の出没式柵柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−316412(P2006−316412A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136990(P2005−136990)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(595143056)ホクデン工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】