説明

分光測定装置

【課題】迅速なスペクトル特性の測定が可能な分光測定装置を提供する。
【解決手段】分光測定装置1は、固定反射膜を備えた固定基板、可動反射膜を備えた可動基板、及び電圧印加により可動基板を撓ませて反射膜間ギャップのギャップ量を変化させる静電アクチュエーターを備えた波長可変干渉フィルター5と、光量を検出するディテクター11と、測定対象光のスペクトル特性を測定する制御部20と、を備え、制御部20は、静電アクチュエーターに駆動電圧を印加して反射膜間ギャップを変化させるフィルター駆動部21と、ディテクター11により検出される光量を取得する検出光量取得部23と、検出された光量の遷移状態及び可動基板が有する固有振動周期に基づいて、可動基板の振動中心に対応した光量を目的光量として取得する目的光量取得部24と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに対向する一対の反射膜を有し、この反射膜間の距離を変化させることで、測定対象の光から所定波長の光を取り出す波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の光共振器(波長可変干渉フィルター)は、表面に凹部が形成された第一基板と、凹部を閉塞する第二基板とを備え、第二基板が凹部内部を閉塞するように接合されている。また、第一基板の凹部の底部、及び第二基板の凹部に対向する面には、互いに対向する高反射膜、及び、これらの反射膜の間のギャップ(反射膜間ギャップ)を調整する電極が設けられている。そして、第二基板は、凹部に対向する領域に、厚肉部と薄肉部とが設けられており、薄肉部が撓むことで、厚肉部が凹部側に進退可能となる。
このような波長可変干渉フィルターでは、電極間に電圧を印加することで、ダイヤフラムの薄肉部を変形させ、厚肉部をガラス基板に対して進退させることで、反射膜間ギャップを調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−243963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような波長可変干渉フィルターにより目的波長の光を取り出す場合、目的波長に応じた電圧を電極間に印加する。この時、第二基板の厚肉部には、電圧印加に伴う静電引力と、第二基板の薄肉部の弾性力とが作用するため、当該厚肉部が振動する。
したがって、従来、このような波長可変干渉フィルターを用いた分光測定装置では、目的波長の光を精度よく測定するために、厚肉部の振動が静止するまで待機し、厚肉部の振動が静止した後に光量測定処理を実施していた。このため、測定に要する時間が長くなるという課題があった。
【0006】
本発明は、迅速なスペクトル特性の測定が可能な分光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分光測定装置は、第一基板、前記第一基板に対向して配置された第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜に反射膜間ギャップを介して対向して配置された第二反射膜、及び、電圧印加により前記第二基板を前記第一基板側に撓ませて、前記反射膜間ギャップのギャップ量を変化させるギャップ量変更部を備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光の光量を検出する検出部と、測定制御部と、を備えた分光測定装置であって、前記測定制御部は、前記ギャップ量変更部に駆動電圧を印加させて、前記反射膜間ギャップを変化させるフィルター駆動部と、前記フィルター駆動部により駆動電圧が印加された後の第一時点から、所定の第二時点までの間で、前記検出部により検出される光量を取得する検出光量取得部と、検出された前記光量の遷移状態及び前記第二基板が有する固有振動周期に基づいて、前記第二基板の振動中心に対応した光量を目的光量として取得する目的光量取得部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、波長可変干渉フィルターを透過した光を検出する検出部と、検出部で検出された光量に基づいて、目的波長の光の光量(目的光量)を測定する測定制御部とを備えている。そして、測定制御部は、フィルター駆動部、検出光量取得部、及び目的光量取得部を備える。
このような分光測定装置では、フィルター駆動部により波長可変干渉フィルターのギャップ量調整部に駆動電圧を印加させると、波長可変干渉フィルターの第二基板が第一基板側に撓み、反射膜間ギャップのギャップ量が変動する。この時、第二基板には、ギャップ量変更部により加えられる応力と、第二基板の弾性力とが作用し、所定の固有振動周期で振動する。この振動は、時間とともに振幅が小さくなり、最終的には、波長可変干渉フィルターにより目的波長の光が取り出される状態で静止する。
ここで、振動の静止を待って目的波長の光の光量(目的光量)を測定する場合、上述したように、測定に要する時間が長くなるという課題がある。これに対して、本発明では、検出光量取得部により、第二基板が振動している間である第一時点から第二時点までの期間において検出部で検出される光量を取得する。そして、目的光量取得部は、検出された光量の遷移状態と、第二基板自身が有する固有振動周期とに基づいて、第二基板の振動中心に対応した光量を取得する。この第二基板の振動中心は、第二基板の振動が静止した際に、第二基板が静止する位置であり、波長可変干渉フィルターにより目的波長の光を取り出すための位置となる。したがって、本発明では、第二基板の振動が静止するまで待機する必要がなく、迅速に第二基板が振動中心に対応した目的光量を取得することができる。したがって、分光測定装置においても、迅速な測定対象光のスペクトル特性の測定を実施することができる。
【0009】
本発明の分光測定装置では、前記目的光量取得部は、前記検出光量取得部により取得される光量のうち、最大光量、最小光量、前記最大光量が検出された最大検出タイミングから前記固有振動周期の1/4前の第一光量、前記最大光量が検出された最大検出タイミングから前記固有振動周期の1/4後の第二光量、前記最小光量が検出された最小検出タイミングから前記固有振動周期の1/4前の第三光量、及び前記最小光量が検出された最小検出タイミングから前記固有振動周期の1/4後の第四光量を取得し、前記第一光量、前記第二光量、前記第三光量、及び前記第四光量の一致状態に基づいて、前記目的光量を取得することが好ましい。
ここて、本発明で述べる「一致」とは、僅かな誤差範囲をも含めるものであり、完全に一致していない略一致の状態をも含めるものである。
【0010】
本発明によれば、検出光量取得部により取得した光量から、最大光量、最小光量、第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量を取得し、第一から第四光量が一致するか否かを判断して、目的光量を取得する。
波長可変干渉フィルターのギャップ変更部に駆動電圧を印加した際に発生する第二基板の振動は、非常に狭い範囲で発生するものであり、当該範囲に光量のピークやボトムが複数発生することは稀である。したがって、第二基板の振動において反射膜間ギャップのギャップ量が最大となった場合、又は反射膜間ギャップのギャップ量が最小となった場合に、検出部により最大光量、又は最小光量が検出されるパターンが多い。このようなパターンでは、最大光量又は最小光量が検出された時点を、第二基板の振動端点とすることで、容易に、第二基板の振動中心を検出でき、振動中心に対応した目的光量を検出することができる。
また、第二基板が振動中に一定間隔で光量を取得し、これらの光量を平均して振動中心に対応した目的光量とすることも考えられる。しかしながら、このような平均値を目的光量とする場合、必ずしも振動中心に対応した光量とならない場合があり、この場合、測定誤差が大きくなる等の課題がある。これに対して、本発明では、第一から第四光量から振動中心に対応した光量を検出するため、測定誤差を抑制でき、測定精度を向上させることができる。
【0011】
本発明の分光測定装置では、前記目的光量取得部は、前記第一光量、前記第二光量、前記第三光量、及び前記第四光量が同一の光量の場合、当該光量を前記目的光量として取得することが好ましい。
ここで、本発明で述べる「同一」とは、上述した「一致」と同様に、測定結果に対する影響が小さい僅かな誤差範囲を含むものであり、厳密に同一となる必要はない。以下に説明する発明においても同様である。
【0012】
本発明では、目的光量取得部は、第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量が同一の光量の場合、これらの光量の値を目的光量とする。
第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量が同一光量である場合、反射膜間ギャップのギャップ量が最大及び最小となった際、つまり、第二基板の振動端点において、検出部で最大光量及び最小光量が検出されたことを意味する。この場合、第二基板の振動中心は、第二基板が振動端点に位置した時点から、第二基板の固有振動周期の1/4が経過した時点、又は第二基板の固有振動周期の1/4前の時点であるので、第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量が、振動中心に対応した目的光量となる。したがって、目的光量取得部により、上記のような第一から第四光量が一致する場合では、これらの光量を目的光量として取得することで、即座に目的光量を取得することができる。
【0013】
本発明では、前記目的光量取得部は、前記第一光量及び前記第二光量が同一の光量であり、かつ前記第三光量及び前記第四光量が異なる光量である場合、前記第一光量及び前記第二光量を前記目的光量として取得することが好ましい。
このように、第一光量と第二光量とが同一であり、第三光量と第四光量とが異なる場合では、第二基板の振動端点のいずれかに対応する光量が最大光量であり、かつ、反射膜間ギャップの変動範囲に対応した測定波長域内にボトム波長が存在し、このボトム波長の光量が最小光量として検出されたと判断できる。
この場合、第二基板の振動中心は、最大光量が検出された時点から、第二基板の固有振動周期の1/4が経過した時点、又は第二基板の固有振動周期の1/4前の時点となるので、第一光量及び第二光量が振動中心に対応した目的光量となる。
したがって、第一光量及び第二光量が同一であり、第三光量及び第四光量が異なる場合、目的光量取得部は、第一光量及び第二光量の値を目的光量として取得することで、即座に目的光量を取得することができ、分光測定装置におけても、迅速な分光測定を実施することができる。
【0014】
本発明の分光測定装置では、前記目的光量取得部は、前記第一光量及び前記第二光量が異なる光量であり、かつ前記第三光量及び前記第四光量が同一の光量である場合、前記第三光量及び前記第四光量を前記目的光量として取得することが好ましい。
このように、第一光量及び第二光量が異なり、第三光量及び第四光量が同一である場合では、第二基板の振動端点のいずれかに対応する光量が最小光量であり、かつ、反射膜間ギャップの変動範囲に対応した測定波長域内にピーク波長が存在し、このピーク波長の光量が最大光量として検出されたと判断できる。
この場合、第二基板の振動中心は、最小光量が検出された時点から、第二基板の固有振動周期の1/4が経過した時点、又は第二基板の固有振動周期の1/4前の時点となるので、第三光量及び第四光量が振動中心に対応した目的光量となる。
本発明では、目的光量取得部は、第一光量及び第二光量が異なる値であり、第三光量及び第四光量が同一の値である場合、第三光量及び第四光量の値を目的光量とするため、即座に目的光量を取得することができる。
【0015】
本発明の分光測定装置では、前記フィルター駆動部は、前記第一光量及び前記第二光量が同一の光量であり、かつ、前記第三光量及び前記第四光量が同一の光量であり、かつ、前記第一光量及び前記第三光量が異なる光量である場合、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、前記目的光量取得部は、前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後に、前記検出光量取得部により新たに取得される第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量に基づいて、電圧変化後の駆動電圧に対する前記目的光量を取得することが好ましい。
【0016】
このパターンでは、第二基板の振動端点に対応する光量が最大光量又は最小光量であり、第二基板の振動中心において、ピーク波長又はボトム波長が存在する。この場合、光量の遷移状態のみでは、振動中心がピーク波長であるかボトム波長であるかを判断することが困難となる。
これに対して、本発明では、第一光量及び第二光量が同値であり、第三光量及び第四光量が同値であり、かつ、第一光量(第二光量)及び第三光量(第四光量)が異なる値である場合、フィルター駆動部により、ギャップ量変更部に印加する電圧を微小変化させる。これにより、第二基板の振動中心が変化し、最大光量や最小光量の値や当該最大光量及び最小光量が取得されるタイミングも変化する。
そして、目的光量取得部は、変化後の駆動電圧に対する目的光量を取得する。この際の目的光量の取得方法としては、上記発明と同様の手法を採ることができる。つまり、目的光量取得部は、第一から第四光量の値が全て同値である場合は、当該第一から第四光量の値と目的光量として取得する。また、第一光量及び第二光量が同一の値であり、第三光量及び第四光量が異なる値である場合は、第一光量及び第二光量を目的光量として取得する。さらに、第一光量及び第二光量が異なる値であり、第三光量及び第四光量が同一の光量である場合は、第三光量及び第四光量を目的光量として取得する。これにより、上記発明と同様、迅速な目的光量の測定が可能となる。
【0017】
本発明の分光測定装置では、前記フィルター駆動部は、前記第一光量及び前記第二光量が同一の光量であり、かつ、前記第三光量及び前記第四光量が同一の光量であり、かつ、前記第一光量及び前記第三光量が異なる光量である場合、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、前記目的光量取得部は、前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後に、前記検出光量取得部により新たに取得される第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量に基づいて、新たに取得された前記第一光量及び新たに取得された前記第二光量が同一の光量であり、かつ新たに取得された前記第三光量及び新たに取得された前記第四光量が異なる光量である場合、前記フィルター駆動部により駆動電圧が微小変化される前に取得した前記最小光量を、電圧変化前の駆動電圧に対する前記目的光量として取得し、新たに取得された前記第一光量及び新たに取得された前記第二光量が異なる光量であり、かつ新たに取得された前記第三光量及び新たに取得された前記第四光量が同一の光量である場合、前記フィルター駆動部により駆動電圧が微小変化される前に取得した前記最大光量を、電圧変化前の駆動電圧に対する前記目的光量として取得することが好ましい。
【0018】
上述したように、第一光量及び第二光量が同値であり、第三光量及び第四光量が同値であり、かつ、第一光量(第二光量)及び第三光量(第四光量)が異なる値である場合、第二基板の振動中心において、ピーク波長又はボトム波長が存在することを意味する。そして、光量の遷移状態のみでは、振動中心がピーク波長であるかボトム波長であるかを判断することが困難となる。
これに対して、本発明では、フィルター駆動部によりギャップ量変更部に印加する電圧を微小変化させ、第二基板の振動中心を変化させる。このように振動中心を微小変化させると、第一光量及び第二光量が同一値であり、第三光量及び第四光量が異なる値となるパターンに変化するか、もしくは、第一光量及び第二光量が異なる値であり、第三光量及び第四光量が同一値となるパターンに変化する。
ここで、駆動電圧の微小変化により、前者のパターンに変化した場合、第二基板の振動範囲に対応した波長域内にボトム波長が存在することを意味する。したがって、目的光量取得部により、電圧変化前において、第一光量及び第二光量を、振動中心に対応した目的光量として取得することで、迅速かつ精度よく所望の目的光量を取得することができる。
一方、駆動電圧の微小変化により、後者のパターンに変化した場合、第二基板の振動範囲に対応した波長域内にピーク波長が存在することを意味する。したがって、目的光量取得部により、電圧変化前において、第三光量及び第四光量を、振動中心に対応した目的光量として取得することで、迅速かつ精度よく所望の目的光量を取得することができる。
【0019】
本発明の分光測定装置では、前記目的光量取得部は、前記第一光量、前記第二光量、前記第三光量、及び前記第四光量がそれぞれ異なる値である場合、前記第一時点から前記第二時点までの間で取得される光量の平均値を前記目的光量として取得することが好ましい。
第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量が全て異なる値である場合、第二基板の振動端点がいずれも最大光量及び最小光量に対応した点ではなく、振動範囲に対応した波長域内に最大光量に対応したピーク波長及び最小光量に対応したボトム波長が存在することを意味する。このように、第二基板の振動範囲に対応した波長域内にピーク波長及びボトム波長が存在する場合、光量の平均値が振動中心の光量とほぼ一致する。
したがって、上記のパターンにおいて、目的光量取得部は、検出光量取得部により取得された光量の平均値を算出して目的光量をして取得することで、第二基板の振動静止を待つことなく、迅速に目的光量を取得することができる。
【0020】
本発明の分光測定装置では、前記測定制御部は、前記検出光量取得部により取得される光量のうち、極値、及び前記極値が取得された極値取得タイミングを検出する極値取得部を備え、前記目的光量取得部は、前記極値取得部により検出された極値のうち、同値となる極値を検出し、これらの同値の極値が取得された極値取得タイミングの周期性と、前記第二基板の前記固有振動周期とに基づいて、前記目的光量を取得することが好ましい。
【0021】
本発明では、極値に基づいて、第二基板の振動中における振動端点を検出する。すなわち、第二基板が振動する振動範囲内で検出される光量が変化する場合、振動端点において光量の極値(極大値又は極小値)が現れる。また、第二基板の振動は、固有振動周期に基づいて振動するため、振動端点に対応した光量の極値は、固有振動周期の間隔で現れる。したがって、極値が取得される極値取得タイミングの周期性及び第二基板の固有振動周期に基づいて、振動端点を検出することができる。このように、振動端点が検出されると、振動中心は、振動端点から固有振動周期の1/4前(後)の位置となるので、振動中心に対応した目的光量を容易に検出することができる。したがって、目的光量取得部は、上記発明と同様に、第二基板の振動の静止を待つことなく、迅速に目的光量を取得することができる。また、目的光量取得部は、振動中心に対する光量の実測値を目的光量とするため、例えば光量の平均値を目的光量とする構成に比べて、精度の高い目的光量を取得することができ、分光測定装置におけるスペクトル特性の測定精度も向上する。
【0022】
本発明の分光測定装置では、前記目的光量取得部は、前記同値の極値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期と一致する場合、当該極値取得タイミングから前記固有振動周期の1/4前又は1/4後の光量を前記目的光量として取得することが好ましい。
【0023】
第二基板の振動範囲内に対応した波長域にピーク波長やボトム波長がある場合、これらのピーク波長やボトム波長に対応して極大値や極小値が検出される。しかしながら、これらのピーク波長やボトム波長は、第二基板が一方の振動端点から他方の振動端点に移動する間に必ず一回検出されることとなるため、極値取得タイミングの周期が固有振動周期の1/2よりも短くなる。一方、振動端点に現れる極値は、固有振動周期間隔で現れる。したがって、固有振動周期間隔で現れる極値の極値取得タイミングから、容易に第二基板が振動中心に位置するタイミングも検出でき、検出光量取得部により取得される光量から当該タイミングにおける光量を取得することができる。
本発明では、目的光量取得部は、同値の極値の極値取得タイミングの周期が固有振動周期である場合、当該極値取得タイミングから固有振動周期の1/4前又は固有振動周期の1/4後の光量を目的光量として取得する。これにより、本発明では、迅速に目的光量を取得することができるともに、実測値に基づいた精度の高い目的光量を取得することができる。
【0024】
本発明の分光測定装置では、前記目的光量取得部は、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致し、同値の極小値が取得された極値取得タイミングの周期が、固有振動周期及び固有振動周期の1/2ではない場合に、同値の極大値が取得された極値取得タイミングから前記固有振動周期の1/4前又は前記固有振動周期の1/4後の光量を前記目的光量として取得することが好ましい。
【0025】
同値の極大値が固有振動周期の1/2間隔で現れ、かつ同値の極小値の極値取得タイミングの周期が固有振動周期間隔でもなく、固有振動周期の1/2間隔でもない場合、振動両端点において、極大値が取得されたと判断することができる。したがって、極大値の極値取得タイミングから、容易に第二基板が振動中心に位置するタイミングも検出できる。これにより、本発明では、迅速に目的光量を取得することができるともに、実測値に基づいた精度の高い目的光量を取得することができる。
【0026】
本発明の分光測定装置では、前記目的光量取得部は、同値の極小値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致し、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、固有振動周期及び固有振動周期の1/2ではない場合に、同値の極小値が取得された極値取得タイミングから前記固有振動周期の1/4前又は前記固有振動周期の1/4前後の光量を前記目的光量として取得することが好ましい。
【0027】
同値の極小値が固有振動周期の1/2間隔で現れ、かつ同値の極大値の極値取得タイミングの周期が固有振動周期間隔でもなく、固有振動周期の1/2間隔でもない場合、振動両端点において、極小値が取得されたと判断することができる。したがって、極小値の極値取得タイミングから、容易に第二基板が振動中心に位置するタイミングも検出できる。これにより、本発明では、迅速に目的光量を取得することができるともに、実測値に基づいた精度の高い目的光量を取得することができる。
【0028】
本発明の分光測定装置では、前記フィルター駆動部は、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致し、かつ、同値の極小値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致する場合に、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、前記目的光量取得部は、前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後、前記極値取得部により新たに取得される極値及び極値取得タイミングに基づいて、電圧変化後の駆動電圧に対する前記目的光量を取得することが好ましい。
【0029】
同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期、及び同値の極小値が取得された極値取得タイミングの周期がともに固有振動周期の1/2である場合、振動中心において、ピーク波長又はボトム波長が存在することとなる。また、このような場合、振動端点において極大値が検出されたのか、極小値で検出されたのかを判断することが困難となる。
これに対して、本発明では、上記のような場合、フィルター駆動部により、ギャップ量変更部に印加する電圧を微小変化させる。これにより、第二基板の振動中心が変化し、振動中心に位置していたピーク波長やボトム波長がずれ、これらピーク波長やボトム波長に対応して検出された極値の極値取得タイミングの周期もずれる。したがって、振動端点に対応した極値を検出することが可能となり、上記発明と同様、迅速に、かつ精度よく振動中心に対応した目的光量を取得することが可能となる。
【0030】
本発明の分光測定装置では、前記フィルター駆動部は、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致し、かつ、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致する場合に、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、前記目的光量取得部は、前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後に、前記極値取得部により新たに取得される極値、及び極値取得タイミングに基づいて、新たに検出された同値の極大値が前記固有振動周期と一致する場合、前記フィルター駆動部により駆動電圧が変化される前に取得した前記極小値を、電圧変化前の駆動電圧に対応する前記目的光量として取得し、新たに検出された同値の極小値が前記固有振動周期と一致する場合、前記フィルター駆動部により駆動電圧が変化される前に取得した前記極大値を、電圧変化前の駆動電圧に対応する前記目的光量として取得することが好ましい。
【0031】
上述したように、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期、及び同値の極小値が取得された極値取得タイミングの周期がともに固有振動周期の1/2である場合、振動中心において、ピーク波長又はボトム波長が存在することとなる。また、このような場合、振動端点において極大値が検出されたのか、極小値で検出されたのかを判断することが困難となる。
これに対して、本発明では、上記のような場合、フィルター駆動部により、ギャップ量変更部に印加する電圧を微小変化させる。これにより、第二基板の振動中心が変化し、振動中心に位置していたピーク波長やボトム波長がずれ、これらピーク波長やボトム波長に対応して検出された極値の極値取得タイミングの周期もずれる。
ここで、駆動電圧の微小変化により、極値取得タイミングの周期が固有振動周期の1/2となる同値の極大値が取得された場合、第二基板の振動範囲に対応した波長域内にボトム波長が存在することを意味する。したがって、目的光量取得部により、電圧変化前において、極値取得タイミングが固有振動周期の1/2となる同値の極小値を、振動中心に対応した目的光量として取得することで、迅速かつ精度よく所望の目的光量を取得することができる。
一方、駆動電圧の微小変化により、極値取得タイミングの周期が固有振動周期の1/2となる同値の極小値が取得された場合、第二基板の振動範囲に対応した波長域内にピーク波長が存在することを意味する。したがって、目的光量取得部により、電圧変化前において、極値取得タイミングが固有振動周期の1/2となる同値の極大値を、振動中心に対応した目的光量として取得することで、迅速かつ精度よく所望の目的光量を取得することができる。
【0032】
本発明の分光測定装置では、前記フィルター駆動部は、同値の極値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期及び前記固有振動周期の1/2のいずれでもない場合、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、前記目的光量取得部は、前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後に、前記極値取得部により新たに取得される極値及び極値取得タイミングに基づいて、前記目的光量を取得することが好ましい。
【0033】
一般に、第二基板の振動端点に対応して検出される極値は、固有振動周期間隔で検出されるが、振動範囲に対応した波長域内に、複数のピーク波長及びボトム波長が存在し、これらのピーク波長やボトム波長における光量が振動端点における光量(極値)と一致する場合、同値の極値の極値取得タイミングの周期が、固有振動周期や、固有振動周期の1/2にならない。このような光量検出パターンでは、極値に基づいて振動端点を検出することが困難となる。
これに対して、本発明では、上記のような場合、フィルター駆動部により、ギャップ量変更部に印加する電圧を微小変化させる。これにより、第二基板の振動中心が変化し、振動中心に位置していたピーク波長やボトム波長がずれ、これらピーク波長やボトム波長に対応して検出された極値の極値取得タイミングの周期もずれる。したがって、振動端点に対応した極値を検出することが可能となり、上記発明と同様、迅速に、かつ精度よく振動中心に対応した目的光量を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
【図3】図2のIII−III線を断面した波長可変干渉フィルターの断面図。
【図4】第一実施形態の波長可変干渉フィルターに駆動電圧を印加した際、時間に対する反射膜間ギャップのギャップ量の変化、駆動電圧の変化を示す図。
【図5】測定対象光のスペクトル特性の一例を示す図。
【図6】第一実施形態の分光測定装置における分光測定方法を示すフローチャート。
【図7】測定対象光のスペクトル特性の他の例、及び可動部の振動範囲の一例を示す図。
【図8】図7の範囲A1において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図9】図7の範囲A2において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図10】図7の範囲A3において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図11】測定対象光のスペクトル特性の他の例、及び可動部の振動範囲の一例を示す図。
【図12】図11の範囲A4において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図13】図11の範囲A5において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図14】図11の範囲A6において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図15】測定対象光のスペクトル特性の他の例、及び可動部の振動範囲を示す図。
【図16】図15の範囲A7において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図17】第三実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図。
【図18】第三実施形態の分光測定装置における分光測定方法を示すフローチャート。
【図19】測定対象光のスペクトル特性の例、及び可動部の振動範囲の例を示す図。
【図20】図19の範囲A1において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図21】図19の範囲A2において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図22】図19の範囲A3において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図23】図19の範囲A4において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図24】図19の範囲A5において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図25】図19の範囲A6において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図26】図19の範囲A7において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図27】図19の範囲A8において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図28】図19の範囲A9において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【図29】図19の範囲A10において、時間と検出される光量との関係(光量検出パターン)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態を図面に基づいて説明する。
[分光測定装置の構成]
図1は、本発明に係る分光測定装置の概略構成を示すブロック図である。
分光測定装置1は、測定対象Xで反射された測定対象光における各波長の光強度を分析し、分光スペクトルを測定する装置である。
この分光測定装置1は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、ディテクター11(検出部)と、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、電圧制御回路15と、制御部20と、を備えている。
【0036】
ディテクター11は、波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光し、受光した光の光強度に応じた検出信号(電流)を出力する。
I−V変換器12は、ディテクター11から入力された検出信号を電圧値に変換し、アンプ13に出力する。
アンプ13は、I−V変換器12から入力された検出信号に応じた電圧(検出電圧)を増幅する。
A/D変換器14は、アンプ13から入力された検出電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、制御部20に出力する。
電圧制御回路15は、制御部20の制御に基づいて、波長可変干渉フィルター5の後述する静電アクチュエーター56に対して駆動電圧を印加する。
【0037】
[波長可変干渉フィルターの構成]
ここで、分光測定装置1に組み込まれる波長可変干渉フィルター5について、以下説明する。図2は、波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図である。図3は、図2をIII−III線で断面し断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、例えば矩形板状の光学部材である。この波長可変干渉フィルター5は、図3に示すように、固定基板51および可動基板52を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの固定基板51及び可動基板52は、固定基板51の第一接合部513及び可動基板の第二接合部523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53(第一接合膜531及び第二接合膜532)により接合されることで、一体的に構成されている。
【0038】
固定基板51には、本発明の第一反射膜を構成する固定反射膜54が設けられ、可動基板52には、本発明の第二反射膜を構成する可動反射膜55が設けられている。これらの固定反射膜54および可動反射膜55は、反射膜間ギャップG1(本発明のギャップ)を介して対向配置されている。そして、波長可変干渉フィルター5には、この反射膜間ギャップG1のギャップ量を調整(変更)するのに用いられる静電アクチュエーター56が設けられている。この静電アクチュエーター56は、本発明におけるギャップ量変更部に相当する。この静電アクチュエーター56は、固定基板51に設けられた固定電極561と、可動基板52に設けられた可動電極562とにより構成されている。これらの固定電極561,可動電極562は、電極間ギャップG2を介して対向する。ここで、これらの電極561,562は、それぞれ固定基板51及び可動基板52の基板表面に直接設けられる構成であってもよく、他の膜部材を介して設けられる構成であってもよい。ここで、電極間ギャップG2のギャップ量は、反射膜間ギャップG1のギャップ量より大きい。
また、波長可変干渉フィルター5を固定基板51(可動基板52)の基板厚み方向から見た図2に示すようなフィルター平面視において、固定基板51及び可動基板52の平面中心点Oは、固定反射膜54及び可動反射膜55の中心点と一致し、かつ後述する可動部521の中心点と一致する。
なお、以降の説明に当たり、固定基板51または可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視を、フィルター平面視と称する。
【0039】
(固定基板の構成)
固定基板51には、エッチングにより電極配置溝511および反射膜設置部512が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極561および可動電極562間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極561の内部応力による固定基板51の撓みはない。
また、固定基板51の頂点C1には、切欠部514が形成されており、波長可変干渉フィルター5の固定基板51側に、後述する可動電極パッド564Pが露出する。
【0040】
電極配置溝511は、フィルター平面視で、固定基板51の平面中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、前記平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成されている。この電極配置溝511の溝底面は、固定電極561が配置される電極設置面511Aとなる。また、反射膜設置部512の突出先端面は、反射膜設置面512Aとなる。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、固定基板51の外周縁の頂点C1,頂点C2に向かって延出する電極引出溝511Bが設けられている。
【0041】
電極配置溝511の電極設置面511Aには、固定電極561が設けられている。より具体的には、固定電極561は、電極設置面511Aのうち、後述する可動部521の可動電極562に対向する領域に設けられている。また、固定電極561上に、固定電極561及び可動電極562の間の絶縁性を確保するための絶縁膜が積層される構成としてもよい。
そして、固定基板51には、固定電極561の外周縁から、頂点C2方向に延出する固定引出電極563が設けられている。この固定引出電極563の延出先端部(固定基板51の頂点C2に位置する部分)は、電圧制御回路15に接続される固定電極パッド563Pを構成する。
なお、本実施形態では、電極設置面511Aに1つの固定電極561が設けられる構成を示すが、例えば、平面中心点Oを中心とした同心円となる2つの電極が設けられる構成(二重電極構成)などとしてもよい。
【0042】
反射膜設置部512は、上述したように、電極配置溝511と同軸上で、電極配置溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、当該反射膜設置部512の可動基板52に対向する反射膜設置面512Aを備えている。
この反射膜設置部512には、図3に示すように、固定反射膜54が設置されている。この固定反射膜54としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等の合金膜を用いることができる。また、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いてもよい。さらに、誘電体多層膜上に金属膜(又は合金膜)を積層した反射膜や、金属膜(又は合金膜)上に誘電体多層膜を積層した反射膜、単層の屈折層(TiOやSiO等)と金属膜(又は合金膜)とを積層した反射膜などを用いてもよい。
【0043】
また、固定基板51の光入射面(固定反射膜54が設けられない面)には、固定反射膜54に対応する位置に反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0044】
そして、固定基板51の可動基板52に対向する面のうち、エッチングにより、電極配置溝511、反射膜設置部512、及び電極引出溝511Bが形成されない面は、第一接合部513を構成する。この第一接合部513には、第一接合膜531が設けられ、この第一接合膜531が、可動基板52に設けられた第二接合膜532に接合されることで、上述したように、固定基板51及び可動基板52が接合される。
【0045】
(可動基板の構成)
可動基板52は、図2に示すようなフィルター平面視において、平面中心点Oを中心とした円形状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、保持部522の外側に設けられた基板外周部525と、を備えている。
また、可動基板52には、図2に示すように、頂点C2に対応して、切欠部524が形成されており、波長可変干渉フィルター5を可動基板52側から見た際に、固定電極パッド563Pが露出する。
【0046】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法に形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも反射膜設置面512Aの外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。そして、この可動部521には、可動電極562及び可動反射膜55が設けられている。
なお、固定基板51と同様に、可動部521の固定基板51とは反対側の面には、反射防止膜が形成されていてもよい。このような反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、可動基板52の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させることができる。
【0047】
可動電極562は、電極間ギャップG2を介して固定電極561に対向し、固定電極561と同一形状となる環状に形成されている。また、可動基板52には、可動電極562の外周縁から可動基板52の頂点C1に向かって延出する可動引出電極564を備えている。この可動引出電極564の延出先端部(可動基板52の頂点C1に位置する部分)は、電圧制御回路15に接続される可動電極パッド564Pを構成する。
可動反射膜55は、可動部521の可動面521Aの中心部に、固定反射膜54と反射膜間ギャップG1を介して対向して設けられる。この可動反射膜55としては、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。
なお、本実施形態では、上述したように、電極間ギャップG2のギャップ量が反射膜間ギャップG1のギャップ量よりも大きい例を示すがこれに限定されない。例えば、測定対象光として赤外線や遠赤外線を用いる場合等、測定対象光の波長域によっては、反射膜間ギャップG1のギャップ量が、電極間ギャップG2のギャップ量よりも大きくなる構成としてもよい。
【0048】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このような保持部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。この際、可動部521が保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、保持部522が静電引力により固定基板51側に引っ張られた場合でも、可動部521の形状変化が起こらない。したがって、可動部521に設けられた可動反射膜55の撓みも生じず、固定反射膜54及び可動反射膜55を常に平行状態に維持することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイヤフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0049】
基板外周部525は、上述したように、フィルター平面視において保持部522の外側に設けられている。この基板外周部525の固定基板51に対向する面は、第一接合部513に対向する第二接合部523を備えている。そして、この第二接合部523には、第二接合膜532が設けられ、上述したように、第二接合膜532が第一接合膜531に接合されることで、固定基板51及び可動基板52が接合されている。
【0050】
[波長可変干渉フィルターの駆動]
以上のような波長可変干渉フィルター5では、固定電極パッド563P及び可動電極パッド564Pがそれぞれ電圧制御回路15に接続されている。したがって、電圧制御回路15により、固定電極561及び可動電極562間に電圧が印加されることで、静電引力により可動部521が固定基板51側に変位する。これにより、反射膜間ギャップG1のギャップ量を所定量に変更することが可能となる。
【0051】
図4は、静電アクチュエーター56に駆動電圧を印加した際の、時間に対する印加された駆動電圧の変化を示す図(下図)、及び当該駆動電圧の印加による反射膜間ギャップG1の変化を示す図(上図)である。図5は、ディテクター11により検出された光の光量の一例を示す図である。
図4に示すように、静電アクチュエーター56に駆動電圧を印加すると、駆動電圧の立ち上がり時間Tにおいて、可動部521は、固定基板51側に向かう静電引力を受けて変位する。また、可動部521には、保持部522の弾性により、元の位置(初期状態)に戻ろうとする復元力が作用する。したがって、駆動電圧の立ち上がり時間Tの後、可動部521は、振動中心点を中心として振動し、図4に示すように、反射膜間ギャップのギャップ量の振動中心点に対応したギャップ量gを中心として周期的に正弦波状に変動する。この時、可動部521は、保持部522が有する弾性力に基づいた所定の固有振動周期Tで振動する。
したがって、可動部521が振動している間では、可動部521の振動端点間で反射膜間ギャップG1のギャップ量が変動する。これにより、図5に示すように、波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長は、振動範囲に対応した波長域λで変化し、これに対応して光量もFの範囲で変動する。なお、図5における破線は、可動部521の振動端点における波長可変干渉フィルターの分解能を示す。
この可動部521の振動は、時間と共に減衰し、最終的には、静電アクチュエーター56による静電引力と、保持部522の弾性力とが釣り合う可動部521の振動中心で収束し、反射膜間ギャップG1のギャップ量gに対応した波長λの光が波長可変干渉フィルター5を透過する。
【0052】
なお、図4では、可動部521の振動及び当該振動の減衰を表示するため、減衰率を誇張して表示しているが、実際には、減圧環境下において、可動部521の固有振動周期は、50〜200μs程度であり、振動が静止するまで300ms程度の時間を要する。また、可動部521の固有振動周期や振動が静止するまでの時間は、波長可変干渉フィルター5が設置される測定環境等によって変化する。大気圧下の場合は、振動の影響以前に、反射膜間の空気抵抗により所望の反射膜間ギャップに到達するまでの時間が著しく長くなるため、波長可変干渉フィルター5を減圧下に保持された環境で設置することが好ましい。
【0053】
[制御回路部の構成]
図1に戻り、分光測定装置1の制御部20について、説明する。
制御部20は、本発明の測定制御部に相当し、例えばCPUやメモリー等が組み合わされることで構成され、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御部20は、図1に示すように、フィルター駆動部21と、計時部22と、検出光量取得部23と、目的光量取得部24と、分光測定部25と、を備えている。また、制御部20は、各種データを記憶する記憶部30を備える。この記憶部30は、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧に対する、当該波長可変干渉フィルター5を透過する光の波長の関係を示すV−λデータを記憶する。また、記憶部30は、検出光量取得部23により取得された光量や、目的光量取得部により取得された目的光量等を記憶する。また、記憶部30には、可動基板52が有する固有振動周期T(可動部521の固有振動周期T)が記憶される。また、測定環境における圧力Pに対する固有振動周期Tの関係を示すP−Tデータ等が記憶されていてもよい。
【0054】
フィルター駆動部21は、波長可変干渉フィルター5により取り出す光の波長を設定するための駆動電圧を設定し、電圧制御回路15を制御して、当該駆動電圧を波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する。
ここで、フィルター駆動部21は、記憶部30に記憶されたV−λデータから、測定対象である目的波長に対応した駆動電圧を読み出し、読み出した駆動電圧を静電アクチュエーター56に印加する。
【0055】
計時部22は、フィルター駆動部21により静電アクチュエーター56に電圧が印加された電圧印加タイミングからの経過時間をカウントする。
【0056】
検出光量取得部23は、フィルター駆動部21により静電アクチュエーター56に駆動電圧が印加された後、所定の測定開始タイミングT(第一時点)から測定停止タイミングT(第二時点)までの光量を取得する。
なお、本実施形態では、ディテクター11で受光量に応じたアナログ電流は、I−V変換器12、アンプ13、及びA/D変換器14を経てデジタル電圧信号として制御部20に入力される。したがって、検出光量取得部23は、予め設定された時間間隔(例えば1μs間隔)で、入力されるデジタル電圧信号を取得し、所定時間間隔毎の光量を取得する。これにより、検出光量取得部23は、例えば1μs間隔毎の光量の遷移状態である光量検出パターンを検出することができる。
【0057】
ここで、検出光量取得部23により光量取得が開始される測定開始タイミングTは、図4に示すように、駆動電圧の立ち上がり時間Tの経過後に設定される。これは、駆動電圧の印加から可動部521の移動までの間に僅かな遅延が生じるためである。このように、測定開始タイミングTを駆動電圧の立ち上がり時間Tよりも予め設定された時間(例えば10μs)経過後に設定することで、可動部521の振動中における光量変化を取得することができる。
また、測定停止タイミングTとしては、少なくとも可動部521の固有振動周期(可動基板52が有する固有振動周期)の2周期分を取得すればよい。
【0058】
目的光量取得部24は、検出光量取得部23により取得された光量に基づいて、可動部521が振動中心に位置する状態で波長可変干渉フィルター5を透過する波長の光の光量(目的光量)を取得する。
これには、目的光量取得部24は、測定開始タイミングTから測定停止タイミングTまでの間で取得された光量のうち、最大光量、最小光量を検出し、これらの最大光量及び最小光量が検出されたタイミングに基づいて、目的光量を取得する。
なお、目的光量取得部における目的光量の取得方法の詳細は、後述の分光測定方法の説明において詳述する。
【0059】
分光測定部25は、目的光量取得部24により取得される各駆動電圧に対する目的光量に基づいて、測定対象光のスペクトル特性を測定する。また、分光測定部25は、測定結果から、スペクトル曲線を作成してもよい。
【0060】
[分光測定装置による分光測定方法]
次に、上述した分光測定装置1による分光測定方法について、図面に基づいて説明する。
図6は、本実施形態の分光測定方法のフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態の分光測定装置1による分光測定方法では、測定が開始されると、まず、フィルター駆動部21は、記憶部30に記憶されたV−λデータを参照して、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を設定する(S1)。本実施形態では、測定対象波長域内で、所定の測定ピッチで測定対象となる目的波長を順次切り替え、当該目的波長に対する光量(目的光量)を順次取得して、測定対象光のスペクトル特性を測定する。したがって、S1では、フィルター駆動部21は、1つの目的光量の取得が終了する毎に、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を、所定電圧間隔(測定ピッチ)で、切り替えて設定する。なお、この測定ピッチとしては、測定者により適宜設定される値を用いてもよく、予め設定されている値を用いてもよい。
【0061】
次に、フィルター駆動部21は、電圧制御回路15を制御して、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に、設定した駆動電圧を印加して駆動させる(S2)。これにより、波長可変干渉フィルター5の可動部521が固定基板51側に変位する。この時、上述したように、可動部521には、静電アクチュエーター56による静電引力と、保持部522による弾性力とが作用するため、可動部521は、所定の固有振動周期Tで、振動中心を中心として振動する。また、フィルター駆動部21により静電アクチュエーター56に駆動電圧が印加された時点で、計時部22による経過時間のカウントが開始される。
【0062】
次に、検出光量取得部23は、計時部22によりカウントされる経過時間に基づいて、測定開始タイミングTから測定停止タイミングTまでの間にディテクター11により検出される光量を取得する(S3)。
図7、図11、及び図15は、測定対象光のスペクトル特性の例を示す図である。この図7、図11、図15において、範囲A1〜A7は、可動部521の振動範囲に対応して波長可変干渉フィルター5から射出される光の波長域を示している。図8は、範囲A1に対応して取得された光量と、当該光量が取得された時間との関係(光量検出パターン)を示す図である。図9は、範囲A2に対応して取得された光量と、当該光量が取得された時間との関係(光量検出パターン)を示す図である。図10は、範囲A3に対応して取得された光量と、当該光量が取得された時間との関係(光量検出パターン)を示す図である。図12は、範囲A4に対応して取得された光量と、当該光量が取得された時間との関係(光量検出パターン)を示す図である。図13は、範囲A5に対応して取得された光量と、当該光量が取得された時間との関係(光量検出パターン)を示す図である。図14は、範囲A6に対応して取得された光量と、当該光量が取得された時間との関係(光量検出パターン)を示す図である。図16は、範囲A7に対応して取得された光量と、当該光量が取得された時間との関係(光量検出パターン)を示す図である。なお、図8〜図10、図12〜図14、図16において、Favrは、振動範囲において検出された光量の平均値である。
【0063】
S3では、可動部521が振動しているため、例えば、図7,図11,図15における範囲A1〜A7のような振動範囲に対応した波長域の光がディテクター11により検出される。ディテクター11で光が検出されると、I−V変換器12、アンプ13、及びA/D変換器14を経て、検出光量に応じたデジタル信号が制御部20に入力される。そして、検出光量取得部23は、入力されたデジタル信号を例えば1μs間隔で取得して、取得した信号に基づいた光量を記憶部30に適宜記憶する。これにより、図8〜図10、図12〜図14、及び図16に示すような光量の遷移状態(光量検出パターン)が取得される。
【0064】
この後、目的光量取得部24は、S3で取得した光量に基づいて、最大光量Fmax及び最小光量Fminを検出する(S4)。また、目的光量取得部24は、最大光量Fmaxが取得されたタイミングから可動部521の固有振動周期Tの1/4前において取得された第一光量F、最大光量Fmaxが取得されたタイミングから可動部521の固有振動周期Tの1/4後において取得された第二光量F、最小光量Fminが取得されたタイミングから可動部521の固有振動周期Tの1/4前において取得された第三光量F、最小光量Fminが取得されたタイミングから可動部521の固有振動周期Tの1/4後において取得された第四光量Fをそれぞれ検出する(S5)。
【0065】
そして、目的光量取得部24は、これらの第一光量F、第二光量F、第三光量F、及び第四光量Fに基づいて、可動部521の振動中心に対応した目的光量Fを取得する。
具体的には、目的光量取得部24は、まず、第一光量Fと、第二光量Fとを比較して、これらの光量が同値であるか否かを判定する(S6)。ここで、本発明における同値とは、光量値が完全に一致することに加え、測定精度に影響しない程度の誤差がある場合も含めるものであり、略同一の値であれば同値として判定する。
【0066】
このS6において、第一光量F及び第二光量Fが同一の値であると判定された場合(「Yes」と判定された場合)は、可動部521の振動に対する光量検出パターンが図8、図10、図12、図13、及び図14のいずれかに相当する。この場合、目的光量取得部24は、第三光量Fと第四光量Fとが同一の値であるか否かを判定する(S7)。
【0067】
そして、S7において、第三光量F及び第四光量Fが同一の値であると判定された場合(「Yes」と判定された場合)は、可動部521の振動に対する光量検出パターンが図8、図10、図12、及び図14のいずれかに相当する。この場合、目的光量取得部24は、更に、第一光量Fと第三光量Fとが同一の値であるか否かを判定する(S8)。
【0068】
このS8において、第一光量Fと第三光量Fとが同一の値であると判定された場合(「Yes」と判定された場合)は、可動部521の振動に対する光量検出パターンが図8及び図12のいずれか(パターンI)に相当する。
このパターンIでは、最大光量Fmax及び最小光量Fminが検出されたタイミングにおいて、可動部521が振動端点に位置していることを意味する。したがって、可動部521の振動中心は、振動端点から固有振動周期Tの1/4前(又は固有振動周期Tの1/4後)の可動部521の位置となり、第一光量F、第二光量F、第三光量F、及び第四光量Fが目的光量Fとなる。したがって、このパターンIでは、目的光量取得部24は、第一光量F(=第二光量F=第三光量F=第四光量F)を目的光量Fとして取得する(S9)。
【0069】
一方、S7において、第三光量F及び第四光量Fが異なる値であると判定された場合(「No」と判定された場合)は、可動部521の振動に対する光量検出パターンが図13(パターンII)に相当する。
このパターンIIでは、最大光量Fmaxが検出されたタイミングにおいて、可動部521が振動端点に位置し、最小光量Fminは、ボトム波長に対する光量であることを意味する。したがって、可動部521の振動中心は、振動端点である最大光量Fmaxが検出されたタイミングから固有振動周期Tの1/4前(又は固有振動周期Tの1/4後)の可動部521の位置となり、第一光量F、及び第二光量Fが目的光量Fとなる。したがって、このパターンIIにおいても、S9と同様、目的光量取得部24は、第一光量F(=第二光量F)を目的光量Fとして取得する。
【0070】
また、S8において、第一光量Fと第三光量Fとが異なる値であると判定された場合(「No」と判定された場合)は、可動部521の振動に対する光量検出パターンが図10及び図14のいずれか(パターンIII)に相当する。
このパターンIIIでは、最大光量Fmax及び最小光量Fminのいずれかが、可動部521が振動端点に位置した際に検出された光量であるが、これらのうち、いずれが振動端点に対応した光量であるかが不明となる。この場合、制御部20は、フィルター駆動部21により、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を微小変化させ(S10)、S2の処理に戻る。ここで、駆動電圧の変化量としては、例えばS1により設定される測定ピッチよりも小さい値に設定されることが好ましい。
このように、駆動電圧を微小変化させることで、光量の検出パターンをパターンII又は、後述するパターンIVに変化させることができ、S9又は後述のS12により目的光量の取得が可能となる。一般に、分光測定装置1によりスペクトル特性を測定する場合、測定ピッチ毎の光量を取得(測定)して、図7、11、15に示すようなスペクトル曲線を作成する。したがって、一部の波長に対する光量が取得されていなくても、その近傍の波長に対する光量を取得することで、スペクトル曲線を作成することが可能となり、測定波長域における所定波長における光量を予測することが可能となる。
【0071】
一方、S6において、第一光量Fと第二光量Fが異なる値であると判定された場合(「No」と判定された場合)は、可動部521の振動に対する光量検出パターンが図9及び図16のいずれかに相当する。この場合、目的光量取得部24は、第三光量Fと第四光量Fとが同一の値であるか否かを判定する(S11)。
【0072】
そして、S11において、第三光量F及び第四光量Fが同一の値であると判定された場合(「Yes」と判定された場合)は、可動部521の振動に対する光量検出パターンが図9(パターンIV)に相当する。
このパターンIVでは、最小光量Fminが検出されたタイミングにおいて、可動部521が振動端点に位置し、最大光量Fmaxは、ピーク波長に対する光量であることを意味する。したがって、可動部521の振動中心は、振動端点である最小光量Fminが検出されたタイミングから固有振動周期Tの1/4前(又は固有振動周期Tの1/4後)の可動部521の位置となり、第三光量F、及び第四光量Fが目的光量Fとなる。したがって、このパターンIVでは、目的光量取得部24は、第三光量F(=第四光量F)を目的光量Fとして取得する(S12)。
【0073】
また、S11において、第三光量F及び第四光量Fが異なる値であると判定された場合(「No」と判定された場合)は、可動部521の振動に対する光量検出パターンが図16(パターンV)に相当する。
このパターンVでは、最大光量Fmax及び最小光量Fminのいずれも振動端点に位置しないことを意味し、振動範囲内に、最大光量Fmaxに対応したピーク波長、及び最小光量Fminに対応したボトム波長を有することを意味する。
このように振動波長域内にピーク波長及びボトム波長を有する場合、測定開始タイミングTから測定停止タイミングTまでの間に取得された光量の平均値が、振動中心に対応した光量とほぼ一致することが多い。したがって、目的光量取得部24は、S3により取得された光量、及び当該光量の取得回数に基づいて、光量の平均値Favrを算出し、目的光量Fとして取得する(S13)。
【0074】
そして、S9、S12、及びS13のいずれかの処理により目的光量が取得されると、制御部20は、測定対象波長域における全ての目的波長に対する測定処理が終了したか否かを判断する(S14)。
S14において、設定された測定ピッチ間隔の測定対象波長において、光量を取得していない波長が存在する場合、S1の処理に戻る。一方、S14において、測定対象波長域における全ての測定対象波長に対する光量の測定が終了したと判断されると、分光測定部25は、取得した各波長に対する光量に基づいて測定対象光の分光測定処理を実施する(S15)。
【0075】
[実施形態の作用効果]
本実施形態の分光測定装置1では、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5を透過した光を検出するディテクター11と、検出された光量に基づいて分光測定を実施する制御部20とを備える。波長可変干渉フィルター5は、固定反射膜54を有する固定基板51と、固定反射膜54に対向する可動反射膜55を有する可動基板52と、反射膜間ギャップG1を変化させる静電アクチュエーター56とを備える。そして、制御部20のフィルター駆動部21及び電圧制御回路15により、静電アクチュエーター56に駆動電圧が印加されると、可動基板52の保持部522が撓み、可動反射膜55が設けられた可動部521が固定基板51側に変位する。このような波長可変干渉フィルター5では、駆動電圧を変化させることで、透過する光の波長を変更することが可能となるが、保持部522の弾性力と、静電アクチュエーター56による静電引力により、可動部521が振動し、可動部521の振動中では、透過波長が変動し、これに伴いディテクター11で検出される光量も変動する。
これに対して、本実施形態の制御部20では、検出光量取得部23により、ディテクター11により検出される光量を所定間隔で取得して、光量の遷移状態(光量検出パターン)を取得する。そして、目的光量取得部24は、光量検出パターンに基づいて、可動部521の振動中心に対応する目的光量を取得する。
このため、本実施形態の目的光量取得部24は、可動部521の振動が静止するまで待機する必要がなく、即座に、所望の測定対象波長に対する目的光量を所得することができる。したがって、分光測定装置1において、各測定対象波長に対する光量取得に要する時間がそれぞれ短縮されるため、測定対象光のスペクトル特性の測定においても時間短縮を図ることができる。
【0076】
本実施形態では、目的光量取得部24は、光量検出パターンに基づいて、最大光量Fmax、最小光量Fminを検出し、最大光量Fmaxが検出されたタイミングから可動部521の固有振動周期Tの1/4前の第一光量F、最大光量Fmaxが検出されたタイミングから固有振動周期Tの1/4後の第二光量F、最小光量Fminが検出されたタイミングから固有振動周期Tの1/4前の第三光量F、及び最小光量Fminが検出されたタイミングから固有振動周期Tの1/4後の第四光量Fを検出する。そして、目的光量取得部24は、これらの第一光量F、第二光量F、第三光量F、及び第四光量Fの一致状態から目的光量Fを取得する。
一般に、可動部521の振動端点において、最大光量Fmaxや最小光量Fminが検出されることが多く、最大光量Fmaxが振動端点である場合、第一光量F及び第二光量Fが同値となり、目的光量Fとなる。また、最小光量Fminが振動端点である場合、第三光量F及び第四光量Fが同値となる。したがって、上記のように、目的光量取得部24は、第一光量F、第二光量F、第三光量F、及び第四光量Fの一致状態を判断することで、容易に、目的光量Fを取得することができる。また、光量の平均値を目的光量とする方法に比べ、測定精度を向上させることができる。
【0077】
本実施形態では、目的光量取得部24は、第一光量F、第二光量F、第三光量F、及び第四光量Fが同一の光量の場合、第一光量Fを目的光量Fとして取得する。
このように、第一光量F、第二光量F、第三光量F、及び第四光量Fが同一の値である場合、光量検出パターンが、振動端点において、最大光量Fmax及び最小光量Fminが検出されるパターンIであることを意味する。したがって、上述のように、目的光量取得部24は、同一の値であるこれらの光量F,F,F,Fを目的光量Fとすることで、パターンIの光量検出パターンに対して、容易に、かつ迅速に目的光量Fを取得することができる。
【0078】
本実施形態では、目的光量取得部24は、第一光量F及び第二光量Fが同一の値であり、第三光量F及び第四光量Fが異なる値である場合、第一光量Fを目的光量Fとして取得する。このような場合、光量検出パターンが、振動端点の1つが最大光量FmaxであるパターンIVであることを意味する。したがって、上述のように、目的光量取得部24は、同一の値であるこれらの光量F,Fを目的光量Fとすることで、パターンIVの光量検出パターンに対して、容易に、かつ迅速に目的光量Fを取得することができる。
また、目的光量取得部24は、第一光量F及び第二光量Fが異なる値であり、第三光量F及び第四光量Fが同一の値である場合、第三光量Fを目的光量Fとして取得する。このような場合、光量検出パターンが、振動端点の1つが最小光量FminであるパターンIIであることを意味する。したがって、上述のように、目的光量取得部24は、同一の値であるこれらの光量F,Fを目的光量Fとすることで、パターンIIの光量検出パターンに対して、容易に、かつ迅速に目的光量Fを取得することができる。
【0079】
本実施形態では、目的光量取得部24により、第一光量F及び第二光量Fが同一の値であり、かつ第三光量F及び第四光量Fが同一の値であり、かつ第一光量Fと第三光量Fが異なる値であると判定された場合、フィルター駆動部21は、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を微小変化させる。
つまり、図10や図14に示すパターンIIIのように、振動端点に対して最大光量Fmaxが検出されて振動中心に対して最小光量Fminが検出されるパターンか、振動端点に対して最小光量Fminが検出され、振動中心に対して最大光量Fmaxが検出されるパターンか不明な場合がある。このような場合においても、本実施形態では、駆動電圧を微小変化させることで、パターンII又はパターンIVの光量検出パターンにすることができる。この場合、設定された測定ピッチ間隔の測定対象波長に対する光量を取得することができないが、測定対象波長近傍の波長に対する光量を取得することができる。
また、分光測定部25は、各波長に対して取得された光量に応じて、測定対象光のスペクトル特性を測定する。したがって、測定ピッチ間隔の測定対象波長に対する光量が取得できない場合であっても、当該測定対象波長の近傍の波長に対する光量が取得されれば、測定対象光のスペクトル特性を測定することができる。また、分光測定部25により測定されたスペクトルの特性から、測定できなかった測定対象波長の光量を予測することもできる。
【0080】
本実施形態では、目的光量取得部24は、第一光量F、第二光量F、第三光量F、及び第四光量Fがそれぞれ異なる値である場合、検出光量取得部23により取得された光量の平均値Favrを目的光量Fとして取得する。
このように、第一光量F、第二光量F、第三光量F、及び第四光量Fが異なる場合、振動端点が最大光量Fmaxや最小光量Fminに対応した点ではなく、可動部521の振動範囲に対応した波長域内に、最大光量Fmaxに対応したピーク波長、及び最小光量Fminに対応したボトム波長が存在する(パターンV)ことを意味する。このように、振動範囲に対応した波長域内にピーク波長及びボトム波長が存在する場合、振動中心は、ピーク波長とボトム波長との間に存在することが多く、光量の平均値とほぼ一致する。したがって、上述のように、目的光量取得部24は、光量の平均値を目的光量Fとすることで、パターンVの光量検出パターンに対して、容易に目的光量Fを取得することができる。
【0081】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態について、以下に説明する。なお、本実施形態の分光測定装置は、図1に示す第一実施形態の分光測定装置1と同様の構成を有し、目的光量取得部24の処理内容の一部のみが相違する。したがって、以下において、図1に基づいて本実施形態を説明するとともに、第一実施形態において説明した構成の説明は省略する。
【0082】
上述した第一実施形態では、目的光量取得部24は、第一光量及び第二光量が同値であり、かつ第三光量及び第四光量が同値であり、かつ第一光量と第三光量とが異なる値である場合(図6のS8において「No」と判断される、図10や図14に示されるパターンIIIの場合)、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を微小変化させて、新しく設定された駆動電圧に対する目的光量を取得する処理を実施した。これに対して、本実施形態では、駆動電圧を微小変化させた際の光量の遷移状態から、電圧変化前の光量検出パターンを判断し、電圧変化前における目的光量を取得する点で相違する。
【0083】
つまり、本実施形態では、図6におけるS8において、目的光量取得部24により「No」と判定した場合、第一実施形態と同様、フィルター駆動部21は、S10の処理を実施して、駆動電圧の値を微小変化させる。ここで、電圧変化前の駆動電圧を第一電圧、電圧変化後の駆動電圧を第二電圧とする。
このように、駆動電圧を変化させると、図7に示す範囲A3や図11に示す範囲A6は、範囲A2や範囲A5に変化し、図10や図14に示すようなパターンIIIの光量検出パターンは、図9や図13に示すようなパターンIIや、パターンVIの光量検出パターンに変化する。ここで、第二電圧の印可時に、図9に示すパターンIIに変化した場合、第一電圧を印加時は、図10に示す光量検出パターンであり、振動中心においてピーク波長が検出されたことを意味する。一方、第二電圧の印可時に、図13に示すパターンIVに変化した場合、第一電圧を印加時は、図14に示す光量検出パターンであり、振動中心においてボトム波長が検出されたことを意味する。
したがって、本実施形態の目的光量取得部24は、図6のS10の後、第三光量F及び第四光量Fが同一の値であり、第一光量F及び第二光量Fが異なる値となった場合、電圧変化前の駆動電圧(第一電圧)に対する目的光量として、最大光量Fmax(=第三光量F=第四光量F)を取得する。また、目的光量取得部24は、図6のS10の後、第一光量F及び第二光量Fが同一の値であり、第三光量F及び第四光量Fが異なる値となった場合、電圧変化前の駆動電圧(第一電圧)に対する目的光量として、最小光量Fmin(=第一光量F=第二光量F)を取得する。
【0084】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、目的光量取得部24により、第一光量F及び第二光量Fが同一の値であり、かつ第三光量F及び第四光量Fが同一の値であり、かつ第一光量Fと第三光量Fが異なる値であると判定された場合、フィルター駆動部21は、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を微小変化させる。すなわち、フィルター駆動部21は、静電アクチュエーター56に印加する電圧を第一電圧から第二電圧に切り替える。これにより、上記第一実施形態と同様に、パターンIIIのような検出パターンを、パターンII又はパターンIVの光量検出パターンにすることができる。
ここで、本実施形態では、パターンIIに変化した場合、第二電圧印加時において、振動中心において、ボトム波長に対応した最小光量Fminが検出されたことを意味する。したがって、目的光量取得部24は、第一電圧に対応した目的波長に対する目的光量として最小光量Fmin(=第一光量F=第二光量F)を取得する。一方、パターンIVに変化した場合、第二電圧印加時において、振動中心において、ピーク波長に対応した最大光量Fmaxが検出されたことを意味する。したがって、目的光量取得部24は、第一電圧に対応した目的波長に対する目的光量として最大光量Fmax(=第三光量F=第四光量F)を取得する。
これにより、目的光量取得部24は、可動部521の振動の静止を待つことなく、迅速に目的光量Fを取得することができる。
【0085】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について以下に説明する。
上述した第一実施形態及び第二実施形態では、検出光量取得部23により取得された光量のうち、最大光量、最小光量、及び第一〜第四光量を検出し、これらの第一〜第四光量の一致状態に基づいて目的光量を取得した。これに対して、本実施形態では、検出光量取得部により取得された光量検出パターンから、極値、及び極値の周期性を判断し、目的光量を取得する点で上記第一及び第二実施形態と相違する。
図17は、第三実施形態の分光測定装置1Aの概略構成を示す図である。なお、本実施形態の説明にあたり、第一及び第二実施形態と同様の構成については同符号を付し、その説明を省略、又は簡略化する。
【0086】
図17に示すように、本実施形態の分光測定装置1Aは、ディテクター11から出力された検出信号(電流)は、I−V変換器12により電圧に変化される。そして、I−V変換器12から出力される検出信号(電圧)は、アンプ13および微分回路16に出力される。アンプ13に出力された検出信号は、A/D変換器14を経て、第一実施形態と同様に、制御部20Aに出力される。
一方、微分回路16に出力された検出信号は、微分回路16にて微分処理された後、制御部20Aに出力される。このように、検出信号を微分回路16により微分処理することで、光量検出パターンにおける光量の極大点及び極小点を取得することができる。
【0087】
また、本実施形態の制御部20Aは、図17に示すように、フィルター駆動部21、計時部22、検出光量取得部23、目的光量取得部24A、分光測定部25、極値取得部26、及び記憶部30を備える。
極値取得部26は、微分回路16から入力される信号に基づいて、可動部521の振動中に取得される光量のうち、極大値(極大光量F)及び極小値(極小光量F)及び、これらの極値が取得された極値取得タイミングを検出する。
【0088】
目的光量取得部24Aは、検出光量取得部23により取得される光量、及び極値取得部26により検出される極値及び当該極値が取得された極値取得タイミングに基づいて、目的光量Fを取得する。
つまり、可動部521が振動範囲で振動し、この振動範囲においてディテクター11に検出される光量が変動する場合、可動部521が振動端点に位置した状態で、極大光量F及び極小光量Fのうちいずれかが取得され、固有振動周期Tの間隔で略同一の値が取得される。したがって、目的光量取得部24Aは、極値の周期性と、当該極値の値により、可動部521が振動端点に位置するタイミングを検出でき、振動中心に対応した目的光量Fを取得することができる。なお、目的光量取得部24Aの具体的な目的光量の取得方法については後述する。
【0089】
[分光測定方法]
以下に本実施形態の分光測定装置1Aにより分光測定方法について、図面に基づいて説明する。
図18は、本実施形態の分光測定方法を示すフローチャートである。
図18に示すように、本実施形態の分光測定装置1Aによる分光測定方法では、第一実施形態と同様に、測定が開始されると、まず、S1の処理を実施し、フィルター駆動部21は、記憶部30に記憶されたV−λデータを参照して、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を設定する。そして、S2の処理を実施して、フィルター駆動部21は、電圧制御回路15を制御して、波長可変干渉フィルターの静電アクチュエーター56に、設定した駆動電圧を印加して駆動させる。これにより、波長可変干渉フィルター5の可動部521が固定基板51側に変位する。この時、上述したように、可動部521には、静電アクチュエーター56による静電引力と、保持部522による弾性力とが作用するため、可動部521は、所定の固有振動周期で振動中心を中心として振動する。また、フィルター駆動部21により静電アクチュエーター56に駆動電圧が印加された時点で、計時部22による経過時間のカウントが開始される。
【0090】
次に、検出光量取得部23は、第一実施形態におけるS2と同様、計時部22によりカウントされる経過時間に基づいて、測定開始タイミングTから測定停止タイミングTまでの間にディテクター11により検出される光量を取得する。
また、検出光量取得部23による光量の取得と同時に、極値取得部26により極値(極大光量F及び極小光量F)、及びこれらの極値が取得された極値取得タイミングを検出する(S21)。
図19は、測定対象光の一例を示す図である。図19において、範囲A1〜A10は、可動部521の振動範囲の例を示している。
図20から図29は、それぞれ各範囲A1において検出された光量と、当該光量が取得された時間との関係(光量検出パターン)を示す図であり、図20は範囲A1、図21は範囲A2、図22は範囲A3、図23は範囲A4、図24は範囲A5、図25は範囲A6、図26は範囲A7、図27は範囲A8、図28は範囲A9、図29は範囲A10に対応した図である。
【0091】
S3及びS21の後、目的光量取得部24Aは、取得した極値F,Fのうち、値が同一であるグループを検出し、各グループにおいて、同値の極値が検出された極値取得タイミングの周期を検出する(S22)。
次に、目的光量取得部24Aは、各グループのうち、同値の極値が可動部521の固有振動周期Tの間隔で現れるグループがあるか否かを判定する(S23)。つまり、目的光量取得部24Aは、同値の極大光量Fの検出タイミングがT間隔である光量検出パターン、又は同値の極小光量Fの検出タイミングがT間隔である光量検出パターンであるか否かを判断する。
【0092】
このS23において、同値の極値の極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tであると判定された場合(「Yes」と判定された場合)、可動部521に振動に対する光量検出パターンが図20、図21、図23、図24、図28のいずれかに相当する。
【0093】
ここで、光量検出パターンが図20や図23の場合、可動部521の振動範囲内に対応した測定対象波長域において、図19の範囲A1,A4に示すように、ピーク波長又はボトム波長が存在しないことを意味する。
この場合、可動部521が振動端点のうち一方に位置する状態で極大光量Fが検出され、可動部521が振動端点のうち他方に位置する状態で極小光量Fが検出される。したがって、可動部521が振動中心に位置する状態で検出される光量は、極大光量F(極小光量F)が検出された極値検出タイミングから、固有振動周期Tの1/4前(又は固有振動周期Tの1/4後)に検出された光量Fb1(=Fb2=Fs1=Fs2)となる。
なお、図20〜図29において、極大光量Fの極値取得タイミングの固有振動周期Tの1/4前の光量をFb1、極大光量Fの極値取得タイミングの固有振動周期Tの1/4後の光量をFb2、極小光量Fの極値取得タイミングの固有振動周期Tの1/4前の光量をFs1、極小光量Fの極値取得タイミングの固有振動周期Tの1/4後の光量をFs2として示す。
【0094】
光量検出パターンが図21及び図24の場合、可動部521の振動範囲内に対応した測定対象波長域において、図19の範囲A2,A4に示すように、ピーク波長又はボトム波長が存在し、可動部521の振動端点において、それぞれ異なる光量が検出されることを意味する。
この場合、例えば図21では、ピーク波長に対応して極大光量Fが取得されるが、この極大光量Fの極値取得タイミングの周期は、周期t1と周期t2との繰り返しとなる(T=t1+t2,t1≠t2)。同様に、図24では、ボトム波長に対応して極小光量Fが取得されるが、この極小光量Fの極値取得タイミングの周期は、周期t1と周期t2との繰り返しとなる(T=t1+t2,t1≠t2)。すなわち、図21における極大光量Fや図24における極小光量Fの極値取得タイミングの周期は、可動部521の固有振動周期Tや、固有振動周期Tの1/2周期とはならず、可動部521の振動端点に対応した光量ではない。
一方、図21の光量検出パターンでは、2つの極小光量F,F´が取得され、図24の光量検出パターンでは、2つの極大光量F,F´が取得される。そして、これらの極値はそれぞれ固有振動周期T間隔で検出される。このように、同値の極値が可動部521の固有振動周期T間隔で検出される場合、当該極値が可動部521の振動端点に位置することを意味する。したがって、可動部521が振動中心に位置する状態で検出される光量は、固有振動周期T間隔で検出される極値の極値検出タイミングから、固有振動周期Tの1/4前(又は固有振動周期Tの1/4後)に検出された光量Fb1(=Fb2=Fb1´=Fb2´;図21の光量検出パターン)、Fs1(=Fs2=Fs1´=Fs2´;図24の光量検出パターン)となる。
【0095】
光量検出パターンが図28の場合、可動部521の振動範囲内に対応した測定対象波長域において、図19の範囲A9に示すように、ピーク波長及びボトム波長が存在し、可動部521の振動端点において、それぞれ異なる光量が検出されることを意味する。
この場合、ピーク波長に対応して極大光量F´が取得され、ボトム波長に対応して極小光量F´が取得されるが、これらの極値取得タイミングの周期は、それぞれ周期t1と周期t2との繰り返し(極小光量F´に対しては周期t3と周期t4の繰り返し)となる(T=t1+t2=t3+t4,t1≠t2,t3≠t4)。すなわち、これらの極大光量F´や極小光量F´の周期は、可動部521の固有振動周期Tや、固有振動周期Tの1/2周期とはならず、可動部521の振動端点に対応した光量ではない。
一方、図28の光量検出パターンでは、極値F´,F´とは異なる値となる極大光量F及び極小光量Fが取得され、これらの極値はそれぞれ固有振動周期T間隔で検出される。これは、当該極値が可動部521の振動端点に位置することを意味する。したがって、可動部521が振動中心に位置する状態で検出される光量は、固有振動周期T間隔で検出される極値の極値検出タイミングから、固有振動周期Tの1/4前(又は固有振動周期Tの1/4後)に検出された光量Fb1(=Fb2=Fs1=Fs2)となる。
【0096】
以上に示すように、同値の極値が固有振動周期T間隔で取得される場合、当該極値は可動部521の振動端点に対応した光量となる。したがって、目的光量取得部24Aは、S23において、「Yes」と判定されると、固有振動周期T間隔で取得される極値F(F)の極値取得タイミングから、固有振動周期Tの1/4前(又は固有振動周期Tの1/4後)に検出された光量を、目的光量Fとして取得する(S24)。
【0097】
また、S23において「No」と判定された場合、つまり、同値の極値の極値取得タイミングが固有振動周期T間隔とはならない場合、目的光量取得部24Aは、同値の極値の極値取得タイミングが固有振動周期Tの1/2周期間隔となるか否かを判定する(S25)。
このS25において、同値の極値のタイミングが固有振動周期Tの1/2間隔であると判定された場合(「Yes」と判定された場合)、可動部521に振動に対する光量検出パターンが図22、図25、図26、図27のいずれかに相当する。この場合、目的光量取得部24Aは、更に、極大光量Fの極値取得タイミングの周期、及び極小光量Fの極値取得タイミングの周期の双方が固有振動周期Tの1/2間隔であるか否かを判断する(S26)。
【0098】
S26において、「No」と判定された場合、つまり、極大光量Fの極値取得タイミングの周期、及び極小光量Fの極値取得タイミングの周期のいずれか一方のみが固有振動周期Tの1/2である場合、図26又は図27の光量検出パターンであることを意味する。
光量検出パターンが図26や図27である場合、図21や図24と同様に、可動部521の振動範囲内に対応した測定対象波長域において、図19の範囲A7,A8に示すように、ピーク波長又はボトム波長が存在し、可動部521の振動端点において、同一の光量が検出されることを意味する。
この場合、例えば図21や図24の光量検出パターンと同様に、ピーク波長に対応した極大光量F(図26)やボトム波長に対応した極小光量F(図27)の極値取得タイミングの周期は、可動部521の固有振動周期Tや、固有振動周期Tの1/2とはならず、可動部521の振動端点に対応した光量ではない。
一方、図26の光量検出パターンにおける極小光量Fや図27の光量検出パターンにおける極大光量Fは、それぞれ固有振動周期Tの1/2間隔で検出され、これらが可動部521の振動両端点に対応した光量であると判断できる。したがって、可動部521が振動中心に位置する状態で検出される光量は、固有振動周期Tの1/2間隔で検出される極値の極値検出タイミングから、固有振動周期Tの1/4前(又は固有振動周期Tの1/4後)に検出された光量となる。
したがって、目的光量取得部24Aは、S26において、「No」と判定されると、固有振動周期T間隔で取得される極値F(F)の極値取得タイミングから、固有振動周期Tの1/4前(もしくは1/4後)に検出された光量Fb1(=Fb2;図26の光量検出パターン)、Fs1(=Fs2;図27の光量検出パターン)を、目的光量Fとして取得する(S24)。
【0099】
また、S26において、「Yes」と判定された場合、つまり、極大光量Fの極値取得タイミングの周期、及び極小光量Fの極値取得タイミングの周期の双方が固有振動周期Tの1/2である場合、可動部521に振動に対する光量検出パターンが図22及び図25のいずれかに相当する。
この場合、振動端点に対応した極値を判断することが不可能であるため、第一実施形態のS10の処理と同様、フィルター駆動部21により、駆動電圧を微小変化させ、S2の処理に戻る。これにより、光量検出パターンが図21又は図23となり、極値取得タイミングが固有振動周期T間隔となる同値の極値が検出されることとなる。したがって、上述したS23及びS24により、目的光量Fを取得することが可能となる。
【0100】
なお、電圧変化前に対応した目的光量Fを取得する場合では、例えば第二実施形態に示すように、S10の処理後、電圧変化前の光量検出パターンを判定し、電圧変化前の駆動電圧に対する目的光量Fを取得してもよい。
例えば、電圧を微小変化させた後において、極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tとなる同値の極小光量Fが取得された場合、電圧変化前の光量検出パターンは、図22に示す光量検出パターンであると判定できる。この場合、電圧変化前における極大光量Fが、電圧変化前の駆動電圧(測定ピッチ間隔となる測定対象波長)に対応した目的光量Fとなる。
また、電圧を微小変化させた後において、極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tとなる同値の極大光量Fが取得された場合、電圧変化前の光量検出パターンは、図25に示す光量検出パターンであると判定できる。この場合、電圧変化前における極小光量Fが、電圧変化前の駆動電圧(測定ピッチ間隔となる測定対象波長)に対応した目的光量Fとなる。
【0101】
また、S25において「No」と判定された場合、つまり、同値の極値の極値取得タイミングが可動部521の固有振動周期Tでもなく、固有振動周期Tの1/2でもない場合、可動部521に振動に対する光量検出パターンが図29に相当する。
この光量検出パターンでは、振動端点に対応した極値がいずれに相当するか検出することが不可能となる。したがって、この場合、S10の処理を実施して、フィルター駆動部21により、駆動電圧を微小変化させ、S2の処理に戻る。これにより、光量検出パターンが図28に示すパターンとなり、極値取得タイミングが固有振動周期T間隔となる同値の極値が検出されることとなるので、上述したS23及びS24により、目的光量Fを取得することが可能となる。
【0102】
そして、S24の処理により目的光量Fが取得されると、制御部20は、第一実施形態と同様、S14及びS15の処理を実施する。
【0103】
[第三実施形態の作用効果]
本実施形態の分光測定装置1Aは、ディテクター11から出力された検出信号を微分処理する微分回路16を備えている。また、制御部20Aの極値取得部26は、微分回路16の微分処理に基づいて、極値(極大光量F及び極小光量F)を取得し、当該極値が取得された極値取得タイミングを検出する。
そして、本実施形態の目的光量取得部24Aは、検出された極値から、同値の極値をグループ化し、当該同値の極値の極値検出タイミングが周期性と固有振動周期Tに基づいて目的光量Fを取得する。
つまり、可動部521の振動端点に対応して検出された光量は、図19に示すように、振動範囲において光量が変化しているのであれば極値として検出される。したがって、極値の周期性を判断することで、容易に光量検出パターンにおける可動部521の振動端点に対応した位置を検出でき、振動中心に対応する光量を取得することができる。したがって、本実施形態の分光測定装置1Aにおいても、可動部521の振動の静止を待つことなく、迅速に目的光量を取得することができ、測定対象光のスペクトル特性の測定処理の迅速に実施することができる。振動中心に対応した光量の実測値を目的光量として取得するため、例えば、光量の平均値を目的光量とする場合に比べて、測定精度を向上させることができる。
【0104】
本実施形態では、目的光量取得部24Aは、同値の極値(極大光量F及び極小光量Fの少なくともいずれか一方)の極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tである場合、当該極値取得タイミングから固有振動周期Tの1/4前又は固有振動周期Tの1/4後の光量を目的光量Fとして取得する。
これにより、図20、図21、図23、図24、及び図28のような光量検出パターンに対して、迅速に目的光量を取得することができるともに、実測値に基づいた精度の高い目的光量を取得することができる。また、上記第一実施形態では、図26のように、振動範囲に対応した波長域内に複数のピーク波長やボトム波長がある場合、平均値Favrを算出して目的光量Fとした。これに対して、本実施形態では、複数のピーク波長やボトム波長がある場合でも、極値に基づいて振動端点の位置を把握することができるため、光量の実測値に基づいて目的光量Fを取得することができ、測定精度を向上させることができる。
【0105】
本実施形態では、目的光量取得部24Aは、同値の極大光量F及び同値の極小光量Fのいずれか一方の極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tの1/2であり、他方の極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tや固有振動周期Tの1/2ではない場合、極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tの1/2である極値の極値取得タイミングから、固有振動周期Tの1/4前又は固有振動周期Tの1/4後の光量を目的光量Fとして取得する。
これにより、図26や図27のように、振動両端点において、同一の光量が取得され、かつ振動中心において、ピーク波長やボトム波長が存在しない光量検出パターンに対して、迅速に目的光量を取得することができる。また、実測値に基づいた精度の高い目的光量を取得することができる。
【0106】
本実施形態では、同値の極大光量F及び同値の極小光量Fの双方の極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tの1/2である場合、フィルター駆動部21は、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を微小変化させる。
つまり、図22や図25に示すような光量検出パターンでは、振動端点に対応する極値が極大光量F及び同値の極小光量Fのいずれであるかを判定することが困難となる。このような場合においても、本実施形態では、駆動電圧を微小変化させることで、図21や図24に示すような光量検出パターンに変化させることができる。これにより、S23及びS24により、振動中心に対応した目的光量Fを取得することができる。
また、この場合、設定された測定ピッチ間隔に対応した測定対象波長に対する光量を取得することができないが、第二実施形態のように、駆動電圧を微小変化させた後の光量検出パターンから、電圧変化前の光量検出パターンにおける振動端点に対応する光量を判断してもよい。つまり、目的光量取得部24Aは、駆動電圧を微小変化させた後の光量検出パターンにおいて、極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tの1/2となる極小光量F(F´)が取得された場合、電圧変化前の光量検出パターンにおける極大光量Fを、電圧変化前の駆動電圧に対する目的光量Fとして取得する。また、目的光量取得部24Aは、駆動電圧を微小変化させた後の光量検出パターンにおいて、極値取得タイミングの周期が固有振動周期Tの1/2となる極大光量F(F´)が取得された場合、電圧変化前の光量検出パターンにおける極小光量Fを、電圧変化前の駆動電圧に対する目的光量Fとして取得する。これにより、予め設定された測定ピッチ毎の測定対象波長に対応する光量を測定することができる。
【0107】
本実施形態では、図29に示す光量検出パターンのように、同値の極値F(又はF)の極値取得タイミングが固有振動周期Tや固有振動周期Tの1/2に一致しない場合、フィルター駆動部21は、静電アクチュエーター56に印加する駆動電圧を微小変化させる。これにより、光量検出パターンを図28に示すようなパターンに変化させることができ、S24の処理により目的光量Fを取得することができる。
【0108】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0109】
上記各実施形態では、波長可変干渉フィルター5のギャップ量変更部として、電圧印加により静電引力により反射膜間ギャップG1のギャップ量を変動させる静電アクチュエーター56を例示したが、これに限定されない。
例えば、固定電極561の代わりに、第一誘電コイルを配置し、可動電極562の代わりに第二誘電コイルまたは永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。
さらに、静電アクチュエーター56の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、および上部電極層を積層配置させ、下部電極層および上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませることができる。
【0110】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0111】
1,1A…分光測定装置、5…波長可変干渉フィルター、11…ディテクター(検出部)、15…電圧制御回路、16…微分回路、20,20A…制御部(測定制御部)、21…フィルター駆動部、22…計時部、23…検出光量取得部、24,24A…目的光量取得部、25…分光測定部、26…極値取得部、30…記憶部、51…固定基板(第一基板)、52…可動基板(第二基板)、54…固定反射膜(第一反射膜)、55…可動反射膜(第二反射膜)、56…静電アクチュエーター(ギャップ量変更部)、521…可動部、522…保持部、561…固定電極、562…可動電極、G1…反射膜間ギャップ、Fmax…最大光量、Fmin…最小光量、F…第一光量、F…第二光量、F…第三光量、F…第四光量、F…極大光量(極大値)、F…極小光量(極小値)、T…固定振動周期、X…測定対象。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板、
前記第一基板に対向して配置された第二基板、
前記第一基板に設けられた第一反射膜、
前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜に反射膜間ギャップを介して対向して配置された第二反射膜、
及び、電圧印加により前記第二基板を前記第一基板側に撓ませて、前記反射膜間ギャップのギャップ量を変化させるギャップ量変更部を備えた波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターにより取り出された光の光量を検出する検出部と、
測定制御部と、を備えた分光測定装置であって、
前記測定制御部は、
前記ギャップ量変更部に駆動電圧を印加させて、前記反射膜間ギャップを変化させるフィルター駆動部と、
前記フィルター駆動部により駆動電圧が印加された後の第一時点から、所定の第二時点までの間で、前記検出部により検出される光量を取得する検出光量取得部と、
検出された前記光量の遷移状態及び前記第二基板が有する固有振動周期に基づいて、前記第二基板の振動中心に対応した光量を目的光量として取得する目的光量取得部と、
を備えたことを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分光測定装置において、
前記目的光量取得部は、前記検出光量取得部により取得される光量のうち、最大光量、最小光量、前記最大光量が検出された最大検出タイミングから前記固有振動周期の1/4前の第一光量、前記最大光量が検出された最大検出タイミングから前記固有振動周期の1/4後の第二光量、前記最小光量が検出された最小検出タイミングから前記固有振動周期の1/4前の第三光量、及び前記最小光量が検出された最小検出タイミングから前記固有振動周期の1/4後の第四光量を取得し、前記第一光量、前記第二光量、前記第三光量、及び前記第四光量の一致状態に基づいて、前記目的光量を取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の分光測定装置において、
前記目的光量取得部は、前記第一光量、前記第二光量、前記第三光量、及び前記第四光量が同一の光量の場合、当該光量を前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の分光測定装置において、
前記目的光量取得部は、前記第一光量及び前記第二光量が同一の光量であり、かつ前記第三光量及び前記第四光量が異なる光量である場合、前記第一光量及び前記第二光量を前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項5】
請求項2に記載の分光測定装置において、
前記目的光量取得部は、前記第一光量及び前記第二光量が異なる光量であり、かつ前記第三光量及び前記第四光量が同一の光量である場合、前記第三光量及び前記第四光量を前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項6】
請求項2に記載の分光測定装置において、
前記フィルター駆動部は、前記第一光量及び前記第二光量が同一の光量であり、かつ、前記第三光量及び前記第四光量が同一の光量であり、かつ、前記第一光量及び前記第三光量が異なる光量である場合、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、
前記目的光量取得部は、前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後に、前記検出光量取得部により新たに取得される第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量に基づいて、電圧変化後の駆動電圧に対する前記目的光量を取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項7】
請求項2に記載の分光測定装置において、
前記フィルター駆動部は、前記第一光量及び前記第二光量が同一の光量であり、かつ、前記第三光量及び前記第四光量が同一の光量であり、かつ、前記第一光量及び前記第三光量が異なる光量である場合、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、
前記目的光量取得部は、
前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後に、前記検出光量取得部により新たに取得される第一光量、第二光量、第三光量、及び第四光量に基づいて、
新たに取得された前記第一光量及び新たに取得された前記第二光量が同一の光量であり、かつ新たに取得された前記第三光量及び新たに取得された前記第四光量が異なる光量である場合、前記フィルター駆動部により駆動電圧が微小変化される前に取得した前記最小光量を、電圧変化前の駆動電圧に対する前記目的光量として取得し、
新たに取得された前記第一光量及び新たに取得された前記第二光量が異なる光量であり、かつ新たに取得された前記第三光量及び新たに取得された前記第四光量が同一の光量である場合、前記フィルター駆動部により駆動電圧が微小変化される前に取得した前記最大光量を、電圧変化前の駆動電圧に対する前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項8】
請求項2に記載の分光測定装置において、
前記目的光量取得部は、前記第一光量、前記第二光量、前記第三光量、及び前記第四光量がそれぞれ異なる値である場合、前記第一時点から前記第二時点までの間で取得される光量の平均値を前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項9】
請求項1に記載の分光測定装置において、
前記測定制御部は、前記検出光量取得部により取得される光量のうち、極値、及び前記極値が取得された極値取得タイミングを検出する極値取得部を備え、
前記目的光量取得部は、前記極値取得部により検出された極値のうち、同値となる極値を検出し、これらの同値の極値が取得された極値取得タイミングの周期性と、前記第二基板の前記固有振動周期とに基づいて、前記目的光量を取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の分光測定装置において、
前記目的光量取得部は、前記同値の極値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期と一致する場合、当該極値取得タイミングから前記固有振動周期の1/4前又は1/4後の光量を前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項11】
請求項9に記載の分光測定装置において、
前記目的光量取得部は、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致し、同値の極小値が取得された極値取得タイミングの周期が、固有振動周期及び固有振動周期の1/2ではない場合に、同値の極大値が取得された極値取得タイミングから前記固有振動周期の1/4前又は前記固有振動周期の1/4後の光量を前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項12】
請求項9に記載の分光測定装置において、
前記目的光量取得部は、同値の極小値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致し、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、固有振動周期及び固有振動周期の1/2ではない場合に、同値の極小値が取得された極値取得タイミングから前記固有振動周期の1/4前又は前記固有振動周期の1/4前後の光量を前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項13】
請求項9に記載の分光測定装置において、
前記フィルター駆動部は、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致し、かつ、同値の極小値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致する場合に、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、
前記目的光量取得部は、前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後、前記極値取得部により新たに取得される極値及び極値取得タイミングに基づいて、電圧変化後の駆動電圧に対する前記目的光量を取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項14】
請求項9に記載の分光測定装置において、
前記フィルター駆動部は、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致し、かつ、同値の極大値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期の1/2と一致する場合に、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、
前記目的光量取得部は、
前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後に、前記極値取得部により新たに取得される極値、及び極値取得タイミングに基づいて、
新たに検出された同値の極大値が前記固有振動周期と一致する場合、前記フィルター駆動部により駆動電圧が変化される前に取得した前記極小値を、電圧変化前の駆動電圧に対応する前記目的光量として取得し、
新たに検出された同値の極小値が前記固有振動周期と一致する場合、前記フィルター駆動部により駆動電圧が変化される前に取得した前記極大値を、電圧変化前の駆動電圧に対応する前記目的光量として取得する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項15】
請求項9に記載の分光測定装置において、
前記フィルター駆動部は、同値の極値が取得された極値取得タイミングの周期が、前記固有振動周期及び前記固有振動周期の1/2のいずれでもない場合、前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧を微小変化させ、
前記目的光量取得部は、前記フィルター駆動部により前記ギャップ量変更部に印加する駆動電圧が微小変化された後に、前記極値取得部により新たに取得される極値及び極値取得タイミングに基づいて、前記目的光量を取得する
ことを特徴とする分光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2013−101071(P2013−101071A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245517(P2011−245517)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】