説明

分割型複合繊維、繊維集合物および不織布

【課題】ポリブテン−1を含む成分、およびポリエステル樹脂を含む成分を、構成成分として含み、紡糸中に融着が生じることなく良好に紡糸可能で、分割性が良好な分割型複合繊維を提供する。
【解決手段】(i)ポリブテン−1を60質量%以上含み、アマイド系ワックスを0.1質量%以上10質量%以下含む成分と、(ii)ポリエステル樹脂を含む成分とを、複合紡糸して、繊維の断面において、成分(i)と成分(ii)とが隣り合っている繊維断面構造を有する、分割型複合繊維を得る。アマイド系ワックスは、好ましくはステアリン酸アマイドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブテン−1を含む成分を一成分とする、優れた分割性を有する分割型複合繊維、ならびにそれが割繊することにより形成される極細繊維を含む繊維集合物および不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
分割型複合繊維は、2以上の成分から成り、繊維断面において少なくとも1つの成分が他の成分により2以上のセグメントに分割されている構成を有する。分割型複合繊維は、例えば、高圧水流等の物理的な衝撃を加える、又は熱処理を施して1つの成分を熱収縮させることによって、分割させることができ、それにより、1つ又は複数のセグメントから成る極細繊維を形成できる。そのような分割型複合繊維として、これまで、種々の構成のものが提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平9−31755号公報)は、高融点ポリマーセグメントと低融点ポリマーセグメントとが相互に接合した断面形状を有し、低融点ポリマーセグメントが石油樹脂を含有する熱分割性複合繊維を開示している。この繊維においては、低融点ポリマーに含まれる石油樹脂が、異種ポリマーの接合面に残存して、分割率の向上に寄与するとされている。
【0004】
特許文献2(特開平5−239718号公報)は、繊維形成性熱可塑性樹脂からなる第一成分と、溶融紡糸温度で液相であり、常温で液相または固相である第二成分とで形成されている複合繊維であって、繊維断面において第一成分が第二成分で3個以上に区分されている分割性複合繊維を開示している。この文献は、同一種類ポリマー系または単一ポリマー系素材から成る分割性複合繊維を提供することを目的としている。この繊維は、物理的衝撃処理、または温水もしくは溶剤処理によって、第二成分が消失することにより、第一成分から成る極細繊維が形成されることを可能にする。第二成分は、好ましくは、ポリオキシエチレン、鉱物性ワックス、オルガノポリシロキサンおよびこれらの変性体から選ばれる。
【0005】
親水性を付与することを目的として、分割型複合繊維の一成分または複数の成分に親水化成分を添加することも、これまでに提案されている。例えば、特許文献3(特開平8−311717号公報)は、ポリオレフィン系樹脂から成る分割型複合繊維の少なくとも一成分に親水性成分を1.0〜7.0重量%添加することを提案している。同文献は、親水性成分の例として、脂肪酸グリセライド、アルコキシ化アルキルフェノ−ル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルのほか、脂肪酸アミドを挙げている。
【0006】
特許文献4(特開平9−111536号公報)は、スパイラル捲縮を有する3成分分割型複合繊維のいずれか一成分に、親水性成分を20重量%以下で添加することを提案している。同文献は、親水性成分の一例として脂肪酸アミドのような非イオン界面活性剤を挙げている。
【0007】
特許文献5(特開平9−310259号公報)は、少なくとも一成分に親水性化合物を含有させる分割型複合繊維から得られる極細繊維を、不織布の流れ方向に配向させた不織布を提案している。同文献は、親水性化合物の例として、脂肪酸グリセリド、アルコキシ化アルキルフェノール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤を挙げている。
【0008】
分割型複合繊維の一成分に特定の化合物を添加して、分割性を向上させることもまた提案されている。例えば、特許文献6(特開2005−256250号公報)は、ポリオレフィン成分とポリアミド成分からなる分割型複合繊維のいずれか一成分に脂肪酸アミドを添加した分割型複合繊維を提案している。同文献は、分割性の向上を目的として、脂肪酸アミドが添加されること、および脂肪酸アミドが好ましくはポリアミド成分に添加されることを説明している。
【0009】
【特許文献1】特開平9−31755号公報
【特許文献2】特開平5−239718号公報
【特許文献3】特開平8−311717号公報
【特許文献4】特開平9−111536号
【特許文献5】特開平9−310259号公報
【特許文献6】特開2005−256250号公報
【特許文献7】特開平10−280263号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これまで、種々の樹脂の組み合わせを構成成分とする分割型複合繊維が提案されており、従来にない樹脂の組み合わせで分割型複合繊維を提供し、従来にない風合い、触感、および物性を有する繊維集合物、特に不織布を提供することは常に望まれている。かかる事情に鑑み、本発明は、新しい樹脂の組み合わせで分割型複合繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、これまで販売されていない、ポリブテン−1とポリエステル樹脂との組み合わせに着目した。ポリブテン−1は、他のオレフィンに比べて分子量が大きく、変形に対する復元性、即ち、耐クリープ性に優れており、また、分子量が大きいために、他のオレフィンに比べて他の樹脂との相溶性が小さく、特にポリエステル樹脂との相溶性が小さいと予想され、これをポリエステル樹脂と組み合わせれば、分割性の良好な分割型複合繊維が得られると考えたことによる。さらに、ポリブテン−1は、分子量が大きいために、結晶化度が低く、柔軟な樹脂である。一般的に、分割型複合繊維の分割性は、樹脂が柔軟になるほど低下するが、ポリブテン−1については、その分子量が大きいことを利用すれば、柔軟であるにもかかわらず、分割性の良好な分割型複合繊維が得られると考えた。
【0012】
なお、上記文献は、いずれも、ポリブテン−1とポリエステル樹脂とを構成成分とする分割型複合繊維を、具体的に開示しておらず、ポリブテン−1の紡糸性について何ら言及していない。また、ポリブテン−1とポリエステル樹脂とを構成成分とする分割型複合繊維は、例えば、特許文献7(特開平10−280263号)において、1つの可能な組み合わせとして例示されていると認められるものの、同文献はそれを具体的に使用する例を示しておらず、それを製造する具体的な方法を示していない。
【0013】
本発明者が、ポリブテン−1を入手し、これをポリエステル樹脂を含む成分と複合紡糸して、分割型複合繊維を製造しようとしたところ、溶融紡糸中に繊維同士で融着が生じやすく、繊維化が困難であることがわかった。そこで、本発明者らが検討したところ、ポリブテン−1にアマイド系ワックスを添加すると、ポリエステル樹脂を含む成分とともに分割型複合繊維を形成したときに、紡糸中に融着が生じにくく、繊維形成性が良好であり、かつ、得られる繊維が分割性の点で優れていることを見出した。
【0014】
即ち、本発明は、(i)ポリブテン−1を60質量%以上含み、アマイド系ワックスを0.1質量%以上10質量%以下含む成分と、(ii)ポリエステル樹脂を含む成分とを構成成分として含み、繊維の断面において、少なくとも1つの成分が他の成分により2個以上のセグメントに区分されている、分割型複合繊維を提供する。ここで、ワックスとは、常温では硬い固体であり、高温では液化し、油状になる成分をいう。本発明は、ポリブテン−1がアマイド系ワックスを含むことを特徴とする。アマイド系ワックスは、ポリブテン−1の紡糸性および繊維化を特に良好にする。アマイド系ワックスは、好ましくは脂肪酸アマイドである。脂肪酸アマイドのうち、特に、ステアリン酸アマイドが好ましく用いられる。
【0015】
本発明の分割型複合繊維を構成する成分(i)は、ポリプロピレンをさらに5質量%以上39.9質量%以下含むことが好ましい。成分(i)がポリプロピレンを含む繊維の割繊により形成される極細繊維を含む繊維集合物を、例えば水流交絡処理により形成すると、より柔らかい風合いの繊維集合物が得られる。
【0016】
本発明はまた、本発明の分割型複合繊維の割繊により形成された、繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む、繊維集合物を提供する。この繊維集合物は、本発明の分割型複合繊維が良好に割繊して形成された極細繊維を多数含み、緻密で柔軟である。
【0017】
本発明はまた、本発明の分割型複合繊維の割繊により形成された、繊度0.9dtex以下の極細繊維を含み、繊維同士が交絡している、不織布を提供する。この不織布は、本発明の分割型複合繊維が良好に割繊して形成された極細繊維を多数含み、その極細繊維を含む繊維が互いに絡み合っているので、緻密で柔軟である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分割型複合繊維は、ポリブテン−1とアマイド系ワックスとを含む成分と、ポリエステル樹脂を含む成分とを構成成分として含み、良好に溶融紡糸して製造でき、かつ分割性が良い。よって、この分割型複合繊維を、極細繊維を形成する繊維として用いて、種々の繊維集合物、特に不織布を製造する場合には、外から加える力を比較的小さくして繊維を分割させる場合でも、緻密で、柔軟な風合いを有する繊維集合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の分割型複合繊維は、(i)ポリブテン−1を60質量%以上含み、アマイド系ワックスを0.1質量%以上10質量%以下含む成分と、(ii)ポリエステル樹脂を含む成分とを構成成分として含み、繊維の断面において、少なくとも1つの成分が他の成分により2個以上のセグメントに区分されている構成を有する。各セグメントは、一般に、少なくとも一部が繊維表面に露出し、その露出部分は繊維の長さ方向に連続的に形成される。かかる繊維断面において、成分(i)と成分(ii)とは隣り合っていることが好ましく、それにより、より良好な分割性を達成することができる。
【0020】
本発明の分割型複合繊維は、成分(i)と成分(ii)とから成る2成分系であることが好ましい。そのような構成によれば、繊維断面において、セグメントの界面は、成分(i)と成分(ii)との界面となり、そのような界面のみを有する繊維は、良好な分割性を有する。2成分系の分割型複合繊維の断面構造の例を、図1(a)〜(c)に示す。図において、符号1は、成分(i)を、符号2は成分(ii)を示す。図1(a)および図1(b)に示す繊維は、割繊後の極細繊維の断面が楔形となり、例えば、この分割型複合繊維を用いて製造した繊維集合物(特に不織布)をワイパーとして使用する場合に、拭き取り性をより高くするので、好ましく用いられる。
【0021】
本発明の分割型複合繊維は、2成分系であるものに限定されず、成分(i)および(ii)に加えて他の構成成分として含む、3以上の成分から構成されてよい。あるいは、本発明の分割型複合繊維は、中空を有するものであってよい。その場合、中空が繊維断面に占める割合(即ち、中空率)は、1〜50%程度であることが好ましい。
【0022】
本発明の分割型複合繊維の分割数(即ち、セグメントの総数)は、その繊度および得ようとする極細繊維の繊度に応じて決定され、例えば、4〜30とすることが好ましく、6〜24とすることがより好ましい。本発明の分割型複合繊維は、分割数が小さくなると分割性が向上する傾向にあるが、分割数が少なすぎると、所定の繊度の極細繊維を得るために、分割型複合繊維の繊度を小さくする必要があり、繊維の生産性が悪くなる、または紡糸が困難となることがある。分割数が多すぎると、同様に、紡糸が困難となることがある。
【0023】
本発明の分割型複合繊維を構成する成分の容積比は、特に限定されず、1つの成分を少なくとも2つのセグメントに分割できるだけの量があればよい。例えば、2成分系である場合には、成分(i)/成分(ii)の容積比は、2/8〜8/2であることが好ましく、4/6〜6/4であることがより好ましい。容積比が2/8〜8/2の範囲外であると、紡糸性が低下し、また、良好な分割性を得られないことがある。
【0024】
本発明の分割型複合繊維の分割前の繊度は、1dtex以上8dtex以下の範囲内にあることが好ましい。分割前の繊度を1dtex未満にしようとすると、紡糸が不安定となり、繊維、ひいては不織布の生産性が低下する。同様に、分割前の繊度が8dtexを越えても、紡糸が不安定になる。
【0025】
本発明の分割型複合繊維は、割繊により、0.9dtex未満の極細繊維を形成することが好ましく、0.6dtex未満の極細繊維を形成することがより好ましく、極細繊維の繊度の下限は、好ましくは0.05dtexである。極細繊維の繊度が0.9dtexを越えると、これを含む繊維集合物において、極細繊維に由来する効果、例えば、柔軟な風合いを得られないことがある。
【0026】
次に、本発明の分割型複合繊維を構成する成分(i)および成分(ii)について、説明する。
成分(i)は、ポリブテン−1とアマイド系ワックスとを含む。ポリブテン−1として、例えば、メルトインデックス(JIS−K−7210(条件:190℃、荷重21.18N(2.16kg))が、4g/10min以上30g/10min以下であり、融点(紡糸前)が、100℃以上130℃以下の範囲内にある、ポリブテン−1を使用できる。ポリブテン−1のメルトインデックスは、好ましくは4g/10min以上25g/10min以下の範囲内にあり、より好ましくは7g/10min以上20g/10min以下の範囲内にある。また、ポリブテン−1の融点は、好ましくは110℃以上127℃以下の範囲内にある。これらの物性を有するポリブテン−1は、大きい分子量を有し、具体的には、15万〜50万程度の重量平均分子量を有し、好ましくは17万〜40万程度の重量平均分子量を有し、特にポリエステル樹脂との相溶性が小さいことから、好ましく用いられる。
【0027】
上記物性を有するポリブテン−1は、ポリエステル樹脂とともに、分割型複合繊維の形態で溶融紡糸すると、融着が生じやすく、繊維化が困難である。そこで、その紡糸性を向上させるために、成分(i)にはアマイド(酸アミド)系ワックスが含まれる。アマイド系ワックスは、好ましくは脂肪酸アマイドが用いられる。脂肪酸アマイドは、例えば、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、およびエルカ酸アマイドである。このうち、ステアリン酸アマイドが特に好ましく用いられる。
【0028】
アマイド系ワックスがポリブテン−1の紡糸性を向上させる理由は定かではなく、考えられる理由の1つとして、アマイド系ワックスをポリブテン−1と混合すると、ポリブテン−1がワックスを「はじき」、ワックスが樹脂表面に移動することが挙げられる。その結果、分割型複合繊維において、成分(i)から成るセグメントの表面にワックスが層を形成して、融着の発生を抑制するとともに、分割性を向上させるものと推察される。また、ポリブテン−1は、分子量が大きいために、紡糸時の結晶化速度が遅いところ、アマイド系ワックスを加えることにより、結晶化速度が高められ、それにより融着が防止されるものと考えられる。もっともこの推察により、本発明は何ら限定されるものではない。
【0029】
成分(i)は、ポリブテン−1を60質量%以上含み、アマイド系ワックスを0.1質量%以上10質量%以下含む。ポリブテン−1の占める割合が60質量%未満であると、分割性が悪くなる。アマイド系ワックスの占める割合が0.1質量%未満であると、紡糸の際の融着を有効に防止できず、10質量%を越えると、成分(i)の溶融粘度が小さくなりすぎ、良好な繊維が得られない。成分(i)は、アマイド系ワックスを、好ましくは0.3質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下含む。
【0030】
成分(i)は、さらにポリプロピレンを、5質量%以上39.9質量%以下含むことが好ましい。成分(i)がポリプロピレンを含むと、例えば、分割型複合繊維を水流交絡処理により分割させた後、繊維を加熱して乾燥させるときに、繊維の硬化の度合いが小さくなる傾向にある。また、ポリブテン−1は紡糸温度を270℃以上にしたときに、その粘度が急激に低下するが、ポリプロピレンを添加すると、その低下の度合いが抑えられ、繊維断面の管理の点で好都合である。
【0031】
成分(i)は、ポリブテン−1、アマイド系ワックス、および必要に応じて添加されるポリプロピレンを、公知の混合装置を用いて混合することにより得られる。公知の装置は、例えば、ヘンシェルミキサーおよびスーパーミキサー等である。あるいは、ポリブテン−1、アマイド系ワックス、および必要に応じて添加されるポリプロピレンを、公知の単軸または2軸押出機等で溶融混合して、繊維化の前に、成分(i)をマスターバッチにすると好都合である。
【0032】
次に成分(ii)について説明する。ポリエステル樹脂を50質量%以上含むことが好ましい。ポリエステル樹脂の割合が小さいと、分割型複合繊維の割繊率が小さくなることがある。より好ましくは、ポリエステル樹脂は70質量%以上含まれ、さらにより好ましくは80質量%以上含まれ、最も好ましくは100質量%含まれる。
【0033】
ポリエステル樹脂は、汎用されているものであってよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートおよびポリ乳酸から、1または2以上選択される。本発明の不織布は、好ましくは、ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレートを含む成分を、分割型複合繊維の一成分として含む。ポリエチレンテレフタレートは、最も汎用的で、かつ硬質であり、繊維化したときに、捲縮の固定性が良く、カード性に優れることによる。
【0034】
次に、本発明の分割型複合繊維の製造方法を説明する。ここでは、成分(i)と成分(ii)とから成る2成分系の分割型複合繊維の製造方法を説明する。まず、成分(i)と成分(ii)を準備する。成分(i)は前述のようにマスターバッチの形態で提供されることが好ましい。次いで、成分(i)と成分(ii)とを、所望の繊維断面構造が得られるように適切な複合紡糸ノズルを用いて、常套の溶融紡糸機を用いて、複合紡糸する。紡糸温度(ノズル温度)は、220℃以上320℃以下とすることが好ましい。
【0035】
紡糸フィラメントの繊度は、1dtex以上30dtex以下の範囲内にあることが好ましい。紡糸フィラメントの繊度が1dtex未満であると、紡糸時の糸切れが多発することがある。紡糸フィラメントの繊度が30dtexを越えると、分割後の繊度が大きくなって、分割型複合繊維の特徴を得にくい。
【0036】
次いで、紡糸フィラメントを公知の延伸処理機を用いて延伸処理して、延伸フィラメントを得る。延伸処理は、延伸温度を40℃以上110℃以下の範囲内にある温度に設定して実施することが好ましい。延伸倍率は、2倍以上とすることが好ましく、3〜5倍とすることがより好ましい。延伸方法は、温水または熱水中で実施する湿式延伸法であることが好ましい。あるは、延伸は、乾式延伸法で実施してもよい。
【0037】
得られた延伸フィラメントには、所定量の繊維処理剤が付着させられ、クリンパー(捲縮付与装置)で機械捲縮が与えられる。捲縮数は、9山/25mm以上19山/25mm以下の範囲内にあることが好ましい。捲縮数が9山/25mm未満であると、カードでのシリンダーへの巻き付き及び風綿が発生しやすいために、高速カード通過性が悪い。さらに、繊維同士の交絡度合いを示すウェブ強力も低く、カード工程でのトラブルが発生し易い傾向にある。捲縮数が19山/25mmを超えると、カード工程での開繊不良によるネップ、クラウディなど地合いムラが発生しやすくなる。捲縮数は、10山/25mm以上17山/25mm以下の範囲内にあることがより好ましく、11山/25mm以上17山/25mm以下の範囲内にあることがさらにより好ましい。
【0038】
捲縮付与後のフィラメントに80℃以上110℃以下の範囲内にある温度で、数秒〜約30分間、乾燥処理を施し、繊維処理剤を乾燥させる。その後、フィラメントは用途等に応じて、繊維長が3mm〜100mmとなるように切断される。本発明の分割型複合繊維は、必要に応じて長繊維の形態で使用してよい。
【0039】
本発明は、ポリブテン−1と、ポリエステル樹脂以外の他の樹脂とを組み合わせた分割型複合繊維の製造に適用できる。ポリブテン−1は、分子量が大きく、他の樹脂との相溶性が小さいため、これを例えば、ポリエチレンおよびポリメチルペンテンのようなポリオレフィン樹脂、ナイロン6およびナイロン66のようなポリアミド樹脂、ポリカーボネート、またはポリスチレンと複合紡糸して、分割型複合繊維の形態で得ることができれば、良好な分割性を有する繊維が得られることによる。ポリブテン−1とアマイド系ワックスとを混合することにより、前述のように繊維形成性が向上するので、これら他の樹脂とも分割型複合繊維を良好に形成することができ、良好な分割性を達成することができる。
【0040】
本発明の分割型複合繊維は、例えば高圧水流を噴射する水流交絡処理により、極細繊維を形成する。この極細繊維を含む繊維集合物は、柔軟で、緻密な構成を有するものとなる。繊維集合物は、例えば、織物、編物、および不織布である。
【0041】
繊維集合物が不織布である場合、不織布は、極細繊維を含み、かつ繊維同士が水流交絡処理により交絡されて成ることが好ましい。そのような不織布においては、本発明の分割型複合繊維の分割性が良好であることに起因して、極細繊維が多く含まれ、かつ繊維同士が良好に交絡している。よって、この不織布は、緻密で、柔軟な風合いを有する。不織布の緻密さは、例えば、通気度の大小で知ることができる。また、この不織布は、その低伸度モジュラス(例えば、10%伸長モジュラスおよび/または20%伸長モジュラス)が高くなる傾向にある。
【0042】
また、この不織布は、その表面がざらつき感を有し、不織布を対象物にあてて擦るときに、対象物との間に適度な抵抗を生じさせ、対象物を把持する感覚(グリップ感)を使用者に与える。その理由は定かではないが、ポリブテン−1から成る極細繊維を含むことによると考えられる。よって、この不織布は、極細繊維よるミクロな汚れの拭き取り性と、ざらつき感を有する表面が対象物に強く付着して汚れを掻き取るので、優れた拭き取り性を示すワイパーとして使用するのに適している。
【0043】
不織布は、本発明の分割型複合繊維またはおよび必要に応じて混合される他の繊維を用いて、繊維ウェブを作製し、これに水流交絡処理を施すことにより、製造することが好ましい。繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、クリスクロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブ、ならびにスパンボンドウェブ等から選択されるいずれの形態であってもよい。繊維ウェブは、水流交絡処理による交絡性を考慮すると、カードウェブであることが好ましい。
【0044】
水流交絡処理は、繊維ウェブを、搬送支持体の上に載置し、ウェブの片面または両面に水流を噴射して実施する。このとき、分割型複合繊維が割繊して極細繊維が形成されるとともに、繊維同士が交絡して、ウェブが一体化され、不織布が得られる。水流交絡処理条件は、繊維ウェブの目付および分割型複合繊維の所望の割繊度合、ならびに搬送支持体の速度等に応じて適宜設定することができる。例えば、孔径0.05mm以上0.5mm以下のオリフィスが、0.5mm以上1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上10MPa以下の水流を、繊維ウェブの表裏面側からそれぞれ1〜4回ずつ噴射するとよい。水圧が1MPa以下であると、繊維同士の交絡が不十分となり、得られた不織布において毛羽抜けが生じやすくなることがある。水圧が10MPaを越えると、繊維同士の交絡が強固になりすぎて、繊維の自由度が低下し、風合いが硬くなることがある。
【0045】
水圧は、より好ましくは2MPa以上9MPa以下であり、さらにより好ましくは2MPa以上7MPa以下である。本発明の分割型複合繊維を使用することにより、水圧6MPa以下程度にしても、繊維同士が良好に交絡した不織布を製造できる。この水圧は、他の分割型複合繊維を使用する場合と比較して低い。即ち、分割型複合繊維の割繊、およびこれに由来する繊維同士の交絡は、低い水圧で実現可能であるために、本発明の不織布は、20%伸長モジュラスが大きいにもかかわらず、高い自由度を有するものとなる。
【0046】
本発明の不織布は、本発明の分割型複合繊維を30質量%以上含む繊維ウェブを、水流交絡処理に付して得られたものであることが好ましい。本発明の分割型複合繊維の含有量が30質量%未満であると、不織布において本発明の分割型複合繊維に由来する繊維の量が少なくなり、緻密な不織布を得られないことがある。
【0047】
不織布は、本発明の分割型複合繊維以外の他の繊維を含む場合、当該他の繊維は特に限定されない。他の繊維として、コットン、パルプおよび麻などの天然繊維、ビスコースレーヨン、溶剤紡糸セルロースおよびキュプラなどの再生繊維、ならびに合成樹脂から成る単一繊維および複合繊維が挙げられる。合成樹脂から成る単一または複合繊維は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンサクシネートなどのポリエステル、ナイロン6およびナイロン66などのポリアミド、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ならびにアクリル系樹脂から選択される、1または複数の樹脂で構成される。他の繊維は、本発明の分割型複合繊維から成る層に積層されていてよい。
【0048】
不織布は、水流交絡不織布以外の不織布、例えば、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、またはスパンボンド不織布として提供されてよい。
【0049】
本発明の分割型複合繊維を含む不織布は、ワイパー、研磨用の基布、クッション材、および各種フィルターの材料として使用される。特に、この不織布は、極細繊維を含み、繊維の自由度が高く、20%伸長モジュラスが大きいことから、拭き取り性に優れ、拭き取り時のよれが生じにくいワイパーとして、好ましく使用される。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の内容について実施例を挙げて具体的に説明する。
【0051】
<繊維の製造>
本発明の分割型複合繊維を製造した。得られた分割型複合繊維の強度、伸度、分割性およびカード性は、次のようにして測定した。
(強度、伸度)
JIS−L−1015に準じ、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとしたときの繊維切断時の荷重値および伸びを測定し、それぞれから強度および伸度を求めた。
【0052】
(分割性)
目付70g/mのパラレルカードウェブを得るように、カード機を通過させた後、パラレルカードウェブを電子顕微鏡で観察し、分割型複合繊維の分割の状態を観察した。評価基準は次のとおりである。
4:分割している繊維(一部分割している繊維を含む)が多い。
3:分割している繊維が半分程度である。
2:分割している繊維があまり無い。
1:ほとんど分割していない。
【0053】
(カード性)
目付70g/mのパラレルカードウェブを得るように、カード機を通過させたときのカード性を、ネップの発生、捲縮、静電気の発生、および融着の状態により評価した。それぞれの評価基準は次のとおりである。
ネップの発生
◎:発生しない。
○:少し発生する。
×:多く発生する。
捲縮
◎:カード機から良好にウェブが排出され、ウェブとして巻き取ることができる。
○:ウェブが伸ばされて垂れ気味であるが、問題なくウェブを巻き取ることができる。
×:捲縮が弱く、ウェブとして巻き取ることが困難である。
【0054】
静電気の発生
◎:発生しない。
○:静電気でウェブが少し広がり気味になる。
×:静電気の発生のためにウェブとして巻き取ることが困難である。
融着の状態
◎:融着した繊維が殆どない。
○:融着した繊維が少しある。
×:融着した繊維が多くある。
【0055】
[試料1]
成分(i)と、成分(ii)とから成る、図1(b)に示すような、分割数が16である繊維断面を有する分割型複合繊維を製造した。成分(i)として、融点が124℃、メルトインデックスが15であるポリブテン−1(サンアロマー(株)製、商品名DP0401M)に、アマイド系ワックスとしてのステアリン酸アマイド(花王(株)製、製品名脂肪酸アマイドS)を混合したものを用意した。成分(i)において、ステアリン酸アマイドは、全体の2質量%となるように混合した。第2成分として、融点が256℃、IV値が0.64である、ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、商品名T−200E)を用意した。
【0056】
これらの2つの成分を、分割型複合ノズルを用い、成分(i)/成分(ii)の複合比(容積比)を5/5とし、紡糸温度を300℃として溶融押出し、繊度6.7dtexの紡糸フィラメントを得た。紡糸中、フィラメント同士の融着は見られず、良好に紡糸できた。
【0057】
前記紡糸フィラメントを80℃の熱水中で2.15倍に延伸し、繊度3.8dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤(ミヨシ油脂(株)製、商品名G500)を付与した後、スタッフィングボックス型クリンパーにて、15山/25mmの機械捲縮を延伸フィラメントに付与した。そして、100℃に設定したエアスルー熱処理機にて約15分間、弛緩した状態で乾燥処理を施し、フィラメントを51mmの繊維長に切断して、分割型複合繊維を短繊維の形態で得た。
【0058】
[試料2]
成分(i)として、試料1で使用したものと同じポリブテン−1およびステアリン酸アマイドに加えて、融点が160℃であり、メルトフローレート(JIS−K−7210(条件:230℃、荷重21.18N(2.16kg))が25であるポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名SA03A)が混合されたものを使用したこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、表1に示す条件で分割型複合繊維を得た。成分(i)において、ワックス成分の占める割合は2質量%、ポリプロピレンの占める割合は10質量%とした。この試料の製造においても、紡糸中、フィラメント同士の融着は見られず、良好に紡糸できた。
【0059】
[試料3]
紡糸フィラメントの繊度を3.3dtexとし、延伸後のフィラメントの繊度を2.4dtexとしたこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、表1に示す条件で分割型複合繊維を得た。この試料の製造においても、紡糸中、フィラメント同士の融着は見られず、良好に紡糸できた。
【0060】
[試料4]
試料2の製造で使用した成分(i)を使用し、図1(a)に示すような、分割数が8である繊維断面を有する分割型複合繊維を製造した。試料4は、成分(i)の組成および分割型複合ノズルを変えたこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、表1に示す条件で製造した。この試料の製造においても、紡糸中、フィラメント同士の融着は見られず、良好に紡糸できた。
【0061】
[試料5]
成分(i)に代えて試料1の製造に用いたポリブテン−1のみから成る成分を使用したこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、表1に示す条件で製造した。この試料の製造においては、紡糸中、フィラメント同士の融着が著しく、紡糸したフィラメントの束が1本の塊になってしまい、紡糸後の延伸を実施できなかった。
【0062】
[試料6]
成分(i)に代えて、ポリブテン−1を90質量%とポリプロピレンを10質量%混合したものを使用したこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、表1に示す条件で製造した。ポリブテン−1は試料1の製造に使用したものと、ポリプロピレンは試料2の製造に使用したものと同じである。この試料の製造においては、紡糸中、試料5ほどではないが、フィラメント同士の融着が著しく、紡糸後の延伸を実施できなかった。
【0063】
[試料7]
成分(i)に代えて、ポリブテン−1を98質量%と、ワックス成分として12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(日東化成工業(株)製、商品名MS−6)を2質量%混合したものを使用したこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、表1に示す条件で製造した。ポリブテン−1は試料1の製造に使用したものと同じである。この試料の製造においては、試料5と同様、紡糸中、フィラメント同士の融着が著しく、紡糸したフィラメントの束が1本の塊になってしまい、紡糸後の延伸を実施できなかった。
試料1〜4として得た短繊維の物性を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
試料1−4は、紡糸性に優れ、融着した繊維が殆ど無く、分割性も良好であった。特に、試料1は、分割性が良好であった。試料2は、成分(i)がポリブテン−1とステアリン酸アマイドに加えて、ポリプロピレンを含み、試料1と比較して分割性は低かったものの、カード性が良好であり、取り扱いやすいものであった。試料3も試料1と比較してカード通過性は良好であったが、繊度が小さいため、試料2と比較して、ネップが生じる傾向にあった。試料4の成分(i)は、試料2のそれと同じであるが、分割数が小さかったために、分割性が良好になったものと考えられる。
【0066】
試料5および6は紡糸できなかったことから、アマイド系ワックスの添加が紡糸性の向上に寄与していることがわかる。また、アマイド系ワックスでないワックスをポリブテン−1と混合したものを使用した試料7も、同様に紡糸できなかったことから、ワックス成分の中でもアマイド系ワックスがポリブテン−1の紡糸性向上に有効であることがわかる。
【0067】
<不織布の製造>
試料1、2、4として製造した分割型複合繊維を使用して、不織布を製造した。不織布の厚み、強力、10%伸長モジュラス、および20%伸長モジュラスは、以下のようにして測定した。
[厚み]
厚み測定機(商品名:THICKNESS GAUGE モデルCR−60A (株)大栄科学精器製作所製)を用い、試料1cmあたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定した。
【0068】
[強力、伸度、10%伸長モジュラス、20%伸長モジュラス]
JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験に付し、切断時の荷重値および伸長率を測定し、それぞれ強力および伸度とした。引張試験は、不織布の機械方向(MD方向)および横方向(CD方向)のそれぞれについて実施した。10%伸長モジュラスおよび20%伸長モジュラスは、試料をそれぞれ、10%および20%伸長させるのに必要な強力として測定した。
【0069】
[試料A]
試料1の分割型複合繊維と、レーヨン(繊維長40mm、繊度1.7dtex、レーヨン(ダイワボウレーヨン(株)製 商品名CD)とを、質量比6:4(分割型複合繊維:レーヨン)で混綿し、目付約60g/mのパラレルカードウェブを製造し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.13mmのオリフィスが、1mm間隔で設けられたノズルを用いて、ウェブの一方の面に水圧3.0MPaの柱状水流を1回噴射し、他方の面に水圧3.0MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。水流交絡処理により分割型複合繊維が割繊された極細繊維が形成され、かつ繊維同士が交絡した。次いで、交絡後の繊維ウェブ(不織布)を、エアスルー熱処理機を用いて乾燥させ、不織布を得た。乾燥温度は、100℃、乾燥時間は60秒とした。
【0070】
[試料B、C]
試料2(試料B)および試料4(試料C)の分割型複合繊維をそれぞれ、レーヨンと、質量比6:4(分割型複合繊維:レーヨン)で混綿したこと以外は、試料Aを製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、不織布を得た。
【0071】
[試料D〜F]
試料1(試料D)、試料2(試料E)および試料4(試料F)の分割型複合繊維をそれぞれ、レーヨンと、質量比6:4(分割型複合繊維:レーヨン)で混綿し、水流交絡処理の際の水圧を、一方の面については3.0MPa、他方の面については3.5Mpaとしたこと以外は、試料Aを製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、不織布を得た。
【0072】
[試料G]
試料2の分割型複合繊維を用いて、目付約50g/mのパラレルカードウェブを作製したこと以外は、試料Aを製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、不織布を得た。
【0073】
[試料H]
ポリエチレンから成る成分と、ポリエチレンテレフタレートから成る成分とから成る2成分系の分割型複合繊維であって、繊度2.2dtex、繊維長51mmの図1(a)に示すような、分割数8の分割型複合繊維と、レーヨンとを、質量比6:4(分割型複合繊維:レーヨン)で混綿したこと以外は、試料Aを製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、不織布を得た。
【0074】
[試料I]
試料Gの製造に用いた分割型複合繊維と同じ繊維と、レーヨンとを、質量比6:4(分割型複合繊維:レーヨン)で混綿し、水流交絡処理の際の水圧を、一方の面については3.0MPa、他方の面については3.5Mpaとしたこと以外は、試料Aを製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、単層構造の不織布を得た。
【0075】
[試料J]
試料Gの製造に用いた分割型複合繊維と同じ繊維を用いて、目付約50g/mのパラレルカードウェブを作製したこと以外は、試料Aを製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、不織布を得た。
得られた不織布の物性を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
試料A〜Cと試料Hとの比較、試料D〜Fと試料Iとの比較、および試料Gと試料Jとの比較より、本発明の分割型複合繊維を用いて製造した不織布は、同じ条件で製造した従来の分割型複合繊維を用いて作製したものよりも、10%伸長モジュラスおよび/または20%伸長モジュラスが大きい。これは、本発明の分割型複合繊維の良好な分割性および交絡性に起因すると考えられる。さらに、試料Gの通気度(フラジール型試験機を用い、JIS−L−1096 8.27 A法に準じて測定した)は、190cm/cm/secであり、試料Hの通気度は、230cm/cm/secであった。このこともまた、本発明の分割型複合繊維が良好に分割して、緻密な構成の不織布を与えることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の分割型複合繊維は、ポリブテン−1とポリエステル樹脂の組み合わせから成る、良好に紡糸可能であり、良好な分割性を有するため、極細繊維を形成する繊維として好ましく用いられ、種々の繊維集合物、特に不織布を製造するのに適している。また、この分割型複合繊維を用いて例えば水流交絡処理により製造される不織布は、極細繊維を多く含み、繊維同士が良好に交絡しているので、緻密且つ柔軟であり、ワイパーとして使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の分割型複合繊維における繊維断面の一例を示す。
【符号の説明】
【0080】
1 成分(i)
2 成分(ii)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリブテン−1を60質量%以上含み、アマイド系ワックスを0.1質量%以上10質量%以下含む成分と、(ii)ポリエステル樹脂を含む成分とを構成成分として含み、繊維の断面において、少なくとも1つの成分が他の成分により2個以上のセグメントに区分されている、分割型複合繊維。
【請求項2】
アマイド系ワックスが、ステアリン酸アマイドである、請求項1に記載の分割型複合繊維。
【請求項3】
成分(i)が、ポリプロピレンをさらに5質量%以上39.9質量%以下含む、請求項1または2に記載の分割型複合繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分割型複合繊維の割繊により形成された、繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む、繊維集合物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分割型複合繊維の割繊により形成された、繊度0.9dtex以下の極細繊維を含み、繊維同士が交絡している、不織布。

【図1】
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【公開番号】特開2007−284839(P2007−284839A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115775(P2006−115775)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000002923)大和紡績株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】