説明

分割式カウルパネル

【課題】各部材相互間の位置合わせが容易でありかつ組立時の作業性が良好な分割式カウルパネルを提供する。
【解決手段】車両のフロントガラス前端部に備えられ、車幅方向に沿って分割された第1の部材10、及び、第2の部材20を有する分割式カウルパネル1を、第1の部材10に対して第2の部材20を車両の前後方向にガイドする前後方向ガイド部15a,15b,24a,24bと、第1の部材10に対する第2の部材20の車両の上下方向の移動を制限しかつ第1の部材10に対する第2の部材20の前後方向の移動を許容する上下方向移動制限部16a,16b,25a,25bとを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のフロントガラスの先端部と、フロントフードの後端部との間に装着されるカウルパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば乗用車等の車両において、車体のフロントガラスの先端側とフロントフードの後端部との間の部分には、フロントワイパーユニット、室内に導入する空気の取入口、ボンネットのヒンジ部等が設けられ、これらを保護しつつ、車両の外観を向上するために、カウルパネルを装着してカバーすることが知られている。
【0003】
カウルパネルは、一般に、樹脂系の材料によって形成され、フロントガラスの略全幅にわたって設けられるが、その形状は上述した各部材との干渉を防止するため複雑であり、かつ、車幅方向に沿った寸法が大きいため、製造を容易にするため、車幅方向に複数に分割したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような分割式のカウルパネルは、その接合部において、車両の前後方向、車幅方向、上下方向にずれが生じる場合があり、このようなずれによってカウルパネルの表面に段差や隙間が形成されると外観品質が損われる。
これに対して、従来、分割式カウルパネルは、その接合部にピン状の連結部材を挿入することによって、左右の半部が相互に引き寄せられて隙間を減少するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2)。
また、分割式カウルパネルは、その接合面を車両の前後方向及び車幅方向に対してそれぞれ傾斜して配置し、部材に膨張収縮が生じた際に、ずれを目立たないようにしたものが知られている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平10−211853号公報
【特許文献2】特開平10−211891号公報
【特許文献3】特開2000−344138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分割式のカウルパネルは、車両の製造時等に、車両の前後方向、車幅方向、上下方向それぞれにおける位置合わせをしながら各部材の接合をしなければならず、その作業が煩雑である。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、各部材相互間の位置合わせが容易でありかつ組立時の作業性が良好な分割式カウルパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1の発明は、車両のフロントガラス前端部に備えられ、車幅方向に沿って分割された第1の部材、及び、第2の部材を有する分割式カウルパネルにおいて、前記第1の部材に対して前記第2の部材を前記車両の前後方向にガイドする前後方向ガイド部と、前記第1の部材に対する前記第2の部材の前記車両の上下方向に移動を制限しかつ前記第1の部材に対する前記第2の部材の前記前後方向の移動を許容する上下方向移動制限部とを備える分割式カウルパネルである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の分割式カウルパネルにおいて、前記前後方向ガイド部は、前記第1の部材、前記第2の部材の一方に形成され、前記車両の前後方向に延在する溝部と、前記第1の部材、前記第2の部材の他方に設けられ、前記溝部に挿入される突起部とを備えることを特徴とする分割式カウルパネルである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の分割式カウルパネルにおいて、前記上下方向移動制限部は、前記第1の部材、前記第2の部材の一方が他方に対向する端面に形成された開口部と、前記第1の部材、前記第2の部材の他方に設けられ、前記開口部に係止される係止部とを備えることを特徴とする分割式カウルパネルである。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の分割式カウルパネルにおいて、前記第1の部材と前記第2の部材とが分離した第1の位置と、前記前後方向ガイド部及び前記上下方向移動制限部がそれぞれ利用可能な第2の位置との間において、前記第1の部材に対する前記第2の部材の相対移動をガイドする装着ガイド部を備えることを特徴とする分割式カウルパネルである。
請求項5の発明は、請求項4に記載の分割式カウルパネルにおいて、前記前後方向ガイド部及び前記装着ガイド部を連続して形成したことを特徴とする分割式カウルパネルである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前後方向ガイド部及び上下方向移動制限部によって、車幅方向及び上下方向の位置決めがそれぞれ行われるから、前後方向ガイド部によって車両の前後方向の位置のみを調節することによって、第1の部材、第2の部材相互の位置決めを容易に行うことができる。
また、装着ガイド部を設けているから、これによってガイドされた状態で第1の部材、第2の部材を接合することによって、前後方向ガイド部及び上下方向移動制限部を容易に利用することができる。
さらに、装着ガイド部を前後方向ガイド部と連続して形成しているから、第1の部材、第2の部材の接合からその位置合わせまでを連続した動作で行うことができ、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、各部材相互間の位置合わせが容易でありかつ組立時の作業性が良好な分割式カウルパネルを提供するという目的を、左側パネルに対して右側パネルを車両の前後方向にガイドするガイド溝及びボスと、左側パネルの右側パネルに対する上下方向の移動を制限しつつ前後方向の移動を許容する爪部及び開口を設けることによって実現した。
【実施例】
【0010】
以下、本発明を適用した分割式カウルパネルの実施例について、図面等を参照して説明する。
図1は、分割式カウルパネル1の分割部の拡大断面図である。なお、図中において、X,Y,Z方向は、それぞれ車両の前後方向、車幅方向、上下方向を示している。
分割式カウルパネル1は、車幅方向に2分割され、左側パネル10と、右側パネル20とを有するものである。
【0011】
左側パネル10、右側パネル20は、それぞれ例えば樹脂材料によって形成され、車幅方向における車両の略中央部において接合されるようになっている。
左側パネル10、右側パネル20は、表面部11,21と、端面部12,22と、フロントガラス嵌合部13,23(23は図示しない)とを備えている。
【0012】
表面部11,21は、その一方の面が車両の上方に向いた状態で車両の外部に露出するものであって、分割式カウルパネル1の下方に収容される図示しない各部材や、車両のデザインに応じて形成された凹凸が形成されている。
端面部12,22は、左側パネル10、右側パネル20に、それぞれ他方のパネル側に対向して設けられ、車幅方向に対して垂直な平面状に形成されている。
フロントガラス嵌合部13,23は、左側パネル10,右側パネル20の後縁部に設けられ、略車幅方向に延在する溝部であって、図示しないフロントガラスの前端縁部が装着されるものである。
【0013】
左側パネル10は、その端面部12の下端部から、右側パネル20側に車幅方向に突き出した突出部14を備えている。この突出部14は、車両の前後方向に離間して設けられた1対の平面部14a,14bを備えている。平面部14a,14bは、それぞれ略水平に配置され、車両の前方側に設けられた平面部14aは、後方側の平面部14bよりも高い位置に配置されている。
【0014】
平面部14a,14bは、それぞれガイド溝15a,15bを備えている。
ガイド溝15a,15bは、それぞれの車両後方側の領域Rでは、それぞれ車両の前後方向に沿って延在し、その後端部は突き当たりとなっている。
一方、ガイド溝15a,15bは、それぞれの車両前方側の領域Fでは、車両の前後方向に対して傾斜した方向に延在し、車両後方側の領域に対して屈曲している。
車両前方側の領域では、ガイド溝15a,15bは、その端面部12からの距離が、車両の前方側に向かうにつれて徐々に大きくなるように配置されている。そして、ガイド溝15aの車両前方側の端部は開放され、また、ガイド溝15bの車両前方側の端部は、突き当たりとなっている。
なお、ガイド溝15bは、これに挿入されるボス24bの前後方向における位置を規制する前後方向規制形状が備えられている。この前後方向規制形状は、例えば、ガイド溝15bの一方の側面から他方の側面側に突き出して形成された突起部である。
【0015】
また、左側パネル10の端面部12は、1対の開口16a,16bが形成されている。
開口16a,16bは、それぞれ矩形に形成され、車両の前後方向に離間して設けられている。
【0016】
右側パネル20は、ボス24a,24bと、爪部25a,25bをそれぞれ備えている。
ボス24a,24bは、それぞれ右側パネル20の表面部21の下側の面から突き出して形成され、車両の前後方向に離間して設けられ、それぞれ左側パネル10のガイド溝15a,15bに挿入されガイドされる突起部である。
ボス24a,24bは、それぞれその長手方向を略鉛直に配置された円柱状に形成され、その外周面に放射状に配置された複数のリブを備え、右側パネル20と一体に形成されている。
【0017】
爪部25a,25bは、端面部22から、左側パネル10側に車幅方向に突き出して形成されている。この爪部25a,25bは、上述したボス24a,24bが、それぞれガイド溝15a,15bの車両後方側の領域Rにそれぞれ挿入されているときに、左側パネル10の開口16a,16bにそれぞれ係止され、左側パネル10と右側パネル20との上下方向の相対移動を制限する係止部である。
なお、これらの開口16a,16bは、その車両の前後方向における長さが、爪部25a,25bよりも大きく形成され、その余裕の範囲内において、右側パネル20が左側パネル10に対して車両の前後方向に移動することを許容するようになっている。
【0018】
次に、上述した本実施例の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
図2は、比較例の分割式カウルパネルの分割部の分解図である。なお、比較例において、上述した実施例と同様の部分については、同じ符号を付して説明を省略し、相違点について説明する。
比較例の分割式カウルパネル2においては、ガイド溝15a,15bは、車両の前後方向に沿って直線状に延在し、実施例のように車両の前後方向に対して傾斜した部分は設けられていない。また、実施例に備えられている左側パネル10の開口16a,16b、及び、右側パネル20の爪部25a,25bは、比較例においては設けられていない。
【0019】
比較例の分割式カウルパネル2を組み立てる場合、まず、右側パネル20のボス24a,24bを、それぞれ対応するガイド溝15a,15bに挿入し、これによって、左側パネル10と右側パネル20との車幅方向における位置決めがなされる。
次に、ボス24a,24bを、ガイド溝15a,15bの長手方向に沿って移動させ、右側パネル20を左側パネル10に対して車両の前後方向に相対移動させることによって、これら相互間の前後方向における位置合せを行う。
最後に、ボス24a,24bがガイド溝15a,15bに挿入される深さを調節することによって、左側パネル10と右側パネル20との上下方向における位置合せを行う。
しかし、この比較例の場合には、左側パネル10と右側パネル20との上下方向の位置決めは、ボス24a,24bとガイド溝15a,15bとの摩擦のみに依存しているから、不安定でありずれが生じやすい。また、前後方向、上下方向のいずれか一方の位置合せを行う場合に、他方の位置に影響が及びやすく、ずれが生じやすい。
【0020】
一方、実施例の場合は、ボス24a,24bを、それぞれ対応するガイド溝15a,15bの車両前方側の領域Fに挿入した状態において、右側パネル20をガイド溝15a,15bの傾斜部分の長手方向に沿って左側パネル10側に押圧することによって、右側パネル20の爪部25a,25bが、それぞれ左側パネル10の開口16a,16bに挿入され、その弾性力によって係止される。
そして、ボス24a,24bが、ガイド溝15a,15bの車両後方側の領域R内に配置された状態において、右側パネル20を左側パネル10に対して、車両の前後方向を規制することによって、これらの前後方向の位置合せを行う。
【0021】
以上のように、本実施例によれば、左側パネル10と右側パネル20とは、ガイド溝15a,15bにボス24a,24bがガイドされることによって、車幅方向の位置決めがなされ、また、開口16a,16bに爪部25a,25bが係止されることによって、上下方向の位置決めがなされているから、調整を行うのは車両の前後方向のみでよいから、位置決め作業が容易であり、ずれが生じにくい。
また、ガイド溝15a,15bの車両の前後方向に対して傾斜した部分によって、ボス24a,24bをガイドしながら右側パネル20を左側パネル10に装着することによって、容易にボス24a,24bをガイド溝15a,15bの車両後方側の領域Rに配置し、かつ、爪部25a,25bを開口16a,16bに係止することができ、さらに、上述した位置決め作業を、連続した動作によって行うことができるから、作業性が向上する。
さらに、組立に際し、例えばクリップ等の別部品が必要なく、さらに、組立後にガイド溝、ボス、爪部等が露出しないから、外観も向上することができる。
【0022】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)前後方向ガイド部及び上下方向移動制限部の構成は、上述した実施例のものに限定されず、同様の機能を有する他の構成によって置換してもよい。
(2)上述した実施例は、車幅方向の中央部において2分割されたものであるが、これに限らず、分割位置や、分割個数は適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した分割式カウルパネルの実施例における分割部の分解図である。
【図2】本発明の比較例である分割式カウルパネルの分割部の分解図である。
【符号の説明】
【0024】
1 分割式カウルパネル
10 左側パネル
12 端面部
15a,15b ガイド溝
16a,16b 開口
20 右側パネル
22 端面部
24a,24b ボス
25a,25b 爪部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラス前端部に備えられ、車幅方向に沿って分割された第1の部材、及び、第2の部材を有する分割式カウルパネルにおいて、
前記第1の部材に対して前記第2の部材を前記車両の前後方向にガイドする前後方向ガイド部と、
前記第1の部材に対する前記第2の部材の前記車両の上下方向の移動を制限しかつ前記第1の部材に対する前記第2の部材の前記前後方向の移動を許容する上下方向移動制限部と
を備える分割式カウルパネル。
【請求項2】
請求項1に記載の分割式カウルパネルにおいて、
前記前後方向ガイド部は、前記第1の部材、前記第2の部材の一方に形成され、前記車両の前後方向に延在する溝部と、前記第1の部材、前記第2の部材の他方に設けられ、前記溝部に挿入される突起部とを備えること
を特徴とする分割式カウルパネル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の分割式カウルパネルにおいて、
前記上下方向移動制限部は、前記第1の部材、前記第2の部材の一方が他方に対向する端面に形成された開口部と、前記第1の部材、前記第2の部材の他方に設けられ、前記開口部に係止される係止部とを備えること
を特徴とする分割式カウルパネル。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の分割式カウルパネルにおいて、
前記第1の部材と前記第2の部材とが分離した第1の位置と、前記前後方向ガイド部及び前記上下方向移動制限部がそれぞれ利用可能な第2の位置との間において、前記第1の部材に対する前記第2の部材の相対移動をガイドする装着ガイド部を備えること
を特徴とする分割式カウルパネル。
【請求項5】
請求項4に記載の分割式カウルパネルにおいて、
前記前後方向ガイド部及び前記装着ガイド部を連続して形成したこと
を特徴とする分割式カウルパネル。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−224758(P2006−224758A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39278(P2005−39278)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】