説明

分割方法

【課題】穴開け加工が施された後に焼結が行われたセラミック基板に対して、穴の中心間を高精度に繋ぐように切断して分割することができる分割方法を提供する。
【解決手段】穴開け加工されたセラミック基板1の表面に保護膜10を形成してから、撮像手段30で表面側を撮像して各穴3の座標位置を検出して穴位置情報として記憶し、さらに穴位置情報に基づいて穴3の中心座標3Aを求めて記憶する。そして、隣り合う穴3の中心座標3Aを直線で結ぶ一次関数を算出し、該一次関数に基づいて隣り合う穴3の中心座標3Aを次々と繋ぐようにレーザビームLBを照射してアブレーション加工を施し、セラミック基板1をチップ7に分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板等を複数に分割する方法に係り、特に、分割予定ラインに沿って複数の穴開け加工が施された後に焼結が行われたセラミック基板を、該穴を繋ぐように分割予定ラインに沿って分割する分割方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の電子部品の製造分野においては、薄板状の基板等のワークをダイシングして多数のチップを得るにあたり、ワークに形成した分割予定ラインに沿って切削ブレードを切り込ませる切削加工が採用されている。通常の半導体ウェーハにおいては、切削すべき分割予定ラインと切削ブレードとを位置合わせするアライメントと呼ばれる作業を行ってから、アライメントされた分割予定ラインを切削し、その後は、分割予定ラインの間隔ずつ切削ブレードを割り出し送りして切削対象の分割予定ラインを選択しながら切削している。すなわち、アライメントは最初に切削する分割予定ラインについてのみ行い、その後は、事前に得ている分割予定ラインの間隔等のデータに基づいてダイシングを遂行している。したがって、全ての分割予定ラインが高精度で平行に形成されていることを前提として切削が行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−69319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかして、例えばセラミック基板等のワークの中には、後工程での組み立ての都合上、チップの角が切欠き形状になるようにダイシングすることが求められる場合がある。チップの角に切欠きを形成するには、ワークを焼結する前の段階で、分割予定ライン上のチップの角に該当する箇所に複数の穴を穿つ穴開け加工を施し、焼結後に分割予定ラインに沿ってワークを切断することによりなされる。
【0005】
ところが、セラミック基板は焼結によって歪みが生じるため、焼結後の穴の位置は焼結前の位置からずれてしまうといった不都合が起こる。このため、従来のようにアライメントを行ってからワークを分割予定ラインに沿って切断しても、実際の切断ラインは穴と穴とを高精度に繋ぐようにはならず、適確にチップの角に切欠きを形成することができないという問題が生じていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な技術的課題は、穴開け加工が施された後に焼結が行われたセラミック基板に対して、穴の中心間を高精度に繋ぐように切断して分割することができる分割方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分割方法は、分割予定ラインに沿って複数の穴開け加工が施された後に焼結が行われたセラミック基板を、該穴を繋ぐように分割予定ラインに沿って分割する分割方法であって、前記セラミック基板の被加工面に保護膜を形成する工程と、撮像手段の撮像範囲内に順次前記穴を位置付けて撮像することによって該穴の座標位置を検出して穴位置情報として記憶する工程と、前記穴位置情報に基づいて前記穴の中心座標を求めて記憶する工程と、隣り合う中心座標を直線で結ぶ一次関数を算出し、該一次関数に基づいて前記分割予定ラインに沿って並んだ前記穴の隣り合う中心座標を次々と繋ぐように該分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射してアブレーション加工を施す工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明は、穴開け加工が施されて焼結されたセラミック基板の各穴について中心座標を求め、これら中心座標を繋ぐようにしてレーザビーム照射によるアブレーション加工でセラミック基板を切断、分割するものである。本発明によれば、焼結後の穴の中心座標に基づいて切断するため、穴の中心間を高精度で繋ぐようにして切断することができ、分割後に得られるチップの角には従来よりも均一な形状の切欠きが形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、穴開け加工が施された後に焼結が行われたセラミック基板に対して、穴の中心間を高精度に繋ぐように切断して分割することができる分割方法が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る分割方法で多数のチップに分割される穴開け加工されたセラミック基板の平面図である。
【図2】セラミック基板から得るチップの平面図であって、(a)得ようとする形状のチップ、(b)従来で得られていたチップである。
【図3】図1のIII部分の拡大図である。
【図4】セラミック基板の表面(被加工面)に保護膜を形成した状態を示す一部断面側面図である。
【図5】撮像手段でセラミック基板の表面を撮像する工程を示す側面図である。
【図6】隣り合う穴の中心座標を繋ぐ実際の分割ラインを示す図である。
【図7】セラミック基板の穴の中心座標を示す図である。
【図8】レーザビーム照射によるアブレーション加工でセラミック基板を分割する工程を示す側面図である。
【図9】一実施形態の分割方法で得られたチップの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態の分割方法を適用して多数のチップに分割される正方形状のセラミック基板を示している。このセラミック基板1は、まず、格子状の分割予定ライン2に沿って等間隔おきに多数の穴3を形成する穴開け加工が施され、この後に焼結することにより得られている。セラミック基板1は分割予定ライン2に沿って切断、分割されて、図2(a)に示すチップ5に個片化される。同図に示すチップ5は、正方形の四隅の角に、穴3によって1/4円弧状の切欠き6が形成されており、セラミック基板1から得ようとする理想形状のものである。
【0012】
ところが、セラミック基板1は穴開け加工後の焼結により歪みが生じているため、図3に示すように穴3は当初の分割予定ライン2からずれているものがある。したがって分割予定ライン2に沿って分割して得られるチップ5は、実際には図2(b)に示すように角の切欠き6が均一な1/4円弧状にはならず、角の形状にばらつきがある。
【0013】
そこで一実施形態の分割方法は、分割して得られる全てのチップ5の角の切欠き6が、従来よりも均一な1/4円弧状になる方法である。以下、その手順を説明する。
【0014】
はじめに、図4に示すように、セラミック基板1の表面(被加工面、図4で上面)に保護膜10を形成する。保護膜10は、例えば液状の水溶性樹脂をセラミック基板1の表面に塗布することで形成することができる。該水溶性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)等の水溶性レジストが挙げられる。また、該樹脂の塗布方法としては、自転させたセラミック基板1の表面の回転中心に滴下した樹脂を遠心力で表面全面に行き渡らせるスピンコート法等が採用される。
【0015】
次いで、図5に示すように、保護膜10側を上にしてセラミック基板1を適宜な保持テーブル20上に水平に保持する。そして、保持テーブル20の上方に配置した撮像手段30と保持テーブル20とを水平方向に相対移動させて撮像手段30の撮像範囲内に順次穴3を位置付け、全ての穴3を撮像する。なお、保護膜10は厚さが例えば数百μm〜数μm程度であり、保護膜10が穴3を覆った状態であっても、穴3は表面側から撮像可能である。この時、撮像した各穴3について随時穴3の座標位置を検出し、該座標位置を穴位置情報として図示せぬ記憶手段に記憶させる。図6は、撮像手段30の撮像範囲の一例を示しており、各穴3はこのように撮像されて座標位置が検出される。
【0016】
次いで、得られた穴位置情報に基づいて、全ての穴3の中心座標(図7の3Aで示す)を求め、上記記憶手段に記憶させる。
【0017】
次いで、隣り合う穴3の中心座標3Aを直線で結ぶ一次関数を、全ての隣り合う穴3の間に関して算出する。そして、求めたこれら一次関数に基づいて、並んだ穴3における隣り合う中心座標3Aを次々と繋ぐようにして、穴3間をレーザ加工により切断していく。
【0018】
この場合、図8に示すように、保持テーブル20の上方に配置したレーザビーム照射手段40と保持テーブル20とを水平方向に相対移動させながら、レーザビーム照射手段40からセラミック基板1に焦点を合わせてレーザビームLBを照射し、セラミック基板1の成分を溶融・蒸散させて除去するアブレーション加工により、セラミック基板1を切断する。図6の破線は穴3の中心座標3A間を繋ぐようにして照射されるレーザビームLBの走査ラインであり、これはすなわち実際の分割ラインである。
【0019】
アブレーション加工を行うと、蒸散した成分が周囲に飛散して凝固し付着するデブリが発生する場合がある。しかしながら本実施形態ではセラミック基板1の表面に保護膜10を形成しているため、発生したデブリは保護膜10の表面に付着する。このため、セラミック基板1の汚染が防止され、結果としてチップの品質が保持される。
【0020】
上記のようにしてレーザビームLBによるアブレーション加工が穴3と穴3との間に順次なされ、これによってセラミック基板1は多数のチップ7(図9参照)に分割される。本実施形態の分割方法によれば、セラミック基板1を焼結した後に位置がずれてしまっている各穴3の中心座標3Aを求め、これら中心座標3Aを直線的に繋ぐようにして穴3の間ごとにレーザビームLBを照射して切断している。このため、隣接する穴3の中心間を高精度で切断することができ、結果として、図9に示すように分割後に得られるチップ7の角には従来よりも均一な1/4円弧状の切欠き8が形成される。
【符号の説明】
【0021】
1…セラミック基板
2…分割予定ライン
3…穴
3A…穴の中心座標
10…保護膜
30…撮像手段
LB…レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインに沿って複数の穴開け加工が施された後に焼結が行われたセラミック基板1を、該穴を繋ぐように分割予定ラインに沿って分割する分割方法であって、
前記セラミック基板の被加工面に保護膜を形成する工程と、
撮像手段の撮像範囲内に順次前記穴を位置付けて撮像することによって該穴の座標位置を検出して穴位置情報として記憶する工程と、
前記穴位置情報に基づいて前記穴の中心座標を求めて記憶する工程と、
隣り合う中心座標を直線で結ぶ一次関数を算出し、該一次関数に基づいて前記分割予定ラインに沿って並んだ前記穴の隣り合う中心座標を次々と繋ぐように該分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射してアブレーション加工を施す工程と、
を含むことを特徴とする分割方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−40708(P2012−40708A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182025(P2010−182025)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】