説明

分子量マーカー

【目的】室温で安定なタンパク質分子量マーカーを提供する。
【解決手段】 (イ)分子量が5kDa乃至500kDaの範囲内であり、
(ロ)システイン残基を含まず、
(ハ)N末端又は/及びC末端にヒスチジンタグが融合されている
タンパク質を少なくとも2種以上含有し、かつ2種以上のタンパク質の分子量がそれぞれ異なることを特徴とするタンパク質分子量マーカー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動(以下、SDS−PAGEと略記する。)ならびに質量分析等によるタンパク質の分子量分析時に広範囲の分子量にわたって便宜に使用することのできる分子量マーカー、及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にタンパク質の分子サイズや分子量の違いを利用して複数のタンパク質を分離し、検出するSDS−PAGEや質量分析において、試料中の解析対象タンパク質の分子量を推測するためには、分子サイズや分子量が既知である複数のタンパク質の混合物が分子量マーカーとして利用される。例えばSDS−PAGE用マーカー製品としては、例えばSDS−PAGE スタンダード(Bio−rad Laboratories社製)やMark 12未着色スタンダード(Invitrogen社製)等が知られている。これら既存の分子量マーカーには、ミオシン重鎖タンパク、β−ガラクトシダーゼ、ホスホリラーゼb、ウシ血清アルブミン、グルタミン酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、オブアルブミン、グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素、カルボニックアンヒドラーゼ、大豆トリプシンインヒビター、リゾチーム、アプロチニン又はインスリン等のタンパク質が組み合わされて使用されている。
【0003】
SDS−PAGEでの使用を前提とするこれらの分子量マーカー製品は、使用時の利便性を考慮してSDSを含む緩衝液に分子量の異なる複数のタンパク質を溶解した溶液として調製され、使用されている。ところが一般に多くのタンパク質はこのような溶液中において不安定であるため、分子量マーカー製品は室温で数日程度放置するだけでSDS−PAGE時のバンドが広がったり、消失したり又は位置が変化したりして、分子量マーカーとして使用できなくなる。この様なタンパク質の変化は一般に酸化反応等による場合が多いため、品質の劣化を防ぐ目的で、ジチオスレイトール(以下、DTTと略記する。)やβ−メルカプトエタノール(以下、β−MEと略記する。)等の還元剤がしばしば分子量マーカー製品に添加されるが、いまだ満足すべきものではない。この様な還元剤の添加によって分子量マーカー製品の保存性は多少向上するものの、これら還元剤自体も酸化を受けて分解しやすいため、長期間安定に保存するためには、4℃以下で保存しなくてはならず、中には、4℃以下の保存ではかならずしも満足すべきものではなく、−20℃での保存が必要な場合がある。そのため使用時に室温に戻したり、解凍するといった手間がかかるうえに、製品の輸送コストが高くなる等の問題点があった。また分子量マーカーの原料として使用するタンパク質試薬の純度が低いと、目的外タンパク質の混入や、混在するタンパク質分解酵素の影響による目的タンパク質の分解等が原因となり、本来検出されるべき分子量以外のバンドが検出されたり、バックグラウンドが濃くなって目的のバンドを確認しづらくなったりする。この様な理由から、高品質な分子量マーカー製品を製造するためには、高度に精製された原料タンパク質を使用する必要があり、材料の調達、調製にコストがかかるという問題があった。
【0004】
近年、遺伝子工学を利用して製造されたタンパク質を用いた分子量マーカー、例えばプロテインAのIgG結合ドメインAとBを一単位とし、このドメインAとBを1〜複数個連結してなるタンパク質を含む分子量マーカー(特許文献1参照。)や例えば発色団、発蛍光団、又はUV吸収基で標識されたタンパク質を含む分子量マーカー(特許文献2参照。)等も知られている。しかし、これら遺伝子工学を利用して製造されたタンパク質を利用した分子量マーカーも上記したと同様に、発現させたタンパク質を分子量マーカーの材料として使用に耐える純度にまで精製する過程が煩雑でコストがかかるという問題があった。
【特許文献1】特開平5−32699号公報
【特許文献2】特表2004−506221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、室温で長期間安定な保存に耐える分子量マーカーを安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、既存の分子量マーカー製品を室温で保存した際の各タンパク質のバンドの移動度や形状の変化を観察し、各タンパク質のバンドが変化する程度とタンパク質の持つ特性との関係を詳しく検討した結果、システイン残基(以下、Cysと略記する。)を含まないタンパク質は、室温下の長期保存後において他のCysを含むタンパク質に比べて経時的にバンドの位置や形状が実質的に変化しにくいことを見出した。Cysを含まない天然の公知のタンパク質としては、例えばウシカルボニックアンヒドラーゼ(Bovine Carbonic Anhydrase;29.0kDa)、ウシパルブアルブミン(Bovine Parvalbumin;12.3kDa)、ウシ胸腺ヒストンH2A(Bovine Thymus Histon 2A;11.2kDa)、ヒト血清高密度リポタンパク質A−I(Human High−Density Lipoprotein Apo A−I;28.1kDa)、大豆レグヘモグロビン(Soybean Leghemoglobin;15.2kDa)、ヒラタケセリンプロテアーゼインヒビター(Pleurotus ostreatus Serine protease inhibitor IA−1;8.3kDa)、大腸菌ヒスチジン含有リン酸輸送タンパク質(E.Coli Histidine−containing phosphocarrier protein;9.1kDa;以下HPrと略記する。)等が知られている。本発明者らは、さらなる利便性を求めて研究を重ねたところ、上記Cysを含まないタンパク質、例えばHPrが、室温保存に対して特別に安定であることを知見した。しかし、HPrの分子量は40,000(40kDa)以下であり、Cysを含まない高分子量(100kDa以上)の天然タンパク質を見出すのは困難である。分子量マーカーは、未知タンパク質の分子量の測定に使用され、その分子量については約5kDa〜500kDaの範囲をカバーするのが望まれる、例えば分子量マーカーは、約5kDaから500kDaまで、例えば約5kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約30kDa、約40kDa、約50kDa、約60kDa、約70kDa、約80kDa、約90kDa、約100kDa、約150kDa、約200kDa、約250kDa、約300kDa、約350kDa、約400kDa、約450kDa、約500kDa等のように適当なきざみになっているのが好ましい。本発明者らは、例えばHPrのアミノ酸配列又はその部分配列を一単位として繰返したタンパク質とヒスチジンヘキソマーとの融合タンパク質を設計し、分子量が約5,000(5kDa)程度から約500,000(500kDa)程度の間で分子量の異なる複数のタンパク質の製造に成功した。製造されたタンパク質は、ヒスチジンタグを有しているので、金属キレートアフィニティクロマトグラフィー用担体を用いて容易に高純度まで精製できる。またCysを含まないので、水溶液中で室温においても長期間安定であることを確認した。さらに本発明者らは、このようなタンパク質2種以上を選択し、かつ当該2種以上のタンパク質の分子量がそれぞれ異なるとき、これら2種以上のタンパク質を組み合わせることにより、上記従来技術の問題点が一挙に解決されることを知見した。
【0007】
すなわち本発明は、
[1] (イ)分子量が5kDa乃至500kDaの範囲内であり、
(ロ)Cysを含まず、
(ハ)N末端又は/及びC末端にヒスチジンタグが融合されている
タンパク質を少なくとも2種以上含有し、かつ2種以上のタンパク質の分子量がそれぞれ異なることを特徴とするタンパク質分子量マーカー、
[2] タンパク質がヒスチジンヘキソマー融合タンパク質であることを特徴とする前記[1]に記載の分子量マーカー。
[3] タンパク質が配列番号1で示されるアミノ酸配列の第32位〜第68位のアミノ酸配列又はその繰り返しを含有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の分子量マーカー、
〔4〕 タンパク質が配列番号2で示されるアミノ酸配列の第31位〜第71位のアミノ酸配列又はその繰り返しを含有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の分子量マーカー、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分子量マーカーは安定なタンパク質を使用しているので、室温で長期間、安定に保存できる。
また本発明の分子量マーカーはヒスチジンタグ融合タンパク質であるので、低コストで容易に高純度まで精製できる。
さらに本発明の分子量マーカーは室温で保存できるため、製品の輸送コストが低く、保存条件による劣化が少なく、かつ凍結の必要がないため解凍を待たずに使用でき、また使用後に再凍結するといった保存の手間がかからないので、利便性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の分子量マーカーに用いるタンパク質はCysを含まないヒスチジンタグ融合タンパク質を含有する事を特徴とするものであるので、遺伝子組換え技術によって製造されたもの(以下組換えタンパク質という。)が好ましい。
【0010】
本発明の分子量マーカーに用いられる組換えタンパク質は、Cysを含まないタンパク質であることに加え、公知の分子量マーカーに用いられるタンパク質の特性、例えば酸性、塩基性又は疎水性の各アミノ酸の含有率が極端に偏った組成を持たない等の特性を有することが好ましい。
【0011】
本発明の分子量マーカーの製造のために有用な遺伝子は、例えば上記公知の分子量マーカーに用いられるタンパク質の特性を有する天然タンパク質、例えばHPr、リボヌクレアーゼ(Bacillus amyloliquefaciens Ribonuclease)、アシルCoA結合タンパク質(Saccharomyces pastorianus Acyl−CoA binding protein 2)、セリンプロテアーゼインヒビター(Pleurotus ostreatus Serine protease inhibitor IA−1;以下、SPIと略記する。)、アスパラギン酸プロテアーゼインヒビター(Pumpkin Aspartic protease inhibitor fragment)、システインプロテアーゼインヒビター(Short ragweed Cystein protease inhibitor、 Human type−I cystatin)、アポタンパク質C−III(Human Apolipoprotein C−III fragment)、ユビキチン(Human Ubiquitin)又はカルシウム結合タンパク質(Bovine Calgramulin C、Bovine Vitamin D−dependent calcium binding protei intestinal)等を発現する遺伝子が挙げられる。なお、タンパク質がCysを含む場合においては、前記遺伝子は、Cysを含まないタンパク質を発現するように、遺伝子の構造を改変するのがよい。より具体的には、例えば上記天然タンパク質、好ましくはHPr又はSPIのアミノ酸配列の全部若しくは一部、又はこれらアミノ酸配列と相同性を有するCysを含まないアミノ酸配列をコードするcDNA(以下、単にDNAという。)を用いるのが好ましい。前記相同性とは、天然タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約40%以上の相同性を有し、天然タンパク質と同様に微生物において製造される得る程度を意味する。
【0012】
本発明の分子量マーカーの製造に用いられるタンパク質の製造に用いられるDNAは、分子量約5〜10kDaのCysを含まないアミノ酸配列をコードするDNAを一単位として、約2〜100単位、好ましくは約2〜50単位が繰返し繋げられたDNAのC末端又はN末端側に、例えばヒスチジンヘキソマーの様なヒスチジンタグをコードするDNAが付加された形で、それぞれ目的の分子量を有するヒスチジンタグ融合タンパク質を発現するように調製される。上記一単位のポリペプチドを形成するアミノ酸配列をコードするDNA、例えば10kDaのポリペプチドをコードするDNAを2単位繋げることにより約20kDaのタンパク質を製造でき、同様に3単位で約30kDaのタンパク質、4単位で約40kDaのタンパク質、5単位で約50kDa、10単位で約100kDaのタンパク質、20単位で約200kDaのタンパク質、30単位で約300kDaのタンパク質等を製造できる。ヒスチジンタグは各分子量のタンパク質のN末端側又はC末端側に少なくとも1個あればよく、一単位となるDNAを繰返し繋げたDNAのN末端側及び/又はC末端側にヒスチジンタグをコードするDNAを付加することで、分子量の異なる種々のヒスチジンタグ融合タンパク質を製造できる。
また最小タンパク質となるヒスチジンタグ融合タンパク質(例えば約5kDa又は約10kDaのヒスチジンタグ融合タンパク質等)をコードするDNAを2種類以上、好ましくは2〜3種類準備し、これに上記一単位となる分子量約5〜10kDaのCysを含まないアミノ酸配列をコードするDNAを任意の回数だけ繰返し繋げたDNAを組み合わせて繋いでもよい。例えば。C末端にヒスチジンへキソマーを有する5kDa及び10kDaのポリペプチドをコードするDNAをそれぞれ準備し、そのN末端側に、10kDaのポリペプチドを形成するアミノ酸配列をコードするDNAを1〜数十個繰返し繋いで目的とするタンパク質を発現させることにより、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約30kDa、約35kDa、約40kDa、約50kDa、約60kDa、約70kDa、約80kDa、約90kDa、約100kDa、約150kDa、約200kDa、約250kDa、約300kDa、約400kDa、約500kDa等の分子量を有する種々のヒスチジンへキソマー融合タンパク質を製造できる。
繰返しの単位となるDNAを繋ぐことなく、C末端にヒスチジンへキソマーを有する約5kDa及び約10kDaのポリペプチドをコードするDNAを用いて、それぞれタンパク質を発現させることで、約5kDa及び約10kDaのヒスチジンヘキソマー融合タンパク質を製造できることは言うまでもない。
【0013】
上記一単位となるDNAは、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列若しくは配列番号1の第32位〜第68位のアミノ酸配列又は配列番号2で示されるアミノ酸配列若しくは配列番号2の第31位〜第71位のアミノ酸配列等をコードする塩基配列が好ましく挙げられる。また、上記一単位となるDNAは、製造されるタンパク質の分子量が正確に、例えば約5kDa又は約10kDaとなるよう、前記配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列において、1若しくは数個(約2〜15個程度)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加等されるよう、塩基配列を改変することが好ましい。この場合、製造されるタンパク質にCysが含まれない様に改変されるのがよい。このようなDNAとしては、例えば配列番号3〜5に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列等が挙げられる。
【0014】
ヒスチジンタグをコードするDNAは、ヒスチジンに対応するコドンを少なくとも2個(好ましくは約6〜8個、とりわけ好ましくは約6個)連ねたオリゴヌクレオチドが好ましい。ヒスチジンタグをコードするDNAとしては、例えば特開昭63−251095号公報又は特開平3−101693号公報に記載の金属親和性ペプチドをコードするDNA等が好ましく挙げられる。ヒスチジンタグとの融合タンパク質として発現される本発明のタンパク質は、例えば特開昭63−44947号公報に記載の金属アフィニティークロマトグラフィー等によって容易に高純度まで精製できる。
【0015】
また、本発明の分子量マーカーに用いられるタンパク質においては、ヒスチジンタグと共に、又はヒスチジンタグの代わりにストレプトタグ、HA(ヘマグルチニン)タグ、VSV(水疱性口内炎ウイルス)−Gタグ等のタグをコードするDNA配列等を付加することもできる。これら親和性タグ配列を付加することにより、発現したタンパク質を分離、採取する際に、例えば該親和性タグに対するアフィニティーカラムを用いることができる等により、タンパク質の精製を容易にし得る。
【0016】
本発明の分子量マーカーに用いられるタンパク質の製造方法において、まず上記一単位となるDNAを繋げ、目的とする分子量のタンパク質をコードするDNA断片を調製するのがよい。調製されたDNA断片を発現ベクターに挿入する。DNA断片が挿入された発現ベクターを宿主細胞に導入し、宿主細胞中で発現ベクターに導入されたDNAを発現させることによって、目的とする分子量のタンパク質を製造することができる。
【0017】
上記一単位となるDNAは、C末端及びN末端に制限酵素(例えばBamHI、XhoI、SalI等)認識部位を有するよう、塩基配列が付加されることが好ましい。制限酵素認識部位を付加されたDNA(以下、カセットという。)としては、例えば配列番号6、9又は12で示される塩基配列が挙げられる。配列番号6、9又は12で示されるカセットは、例えば、配列番号3〜5で示されるアミノ酸配列等をもとにオリゴヌクレオチドが設計され、設計されたオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行うことによって得ることができる。PCR反応は公知のPCR増幅装置、例えばサーマルサイクラー等を利用し得る。PCRのサイクルは、デナチュレーション→アニーリング→エクステンションを1サイクルとして、約25〜35サイクル程度が好ましい。プライマーとしては、例えば配列番号6における第1位〜第26位の塩基配列(配列番号7)及び第244位〜第295位の相補配列(配列番号8)、配列番号9における第1位〜第24位の塩基配列(配列番号10)及び第111位〜第160位の相補配列(配列番号11)、配列番号12における第1位〜第50位の塩基配列(配列番号13)及び第247位〜第295位の相補配列(配列番号14)等が挙げられる。
【0018】
次に得られたカセットを分子量の異なるタンパク質が製造されるよう連結し、連結したカセットを発現ベクターに組み込んで発現プラスミドを作成する。カセットの連結は、少なくとも2種の制限酵素を組み合わせて行うことができる。制限酵素の組合せとしては、例えばXhoIとSalI、SpeIとNheI又はPstIとNsiIの組み合わせのごとく、粘着末端を生じる制限酵素の組み合わせや、平滑末端を生じる制限酵素の組み合わせが挙げられる。このため、カセットの制限酵素認識部位は、これら制限酵素の組み合わせに対応する制限酵素の認識配列であることが好ましい。この様なカセットを利用して、選択した上記組み合わせの制限酵素(例えばXhoIとSalI)のどちらか一方(例えばXhoI)で切断した発現プラスミドに、前記選択した制限酵素(例えばXhoIとSalI)で切断したカセット断片を挿入することができる。この反応を繰り返すことにより、基本ポリペプチドのDNAを含むDNAを同一方向に目的とする分子量のタンパク質をコードするDNAとなるように何度でも連結することができる。
【0019】
また、本発明の分子量マーカーに用いられるタンパク質をコードするDNAは、所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAは翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また翻訳終止コドンとしてのTAA、TGA又はTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0020】
本発明の分子量マーカーに用いられるタンパク質をコードするDNAが挿入される発現ベクターとしては、宿主細胞において複製可能である限りプラスミド、ファージ、ウイルス等いかなるベクターも用いることができる。このような発現ベクターとしては、より詳しくは例えば、細菌プラスミド(pBluescript II KS、pBR322、pKC30、pCFM536、pUC系プラスミドベクター等)、ファージDNA(ラムダファージ等)、酵母プラスミド(pG−1等)、哺乳類細胞用のベクターとしてのバキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス等のウイルスDNA、SV40とその誘導体等が挙げられる。発現ベクターは複製開始点、選択マーカー、プロモーターを含み、必要に応じてエンハンサー、転写終結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル等を含んでいてもよい。
【0021】
複製開始点としては、大腸菌ベクターに対して、例えばColE1、R因子、F因子由来のものが、酵母用ベクターに対して、例えば2μm DNA、ARS1由来のものが、哺乳類細胞用ベクターに対して、例えばSV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス由来のものが挙げられる。
【0022】
プロモーターは本発明の分子量マーカーに用いられるタンパク質をコードするmRNAの合成を指令するための調節配列であり、例えば、アデノウイルス又はSV40プロモーター、大腸菌lac(例えば、lacUV5プロモーター等)又はtrpプロモーター、ファージラムダPLプロモーター、酵母用としてのADH、PHO5、GPD、PGK、AOX1プロモーター、蚕細胞用としての核多角体病ウイルス由来プロモーター等を挙げることができる。
【0023】
選択マーカーは、形質転換宿主細胞を選択するための表現型を宿主に付与するための遺伝子であり、例えば、大腸菌用ベクターには、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子等を、酵母用ベクターには、Leu2、Trp1、Ura3遺伝子等を、哺乳類細胞用ベクターには、ネオマイシン耐性遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を挙げられる。
【0024】
発現ベクターは商業的に入手可能なものも好ましく使用することができる。そのような発現ベクターとしては、具体的には例えば、細菌性のものではpQE70、pQE60、pQE−9(QIAGEN GmbH社製)、ptrc99a、pKK223−3、pDR540、pRIT2T(Amersham Biosciences社製)、pET−11a(NOVAGEN社製);及び真核性のものではpXT1、pSG5(Stratagene社製)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL SV40(Amersham Biosciences社製)等が挙げられる。中でもpDR540又はpET−11aがより好ましい。
【0025】
本発明の分子量マーカーに用いられるタンパク質をコードするDNAが挿入された発現ベクターは、適切な宿主細胞に形質転換し、宿主細胞を適当な培地中で培養し、本発明の分子量マーカーに用いられるタンパク質をコードするDNAを発現させ、本発明の分子量マーカー用タンパク質を製造させることができる。
【0026】
形質転換は、自体公知の方法であればいずれも好ましく用いることができる。例えば、コンピテント細胞法[J.Mol.Biol.,第53巻,p.154(1970)]、DEAE−デキストラン法[Science,第215巻,p.166,(1982)]、インビトロパッケージング法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,第72巻,p.581(1975)]、ウイルスベクター法[Cell,第37巻,p.1053(1984)]、マイクロインジェクション法[Exp.Cell.Res.,第153巻,p.347(1984)]、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,第3巻,p.133(1990)]、リン酸カルシウム法[Science,第221巻,p.551(1983)]、リポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,第84巻,p.7413(1987)]又はプロトプラスト法[特開昭63−2483942、Gene,第17巻,p.107(1982)、Molecular & General Genetics,第168巻,p.111(1979)]に記載の方法等を挙げることができる。
【0027】
宿主細胞の例としては、細菌細胞、例えば大腸菌(JM109等)、ストレプトミセス、枯草菌等;真菌細胞、例えばアスペルギルス属菌株等;酵母細胞、例えばパン酵母、メタノール資化性酵母等;昆虫細胞、例えばドロソフィラS2,スポドプテラSf9等;ヒト培養細胞を含む哺乳類細胞、例えばCHO、COS、BHK、3T3,C127等が挙げられる。
【0028】
発現ベクターと宿主細胞は適切な組み合わせを選んで使用するのが望ましい。発現ベクターと宿主細胞の適切な組み合わせとしては、例えば大腸菌を宿主とする場合には、lac UV5プロモーター制御系ベクターに目的タンパク質をコードするDNAをサブクローニングしたプラスミドとJM109大腸菌株の組み合わせ、又はT7プロモーター制御系ベクターに目的タンパク質をコードするDNAをサブクローニングしたプラスミドとBL21(DE3)大腸菌株の組み合わせ等が好ましく挙げられる。
【0029】
培養に使用される培地は、宿主細胞に応じて、適切な培地が選択される。例えば宿主細胞が大腸菌等の細菌の場合、培地は液体培地が適当であり、例えばLB培地、Lブロス、2×TY培地等が挙げられる。培地のpHは約5〜8が望ましい。また、タンパク質の発現誘導剤として、例えばイソプロピル−1−β−D−ガラクトピラノシド(以下、IPTGと略記する。)等を添加してもよい。培養は通常約15〜40℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えてもよい。宿主が酵母である場合、培地としては、例えばバークホルダー最小培地等が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加えるのがよい。宿主が動物細胞である場合、培地としては、たとえば約5〜20質量%の胎児牛血清を含むMEM培地、DEME培地、RPMI1640培地等が挙げられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加えるのがよい。
【0030】
発現したタンパク質の分離、採取は、公知の方法により行うことができる。例えばタンパク質を産生している形質転換体は、その培養液上清中に該タンパク質を分泌することから、この形質転換体の培養上清から該タンパク質の抽出を行うことができる。また、形質転換体中に産生された該タンパク質の抽出を行うこともできる。タンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するには、培養後、遠心分離やろ過等の公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム又は/及び凍結融解等によって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離や濾過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法等が適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジン等のタンパク質変性剤や、トリトンX−100等の界面活性剤が含まれていてもよい。分子量マーカーとして用いるタンパク質に不純物が混入していると、例えばSDS−PAGEにおけるバンドの特定や質量分析におけるピークの特定が困難になるので、可能な限り精製することが望ましい。一般にタンパク質の精製方法としては、イオン交換クロマトグラフィーや疎水性クロマトグラフィー又はゲル濾過クロマトグラフィー等各種クロマトグラフィー等が利用できるが、ヒスチジンタグは金属キレートカラムに結合するので、ヒスチジンタグの融合タンパク質として発現させた本発明のタンパク質は、金属キレートカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー等によって精製するのが望ましい。
【0031】
精製されたタンパク質に色素化合物を共有結合させることもできる。色素化合物を定法に従い共有結合させることにより、本発明の分子量マーカーのタンパク質を染色等の手段を用いなくても目視できる。
【0032】
本発明の分子量マーカーは、分子量が異なる数個乃至十数個のタンパク質を溶媒(例えば精製水、緩衝液等)に溶解して製造される。例えばSDS−PAGE用の分子量マーカーとして製造する際には、分子量の異なる数個乃至十数個のタンパク質をそれぞれ約20〜100μg/mL程度となる様に混合するのがよい。また、SDS−PAGE用の分子量マーカーの場合、直接SDS−PAGEに使用できるようにするため、SDS、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(以下EDTA−Naと略記する)、ブロムフェノールブルー及びグリセロールを含むTris緩衝液に、分子量の異なる数個乃至十数個のタンパク質を溶解した混合溶液として調製するのがよい。分子量の異なるタンパク質は、例えばSDS−PAGEで展開したときに、分子量の異なるタンパク質の各バンドが互いに適切な間隔をもって分離する様に選択されることが好ましい。本発明によるシステイン残基を含まないタンパク質を用いたマーカー製品は室温で極めて安定であるので、例えばDTTやβ−ME等の還元剤の存在は必ずしも必要ではないが、還元剤を溶液中に加えるとさらに安定性が増すのでより好ましい。
【0033】
精製されたタンパク質を用いて例えば質量分析用の較正標準品を製造する際には、分子量の異なる数個のタンパク質がそれぞれ約2〜200pmol/μL程度となる様に溶媒に溶解されるのがよい。この場合、タンパク質を溶解する溶媒としては、例えば約30v/v%アセトニトリルを含む約0.05v/v%トリフルオロ酢酸水溶液等が好ましい。また、較正標準品はバイアルビンやスクリューキャップ付きミクロチューブ等に入れて凍結乾燥すれば、較正標準品としてより安定で好ましい。
【0034】
以下に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
(1)DNA断片の調製。
配列番号1で示される大腸菌HPrのアミノ酸配列を基に、配列番号6又は9に示すように5kDa、10kDaの正確な分子量を有するように一部のアミノ酸配列を改変したHPr(組換え5kDa−HPr、組換え10kDa−HPr)を設計した。この組換え5kDa−HPr又は組換え10kDa−HPrをコードするcDNAを取得するために、組換え5kDa−HPr又は組換え10kDa−HPrをコードするcDNAのC末端及びN末端部位の塩基配列をもとにプライマーを設計し、これを用いて大腸菌のゲノムDNAを鋳型とし、PCR法により組換え5kDa−HPr又は組換え10kDa−HPrをコードする塩基配列を含むDNAを増幅させた。
なお、プライマーは、配列番号6に示す塩基配列の第1位から第26位に相当する部位の塩基配列(配列番号7)及び第244位から第295位に相当する部位の相補配列(配列番号8)、並びに配列番号9に示す塩基配列の第1位から第24位に相当する部位の塩基配列(配列番号10)及び第111位から第160位に相当する部位の相補配列(配列番号11)を用いた。前記配列番号7,8、10及び11の塩基配列又はその相補配列にはそれぞれ5’−末(C末)端側に制限酵素(BamHI)認識部位が含まれている。PCR反応は、Pfuポリメラーゼを用いて95℃、5分間保温の後、95℃で30秒、50℃で30秒、72℃で1分のサイクルを2回繰り返し、さらに95℃で30秒、65℃で30秒、72℃で1分のサイクルを28回繰り返し、最後に72℃で15分間保温する手順で行った。
また、10kDa増加用のDNAの製造は下記の通りである。上記組換え5kDa−HPrをコードするcDNA又は組換え10kDa−HPrをコードするcDNAに、繰り返し繋ぐことで発現するタンパク質の分子量が10kDaずつ増加するように設計したDNA断片(10kDaカセット;配列番号12)を同様に増幅した。この場合のプライマーは、配列番号12に示す塩基配列の第1位から第50位に相当する部位の塩基配列(配列番号13)及び第247位から第295位に相当する部位の相補配列(配列番号14)を用いた。前記塩基配列又はその相補配列には制限酵素[配列番号13の5’−末(C末)端側にSalI、配列番号14の5’−末(C末)端側にXhoI]認識部位が含まれている。
【0036】
(2)プラスミドの構築
プラスミド構築手順を図1に記載した。
pDR540プラスミドのlacUV5プロモーター領域(lacUV5プロモーター配列の上流にEcoRI認識部位、下流にBamHI認識部位を持つ領域)を、制限酵素(EcoRI及びBamHI)を用いて切り出した。次いで、pUC8プラスミドのEcoRI、BamHIの切断部位に切り出したlacUV5プロモーター領域を挿入し、得られたプラスミド(pUC540)を発現ベクターとして用いた。上記(1)で増幅した組換え5kDa−HPr又は組換え10kDa−HPrの塩基配列を含むDNAをBamHIで切断し、pUC540のBamHI切断部位に挿入し、それぞれ組換え5kDa−HPr又は組換え10kDa−HPr発現プラスミドとした。また10kDaカセットを含む配列をPCRで増幅後、制限酵素SalI及びXhoIにて切断し、pBluescript IIプラスミドのSalI、XhoIの切断部位にサブクローニングした。こうして作成した10kDaカセットプラスミドを大量に製造し、これを制限酵素(SalI及びXhoI)にて消化後、アガロースゲル電気泳動し、10kDaカセットを精製した。この10kDaカセットを組換え5kDa−HPr又は組換え10kDa−HPr発現プラスミドのXhoI切断部位にそれぞれ挿入し、それぞれ組換え15kDa−HPr発現プラスミド又は組換え20kDa−HPr発現プラスミドとした。同様の操作を繰り返して、組換え25kDa−HPr、組換え30kDa−HPr、組換え40kDa−HPr、組換え50kDa−HPr、組換え60kDa−HPr、組換え80kDa−HPr、組換え100kDa−HPr、組換え150kDa−HPr又は組換え250kDa−HPr発現プラスミドを作成した。
【0037】
(3)組換えHPrタンパク質の発現
(2)で作成した例えば組換え5kDa−HPr発現プラスミドをJM109コンピーテントセル(高形質転換効率大腸菌細胞)と混合後30分間氷上に置き、90秒間42℃に置いた後直ちに氷上に5分間置くことで形質転換し、0.1mg/mLのアンピシリンを含むLB(以下、LBamp+と略記する)培地プレート上で一晩増殖させた。出現したコロニーをLBamp+液体培地に接種し、増殖させ、組換え5kDa−HPr発現プラスミドで形質転換されたJM109クローンを選択した。前記形質転換されたJM109クローンをLBamp+液体培地中で37℃にて濁度が0.5前後に達するまで増殖させた後、1mM IPTGを加えてさらに37℃にて6時間培養した。前記形質転換されたJM109クローンを液体培地中で増殖させた。組換え5kDa−HPr発現プラスミドの代わりに、組換え10kDa−HPr、組換え20kDa−HPr、組換え25kDa−HPr、組換え30kDa−HPr、組換え40kDa−HPr、組換え50kDa−HPr、組換え60kDa−HPr、組換え80kDa−HPr、組換え100kDa−HPr、組換え150kDa−HPr又は組換え250kDa−HPr発現プラスミドを用い、同様にJM109コンピーテントセルを形質転換し、同様に増殖した。
【0038】
(4)組換えHPrの精製
上記(3)で培養した液体培地を4℃で遠心分離(5000×g、15分間)して大腸菌を沈澱させ、上清を捨てた。集めた大腸菌を0.01M リン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁し、超音波処理にて大腸菌を破砕した。次にこの懸濁液を遠心分離し、得られた沈殿を4質量% TritonX−100を含むリン酸緩衝生理食塩水中に懸濁した後、再度遠心分離する操作を3回繰り返して、沈殿を洗浄した。こうして得られた沈殿を8M尿素含有リン酸緩衝液に溶解し、これを遠心分離して澄明なタンパク質溶液を得た。このタンパク質溶液をHisTrap HPカラム(Amersham Biosciences社)にアプライし、His−tagの付いた目的タンパク質をカラムに結合させた。次いでカラムを8M尿素含有緩衝液にて洗浄した後、500mMのイミダゾールを含む4M尿素含有リン酸緩衝液にて目的タンパク質を溶出させた。精製された組換え5kDa−HPr、組換え10kDa−HPr、組換え15kDa−HPr、組換え20kDa−HPr、組換え25kDa−HPr、組換え30kDa−HPr、組換え40kDa−HPr、組換え50kDa−HPr、組換え60kDa−HPr、組換え80kDa−HPr、組換え100kDa−HPr、組換え150kDa−HPr又は組換え250kDa−HPrを含む画分を得た。
このようにして得られた画分をSDS−PAGEに供し、CBB(クマシーブリリアントブルー)染色にて検出すると、各タンパク質は予想される位置にほぼ単一のバンドとして確認された。
これら精製された画分の組換えタンパク質について質量分析計による精密質量測定を行った。表1にその結果を示した。
【0039】
【表1】

【実施例2】
【0040】
分子量マーカータンパク質の安定性試験
実施例1で作成した各分子量の組換えタンパク質を10mM重炭酸アンモニウム溶液で透析後、凍結乾燥した。乾燥した各分子量の組換えタンパク質のうち10kDa、15kDa、30kDa、50kDa、100kDa及び150kDaのタンパク質を分子量マーカー用試料緩衝液(2質量%SDS、2mM EDTA−Na、1mMグルタチオン、35質量%グリセロール、10mM Tris−HCl、pH8.0)にそれぞれ溶解し混合し、本発明の分子量マーカーとした。本発明の分子量マーカーを25℃にて35日間保存した。また、天然に存在するタンパク質を用いた分子量マーカー(SDS―PAGEスタンダード;Bio−Rad Laboratories社製)、及び従来技術により作製された市販のラダータンパク質分子量マーカー(Precision Plus;Bio−Rad Laboratories社製)も同条件にて21日間保存した。25℃でそれぞれの期間保存した後の各分子量マーカーをSDS−PAGEに供した。各分子量マーカーを−20℃でそれぞれの期間保存したものを、同様にSDS−PAGEに供し、25℃でそれぞれの期間保存したおのと比較することで、各分子量マーカーの安定性を評価した。
【0041】
その結果を図2に示す。図2中、Aは本発明の分子量マーカー、Nは天然タンパク質分子量マーカー(SDS―PAGEスタンダード)、Bは従来技術のラダータンパク質分子量マーカー(Precision Plus)をSDS−PAGEで展開したレーンを示す。なお、RTは25℃で保存した後の分子量マーカー、cont.は−20℃で保存した後の分子量マーカーを示す。
天然タンパク質分子量マーカーをSDS−PAGEで展開したレーン(N)では、25℃で3週間保存すると各タンパク質のバンドに乱れが生じた。また、従来技術を用いたラダータンパク質分子量マーカーのレーン(B)でも一部バンドの乱れが観察された。しかし、実施例1で作成した本発明の分子量マーカーに用いられる組換えタンパク質は25℃で5週間保存後も単一のバンドの乱れは見られなかった。
この結果から、本発明の分子量マーカーに用いるタンパク質は、従来の分子量マーカーに比べ室温で高い安定性を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の分子量マーカーは、SDS−PAGE又は質量分析用の分子量マーカーとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】発現プラスミド構築手順の模式図である。
【図2】実施例2の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)分子量が5kDa乃至500kDaの範囲内であり、
(ロ)システイン残基を含まず、
(ハ)N末端又は/及びC末端にヒスチジンタグが融合されている
タンパク質を少なくとも2種以上含有し、かつ2種以上のタンパク質の分子量がそれぞれ異なることを特徴とするタンパク質分子量マーカー。
【請求項2】
タンパク質がヒスチジンヘキソマー融合タンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の分子量マーカー。
【請求項3】
タンパク質が配列番号1で示されるアミノ酸配列の第32位〜第68位のアミノ酸配列又はその繰り返しを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分子量マーカー。
【請求項4】
タンパク質が配列番号2で示されるアミノ酸配列の第31位〜第71位のアミノ酸配列又はその繰り返しを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分子量マーカー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−275598(P2006−275598A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91670(P2005−91670)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(501389800)株式会社アプロサイエンス (7)
【Fターム(参考)】