説明

分岐付ケーブル

【課題】1の負荷が故障している場合でも、他の負荷に対して安定した電源の供給を行うことができる分岐付ケーブルを提供する。
【解決手段】分岐付ケーブルは、一つの幹線ケーブルと、その幹線ケーブルから分岐した複数の分岐線とを有している。その分岐線の先端に、負荷側のプラグと嵌合し、その負荷側に幹線ケーブルの電源を供給するソケット11を備えている。ソケット11またはプラグ12には、ヒューズ16がコイルばね18で挟持されている。これにより、同一系統内において、ある負荷に異常が発生した場合、その負荷と接続したソケット11に備えたヒューズが溶断する。幹線ケーブルからその負荷への電源の供給が遮断されても、電源の遮断は当該負荷のみであり、その他の負荷には安定した電源の供給を継続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は分岐付ケーブル、詳しくは幹線ケーブルから分岐した分岐線に複数負荷を接続して、幹線ケーブルから複数個の負荷に電源を供給する分岐付ケーブルの接続コネクタの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐付ケーブルの用途は、電灯および動力用などがある。
この分岐付ケーブルは、一つの幹線ケーブル(1系統)とその幹線ケーブルから分岐した複数の分岐線を備えたものである。そして、その分岐線にコネクタを介して各負荷と接続することにより、電源を幹線ケーブルから各負荷に供給することができる。
例えば、特許文献1には、トンネル内の配置される照明器具に接続するプラグイン接続部が開示されている。特許文献1に記載のように、各負荷として、トンネルに設けられた照明灯等が挙げられる。または、屋内配線などにおいては、屋内の照明や家庭電化製品などである。
【0003】
図7は、分岐付ケーブルを用いて、各負荷に電源の供給を行う回路構成を示している。図7に示す回路には、1系統の幹線ケーブル14が設けられ、その幹線ケーブル14にはこれから枝分かれした複数の分岐線15が接続されている。各分岐線15の先端には、コネクタ13により負荷17がそれぞれ接続されている。
また、上記分岐付ケーブルを用いて、複数個の負荷17を備えた各系統(幹線ケーブル)に電源を供給する場合、各系統を保護するために、各幹線ケーブル14には区分開閉器20がそれぞれ設けられている。
【0004】
【特許文献1】実開平5−73880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の構成では、ある系統内の1つの負荷に異常があった場合には、区分開閉器で電源の供給を遮断してしまう。そのため、その系統の正常な負荷を含め、すべての負荷に対する電源の供給が遮断されてしまう。すなわち、1つの負荷に異常があれば、その系統に設けられた他の負荷に対しても、電源の供給がストップしてしまう。また、点検・整備のときも同様の不具合が生じている。
そこで、本願の発明者は、分岐付ケーブル(分岐線)と負荷とを接続するコネクタであって、このコネクタにヒューズを内蔵すれば、1つの負荷に電源の供給が断たれても、幹線ケーブルから他の負荷に安定した電源を供給できることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
この発明は、1つの負荷が故障している場合でも、その他の複数個の負荷に対して安定した電源の供給を行うことができる分岐付ケーブルを提供することを目的とする。
また、この発明は、点検・整備時においても、点検・整備を行っている以外の負荷に安定した電源を供給することができる分岐付ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、電源に接続された幹線ケーブルと、この幹線ケーブルから分岐した複数の分岐線とを備え、これらの分岐線の先端にそれぞれ設けられたソケットに、負荷が接続されたプラグを嵌合することにより、電源を上記負荷にそれぞれ供給する分岐付ケーブルであって、上記ソケットまたは上記プラグには、所定の値以上の電流が流れたとき、上記幹線ケーブルから負荷への電源の供給を遮断するヒューズが内蔵された分岐付ケーブルである。
分岐付ケーブルの用途は限定されない。例えば、変電所からビルなどの大口需要家に高圧の電源を供給するために使用されるもの、または、トンネル照明灯に使用されるものでもよい。
幹線ケーブルは、高圧の交流を流す配電線(高圧配電線)でもよいし、低圧の交流または直流を流す配電線(低圧配電線)でもよい。
負荷は、具体的に限定されない。例えば、高速道路のトンネルに配設された照明灯でもよい。または、集合住宅に配設される電気設備でもよい。
また、上記ソケットまたはプラグは、互いに嵌合することで電気的接続を確保できるコネクタの構成要素であることを意味しており、分岐線にプラグを、負荷側にソケットを設けることを含ませるものとする。
これらソケットおよびプラグの電極(ピン)の本数も限定されない。例えば、単相3線式に対応した3本のピンを有してもよく、または3相4線式に対応した4本のピンを有してもよい。
ソケットまたはプラグに内蔵されるヒューズの種類および形状も限定されない。
また、このコネクタに設けられるヒューズの本数も限定されない。単相3線式の場合は、短絡線以外の少なくとも1本でもよい。
さらに、ヒューズの種類、その定格遮断電流の値も限定されない。
【0008】
請求項1に記載の分岐付ケーブルにあっては、分岐付ケーブルには、ある系統の一つの幹線ケーブルと、その幹線ケーブルから枝分かれに分岐した複数の分岐線とが設けられている。そして、分岐された分岐線の先端には、負荷側のプラグと嵌合し、その負荷側に幹線ケーブルを介して電源を供給するソケットが配設されている。そして、これらのソケットまたはプラグには、ヒューズが内蔵されている。
これにより、同一系統内において、ある負荷に異常が発生した場合、大電流が流れると、コネクタに配設されたヒューズが溶断し、幹線ケーブルからその負荷への電源の供給が遮断される。しかし、電源供給の遮断は当該負荷のみであり、その他の負荷には安定した電源の供給を継続することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記ソケットまたは上記プラグの嵌合面には、上記ヒューズが挿入される挿入口が設けられた請求項1に記載の分岐付ケーブルである。
【0010】
請求項2に記載の分岐付ケーブルにあっては、上記ヒューズはソケットまたはプラグに内蔵することができ、または、ソケットとプラグとの嵌合面に配設することもできる。この場合、その嵌合面に挿入口を形成し、この挿入口にヒューズを挿入可能とする。これにより、点検・整備時において、ヒューズの取り付け、取り外しがきわめて容易になる。そして、点検する負荷に電源を供給せず、その他の負荷には電源が供給される状態にすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記ヒューズは、上記ソケットの電極と上記プラグの電極との間に、コイルばねを介して挟持された請求項1または請求項2に記載の分岐付ケーブルである。
【0012】
請求項3に記載の分岐付ケーブルにあっては、ヒューズは、上記ソケットの電極と上記プラグの電極との間に配設されたコイルばねでこれらの電極の間に挟持される。このコイルばねでヒューズを付勢することにより、ヒューズと電極との接触が確実・容易になる。また、1のコネクタにあって異なる長さの複数種のヒューズを装着することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、分岐付ケーブルには、一つの幹線ケーブル(1系統)と、その幹線ケーブルから枝分かれした複数の分岐線とが設けられている。そして、分岐された各分岐線の先端には、負荷側のプラグと嵌合し、その負荷側に幹線ケーブルの電源を供給するソケットが配設されている。そして、これらのソケットまたはプラグには、ヒューズが内蔵されている。
これにより、同一系統内において、ある負荷に異常が発生した場合、その負荷と接続したソケットまたはプラグに備えたヒューズが過大電流により溶断し、幹線ケーブルからその負荷への電源の供給が遮断される。しかし、電源の遮断は当該負荷のみであり、その他の負荷には電源の供給を継続することができる。
【実施例1】
【0014】
以下、この発明の一実施例を、図1〜図6を参照して説明する。
本実施例では、トンネル内の照明用に用いられる分岐付きケーブルについて説明する。
まず、図1を参照して、分岐付ケーブルを用いた全体構成について説明する。図1に示すように、この分岐付ケーブルには、主要な電源からの電流を流す幹線ケーブル14が配設されている。
この幹線ケーブル14は、枝分かれして配設された複数の分岐線15を備えている。これら複数の分岐線15には、コネクタ13を介して、複数のトンネル用の照明灯17(負荷)がそれぞれ接続されている。
負荷としてトンネル用の照明灯17が用いられている。すなわち、トンネルの内壁面に幹線ケーブル14がトンネルの連続する方向に沿って固定されて設けられ、この幹線ケーブル14から、トンネル内壁面に同方向に所定間隔を有して設けられた複数個の照明灯(蛍光灯など)17が分岐して配設されている。
【0015】
次に、分岐付ケーブルのコネクタ13の構成について説明する。
図1に示すように、幹線ケーブル14から枝分かれした分岐線15と負荷(照明灯)17とはコネクタ13で接続される。これにより、幹線ケーブル14に接続された電源からの電力がコネクタ13を介して各負荷17側に供給されることとなる。
各コネクタ13は、分岐線15の先端に接続されたソケット11と、負荷17に接続されたプラグ12とで構成されている。ソケット11はプラグ12に嵌合される構成である。ソケット11にプラグ12を嵌合すれば、幹線ケーブル14からの電源電力を照明灯17に供給することができる。
また、図1に示すように、上記負荷17側のプラグ12としては、負荷17自体に備えられているタイプ(直結タイプ)がある。また、負荷17から配線を通じてその先端に設けられているタイプ(中間接続タイプ)もある。
【0016】
次に、本願発明に係る分岐付ケーブルのコネクタ13の詳細について説明する。
図2に示すように、ソケット11の本体(モールドソケット)は(合成樹脂または合成ゴム)で形成されている。
図3(b)に示すように、このソケット11の嵌合面には、単層3線式の場合で、プラグ12との間で電気的接続を行う3つの電極部を備えている。3つの電極部のうち、1つは信号用の電極部31であり、残り2つは信号用の電極部32および短絡用の電極部33である。
【0017】
上記1つの信号用の電極部31には、ヒューズ16を埋め込み挿入可能な挿入穴25が設けられている。その挿入穴25の奥側には、全面がニッケル等でめっきされた電源側電極(ピン)21が埋設されている。
図3(a)に示すように、金属製の電源側電極21は、電源側ケーブルのピン26に接続された第1の円筒体と、これに連続して挿入穴25の奥底に突出する第2の円柱体と、これらの第1の円筒体、第2の円柱体より大径のフランジ部とで構成されている。この電源側の電極21は、その全面がニッケル等でめっきされている。
一方、他の信号用電極部33および短絡用の電極部32には、全面がニッケル等でめっきされたソケットタイプの電源側電極が埋設されている。なお、これら電極部31,32,33はいずれもケーブル中の心線にピン26を介して電気的に接続されていることはもちろんである。
すなわち、モールドソケット11の電源側には、分岐線15のケーブルが埋設されている。モールドソケット11の本体において、分岐線15のケーブルの3本の心線は枝分かれして、それぞれ3本の円柱体であるピン26に電気的に接続されている。3本のピン26はソケット11のモールドされた本体に埋め込まれて固定されている。
【0018】
一方、図4(a),(b)に示すように、プラグ12は、上記ソケット11と同様にその本体(モールドプラグ)が合成樹脂または合成ゴムで形成されている。特に、図4(b)に示すように、そのプラグ12の嵌合面には、上記ソケット11との電気的接続を行う3つの電極部が設けられている。
3つの電極部のうち、1つの信号用の電極部41の挿入穴25には、上記ソケット11に埋め込まれたヒューズ16の一方の電極を挿入して、これを支持するプラグ側電極23が配設されている。プラグ側電極23は、上記ヒューズ16の電極部を嵌め込み可能な大きさを有する円筒体をその嵌合面側に備えている。このプラグ側電極23は、その全面がニッケルでめっきされている。
また、他の信号用の電極部43および短絡用の電極部42には、上記ソケット11側の電源側電極21に対し、嵌め込んで挿入する嵌め込みピン24がそれぞれ配設されている。
また、プラグ12の負荷17側には、負荷17からのケーブルが埋設されている。モールドプラグ本体において、分岐線15のケーブルの3本の心線は枝分かれして、それぞれ上記プラグ側電極23、ピン24と埋設したピン27を介して電気的に接続されている。
そして、図5に示すように、これらのソケット11とプラグ12とが嵌合されて分岐ケーブルと負荷とが電気的接続されることとなる。この際、これらのソケット11とプラグ12との各嵌合面に形成された挿入穴25同士によりヒューズ16がコイルばね18を介して挿入される挿入口が形成されることとなる。
【0019】
次に、図5を参照して、本願発明に係る分岐付ケーブルの使用方法について説明する。
まず、その素材が高導電性で、かつ、ばね性に優れたベリリウム銅などで形成されたコイルばね18(所定径のスプリング)を準備する。そのコイルばね18を、上記電源側電極21の第2の円柱体をそのコイルばね18のなかに挿入しながら、上記大径フランジ部の側面に当接させる。
この後、管形のヒューズ16を準備する。管形ヒューズ16は定格電流が2Aのものを使用する。次いで、その管形ヒューズ16を上記ソケット11の嵌合面であって、信号用電極部に設けられた挿入穴25より挿入する。これにより、ヒューズ16はモールドソケット11内において、コイルばね18により付勢されてその挿入穴25より出没自在に支持される。
そして、信号線と短絡線とのピンの配置を合わせながら、ソケット11とプラグ12とを嵌合する。モールドソケットに埋め込まれ、コイルばね18により支持されているヒューズ16は、プラグ12に埋め込まれた負荷17側電極の筒体の内部に嵌め込まれる。これにより、分岐線15のソケット11と負荷17のプラグ12とが電気的に接続される。すなわち、幹線ケーブル14からの電源が負荷17側に供給可能となる。
電極間にコイルばね18を用いてヒューズ16を挟持するように構成すれば、異なる長さを有するヒューズ16を装着することができる。
【0020】
そして、ある負荷17に所定の電流値以上の電流が流れたとき、コイルばね18を介して過大電流(異常電流)が流れソケット11の挿入穴25に内蔵されたヒューズ16内のヒューズエレメントが溶断する。これにより、上記幹線ケーブル14から負荷17への電源の供給が遮断される。
しかし、負荷17への電源の供給が遮断されるのは、異常電流が流れた負荷17のみである。その他の負荷17には、幹線ケーブル14から安定した電源が供給される。すなわち、ある幹線ケーブル14に分岐して設けられた負荷17の1つに異常があった場合でも、その他の負荷17への電源の供給がストップされない。
【0021】
また、ある負荷17について、個別に点検・整備したいときに、上記ソケット11の挿入穴25に設けられるヒューズ16を取り外した状態で、ソケット11とプラグ12とを嵌合する。ソケット11のヒューズ16が装着されていないので、ソケット11とプラグ12との電気的接続が断たれる。
これにより、ある負荷17については点検・整備の状態であっても、その他の負荷17に対しては安定した電源の供給を行うことができる。
【0022】
図6は、この実施例での他の態様を示す。
これは、負荷17に対してケーブルを介することなく直接にソケット11を接続する場合である。この負荷17側に上記ヒューズ16を受ける電極を設けることができない場合が生じる。
そこで、図6に示すように、ヒューズ16を、コイルばね18を用いて、上記ソケット11のなかに埋め込み可能に設けることができる。これにより、負荷17の端子に直結するタイプのソケット11であっても、ヒューズ16を内蔵することができる。そして、その負荷17が異常時、または点検・整備時においても、他の負荷17に安定した電源を供給することができる。
図6はプラグ端子が負荷17に直接形成された例である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施例に係る分岐付ケーブルの全体の構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施例に係る分岐付ケーブルのコネクタの構成を示す正面図である。
【図3】この発明の一実施例に係る分岐付ケーブルのソケットの構成を示す断面図である。
【図4】この発明の一実施例に係る分岐付ケーブルのプラグの構成を示す断面図である。
【図5】この発明の一実施例に係る分岐付ケーブルのソケットとプラグとの嵌合状態を示す断面図である。
【図6】この発明の一実施例に係る分岐付ケーブルのヒューズ内蔵の別形態を示す断面図である。
【図7】従来に係る分岐付ケーブルの回路構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0024】
11 ソケット
12 プラグ、
13 コネクタ、
14 幹線ケーブル、
15 分岐線、
16 ヒューズ、
17 負荷(照明灯)、
18 コイルばね、
25 挿入穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続された幹線ケーブルと、この幹線ケーブルから分岐した複数の分岐線とを備え、
これらの分岐線の先端にそれぞれ設けられたソケットに、負荷が接続されたプラグを嵌合することにより、電源を上記負荷にそれぞれ供給する分岐付ケーブルであって、
上記ソケットまたは上記プラグには、所定の値以上の電流が流れたとき、上記幹線ケーブルから負荷への電源の供給を遮断するヒューズが内蔵された分岐付ケーブル。
【請求項2】
上記ソケットまたは上記プラグの嵌合面には、上記ヒューズが挿入される挿入口が設けられた請求項1に記載の分岐付ケーブル。
【請求項3】
上記ヒューズは、上記ソケットの電極と上記プラグの電極との間に、コイルばねを介して挟持された請求項1または請求項2に記載の分岐付ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−226621(P2008−226621A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62518(P2007−62518)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000196565)西日本電線株式会社 (57)
【Fターム(参考)】