説明

分岐状ポリシランコポリマーの製造方法

2種の異なるジハロシランおよび1種のトリハロシランの混合物を、有機液体媒体中でアルカリ金属カップリング剤と反応させることによって、分岐状ポリシランコポリマーがウルツ型カップリング反応経由で調製される。この分岐状ポリシランコポリマーは、反応混合物から回収される。キャッピングされた分岐状ポリシランコポリマーは、この反応混合物へのキャッピング剤の添加によって、同じウルツ型カップリング反応経由で調製される。キャッピング剤は、モノハロシラン、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、またはトリアルコキシシランである。分岐状ポリシランコポリマーおよびキャッピングされた分岐状ポリシランコポリマーは、有機液体媒体に可溶性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年4月28日に出願された米国仮出願番号第60/675635号に関する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、分岐状ポリシランコポリマーの製造方法、特に、2種の異なるジハロシランおよび1種のトリハロシランのウルツ型カップリング反応に関する。本発明の方法による改良は、この方法により分岐状ポリシランホモポリマーよりも分岐状ポリシランコポリマーが生成することである。この分岐状ポリシランコポリマーは、有機液体媒体に可溶性である。
【背景技術】
【0003】
ポリシランの調製のための初期の合成法は、ジクロロシラン類のウルツ型還元的カップリングを利用していた。ポリシランは、他の合成ルートによって合成することができる。例えば、(i)遷移金属触媒を用いる一置換シランのデヒドロカップリング、(ii)シクロシロキサンの開環重合、(iii)マスクしたシランのアニオン重合、および(iv) アルカリ金属を用いるジクロロシラン類のソノケミカルカップリングによってポリシランが調製されてきた。
【0004】
しかし、ウルツ型還元的カップリングを置き換えるための努力にもかかわらず、ポリシランの製造のためのジクロロシラン類のウルツ型還元的カップリングは、なお最もよく見られ、一般的に認められたポリシランの合成法である。ナトリウムなどのアルカリ金属を用いて100℃にてトルエンなどの溶媒中で行われるジクロロシラン類の還元的カップリングは、再現性が悪く且つ低収率であるにもかかわらず、依然として、ウルツ型カップリングは全体として最も効果的なポリシラン製造方法である。さらに、ポリシランを製造するための化学プロセスの開発は複雑且つ困難を伴うものであるため、依然として、ウルツ型カップリングはポリシランの調製方法の再現は困難であり取り組みがいがある。
【特許文献1】米国仮出願第60/571,184号明細書
【特許文献2】米国特許第2,563,005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1種のジハロシランおよび1種のトリハロシランを反応させることによる分岐状ポリシランの調製方法は、2004年5月14日に出願され、本出願の出願人と同じ出願人に譲渡された米国仮出願第60/571,184号に記載されている。しかし、この出願第60/571,184号による方法は、1種のジハロシランおよび1種のトリハロシランを用いるため、本発明による分岐状ポリシランコポリマーではなく、ホモポリマーである分岐状ポリシランを生成する。
【0006】
米国特許第2,563,005号(1951年8月7日)(同様に本出願の出願人と同じ出願人に委譲されている)には、実施例12において、2種のジハロシランおよび2種のトリハロシランを反応させることによる特定のオルガノポリシランを調製する方法が記載されている。しかし、この特許第2,563,005号による方法は、本発明による分岐状ポリシランコポリマーではなく、高度に架橋された分子であるポリシラン樹脂を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2種の異なるジハロシランおよび1種のトリハロシランの混合物を、有機液体媒体中でアルカリ金属カップリング剤と反応させることによる、ウルツ型カップリング反応による分岐状ポリシランコポリマーの第一の調製方法を対象とする。分岐状ポリシランコポリマーが、反応混合物から回収される。
【0008】
本発明は、2種の異なるジハロシランおよび1種のトリハロシランの混合物を、有機液体媒体中でアルカリ金属カップリング剤と反応させることによる、ウルツ型カップリング反応による分岐状ポリシランコポリマーの第二の調製方法も対象とする。キャッピング剤(capping agent)をこの反応混合物に添加し、かつ、キャッピングされた分岐状ポリシランコポリマーが反応混合物から回収される。キャッピング剤は、モノハロシラン、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、またはトリアルコキシシランであってよい。
【0009】
これらの実施態様において、有機液体媒体は、分岐状ポリシランコポリマーを溶解しうるものであることが好ましい。有機液体は、トルエンであることが最も好ましい。典型的には、アルカリ金属カップリング剤は、ナトリウムから選択される。反応は50℃〜200℃の範囲の温度で実施することができる。好ましくは、温度は、ナトリウムの溶融温度に近い110℃〜115℃の範囲であり、製造におけるナトリウムの分散の点でいくらかの有利性をもたらす。
【0010】
本発明は、下記式:
【化1】

〔式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基、またはアルケニル基を表す(但し、前記第一のジハロシランのR1およびR2は、前記第二のジハロシランのR3およびR4と同じではないことを条件とする)〕
をそれぞれ有する第一のジハロシラン、前記第二のジハロシラン、および前記トリハロシランの混合物を反応させる工程を含む。本発明のこれらの特徴および他の特徴は、以下の詳細な説明により明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ポリシランの合成に用いられる最も一般的な方法は、以下に示すような2種のジハロシランのウルツ型カップリングである:
【化2】

【0012】
このナトリウムカップリング反応は、典型的には、トルエンなどの炭化水素の還流下で行われる。この反応は、直鎖状ポリシラン、オリゴマーポリシラン、および環状ポリシランの混合物を生成し、直鎖状ポリシランの収率は低〜中位の範囲である。
【0013】
上述の方法とは対照的に、本発明の方法は、2種のジハロシランのウルツ型カップリングではなく、上記に示した2種の異なるジハロシランと単一のトリハロシランとのウルツ型カップリングを含む。したがって、本発明の方法は、分岐状ポリシランホモポリマーではなく分岐状ポリシランコポリマーを生成させることができる。本発明に用いるトリハロシランは、以下で示される:
【化3】

【0014】
R1、R2、R3、R4、およびR5基の例には、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、およびミリシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロブチルおよびシクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル、キセニル、およびナフチル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジルおよび2-フェニルエチル基等)、アルカリール基(例えば、トリル、キシリル、およびメシチル基等)、およびアルケニルグループ(例えば、ビニル、アリル、および5-ヘキセニル基等)が含まれる。しかし、一方のジハロシランのR1基およびR2基は、他方のジハロシランのR3基およびR4基と同じではないことを条件とする。
【0015】
既に言及したように、本発明の方法によるキャッピング剤は、モノハロシラン、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、またはトリアルコキシシランであってよい。
【0016】
用いることができるモノハロシランのいくつかの例には、ベンジルジメチルクロロシラン、n-ブチルジメチルクロロシラン、トリ-n-ブチルクロロシラン、エチルジメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクタデシルジメチルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロペンチルジメチルクロロシラン、n-プロピルジメチルクロロシラン、トリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、5-ヘキセニルジメチルクロロシラン、およびビニルジメチルクロロシランが含まれる。
【0017】
用いることができるジハロシランのいくつかの例には、t-ブチルフェニルジクロロシラン、ジシクロヘキシルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、(3-フェニルプロピル) メチルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン、(4-フェニルブチル)メチルジクロロシラン、n-プロピルメチルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、およびビニルメチルジクロロシランが含まれる。
【0018】
用いることができるトリハロシランのいくつかの例には、ベンジルトリクロロシラン、n-ブチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、n-デシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n-ヘプチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、n-オクチルトリクロロシラン、ペンチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、5-ヘキセニルトリクロロシラン、およびビニルトリクロロシランが含まれる。
【0019】
用いることができるモノアルコキシシランのいくつかの例には、t-ブチルジフェニルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチル-n-プロポキシシラン、n-オクタデシルジメチルメトキシシラン、オクチルジメチルメトキシシラン、シクロペンチルジエチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、およびビニルジメチルエトキシシランが含まれる。
【0020】
用いることができるジアルコキシシランのいくつかの例には、ジブチルジメトキシシラン、ドデシルメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-オクチルメチルジエトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、およびビニルメチルジメトキシシランが含まれる。
【0021】
使用することができるトリアルコキシシランのいくつかの例には、ベンジルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、およびビニルトリメトキシシランが含まれる。
【0022】
反応に用いるこれらのシランは、反応を行い、反応を完結させるために必要な化学量論的な割合で存在する。
【0023】
本発明の工程で用いるアルカリ金属カップリング剤は、ナトリウム、カリウム、またはリチウムであってよい。ナトリウムが分岐状ポリシランコポリマーの最も高い収率をもたらすので、ナトリウムが好ましい。反応に用いるアルカリ金属の量は、利用するシラン1モル当たり少なくとも3モルである。反応の完結を確実にするために、シラン1モル当たり3モルよりわずかに過剰量のアルカリ金属を添加することが好ましい。
【0024】
本発明のプロセスは、炭素原子1個〜8個を有するアルコールの添加によって容易になりうる。このアルコールの作用は、ナトリウム金属をナトリウム塩に酸化することであり、このナトリウム塩は遠心分離することができ、容易に除去される。用いることができる代表的なアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、およびオクタノールが含まれる。アルコールの組合せを採用することもできる。
【0025】
本反応が起こる有機液体媒体は、ジハロシランおよびトリハロシラン反応剤が溶解可能な任意の溶媒であってよい。用いる溶媒は、本プロセスにおいて生成する分岐状ポリシランコポリマーも溶解可能な溶媒であることが好ましい。これらの溶媒には、トルエンなどの炭化水素;パラフィン;エーテル;および窒素含有溶媒(例えば、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、およびシクロヘキシルアミン等)が含まれる。有機液体媒体は、溶媒の混合物(例えば、炭化水素溶媒およびエーテル等)であってよく、その一例は、トルエンとアニソールとの混合物である。好ましくは、トルエンが有機液体媒体として用いられる。有機液体媒体は、一般に、生成するアルカリ金属塩化物の溶剤ではなく、これらのアルカリ金属塩化物は濾過によって容易に除去することができる。本方法で用いる有機液体媒体の量は重要ではないが、徐々により多い量を用いると、徐々に、より低分子量の分岐状ポリシランコポリマーが得られることになりうる。
【0026】
本プロセスは、任意の温度で行うことができるが、反応温度が50℃〜200℃、好ましくは110℃〜115℃の範囲であることが好ましい。起こる反応は発熱性であり、好ましくは室温で開始させる。反応中は外部から熱を供給しない。温度を高くすると、通常、形成された分岐状ポリシランコポリマーの分子量の増大が観察される。しかし、これにより、有機液体媒体に不溶性の分岐状ポリシランコポリマーが生成する結果となりうる。
【0027】
本プロセスの再現性は、局所的な物質および熱の移動操作の再現性によって決定される。固有反応速度は非常に速いため、全体のプロセスは物質および熱の移動によって制御されなければならない。この点について、物質伝達/熱伝導は、(i)動力/体積をナトリウムの液滴または粒子を懸濁させるのに十分なレベルより高く保つこと、(ii)反応物質を液面下の十分に混合された領域に添加すること、および(iii)正確に添加速度を制御することによって制御されることができる。例えば、クロロシランの添加速度は、分子量分布の制御の重要な要因である。
【0028】
反応が所望の程度にまで進行した時に、分岐状ポリシランを反応混合物から任意の適切な方法によって回収することができる。分岐状ポリシランが、反応が起こった液体有機物質に不溶性である場合には、反応混合物から濾過により取り出すことができる。この方法は、他の不溶性物質(例えば、副生物として形成されたアルカリ金属塩化物等)がすくい取りまたはデカンテーションによって除去される場合に行うことが好ましい。反応の構成成分次第で、固体の副生物が混合物の表面に浮く場合がある一方、分岐状ポリシランコポリマーは沈殿する傾向がある。分岐状ポリシランが、液体有機物質に可溶性である場合には、他の不溶性物質を濾過によって除去することができる。分岐状ポリシランコポリマーは溶媒中に残り、洗浄により精製することができ、あるいは乾燥させて粉体にすることができる。
【実施例】
【0029】
本発明をより詳細に説明するために、以下の実施例を提示する。
【0030】
[実施例1]:分岐状ポリシランコポリマーの合成
〔フェニル−メチル、ジフェニル、メチルターポリマーの調製〕
トルエン(4,025グラム)およびナトリウム金属(163グラム)を、円筒状、ガラス製の6リットル反応槽に入れた後、ジャケットを通り再循環する浴を用いてトルエンを還流させた。この手順の間中、わずかに陽圧の窒素雰囲気を維持した。次いで、二重ピッチ撹拌翼(dual pitched-blade impeller)を用いて溶融ナトリウムを分散させ、ジャケット温度を110℃に保った。フェニルメチルジクロロシラン(365グラム)、ジフェニルジクロロシラン(127グラム)、およびメチルトリクロロシラン(89.3グラム)を含有する混合物を、上側の撹拌翼の真上に位置する浸漬管を通してこの反応槽に60分間に亘って導入した。発熱により113℃になった。この反応温度を16時間保持した後、内容物を40℃に冷却した。次いで、メタノール(455グラム)をゆっくりと添加して残存ナトリウムを酸化した。このスラリーを遠心分離器にかけて塩を分離した。トルエン溶液(2,690グラム)を濾過した後、真空蒸発法によって1,028グラムに濃縮した。この溶液をメタノール(9,800グラム)にゆっくりと加えて生成物を沈殿させた後、濾過し、真空オーブン中で乾燥した。収量は、粉末状白色固体200.1グラムであった。この物質をトルエン(371グラム)に再び溶解し、濾過し、もう一度メタノール(2,400グラム)に加えて沈殿させ、濾過し、真空乾燥して生成物175.2グラムを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーにより、分子量6,190、多分散指数3.8であることが示された。UV領域における最大吸収(すなわちλmax)は、330ナノメートル(nm)で測定された。生成物の50重量%溶液(アニソール中)は、780ナノメートル(nm)の波長で、初期および溶液中数週間後で99%の透過率(T)であった。
【0031】
[実施例2]:分岐状ポリシランコポリマーの合成
〔フェニル−メチル、ジフェニル、メチルターポリマーの調製〕
トルエン(4,025グラム)およびナトリウム金属(163グラム)を、円筒状、ガラス製の6リットル反応槽に入れた後、ジャケットを通り再循環する浴を用いてトルエンを還流させた。この手順の間中、わずかに陽圧の窒素雰囲気を維持した。次いで、二重ピッチ撹拌翼を用いて溶融ナトリウムを分散させ、ジャケット温度を110℃に保った。フェニルメチルジクロロシラン(445グラム)、ジフェニルジクロロシラン(68.7グラム)、およびメチルトリクロロシラン(69.3グラム)を含有する混合物を、上側の撹拌翼の真上に位置する浸漬管を通してこの反応槽に60分間に亘って導入した。発熱により113℃になった。この反応温度を2時間保持した後、内容物を40℃に冷却した。次いで、メタノール(453グラム)をゆっくりと添加して残存ナトリウムを酸化した。このスラリーを濾過して塩を分離した。トルエン溶液(4,134グラム)を真空蒸発法により2,109グラムに濃縮した後、再び濾過した。この溶液をメタノール(10,500グラム)にゆっくりと加えて生成物を沈殿させた後、濾過し、真空オーブン中で乾燥した。収量は、粉末状白色固体224グラムであった。この物質をトルエン(395グラム)に再び溶解し、濾過し、もう一度メタノール(2,566グラム)に加えて沈殿させ、濾過し、真空乾燥して生成物202グラムを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーにより、分子量46,600、多分散指数19.0であることが示された。UV領域における最大吸収(すなわちλmax)は、332ナノメートル(nm)で測定された。生成物の50重量%溶液(アニソール中)は、780ナノメートル(nm)の波長で、99%の透過率(T)であった。
【0032】
[実施例1]:分岐状ポリシランコポリマーの合成
〔フェニル−メチル、ジフェニル、メチルターポリマーの調製〕
トルエン(4,308グラム)およびナトリウム金属(121グラム)を、円筒状、ガラス製の6リットル反応槽に入れた後、ジャケットを通り再循環する浴を用いてトルエンを還流させた。この手順の間中、わずかに陽圧の窒素雰囲気を維持した。次いで、二重ピッチ撹拌翼を用いて溶融ナトリウムを分散させ、ジャケット温度を110℃に保った。フェニルメチルジクロロシラン(295グラム)、ジフェニルジクロロシラン(102グラム)、およびメチルトリクロロシラン(50.9グラム)を含有する混合物を、上側の撹拌翼の真上に位置する浸漬管を通してこの反応槽に120分間に亘って導入した。発熱により112℃になった。この反応温度を2時間保持した後、内容物を40℃に冷却した。次いで、メタノール(338グラム)をゆっくりと添加して残存ナトリウムを酸化した。このスラリーを濾過して塩を分離した。トルエン溶液(4,584グラム)を真空蒸発法により1,028グラムに濃縮した後、再び濾過した。この溶液をメタノール(8,500グラム)にゆっくりと加えて生成物を沈殿させた後、濾過し、真空オーブン中で乾燥した。収量は、粉末状白色固体172.8グラムであった。この物質をトルエン(321グラム)に再び溶解し、濾過し、もう一度メタノール(2,200グラム)に加えて沈殿させ、濾過し、真空乾燥して生成物152グラムを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーにより、分子量16,500、多分散指数9.7であることが示された。UV領域における最大吸収(すなわちλmax)は、332ナノメートル(nm)で測定された。生成物の50重量%溶液(アニソール中)は、780ナノメートル(nm)の波長で、初期および溶液中数週間後で99%の透過率(T)であった。
【0033】
本発明の分岐ポリシランコポリマーは、ポリシランの通常の用途に利用することができる。例えば、(1)シリコーンカーバイドの前駆体;(2)光電子材料(例えば、フォトレジスト等);(3) 有機感光材料;(4) 光導波路;(5)光メモリー;(6)ガラス、セラミック、およびプラスチックの表層保護;(7)反射防止膜;(8)光通信のフィルター膜;(9) 放射線の検出;(10)ウエーブガイド;(11)低誘電率(k)化学気相蒸着法(CVD);(12)薄層フィルム;(13) 誘電率;(14)レーザー照射;(15)複合体;(16)インクジェット印刷;(17)屈折率測定(RI);(18)耐火性物質;(19)ナノチューブ;(20)充填剤;(21)薄膜;(22)光学機器;(23)半導体素子の製造;(24)焼結;(25)接着剤;(26)電気泳動;(27)電気回路;(28)エレクトロルミネッセンス素子;(29)太陽電池;(30)光伝導体;(31)プリント基板;(32)フォトリソグラフィ;(33)不織布;(34)光学膜;(35)多孔性材料;(36)光ディスク;(37)電気ヒーター;(38)セラミック;(39)ワイヤー;(40)インターコネクション;(41)写真イメージング材料;(42)結合材;(43)熱絶縁体;(44)エッチングマスク;(45)炭化;(46)陰極(cathode);(47)光ファイバ;(48)焼成処理および/または熱処理;(49)耐熱コーティング材料;(50)絶縁性コーティング;(51)化粧品;(52)フリットおよび/または焼結ガラス;ならびに(53)架橋剤等として使用することができる。本分岐状ポリシランコポリマーは、通常、1,000〜50,000の範囲の分子量を有する。
【0034】
本明細書に記載した化合物、組成物、および方法について、本発明の基本的な特徴から逸脱することなしに他の変形態様を考え出すことができる。本明細書で特に説明した本発明の実施態様は、単なる例示であり、添付の特許請求の範囲に定義した本発明の範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルツ型カップリング反応により分岐状ポリシランコポリマーを調製する方法であって、
第一のジハロシラン、第二のジハロシラン、および単一のトリハロシランの混合物を、有機液体媒体中でアルカリ金属カップリング剤と反応させる工程と、
前記分岐状ポリシランコポリマーを前記反応混合物から回収する工程と
を含み、
前記第一のジハロシラン、前記第二のジハロシラン、および前記トリハロシランが、それぞれ、下記式:
【化1】

〔式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基、またはアルケニル基を表す(但し、前記第一のジハロシランのR1およびR2は、前記第二のジハロシランのR3およびR4と同じではないことを条件とする)〕
を有する、方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属カップリング剤がナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属カップリング剤を酸化するために、炭素原子1個〜8個を有するアルコールを前記反応混合物に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法で調製された、分岐状ポリシランコポリマー。
【請求項5】
ウルツ型カップリング反応により分岐状ポリシランコポリマーを調製する方法であって、
第一のジハロシラン、第二のジハロシラン、および単一のトリハロシランの混合物を、有機液体媒体中でアルカリ金属カップリング剤と反応させる工程と、
前記反応混合物に、モノハロシラン類、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、およびトリアルコキシシランからなる群から選択されるキャッピング剤を添加する工程と、
キャッピングされた分岐状ポリシランコポリマーを前記反応混合物から回収する工程と
を含み、
前記第一のジハロシラン、前記第二のジハロシラン、および前記トリハロシランが、それぞれ、下記式:
【化2】

〔式中、R1、R2、R3、R4、およびR5は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基、またはアルケニル基を表す(但し、前記第一のジハロシランのR1およびR2は、前記第二のジハロシランのR3およびR4と同じではないことを条件とする)〕
を有する、方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属カップリング剤がナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ金属カップリング剤を酸化するために、炭素原子1個〜8個を有するアルコールを前記反応混合物に添加する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法で調製された、キャッピングされた分岐状ポリシランコポリマー。

【公表番号】特表2008−539303(P2008−539303A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508865(P2008−508865)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/011525
【国際公開番号】WO2006/118718
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】