説明

分散発電システム

【課題】省エネルギー性が高く、環境負荷が小さい分散発電システムを提供する。
【解決手段】分散発電システム100は、各発電装置、SB、商用電源から電力を取得し、指令に応じて電力を分配する電力分配装置101と、SBからの放電量、もしくはSBへの蓄電量を算出して指令する蓄放電判定手段102と、需要家の電力負荷、PVの発電力、SBの蓄電力の状態、FCの貯湯タンクの状態からFCの運転と発電量を算出して指令するFC運転判定手段103と、太陽光のエネルギーを電力に変換するPV104と、指令に合わせた電力の蓄放電を行うSB105と、指令に合わせた発電力で発電し、発電時の廃熱を回収するFC106と、FCの廃熱をお湯として蓄熱する貯湯タンク107とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置、燃料電池コージェネレーション装置、蓄電池などの発電・蓄電に関する装置を設ける分散発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分散発電システムは、例えば太陽光発電装置(Photo Voltaic、以下PV)、燃料電池コージェネレーション装置(Fuel Cell、以下FC)、蓄電池(Storage Battery、以下SB)などを備えた創エネルギー・省エネルギーを目的としたシステムである。
【0003】
PVは、太陽光のエネルギーを電力に変換し家庭に供給する自然エネルギー発電であり、天候や気象条件の変化のため、常に発電電力が変動する。
【0004】
FCは、ガスなどから水素を取り出し、水素を燃料として発電を行い、さらにその際の廃熱を回収して貯湯タンクに蓄熱することで需要家の給湯負荷を賄う。FCは運転制御が可能であり、PVとは異なり任意の時間・発電力で運転することが可能であるが、需要家の電力負荷を超えた電力量は蓄電を行う必要があり、また貯湯タンクの容量を超えないよう蓄熱する必要があるという制限がある。また、一般的にFCは発電力が大きいほど省エネルギー性が高いという特性を持っている。
【0005】
SBは、商用電源やFC・PVの発電を利用して蓄電し、蓄電した電力を放電することで需要家の電力負荷を賄うことができる。蓄電・放電は制御可能であるが、蓄電可能な電力量には上限があるという制限がある。
【0006】
分散発電システムは、これらのうち1つもしくは複数の組み合わせで構成され、需要家にエネルギーを供給する。
【0007】
従来の分散発電システムとして例えば特許文献1に示すものがある。
【0008】
特許文献1の発明では、自然エネルギー発電装置と、SBと、FCを備えており、SBの蓄電状態により、SBの蓄放電制御、FCの運転制御を行うことで、インバータ・コンバータを介することによる効率減少を少なくし省エネ性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−254694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来技術によれば、制御可能なFC・SBをSBの蓄電状態を主として制御しており、不安定で制御不可能なPVの発電量や変動する需要家の電力負荷を考慮していない。このため、FCの発電力を効率が高く発電することができず省エネルギー性が向上しない。また、PV発電とFCの発電が重複し、逆潮する電力が増加する。逆潮した電力は、現在の日本の配電環境では高圧に変換され、変換される過程で大きな変換ロスが生じ、また別の需要家に送電する過程での送電ロスも生じるため、環境負荷が大きくなる。
【0011】
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、不安定な自然エネルギー発電と、変動する需要家の負荷に合わせて、効率の良いSBの蓄放電制御とFCの運転制御により、SBとFCの機器特性の制限の中で、システム全体の省エネルギー性を高めることのできる分散発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の分散発電システムは、
自然エネルギー発電装置と、
自家発電装置と、
蓄電池を備えた需要家で、
自然エネルギー発電の発電力と、需要家の電力負荷と、蓄電池の蓄電状態との関係が、需要家の電力負荷から自然エネルギー発電の発電力を減算した値が第一の所定の値以上である場合に自家発電装置を発電させ、
自然エネルギー発電の発電力が需要家の電力負荷を超過する場合に、蓄電量が第二の所定の値以下の場合には、超過分の電力を蓄電池へ蓄電し、それ以外の場合には超過分の電力を商用電源への逆潮を行い、
自然エネルギー発電の発電力が需要家の電力負荷に不足する場合かつ、自家発電装置の発電力と自然エネルギー発電の発電力の合計が需要家の電力負荷を超過する場合に、超過分の電力を蓄電池へ蓄電し、
自然エネルギー発電の発電力が需要家の電力負荷に不足する場合かつ、自家発電装置の発電力と自然エネルギー発電の発電力の合計が需要家の電力負荷に不足する場合に、蓄電池の充電状態が空でなければ不足分の電力を蓄電池からの放電で、蓄電池の充電状態が空であれば商用電源からの電力の取得で不足分の電力を補うよう選択し、
選択に従い電力を分配する電力分配装置
を備える。
【0013】
本構成によれば、省エネルギー性が高く、環境負荷が小さい分散発電システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、省エネルギー性が高く、環境負荷が小さい分散発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における分散発電システムの構成図
【図2】負荷電力とPV発電量を減算した値と、蓄電状態情報との関係によるFC運転指令情報
【図3】負荷電力とPV発電量を減算した値と、蓄電状態情報との関係による蓄放電指令情報
【図4】FCが発電しない場合の電力分配と各電力値との関係
【図5】FCが発電する場合の電力分配と各電力値との関係
【図6】電力負荷、PV発電力の一例
【図7】本実施の形態でのFCの発電力とSBの蓄電状態情報各電力の推移の一例
【図8】PV発電力を考慮しなかった場合のFCの発電力とSBの蓄電状態情報の推移の一例
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態の分散発電システムの図である。
【0018】
同図の分散発電システム100は、各発電装置、SB、商用電源から電力を取得し、指令に応じて電力を分配する電力分配装置101と、SBからの放電量、もしくはSBへの蓄電量を算出して指令する蓄放電判定手段102と、需要家の電力負荷、PVの発電力、SBの蓄電力の状態、FCの貯湯タンクの状態からFCの運転と発電量を算出して指令するFC運転判定手段103と、太陽光のエネルギーを電力に変換するPV104と、指令に合わせた電力の蓄放電を行うSB105と、指令に合わせた発電力で発電し、発電時の廃熱を回収するFC106と、FCの廃熱をお湯として蓄熱する貯湯タンク107とを備える。
【0019】
電力分配装置101は、蓄放電指令情報に従い、各装置からの電力と商用電源108から購入する電力である買電力とを、需要家電力負荷110で要求されている電力である負荷電力と、商用電源108への逆潮電力である売電力とに分配する装置である。
【0020】
本実施の形態では、電力分配装置101は、PV104からPV104で発電された電力であるPV発電力を、SB105から現在のSBに蓄電されている蓄電力である蓄電状態情報を、FC106からFC106で発電された電力であるFC発電力を取得する。取得した各電力から、負荷電力と、PV発電力と、SB蓄電状態情報と、FC発電力との各値を示す電力状態情報として算出する。
【0021】
また、本実施の形態では、PV発電力を逆潮により売電力とすることは出来るが、FC発電力を逆潮することはできない。
【0022】
また、電力分配装置101は、蓄放電判定手段102から、どれだけの電力をSB106に蓄電するか、もしくはSB106からどれだけの電力を放電させ取得するかを示す蓄放電指令情報を取得する。電力分配装置101は、取得した蓄放電指令情報に従い、各発電装置から取得した電力から蓄電する電力である蓄電力をSB105へ出力するか、もしくは蓄電されている電力の放電である放電力をSB105から取得するかを行う。
【0023】
また、電力分配装置101は、各発電装置から取得した発電力と蓄放電指令に従って取得した放電力を負荷電力へ出力する。各発電装置から取得した発電力と蓄放電指令に従って取得した放電力の合計が、負荷電力に不足している場合は、電力の不足分を商用電源108から買電力を取得し、負荷電力へ出力する。
【0024】
また、各発電装置から取得した発電力から蓄放電指令に従って出力した蓄電力を減算した電力が、負荷電力を上回っている場合には、電力の余剰分を商用電源108へ売電力を出力する。
【0025】
上記の電力の分配により、電力分配装置101へ出力された電力は全て負荷電力、売電力、蓄電力へ分配して出力され収支を取り、常に需要家電力負荷110へ負荷電力を出力する。
【0026】
また、電力分配装置101は、コンバータ・インバータを備え、上記の通り取得した電力を出力する場合に、取得した電力を出力する電力の形式に合わせてDC-AC変換、AC-DC変換を行う。
【0027】
FC運転判定手段103は、需要家の電力負荷、PVの発電力、SBの蓄電力の状態、FCの貯湯タンクの状態からFCの運転と発電量を算出して指令する処理部である。
【0028】
本実施の形態では、FC運転判定手段103は、電力分配装置101から電力状態情報を、貯湯タンク107から貯湯タンク内に蓄熱されているお湯の総熱量を示すタンク内熱量情報を取得する。次に、取得した電力状態情報のうち、負荷電力とPV発電量を減算した値と、蓄電状態情報との関係により、図2のように、FC106が発電を行う発電量を示す指令値であるFC運転指令情報を出力する。
【0029】
負荷電力からPV発電量を減算した値がFC106の最低の発電力である300w以上の場合、つまり負荷電力がPV発電量より300w以上大きい場合、かつ蓄電状態情報が満充電の場合には、FC運転指令情報に「負荷電力からPV発電量を減算した値」を出力する。つまり、PV発電力とFC発電力の合計が負荷電力と等しくなるようなFC発電力を指令する。
【0030】
また、負荷電力からPV発電量を減算した値が300w以上の場合、かつ蓄電状態情報が満充電ではない場合には、FC運転指令情報にFC106の定格の発電力である「1000w」を出力する。
【0031】
また、負荷電力からPV発電量を減算した値が300w未満の場合には、FC運転指令情報に停止を示す「0」を出力する。
【0032】
また、タンク内熱量情報が貯湯タンク107に蓄熱可能な上限熱量に等しくなった場合には、常にFC運転指令情報に停止を示す「0」を出力する。これは、FC106が発電を行った場合に発生する熱量を貯湯タンクに蓄熱できなくなるためである。
【0033】
また、FC運転判定手段103は、PV発電力がピークとなる時刻である毎日12時に、貯湯タンク107に蓄熱可能な上限熱量からタンク内熱量情報を減算し、貯湯タンク107に蓄熱可能な残熱量を算出する。この蓄熱可能な残熱量を、FC106が定格である1000wの発電力で発電を行った場合のFC106の発熱量あたりの発電力で除算した値である予測FC発電力を算出する。これは、蓄熱可能な残熱量を蓄熱しきった場合のFC106の発電力の合計に相当する。
【0034】
FC106は、指令に合わせた発電力で発電し、発電時の廃熱を回収する装置である。
【0035】
本実施の形態では、FC106は、FC運転判定手段103からFC運転指令情報を取得する。取得した値の発電量で発電を行うよう、商用ガス109から購入するガスである買ガスを取得し、水素を発生させて発電を行い、発電した電力量であるFC発電力を出力する。また、発電の際に発生した廃熱の回収量であるFC発熱量を貯湯タンク107にお湯として蓄熱する。
【0036】
本実施の形態では、FC106の発電力の定格値は1000wで、最低値は300wであり、定格値に近い発電力ほどエネルギー効率が高く、省エネ性が高い。
【0037】
貯湯タンク107は、FCの廃熱をお湯として蓄熱する装置である。
【0038】
本実施の形態では、FC106の発電時におけるFC発熱量を取得し、蓄熱する。需要家給湯負荷111で要求されている給湯熱量である負荷熱量に応じて、貯湯タンク107から出湯する。
【0039】
また、貯湯タンク107は、毎日12時に、タンク内熱量情報を算出する。
【0040】
蓄放電判定手段102は、SBからの放電量、もしくはSBへの蓄電量を算出して指令する処理部である。
【0041】
本実施の形態では、蓄放電判定手段102は、毎日12時に、FC運転判定手段103からFC予測発電力を取得する。蓄放電判定手段102は、過去24時間の負荷電力の総和を記憶しており、その値を翌24時間の負荷電力の総和の予測値とする。翌24時間の負荷電力の総和の予測値から、FC予測発電力を減算した値をPV蓄電力として算出する。PV蓄電力は、予測される1日の電力量のうち、FCの発電力では賄いきれない電力を示している。
【0042】
また、蓄放電判定手段102は、電力分配装置101から電力状態情報を取得する。電力状態情報のうち、負荷電力とPV発電量を減算した値と、蓄電状態情報との関係により、図3のように、蓄放電指令情報を出力する。
【0043】
負荷電力がPV発電力未満の場合かつ、蓄電状態情報がPV蓄電力未満の場合には「PV発電力から負荷電力を減算した値を蓄電」する蓄放電指令を算出する。これは、PV発電力から負荷電力を賄い、余剰の電力をSB105に蓄電することを示している。
【0044】
また、負荷電力がPV発電力以上の場合には、前述の通りFC106が発電する場合があり、PV発電力とFC発電力の合計が負荷電力以上の場合には、「PV発電力とFC発電力の合計から負荷電力を減算した値を蓄電」する蓄放電指令を算出する。これは、PV発電力とFC発電力の合計から負荷電力を賄い、余剰の電力をSB105に蓄電することを示している。
【0045】
また、同じく負荷電力がPV発電力以上の場合かつ、PV発電力とFC発電力の合計が負荷電力未満の場合かつ、蓄電状態情報が空でない場合には、「負荷電力からPV発電力とFC発電力の合計を減算した値を放電」する蓄放電指令を算出する。これは、PV発電力とFC発電力の合計から負荷電力を賄うのに不足している電力をSB105から取得し、負荷電力を賄うことを示している。
【0046】
それ以外の場合については、蓄放電指令は算出されない。
【0047】
SB105は、蓄放電指令に合わせた電力の蓄放電を行う装置である。
【0048】
本実施の形態では、SB105は、電力分配装置101から蓄電力を取得し蓄電する。また、電力分配装置101からの要求に応じて放電力を出力する。また、蓄電状態情報を算出する。
【0049】
また、SB105は満充電時で4,000whを蓄電可能とする。
【0050】
PV104は、太陽光のエネルギーを電力に変換する装置である。
【0051】
本実施の形態では、PV104は、太陽光のエネルギーを電力に変換し、PV発電力を出力する。
【0052】
以下、分散発電システム100の本実施の形態における動作の一例について説明する。
【0053】
前提として、現在時刻を12時とし、分散発電システム100は、24時間以上運転を行っており、蓄放電判定手段102は、過去24時間の負荷電力の総和を10,000whと記憶しているとする。
【0054】
また、現在、貯湯タンク107のタンク内熱量は6,000whとし、貯湯タンク107に蓄熱可能な上限熱量は20,000whとする。また、FC106が定格である1000wの発電力で発電を行った場合のFC106の発熱量あたりの発電力は、発熱量1whあたり0.5whとする。
【0055】
まず、現在時刻が12時のため、PV蓄電力を算出する一連の処理を行う。FC運転判定手段103は、貯湯タンク107からタンク内熱量情報として6,000whを取得する。
【0056】
次に、蓄熱可能な上限熱量である20,000whから、タンク内熱量情報6,000whを減算し、蓄熱可能な残熱量として14,000whを算出する。この値に、FC106が定格である1000wの発電力で発電を行った場合のFC106の発熱量あたりの発電力である、発熱量1whあたり0.5whを乗算し、予測FC発電力として7,000whを算出する。これは、FCが7,000wh発電すると貯湯タンク107に蓄熱出来なくなり、FCが停止することを意味している。
【0057】
次に、蓄放電判定手段102は、FC運転判定手段103から予測FC発電力7,000whを取得する。蓄放電判定手段102は、過去24時間の負荷電力の総和として10,000whを記憶しており、その値を翌24時間の負荷電力の総和の予測値とする。翌24時間の負荷電力の総和の予測値10,000whから、FC予測発電力7,000whを減算した値の3,000whをPV蓄電力として算出する。
【0058】
以降、翌日の12時になるまで、算出したPV蓄電力を利用して、分散発電システム100は運転を行う。前述の通り、FC運転判定手段103は、PV発電力と、負荷電力と、蓄電状態情報と、タンク内熱量情報とによりFC106の運転を判定し、蓄放電判定手段102は、算出したPV蓄電力と、PV発電力と、負荷電力と、蓄電状態情報とでSB105の蓄放電を判定する。
【0059】
この判定により、電力分配装置101で行われる電力分配と各値との関係をFC106が発電しない場合を図4に、FC106が発電する場合を図5に示す。図4に示すように、PV発電力のみで電力負荷を賄える場合には、FC106は発電せず、PV蓄電量まで蓄電し、余剰分を蓄電する。
【0060】
また、同じく図4に示すように、PV発電力のみで電力負荷を賄えないが、FC106が発電するほど電力が不足していない場合には、SB105に蓄電があれば放電で賄い、蓄電がなければ買電力で補う。
【0061】
また、図5に示すように、PV発電力のみで電力負荷を賄えず、FC106が発電する場合には、蓄電状態情報が満充電であれば、FC106はPV発電力の負荷電力への不足分のみ発電する。これは、FC106がこの値以上で発電すると電力が余剰となるが、蓄電できないためである。蓄電状態情報が満充電でなければ、FC106は定格で発電し、余剰となる電力はSB105へ蓄電する。FCが定格で発電しても負荷電力を賄いきれない場合には、蓄電状態情報が空でなければSB105からの放電力で補い、空であれば買電力で補って負荷電力を賄う。
【0062】
一例として、電力負荷、PV発電力が図6のような日の場合の、各時刻における本実施の形態でのFC106の発電とSB105の蓄電状態情報各電力の推移について説明する。12時の時点で、SB105の蓄電状態情報は1,000whとし、算出されたPV発電量は前述の通り3,000whとする。
【0063】
この日におけるFC発電力と蓄電状態情報の推移を図7に示す。12時から17時までは、PV発電力が負荷電力を上回っており、余剰分をPV蓄電力である3,000whとなるまで蓄電し、それを越えた分については逆潮により売電する。PV発電力がゼロに近くなる18時から24時はPV発電力より負荷電力が300w以上上回るため、FC106が定格で発電を行い、電力負荷を賄い、余剰分が蓄電される。定格発電でも負荷電力に不足する分に関しては、SB105からの放電で賄う。1時から6時までは、負荷電力が小さいため、FCが発電せず、SB105からの放電で全て賄う。再度PV104の発電が始まる8時から9時までは、負荷電力がPV発電力を上回っており、不足分をSB105からの放電で賄う。10時から11時は、PV発電力が負荷電力を上回っており、余剰分をPV蓄電力である3,000whとなるまで蓄電し、それを越えた分については逆潮により売電する。
【0064】
以下、分散発電システム100の本実施の形態における効果について説明する。
【0065】
本実施の形態では、SB105を備えているため、負荷電力以上の発電量で発電し、効率を向上させることが可能であり、前述の運転では、蓄電量が満充電である4,000whに達しないため、FC発電時には効率の高い定格での発電を常に行うことができている。
【0066】
仮に、FC運転判定手段103が、不安定な自然エネルギー発電装置であるPV104のPV発電力を考慮せず、負荷電力が300w以上の場合にFCを発電させ、本実施の形態と同発電量を発電した場合のFC106の発電とSB105の蓄電状態情報の推移について図8に示す。
【0067】
本実施の形態では、12時から17時にPV発電力があるためFC106の発電が行われないが、この場合には発電が行われる。PV発電力だけでも負荷電力を賄えている時間に、さらにFCが発電するために、蓄電量の増加が著しく、満充電である4,000whとなってしまい、それ以降はPV発電力を全て逆潮し、FCの発電力は余剰とならないよう電力負荷と同じ値に低下させなければならないため効率が低下している。
【0068】
このため、不安定で制御不可能なPV発電力に合わせて、PV発電力が負荷電力を賄えている時間にはFC106を発電させないよう、制御可能なFC106を発電させることで効率を向上させることができる。
【0069】
また、後述するように、発電した電力のうち逆潮する量が増加し、買電力の量が増加するため、環境負荷も大きくなる。
【0070】
よって、本実施の形態では、FC運転判定手段103で、負荷電力とPV発電量を減算した値と、蓄電状態情報との関係により、図2のように、FC106が発電を行う発電量を示す指令値であるFC運転指令情報を出力しているため、FC106の発電の効率を向上させシステム全体の省エネルギー性を高め、環境負荷が小さい。
【0071】
また、本実施の形態では、PVが発電している昼間に、PV発電量の一部を事前に算出したPV蓄電量まで蓄電を行い、残りを逆潮により売電しており、夜間の定格でのFC発電でも不足する負荷電力や、FC106停止後の負荷電力も全て、SB105に蓄電したPV発電力もしくはFC発電力の余剰電力分で賄えている。
【0072】
仮に、昼間のPV発電力を全て逆潮により売電した場合には、夜間の定格でのFC発電力でも不足する負荷電力や、FC106停止後の負荷電力は全て買電することになる。逆潮により売電した電力は、現在の日本の配電環境では高圧に変換され、変換される過程で大きな変換ロスが生じ、また別の需要家に送電する過程での送電ロスも生じる。この場合、逆潮した電力の全てが別の需要家に送電されず、また逆潮した分の電力は後の電力不足時に買電しているため、CO2排出量などの環境負荷が大きくなっている。
【0073】
本実施の形態では、SB105を備えているため、CO2排出量など環境負荷の観点では、発電した電力で自家消費可能な分はSB105に蓄電し、その上での余剰分のみ逆潮を行った方が、環境負荷が小さい。
【0074】
よって、本実施の形態では、蓄放電判定手段102で、昼間のPV発電量のうち、予測される1日の電力量のうち、FC106の発電力では賄いきれない電力の予測値を示しているPV蓄電力分を蓄電し、残りを売電しているため、発電した電力を全て自家消費し、その上での余剰分のみ逆潮を行っているため、環境負荷が小さい運転となっている。
【0075】
以上から、本発明のかかる構成によれば、分散発電システム100の省エネルギー性を高め、環境負荷が小さくすることができる。
【0076】
以上、本発明の分散発電システムについて、実施の形態について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0077】
例えば、本実施の形態の構成においては、FC運転判定手段103で、FC106が発電する条件として、負荷電力からPV発電力を減算した値がFC103の最低発電力に設定しているが、ゼロでも良いし、最低以上の発電力でも良いし、定格の発電力でも良い。また、現在の時刻の負荷電力とPV発電力との関係だけでなく、2時間連続で条件を満たした場合に発電するなど、期間で判定しても良い。また、負荷電力からPV発電力を減算した値でなく、負荷電力とPV発電力の割合でも良い。また、探索手法などで運転を計画し、その運転時間の範囲内かつ、負荷電力からPV発電力が上記のような一定の条件を満たした場合などでも良い。
【0078】
また、蓄放電判定手段102で、予測される1日の電力量のうち、FC106の発電力では賄いきれない電力の予測値を示しているPV蓄電力を、翌24時間の負荷電力の総和の予測値と、FC予測発電力とから算出しているが、翌24時間の負荷電力の総和の予測値は、過去数日間の1日あたりの電力の総和の平均や、同曜日の1日あたり電力の総和の平均や、過去数日間の1日あたりの総和からニューラルネットなどで予測を行って算出しても良い。また、FC予測発電力は、探索手法などで運転を計画し、その計画におけるFCの発電力などでも良い。
【0079】
また、PV104は、風力発電や水力発電など他の自然エネルギー発電でも良い。
【0080】
また、FC106は、ガスエンジンコージェネレーション装置などの他の自家発電装置でも良い。
【0081】
また、12時にPV蓄電量を計算しているが、何時に行っても良い。
【0082】
また、本発明の処理を行う手段は装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、1つもしくは複数の発電装置と蓄電装置を備えた分散発電システムにも応用できる。
【符号の説明】
【0084】
100 分散発電システム
101 電力分配装置
102 蓄放電判定手段
103 FC運転判定手段
104 太陽光発電装置
105 蓄電池
106 燃料電池コージェネレーション
107 貯湯タンク
108 商用電源
109 商用ガス
110 需要家電力負荷
111 需要家給湯負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギー発電装置と、
自家発電装置と、
蓄電池を備えた需要家で、
自然エネルギー発電の発電力と、需要家の電力負荷と、蓄電池の蓄電状態との関係が、需要家の電力負荷から自然エネルギー発電の発電力を減算した値が第一の所定の値以上である場合に自家発電装置を発電させ、
自然エネルギー発電の発電力が需要家の電力負荷を超過する場合に、蓄電量が第二の所定の値以下の場合には、超過分の電力を蓄電池へ蓄電し、それ以外の場合には超過分の電力を商用電源への逆潮を行い、
自然エネルギー発電の発電力が需要家の電力負荷に不足する場合かつ、自家発電装置の発電力と自然エネルギー発電の発電力の合計が需要家の電力負荷を超過する場合に、超過分の電力を蓄電池へ蓄電し、
自然エネルギー発電の発電力が需要家の電力負荷に不足する場合かつ、自家発電装置の発電力と自然エネルギー発電の発電力の合計が需要家の電力負荷に不足する場合に、蓄電池の充電状態が空でなければ不足分の電力を蓄電池からの放電で、蓄電池の充電状態が空であれば商用電源からの電力の取得で不足分の電力を補うよう選択し、
選択に従い電力を分配する電力分配装置
を備える分散発電システム。
【請求項2】
前記第一の所定の値が、自家発電装置の最低発電量であることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。
【請求項3】
前記第一の所定の値が、ゼロであることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。
【請求項4】
自家発電装置の発電力が、蓄電状態が満充電の場合には、需要家の電力負荷から自然エネルギー発電の発電力を減算した値であることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。
【請求項5】
自家発電装置の発電力が、蓄電状態が満充電でない場合には、需要家の電力負荷から自然エネルギー発電の発電力を減算した値以上であることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。
【請求項6】
第二の所定の値が、24時間における需要家の電力負荷の予測値に対する自家発電装置の予測発電量の不足分であることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。
【請求項7】
自然エネルギー発電装置が、太陽光発電装置もしくは風力発電装置であることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。
【請求項8】
自家発電装置が、燃料電池コージェネレーション装置もしくはガスエンジンコージェネレーション装置であることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。
【請求項9】
蓄電池が、リチウムイオン電池もしくはNAS電池であることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。
【請求項10】
商用電源への逆潮が可能であるのが自然エネルギー発電装置からの発電力のみであることを特徴とする請求項1に記載の分散発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−259303(P2010−259303A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110121(P2009−110121)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】