説明

分析方法

【課題】屋外に配置されている構造物の表面に付着している物質の正確な量がより簡便に分析できるようにする。
【解決手段】ステップS101で、屋外に配置された測定対象となる構造物の表面に直接X線を照射する。次に、ステップS102で、元素の蛍光X線測定を行い元素の第1蛍光X線強度を得る。次に、ステップS103、X線の吸収量が既知の基材に対象となる元素が既知の含有量で含まれている内標準試料を構造物に重ねた状態で、内標準試料を通して構造物の表面にX線を照射する。次に、ステップS104で、元素の蛍光X線測定を行い上記元素の第2蛍光X線強度を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に配置されている構造体に付着している物質の分析を行う分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物などの屋外構造物の状態を把握する上で、構造物の劣化を招く腐食などの原因および促進因子となる物質(腐食因子物質)の状態を把握することは重要である。このような腐食環境因子の調査では、構造物が配置されている周辺の大気中に存在する腐食因子物質の測定を一定期間継続し、得られた測定結果より腐食環境の把握および腐食リスクの評価などを行っている。腐食因子物質となり得る大気中の成分には、海塩粒子、亜硫酸ガス、硫化水素、およびこれらのいずれかまたは複数が溶解した水粒子などがある。海塩粒子は、塩化ナトリウムを主たる成分としている。海塩粒子および海塩粒子の溶解した水粒子は、両者をあわせて飛来塩分と呼ばれている。
【0003】
例えば、飛来塩分による屋外構造物の腐食は、塩害と呼ばれて問題となっている。飛来塩分は、屋外構造物に付着した後、液膜を形成して塩化物イオンを生じる。このようにして生じた塩化物イオンは、屋外構造物を構成する金属材料が腐食する反応を促進させている。また、例えば、温泉地域や火山地域で発生する硫化水素なども、付着した後生じる硫化物イオンが、屋外構造物を構成する金属材料が腐食する反応を促進させている。
【0004】
日本工業規格には、「大気環境の腐食性を評価するための環境因子の測定」(JIS Z 2382)があり、塩化物イオンを測定する方法として、ドライガーゼ法、ウェットキャンドル法が規定されている。
【0005】
例えば、ウェットキャンドル法では、心棒となるアクリル棒に巻いたガーゼを、グリセリン溶液の入ったビンにゴム栓を介して差しこみ、これを、対象の箇所において1ヶ月放置(曝露)する。グリセリン溶液は、200mlのグリセリンを、蒸留水を加えて1000mlに調整し(20%)、菌類繁殖防止のためオクタン酸を加える。ただし、気温が25℃を超え、また、氷点下25℃を下回る可能性がある場合は、蒸発や凍結を防ぐため、グリセリン濃度を40%に高めたグリセリン溶液を用いる。
【0006】
曝露を終了したウェットキャンドルは、心棒を取り外ししビンの中に入れるとともに、心棒およびゴム栓の孔の内面を洗浄し、洗浄液をビンの中に入れ、塩化物イオンの測定を行うまで保管する。塩化物イオンの測定は、ジフェニルカルバゾン・ブロモフェノールブルー混合指示薬による滴定によるか、イオンクロマトグラフィー分析法によるが、いずれも試料である上記洗浄液を実験室に持ち帰って行う測定である。
【0007】
また、表面を清浄にした金属を大気中に曝露し、この後金属表面における大気中元素を分析する方法がある(特許文献1参照)。この方法では、測定方法の1つとして蛍光X線分析が挙げられている。この蛍光X線分析を行う装置は、実験室に置かれる大型の装置が主流である。このため、特許文献1の測定においても、試料である金属を実験室に持ち帰って測定を行うことになる。ただし、最近では、携帯型の蛍光X線分析装置も市販されるようになっている。例えば、株式会社堀場製作所が販売するハンドヘルド型蛍光X線分析装置がある(非特許文献1)。このような携帯型蛍光X線分析装置を用いることにより、試料を実験室に持ち帰ることなく、対象となる箇所で腐食因子物質を評価することができる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−094655号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】http://www.horiba.com/jp/scientific/products-jp/x-ray-fluorescence-analysis/details/mesa-portable-8946/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した携帯型蛍光X線分析装置による分析方法では、対象とする腐食因子物質の量が正確に測定できないという問題がある。これは、屋外構造物の表面より得られる、硫黄や塩素などの腐食因子物質の構成元素から発せられる蛍光X線強度が、腐食因子物質の付着量に比例していないためである。
【0011】
屋外構造物の表面は、塗膜、めっき膜、鉄鋼そのものなど、腐食因子物質が付着する表面の材料が異なっているが、腐食因子物質の構成元素から発せられる蛍光X線の強度は、表面の材料の種類によって異なるため、上述した問題が発生する。一般に、腐食因子物質の構成元素の量を求める定量では、検量線が必要となる。検量線の作成では、既知量の腐食因子物質の構成元素が付着した標準試料が必要である。しかしながら、上述したように、同じ量の腐食因子物質が付着していても、表面の材料ごとに腐食因子物質の構成元素の蛍光X線強度は異なるため、標準試料は、表面の材料ごとに用意する必要がある。
【0012】
しかしながら、屋外構造物においては、当然ながら剥がれ,錆などの劣化が発生しているため、表面の材料を、塗膜、めっき膜、鉄鋼に限定しても、非常に多くの材料ごとに標準試料を用意することになり、実用的ではない。
【0013】
以上のように、前述した技術による腐食環境因子の分析では、携帯型蛍光X線分析装置を単純に組み合わせても、腐食因子物質の構成元素から発せられる蛍光X線の強度は、表面の材料の種類によって異なるという本質的な問題があり、定量操作のための検量線を作るための標準試料を表面の材料ごとに用意することは現実的ではなく、結果として、腐食因子物質の付着量に比例する、硫黄や塩素などの腐食因子物質の構成元素の正確な量を求めることはできないという問題がある。
【0014】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、屋外に配置されている構造物の表面に付着している物質の正確な量が、より簡便に分析できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る分析方法は、屋外に配置された測定対象となる構造物の表面に直接X線を照射して対象となる元素の蛍光X線測定を行い元素の第1蛍光X線強度を得る第1ステップと、X線の吸収量が既知の基材に上記元素が既知の含有量で含まれている内標準試料を構造物に重ねた状態で、内標準試料を通して構造物の表面にX線を照射して上記元素の蛍光X線測定を行い元素の第2蛍光X線強度を得る第2ステップと、第1蛍光X線強度、第2蛍光X線強度、内標準試料における上記元素の含有量、および基材のX線吸収量から構造物の表面に付着している上記元素の量を求める第3ステップとを少なくとも備える。
【0016】
上記分析方法において、上記元素は、構造物に対する腐食因子物質を構成する元素であり、求められた元素の量より、構造物に付着している腐食因子物質の付着量を求める第4ステップを備えるようにしてもよい。
【0017】
上記分析方法において、基材は、ポリマーフィルムであればよい。なお、ポリマーフィルムは、厚さが既知とされていればよい。また、元素は、硫黄および塩素より選択されたものであればよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、X線の吸収量が既知の基材に対象となる元素が既知の含有量で含まれている内標準試料を用いるようにしたので、屋外に配置されている構造物の表面に付着している物質の正確な量がより簡便に分析できるようなるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における分析方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】図2は、携帯型蛍光X線装置の構成を示す構成図である。
【図3】図3は、表面に直接X線を照射して蛍光X線測定を行う状態を示す説明図である。
【図4】図4は、内標準試料401を用いて蛍光X線測定を行う状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における分析方法を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS101で、屋外に配置された測定対象となる構造物の表面に直接X線を照射する。次に、ステップS102で、元素の蛍光X線測定を行い元素の第1蛍光X線強度を得る。
【0021】
次に、ステップS103、X線の吸収量が既知の基材に対象となる元素が既知の含有量で含まれている内標準試料を構造物に重ねた状態で、内標準試料を通して構造物の表面にX線を照射する。元素は、腐食因子物質の構成元素である。次に、ステップS104で、元素の蛍光X線測定を行い上記元素の第2蛍光X線強度を得る。
【0022】
次に、ステップS105で、第1蛍光X線強度、第2蛍光X線強度、内標準試料における元素の含有量、および基材のX線吸収量から構造物の表面に付着している元素の量を算出する。なお、この後、求められた元素の量より、構造物に付着している腐食因子物質の付着量を求めるようにしてもよい。
【0023】
以下、元素の量の算出について、より詳細に説明する。まず、蛍光X線の測定を行う装置(携帯型蛍光X線装置)について説明する。図2は、携帯型蛍光X線装置の構成を示す構成図であり、いわゆるガン型の携帯型蛍光X線装置の例を示している。携帯型蛍光X線装置の本体201は、X線発生ボタン202を押下すると、内蔵するX線発生部(不図示)から、X線出射口兼検出口203を介し、一次X線204を構造物211に照射する。屋外にある構造物211としては、具体的には、通信に関する屋外構造物では、鋼管柱、通信鉄塔、つり線、支線、橋梁、RSBM(遠隔加入者収容モジュール)ボックスなどがある。
【0024】
上述したように一次X線204の照射により、構造物211の表面に存在する元素に特有の波長すなわち光子エネルギーを有してこの元素の量に応じた強度の蛍光X線205が、構造物211の表面より得られる。この蛍光X線205が、X線出射口兼検出口203を介し、本体201が内包するX線検出器(不図示)で検出される。このX線検出器は、X線の光子エネルギーごとの強度を測定する。
【0025】
本体201は、この測定の結果を、表示部206に、横軸を光子エネルギーとし、縦軸を強度とする蛍光X線スペクトル207として表示する。光子エネルギーは、元素に特有なエネルギーであるので、光子エネルギーから元素種を決定できる。この例では、蛍光X線スペクトル207のうち、腐食因子物質のある構成元素に特有な光子エネルギーの蛍光X線について、この前後のある適当な範囲208をとって、範囲208の積分強度を得て、腐食因子物質のある構成元素の蛍光X線の強度とする。
【0026】
このような携帯型蛍光X線装置に加え、内標準試料210を用いる。内標準試料210は、構造物211の表面に付着している腐食因子物質の構成元素と同一の元素を一定の既知量含有する。上述した携帯型蛍光X線装置により、構造物211の表面を直接測定して得られる第1蛍光X線強度と、構造物211の表面に内標準試料210を重ねて測定することで得られる第2蛍光X線強度とを用いることで、構造物211の表面に付着している物質の正確な量を分析する。
【0027】
構造物211とX線出射口兼検出口203との間に内標準試料210を挿入し、また取り出すことで、2つの蛍光X線強度を測定する。構造物211とX線出射口兼検出口203との間への内標準試料210の挿抜は、人の手で行ってもよいし、所定の機器を用いて行ってもよい。内標準試料210の挿抜の状態以外は、同一の測定条件とする。
【0028】
ここで、内標準試料210は、例えば、腐食因子物質の構成元素を含有するポリマーフィルムを用いることができる。例えば、腐食因子物質として海塩を測定する場合、腐食因子物質の構成元素を塩素とする。塩素を一定量含有するポリマーフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニルなどのフィルム、また、ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニルの共重合体のフィルムを用いることができる。
【0029】
また例えば、腐食因子物質として、硫化物および硫酸塩などの硫黄化合物を測定する場合、腐食因子物質の構成元素を硫黄とする。硫黄を一定量含有するポリマーフィルムとしては、例えば、ポリチオエーテル、ポリスルフィド、ポリスルフォン、ポリスルフォネート、ポリスルフォンイミドなどのフィルム、およびこれらの共重合体のフィルムを用いることができる。
【0030】
次に、元素の量を算出について説明する。まず、図3に示すように、構造物301の表面に、強度IiのX線311が、入射角θで照射される。構造物301の表面には対象とする腐食因子物質の構成元素302が付着しており、構成元素302の蛍光X線312が検出角φで検出される。また、蛍光X線312の強度I1(第1蛍光X線強度)が測定される。
【0031】
また、図4に示すように、内標準試料401を用いる場合、内標準試料401を透過した強度IiのX線411、構造物301の表面に入射角θで照射される。内標準試料401には、構成元素302が含まれており、構造物301の表面から検出角φで検出される蛍光X線412には、構造物301の表面の構成元素302からの蛍光X線に、内標準試料401に含まれている構成元素302からの蛍光X線が重畳し、強度I2(第2蛍光X線強度)が測定される。なお、上述した入射角および検出角の条件は、携帯型蛍光X線装置を安定的に設置することで一定にできる。
【0032】
まず、強度Iは、次に示す式(1)で表せる。
【0033】
【数1】

【0034】
なお、式(1)において、Iiは、入射するX線の強度、C1は構造物表面における構成元素の量であり、αおよびβは定数である。式(1)の中間式における第1項は、入射X線により励起された腐食因子物質の構成元素xの蛍光X線の強度、第2項は下地表面の材料mの蛍光X線により励起された腐食因子物質の構成元素xの蛍光X線の強度である。例えば、下地が鉄鋼であれば、材料mは鉄であり、下地が亜鉛めっきであれば、材料mは亜鉛である。ここで、μmは、次の式(2)で表せる。
【0035】
【数2】

【0036】
式(2)において、μm(λi)は、入射X線の材料mの中での線吸収係数、μm(λm)は、材料mの蛍光X線の材料mの中での線吸収係数である。これらからわかるように、μmが不定であるため、I1のみから構成元素の濃度C1を得ることはできない。
【0037】
次に、内標準試料を用いた場合の強度I2について説明する。前述したように、内標準試料を構造物に重ねた状態での蛍光X線の測定は、腐食因子物質の構成元素xについて、内標準試料に含まれる既知量C2と、構造物表面における未知の量C1とを合わせた強度I2(第2蛍光X線強度)を得ることに相当する。ところで、X線の波長域では、どの物質内でも屈折率はほとんど1である。このため、どの物質の重ね合わせても、各々の界面で屈折しないものとみなせる。内標準試料の材料をsで示し、厚さをdとすると、腐食因子物質の構成元素xは内標準試料にも含まれる。
【0038】
従って、構成元素xの蛍光X線の強度I2は、入射X線により励起される内標準試料中の構成元素xの蛍光X線の強度と、入射X線により励起される下地の表面にある構成元素xの蛍光X線の強度と、下地の材料mの蛍光X線により励起される下地の表面にある構成元素xの蛍光X線の強度と、下地の材料mの蛍光X線により励起される内標準試料中の構成元素xの蛍光X線の強度との和となる。
【0039】
まず、入射X線により励起される内標準試料中の構成元素xの蛍光X線の強度は、次の式(3)で表せ、入射X線により励起される下地の表面にある構成元素xの蛍光X線の強度は、次の式(4)で表せ、下地の材料mの蛍光X線により励起される下地の表面にある構成元素xの蛍光X線の強度は、次の式(5)で表せ、下地の材料mの蛍光X線により励起される内標準試料中の構成元素xの蛍光X線の強度は、次の式(6)で表せる。
【0040】
【数3】

【0041】
また、Ii’は、以下の式(7)で表せ、μs(1)は、以下の式(8)で表せ、μs(2)は、以下の式(9)で表せる。なお、材料sは、内標準試料を構成する材料を示し、μs(λi)は、入射X線の材料sの中での線吸収係数(X線の吸収量)であり、μs(λx)は、構成元素xの蛍光X線の材料sの中での線吸収係数である。
【0042】
【数4】

【0043】
ここで、内標準試料として、厚さdが十分に薄いフィルムを用いれば、式(3)〜式(6)は、次の式(3’)〜(6’)に書き換えることができる。
【0044】
【数5】

【0045】
上述した式(3’)〜(6’)の和を取れば、以下の式(10)で示されるものとなる。
【0046】
【数6】

【0047】
式(8)の定義において、μs(1)の値は、下地の材料の影響を受けずに計算によって求めることができるが、ここでは、内標準試料の厚さdが十分に小さければ、「1−μs(1)d」がほぼ1になることを用い、式(10)を次の式(11)とすることができる。
【0048】
【数7】

【0049】
以上のように得られた式(11)と、上記式(1)とから、「(α+β/μm)Ii」を消去すれば、未知の濃度C1は、次の式(12)となる。
【0050】
【数8】

【0051】
従って、内標準試料が十分に薄ければ、内標準試料における構成物質xの既知の濃度C2、内標準試料の厚さd(既知)、強度I1、および強度I2より、構造物表面における構成元素の濃度C1を求めることができる。なお、C1は、単位面積あたりの濃度であり、C2は、単位体積あたりの濃度である。ただし、内標準試料の厚さを無視できない場合、式(10)と、式(1)とから、濃度C1を求めるようにすればよい。
【0052】
また、求めた濃度C1より、腐食因子物質の付着量を算出することも容易であることは、言うまでもない。例えば、構造物表面の塩素の量を求めれば、構造物表面に付着している塩化ナトリウムの量を求めることができ、ほぼ塩化ナトリウムから構成されている海塩粒子の測定が行える。なお、これらの計算は、計算機により行えばよい。
【0053】
以上に説明したように、本発明によれば、腐食因子物質が付着している表面の材料ごとに標準試料を用意することを行わなくても、屋外の構造物の表面に付着している腐食因子物質の構成元素の量を求められ、腐食因子物質の付着量を算出することが可能になる。
【0054】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの組み合わせおよび変形が実施可能であることは明白である。例えば、内標準試料として、溶液あるいはクリーム状の物を塗布して用いてもよく、また、粉末を散布して用いてもよい。ただし、屋外における測定では、日射や風が存在し、蒸発や飛散が起こる場合があり、上述したような形態では、内標準試料の正確な厚さを規定することが困難になる場合がある。これに対し、固体で膜厚が均一なポリマーフィルムを用いれば、外的要因に対して厚さの変化が抑制できるので、より高い精度の測定を行うことが可能となる。
【0055】
ところで、内標準試料中の物質の濃度と構造物表面に付着している物質の濃度とが大きく異なると、用いる蛍光X線分析装置のダイナミックレンジの関係で、正確な測定が行えない場合がある。しかしながら、内標準試料における物質濃度を蛍光X線分析装置の分析感度に合わせて調整することにより、表面に付着している化学物質の濃度が蛍光X線分析装置のダイナミックレンジ内であれば、正確な測定が行える。
【符号の説明】
【0056】
201…携帯型蛍光X線装置の本体、202…X線発生ボタン、203…X線出射口兼検出口、204…一次X線、205…蛍光X線、206…表示部、207…蛍光X線スペクトル、208…範囲、210…内標準試料、211…構造物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に配置された測定対象となる構造物の表面に直接X線を照射して対象となる元素の蛍光X線測定を行い前記元素の第1蛍光X線強度を得る第1ステップと、
X線の吸収量が既知の前記元素が既知の含有量で含まれている内標準試料を前記構造物に重ねた状態で、前記内標準試料を通して前記構造物の表面にX線を照射して前記元素の蛍光X線測定を行い前記元素の第2蛍光X線強度を得る第2ステップと、
前記第1蛍光X線強度、前記第2蛍光X線強度、前記内標準試料における前記元素の含有量、および前記基材のX線吸収量から前記構造物の表面に付着している前記元素の量を求める第3ステップと
を少なくとも備えることを特徴とする分析方法。
【請求項2】
請求項1記載の分析方法において、
前記元素は、前記構造物に対する腐食因子物質を構成する元素であり、
求められた前記元素の量より、前記構造物に付着している前記腐食因子物質の付着量を求める第4ステップを備えることを特徴とする分析方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の分析方法において、
前記基材は、ポリマーフィルムであることを特徴とする分析方法。
【請求項4】
請求項3記載の分析方法において、
前記ポリマーフィルムは、厚さが既知とされていることを特徴とする分析方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の分析方法において、
前記元素は、硫黄および塩素より選択されたものであることを特徴とする分析方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−159449(P2012−159449A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20405(P2011−20405)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】