説明

分析装置

【課題】 任意の測定データを抽出して以前に得られた解析データと同一の解析データが得られることを証明できる分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】 画像を表示する表示装置4と、測定データを記憶する測定データファイル21と、測定データファイル21に記憶された測定データに対して解析を行う解析ソフト18と、解析によって得られた解析データを記憶する解析データファイル22と、解析に関する解析条件を記憶する解析データファイル22と、解析データファイル22に記憶された解析条件を表示装置4に表示させる解析条件表示ソフト19と、解析データファイル22に記憶された解析条件に基づいて解析ソフト18によって解析を行わせる解析再現ソフト20とを有する分析装置1である。既に存在する解析データと同一の解析データを再現でき、さらに同一であることを証明できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分析装置、X線回折装置等といった分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱分析装置等といった分析装置において、得られた測定データを表示装置の画面上に表示するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、測定データを画面上に表示する際には、その測定データが得られたときの条件、すなわち測定条件を測定データと共に表示することが多い。
【0003】
また、熱分析あるいはその他の分析において、得られた測定データに解析を加えることが多く見受けられる。例えば、熱分析の分野では、測定データとしてのプロファイルにおいて外挿点を解析によって求めたり、プロファイル上のピーク面積(すなわち、積分値)を解析によって求めたりすることがある。ここで、外挿とは、周知の通り、実測されたグラフ上の線を予測によって延長する処理である。例えば、あるプロファイルのベースラインからの立ち上がり点を求める際、ベースラインを外挿した線とプロファイルを外挿した線との交点を立ち上がり点と決めることができる。
【0004】
熱分析装置あるいはその他の分析装置において、従来、解析によって得られたデータ、すなわち解析データを表示装置の画面上に表示するようにした装置は知られている。例えば、測定データとしてのプロファイルが表示されている画面内の適所に解析データとしての数字、例えばピーク値、外挿点の値、ピーク面積の値等を数字で表示するようにした装置がある。この解析データを得るに際しては、コンピュータに所定の解析条件を入力するのであるが、従来この解析条件は解析の演算処理が行われている最中はRAM等に一時的に記憶されているものの、解析が終了した後にコンピュータ内に保存されることは無かった。また、従来、解析結果のデータ、例えば数字を表示装置の画面上に表示することはあったが、解析条件を画面上に表示することは無かった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−295244号公報(第4頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、測定によって得られた測定データや、測定データを解析して得られた解析データをコンピュータ内に電子データとして保存する上で、データとしての信頼性を高く保持することを要求されることが多くなっている。例えば、コンピュータ内に1つの測定データと、その測定データを解析して得られた1つの解析データとが保存されている場合に、その解析データと同じ解析条件の下で第三者が解析を行ったときには、その解析データと全く同じ解析データが得られることが要求されるようになっている。
【0007】
従来の分析装置では、熱分析や一般的な測定によって得られた測定データを解析して解析データを得る場合、解析条件の設定はオペレータの判断に基づいて行われていた。例えば、1つの解析データが所定の解析条件の下に得られている場合に、その解析データと同じ解析データを得る目的でオペレータが上記所定の解析条件を設定して解析を行ったとしても、同じ解析データを得ることはほとんどできなかった。これは、オペレータ自身は解析条件を前回のものと同じに設定したつもりでも、実際には解析条件が前回のものと違う条件に設定されてしまうことが原因と考えられる。
【0008】
例えば、熱分析の結果得られた熱分布曲線、すなわちプロファイルにおいて、ピーク波形の接線のうち最大勾配のものと、プロファイルのベースライン(すなわち、無変化部)との交点の温度を解析によって求めようとする場合には、ベースラインの外挿線とピーク波形の接線の外挿線との交点を求めることになるが、この場合にベースラインの外挿線や接線の外挿線を決めるためのポイントの設定は、解析を行う者の判断によってバラツキがあった。そして、このバラツキのために同一の解析結果が得られないのであった。
【0009】
本発明は、従来の分析装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、1つの測定データを基礎として解析が行われて解析データが得られている場合に、その解析データが上記の測定データを解析した結果として得られた解析データであることを証明できるようにすること、換言すれば、任意の測定データを抽出して以前に得られた解析データと同一の解析データが得られることを証明できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る分析装置は、試料を分析する分析装置において、画像を表示する表示手段と、測定データを記憶する測定データ記憶手段と、前記データ記憶手段に記憶されたデータに対して解析を行う解析手段と、前記解析手段によって解析された解析データを記憶する解析データ記憶手段と、前記解析に関する解析条件を記憶する解析条件記憶手段と、前記解析条件記憶手段に記憶された解析条件を前記表示手段に表示させる解析条件表示制御手段と、前記解析条件記憶手段に記憶された解析条件に基づいて前記解析手段によって解析を行わせる解析再現手段とを有することを特徴とする。
【0011】
この構成において、上記「表示手段」としては、例えばデータを画像として表示するものとしてCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、その他任意の構造のディスプレイを用いることができる。また、例えば印字によって表示を行うものとして、静電転写方式のプリンタ、インクジェット式のプリンタ、その他任意の構造の印字装置を用いることができる。
【0012】
「測定データ記憶手段」、「解析条件記憶手段」、及び「解析データ記憶手段」は、任意の構造の記憶媒体、例えば、ハードディスク型記憶装置、光磁気ディスク型記憶装置等といった機械式の記憶装置や、ROM、RAM等といった半導体記憶装置等によって構成できる。
「解析手段」は、例えば、コンピュータを構成する演算制御手段であるCPUと、RAM、ROM、ハードディスク、MO(Magnet Optical Disk、光磁気ディスク)等といったメモリと、そのメモリ内に格納される解析処理用アプリケーションソフトとによって構成できる。
【0013】
「解析条件表示制御手段」は、同様に、例えば、コンピュータを構成する演算制御手段であるCPUと、RAM、ROM、ハードディスク、MO等といったメモリと、そのメモリ内に格納される表示用アプリケーションソフトとによって構成できる。
「解析再現手段」は、同様に、例えば、コンピュータを構成する演算制御手段であるCPUと、RAM、ROM、ハードディスク、MO等といったメモリと、そのメモリ内に格納される解析処理用アプリケーションソフトとによって構成できる。
「解析手段」と「解析再現手段」とを比べると、これらの手段の最低限の機能は、対象となるデータに対して解析条件に基づいて解析処理を行うことであり、この機能に関しては両手段に共通である。
【0014】
上記構成の本発明に係る分析装置によれば、「測定データ記憶手段」に記憶された測定データに対して「解析手段」によって解析処理を加えることができる。解析処理としては、例えば、ピークサーチ、外挿点を求める解析、ピーク波形の面積を求める解析等が行われる。外挿点を求める解析を利用すれば、例えば、熱分析におけるガラス転移温度の解析を行うことができる。解析によって得られた解析データは解析データ記憶手段に記憶される。解析にあたってオペレータによって設定された解析条件は「解析条件記憶手段」に記憶される。このような解析条件としては、例えば、外挿の基準として決めた点の位置や、ベースラインを特定するために決めた点の位置や、面積を求める際の演算開始温度の点の位置及び演算終了温度の点の位置等が考えられる。
【0015】
記憶された上記の解析条件は、必要に応じて「解析条件表示制御手段」によって画面上に表示される。このような解析条件の表示は、オペレータが前回の解析の条件を知りたいと思ったときや、監査証跡を確認する際に必要となるものである。なお、監査証跡とは、複数のデータファイルを監督して検査する際にその検査の証拠となる痕跡のことである。この監査証跡は、例えば、データがどのような履歴を経て作成されたのかとか、データが改ざんされたものであるかどうか等を検査する際にその検査の根拠として利用されるものである。
【0016】
ところで、熱分析あるいはその他の分析においては、ある1つの解析が既に行われて解析データが得られている場合に、何等かの理由により、その解析データと全く同一の解析データをもう一度、入手したいと希望する場合がある。ここで、同一の解析データとは、解析再現履歴に定義されている解析者名、解析再現日時、ファイル名(ファイル名をつけた場合)を除いたデータ部分が同一であることをいう。このような場合、従来であれば、オペレータは、既に行われた解析の結果として得られた解析データを見ながら解析条件を予測し、その予測した解析条件をコンピュータに入力して、再度、解析を実行して解析再現データを求めていた。既に得られている解析データはハードディスク等に保存されている場合もある。
【0017】
しかしながら、この方法では、予測して入力する解析条件がオペレータによって区々であり、その結果、本来であれば全く同じ解析結果を入手したいのに、完全に同一の解析結果は得られないのが現状であった。また、解析再現データが前回の解析データと同じであるか否か、換言すれば、解析データが正確に再現されたか否かを確認する手立ても無かった。現状では、そのようなオペレータ個々による解析結果のバラツキは当然に発生するものとして許容されていた。このことは、JIS規格にも記述されていた。
【0018】
しかしながら、コンピュータ内に格納されている電子データや、その電子データを印刷して得られた印刷物等が、改変や改ざんを受けていない真正なものであることを確認したい場合等においては、1つの基準データから解析データを得る場合に、誰が解析を行っても常に完全に同一の解析データを得ることができるということは非常に大事なことである。このことに関し、本発明の分析装置によれば、既に行われた解析の条件が「解析条件記憶手段」に記憶され、さらに、「解析再現手段」はその記憶された解析条件に基づいて解析を行うことができるので、既に行われた解析に関して解析結果を得ることを希望するオペレータは、解析再現手段を起動するだけで、全く同じ解析結果を容易に得ることができる。
【0019】
しかも、本発明では、解析データを解析データ記憶手段に記憶するようにしたので、再現された解析データと元の解析データとを解析データ記憶手段から読み出して互いに比較することにより、再現された解析データと元の解析データとが同一であるか否か、換言すれば、解析データが正確に再現されたか否かを確認できる。このことは、例えば、監査証跡を確保する上で非常に有利である。
【0020】
なお、解析データは1つの測定データに基づいて1つだけ作成されるものではない。1つの測定データに対して複数の解析データが作成されることもある。例えば、1つの測定データ「A」に基づいて1つの解析データ「X」を作成する場合もあるし、1つの測定データ「A」に基づいて複数の解析データ「X」、「Y」、「Z」を作成する場合もある。本発明の分析装置は、解析データ「X」、「Y」、「Z」のうちの任意の1つ又は任意の複数を再現する場合のいずれの場合にも適用できる。
【0021】
次に、本発明に係る分析装置は、前記解析再現手段によって解析データを再現するときに生成される解析データ再現履歴を記憶する解析データ再現履歴記憶手段と、前記解析データ再現履歴を表示する解析データ再現履歴表示手段とをさらに有することが望ましい。ここで、「解析データ再現履歴」とは、解析データを再現させた解析者名、解析再現日時、ファイル名(ファイル名を付けた場合)等といった情報をいう。このように、解析データ再現履歴を記憶し、さらにそれを表示できるようにすれば、異なった日時に解析データの再現が行われたり、異なった解析者が解析データの再現を行ったりした場合でも、当該解析データのID(Identification:身元)を正確に知ることができる。
【0022】
次に、本発明に係る分析装置において、前記測定データ記憶手段に記憶される測定データは、温度変化に応じて試料に発生する特性変化を測定する熱分析によって得られたデータであることが望ましい。熱分析の結果として得られるデータに関しては、多くの種類の解析が行われることが考えられる。そして、これらの解析に関しては分析者個人の判断に基づいて解析条件が決められることが多いと考えられる。従って、熱分析に関するデータに関して全く同一の解析データを再現したいと希望する場合には、特に本発明に係る分析装置を用いることが有利である。
【0023】
次に、本発明に係る分析装置において、前記測定データは、グラフ上に特性変化曲線として表わすことができると共にガラス転移の階段状変化部分を含むデータであり、前記解析は、前記特性変化曲線におけるベースラインを延長した直線と、前記ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線との交点の温度を求める解析であることが望ましい。この解析はガラス転移温度を求める解析である。
【0024】
この解析に関しては、解析者がグラフ上で設定するポイントが解析結果に大きな影響を与える。ポイントの設定が解析者によって区々であると、同一の解析結果を得ることは不可能である。このように解析者の判断が重要な因子に成る解析において前回の解析データと全く同一の解析データを得たいと希望する場合には、本発明に係る分析装置を用いることが非常に有利である。
【0025】
次に、本発明に係る分析装置において、前記測定データは2次元座標上に曲線として表わすことができるデータとすることができる。そしてこの場合、前記解析は前記曲線における2点間の面積を求める解析とすることができる。このような解析においては、面積を求めようとしている領域を解析条件として設定する必要があるが、その設定は分析者によって区々となることが多い。そのため、再現された解析データが、既に得られている解析データと異なる可能性が高い。従って、このような解析を行う場合にも全く同じ解析データを得たいと希望する場合には、特に本発明に係る分析装置を用いることが有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る分析装置を一実施形態を例示して説明する。なお、本発明がその実施形態に限定されないことは、もちろんである。
【0027】
図1は、本発明に係る分析装置の一実施形態を示している。この分析装置1は、適宜の物質を試料として測定を行う測定装置2と、キーボード、マウス等によって構成される入力装置3と、表示手段としての画像表示装置4と、印刷手段としてのプリンタ6と、CPU(Central Processing Unit)7と、RAM(Random Access Memory)8と、ROM(Read Only Memory)9と、外部記憶媒体としてのハードディスク11とを有する。これらの要素はバス12によって互いにつながれている。
【0028】
画像表示装置4は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ等といった画像表示機器によって構成されており、画像制御回路13によって生成される画像信号に従って画面上に画像を表示する。プリンタ6は、インクプロッタ、ドットプリンタ、インクジェットプリンタ、静電転写プリンタ、その他任意の構造の印刷用機器を用いることができる。なお、ハードディスク11は、光磁気ディスク、半導体メモリ、その他任意の構造の記憶媒体によって構成することもできる。
【0029】
ハードディスク11の内部には、分析用アプリケーションソフト16と、測定用アプリケーションソフト17と、解析用アプリケーションソフト18と、履歴表示用アプリケーションソフト19と、解析再現用アプリケーションソフト20とが格納されている。これらのソフトは、必要に応じて、RAM8内に読み込まれて機能実現手段として機能する。
【0030】
「分析用アプリケーションソフト16」は、分析装置1の全般的な動作を制御するためのプログラムソフトである。また、「測定用アプリケーションソフト17」は、測定装置2を用いた測定処理の動作を制御するためのプログラムソフトである。また、「解析用アプリケーションソフト18」は、ピークサーチ、外挿点を求める解析、ピーク波形の面積を求める解析等といった各種の解析を行うためのプログラムソフトである。
【0031】
また、ハードディスク11の内部には、データ記憶手段としての測定データファイル21と、同じくデータ記憶手段としての解析データファイル22とが設けられる。測定データファイル21は、測定装置2によって行われた測定の結果として得られた測定データを記憶する。また、解析データファイル22は、解析用アプリケーションソフト18によって行われた解析処理の結果として得られた解析データを記憶する。
【0032】
測定データファイル21は、図2に示すように、複数の測定データを記憶すると共に、それらの測定データに付随して測定履歴も記憶する。「測定履歴」とは、(A)測定データの識別名(例えば、ファイル名)、(B)測定日時、(C)測定者名、(D)測定場所、(E)保存処理や印刷処理を行ったこと、(F)保存処理や印刷処理がいつ行われたかということ、(G)測定条件、等の情報のことである。
また、「測定条件」とは、測定データが得られたときの条件、例えば、(a)測定対象物質名(すなわち、試料名)、(b)測定装置の種類、(c)何度から何度までの測定温度範囲、(d)測定時間、(e)何度から何度までの測定角度範囲、(f)アタッチメントを使ったか否か、その他の種々の条件のことである。
【0033】
また、解析データファイル22も同様に、複数の解析データを記憶すると共に、それらの解析データに付随して解析履歴も記憶する。「解析履歴」とは、(A)解析データの識別名(例えば、ファイル名)、(B)解析日時、(C)解析者名、(D)解析場所、(E)保存処理や印刷処理を行ったこと、(F)保存処理や印刷処理がいつ行われたかということ、(G)解析条件、等といった情報のことである。
また、「解析条件」とは、解析データが得られたときの条件、例えば、(a)解析対象である測定データの識別名、(b)ガラス転移温度の検出、ピークサーチの検出、ピーク面積の検出等といった解析の種類、(c)外挿の基準として決めた点の位置のデータ、(d)ベースラインを特定するために決めた点の位置のデータ、(e)面積を求める際の演算開始温度の点の位置及び演算終了温度の点の位置のデータ等といった情報のことである。なお、解析が、既に得られている解析データを再現するために行われた解析である場合には、「解析履歴」として、上記の(A)〜(G)の各情報に加えて、(H)この解析が再現のための解析であること、(I)再現しようとしている解析データの識別名、等といった情報がさらに含まれる。
【0034】
図1の「履歴表示用アプリケーションソフト19」は、既に行われた解析に関する解析履歴を表示装置4の画面上に表示させるためのプログラムソフトである。また、「解析再現用アプリケーションソフト20」は、既に行われた解析の結果を再現するためのソフトである。
【0035】
図1の測定装置2は必要に応じて種々の測定装置によって構成されるが、例えば、温度変化に応じて試料に発生する特性変化を測定する熱分析装置や、試料にX線を照射してその試料から発生する2次X線、例えば回折線を測定するX線分析装置等によって測定装置2を構成することができる。
【0036】
例えば、そのような熱分析装置として、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)装置、熱重量測定(TG:Thermogravimetry)装置、示差熱分析(DTA:Differential Thermal Analysis)装置、熱膨張測定装置等といった各種の測定装置が知られている。
【0037】
例えば、DSC装置を考えれば、温度が制御される雰囲気中に測定試料及び標準物質を置き、それらの周囲の温度を変化させながら、測定試料及び標準物質に流れる熱量の違いを測定する。標準物質としては、温度が変化しても特性に変化が生じない物質を用いる。このDSC装置によれば、温度変化に対応した熱流の変化が測定データとして求められる。
【0038】
また、例えば、TG装置を考えれば、天秤機構の試料皿に試料を載せ、その試料の温度を変化させ、その試料に重量変化があったときにはその重量変化が天秤機構によって測定される。このTG装置によれば、温度変化に対応した試料の重量変化が測定データとして求められる。
【0039】
他方、測定装置2としてX線分析装置を考えれば、例えば、試料で回折するX線を測定するX線回折装置や、試料の低角度領域に発生するX線(多くの場合は散乱線)を測定するX線小角測定装置や、試料の微小部分にX線を照射して測定を行う微小部X線回折装置や、X線を用いて材料の応力を測定するX線応力測定装置や、X線写真を撮影するX線トポグラフ装置や、その他種々のX線分析装置が考えられる。測定装置が異なれば、得られる測定結果も種々に変化する。X線回折装置において、回折角度2θと回折線強度Iとの関係を測定すれば、(2θ,I)のデータが測定データとして求められる。また、それ以外に、試料に入射するX線の入射角度ωが測定データに入ることもある。また、試料の温度を変化させながらX線測定が行われる場合には、温度条件が測定データに入ることもある。
【0040】
以下、上記構成より成る分析装置についてその動作を説明する。
図3は、図1の分析装置1によって実行される制御の流れを示している。まず、ステップS1において、オペレータのログインを認める。このとき、測定者、解析者等といったオペレータ名や、測定日時、解析日時等といった使用日時がコンピュータに登録される。
【0041】
次に、ステップS2において図1の入力装置3を通してオペレータによって測定の指示がなされたか否かが判断され、成されていれば(ステップS2でYES)、ステップS3へ進んで図1の測定用アプリケーション17を起動する。測定処理についての詳細は後述する。次に、ステップS4において図1の入力装置3を通してオペレータによって解析の指示がなされたか否かが判断され、成されていれば(ステップS4でYES)、ステップS5へ進んで図1の解析用アプリケーション18を起動する。解析処理についての詳細は後述する。
【0042】
次に、ステップS6において図1の入力装置3を通してオペレータによって解析履歴表示の指示が成されたか否かが判断され、成されていれば(ステップS6でYES)、ステップS7へ進んで図1の履歴表示用アプリケーション19を起動する。履歴表示処理については後述する。次に、ステップS8において図1の入力装置3を通してオペレータによって解析を再現する旨の指示が成されたか否かが判断され、成されていれば(ステップS8でYES)、ステップS9へ進んで解析処理を再び行う。この再度の解析処理についての詳細は後述する。その後、測定、解析、解析履歴表示、及び再度の解析の少なくとも1つを繰り返して行う場合には、ステップS10からステップS2へ戻って、必要な処理を繰り返す。
【0043】
さて、ステップS3で測定用アプリケーションが起動すると、図4のステップS11においてオペレータのログインを認める。このとき、測定者名すなわちオペレータ名や、測定日時等がコンピュータに登録される。次に、ステップS12において図1の画像表示装置4の画面上に測定入力画面を表示する。この画面に対してオペレータが必要な測定条件を入力すると、図1のCPU7はステップS14においてRAM8内に測定条件を記憶する。
【0044】
ステップS13においてオペレータによる入力が無ければ(ステップS13でNO)、CPU7は新たな測定条件を設定することなく、前回の測定条件を維持する。次に、ステップS15において、与えられた測定条件に従って測定が実行される。本実施形態では、DSC装置を用いてDSC曲線を求めるための測定を行うものとする。
【0045】
DSC測定は、周知の通り、試料と標準物質との温度を所定の条件で変化させながら、試料に流入する熱量と標準物質に流入する熱量との差を測定するものである。標準物質としては熱的に安定な物質が選択されるので、試料と標準物質との熱量差を測定することにより、試料に発生した熱変化を検知できる。本実施形態では、PET(ポリエチレンテレフタレート)を試料とし、標準物質としてAl(アルミナ)を用いるものとする。また、試料及び標準物質の温度を図10の直線Tのように変化させるものとする。測定の結果は、例えば、図10のプロファイルPのように、測定時間に対する熱流の変化として求められる。
【0046】
次に、図4のステップS16において図1の入力装置3を通してオペレータによって保存の指示があれば、測定データをRAM8内に一時的に記憶する。また、ステップS16において印刷の指示があれば、プリンタ6を用いて図10のように測定データをグラフとして印刷する。また、保存や印刷等といった確定操作が行われると、CPU7はステップS17においてRAM8内に測定履歴を記憶する。この測定履歴とは、(A)測定データの識別名(例えば、ファイル名)、(B)測定日時、(C)測定者名、(D)測定場所、(E)保存処理や印刷処理を行ったこと、(F)保存処理や印刷処理がいつ行われたかということ、(G)測定条件、等の情報のことである。また、「測定条件」とは、測定データが得られたときの条件、例えば、(a)測定対象物質名(すなわち、試料名)、(b)測定装置の種類、(c)何度から何度までの測定温度範囲、(d)測定時間、(e)何度から何度までの測定角度範囲、(f)アタッチメントを使ったか否か、その他の種々の条件のことである。
【0047】
次に、測定を繰り返して行う場合にはステップS12に戻って処理を繰り返す。測定の終了の指示が成された場合には(ステップS18でYES)、ステップS19へ進んで、RAM8内の測定データ及び測定履歴の各情報を図1のハードディスク11内の測定データファイル21内へ、例えば、図2に示すように保存する。
【0048】
次に、図3のステップS4においてオペレータによって解析が指示された場合には、ステップS5で図1の解析用アプリケーションソフト18を起動する。解析用アプリケーションソフト18が起動すると、図5のステップS21においてオペレータのログインを認める。このとき、解析者名や、解析日時がコンピュータに登録される。次に、ステップS22において解析したいデータファイルが選択される。この解析したいデータファイルは測定データファイル21の中に記憶されたものや解析データファイル22の中に記憶されたもの等であり、本実施形態では図10に示すDSCプロファイルPであるとする。解析したいデータファイルが選択されると、ステップS23においてデータの読み込みが行われてデータがRAM8内に読み込まれる。
【0049】
次に、CPU7はステップS24においてハードディスク11内の所定の記憶領域に記憶されている解析条件をRAM8内に読み出し、さらに、表示装置4の画面上にその解析条件画面を表示する。オペレータがこの解析画面を見て解析条件を変更したい場合には(ステップS25でYES)、入力された新しい条件が解析条件となる。その後、ステップS26で解析処理が行われる。
【0050】
本実施形態では、ガラス転移温度の解析とピーク波形の面積を求める解析とを行うものとする。ガラス転移温度の解析については、JIS/K7121/「プラスチックI 試験」/555ページに記載されているガラス転移温度の求め方に従って、図11に示す中間点ガラス転移温度Tmg、補外ガラス転移開始温度Tig、及び補外ガラス転移終了温度Tegを求めるものとする。また、ピーク波形の面積を求める解析については、図11に示すピークP1の面積(すなわち、斜線で示す領域の面積)を求める解析を行うものとする。
【0051】
中間点ガラス転移温度Tmgは、図12に示すように、各ベースラインL1,L2を延長した直線から縦軸方向に等距離(h/2)にある直線L3と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度である。また、補外ガラス転移開始温度Tigは、低温側のベースラインL1を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線L4との交点の温度である。また、補外ガラス転移終了温度Tegは、高温側のベースラインL2を低温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線L4との交点の温度である。
【0052】
中間点ガラス転移温度Tmgを求めるにあたって、オペレータは図11において、低温側ベースラインL1上の適宜の点Q1を指示する。また、オペレータは高温側ベースラインL2上の適宜の点Q2を指示する。各点Q1,Q2の指示は、例えば、マウス操作によって表示されるポインタを使って行うことができる。点Q1が指示されると、図1のCPU7は解析用アプリケーションソフト18に従って機能して、ベースラインL1上の点Q1の近傍の複数の点の座標値を平均化してベースラインL1を演算によって決める。また、CPU7は解析用アプリケーションソフト18に従って機能して、ベースラインL2上の点Q2の近傍の複数の点の座標値を平均化してベースラインL2を演算によって決める。
【0053】
さらに、CPU7は、図12において、求められたベースラインL1及びベースラインL2から等距離にある直線L3を演算によって求め、さらに直線L3とDSC曲線Pとの交点、すなわち中間点ガラス転移温度Tmgを演算によって求める。
【0054】
次に、補外ガラス転移開始温度Tigを求めるにあたって、オペレータは図11において、低温側ベースラインL1上の適宜の点Q1を指示する。また、オペレータはガラス転移の階段状変化部分の曲線上の中間点又はその近傍と思われる点Q3を指示する。CPU7は、指示された点Q1に基づいて低温側ベースラインL1を演算によって求め、さらに、指示された点Q3に基づいて図12の接線L4を演算によって求める。さらに、CPU7はベースラインL1と接線L4との交点、すなわち補外ガラス転移開始温度Tigを演算によって求める。
【0055】
次に、補外ガラス転移終了温度Tegを求めるにあたって、オペレータは図11において、高温側ベースラインL2上の適宜の点Q2を指示する。また、オペレータはガラス転移の階段状変化部分の曲線上の中間点又はその近傍と思われる点Q3を指示する。CPU7は、指示された点Q2に基づいて高温側ベースラインL2を演算によって求め、さらに、指示された点Q3に基づいて図12の接線L4を演算によって求める。さらに、CPU7はベースラインL2と接線L4との交点、すなわち補外ガラス転移終了温度Tegを演算によって求める。
【0056】
なお、本実施形態の場合、演算によって求められた中間点ガラス転移温度Tmgは81.3℃であった。また、補外ガラス転移開始温度Tigは78.6℃であった。また、補外ガラス転移終了温度Tegは84.7℃であった。補外ガラス転移開始温度Tig=78.6℃の数値は、図11の画面上で補外ガラス転移開始温度Tigの表示点の近傍の領域に表示される。また、中間点ガラス転移温度Tmg=81.3℃の数値は、図11の画面上で中間点ガラス転移温度Tmgの表示点の近傍の領域に表示される。また、補外ガラス転移終了温度Teg=84.7℃の数値は、図11の画面上で補外ガラス転移終了温度Tegの表示点の近傍の領域に表示される。
【0057】
次に、プロファイルP1の面積を求めるにあたっては、プロファイルP1のベースラインとの交点と思われる2点Q4及びQ5をオペレータが決め、この2点を結んだ直線をベースラインと決めてプロファイルP1の面積を演算によって求める。求めた結果はピーク波形のピーク位置の近傍に数値、本実施形態の場合は「33.368J/g」として表示することができる。なお、本実施形態では解析の1種類であるピークサーチの結果としてピーク値「170.3℃」も併せて表示されている。
【0058】
以上のようにして解析処理が終了した後、図5のステップS27において図1の入力装置3を通してオペレータによって保存の指示があれば、解析データをRAM8内に一時的に記憶する。また、ステップS27において印刷の指示があれば、プリンタ6を用いて図11のような解析データを測定データと共に印刷する。また、保存や印刷等といった確定操作が行われると、CPU7はステップS28においてRAM8内に解析履歴を記憶する。
【0059】
この解析履歴とは、(A)解析データの識別名(例えば、ファイル名)、(B)解析日時、(C)解析者名、(D)解析場所、(E)保存処理や印刷処理を行ったこと、(F)保存処理や印刷処理がいつ行われたかということ、(G)解析条件等といった情報のことである。また、解析条件とは、解析データが得られたときの条件、例えば、(a)解析対象である測定データの識別名、(b)ガラス転移温度の検出、ピークサーチの検出、ピーク面積の検出等といった解析の種類、(c)外挿の基準として決めた点の位置のデータ、(d)ベースラインを特定するために決めた点の位置のデータ、(e)面積を求める際の演算開始温度の点の位置及び演算終了温度の点の位置のデータ等といった情報である。また、解析が、既に得られている解析データを再現するために行われた解析である場合には、解析履歴として、上記の(A)〜(G)の情報に加えて、(H)この解析が再現のための解析であること、(I)再現しようとしている解析データの識別名等といった情報も含まれる。
【0060】
次に、解析を繰り返して行う場合にはステップS22に戻って処理を繰り返す。解析の終了の指示が成された場合には(ステップS29でYES)、ステップS30へ進んで、RAM8内の解析データ及び解析履歴の各情報を図1のハードディスク11内の解析データファイル22内へ、例えば図2に示すように保存する。このとき、解析履歴内の解析条件の中には、図11でオペレータによって設定された点Q1〜Q5の各点の座標位置、例えば横軸の時刻情報が含まれる。
【0061】
次に、図3のステップS6において解析履歴の表示が指示された場合には、ステップS7で図1の履歴表示用アプリケーションソフト19を起動する。履歴表示用アプリケーションソフト19が起動すると、図6のステップS31においてオペレータのログインを認める。このとき、データ利用者名や、データ利用日がコンピュータに登録される。次に、ステップS32において履歴を表示したいデータファイルが選択される。
【0062】
この表示したいデータファイルは図1の解析データファイル22の中に記憶されたものであり、本実施形態では、例えば、図11に示す(i)DSCプロファイルP、(ii)ガラス転移点Tig,Tmg,Teg、(iii)ピーク波形の面積等といったデータである。履歴を表示したいデータファイルが選択されると、ステップS33において対象のデータに対してアクセスが行われ、さらにステップS34においてデータの読み込みが行われる。そしてさらに、読み込まれた履歴データがステップS35において図1の表示装置4の画面上に表示される。
【0063】
図8は、そのようにして画面上に表示される解析履歴表示の一例を示している。この解析履歴表示26において、データファイル名にはアクセスしたデータファイルの名称が表示される。また、履歴欄27には、行われた解析処理の種類、本実施形態ではガラス転移温度の解析と、ピーク面積の解析が表示されている。また、行われた解析処理操作が操作履歴欄28に表示されている。
【0064】
操作履歴欄28には、具体的には、例えば図9に示すように、ガラス転移温度の解析を何秒から何秒の間で行ったか(図9では133.0〜242.0秒の間で行ったことが示されている)とか、ピーク面積の解析を何秒から何秒の間で行ったか(図9では316.5〜575.0秒の間で行ったことが示されている)とか等といったデータが表示される。また、図8及び図9には示していないが、図11においてオペレータが設定した点Q1〜Q5の値も表示される。
【0065】
なお、図9に表示された解析条件では、133.0〜242.0秒や、316.5〜575.0秒等のように、0.1秒の位まで条件が設定されている。このことは、サンプリング時間の間隔が0.1秒間隔であることを示しており、この時間間隔も解析条件の1つであるということである。従って、図9に示された解析条件に対応する解析データを再現して同一の解析データを得たい場合には、解析再現条件としてサンプリング時間の間隔を0.1秒間隔に設定する必要があるということである。
【0066】
例えば、0.1秒間隔の測定条件で測定を行い、0.1秒間隔の解析条件で解析を行った場合には、1秒間の中に10個のデータが存在する。仮に、このようなデータに対して1秒間隔の解析条件で解析を再現すれば、得られる解析データは元の解析データとは異なったデータになってしまう。つまり、サンプリング時間の間隔は重要な解析条件の1つであるということであり、図9の316.5〜575.0秒という条件は、そのような重要な条件を含んでいるということであり、ID(同一性認識記号)として機能しているということである。なお、サンプリング時間間隔は0.1秒間隔に代えて0.01秒間隔とすることもできる。
【0067】
データ使用者は、図8及び図9の表示を見ることにより、今問題にしている解析処理がいつ、誰によって、どのような解析条件の下に行われたかを明確に知ることができる。実際に解析を行った者ではない第三者がこの表示を見れば、その第三者は既に行われた解析がどのような条件で行われたかが分かり、非常に便利である。
【0068】
次に、図3のステップS8において解析結果の再現が指示された場合には、ステップS9で図1の解析再現用アプリケーションソフト20を起動する。この解析再現用アプリケーションソフト20が起動すると、図7のステップS41においてオペレータのログインを認める。このとき、データ利用者名や、データ利用日がコンピュータに登録される。次に、ステップS42において再現したい解析データを含むファイルが選択される。このデータファイルは図1の解析データファイル22の中に記憶されたものであり、本実施形態では、例えば、図11に示すDSCプロファイルP、ガラス転移点Tmg,Tig,Teg、ピーク値、ピーク面積等といったデータを含むファイルである。再現したいデータファイルが選択されると、ステップS43において対象のデータに対してアクセスが行われ、このとき解析履歴が読み出される。そして、その読み出された解析履歴と同一の手順及び同一の解析条件の下でステップS44において解析が再度行われる。
【0069】
ここで行われる解析は、図2の解析データファイル22の中に保存された解析履歴に含まれる解析条件と全く同じ条件によって行われるので、再度の解析によって得られる解析データは図11に示した解析データと全く同じデータである(ステップS45)。従来の解析処理においては、既に行われた解析処理に関して解析条件、例えば、図11における点Q1〜Q5の値が保存されることはなかった。従って、データ使用者が既に行われた解析を同じ解析条件下で行いたいと希望する場合には、そのデータ使用者がQ1〜Q5であると思われる点を推測してコンピュータに入力し、その入力値に基づいて再度の解析が行われていた。
【0070】
しかしながら、データ使用者が推測したQ1〜Q5の値と、基になる解析データを作成した解析者が設定したQ1〜Q5の値とが、完全に一致するということは、現実上はほとんど有り得ないことである。そのため、従来の解析処理において、既に求められている解析データと全く同じ解析データを再現するということは、ほとんど不可能であった。このことは、監査証跡のような完全な再現データを必要とする場合においては、非常に大きな問題点であった。このことに関し、本実施形態のように、図1の解析再現用アプリケーションソフト20を用意しておけば、第三者であっても完全に同一の再現解析データを作成することができるので、極めて厳密なデータ確認処理を行うことができる。
【0071】
また、本実施形態では、図1及び図2の解析データファイル22の中に記憶されている任意の解析データに関して解析を再現したとき、再現された解析データは解析データファイル22の中に記憶され、さらに、その解析データに関する解析履歴が解析履歴の記憶領域内に記憶される。この場合の解析履歴(すなわち、解析データ再現履歴)の中には、通常の解析履歴の場合と同様に、(A)再現された解析データの識別名(例えば、ファイル名)、(B)解析再現日時、(C)解析再現者名、(D)解析再現場所、(E)保存処理や印刷処理を行ったこと、(F)保存処理や印刷処理がいつ行われたかということ、(G)解析再現条件(これは前回の解析条件と同じである)、等の情報が記憶される。そして、解析データ再現履歴の場合には、さらに、(H)この解析が再現のための解析であること、及び(I)再現しようとしている解析データの識別名も含まれる。
【0072】
また、本実施形態では、図1の履歴表示用アプリケーションソフト19を起動すれば図2の解析データファイル22内の解析履歴を図1の画像表示装置4の画面上に表示することができる。以上のように、解析データ再現履歴を記憶し、さらにそれを表示できるようにすれば、異なった日時に解析データの再現が行われたり、異なった解析者が解析データの再現を行ったりした場合でも、当該解析データのID(Identification:身元)を正確に知ることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、上記の実施形態では図1の測定装置2としてDSC装置を考えたが、これに代えて、他の種類の熱分析装置を用いることもできる。また、熱分析装置以外の分析装置、例えばX線分析装置を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る分析装置は、コンピュータによって管理される分析装置においてデータの信頼性を高めるために好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る分析装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1のデータファイルを詳細に示す図である。
【図3】図1の装置によって行われる制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】図3の要部を示すフローチャートである。
【図5】図3の他の要部を示すフローチャートである。
【図6】図3のさらに他の要部を示すフローチャートである。
【図7】図3のさらに他の要部を示すフローチャートである。
【図8】図6の制御の過程におけるディスプレイの画面表示の一例を示す図である。
【図9】図8の表示例の一部を拡大して示す図である。
【図10】図4の測定によって得られる測定データの一例を示すグラフである。
【図11】図5の解析処理及び図7の解析結果再現処理によって得られるデータの一例を示すグラフである。
【図12】ガラス転移温度の解析を説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
1.分析装置、 2.測定装置、 3.入力装置、 4.画像表示装置(表示手段)、
6.プリンタ(印刷手段)、 11.ハードディスク、 12.バス、
26.解析履歴表示、 27.履歴欄、 28.操作履歴欄、
L1.L2.ベースライン、 P.プロファイル、 P1.ピーク、
Q1〜Q5.指示点、 T.温度、 Tmg.中間点ガラス転移温度、
Tig.補外ガラス転移開始温度、 Teg.補外ガラス転移終了温度



【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分析する分析装置において、
画像を表示する表示手段と、
測定データを記憶する測定データ記憶手段と、
前記データ記憶手段に記憶されたデータに対して解析を行う解析手段と、
前記解析手段によって解析された解析データを記憶する解析データ記憶手段と、
前記解析に関する解析条件を記憶する解析条件記憶手段と、
前記解析条件記憶手段に記憶された解析条件を前記表示手段に表示させる解析条件表示制御手段と、
前記解析条件記憶手段に記憶された解析条件に基づいて前記解析手段によって解析を行わせる解析再現手段と
を有することを特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の分析装置において、
前記解析再現手段によって解析データを再現するときに生成される解析データ再現履歴を記憶する解析データ再現履歴記憶手段と、
前記解析データ再現履歴を表示する解析データ再現履歴表示手段と
をさらに有することを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の分析装置において、
前記測定データ記憶手段に記憶される測定データは、温度変化に応じて試料に発生する特性変化を測定する熱分析によって得られたデータであることを特徴とする分析装置。
【請求項4】
請求項3記載の熱分析装置において、
前記測定データは、グラフ上に特性変化曲線として表わすことができると共にガラス転移の階段状変化部分を含むデータであり、
前記解析は、前記特性変化曲線におけるベースラインを延長した直線と、前記ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線との交点の温度を求める解析である
ことを特徴とする分析装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の分析装置において、
前記測定データは2次元座標上に曲線として表わすことができるデータであり、
前記解析は前記曲線における2点間の面積を求める解析である
ことを特徴とする分析装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−153792(P2006−153792A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348250(P2004−348250)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】