説明

分注ノズルの洗浄方法,自動分析装置、および容器

【課題】試料や試薬を分注するノズルの外壁には汚れが付着しているが、従来の洗浄液をノズル外壁に吐出して洗浄する方法では、ノズル洗浄が不十分で操作者が手作業でメンテナンスを実施していた。そのために、非常に手間と時間を要していた。
【解決手段】内部に洗浄部材を備えた洗浄容器にノズルをアクセスさせ、当該容器内でノズル外壁を擦り洗浄する。自動でノズル外壁を洗浄できるため、手間のかからない洗浄が可能となる。洗浄容器は、通常の試料収容容器や試薬容器と同様の方法で搬送され、ノズルは当該洗浄容器内で上下往復動作して擦り洗浄するように制御すれば、分析ルーチンに用いる動作でノズル外壁の洗浄ができるため、洗浄に特別な機構を要せず簡易な機構とすることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の成分を自動で分析する自動分析装置に関わり、特に試料,試薬等吸引,吐出する際にノズルを用いる自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの生体試料中の無機イオン,タンパク,含窒素成分,糖,脂質,酵素,ホルモン,薬物などといった生化学成分の分析の大部分は自動分析装置で分析されている。生体試料はタンパク質や脂質といった成分を多く含んでおり、また、生化学分析で試料と混合して反応させるための試薬も酵素などのタンパク成分が多く含まれるが、これらの成分はノズルに付着しやすく、ノズル汚れの原因となりやすい。ノズルが汚染されると、このノズルを用いて吸引している試料や試薬にノズルの汚れが混入してしまい、正確な測定を妨げる原因となる。これらの汚れを除去するため、従来の装置では連続分析中のテストごとにノズル外壁の水洗浄を行っている。特許文献1には、ノズルの外部を水洗浄することによってノズル外壁の汚れを取り去る方法が開示されている。
【0003】
しかし、長期間にわたって同一のノズルを使用しているとノズル外壁を水洗浄するだけでは落としきれない汚れがノズルに付着することもある。そのため、連続分析中に行うノズルの水洗浄とは別に、定期的に洗浄液を用いてユーザーが手作業にてノズルの汚れを拭き落とすことが必要とされている。この手作業での擦り洗浄は、細いノズルの先端を破損する可能性もあるため、丁寧かつ慎重に取り組む必要がある。
【0004】
ノズルに対する定期的な擦り洗浄メンテナンスの煩雑さを回避するために、ノズルの外壁の擦り洗浄を自動で行う技術が特許文献1で記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−248010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法では、二個の洗浄部材がノズルを挟んだ状態で洗浄部材やノズルをスライド動作,回転動作させることでノズル外壁の擦り洗浄を行う。しかし、洗浄部材を備えた専用の洗浄機構を新たに設置する必要があることや、洗浄部材をスライド動作,回転動作させるためモーターなどの機構が必要となり、装置コストや設置スペースを圧迫することが問題となる可能性がある。また、ノズル外壁を擦り洗浄するためには通常の分析動作では使用しない特殊な動作が必要となるため、メンテナンスを実行するためには一端測定を停止させてから、擦り洗浄動作へ移行する必要がある。このため装置全体の処理能力低下は避けられない。また、洗浄機構は専用のユニットを形成しているため、洗浄部材の交換が難しい。洗浄部材が長時間の使用されると、ノズルの擦り洗浄動作によってかえってノズルが汚染されてしまうことも考えられる。
【0007】
以上を鑑みて本発明の目的は、従来の自動分析装置構成や分析シーケンスを大幅に変えることなく、自動でノズル外壁に付着する汚れを擦り洗浄可能な自動分析装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的として、ノズル洗浄用の洗浄部材の汚染がなく、洗浄部材由来のノズル汚染の心配がない洗浄機構を備えた自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を克服するための本発明の構成は以下の通りである。
【0010】
試料を吸引,吐出するためのノズルを備えた分注機構と、試料を収容した試料収容容器を前記分注機構のアクセスポジションに搬送する試料設置テーブルと、アクセスポジションに搬送された前記試料設置テーブル上の容器の内部で前記ノズルをノズル軸方向に上下動作させる分注制御機構と、を備えた自動分析装置において、前記試料設置テーブルは前記ノズルの上下動作時に前記ノズルの外壁と接触するよう配置された洗浄部材を内部に有する洗浄容器を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【0011】
ここで、分注機構とは試料を分注する試料分注機構であっても良いし、試料を試薬と読み替えて試薬分注機構としても良い。試薬分注機構としたときは、試料設置テーブルは試薬設置テーブルとなる。
【0012】
分注機構のアクセスポジションとは、分注機構が通常稼動範囲においてアクセス可能な場所を言う。例えば反応容器や検体容器が載置されたテーブルやラックの上である場合も考えられるし、分注機構がテーブルやラックに移動する間の動線上にあっても良い。
【0013】
また、洗浄部材はノズル外壁の汚れを擦り落とすことが可能であるものであれば、どのようなものでも良い。ブラシの他にもスポンジや綿などの、内部に液体を保持できるものを用いれば、洗浄液を適切に選択することで洗浄部材による擦り洗浄と、洗浄液による洗浄との効果を併せて、より高い洗浄効果を得ることも可能である。
【0014】
ノズルの上下動作は上下動作範囲を予め設定しておいても良いし、状況に応じてその都度変更しても良い。予め設定しておく場合には、予測されるノズルの汚染範囲をノズルの上下動作で洗浄部材と摩擦される範囲とを一致させるように、ノズル動作の上限位置と下限位置を設定すればよい。
【0015】
また、洗浄動作のトリガーは、分析動作終了後などの所定のタイミングを予め設定しておいても良いし、容器判別手段により自動分析装置が前記容器搬送手段上に載置された前記洗浄容器を検知したことをトリガーにすることも可能である。さらに、操作者が画面上で独立したメンテナンスとして依頼したことをトリガーとすることもできる。
【0016】
また、本発明の他の構成は、液体を吸引,吐出するノズルを備えた分注機構と、前記分注機構が分注動作を行うアクセスポジションに容器を搬送する容器搬送手段と、前記容器搬送手段上の容器の内部で前記ノズルをノズル軸方向に上下動させる分注制御機構と、を備えた自動分析装置において、前記容器搬送手段は分析に使用される容器とは別に、ノズルの洗浄に使用される容器を搬送し、前記分注制御機構は、アクセスポジションに位置付けられた前記容器搬送手段上の容器の種別に応じて前記ノズルの動作を制御することを特徴とする。
【0017】
分注機構は、通常の分注に用いる容器が搬送された場合には、通常分注用の動作を行うが、ノズルの洗浄に使用される容器が搬送された場合には、通常分注時とはことなる動作を行う。例えば、通常分注時よりも深くまでノズルを下降させることや、ノズルの上下往復動作を複数回繰り返す、といった動作を実施することが考えられる。
【0018】
分析に使用される容器とノズルの洗浄に使用される容器とは、互いに類似した形状をしており、ノズルの洗浄に使用される容器も分析に使用される容器と同様の機構で試料設置テーブル上に設置されており、操作者によって着脱可能となっていれば更に良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ノズルに付着した汚れを確実に落とす擦り洗浄動作を、通常の分析動作を組み合わせて自動で実行できるため、ノズル外壁の自動洗浄をコンパクトな機構で実現可能、かつ操作者への手間が少ない自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例に係る本発明が適用される自動分析装置の一例を示す図。
【図2】本発明の洗浄部材と該洗浄部材を収容する容器の実施の一例を示す図。
【図3】本発明の洗浄部材と該洗浄部材を収容する容器の使用状態を示す図。
【図4】ディスク式の自動分析装置上での該洗浄方法において、液面検知でノズルが停止する場合のフロー図の一例。
【図5】ディスク式の自動分析装置上での該洗浄方法において、所定の高さでノズルが停止する場合のフロー図の一例。
【図6】ラック式の自動分析装置上での該洗浄方法において、液面検知でノズルが停止する場合のフロー図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例の自動分析装置を、図1を用いて説明する。図1は本発明における一例である自動分析装置の、構成要素の略示説明図と、その配管図である。
【0022】
図1で、10は連鎖型反応容器、20は分析測定部、30は試料設置テーブル、40は試薬設置テーブル、50は試料分注ポンプ、51は試薬分注ポンプ、60は反応容器洗浄機構、70は試料分注機構、80は試薬分注機構、90は攪拌機構、100は精製水供給器、110は貯水容器、120は電動ポンプ、130はダイアフラム内蔵直動式自力制御形減圧弁、150は試料分注ノズル洗浄槽、151は試薬分注ノズル洗浄槽、152は攪拌棒洗浄槽、140,141,142,143は分岐管、161,162,163,164,165,166,167は直動式電磁弁、171,172,173,174,175,176は固定抵抗管であり、精製水供給器100を除いて、自動分析装置に組み込まれた構成要素である。
【0023】
自動分析装置では血液,尿の試料を試験管またはサンプルカップ等の試料収容容器31に収容し、回転移動する円盤状の試料設置テーブル30上に配置する。試料載置テーブル30には、測定する試料を収容した試料収容容器31を、操作者が簡単に設置し、測定が終了したら取除くための複数の容器設置ポジションが、円周上に設置されている。このようにして配設された試料収容容器31内の試料を試料分注機構70に装着した試料分注ノズル71の先端から定量吸い上げ、連鎖式の反応容器10に分注する。
【0024】
試料の入った反応容器10は回転移送され、順次試薬分注位置に到達する。試薬設置テーブル40には分注測定に要する種々の試薬41が配設されており、測定項目に応じた試薬を試薬分注機構80に装着した試薬分注ノズル81でもって定量吸い上げ、上述の反応容器10へ吐出し試料と混合する。
【0025】
混合液の入った反応容器10は更に移送され液反応をより効果的に進ませるため攪拌機構90によって攪拌される。攪拌は混合液中に攪拌子91を潜入させ、攪拌子の回転によって行う。
【0026】
反応が進行したものについては、光源21と分析測定部20との間の位置11まで移送され、透過光強度を測定されて分析データとして処理される。
【0027】
測定が終了した反応容器10は、再び試料分注機構70により新たな試料をうけるべく、反応容器洗浄機構60によって、内部洗浄される。反応容器洗浄機構60には3本の吸い上げノズル63と、精製水吐出ノズル62,61が配設されており、反応容器10の中にノズルを突っ込むことができるように上下動作をする。吸い上げノズル63にて測定終了した反応液を吸い上げ排出し、次の精製水吐出ノズル62で反応容器10に精製水を満たし、第2の吸い上げノズル63で反応容器10を洗浄し空にする。精製水吐出ノズル61は前出の反応液の透過光強度のデータを吸光度値として演算するための対比基準試料、すなわち水によるブランク値測定のために連鎖型反応容器10に適量精製水を給水する。ブランク値測定を終えると第3の吸い上げノズル63により反応容器10を再び空にする。
【0028】
以上の一連の動作を繰り返し制御されることで自動分析装置は多数の試料を様々な項目について分析している。
【0029】
図1においては、各1本の試料分注ノズル71と試薬分注ノズル81を用いて複数の試料収容容器31及び試薬41を分注するため、一度試料または試薬を吸引,吐出した後に、新たな試料または試薬の吸引動作に移行する際には、コンタミネーションを避けるため、液に触れた範囲のノズルの内壁および外壁を洗浄する必要がある。そこで、試料設置テーブル30と反応容器10との間に試料分注ノズル洗浄槽150を試薬設置テーブル40と反応容器10との間に試薬分注ノズル洗浄槽151をノズル動作軌跡上に配置している。
【0030】
試薬分注ノズル81は試薬分注ノズル洗浄槽151に位置している。この後、この試薬分注ノズル81は試薬設置テーブル40上へ移動し、制御装置の命ずる分析項目に応じた試薬41より適量分注する。次に、試薬分注ノズル81が分注した試薬を反応容器10へ吐出し再び試薬分注ノズル洗浄槽151上へ戻る。この時、試薬分注ノズル81には先に分注した試薬の残液が、ノズルの内外壁に付着している。
【0031】
図2は本発明における洗浄部材と該洗浄部材を収容する洗浄容器を示している。洗浄部材を収容する洗浄容器200は、通常の分析で使用されるサンプルカップまたは試験管の形状に類似しており、ユーザーは自在に試料設置テーブル上の試料設置ポジションに着脱することが可能である。洗浄容器200の内部には試料分注ノズルの外壁を擦り洗浄する洗浄部材201を備えている。上記洗浄部材201は、洗浄容器200の内側壁面より中心に向かって繊細なブラシを備えており、試料分注ノズル71はこの容器の中心軸を軌道としてスライド動作することで、外壁を擦り洗浄する。
【0032】
図3は洗浄部材と該洗浄部材を収容する容器の使用状態を示している。試料分注位置に洗浄容器200が搬送されると、試料分注ノズル71は所定の距離下降し、試料分注ノズル71と洗浄部材201が接触した状態で、試料分注ノズル71がスライド動作することにより、洗浄部材201がノズルの外壁に付着した汚れを擦り落とすことができる。ここで所定の距離とは、汚れが付着しているノズル外壁に相当する距離を想定しているが、具体的には、試料を吸引する際に試料液中にノズル先端を突っ込む領域に相当する距離、または、試料を吸引する前後に行う洗浄液によるノズル外壁洗浄において洗浄液がノズル先端に付着する領域に相当する距離であることが考えられる。
【0033】
洗浄部材201に繊細なブラシを用いれば、自動洗浄を行う際に洗浄部材にノズル先端が引っかかってノズルを破損することも避けられる。
【0034】
さらに、洗浄容器200に洗浄液を含ませれば、ブラシによる擦り洗浄の効果に併せて洗浄液による洗浄効果も期待できる。併用する洗浄液をノズルの外壁に付着した汚れの種類に応じて、次亜塩素酸塩剤やアルカリ性洗浄液,酵素洗浄液など選択すれば、試料分注ノズルに付着した汚れの種類に応じた効果的な洗浄ができる。
【0035】
また、洗浄部材201はブラシ以外にスポンジ体であっても良い。この場合もスポンジ体を収容する洗浄容器200内を試料分注ノズル71が通過することができるようにスポンジ体が配置されており、試料分注ノズル71を上下往復動作させる。上下往復動作させた試料分注ノズル71外壁とスポンジ体の摩擦による洗浄効果に加え、前記スポンジ体に洗浄液を含ませることにより、洗浄液による洗浄効果も期待できる。また、スポンジ体に含ませる洗浄液をノズルの外壁に付着した汚れの種類に応じて、次亜塩素酸塩剤やアルカリ性洗浄液,酵素洗浄液など選択することも可能であり、試料分注ノズルに付着した汚れの種類に応じた効果的な洗浄ができる。洗浄部材201は、試料分注ノズル71を破損することなく付着した汚れを擦り落とすことが可能な材質であれば、スポンジ体やブラシに限らず、綿などでも可能である。
【0036】
これら洗浄部材201は、ディスポーザブル使用することが望ましく、常に清潔な洗浄部材を用いて擦り洗浄することが可能である。ディスポーザブル使用を考慮し、洗浄部材201あるいは洗浄容器200は、簡易に着脱可能とする。具体的には、洗浄容器200は、反応液を収容する他の容器と類似した形状を持ち、試料設置ディスク上の容器を設置するポジションに収まるように設計されている。これによって、通常の試料収容容器と同じくらい簡易に洗浄容器200を装置内に設置できるため、例え洗浄部材が使用によって汚染されたとしても簡易に交換が可能となり、洗浄部材の汚染によるノズル洗浄不良を軽減することができる。
【0037】
図4は、ディスク方式の自動分析装置における、試料分注ノズルの擦り洗浄動作時において、試料分注ノズル洗浄の洗浄範囲の制御方法に関するフローチャートを示している。
【0038】
ディスク方式の自動分析装置においては、まず、ユーザーが画面上でノズル外壁洗浄を選択し、試料ディスクの所定の位置に洗浄部材を収容した洗浄容器200を設置する。装置は洗浄容器を認識して、試料分注ノズルによる試料分注ポジションまでこの洗浄容器200を搬送する。搬送された洗浄容器に対して、試料分注ノズル71は所定の距離だけ下降したのちに所定の距離だけ上昇する、という動作を所定の回数繰り返す。
【0039】
ここで、洗浄容器200に対する試料分注ノズル71の下降量は、試料分注ノズル71が通常の試料収容容器31に収容されている試料を吸引する際に試料液中にノズル先端を突っ込む量と同程度であれば良い。また、より丁寧に洗浄する場合には、試料分注ノズル洗浄槽150において使用される洗浄液が試料分注ノズル71の外壁に接触する範囲を基準として洗浄容器200における洗浄範囲をとしても良い。さらに、このノズル洗浄容器はユーザーが試料ディスクの自由な位置に設置して、設置した位置を自動分析装置の画面上で選択できるようにすれば使い勝手のよい装置となる。
【0040】
図5は、ディスク方式の自動分析装置上での試料分注ノズル71の洗浄方法において、試料分注ノズル洗浄の洗浄範囲の制御方法に液面検知機能を用いた場合のフローチャートを示している。
【0041】
まず、ユーザーが画面上でノズル外壁洗浄を行う旨を指定し、試料ディスク上の所定の位置に洗浄部材と、洗浄部材と同程度の高さまで洗浄液を収容した洗浄容器200を設置する。装置は洗浄容器200を認識して、試料分注ノズルの分注ポジションに洗浄容器200を搬送する。ここで、試料分注ノズル71は液面検知機能を有しており、静電容量変化や抵抗変化などの物理量変化を検出して、ノズル先端に対する液面の接触を検出できるものである。ノズル洗浄容器に向かって試料分注ノズル71を下降させる。洗剤液面と試料分注ノズル71との接触を検知したら、その高さを洗浄液の液面、及び洗浄部材の上端部として認識する。洗浄液液面を基点として所定の深さまで試料分注ノズルを下降させたのち、再度洗浄液液面まで上昇させる、といった上下の往復動作を所定回数行う。
【0042】
ここで、洗浄容器200に対する試料分注ノズル71の下降量は、試料分注ノズル71が通常の試料収容容器31に収容されている試料を吸引する際に試料液中にノズル先端を突っ込む量と同程度であれば良い。また、より丁寧に洗浄する場合には、試料分注ノズル洗浄槽150において使用される洗浄液が試料分注ノズル71の外壁に接触する範囲を基準として洗浄容器200における洗浄範囲を決定しても良い。さらに、所定の位置に予めノズル洗浄容器200を配置させ、画面上で設定しておけば、分析終了後に分析終了動作の一環として自動でノズルの外壁を擦り洗浄することが可能である。このときは、ノズル洗浄容器200を試料分注ノズルの試料分注ポジションまで搬送し、試料分注ノズル71を所定の高さ、または液面検知で検出した洗浄液の液面から所定の高さまで下降させ、所定回数の上下往復動作を行う。あるいは、所定の頻度でノズルの自動外壁擦り洗浄を行うように指定することも可能である。
【0043】
図6は、ラック方式の自動分析装置上における、試料分注ノズル外壁の擦り洗浄方法において、所定の高さでノズルが停止する場合のフローチャートを示している。
【0044】
ラック方式の自動分析装置においては、まず、洗浄部材を収容した洗浄容器200を所定のラックにのせ、自動分析装置へ投入する。所定のラックとは、一般試料や緊急試料などの試料が配置された分析用のラックではなく、洗浄作業を行うことを認識させる専用の洗浄ラックである。上述の洗浄ラックではなく、ユーザーが画面で指定したラックを洗浄用のラックとして使用することも可能である。
【0045】
装置はラックの種類を識別することが可能で、洗浄ラックの投入を認識すると洗浄ラックを試料分注ノズルによる試料分注ポジションまで搬送する。また、分析動作終了後のタイミングなど所定の頻度をトリガーとして、洗浄ラックを試料分注ポジションまで搬送することも可能である。この場合、洗浄ラックの待機部を装置上に設けることなどが考えられる。試料分注ノズル71は予め設定された範囲で所定回数の上下の往復動作を行うことで、試料分注ノズル71と該洗浄用容器内の洗浄部材201との摩擦によりノズル外壁の洗浄を行う。
【0046】
さらに、ユーザーが画面上でノズル外壁洗浄を行う旨を指定することで、装置へのトリガーとすることも可能である。
【0047】
また、洗浄ラック上に、複数の種類の洗浄部材や複数の種類の洗浄液を含ませた洗浄部材を設置すれば、ノズルに付着している汚れの種類に応じて、洗浄部材と洗浄液を使い分けた洗浄を実施し、より効果的である。
【0048】
上記洗浄方法を実施する場合、ノズル洗浄容器200に、洗浄部材201と同程度の高さまで洗浄液を入れておけば、ノズルの液面検知機能によって洗浄液の液面高さ(つまり、洗浄部材の高さ)が把握できる。洗浄剤の液面高さを基点としてノズルの上下往復動作をさせれば、ノズルの汚染領域を確実に洗浄することも可能である。
【0049】
以上までの説明は試料分注ノズルの洗浄に、本発明に基づく洗浄部材と該洗浄部材を収容した容器を適用した例について行ったが、本方法は、自動分析装置の試薬分注ノズルに対しても適用され得る。試薬分注ノズルに対して適用する場合には、ノズル外壁の洗浄容器として、試薬容器と類似した形状のものを用意し、試薬容器の吸引口に相当する部位に洗浄部材を設けるのが良い。
【符号の説明】
【0050】
10 連鎖型反応容器
20 分析測定部
30 試料設置テーブル
31 試料収容容器
40 試薬設置テーブル
41 試薬
50 試料分注ポンプ
51 試薬分注ポンプ
60 反応容器洗浄機構
61,62 精製水吐出ノズル
63 吸い上げノズル
70 試料分注機構
71 試料分注ノズル
80 試薬分注機構
81 試薬分注ノズル
90 攪拌機構
91 攪拌子
100 精製水供給器
110 貯水容器
120 電動ポンプ
130 ダイアフラム内蔵直動式自力制御形減圧弁
140,141,142 分岐管
150 試料分注ノズル洗浄槽
151 試薬分注ノズル洗浄槽
152 攪拌棒洗浄槽
161,162,163,164,165,166,167 直動式電磁弁
171,172,173,174,175,176 固定抵抗管
200 洗浄容器
201 洗浄部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を吸引,吐出するためのノズルを備えた分注機構と、
試料を収容した試料収容容器を複数設置し、且つ前記分注機構のアクセスポジションに搬送する試料設置テーブルと、
アクセスポジションに搬送された前記試料設置テーブル上の容器に対して前記ノズルをノズル軸方向に上下動作させる分注制御機構と、を備えた自動分析装置において、
前記試料設置テーブルは前記ノズルの上下動作時に前記ノズルの外壁と接触するよう配置された洗浄部材を内部に有する洗浄容器を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試料設置テーブルは前記試料収容容器を着脱する複数の容器設置ポジションを円周上に設け、
前記洗浄容器は前記容器設置ポジションに設置されることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試料設置テーブルに替えて少なくとも一本以上の試料を架設して搬送する試料ラック及び該ラックを搬送する搬送路を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記洗浄容器内に洗浄液を収容することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の自動分析装置において、
前記試料設置テーブルに換えて試薬ボトルを円周上に載置した試薬設置テーブルを備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
液体を吸引,吐出するノズルを備えた分注機構と、
前記分注機構が分注動作を行うアクセスポジションに容器を搬送する容器搬送手段と、前記容器搬送手段上の容器の内部で前記ノズルをノズル軸方向に上下動させる分注制御機構と、を備えた自動分析装置において、
前記容器搬送手段は分析に使用される通常容器とは別に、ノズルの洗浄に使用される洗浄容器を搬送し、
前記分注制御機構は、アクセスポジションに位置付けられた前記容器搬送手段上の容器の種別に応じて、前記ノズルの動作を制御することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6記載の自動分析装置の制御方法において、
前記容器搬送手段上に載置された容器の種別を判別する容器判別手段を備え、
前記容器判別手段で判別された前記洗浄容器が載置された前記容器搬送手段上のポジションを記憶し、
前記容器搬送手段はトリガーを検知することで前記洗浄容器を前記分注機構のアクセスポジションへ搬送することを特徴とする自動分析方法の制御方法。
【請求項8】
請求項6記載の自動分析装置の制御方法において、
前記ノズルのアクセスポジションに前記洗浄容器が位置付けられた場合には、
前記ノズルを所定の距離だけ下降させる下降ステップと、
前記ノズルを所定の距離だけ上昇させる上昇ステップと、
前記下降ステップと前記上昇ステップとを所定の回数繰り返すステップと、を有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項9】
請求項6記載の自動分析装置の制御方法において、
前記ノズルのアクセスポジションに洗浄液を収容した前記洗浄容器が位置付けられる場合には、
前記ノズル先端と前記洗浄液面との距離を検出するステップと、
前記ノズル先端を前記洗浄液面から所定の距離だけ下降させる下降ステップと、
前記ノズルを所定の距離だけ上昇させる上昇ステップと、
前記下降ステップと前記上昇ステップとを所定の回数繰り返すステップと、を有することを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9記載の自動分析装置の制御方法において、
前記ノズルを下降させる所定の距離とは、前記ノズルが液体を吸引する際に、吸引する液体に接触する範囲であることを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項11】
請求項8または請求項9記載の自動分析装置の制御方法において、
前記ノズル外壁に洗浄液を吐出して洗浄する洗浄機構を備え、
前記ノズルを下降させる所定の距離とは、前記ノズルに対する前記洗浄機構による洗浄範囲であることを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項12】
試料や試薬などの液体を収容した専用容器から液体の吸引,吐出を行うノズルを備えた分注機構と、
前記専用容器を搬送するための容器搬送手段と、を備えた自動分析装置に装着して用いる容器であって、
当該容器内に挿入されたノズルの外壁に接触するよう配置された洗浄部材を内部に有することを特徴とする容器。
【請求項13】
請求項12記載の容器において、
前記洗浄部材は、ブラシ,スポンジ,綿の少なくともいずれかを含むことを特徴とする容器。
【請求項14】
請求項12記載の容器において、
当該容器は前記容器搬送手段上の他の容器を着脱する着脱機構に保持されることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−286420(P2010−286420A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141785(P2009−141785)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】