説明

分注装置

【課題】
簡単な構造で、しかも、高精度な分注量が得られる分注装置を提供することにある。
【解決手段】
ニードルラック1は、内部が中空である。複数の同一形状のニードル2は、ニードルラック1に対して、複数のニードル2の下端部はニードルラック1の外部に突出し、複数のニードル2の上端部はニードルラック1の内部に突出して保持される。複数のニードル2のそれぞれの上端部付近の同じ位置には、開口2aが形成されている。ニードルラック1の内部空間を負圧にしてニードル2の下端部から液体を吸引し、ニードル2の内部に前記液体を滞留保持し、ニードルラック1の内部空間を加圧して、ニードル2に保持された液体を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置に係り、特に、複数の液体を同時に分注する多点同時分注の分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分注装置では、プレートやテーブル等に置かれた瓶や試験管、バイアル等の容器に入った液体を各容器毎にニードルで吸い上げて、別の瓶や試験管、バイアル等の容器に入った検体に対して注入し、コンタミを防ぐためにニードルを洗浄した後、また液体をニードルで吸い上げ、検体に注入するという動作を、容器の数だけ繰り返している。
【0003】
しかしながら、この方式では、多数の検体を同時に処理する場合、時間がかかるため、例えば、特開平11−287812号公報に記載のように、複数の分注ノズルを用いて、同時に複数の液体を分注する方式が知られている。ここで、各分注ノズル毎に、吸引吐出を行うためのプランジャポンプを設けた場合、分注量の精度は向上するものの、分注ノズルと同数のプランジャポンプが必要となり、コスト高になる。
【0004】
それに対して、特公昭52−30874号公報に記載のように、空気導管に単一のプランジャポンプ等の空気源を接続して、多数の液体を同時に分注するものも知られている。単一の空気源を用いる方式では、複数の分注ノズルまでの距離が異なることから、分注ノズル内の圧力が異なり、分注量が一定にならないという問題も生じる。この問題に対して、特公昭52−30874号公報記載の方式では、各分注ノズル内にピストンを内装して、分注量の精度を向上するようにしているが、各分注ノズル毎にピストンを内装する必要があるため、構造が複雑になるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−287812号公報
【特許文献2】特公昭52−30874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単一の空気源を用いる方式では、複数の分注ノズル(ニードル)までの距離が異なることから、分注ノズル内の圧力が異なり、分注量が一定にならないという問題も生じる。この問題に対して、特公昭52−30874号公報記載の方式では、各分注ノズル内にピストンを内装して、分注量の精度を向上するようにしているが、各分注ノズル毎にピストンを内装する必要があるため、構造が複雑になるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構造で、しかも、高精度な分注量が得られる分注装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、複数の同一形状のニードルを用いて複数の液体を同時に分注する分注装置であって、内部が中空のニードルラックと、前記複数のニードルは、このニードルラックに対して、前記複数のニードルの下端部は前記ニードルラックの外部に突出し、前記複数のニードルの上端部は前記ニードルラックの内部に突出して保持されるとともに、前記複数のニードルのそれぞれの上端部付近の同じ位置に形成された開口を備え、前記ニードルラックの内部空間を負圧にして前記ニードルの下端部から液体を吸引し、前記ニードルの内部に前記液体を滞留保持し、前記ニードルラックの内部空間を加圧して、前記ニードルに保持された液体を吐出するようにしたものである。
かかる構成により、簡単な構造で、しかも、高精度な分注量が得られるものとなる。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記ニードルに形成された開口は、前記ニードルの上端部に形成されているものである。
【0010】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記ニードルに形成された開口は、前記ニードルの上端部近傍の側面に形成されているものである。
【0011】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記ニードルに形成された開口は、前記ニードルの上端部近傍の側面に形成されるとともに、前記ニードルの側面にスライド可能な側壁を備えるようにしたものである。
【0012】
(5)また、上記目的を達成するために、本発明は、複数の同一形状のニードルを用いて複数の液体を同時に分注する分注装置であって、内部が中空であるとともに、スライド可能なプランジャを有するニードルラックと、前記複数のニードルは、このニードルラックに対して、前記複数のニードルの下端部は前記ニードルラックの外部に突出し、前記複数のニードルの上端部は前記ニードルラックの底面と同一面に保持され、前記ニードルラックの内部に開口するとともに、前記プランジャを引き抜いて前記ニードルラックの内部空間を負圧にして前記ニードルの下端部から液体を吸引し、前記ニードルの内部に前記液体を滞留保持し、前記プランジャを押し込んで前記ニードルラックの内部空間を加圧して、前記ニードルに保持された液体を吐出するようにしたものである。
かかる構成により、簡単な構造で、しかも、高精度な分注量が得られるものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構造で、しかも、高精度な分注量が得られるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図7を用いて、本発明の一実施形態による分注装置の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による分注装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による分注装置の全体構成を示す斜視図である。
【0015】
本実施形態の分注装置は、ニードルラック1と、薬品テーブル4と、検体テーブル6と、洗浄ポート8などから構成されている。ニードルラック1には、複数のニードル(分注ノズル)2が搭載されている。ニードル2は、パイプ状であり、上端部は、ニードルラック1の内部に突出し、下端部は、ニードルラック1の外部の下方向に突出している。ニードル2の数は、例えば、100本とか、200本である。また、内部がシールされたニードルラック1には、ニードルラック1の中を負圧にするためのプランジャポンプやシリンジ等が接続されている。プランジャポンプ等により、ニードルラック1の中を負圧にすることで、複数のニードル2によって複数の液体を同時に吸い込み、また、ニードルラック1の中を加圧することで、複数のニードル2に吸引された複数の液体を同時に吐出することができる。
【0016】
ニードルラック1は、分注装置内で、上下方向(図中、矢印A方向)に往復動可能である。すなわち、図1に図示の位置から下降して、検体テーブル6のすぐ上の位置まで移動可能である。また、ニードルラック1は、水平面内で、矢印B方向に回動可能である。すなわち、図1に図示の位置から、洗浄ポート8のすぐ上の位置まで回動可能である。洗浄ポート8は固定されている。
【0017】
薬品テーブル4には、瓶や試験管,バイアル等の容器に入った試薬等の液体が保持されている。一つの薬品テーブル4に保持された液体容器の数は、ニードルラック1に搭載されているニードルの本数を等しくなっている。薬品テーブル4は、矢印C方向に回動可能である。すなわち、図示の例では、6個の薬品テーブル4が図示されているが、それぞれが、ニードルラック1の真下の位置まで回動可能である。
【0018】
また、検体テーブル6には、瓶や試験管やバイアル等の容器に入った検体がセットされている。一つの検体テーブル6に保持された検体容器の数は、ニードルラック1に搭載されているニードルの本数を等しくなっている。検体テーブル6は、矢印D方向に回動可能である。すなわち、図示の例では、7個の検体テーブル6が図示されているが、それぞれが、ニードルラック1の真下の位置まで回動可能である。
【0019】
次に、図2を用いて、本実施形態による分注装置の動作について説明する。
図2(A)〜(C)は、本発明の一実施形態による分注装置の動作説明のための斜視図である。
【0020】
図2(A)は、液体吸入フェーズの動作状態を示している。液体吸入フェーズでは、図1に示した複数の薬品テーブル4が矢印C方向に回動し、所定の薬品テーブル4がニードルラック1の真下の位置まで移動する。その後、ニードルラック1が矢印A方向に下降して、図2(A)に示されるように、薬品テーブル4にセットされた試薬容器3の中に、ニードル2の先端が挿入される。試薬容器3の内部には、試薬が保持されており、ニードル2の先端は、試薬の液体内部に挿入される。
【0021】
シールされたニードルラック1と、プランジャポンプ(PP)10は、吸引/吐出パイプ7によって接続されている。この状態で、プランジャポンプ10を動作させて、吸引/吐出パイプ7を介して、ニードルラック1の内部を負圧にすると、複数のニードル2の先端から、試薬容器3の内部の試薬が複数のニードル2のそれぞれの内部に吸引され、滞留保持される。このとき、試薬等の液体を滞留保持する部分は、ニードル2の一部である。
【0022】
図2(B)は、液体吐出フェーズの動作状態を示している。液体吐出フェーズでは、図1に示した複数の検体テーブル6が矢印D方向に回動し、所定の検体テーブル6がニードルラック1の真下の位置まで移動する。その後、ニードルラック1が矢印A方向に下降して、図2(B)に示されるように、検体テーブル6にセットされた検体容器5の中に、ニードル2の先端が挿入される。検体容器5の内部には、検体(サンプル)が保持されており、ニードル2の先端は、検体の液体内部に挿入される。
【0023】
この状態で、図2(A)に示したプランジャポンプ10を動作させて、吸引/吐出パイプ7を介して、ニードルラック1の内部を加圧すると、複数のニードル2に保持されている試薬が、検体容器5の中に吐出される。
【0024】
図2(C)は、洗浄フェーズの動作状態を示している。洗浄フェーズでは、図1に示したニードルラック1が矢印B方向に回動し、洗浄ポート8の真上の位置まで移動する。その後、ニードルラック1が矢印A方向に下降して、図2(C)に示されるように、洗浄ポート8に挿入する。
【0025】
この状態で、図2(A)に示したプランジャポンプ10を動作させて、吸引/吐出パイプ7を介して、ニードルラック1の内部を負圧にして、洗浄液をニードル2の内部に吸引し、さらに、ニードルラック1の内部を加圧して、複数のニードル2に保持された洗浄液を吐出して、ニードル2の内部と外部とを洗浄液により洗浄する。
【0026】
図2(A)〜図2(C)に示すフェーズを繰り返すことで、複数の検体に試薬を分注し、また、ニードルを洗浄する工程を繰り返すことができる。
【0027】
なお、液体の入った瓶や試験管やバイアル等の容器3や、検体の入った瓶や試験管やバイアル等の容器5は、ICチップやバーコードなどで情報を持っており、ニードルラック1の動きと連動する。
【0028】
次に、図3及び図4を用いて、本実施形態による分注装置の詳細構造について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による分注装置の詳細構成を示す断面図であり、図4は、図3の要部拡大斜視図である。なお、図1及び図2と同一符号は、同一部分を示している。
【0029】
図3に示すように、ニードルラック1は、中空の略直方体形状の箱体である。ニードルラック1の上部には、吸引/吐出パイプ7と、洗浄液導入パイプ13とが接続され、下端部には排出パイプ14が接続されている。また、ニードルラック1の下部には、底板を貫通して、複数のニードル2が挿入され、固定されている。ニードル2の上端部は、ニードルラック1の内部に突出し、下端部は、ニードルラック1の外部の下方向に突出している。ニードルラック1に対して、パイプ7,13,14及びニードル2は、シールされている。
【0030】
また、図4に示すように、ニードルラック1の内部に突出したニードル2の上端部は、水平方向にカットされて開口2aを有し、ニードルラック1の内部に対して開放している。図3に示した複数本のニードル2は、それぞれ、同じ内径寸法、全長を有しており、ニードルラック1に対する取付位置も全て等しくしている。
【0031】
図3に示すように、例えば、試薬容器3内に試薬が保持されている状態で、ニードル2の先端を試薬の液体の中に挿入し、パイプ13,14の端部をバルブ等で封止した状態で、図2に示したプランジャポンプ10により吸引/吐出パイプ7を介して、ニードルラック1の内部に負圧を掛けると、試薬は複数のニードル2の内部にそれぞれ吸引される。ニードル2の内部の試薬の液面が上昇し、図4に示したニードル2の上端部の開口2aの位置まで上昇すると、試薬はニードル2の上端部から溢れ出ることになる。この時点で、プランジャポンプによる吸引を停止すると、試薬はニードル2の内部に保持される。前述したように、複数本のニードル2は、それぞれ、同じ内径寸法、全長を有しており、ニードルラック1に対する取付位置も全て等しくしているので、ニードル2の内部に滞留し、保持される試薬の量は、全て等しくすることができる。
【0032】
以上のようにして、単一のプランジャポンプ等の圧力源(動力源)を用いて、同一の複数のニードルをその上端部がニードルラック1の内部に突出するように構成し、液体の吸引時に、ニードルの上端部から溢れ出るようにするだけで、複数のニードルに対して同一量の液体を吸引することができる。
【0033】
その後、図2(B)に示したように、検体ラックの上にニードルラック1を移動し、ニードル2に内部に保持された試薬(液体)を吐出することで、多数の液体を同時に定量分注することができる。
【0034】
なお、パイプ14のバルブを閉じた状態では、ニードルラック1の内部には溢れ出た液体が残留しているため、ある程度溜まった時点で、排出パイプ14から外部に排出する。また、洗浄パイプ13からニードルラック1の内部に洗浄液を注入し、排出パイプ14から排出することで、ニードルラック1の内部の洗浄を行うこともできる。
【0035】
次に、図5を用いて、本実施形態による分注装置に用いる他のニードル構造について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による分注装置に用いる他のニードル構造の要部拡大斜視図である。
【0036】
図5に示すように、他の第1の例によるニードル2Aは、ニードル2Aの上端付近の側面に開口2bを有している。したがって、プランジャポンプ等によりニードルラック1の内部に負圧を掛けると、試薬は複数のニードル2Aの内部にそれぞれ吸引される。ニードル2Aの内部の試薬の液面が上昇し、図5に示したニードル2の上端部付近側面の開口2bの位置まで上昇すると、試薬はニードル2Aの上端部付近の開口2bから溢れ出ることになる。この時点で、プランジャポンプによる吸引を停止すると、試薬はニードル2Aの内部に保持される。前述したように、複数本のニードル2Aは、それぞれ、同じ内径寸法、全長を有しており、側面の開口2bの形成位置も同じにすることで、ニードルラック1に対する取付位置も全て等しくしているので、ニードル2Aの内部に滞留し、保持される試薬の量は、全て等しくすることができる。
【0037】
次に、図6を用いて、本実施形態による分注装置に用いるその他のニードル構造について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による分注装置に用いるその他のニードル構造の要部拡大斜視図である。
【0038】
図6に示すように、他の第2の例によるニードル2Bは、その上端側にパイプ2Cで接続されたカップ2Dを備えている。カップ2Dの上端には開口2aを有している。したがって、プランジャポンプ等によりニードルラック1の内部に負圧を掛けると、試薬は複数のニードル2Bの内部にそれぞれ吸引される。ニードル2Bの内部の試薬の液面が上昇し、パイプ2Cを経てカップ2Dの上端部の開口2aの位置まで上昇すると、試薬は上端部の開口2aから溢れ出ることになる。この時点で、プランジャポンプによる吸引を停止すると、試薬はニードル2B,パイプ2C,カップ2Dの内部に保持される。複数本のニードル2B,パイプ2C,カップ2Dは、それぞれ、同じ内径寸法、全長を有しており、ニードルラック1に対する取付位置も全て等しくしているので、ニードル2B,パイプ2C,カップ2Dの内部に滞留し、保持される試薬の量は、全て等しくすることができる。
【0039】
次に、図7を用いて、本実施形態による分注装置に用いるさらにその他のニードル構造について説明する。
図7は、本発明の一実施形態による分注装置に用いるさらにその他のニードル構造の要部拡大斜視図である。
【0040】
図7に示すように、他の第3の例によるニードル2Eは、その上端付近の側面に、スライド可能な側壁2Fを備えている。側壁2Fの上端には開口2cを有している。開口2cは、スライド式の側壁2Fが下降している状態では、側面に形成され、スライド式の側壁2Fが上端に位置してる状態では、上部に形成される。したがって、プランジャポンプ等によりニードルラック1の内部に負圧を掛けると、試薬は複数のニードル2Eの内部にそれぞれ吸引される。ニードル2Eの内部の試薬の液面が上昇し、開口2cの位置まで上昇すると、試薬は上端部付近の開口2cから溢れ出ることになる。この時点で、プランジャポンプによる吸引を停止すると、試薬はニードル2Eの内部に保持される。複数本のニードル2Eは、それぞれ、同じ内径寸法、全長を有しており、ニードルラック1に対する取付位置も全て等しくしているので、ニードル2Eの内部に滞留し、保持される試薬の量は、全て等しくすることができる。
【0041】
側壁2Fは、全てのニードル2Eの側壁2Fを連結してモータ等の駆動源を用いて一様に上昇下降させることにより、側壁2Fの上端の位置を全て等しくすることができる。このように、スライド式の側壁2Fを備えることにより、吸引する液体の量を可変することができ、分注量を可変することができる。
【0042】
なお、図4〜図7に示した実施形態は、いずれも、ニードルの上端付近に開口を形成した点で共通するものである。そして、液体の吸引時には、ニードルの上端付近の開口から液体をあふれ出させることで、ニードル内に滞留する液体の量を複数のニードルで等しくできるものである。
【0043】
次に、図8及び図9を用いて、本発明の他の実施形態による分注装置の構成について説明する。なお、本実施形態による分注装置の全体構成は、図1に示したものと同様である。
図8は、本発明の他の実施形態による分注装置の要部構成を示す斜視図である。図9(A)〜(C)は、本発明の一実施形態による分注装置の動作説明のための斜視図である。なお、図1〜図3と同一符号は、同一部分を示している。
【0044】
図8に示すように、ニードルラック1Aの内部には、上下方向に摺動可能なシリンジ状のプランジャ12を備えている。ニードルラック1Aの内面とプランジャ12との摺動面はシールされている。また、ニードルラック1の下部には、複数のニードル2Gが取り付けられている。ここで、ニードル2Gの下端は、ニードルラック1の下部から突出しているが、上端は、ニードルラック1の内部底面と同一面に位置している。
【0045】
例えば、図8に示すように、試薬容器3内に試薬が保持されている状態で、ニードル2の先端を試薬の液体の中に挿入し、プランジャ12を上方に引き上げると、ニードルラック1Aの内部は負圧となり、試薬は複数のニードル2Gの内部にそれぞれ吸引される。このとき、各ニードル2Gの上端部からプランジャ12の下面までの距離は等しいため、プランジャ12の上方への引き上げによってニードルラック1Aの内部に生じる負圧は、全てのニードル2Gに対して等しくなるため、プランジャ12の上方への移動を停止した時点で、ニードル2Gの内部に保持される試薬の量は等しくすることができる。また、プランジャ12の上方への移動量に応じて、ニードル2Gの内部に滞留する液体の量を変えることができるので、分注量を容易に可変することができる。
【0046】
次に、図9(A)〜(C)を用いて、本実施形態の分注装置の動作について説明する。
【0047】
図9(A)は、液体吸入フェーズの動作状態を示している。液体吸入フェーズでは、図1に示した複数の薬品テーブル4が矢印C方向に回動し、所定の薬品テーブル4がニードルラック1Aの真下の位置まで移動する。その後、ニードルラック1Aが矢印A方向に下降して、図9(A)に示されるように、薬品テーブル4にセットされた試薬容器3の中に、ニードル2の先端が挿入される。試薬容器3の内部には、試薬が保持されており、ニードル2の先端は、試薬の液体内部に挿入される。
【0048】
この状態で、プランジャ12を上方に引き上げると、ニードルラック1Aの内部が負圧となり、複数のニードル2Gの先端から、試薬容器3の内部の試薬が複数のニードル2Gのそれぞれの内部に吸引され、滞留保持される。
【0049】
図9(B)は、液体吐出フェーズの動作状態を示している。液体吐出フェーズでは、図1に示した複数の検体テーブル6が矢印D方向に回動し、所定の検体テーブル6がニードルラック1Aの真下の位置まで移動する。その後、ニードルラック1Aが矢印A方向に下降して、図9(B)に示されるように、検体テーブル6にセットされた検体容器5の中に、ニードル2Gの先端が挿入される。検体容器5の内部には、検体(サンプル)が保持されており、ニードル2Gの先端は、検体の液体内部に挿入される。
【0050】
この状態で、図9(A)に示したプランジャ12を下方に押し下げると、ニードルラック1Aの内部が加圧され、複数のニードル2Gに保持されている試薬が、検体容器5の中に吐出される。
【0051】
図9(C)は、洗浄フェーズの動作状態を示している。洗浄フェーズでは、図1に示したニードルラック1Aが矢印B方向に回動し、洗浄ポート8の真上の位置まで移動する。その後、ニードルラック1Aが矢印A方向に下降して、図9(C)に示されるように、洗浄ポート8に挿入する。
【0052】
この状態で、図9(A)に示したプランジャ12を上方に引き上げると、ニードルラック1Aの内部が負圧となり、洗浄液をニードル2Gの内部に吸引し、さらに、プランジャ12を押し下げてニードルラック1Aの内部を加圧して、複数のニードル2Gに保持された洗浄液を吐出して、ニードル2Gの内部と外部とを洗浄液により洗浄する。
【0053】
図9(A)〜図9(C)に示すフェーズを繰り返すことで、複数の検体に試薬を分注し、また、ニードルを洗浄する工程を繰り返すことができる。
【0054】
なお、液体の入った瓶や試験管やバイアル等の容器3や、検体の入った瓶や試験管やバイアル等の容器5は、ICチップやバーコードなどで情報を持っており、ニードルラック1Aの動きと連動する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態による分注装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による分注装置の動作説明のための斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による分注装置の詳細構成を示す断面図である。
【図4】図3の要部拡大斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による分注装置に用いる他のニードル構造の要部拡大斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による分注装置に用いるその他のニードル構造の要部拡大斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態による分注装置に用いるさらにその他のニードル構造の要部拡大斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態による分注装置の要部構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態による分注装置の動作説明のための斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1…ニードルラック
2…ニードル
2a…開口
3…試薬容器
4…薬品テーブル
5…検体容器
6…検体テーブル
8…洗浄ポート
10…プランジャポンプ
12…プランジャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同一形状のニードルを用いて複数の液体を同時に分注する分注装置であって、
内部が中空のニードルラックと、
前記複数のニードルは、このニードルラックに対して、前記複数のニードルの下端部は前記ニードルラックの外部に突出し、前記複数のニードルの上端部は前記ニードルラックの内部に突出して保持されるとともに、
前記複数のニードルのそれぞれの上端部付近の同じ位置に形成された開口を備え、
前記ニードルラックの内部空間を負圧にして前記ニードルの下端部から液体を吸引し、前記ニードルの内部に前記液体を滞留保持し、前記ニードルラックの内部空間を加圧して、前記ニードルに保持された液体を吐出することを特徴とする分注装置。
【請求項2】
請求項1記載の分注装置において、
前記ニードルに形成された開口は、前記ニードルの上端部に形成されていることを特徴とする分注装置。
【請求項3】
請求項1記載の分注装置において、
前記ニードルに形成された開口は、前記ニードルの上端部近傍の側面に形成されていることを特徴とする分注装置。
【請求項4】
請求項1記載の分注装置において、
前記ニードルに形成された開口は、前記ニードルの上端部近傍の側面に形成されるとともに、前記ニードルの側面にスライド可能な側壁を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項5】
複数の同一形状のニードルを用いて複数の液体を同時に分注する分注装置であって、
内部が中空であるとともに、スライド可能なプランジャを有するニードルラックと、
前記複数のニードルは、このニードルラックに対して、前記複数のニードルの下端部は前記ニードルラックの外部に突出し、前記複数のニードルの上端部は前記ニードルラックの底面と同一面に保持され、前記ニードルラックの内部に開口するとともに、
前記プランジャを引き抜いて前記ニードルラックの内部空間を負圧にして前記ニードルの下端部から液体を吸引し、前記ニードルの内部に前記液体を滞留保持し、前記プランジャを押し込んで前記ニードルラックの内部空間を加圧して、前記ニードルに保持された液体を吐出することを特徴とする分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−258692(P2006−258692A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78845(P2005−78845)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】