説明

分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法及び分解処理装置

【課題】
反応管内の温度に応じて含ハロゲン化合物を含む被処理ガスを可変定量して供給できるとともに、ガス化した含ハロゲン化合物が再液化することなく、安定して反応管内に供給することができる分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法及び分解処理装置を提供する。
【解決手段】
分解処理装置10は、反応管20内の温度に応じて、反応管20に対し液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスを可変定量可能に送出するチュービングポンプ78を備え、分圧設定装置90がチュービングポンプ78と反応管20の間の管路84に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法及び分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン層破壊低減のためにフロン類の生産・使用規制が始まる前に生産された冷蔵庫や冷房装置(エアコン)が廃棄されつつある。また、フロン類、ハロン類は、工業製品等の洗浄に多用されている。それらの含ハロゲン化合物は、高い温暖化係数を示す温室効果ガスとして、又、フロン類はさらにオゾン層破壊ガスとしても知られている。以下、フロン類、ハロン類のハロゲンを含む化合物や、ハロゲンガス等を総称して「含ハロゲン化合物」という。
【0003】
このため、使用済みの回収した廃棄含ハロゲン化合物を、効率的に分解処理する方法及び装置が要望されている。そこで、当該要望に応えるべく分解処理装置が、例えば、特許文献1、特許文献2が提案されている。
【0004】
これらの分解処理装置では、廃棄含ハロゲン化合物を分解処理する場合、酸化カルシウムを主成分とする反応処理剤(すなわち、吸着剤)と、廃棄含ハロゲン化合物を反応させて処理をする。
【特許文献1】特開2004−261726号公報
【特許文献2】特開2001−79344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、常温大気圧下のもとで、液体となっている含ハロゲン化合物を分解処理する場合は、液体の含ハロゲン化合物をガス化して、反応管内に導入した方が好適である。
これは、含ハロゲン化合物を液体の状態のまま反応管内に供給した場合には、反応管内にある吸着剤の一部にしか供給できず、この結果、分解反応の偏りが生じて含ハロゲン化合物を充分に分解処理できなくなる虞があるからである。
【0006】
しかし、液体の含ハロゲン化合物は、大気圧下で0℃未満の沸点を有する含ハロゲン化合物よりも沸点が高いため、加熱等により気化しても、被処理ガスが通過する管路の外部環境の温度(例えば、冬場)により容易に凝縮して再液化してしまい、反応管内に含ハロゲン化合物を安定して定量的に供給することができなくなる。この結果、反応管内で好適に被処理ガスの分解処理を行うことができなくなる問題があった。
【0007】
又、液体の含ハロゲン化合物を分解処理する際に、ガス化した含ハロゲン化合物を、温度に応じて可変定量的に分解処理装置内に供給するのが好適である。
これは、分解処理装置の反応管内では、被処理ガスは吸着剤等に対しては発熱反応で分解されるが、反応管内で分解反応に与る被処理ガスが少なくなれば、発熱も少なくなるため、反応管内の温度が下がる。このような場合、必要以上に反応管内の温度を下げないために、反応管内に定量的に送っている被処理ガスの量を増加させる。又、反対に、反応管内で分解反応に与る被処理ガスが多くなれば、発熱が多くなるため、反応管内の温度が上がる。このような場合、必要以上に反応管内の温度を上げさせないために、反応管内に定量的に送っている被処理ガスの量を減少させる。
【0008】
このように、被処理ガスが処理される状況によって反応管内の温度が変わる場合、それに応じて、反応管内に送出する含ハロゲン化合物の供給量を変えるのが望ましい。しかし、従来は反応管内の温度に応じて可変定量的にガス化した含ハロゲン化合物を反応管に供給する分解処理装置は提案されていない。
【0009】
本発明の目的は、液体の含ハロゲン化合物をガス化した場合に、ガス化した含ハロゲン化合物が再液化することなく、安定して含ハロゲン化合物を含む被処理ガスを反応管内に供給することができる分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法及び分解処理装置を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、反応管内の温度に応じて含ハロゲン化合物を含む被処理ガスを可変定量して供給できるとともに、ガス化した含ハロゲン化合物が再液化することなく、安定して反応管内に供給することができる分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法及び分解処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスを分解処理装置の反応管に送出して、該反応管内で前記含ハロゲン化合物の分解処理を行う分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法であって、前記含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にして、前記含ハロゲン化合物を含む被処理ガスを反応管に送出することを特徴とする分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法を要旨とするものである。なお、本願発明での液体の含ハロゲン化合物とは、大気圧下で、0℃以上の沸点を有する含ハロゲン化合物をいう。例えば常温常圧で液体となる含ハロゲン化合物を含む趣旨である。
【0012】
請求項2の発明は、液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスを分解処理装置の反応管に送出して、該反応管内で前記含ハロゲン化合物の分解処理を行う分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法であって、前記被処理ガスを、前記反応管内の温度に応じて可変定量で送出するとともに、前記反応管内に送出される含ハロゲン化合物の分圧を飽和蒸気圧以下にすることを特徴とする分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法を要旨とするものである。
【0013】
請求項3の発明は、液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスを分解処理装置の反応管に送出して、該反応管内で前記含ハロゲン化合物の分解処理を行う分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法であって、前記被処理ガスを、定量で送出するとともに、前記反応管内に送出される含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にすることを特徴とする分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法を要旨とするものである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記反応管内に送出される含ハロゲン化合物の分圧を飽和蒸気圧以下にする際、被処理ガスに対してキャリアガスを注入することにより前記含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にするものである。
【0015】
請求項5の発明は、液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスが反応管に導入されて、該反応管内で前記含ハロゲン化合物の分解処理が行われる分解処理装置において、前記反応管の上流に、前記含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にする分圧設定装置が設けられていることを特徴とする分解処理装置を要旨とするものである。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5において、前記反応管内の温度に応じて、前記反応管に対し液体の含ハロゲン化合物をガス化した前記被処理ガスを可変定量可能に送出する可変定量送出手段を備え、前記分圧設定装置が前記可変定量送出手段と前記反応管の間の管路に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項5において、前記反応管に対し前記被処理ガスを定量可能に送出する定量送出手段を備え、前記分圧設定装置が前記定量送出手段と前記反応管の間の管路に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項5乃至請求項7のうちいずれか1項において、前記分圧設定装置が、前記被処理ガスに対してキャリアガスを注入することにより前記含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、3及び請求項5、7の発明によれば、液体の含ハロゲン化合物をガス化した場合に、ガス化した含ハロゲン化合物が再液化することなく、安定して含ハロゲン化合物を含む被処理ガスを反応管内に供給することができる効果を奏する。
【0020】
又、請求項2及び請求項6の発明によれば、反応管の温度に応じて含ハロゲン化合物を含む被処理ガスを可変定量して供給できるとともに、ガス化した含ハロゲン化合物が再液化することなく、安定して反応管内に供給することができる。
【0021】
請求項4及び請求項8の発明によれば、被処理ガスに対してキャリアガスを注入することにより、含ハロゲン化合物の分圧を飽和蒸気圧以下に容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1を参照して説明する。図1には含ハロゲン化合物の分解処理装置及び被処理ガスの供給路の概略図を示している。
図1に示すように、キャリアガスボンベ70には、キャリアガスが貯蔵され、キャリアガスボンベ70からキャリアガスが管路84に設けられたレギュレータ72を介して、貯蔵ボンベ74に注入される。本実施形態では、キャリアガスは窒素ガスとしているが、アルゴンガス等の不活性ガスであってもよい。貯蔵ボンベ74には、0℃以上、かつ大気圧下で液体となる含ハロゲン化合物が貯蔵されている。本実施形態では、貯蔵ボンベ74には含ハロゲン化合物としてハロン2402がされている。又、キャリアガスボンベ70から供給されたキャリアガスにより、液体の含ハロゲン化合物の一部がガス化されて貯蔵ボンベ74から、管路84の温度における飽和蒸気圧以下の分圧で送出される。又、レギュレータ72と貯蔵ボンベ74との間には開閉バルブ72aが設けられている。
【0023】
貯蔵ボンベ74から送出された含ハロゲン化合物のガス(以下、キャリアガス及び含ハロゲン化合物を含むガスを被処理ガスという)は、チュービングポンプ78にて分解処理装置10に送出される。チュービングポンプ78は、一定時間に一定量のガスを送出可能であり、時間当たりの回転量が変更されることにより、可変定量ポンプとして作用する。チュービングポンプ78は可変定量送出手段に相当する。
【0024】
制御装置80は、後述する分解処理装置10における反応管20内の反応帯26の温度を検出する温度センサ82の検出値に基づいて、チュービングポンプ78の時間当たりの回転量を可変制御する。制御装置80は、反応管内の温度に応じて、可変定量送出手段を、該反応管に対し液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスを可変定量可能に制御する制御手段に相当する。
【0025】
貯蔵ボンベ74とチュービングポンプ78との間には、開閉バルブ76が設けられている。チュービングポンプ78と分解処理装置10間の管路84には、開閉バルブ86が設けられるとともに、ブロア88を介してキャリアガスとしての分圧調整用エアが注入される。前記ブロア88、及び管路84に分圧調整用エアを注入する注入管89により分圧設定装置90が構成されている。なお、ブロア88はの代わりにファンであってもよい。
【0026】
ここで、ブロア88にて注入される分圧調整用エアによる分圧調整について説明する。
前述したようにチュービングポンプ78は、可変定量ポンプであるため、一定時間当たりに送出される被処理ガスの定量は、後述する反応管20の温度に応じて可変となる。この場合、管路84の温度が一定の場合において、前記定量が最大値となる場合は最小値となる場合よりも、チュービングポンプ78から送出される含ハロゲン化合物の分圧は大きい。
【0027】
一方、飽和蒸気圧は、温度が上昇すれば高くなり、温度が低下すれば低下することから、管路84が外部環境の温度によって低下すれば、含ハロゲン化合物の飽和蒸気圧も低下する。
【0028】
このため、チュービングポンプ78の定量が最大となって含ハロゲン化合物の分圧が大きくなり、かつ、含ハロゲン化合物の飽和蒸気圧が低下する管路84の温度が低い場合において、ガス化した含ハロゲン化合物が再液化する可能性がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、分解処理装置10に接続される管路84の外部環境の温度変化が予めマージンをとって予測されている。そして、この温度変化の最小値(最低温度)において、かつ、チュービングポンプ78の最大の定量となるように駆動された際においても、含ハロゲン化合物の飽和蒸気圧以下に含ハロゲン化合物の分圧がなるように、ブロア88により供給される分圧調整用エアの供給量が設定されている。なお、本実施形態ではブロア88にて注入される分圧調整用エアの注入量は固定されている。
【0030】
なお、ここで前記最低温度とは、管路84は冬場と夏場のように外部環境によってその温度が変化するため、前記外部環境の影響により生ずる温度の最小値のことである。
このようにして、管路84に分圧調整用エアが注入されることにより、チュービングポンプ78から送出された含ハロゲン化合物の分圧がさらに低下して、管路84の温度における飽和蒸気圧以下の分圧で送出される。
【0031】
次に、含ハロゲン化合物の分解処理装置の概要を説明する。
分解処理装置10は、反応管20に、吸着剤からなる充填層22が形成されて、同充填層22に対して含ハロゲン化合物を含む被処理ガスが連続的に導入・導出されて、含ハロゲン化合物が分解されながら吸着剤に主として反応吸着されて接触されることにより含ハロゲン化合物の処理が行われる。
【0032】
前記吸着剤は、カルシウム系のものが使用される。カルシウム系の吸着剤としては、石灰石やドロマイトを焼成して得られる生石灰(CaO)や軽焼ドロマイト(CaO・MgO)がある。又、カルシウム系の吸着剤としては、他に、消石灰(Ca(OH))、石灰石(炭酸カルシウム(CaCO))、けい酸カルシウム(CaSiO)等も使用可能である。又、カルシウム系の吸着剤には、軽焼ドロマイト(CaO・MgO)のように酸化マグネシウムを含んでいても良い。本実施形態では、吸着剤として、生石灰(CaO)や軽焼ドロマイト(CaO・MgO)を使用する。
【0033】
前記吸着剤の粒径は、粒子形状により異なるが、通常2〜50mm、望ましくは5〜10mmが好適である。なお、粒径が小さすぎると、充填層22(ガス拡散帯、反応帯)の空隙率が低くてガス流れが阻害され、反対に、粒径が大きすぎると、粒子内へのガス拡散が不充分である。
【0034】
又、分解処理装置10により分解処理される被処理ガスは、フロン類、ハロン類を含む含ハロゲン化合物である。なお、本実施形態では、前述したように、含ハロゲン化合物としてハロン2402(沸点47℃)を使用するが、他のハロン類であってもよい。さらに、液体の含ハロゲン化合物として、例えば、フロン類としては、フロン-11(沸点23.8℃),フロン-113(沸点47.6℃)の特定フロン類や、HCFC-123(沸点27.9℃)、HCFC-141b(沸点32.2℃)、HCFC-225cb(沸点56.1℃)のHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)がある。又、液体の含ハロゲン化合物としてフロン類の他の例としては、HFC-43-10mes(沸点55.0℃)、HFC-245fa(沸点15.3℃)、HFC-365mfc(沸点40.2℃)のHFC(ハイドロフルオロカーボン)や、C5F12(沸点30.0℃)、C6F14(沸点56.0℃)のPFC(パラフルオロカーボン)等が挙げられる。なお、前記各含ハロゲン化合物の沸点は大気圧下のものである。
【0035】
これらのガス濃度は、10〜100vol%が好ましく、30〜100vol%がさらに好ましい。なお、濃度が10vol%未満であると、加熱する際に多くのエネルギーを必要とするため好ましくない。
【0036】
フロン類、及びハロン類の分解処理は、好ましくは、700〜1400℃の温度下で吸着剤に接触させることによって行われる。この温度が700℃未満であると、分解処理能力が低下する。1400℃を越えると、フロン類、及びハロン類との反応性が低下するため好ましくない。なお、フロン類、及びハロン類の分解処理は、公知の発熱反応を伴う。
【0037】
本実施形態の反応管20は垂直立て型とされ、前記充填層22がガス拡散帯24と反応帯26が上下に形成される。反応管20の上部は、第1冷却手段28が形成され、同第1冷却手段28の上方には、投入口30を有する吸着剤供給ホッパ32が配置されている。前記第1冷却手段28は、反応管20のガス拡散帯24の対応部位に配置されている。又、反応管20において、第1冷却手段28の上方の位置には、管路84に接続された被処理ガス導入口34が設けられている。
【0038】
反応管20の反応帯26対応部位には加熱部としての電熱ヒータH1、H2が設けられている。電熱ヒータH1,H2は、図示しない制御手段で出力制御可能となっている。加熱手段としては、電熱ヒータ(抵抗発熱体)に限らず、誘導加熱等の他の電気加熱手段あるいは燃焼加熱等の火力加熱手段であってもよい。電熱ヒータH1は、反応管20の外面に設けられた筒状電熱ヒータからなる。電熱ヒータH2は、反応帯26対応部位のみ加熱部とされたシーズドヒータ(電熱ヒータ)からなる。なお、電熱ヒータH1、H2を反応管20の反応帯26の内外に設けるのは、反応帯26の横断面内外の温度差を小さくするためである。ここで、反応管20の外部に設けられる加熱手段のみ、又は反応管20の内部に設けられる加熱手段のみ設けられていてもよく、或いは、反応管20の内部に設けられる加熱手段が複数設けられていてもよい。
【0039】
反応帯26に対応する反応管20の下部は下方に延びる導管36として設けられている。導管36の外周には、筒状の覆い管38が配置されている。覆い管38と導管36との間には、空隙38aが設けられていて、導管36の下部開口から排出されるガスを案内して、覆い管38に設けられた被処理ガス導出口40から排出する。被処理ガス導出口40には、図示しないが、例えば、集塵槽等の所要の後処理設備に接続されている。そして、覆い管38の外周には第2冷却手段としての水冷ジャケット42が設けられている。
【0040】
そして、被処理ガス導入口34と被処理ガス導出口40との一方側又は双方側には、ガス流れを吸引により発生させるために、差圧発生手段として図示しないブロアが設けられている。差圧発生手段は、通常、加圧輸送機となる送風機(ファン、ブロア)又は減圧輸送機となる圧縮機(コンプレッサ)を、適宜、要求処理量、反応管20の吸着剤の充填密度に対応させて適宜選定すればよい。
【0041】
又、導管36は、反応管20の下部の充填層22を下方に配置された吸着剤排出機構44に導く。
吸着剤排出機構44は、例えば強制排出手段としてスクリューコンベヤ46から構成され、強制排出手段の吸着剤流入口側と、反応管20の下端側(吸着剤流出口)との間には、吸着剤が移動する前記覆い管38が配置されている。
【0042】
覆い管38及び導管36は、水冷ジャケット42により反応管20の下端側から流出(流下)してきた吸着剤を冷却する作用を奏して吸着剤冷却帯48を形成する。
なお、この吸着剤冷却帯48は、スクリューコンベヤ46等の強制排出手段と協働して、強制排出手段の出口50を介しての被処理ガス導出口40との間のガス流れを絞る作用も奏する。被処理ガス導出口40と強制排出手段の出口50との間に、流体流れの圧損を発生させる吸着剤充填部が形成されるためである。この作用により、被処理ガス導入口34から被処理ガス導出口40への被処理ガスの流れが円滑となる。
【0043】
次に、含ハロゲン化合物の分解処理装置10の分解処理について説明する。
まず、スクリューコンベヤ46を停止させた状態で、吸着剤供給ホッパ32内に投入口30から、覆い管38の下部内及び反応管20内を吸着剤にて充填し、さらに、吸着剤供給ホッパ32が略一杯になるまで吸着剤を投入する。
【0044】
次に、電熱ヒータH1,H2をオン(ON)として、反応帯26の内部雰囲気温度を、含ハロゲン化合物の分解反応温度以上となるまで昇温させ維持する。ここで、分解反応温度の設定温度は、分解反応、すなわち、効率の見地から、通常、700℃以上とする。そして、上限は、熱効率及び化学平衡の見地から、約1400℃以下、望ましくは900℃以下とする。
【0045】
ここで、当該設定温度は、反応帯26の略中央部位置、例えば、図1のD点ないしE点におけるものとする。
そして、通常、第1冷却手段28を備えたガス拡散帯24は、分解反応温度未満である。ここで、ガス拡散帯24は、通常、分解反応温度より格段に低い温度、高くて200℃以下、通常100℃以下の温度雰囲気になっている(例えば、図1のB点)。これは、ガス拡散帯24を形成する吸着剤の充填層22の熱伝導率が非常に低く、反応帯26の温度影響を受け難いためである。
【0046】
この状態で、図示しないブロアを運転させると、含ハロゲン化合物は、被処理ガス導入口34から反応管20の充填層22内へ吸引導入される。すると、被処理ガス導入口34から吸引導入された被処理ガスは、ガス拡散帯24で拡散されながら反応帯26ヘ輸送(搬送)される。このとき、ガス拡散帯24における吸着剤の雰囲気温度は、被処理ガスの分解反応温度未満である。このため、被処理ガスは、吸着剤の充填隙間で拡散されながら反応帯26に移動する。
【0047】
反応帯26に到達した被処理ガスは、反応帯26で、分解後、吸着剤に反応吸着されてハロゲン成分が除去された排ガスとして被処理ガス導出口40から排出される。
なお、ガス拡散帯24の反応帯26との境界部には、温度傾斜ゾーン(例えば、100℃以上600℃未満)である移行帯(中間帯)が存在する。
【0048】
そして、スクリューコンベヤ46を駆動させると、反応管20内の吸着剤は重力により、下方へ徐々に移動する。導管36内の吸着剤は移動により放熱冷却される。そして、吸着反応が済んだ使用済み吸着剤は、導管36、覆い管38内で水冷ジャケット42でさらに強制冷却されて、スクリューコンベヤ46の入口に到達し、さらに、コンベヤの出口50から図示しない回収コンテナ内に落下排出される。
【0049】
ここで、反応管20の温度である反応帯26の温度は温度センサ82により検出される。この温度センサ82の温度検出により、分解処理時に発熱反応に与る含ハロゲン化合物の量の度合いを制御装置80が判定する。
【0050】
なお、反応帯26での温度は、電熱ヒータH1,H2の加熱による寄与分と、分解処理時の発熱反応よる寄与分がある。この場合、例えば、電熱ヒータH1,H2の加熱による寄与分が一定の場合、分解処理時の発熱反応の寄与分の変化が温度変化に大きく関係する。このことから、予め試験等により、電熱ヒータH1,H2のみの寄与分については、未反応状態で、温度計測しておけば、発熱反応の寄与分については、すなわち、発熱反応に与る含ハロゲン化合物の量の度合いについては判定を行うことができる。
【0051】
制御装置80は、この温度が予め設定された第1閾値よりも低いとい判定すれば、発熱反応に与る含ハロゲン化合物が少なく、すなわち、反応管20に送出される含ハロゲン化合物が少ないと判定して、含ハロゲン化合物の反応管20に対する送出量を多くするべくチュービングポンプ78の時間当たりの回転量を増加させる。
【0052】
この結果、チュービングポンプ78から送出される含ハロゲン化合物の分圧が高いガスが送出される。なお、この場合において、ブロア88による分圧調整用エアの注入により、前記分圧は管路84の温度における飽和蒸気圧以下となる。
【0053】
又、温度センサ82により検出された反応帯26の温度が第2閾値(>第1閾値)よりも高ければ、制御装置80は、反応管20に送出される含ハロゲン化合物が多すぎると判定して、含ハロゲン化合物の反応管20に対する送出量を少なくするべくチュービングポンプ78の時間当たりの回転量を低下させる。この結果、チュービングポンプ78から送出される含ハロゲン化合物の分圧が低いガスが送出される。なお、この場合、ブロア88による分圧調整用エアの注入により、前記分圧は管路84の温度における飽和蒸気圧以下となる。
【0054】
さて、本実施形態では下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の被処理ガスの送出方法では、ハロン2402(含ハロゲン化合物)の分圧を、被処理ガスが通過する管路84における温度の飽和蒸気圧以下にして、ハロン2402を含む被処理ガスを反応管20に送出するようにした。又、本実施形態の分解処理装置10は、反応管20の上流に、ハロン2402含ハロゲン化合物の分圧を、被処理ガスが通過する管路84における温度の飽和蒸気圧以下にする分圧設定装置90が設けられている。
【0055】
この結果、液体のハロン2402(含ハロゲン化合物)をガス化した場合に、ガス化したハロン2402が再液化することなく、安定してハロン2402を含む被処理ガスを反応管20内に供給することができる。
【0056】
(2) 本実施形態の被処理ガスの送出方法では、被処理ガスを、反応管20内の温度に応じて可変定量で送出するとともに、反応管20内に送出されるハロン2402(含ハロゲン化合物)の分圧を、被処理ガスが通過する管路84における温度の飽和蒸気圧以下にする。
【0057】
又、上記の方法を実現するために、本実施形態の分解処理装置10は、反応管20内の温度に応じて、反応管20に対し液体のハロン2402をガス化した被処理ガスを可変定量可能に送出するチュービングポンプ78(可変定量送出手段)を備え、分圧設定装置90がチュービングポンプ78と反応管20の間の管路84に設けられている。
【0058】
この結果、反応管20の温度に応じてハロン2402を含む被処理ガスを可変定量して供給できるとともに、ガス化したハロン2402が再液化することなく、安定して反応管20内に供給することができる。
【0059】
(3) 本実施形態の被処理ガスの送出方法では、反応管20内に送出されるハロン2402の分圧を飽和蒸気圧以下にする際、被処理ガスに対して分圧調整用エア(キャリアガス)を注入することによりハロン2402の分圧を、被処理ガスが通過する管路84における温度の飽和蒸気圧以下にする。
【0060】
又、上記被処理ガスの送出方法を実現するために、本実施形態の分解処理装置10では、分圧設定装置90が、被処理ガスに対して分圧調整用エア(キャリアガス)を注入することによりハロン2402の分圧を、被処理ガスが通過する管路84における温度の飽和蒸気圧以下にする。
【0061】
この結果、被処理ガスに対して分圧調整用エア(キャリアガス)を注入することにより、ハロン2402の分圧を飽和蒸気圧以下に容易に実現することができる。
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0062】
○ 前記実施形態では、チュービングポンプ78を可変定量ポンプとしたが、単に定量ポンプとしてもよい。その代わりに、図2に示すように制御装置80は、温度検出手段としての温度センサ82が検出した温度に応じてブロア88の回転量を変更する。
【0063】
この場合、チュービングポンプ78から送出される含ハロゲン化合物の定量が固定されるため、反応管20の温度が例えば第3閾値より低い場合には制御装置80はブロア88の回転量を減少させて、管路84に注入される分圧調整用エアの供給量を減少させ、含ハロゲン化合物の分圧を上げる。なお、第3閾値は、予め試験等により得られた値である。又、制御装置80は反応管20の温度が第4閾値(>第3閾値)より高い場合にはブロア88の回転量を増加させて、管路84に注入される分圧調整用エアの供給量を増加させ、含ハロゲン化合物の分圧を下げる。なお、第4閾値は、予め試験等により得られた値である。
【0064】
この場合、チュービングポンプ78は定量送出手段に相当する。又、制御装置80は、ブロア88の駆動量を反応管20内の温度に応じて変更することにより、含ハロゲン化合物の分圧を管路84の温度における飽和蒸気圧以下に設定する制御手段に相当する。
【0065】
このようにしても、液体の含ハロゲン化合物をガス化した場合に、ガス化した含ハロゲン化合物が再液化することなく、安定して含ハロゲン化合物を含む被処理ガスを反応管内に供給することができる。
【0066】
○ 前記実施形態では反応管20を垂直立て型としたが、傾斜立て型であっても、吸着剤を自重落下可能な傾斜角度なら、上記垂直立て型と同様な作用効果を期待できる。
○ 前記実施形態において、反応管20内の吸着剤の充填層22を固定層として、バッチ的に所定量のガスを処理後、処理ガス導入を止めて、スクリューコンベヤ46を駆動させて、反応管20内の吸着剤の充填層22を、吸着剤供給ホッパ32から未使用の吸着剤を流下させた未使用吸着剤に入れ替えてもよい。
【0067】
○ 前記実施形態では、吸着剤をカルシウム系とマグネシウム系の両方でもよいとしたが、カルシウム系の吸着剤でのみ被処理ガスを分解処理する分解処理装置10でもよい。
○ 前記実施形態では可変定量送出手段はチュービングポンプ78で構成したが、ロータリーポンプ、ギヤポンプ、ダイヤフラム式ポンプ等により構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】一実施形態の図1には含ハロゲン化合物の分解処理装置及び被処理ガスの供給路の概略図。
【図2】他の実施形態の被処理ガスの供給路の概略図。
【符号の説明】
【0069】
10…分解処理装置、20…反応管、
78…チュービングポンプ(可変定量送出手段、定量送出手段)、
88…ブロア、90…分圧設定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスを分解処理装置の反応管に送出して、該反応管内で前記含ハロゲン化合物の分解処理を行う分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法であって、
前記含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にして、前記含ハロゲン化合物を含む被処理ガスを反応管に送出することを特徴とする分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法。
【請求項2】
液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスを分解処理装置の反応管に送出して、該反応管内で前記含ハロゲン化合物の分解処理を行う分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法であって、
前記被処理ガスを、前記反応管内の温度に応じて可変定量で送出するとともに、前記反応管内に送出される含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にすることを特徴とする分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法。
【請求項3】
液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスを分解処理装置の反応管に送出して、該反応管内で前記含ハロゲン化合物の分解処理を行う分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法であって、
前記被処理ガスを、定量で送出するとともに、前記反応管内に送出される含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にすることを特徴とする分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法。
【請求項4】
前記反応管内に送出される含ハロゲン化合物の分圧を飽和蒸気圧以下にする際、被処理ガスに対してキャリアガスを注入することにより前記含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にするものである請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の分解処理装置に対する被処理ガスの送出方法。
【請求項5】
液体の含ハロゲン化合物をガス化した被処理ガスが反応管に導入されて、該反応管内で前記含ハロゲン化合物の分解処理が行われる分解処理装置において、
前記反応管の上流に、前記含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にする分圧設定装置が設けられていることを特徴とする分解処理装置。
【請求項6】
前記反応管内の温度に応じて、前記反応管に対し液体の含ハロゲン化合物をガス化した前記被処理ガスを可変定量可能に送出する可変定量送出手段を備え、
前記分圧設定装置が前記可変定量送出手段と前記反応管の間の管路に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の分解処理装置。
【請求項7】
前記反応管に対し前記被処理ガスを定量可能に送出する定量送出手段を備え、
前記分圧設定装置が前記定量送出手段と前記反応管の間の管路に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の分解処理装置。
【請求項8】
前記分圧設定装置が、前記被処理ガスに対してキャリアガスを注入することにより前記含ハロゲン化合物の分圧を、前記被処理ガスが通過する管路における温度の飽和蒸気圧以下にするものである請求項5乃至請求項7のうちいずれか1項に記載の分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−142766(P2009−142766A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323570(P2007−323570)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】