説明

分離方法及び分離装置

【課題】金網と合成樹脂との複合部材を金属部分と樹脂部分とに安価な設備で効率的に分離可能な分離方法及び分離装置を提供する。
【解決手段】金網3の少なくとも一側面に合成樹脂製の付着物8が付着した複合部材7を、金網3と付着物8とに分離する分離方法であって、複合部材7を収容可能な凹部21を有する凹型22と、凹部21に嵌合する凸部24を有する凸型25とを用い、付着物8の軟化温度以上に複合部材7を加熱した状態で、複合部材7を凹部21内に装填し、凹部21に凸部25を嵌合させて、両型22、25間において複合部材7を金網3と略同じ厚さになるまで加圧し、付着物8のみを凹型22に形成した排出孔23から排出して、金網3と付着物8とを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金網と合成樹脂との複合部材を金属部分と樹脂部分とに分離する分離方法及び分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂材料からなるペレットや棒状材などを製作するための押出機においては、溶融樹脂中に含まれる溶融しない異物を濾し取るために、ダイの上流側に金網を取り付けることが通常行われている。また、金網の下流側に溶融樹脂が流通する多数の貫通孔を形成したブレーカプレートを配置し、金網に作用する樹脂圧をブレーカプレートで受け止めるように構成されている。
【0003】
前記金網は、金網が目詰まりしたり、押し出す合成樹脂材料の物性や着色を変更したりする場合などに、交換している。金網の交換方法としては、押し出した溶融樹脂が硬化する迄に、ヘラなどを用いて溶融樹脂を除去して金網のみを取り出す方法が採用されている。しかし、この方法ではブレーカプレートの貫通孔中に残留する樹脂をその硬化後に、1つずつ取り出す必要があり、金網のサイズが大きい場合には、ブレーカプレートの貫通孔の数も多く、貫通孔から一つずつ樹脂を取り出すには余りにも作業時間を要するという問題があった。
【0004】
そこで、最近では、作業時間を短縮するために、金網とともにブレーカプレートを押出機から取り出してから溶融樹脂を適宜冷却し、ブレーカプレートに残留する樹脂と金網とを一体化させた後、金網をブレーカプレートから引きはがすことで、金網とともにブレーカプレートの貫通孔に残存する樹脂を一挙に取り出せるようにした方法が広く採用されている。
【0005】
しかし、この方法においても、引き剥がした金網には濾過物と共に、多量の樹脂が付着している関係上、押出機で用いる合成樹脂材料として、PVCやハロゲン系の難燃剤を添加したものを用いた場合には、焼却処理が困難で、埋め立て処理を行う必要があるが、近年における埋め立て処理場の減少に伴い、埋め立てる廃棄物の減容化が求められ、金属部分並びに樹脂部分を極力回収することが要望されている。
【0006】
このような金網と合成樹脂との複合部材を、金属部分と樹脂部分とに分別回収するための方法としては、複合部材を粉砕し、その後、誘電率の変化を捕らえて分離する装置、所謂、金属分離装置を用いて樹脂部分を分離回収する方法や、複合部材の樹脂部分を溶融させ、金属製の小型の金網を用いて金属片を濾し取り、樹脂部分を分離回収する方法や、樹脂部分を溶融させた複合部材に遠心力を加えて比重差によって分離回収する方法(例えば、特許文献1参照。)などが知られている。また、この他にも、金属泊について報告されたものではあるが、前記複合部材に対して応用可能な方法として、凸及び凹の形をした2本のロールの間に複合部材を通過させ、金属部分を急激に折り曲げる事で樹脂部分に剪断力を作用させ、金属部分から樹脂部分を剥離する方法(例えば、特許文献2参照。)や、インサート金具を樹脂部分から剥離する方法として報告されたものではあるが、前記複合部材に対して応用可能な方法として、外部から高周波の磁場を与えて金属部分に誘導電流を発生させ、金属部分を加熱して樹脂部分との接触部分の樹脂のみを加熱溶融させ、未溶融部分を掴めるようにすることで、分離性を高める方法(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−254431号公報
【特許文献2】特開2003−260437号公報
【特許文献3】特開2001−300503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1記載のように、複合部材を粉砕し、係る後、金属部分と樹脂部分とを分離する方法では、金属部分をリサイクルするのには好適であるが、樹脂部分から金属粉を完全に分離除去することが困難で、分離した樹脂部分をそのままリサイクルできないという問題がある。また、特許文献2記載のように、凹凸のあるロールで複合部材を折り曲げる方法や、特許文献3記載のように、誘導電流で加熱する方法では、設備が大がかりになって設備コストが高くなるとともに、金網と合成樹脂とを効率的に分離できないという問題がある。このようなことから、設備コストが安く、効率的に金網と合成樹脂とを分離可能な分離方法が強く待ち望まれているのが現状である。
【0009】
本発明の目的は、金網と合成樹脂との複合部材を金属部分と樹脂部分とに安価な設備で効率的に分離可能な分離方法及び分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る第1の分離方法は、金網の少なくとも一側面に合成樹脂製の付着物が付着した複合部材を、金網と付着物とに分離する分離方法であって、前記付着物の軟化温度以上に複合部材を加熱した状態で、複合部材を1対の型により金網と略同じ厚さになるまで加圧して、金網と付着物とを分離するものである。
【0011】
この第1の分離方法では、例えば加圧面を平坦に構成した1対の金型間において、加熱した複合部材を加圧することで、付着物と金網とを分離するので、金網の網目には多少の付着物が残留することになるが、大部分の付着物は、両型間において金網の外方側へ流れ出し、金網の外側へ流れ出した合成樹脂部分をカットすることで、金網と付着物とを容易且つ効率的に分離することできる。しかも、複合部材の加熱は、工場設備として一般的に備えられている電気式や蒸気式など既存の加熱庫内に、複合部材をセットして行うことができ、また複合部材の加圧に関しても、同様に既存のプレス機械で行うことができるので、設備経済的な負担になることもない。尚、複合部材の加熱温度は、付着物の軟化温度以上で、しかも付着物を構成する合成樹脂材料が変質しない温度範囲内に設定することになる。
【0012】
本発明に係る第2の分離方法は、金網の少なくとも一側面に合成樹脂製の付着物が付着した複合部材を、金網と付着物とに分離する分離方法であって、前記複合部材を収容可能な凹部を有する凹型と、前記凹部に嵌合する凸部を有する凸型とを用い、前記付着物の軟化温度以上に複合部材を加熱した状態で、複合部材を凹部内に装填し、凹部に凸部を嵌合させて、両型間において複合部材を金網と略同じ厚さになるまで加圧し、付着物のみを凹型に形成した排出孔から排出して、金網と付着物とを分離するものである。
【0013】
この第2の分離方法では、加熱した複合部材を凹型と凸型間で加圧するので、金網の網目には多少の付着物が残留することになるが、大部分の付着物は、凹型に形成した排出孔から排出されることになるので、金網と付着物とを容易に且つ効率的に分離できる。しかも、複合部材の加熱は、工場設備として一般的に備えられている電気式や蒸気式など既存の加熱庫内に、複合部材をセットして行うことができ、また複合部材の加圧に関しても、同様に既存のプレス機械で行うことができるので、設備経済的な負担になることもない。尚、金網は、凹部内に残留することになるが、合成樹脂が軟化している間に、凹部から引き剥がすことで、排出孔内の合成樹脂から容易に分離できる。
【0014】
ここで、第2の分離方法において、前記金網側を凸型側へ向けて、複合部材を凹部に装填することが好ましい実施の形態である。つまり、複合部材として、押出機の使用後に排出される複合部材においては、押出機における異物除去用のフィルターが金網となり、押出機におけるブレーカプレート内に充填された合成樹脂材料が付着物となるので、金網における付着物とは反対側の側面には、押出機で押し出す合成樹脂材料に含まれる異物が付着している。このため、本発明のように、金網側を凸型側へ向けて、複合部材を凹部に装填すると、両型間において複合部材を加圧するときに、異物が付着している面を凸型に密着させながら、付着物を排出口側へ押し出すことが可能となり、分離した付着物に対する異物の混入を防止して、リサイクルする合成樹脂材料の品質を向上できる。
【0015】
第1及び第2の分離方法において、前記金網を含む面を型開閉方向と略直交させて、複合部材を型内にセット装填することが好ましい実施の形態である。このように構成することで、複合部材の加圧時に金網が折り重なることを防止できるので、両型間の隙間を極力小さく設定して、型間に残留する付着物を極力少なくできる。
【0016】
第1及び第2の分離方法において、前記両型を加熱しながら、両型間において複合部材を加圧することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、複合部材の加熱後、付着物と金網との分離が完了するまでの間に、付着物の温度が低下することを防止して、金網と付着物との分離作業を円滑に行うことが可能となる。
【0017】
本発明に係る分離装置は、金網の少なくとも一側面に合成樹脂製の付着物が付着した複合部材を、金網と付着物とに分離する分離装置であって、前記付着物の軟化温度以上に、複合部材を加熱する加熱装置と、前記加熱装置により加熱した複合部材を加圧する加圧装置であって、前記複合部材を収容可能な凹部を有し、底面に軟化した付着物の排出孔を形成した凹型と、前記凹部に嵌合する凸部を有する凸型と、前記両型間において複合部材を加圧する加圧装置とを備えたものである。
【0018】
この分離装置では、前記第2の分離方法と同様に、金網と付着物とを容易に且つ効率的に分離でき、しかも既存設備を有効活用して、分離装置を構成できる。
【0019】
前記分離装置において、前記凹型に複数の排出孔を形成することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、複数の排出孔から付着物を効率的に排出分離でき、加圧に要する時間を短縮できるとともに、排出孔の口径を例えば樹脂ペレットの直径と同じに設定することで、分離した樹脂材料のリサイクル性を向上できる。
【0020】
前記排出孔に凹部の底面側へ行くにしたがって開口径を大きく設定した案内部を設けることが好ましい実施の形態である。このように構成すると、複合部材の加圧時に、案内部により付着物を円滑に案内して、付着物を効率的に分離でき、加圧に要する時間を短縮できる。
【0021】
前記分離装置において、前記両型を付着物の軟化温度以上に加熱する加熱手段を設けることが好ましい実施の形態である。このように構成すると、複合部材の加熱後、付着物と金網との分離が完了するまでの間に、付着物の温度が低下することを防止して、金網と付着物との分離作業を円滑に行うことが可能となる。
【0022】
前記分離装置において、前記凹型に、付着物を除去した後の金網を押し出すエジェクタピンを設けることが好ましい実施の形態である。つまり、付着物を除去した金網は、凹型の金型の底面に残るため、この金網を工具などを用いて凹型から抜き取ることが必要であるが、本発明のように構成すると、エジェクタピンを突き出すことで、金網を持ち上げて、凹型から金網を容易に除去することが可能となる。
【0023】
前記分離方法及び分離装置において、前記金網が押出機における異物除去用のフィルターであり、付着物が押出機におけるブレーカプレート内に充填された合成樹脂材料であることが好ましい実施の形態である。つまり、複合部材としては、金網と付着物とを備えたものであれば、任意の構成のものを適用できるが、押出機においては、フィルターの目詰まりや樹脂変えなどの際に、フィルターとしての金網とブレーカプレート内に残留する合成樹脂材料とからなる廃棄物が発生するので、この廃棄物として発生する複合部材に、本発明を適用することで、廃棄物の減容化を図り、しかも分別回収した、金属材料や合成樹脂材料を再生利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る分離方法及び分離装置によれば、金網の一側面に強固に付着した付着物の略全部を簡単な方法で効率的に分離することができ、これまで埋め立て処理を行っていた合成樹脂をリサイクルすることができる。しかも、付着物の組成や形状などに殆ど依存することなく、金網から付着物を除去できるので、汎用性に優れた分離装置を実現できる。また、分離した合成樹脂が変質したり、分離した合成樹脂に不純物が含まれたりすることもないので、これをそのままリサイクルすることができる。更に、分離した金網は、合成樹脂が僅かに付着しているので、これをそのままリサイクルすることはできないが、これを更に合成樹脂と金属とに分離する場合であっても、付着している合成樹脂が少ないことから、比較的容易に分離することができ、また廃棄処分する場合であっても、複合部材のままで廃棄処分する場合と比較して、廃棄物を大幅に減量化及び減容化することができ、処理コストを大幅に節減できる。
【0025】
廃棄物の処理コストはリサイクル普及のためには不可欠であるが、本発明では、加熱設備と加圧設備を設けるだけでよく、しかも加熱設備に関しては、工場設備として一般的に備えられている電気式や蒸気式などの加熱庫を利用でき、また加圧設備に関しても、工場設備として一般的に備えられているプレス機械を利用できるので、既存の設備を有効活用して分離装置を構成することができる。また、分離装置を新設する場合でも、これら加熱設備や加圧設備は、比較的簡単な構造であるため、設備に要する費用が非常に少なく、設備経済的な負担を大幅に少なくできる。更に、本発明では、加熱と加圧により付着物と金網とを分離するので、従来の分離方法と比較して処理時間を大幅に短縮でき、作業者の負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
先ず、押出機から排出される複合部材について説明する。
図1に示すように、押出機1のバレル9とダイ2間には、異物除去用のフィルターとしての1乃至複数枚の金網3とそれに作用する樹脂圧を受け止めるブレーカプレート4が押し出し方向の上流側から順番に設けられ、ブレーカプレート4には複数の貫通孔5が形成され、押出機1のスクリュー6で押し出される溶融樹脂材料は、溶融樹脂中に含まれる異物が金網3で濾過された後、ブレーカプレート4の貫通孔5を経て、ダイ2を構成するダイボディ2aとノズルプレート2b間の通路2cを通って外部へと押し出されるように構成されている。尚、複数の金網3を重ね合わせて使用する場合には、少なくともブレーカプレート4側に線径の太い金網を用い、線径の細い金網を受け止めその変形を防止するように構成することが好ましい。金網3の線径や開き目や織り方は、押出機1で使用する樹脂材料の物性に応じて任意に設定可能であり、例えば、弾性率が1000MPa以下の軟質PVCを材料として用いる場合には、JIS規格のJIS Z−8801で規定される20メッシュの平畳織の金網1枚と、60メッシュの平畳織の金網1枚、少なくとも2枚の金網を重ね合わせて使用することが好ましい。
【0027】
図3に示す複合部材7は、このような押出機1において、金網3が目詰まりしたり、押し出す合成樹脂材料の物性や着色を変更したりするために、金網3を交換するときに廃棄物として得られるもので、図2に示すように、金網3とともにブレーカプレート4を押出機1から取り出して、金網3とブレーカプレート4に付着している溶融樹脂をヘラ等で除去した後、ブレーカプレート4とともにその内部に残留する溶融樹脂を適宜冷却し、図3に示すように、金網3をブレーカプレート4から引きはがすことで得られるものである。このため、複合部材7は、1乃至複数枚の金網3と、金網3の一側面から外方へ延びる合成樹脂材料からなる複数の棒状の付着物8とから構成され、1乃至複数枚の金網3は、金網3の隙間に充填された合成樹脂材料により一体化され、付着物8は金網3の隙間に充填された樹脂により金網3に一体的に付着されている。
【0028】
尚、本発明に係る分離方法及び分離装置10に適用可能な複合部材としては、平面視円板状以外の形状、例えばドーナツ状など、任意の形状のものや、付着物8の本数や断面形状を押出機の構成に応じて任意の本数や断面形状に構成したものや、金網3の両側面に付着物8を突出形成したものや、棒状の付着物8に代えて、合成樹脂材料からなるブロック状やシート状の付着物を有するものなどを採用できる。また、押出機1としては、押出機を伴なったフィルムなどの成型機または、カレンダー成型におけるストレーナなども含まれる。更に、金網と合成樹脂からなる付着物を有するものであれば、押出機1構造を有する各種成形機等における廃棄物を複合部材として処理することも可能である。
【0029】
次に、複合部材7を金網3と付着物8とに分離する分離装置10について説明する。
図4に示すように、分離装置10は、付着物8の軟化温度以上に、複合部材7を加熱する加熱装置(図示略)と、加熱装置により加熱した複合部材7を加圧する加圧装置20であって、前記複合部材7を収容可能な凹部21を有し、底面に軟化した付着物8の排出孔23を形成した凹型22と、前記凹部21に嵌合する凸部24を有する凸型25と、前記両型21、25間において複合部材7を加圧する加圧装置20とを備えている。
【0030】
加熱装置としては、電気式や蒸気式などの一般的な構成の加熱庫を採用することが、設備コストを安くする上で好ましいが、高周波誘導加熱やマイクロ波加熱など、任意の加熱方法で複合部材7を加熱可能な加熱装置を採用することもできる。加圧装置20としては、機械プレスや液圧プレスなどのプレス装置で構成できる。機械プレスとしては、クランクプレス、エキセントリックプレス、ナックルプレス、スクリュープレスなどを採用できる。尚、加熱装置及び加圧装置20は、周知の構成のものなので、その詳細な説明を省略する。
【0031】
凹型22と凸型25とは対面状に配置され、凹部21の内側面と凸部24の外側面とは略隙間なく嵌合するように構成されている。凹部21の平面形状は、凹部21内に複合部材7をセット可能な平面形状であれば任意の平面形状に形成できるが、凹部21と凸部24間に残留する合成樹脂を極力少なくするため、複合部材7の平面形状に適合する平面形状に形成することが好ましい。また、加圧時に金網3が折り重なることによる残留樹脂量の増大を防止するため、金網3を含む面が型開閉方向と略直交するように、凹部21内に複合部材7をセット可能に構成することになる。本実施の形態では、平面視円板状の複合部材7を用いているので、凹型22として平面視略円形の凹部21を有するものを用い、複合部材7を容易に凹部21内に装填できるように、凹部21の直径は、金網3と同じ直径或いはやや大きいな直径に設定することになる。
【0032】
凹部21の深さは、複合部材7の高さよりも深く設定され、複合部材7を凹部21に装填した状態で、付着物8が凹部21外へ食み出さないように構成されている。
【0033】
凸部24の高さは、凹部21の深さと略同じ或いはやや高く設定され、凸部24を凹部21に嵌合させた状態で、凸部24の下面と凹部21の底面間において複合部材7を少なくとも金網3の厚さまで加圧できるように構成されている。
【0034】
排出孔23の形成位置は、複合部材7の形状に応じて任意に設定できる。平面視円形の複合部材7を用いる場合には、付着物8を効率的に排出分離できるように、凹部21の底面の略中央部に形成することが好ましい。また、排出孔23の下部には直管部26が形成されている。この直管部26の口径は、合成樹脂の流れ性に応じて適宜選定することになるが、軟質の塩化ビニール樹脂にあっては、10〜20mmあれば十分である。また、排出孔23の上部には、凹部21の底面側へ行くにしたがって開口径を大きく設定した案内部27が形成され、この案内部27により、付着物8を案内することで、加圧時における付着物8の流動を促進して、付着物8を分離するために要する時間を短縮できるように構成されている。案内部27の開口径は、凹部21の底面と略同じに設定することもできるが、凹部21と凸部24間において少なくとも金網3の外周部を挟持できるように、凹部21の底面の直径の50%〜95%に設定することが好ましい。また、案内部27の傾斜角度θは、大きすぎると案内部27内における残留樹脂材料が多くなり、小さすぎると処理時間が長くなるので、30°〜60°に設定することが好ましい。尚、この案内部27を省略して、凹部21の底面を平坦面に構成するとも可能である。但し、この場合には、凹部21の底面にその外周部或いはその付近から排出孔23まで延びる複数の案内溝を放射状に形成し、これら複数の案内溝により、分離した合成樹脂を排出孔23側へ案内するように構成することが好ましい。
【0035】
尚、両型21、25に加熱手段を設けて、付着物8の軟化温度以上に両型21、25を加熱し、加熱装置による複合部材7の加熱後、付着物8と金網3との分離が完了するまでの間に、付着物8の温度が低下することを防止して、金網3と付着物8との分離作業を円滑に行うことも好ましい実施の形態である。この場合には、加熱装置を省略し、両型21、25間おいて複合部材7を付着物8の軟化温度まで加熱することできる。加熱手段としては、帯状の電気ヒータを型の周囲に巻き付けるか、若しくは、棒状の電気ヒータを型内に内装することができる。
【0036】
次に、前記分離装置10を用いた複合部材7の分離方法について説明する。尚、加熱装置として、加熱庫を用いた場合の一例について説明する。
【0037】
先ず、加熱装置としての加熱庫内に複合部材7をセットして、付着物8を構成する合成樹脂の軟化温度まで、複合部材7全体を加熱する。複合部材7の加熱温度は、付着物の軟化温度以上で、しかも付着物8を構成する合成樹脂材料が変質しない温度範囲内に設定することになり、例えば押出機1内における合成樹脂の加熱温度と同じ温度に設定することになる。また、軟質のポリ塩化ビニール樹脂のように、合成樹脂材料に可塑剤として油分を含ませる場合には、可塑剤が気化しないように、可塑剤の沸点以下に設定することが好ましい。本実施の形態では、付着物8を構成する合成樹脂として、軟質のポリ塩化ビニール樹脂に可塑剤を添加してものを用いているので、120℃に設定した。
【0038】
次に、加熱庫から複合部材7を取り出して、複合部材7の温度が軟化温度以下に低下する前に、金網3側が上側に配置されるように複合部材7を加圧装置20の凹型22に装填し、加圧装置20により凸型25を凹型22に嵌合させて、凸部24と凹部21間において複合部材7を金網3の厚さまで加圧する。このとき、金網3は凹部21と凸部24間に挟持されて両型21、25間に保持されるが、付着物8を構成する軟化した合成樹脂は、案内部27を通って排出孔23から型外へ排出される。また、複合部材7の付着物8とは反対側の面には、押出機1での使用により異物が付着しているが、金網3側を上側に向けて複合部材7を凹部21に装填することで、分離した合成樹脂への異物の混入が防止される。尚、加熱庫から凹型22への複合部材7の移送は、手作業で行うこともできるし、コンベア等を用いて自動化させることもできる。
【0039】
こうして、金網3の厚さまで複合部材7を加圧した後、凸型25と凹型22とを離間させ、排出孔23内の合成樹脂が軟化している間に、凹部21内に残っている金網3を金棒などの治具を用いて凹部21から引き剥がすことになる。このとき、排出孔23内の合成樹脂は、加圧により一体化しており、しかも排出孔23の内面に密着していることから、治具を用いて金網3を引き上げることで、金網3だけを排出孔23内の合成樹脂から比較的容易に且つ綺麗に引き剥がすことができる。そして、このようにして分離した金網3は、埋め立て処理を行って廃棄処分し、また排出孔23から排出されるひも状の合成樹脂は、これをペレット状に加工して再利用することになる。
【0040】
このように、この分離方法によれば、金網3の一側面に強固に付着した付着物8の略全部を簡単な方法で効率的に分離することができ、これまで埋め立て処理を行っていた合成樹脂をリサイクルすることができる。しかも、付着物8の組成や形状などに殆ど依存することなく、金網3から付着物8を除去できるので、汎用性に優れたものとなる。また、分離した合成樹脂が変質したり、分離した合成樹脂に不純物が含まれたりすることもないので、これをそのままリサイクルすることができる。更に、分離した金網3は、合成樹脂が僅かに付着しているので廃棄処分することになるが、複合部材7のままで廃棄処分する場合と比較して、廃棄物を大幅に減量化及び減容化することができ、処理コストを大幅に節減できる。
【0041】
次に、前記分離装置10の構成を部分的に変更した他の実施の形態について説明する。尚、前記実施の形態の分離装置10と同一部材には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
(1)図5に示す加圧装置20Aのように、前記凹型22に代えて、型開閉方向に延びる複数の排出孔23Aを形成し、凹部21の底面を平坦に構成した凹型22Aを用いることも可能である。この場合には、複数の排出孔23Aから付着物8を効率的に排出分離でき、加圧に要する時間を短縮できるとともに、排出孔23Aの口径を例えば樹脂ペレットの直径と同じに設定することで、分離した樹脂材料のリサイクル性を向上できる。また、このように多数の排出孔23Aを設けると、複合部材7の加圧力を低く設定することができるので、加圧装置20Aとして小型で安価ものを用いることができる。
【0042】
(2)図6に示す凹型22Bのように、排出孔23Bの案内部27Bの口径を凹部21の開口径と略同じに形成し、この案内部27B内に側面視略直角三角形状の複数の板部材30と、これら複数の板部材30を、排出孔23Bを中心とした放射状に固定支持する略円錐状の取付板31とを備えた分離手段32を設けることもできる。このような分離手段32を設けると、加圧時における金網3の案内部27B側への変形を抑制できるとともに、分離した合成樹脂の流れ性を向上でき、しかも分離手段32に付着した合成樹脂の取出性を向上して凹型22B内の清掃性を向上できる。
【0043】
(3)図7に示す凹型22Cのように、排出孔23Cの案内部27Cの口径を凹部21の開口径と略同じに形成し、複数の貫通孔33を形成した略円板状の分離手段34をこの案内部27Cの上側において凹部21内に固定設置することも好ましい実施の形態である。この場合には、複数の貫通孔33から付着物8を効率的に排出分離でき、加圧に要する時間を短縮できるとともに、複合部材7の加圧力を低く設定することができるので、加圧装置として小型で安価なものを用いることができる。また、凹型22C内の清掃性も向上できる。
【0044】
(4)図8に示す加圧装置20Dのように、凹型22Dに凹部21内に残留する金網3を突き出すためのエジェクタピン35を設け、このエジェクタピン35を図示外の油圧装置若しくは空気圧力装置を用いて上下移動させることもできる。このように構成すると、複合部材7を金網3と付着物8とに分離した後、エジェクタピン35を上方へ突き出すことで、凹部21の底部分に張り付いた金網3を容易に取り出すことが可能となる。
【0045】
(5)図9、図10に示す加圧装置20Eのように、前記凹型22及び凸型25に代えて、対向面を略平坦に構成した上下1対の型22E、25Eを設け、下型25Eの上面の略中央部に金網3を装着可能な、金網3の厚さに相当する厚さの窪み部36を形成することも好ましい実施の形態である。この場合には、窪み部36に複合部材7の金網3を嵌合させて、下型25Eの上面に複合部材7をセットし、この状態で上型22Eを下降させて、下型25Eと上型22E間において複合部材7を加圧圧縮変形させることで、付着物8を構成する合成樹脂が金網3の外側へ広り、この広がった合成樹脂からなる扁平部8Eを刃物等で金網3から分離して、金網3と付着物8とを容易に分離できる。また、窪み部36に金網3をセットすることで、加圧装置20Eに対する複合部材7の位置決めが容易に行え、しかも金網3に異物が付着している場合でも、この異物が、分離した合成樹脂に巻き込まれることを防止でき、金網3と合成樹脂とを効率的に分離することができる。但し、下型25Eにおける窪み部36は、省略することも可能である。また、図9に仮想線で示すように、型25Eに対する複合部材7のセット部位の外側において、型25Eに該セット部位を取り囲むように環状溝38を設け、複合部材7の加圧により形成される扁平部8Eが環状溝38内に収容されるように構成することも可能である。この場合には、型22E、25E間に配置される扁平部8Eを少なくして、扁平部8Eを加圧することによる加圧装置の負荷を少なくできるとともに、型22E、25Eを小型に構成でき、しかも環状溝38内の厚肉な合成樹脂をペレットに加工できるので、ペレットへの加工性を向上できる。また、窪み部36の底面に複合部材7の固定用の単又は複数のピンを突出状に設けて、加圧時における複合部材7の横移動を規制したり、扁平部8Eを金網3から切り離す切断手段を設けたりすることも好ましい実施の形態である。
【0046】
(6)図11に示す加圧装置20Fのように、凹型22Fの案内部27Fの最大口径を凹部21の開口径と略同じに設定し、案内部27Fに嵌合する円錐状の突出部37を凸型25Fの凸部24Fの下面に形成し、溶融樹脂が排出孔23Fに円滑に導かれるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】押出機要部の断面図
【図2】ブレーカプレート及び複合部材の斜視図
【図3】ブレーカプレート及び複合部材の分解斜視図
【図4】加圧装置の説明図
【図5】他の構成の加圧装置の説明図
【図6】他の構成の凹型の説明図
【図7】他の構成の凹型の説明図
【図8】突き出しピンを設けた加圧装置の説明図
【図9】他の構成の加圧装置の説明図
【図10】同加圧装置の要部斜視図
【図11】他の構成の加圧装置の説明図
【符号の説明】
【0048】
1 押出機 2 ダイ
2a ダイボディ 2b ノズルプレート
2c 通路 3 金網
4 ブレーカプレート 5 貫通孔
6 スクリュー 7 複合部材
8 付着物 9 バレル
10 分離装置 20 加圧装置
21 凹部 22 凹型
22 凹型 23 排出孔
24 凸部 25 凸型
26 直管部 27 案内部
20A 加圧装置 22A 凹型
23A 排出孔
22B 凹型 23B 排出孔
27B 案内部 30 板部材
31 取付板 32 分離手段
22C 凹型 23C 排出孔
27C 案内部 33 貫通孔
34 分離手段
20D 加圧装置 35 エジェクタピン
22D 凹型
8E 扁平部 20E 加圧装置
22E 上型 25E 下型
36 窪み部
20F 加圧装置 22F 凹型
23F 排出孔 25F 凸型
27F 案内部 37 突出部
38 環状溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網の少なくとも一側面に合成樹脂製の付着物が付着した複合部材を、金網と付着物とに分離する分離方法であって、
前記付着物の軟化温度以上に複合部材を加熱した状態で、複合部材を1対の型により金網と略同じ厚さになるまで加圧して、金網と付着物とを分離する、
ことを特徴とする分離方法。
【請求項2】
金網の少なくとも一側面に合成樹脂製の付着物が付着した複合部材を、金網と付着物とに分離する分離方法であって、
前記複合部材を収容可能な凹部を有する凹型と、前記凹部に嵌合する凸部を有する凸型とを用い、前記付着物の軟化温度以上に複合部材を加熱した状態で、複合部材を凹部内に装填し、凹部に凸部を嵌合させて、両型間において複合部材を金網と略同じ厚さになるまで加圧し、付着物のみを凹型に形成した排出孔から排出して、金網と付着物とを分離する、
ことを特徴とする分離方法。
【請求項3】
前記金網側を凸型側へ向けて、複合部材を凹部に装填する請求項2記載の分離方法。
【請求項4】
前記金網を含む面を型開閉方向と略直交させて、複合部材を型にセットする請求項1〜3のいずれか1項記載の分離方法。
【請求項5】
前記両型を付着物の軟化温度以上に加熱しながら、両型間において複合部材を加圧する請求項1〜4のいずれか1項記載の分離方法。
【請求項6】
前記金網が押出機における異物除去用のフィルターであり、付着物が押出機におけるブレーカプレート内に充填された合成樹脂材料である請求項1〜5のいずれか1項記載の分離方法。
【請求項7】
金網の少なくとも一側面に合成樹脂製の付着物が付着した複合部材を、金網と付着物とに分離する分離装置であって、
前記付着物の軟化温度以上に、複合部材を加熱する加熱装置と、
前記加熱装置により加熱した複合部材を加圧する加圧装置であって、前記複合部材を収容可能な凹部を有し、底面に軟化した付着物の排出孔を形成した凹型と、前記凹部に嵌合する凸部を有する凸型と、前記両型間において複合部材を加圧する加圧装置と、
を備えたことを特徴とする分離装置。
【請求項8】
前記凹型に複数の排出孔を形成した請求項7記載の分離装置。
【請求項9】
前記排出孔に凹部の底面側へ行くにしたがって開口径を大きく設定した案内部を設けた請求項7又は8記載の分離装置。
【請求項10】
前記両型を付着物の軟化温度以上に加熱する加熱手段を設けた請求項7〜9のいずれか1項記載の分離方法。
【請求項11】
前記凹型に、付着物を除去した後の金網を押し出すエジェクタピンを設けた請求項7〜10のいずれか1項記載の分離装置。
【請求項12】
前記金網が押出機における異物除去用のフィルターであり、付着物が押出機におけるブレーカプレート内に充填された合成樹脂材料である請求項7〜11のいずれか1項記載の分離装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−306050(P2006−306050A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75950(P2006−75950)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】