説明

切りくず洗浄用原液組成物および洗浄液

【課題】極微量油剤供給方式により被加工部材を切削・研削加工する方法において、切りくず除去のための水溶性切りくず流し用油剤に加工油剤が混入しても加工油剤との分離性に優れ、腐敗が起こりにくく、排水処理性にも優れると共に、十分な切りくずの洗浄性が確保され、且つ被加工物の錆や変色、環境への悪影響等を引き起こさない洗浄用原液組成物および洗浄液を提供する。
【解決手段】組成物全量基準で、(A)ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル:5〜30質量%、(B)炭素数8〜12の一塩基脂肪酸及び/又は二塩基脂肪酸:1〜10質量%、(C)ひまし油脂肪酸の縮合物:5〜20質量%、(D)アルカノールアミン及び脂肪族アミン:15〜25質量%および(E)水:15〜74質量%を含有することを特徴とする金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切りくず洗浄用原液組成物に関するものであり、詳しくは、金属加工に伴って発生する切りくずを洗浄除去するための洗浄用原液組成物に関する。特に、極微量油剤供給式切削・研削加工における金属製部品を洗浄する際に有用な洗浄用原液組成物および洗浄液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新規な金属加工方法として極微量油剤供給式切削・研削加工方法が提案されているが(特許文献1)、この方法は、通常の切削・研削加工における油剤の使用量に比べて1/100000〜1/1000000程度の極微量の油剤を圧縮流体(例えば圧縮空気)とともに被加工物に供給しながら切削・研削を行うもので、圧縮空気による冷却効果が得られ、また極微量の油剤を用いるために廃棄物量を低減することができ、従って廃棄物の大量排出に伴う環境への影響も改善することができる。この極微量油剤供給式切削・研削加工方法において、発生する切りくずを除去する方法には、自由落下、エアーブロー、吸引、液体除去など幾つかの方法があるが、既存の設備が使用可能であることとその洗浄効率も高いことから液体による除去方法が一般的に採用されている。
【0003】
しかしながら、切りくず除去用液体として水溶性の洗浄液や切削液を用いた場合には、水を含むため鉄等の被加工物に錆が発生しやすく、また洗浄液は腐敗を起こしやすいという問題がある。これらの問題を回避するため、一般に水溶性洗浄液や切削液の原液にアルカノールアミン等の塩基性化合物を配合して洗浄液のpHを高く保つ方法が採用されている(特許文献2)。しかし、このような高pHの洗浄液でアルミニウムおよびアルミニウム合金の切りくず除去を行うと、アルミニウムおよびアルミニウム合金の被加工物が変色して商品価値を著しく損なうだけでなく、切りくずが凝集・固着して効率よく切りくずを洗い流すことができなくなる。また水溶性の洗浄液が工作機械の摺動部分の油剤まで除去してしまう結果、摺動不良を起こしたり、加工油剤との分離性が悪いと排水処理性が低下して環境に対し悪影響を及ぼすなど数々の問題点が指摘されていた。
【特許文献1】国際公開第2002/083823号
【特許文献2】特開平8−157887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、極微量油剤供給方式により被加工部材を切削・研削加工する方法において、切りくず除去のための水溶性切りくず流し用油剤(以下洗浄液と略す。)に加工油剤が混入しても加工油剤との分離性に優れ、腐敗が起こりにくく、排水処理性にも優れると共に、十分な切りくずの洗浄性が確保され、且つ被加工物の錆や変色、環境への悪影響等を引き起こさない洗浄液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の界面活性剤を含有してなる水溶性洗浄用原液組成物を水で所定の濃度に希釈した洗浄液を金属加工の切りくず除去用油剤として用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のような金属加工の切りくず洗浄用原液組成物および洗浄液を提供するものである。
【0006】
[1]組成物全量基準で、
(A)ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル 5〜30質量%、
(B)炭素数8〜12の一塩基脂肪酸及び/又は二塩基脂肪酸 1〜10質量%、
(C)ひまし油脂肪酸の縮合物 5〜20質量%、
(D)アルカノールアミン及び脂肪族アミン 15〜25質量%、
および
(E)水 15〜74質量%、
を含有することを特徴とする金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。
【0007】
[2](A)成分が、下記一般式(1)で表わされるポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル化合物であることを特徴とする上記[1]に記載の金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。
R−CO−O−(AO)−H ・・・・・・ (1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜19のアルキル基またはアルケニル基、AOはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基、nは数平均分子量が3600〜50000となる整数を表わす。)
【0008】
[3](D)成分中のアルカノールアミンと脂肪族アミンの配合比(質量比)が、1:0.5〜1:1.2の範囲にあることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。
【0009】
[4](D)成分の配合量が、切りくず洗浄用原液組成物を30容量倍に希釈した時の水溶液のpHが8.2〜9.5となる量であり、且つ(C)成分と(D)成分の配合比(質量比)が1:1〜1:2の範囲にあることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。
【0010】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属加工の切りくず洗浄用原液組成物を水で1.5〜200容量倍に希釈して得られる洗浄液。
【0011】
[6]極微量油剤供給式により被加工部を切削・研削加工する方法において用いられることを特徴とする上記[5]に記載の洗浄液。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、特定の界面活性剤を含有してなる金属加工の切りくず洗浄用原液組成物を提供するものであり、該原液組成物の水希釈液を切りくずの除去用の洗浄液として用いることにより、切りくずの洗浄除去性に優れ、切りくずの凝集・固着、被加工部材のさびや変色、洗浄液の腐敗、工作機械の摺動部分の潤滑不良、また環境への悪影響を引き起こすことなく、極微量油剤供給方式による被加工物の切りくずの洗浄除去を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明に用いる(A)ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルは、下記一般式(1)で表わされる化合物である。
R−CO−O−(AO)−H ・・・・・・ (1)
【0015】
式(1)中のRは、炭素数1〜19のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖状でも分岐状でもよく、また飽和でも不飽和でも良い。エステルを構成する脂肪酸の具体例としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状または分枝状のブタン酸、直鎖状または分枝状のペンタン酸、直鎖状または分枝状のヘキサン酸、直鎖状または分枝状のヘプタン酸、直鎖状または分枝状のオクタン酸、直鎖状または分枝状のノナン酸、直鎖状または分枝状のデカン酸、直鎖状または分枝状のウンデカン酸、直鎖状または分枝状のドデカン酸、直鎖状または分枝状のトリデカン酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン酸、直鎖状または分枝状のペンタデカン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデカン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデカン酸、直鎖状または分枝状のオクタデカン酸、直鎖状または分枝状のノナデカン酸、直鎖状または分枝状のイコサン酸等の飽和脂肪酸;アクリル酸、直鎖状または分枝状のブテン酸、直鎖状または分枝状のペンテン酸、直鎖状または分枝状のヘキセン酸、直鎖状または分枝状のヘプテン酸、直鎖状または分枝状のオクテン酸、直鎖状または分枝状のノネン酸、直鎖状または分枝状のデセン酸、直鎖状または分枝状のウンデセン酸、直鎖状または分枝状のドデセン酸、直鎖状または分枝状のトリデセン酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン酸、直鎖状または分枝状のペンタデセン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデセン酸、直鎖状または分枝状のオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のノナデセン酸、直鎖状または分枝状のイコセン酸等の不飽和脂肪酸;およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0016】
これらの脂肪酸の中でも、直鎖状または分枝状のヘキサン酸、直鎖状または分枝状のヘプタン酸、直鎖状または分枝状のオクタン酸、直鎖状または分枝状のノナン酸、直鎖状または分枝状のデカン酸、直鎖状または分枝状のウンデカン酸、直鎖状または分枝状のドデカン酸、直鎖状または分枝状のトリデカン酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン酸等の飽和脂肪酸;直鎖状または分枝状のドデセン酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン酸、直鎖状または分枝状のオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のイコセン酸等の不飽和脂肪酸が切りくずの分散性の点で好ましい。
【0017】
式(1)中のAOはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基を示し、好ましくはオキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)のランダム重合付加物またはブロック重合付加物である。オキシエチレン基とオキシプロピレン基のモル比EO/POは、5/95〜95/5が好ましく、より好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは20/80〜40/60である。オキシエチレン基のモル比が5モル%未満であると切りくずの分散性が悪く、95モル%を超えるとMQL加工油との分離性、消泡性が悪くなる。
【0018】
(A)成分のポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルの数平均分子量の上限値は50000であり、好ましくは30000であり、更に好ましくは20000である。また、下限値は3600であり、好ましくは5000であり、更に好ましくは7000である。成分(A)の数平均分子量が3600未満であると切りくずの分散性が悪くなり、50000を超えるとMQL加工油との分離性が悪くなる。
【0019】
(A)成分としては、安定した切りくずの分散性とMQL加工油との分離性が両立できる点から、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールモノパルミテート、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールモノオレート、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールモノリノレート、およびこれらの混合物が好ましい例として挙げられる。
【0020】
(A)成分の含有量の上限値は、原液組成物全量基準で、30質量%であり、好ましくは25質量%、より好ましくは20質量%である。一方、下限値は、原液組成物全量基準で、5質量%であり、好ましくは7質量%、より好ましくは10質量%である。(A)成分の含有量が30質量%を超える場合は、原液の安定性の点から好ましくない。また、(A)成分の含有量が5質量%に満たない場合は、MQL加工油との分離性、切りくずの分散性が低下して好ましくない。
【0021】
(B)成分の炭素数8〜12の一塩基脂肪酸としては、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。炭素数8〜12の一塩基脂肪酸としては、具体的には例えば、直鎖または分岐のオクタン酸、直鎖または分岐のノナン酸、直鎖または分岐のデカン酸、直鎖または分岐のウンデカン酸、直鎖または分岐のドデカン酸、直鎖または分岐のオクテン酸、直鎖または分岐のノネン酸、直鎖または分岐のデセン酸、直鎖または分岐のウンデセン酸、直鎖または分岐のドデセン酸、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0022】
また、(B)成分の炭素数8〜12の二塩基脂肪酸としては、直鎖のものでも分岐のものでも良く、また飽和のものでも不飽和のものでも良い。炭素数8〜12の二塩基脂肪酸としては、具体的には例えば、直鎖または分岐のオクタン二酸、直鎖または分岐のノナン二酸、直鎖または分岐のデカン二酸、直鎖または分岐のウンデカン二酸、直鎖または分岐のドデカン二酸、直鎖または分岐のオクテン二酸、直鎖または分岐のノネン二酸、直鎖または分岐のデセン二酸、直鎖または分岐のウンデセン二酸、直鎖または分岐のドデセン二酸およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0023】
(B)成分としては、一塩基脂肪酸または二塩基脂肪酸を単独で用いても良く、また両者の混合物を用いても良いが、被加工物のさび止め性に優れる点から、また原液組成物の安定性の点から、一塩基脂肪酸を用いることが望ましい。
【0024】
(B)成分の含有量の上限値は、原液組成物全量基準で、10質量%であり、好ましくは8質量%である。一方、下限値は、原液組成物全量基準で、1質量%であり、好ましくは2質量%である。(B)成分の含有量が10質量%を超える場合は、それ以上の効果の向上が見られずコストの点から好ましくない。また、(B)成分の含有量が1質量%に満たない場合は、原液の安定性が不良となる、被加工物のさび止め性が低下する、乳化液となって脱脂性、洗浄性が低下するなどして好ましくない。
【0025】
(C)成分のひまし油脂肪酸の縮合物とは、ひまし油を構成する脂肪酸を脱水縮合させて得られるものである。また、ひまし油脂肪酸の主成分であるリシノール酸(ricinoleic acid)を脱水縮合させて得たものでもよい。一般にリシノール酸縮合物の縮合度は、酸価で表されるが、(C)成分として用いられるものとしては、通常酸価が40〜150mgKOH/g、好ましくは50〜130mgKOH/gのものである。
【0026】
(C)成分の含有量の上限値は、原液組成物全量基準で、20質量%であり、好ましくは18質量%、より好ましくは15質量%である。一方、下限値は、原液組成物全量基準で、5質量%であり、好ましくは7質量%である。(C)成分の含有量が20質量%を超える場合は、それ以上の効果の向上が見られず、コストの点から好ましくない。また、(C)成分の含有量が5質量%に満たない場合は、被加工物、特にアルミニウムの変色防止性能が低下し好ましくない。
【0027】
(D)成分は、アルカノールアミン及び脂肪族アミンである。なお、ここでいう脂肪族アミンはシクロアルキルアミンを包含する。
アルカノールアミンとしては、具体的には、モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン等が挙げられる。
また脂肪族アミンとしては、具体的には、モノペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、モノヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、トリヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン等のアルキルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミンなどが挙げられる。
【0028】
(D)成分中のアルカノールアミンと脂肪族アミンの配合比(質量比)は、アルカノールアミンを1とした場合に脂肪族アミンが0.5〜1.2の範囲であることが好ましい。脂肪族アミンの配合比がこの範囲に満たなくても超えても水溶液の安定性が不良となる。
【0029】
(D)成分の含有量の上限値は、組成物全量基準で、25質量%であり、好ましくは23質量%である。一方、下限値は、原液組成物全量基準で、15質量%であり、好ましくは17質量%である。(D)成分の含有量が25質量%を超える場合は、アルミニウムの変色防止性能が低下して好ましくなく、(D)成分の含有量が15質量%に満たない場合は、被加工物のさび止め性が低下して好ましくない。
【0030】
(D)成分の配合量は、切りくず洗浄用原液組成物を30倍に希釈した時の水溶液のpHが8.2〜9.5となる量であることが好ましく、より好ましくは8.5〜9.5の範囲である。30倍希釈水溶液のpHが9.5を超えるとアルミニウムの変色防止性能が低下し、30倍希釈水溶液のpHが8.2未満であると被加工物のさび止め性が低下して好ましくない。
また(C)成分と(D)成分の配合比(質量比)は、(C)成分を1とした場合に(D)成分が1〜2の範囲であることが好ましい。(D)成分が1に満たない場合はアルミニウムの変色防止性能が低下して好ましくなく、(D)成分が2を超えると被加工物のさび止め性が低下して好ましくない。
【0031】
(E)成分の水としては、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水などが使用可能であり、その水は硬水であっても軟水であっても差し支えない。
(E)成分の含有量の上限値は、原液組成物全量基準で、74質量%であり、好ましくは65質量%である。一方、下限値は、原液組成物全量基準で、15質量%であり、好ましくは20質量%である。(E)成分の含有量が74質量%を超える場合は、有効成分量が減少して、輸送コストが不利となり好ましくない。また、(E)成分の含有量が15質量%に満たない場合は、粘稠となり取り扱いがしにくくなり好ましくない。
【0032】
本発明の金属加工の切りくず洗浄用に用いられる洗浄液としては、上記した組成を有する原液組成物を、水で希釈すれば、切りくずの洗浄除去性に優れ、切りくずの凝集・固着、被加工部材のさびや変色、洗浄液の腐敗、工作機械の摺動部分の潤滑不良、また環境への悪影響を引き起こすことなく、極微量油剤供給方式による被加工物の切りくずの洗浄除去を行うことができるが、更に必要に応じて上記した原液組成物に公知の添加剤を配合することができる。このような添加剤としてとしては、具体的には例えば、硫酸およびスルホン酸エステルなどのアニオン系界面活性剤;ポリオキシアルキレン化合物およびそれらの誘導体などのノニオン系界面活性剤;脂肪酸、エステル、アルコール等の油性剤;スルホン酸塩、リン酸およびリン酸塩、ホウ素化合物などの錆止め剤;ベンゾトリアゾールなどの窒素化合物、イオウおよび窒素を含む化合物などの腐食防止剤;フェノール系、アミン系、イオウ系、リン系、塩素系の酸化防止剤;フェノール系、ホルムアルデヒド供与体化合物、サリチルアニリド系化合物などの防腐剤;シリコーン油などの消泡剤;などが挙げられ、これらを単独で、または2種以上組み合わせて添加することができる。これらの添加剤の含有量は、通常それぞれ15質量%以下、好ましくは13質量%以下(いずれも原液組成物全量基準;合計量)である。
【0033】
本発明の金属加工用切りくず除去用の洗浄液は、上記の原液組成物を水で1.5〜200容量倍、好ましくは1.7〜150容量倍、より好ましくは、2.0〜100容量倍、特に好ましくは10〜100容量倍に希釈することにより得ることができる。原液組成物に対する希釈水の量が1.5容量倍未満の場合は、効率良く切りくずを洗い流せなくなり、200容量倍を超える場合はアルミニウム等の被加工物の変色の発生、工作機械の潤滑部分の潤滑不良、洗浄液の腐敗の問題を起こすおそれがある。用いる希釈水としては、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水などが使用可能で、硬水であるか軟水であるかを問わない。
【実施例】
【0034】
以下、実施例および比較例により本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何等限定されるものではない。
【0035】
(実施例1〜4、比較例1〜14)
下記に示す配合剤を用いて、表1に示す原液組成物について下記に示す評価試験を行った。
【0036】
(配合剤)
A1:ポリエチレン−プロピレングリコールモノオレート(分子量12240、EO/PO比=30モル%/70モル%)
A2:ポリエチレン−プロピレングリコールモノオレート(分子量3250、EO/PO比=30モル%/70モル%)
B1:カプリル酸
B2:ドデカン二酸
C:ひまし油脂肪酸の重合物(酸価90mgKOH/g)
D1:ジエタノールアミン
D2:ジシクロヘキシルアミン
E:蒸留水
その他:組成物全量基準で、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(HLB8.1)2質量%、およびオレイン酸12質量%。
【0037】
[評価試験]
(分離性)
金属加工油との分離性を以下のように評価した。
共栓付の100mlメスシリンダーに、原液組成物を30容量倍に希釈した洗浄液80mlと、金属加工油(40℃における動粘度が20mm/sで、25℃の界面張力が5mN/m以下の市販の極微量油剤供給式切削・研削加工油)20mlを採り、手動で1分間激しく振とうして、24時間後の洗浄液への金属加工油の混入状態を目視にて観察した。なお、評価は以下のように判定した。
○ 水溶液の外観に濁りがないもの
△ 水溶液の外観にやや濁りがあるもの
× 水溶液の外観に濁りがあるもの
【0038】
(原液安定性)
原液組成物の安定性を以下のように評価した。
ガラス製容器に原液組成物を100ml採取し、室温で1週間放置した後、外観を目視で観察した。評価は以下のように判定した。
○ 濁りや分離がないもの
△ 濁りや分離がややあるもの
× 濁りや分離があるもの
【0039】
(水溶液安定性)
洗浄液(原液組成物の水希釈液)の安定性を以下のように評価した。
ガラス製容器に原液組成物を30容量倍に希釈した洗浄液を100ml採取し、室温で1週間放置した後、外観を目視で観察した。評価は以下のように判定した。
○ 濁りや増粘がないもの
△ 濁りや増粘がややあるもの
× 濁りや増粘があるもの
【0040】
(アルミニウム材との適合性)
洗浄液(原液組成物の水希釈液)とアルミニウム材との適合性を以下のように評価した。
原液組成物を30容量倍に希釈した洗浄液中に、アルミニウム材試験片(材質:A1050、形状:2.0×12×75mm)の下半分を浸漬し、室温で72時間放置した後、目視にて外観を観察した。評価は以下のように判定した。
○ アルミニウム材の外観に変色がないもの
△ アルミニウム材の外観にやや変色があるもの
× アルミニウム材の外観に変色があるもの
【0041】
(被加工物の腐食)
シャーレ内に置いたろ紙(JIS P 3801化学分析用5種C)上の直径36mmの円内に鋳鉄(FC200)切屑1gを均等に配分し、鋳鉄切屑全体が湿潤するよう注射器を用いて原液組成物を30容量倍に希釈した洗浄液を滴下する。その後シャーレのふたをせずに室温に24時間放置した後、切屑を取り除いたろ紙上円内の変色(サビの転写)程度を目視にて観察した。評価は以下のように判定した。
○ ろ紙上に変色が観察されないもの
△ ろ紙上に変色がやや観察されたもの
× ろ紙上に変色が観察されたもの
【0042】
(pH)
原液組成物を30容量倍に希釈した洗浄液をJIS Z 8802の7に規定する方法により測定した。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の洗浄用原液組成物は、金属加工に伴って発生する切りくずを洗浄除去するための洗浄剤組成物として有用であり、その水希釈液は、極微量油剤供給式切削・研削加工における金属製部品の洗浄において、切りくず除去のための水溶性切りくず流し用油剤に加工油剤が混入しても加工油剤との分離性に優れ、腐敗が起こりにくく排水処理性にも優れると共に、十分な切りくずの洗浄性を有し、且つ被加工物の錆や変色、環境への悪影響等を引き起こさない洗浄液として優れた効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物全量基準で、
(A)ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル 5〜30質量%、
(B)炭素数8〜12の一塩基脂肪酸及び/又は二塩 1〜10質量%、
(C)ひまし油脂肪酸の縮合物 5〜20質量%、
(D)アルカノールアミン及び脂肪族アミン 15〜25質量%、
および
(E)水 15〜74質量%、
を含有することを特徴とする金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。
【請求項2】
(A)成分が、下記一般式(1)で表わされるポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル化合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。
R−CO−O−(AO)−H ・・・・・・ (1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜19のアルキル基またはアルケニル基、AOはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基、nは数平均分子量が3600〜50000となる整数を表わす。)
【請求項3】
(D)成分中のアルカノールアミンと脂肪族アミンの配合比(質量比)が、1:0.5〜1:1.2の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。
【請求項4】
(D)成分の配合量が、切りくず洗浄用原液組成物を30容量倍に希釈した時の水溶液のpHが8.2〜9.5となる量であり、且つ(C)成分と(D)成分の配合比(質量比)が1:1〜1:2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属加工の切りくず洗浄用原液組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の金属加工の切りくず洗浄用原液組成物を水で1.5〜200容量倍に希釈して得られる洗浄液。
【請求項6】
極微量油剤供給式により被加工部を切削・研削加工する方法において用いられることを特徴とする請求項5に記載の洗浄液。

【公開番号】特開2010−143997(P2010−143997A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320793(P2008−320793)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】