切削工具およびそのための切削インサート
切削工具(10)は、インサート・ポケット(18)を有し、そこに片面切削インサート(20)を解放可能に保持する少なくとも1つの切削部分(16)を含んでいる。切削部分(16)は、接線方向のネジ留め要素(22)を有し、切削インサート(20)をインサート・ポケット(18)に押し付けている。ネジ(40)を含むネジ留め要素は、ネジ留め要素(22)をインサート・ポケット(18)から完全に取り外す必要なしに、切削インサート(20)の解放および押し付けを可能にする。切削インサート(20)は、上面(29)、底面(28)、2つの対向する大きな側面(46)と2つの対向する小さな側面(72)を有し、凹部(26)が底面(28)に形成されている。ネジ留め要素(22)は、底面(28)を介して凹部(26)内に挿入される。ネジ(40)が締め付けられると、ネジ留め要素(22)の突出部分が切削インサート(20)をインサート・ポケット(18)に押し付ける。切削インサート(20)および突出部分は、少なくとも2つの別個の当接副領域においてそれらが互いに当接することを可能にする形状をそれぞれ有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートおよび該切削インサートを切削工具に固定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
解放可能な切削インサートのような切削インサートを切削工具のインサート・ポケットに固定するための多くの異なる方法および装置が知られている。
【0003】
これらの装置は、通常、切削インサートの貫通孔内に挿入され、インサート・ポケットに形成されているネジ孔内にネジ留め可能に収容される、締め付けネジのような締め付け要素を含んでいる。
【0004】
回転切削工具のある用途においては、切削インサートは、「半径方向に」、すなわち、締め付けネジの縦軸が切削工具の回転軸に平行であって且つ該回転軸を通って延在する放射面に略直交するように、インサート・ポケット内に押し付けられる。
【0005】
回転切削工具の別の用途においては、切削インサートは、「接線方向に」、すなわち、締め付けネジの縦軸が回転軸に直交する面に略平行であり、また、切削工具の回転軸に平行であって且つ該回転軸を通って延在する放射面に平行であるように、インサート・ポケット内に押し付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半径方向に押し付けられる多数の切削インサートを有する切削工具は、十分に間隔をおいて離れて配置され、それぞれ、切削インサートから締め付けネジを取り外すために、また、該切削インサートに締め付けネジを挿入するために十分な余地を与えることを切削インサートに要求する。このことにより、単一の切削工具の半径方向に押し付けられる切削インサートの可能な限りの数が比較的制限され、切削工具の性能が制限される可能性があり得る。接線方向に押し付けられる切削インサートは、比較的円周方向に厚い。したがって、単一の切削工具の接線方向に押し付けられる切削インサートの可能な限りの数も比較的制限され、同様に、切削工具の性能が制限され得る。
【0007】
例えば、80mmの直径を有するフライス工具は、最大で7つの切削インサートを有するように制限され得るのに対し、100mmの直径を有するフライス工具は、最大で8つの切削インサートを有するように制限され得る。
【0008】
さらに、半径方向または接線方向の何れかに押し付けられる切削インサートを有する切削工具に関し、切削インサートの交換は、そのインサート・ポケットから締め付けネジが完全に取り除かれることを求める。したがって、交換手順は、特に、切削工具が比較的多数の切削インサートを有する場合、時間を浪費し、扱いが面倒である。
【0009】
さらに、ある切削工具の、例えば、接線方向に押し付けられる切削インサートを有する切削工具の押し付け機構は、そこに加えられる小さな圧力に耐えることしかできない構成部品を含み得る。これらの構成部品は、例えば、インサートの形状および/または含まれる押し付け機構の形状により強さまたは性能で制限される締め付けピンまたはネジ頭を含み得る。
【0010】
本発明の目的は、したがって、上述した不都合を著しく減少または克服する、金属切削動作を行う切削工具およびそのための切削インサートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある実施形態によれば、切削工具は、少なくとも1つの切削部分を含み、該少なくとも1つの切削部分は、そこに解放可能に保持される片面切削インサートを有するインサート・ポケットを含んでいる。切削インサートは、底面、上面、該上面と底面との間に延在する2つの対向する大きな側面および2つの対向する小さな側面を含んでいる。本発明によれば、片面切削インサートの上面は、少なくとも1つの切削刃および関連するすくい面(a rake surface)を含んでいる。少なくとも1つの切削刃に隣接して、逃げ面(a relief surface)がある。底面には、該底面を介してネジ留め要素を収容するように形成されている凹部が形成されている。ネジ留め要素は、インサート・ポケットの大きな側壁に形成されているネジ孔にネジ留め可能に収容されるベース部分を含み、大きな側壁は、大きな側面の一方に当接している。凹部は、2つの向かい合う内面を形成する成形孔を含んでおり、2つの向かい合う内面は、切削インサート内での当接領域として役立つ。組み立てられた工具において、ネジ留め要素は、当接領域の少なくとも1つに対して、締め付け力を加える。ある実施形態においては、ネジ留め要素は、凹部内に延在する突出部分を有し、成形孔は、そこに突出部分の取り付け面を収容できる。取り付け面は、それぞれが2以上の間隔をおいて離れて配置される当接副領域を備え得る当接領域の一方に当接する。成形孔は、上面まで延在し、上面に開口し、そこに開口部を形成し得る。
【0012】
本発明のある実施形態によれば、凹部は、2つの大きな側面の間であって且つ底面に沿って延在する溝を含み、そこにベース部分の少なくとも一部を収容できる。また、成形孔は、溝から上面に向って延在する。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、切削インサートの上面図において、成形孔は、細長い形状を有する。ある実施形態において、成形孔の縦正中面(a longitudinal median plane)は、切削インサートの縦正中面と第1のゼロではない鋭角を形成する。また、成形孔の縦正中面は、内面と第2のゼロではない鋭角を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る切削工具の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る切削工具の側面図である。
【図3A】本発明の実施形態に係る切削工具の切削部分の分解組み立て図である。
【図3B】本発明の実施形態に係る図3Aの切削部分の斜視図である。
【図3C】部分的に切り取られた切削インサートおよびスリーブを含んでいる図3Aの切削部分の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る図3A−Cの切削部分のスリーブの斜視図である。
【図5A】本発明の別の実施形態に係る切削工具の切削部分の斜視図である。
【図5B】本発明の別の実施形態に係る図5Aの分解組み立て図である。
【図6】本発明の実施形態に係るインサート・ポケットの斜視図である。
【図7A】本発明の実施形態に係る切削インサートの斜視図である。
【図7B】図7Aの切削インサートの側面図である。
【図7C】図7Aの切削インサートの上面図である。
【図7D】線A−Aに沿う図7Aの切削インサートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明をよりよく理解するために、また、本発明が実際にどのように実行され得るかを示すために、添付図面に対する言及がなされる。
【0016】
当然のことながら、説明を簡単且つ明瞭とするために、図に示される要素は、必ずしも縮尺で描かれているものではない。例えば、いくつかの要素のおおきさは、明瞭とするために、別の要素に対して誇張して示されており、あるいは、いくつかの物理的構成部品は、1つの機能ブロックまたは要素に含まれているかもしれない。さらに、適当であると考えられる場合、参照数字は、対応するまたは類似している要素を示すために、図の中で繰り返され得る。
【0017】
以下の説明において、本発明の種々の形態が説明されるだろう。本発明の完全な理解を提供するために、説明のために、具体的な構成および詳細が説明される。しかしながら、本発明は、本明細書で提示される具体的詳細な説明がなくても実行され得ることは、当業者にとって明白である。さらに、周知の機能は、本発明をあいまいとしないために、省略または簡略化され得る。
【0018】
本明細書におけるいくつかの図面は、回転する切削工具、例えば、フライス工具を示しているけれども、本発明は、これに限られるものではない。例えば、本発明のある実施形態は、ドリル工具、旋盤工具、または工具に保持されている1以上の解放可能な切削インサートを有する金属切削工具のような種々の回転工具を含む、切削工具に保持される1以上の解放可能な切削インサートを有する別の切削工具に言及し得る。
【0019】
ここで、本発明のある実施形態に係る切削工具10を示す図1および2に言及がなされる。切削工具10は、前端部12、後端部14、および回転軸Rを有する。切削工具10は、1以上の切削部分16を含んでいる。切削部分16それぞれは、そこに切削インサート20を解放可能に保持するインサート・ポケット18を含んでいる。
【0020】
切削部分16は、以下に詳細に説明されるネジ留め要素22を含み、切削インサート20をインサート・ポケット18にしっかりと固定している。切削インサート20は、ネジ留め要素22の縦軸が回転軸Rに直交する面に略平行となるように、あるいは、該面と小さな角度を形成するように、インサート・ポケット18に接線方向に固定されている。ネジ留め要素22の縦軸は、また、回転軸Rに平行であって且つ該回転軸Rを通って延在する放射面に略平行である。あるいは、ネジ留め要素22の縦軸は、該放射面と小さな角度を形成する。
【0021】
ある実施形態においては、切削インサート20は、インサート・ポケット18に位置決めされる。例えば、切削インサート20は、ネジ留め要素22の上に置かれ、その上部領域24に当接している。この位置において、以下に詳細に説明される突出部分34および/またはネジ留め要素22のその他の部分は、それぞれ、例えば、以下に詳細に説明されるように、切削インサート20の少なくとも底面28に形成されている凹部26の1以上の補足的成形部分に挿入される。このような接線方向の押し付けは、切削工具のより細かいピッチ(a finer pitch)を可能にする、すなわち、切削工具10における切削インサート20の比較的接近した間隔を可能にする。例えば、切削工具10は、該切削工具10が80mmの直径を有するフライス工具である場合、10個の切削インサート20を有し、切削工具10が100mmの直径を有する場合、13個の切削インサート20を有し得る。
【0022】
限定されない実施形態においては、例えば、図3A〜4を参照して、以下に詳細に説明されるように、ネジ留め要素22は、(例えば、図3Aに例示されるように)差動ネジ30およびそれに搭載されているスリーブ32を含んでいる。スリーブ32は、凹部26の成形孔36内に挿入される突出部分34を有する。差動ネジ30がしっかりと固定されると、突出部分34は、成形孔36により形成される、切削インサート20の2つの向かい合う内面38の一方に対して押し付けられる。それにより、当接内面38は、切削インサート20をインサート・ポケット18に押し付ける。
【0023】
別の限定されない実施形態においては、例えば、図5A〜5Bを参照すると、ネジ留め要素22は、代わりに、別の要素、例えば、締め付けネジ40を含んでいる。インサート・ポケット18に切削インサート20が位置決めされると、締め付けネジ40のネジ頭42の一部が凹部26内に挿入され、結果として、ネジ頭42は、内面に当接する。したがって、締め付けネジ40がしっかりと固定されると、例えば、以下に詳細に説明されるように、該締め付けネジ40が切削インサート20をインサート・ポケット18に押し付ける。
【0024】
ある実施形態において、切削インサート20の交換または割り出し(indexing)は、例えば、限られた所定の範囲までネジ留め要素22を緩める、または該要素22を部分的に開くステップを含み得る。このことは、ネジ留め要素22をインサート・ポケット18から完全に取り外すことなく、切削インサート20のインサート・ポケット18からの取り外し、および/または該ポケット18への切削インサート20の挿入を可能とする。したがって、例えば、切削インサート20の交換は、それにより、比較的労力をかけることなく、また、比較的短時間内に実行され得る。
【0025】
ここで、本発明のある実施形態に係る切削部分16を示す図3A〜4に、本発明の別の実施形態に係る切削部分16を示す図5Aおよび5Bに、それぞれ、本発明の実施形態に係るインサート・ポケット18および切削インサート20の斜視図を示す図6および7Aに言及がなされる。
【0026】
説明を明瞭とするために、右直交座標系(a right-hand Cartesian coordinate system)が導入され、図3Aに例示されている。該座標系は、添付図面3A〜7Aの説明に言及する。該座標系において、X軸は、切削インサート20の横正中面Mに直交するように画定される。該横正中面Mは、図7B〜7Dを参照して、以下に詳細に説明され、画定される。X軸の正方向(the positive direction)は、全体の前端部12から後端部14への方向に画定される。座標系のY軸は、切削インサート20の縦正中面Lに直交するように画定される。縦正中面Lは、図7Aを参照して、以下に詳細に説明され、画定される。Y軸の正方向は、全体の中心に向かう放射方向に画定される。Z軸の正方向は、正方向X軸および正方向Y軸とともに、右直交座標系を完成する。図7Cおよび7Dから理解されるように、第1の内面38Aは、関連する第1の当接領域68Aを備え、該第1の当接領域68Aは、少なくとも実質的に縦正中面Lの第1の側にあり、関連する大きな側面46Aを有する、他方、第2の内面38Bは、関連する第2の当接領域68Bを備え、該第2の当接領域68Bは、少なくとも実質的に縦正中面Lの対向する第2の側にあり、また、関連する、対向する大きな側面46Bを有する。また、これらの図において理解されるように、第1および第2の当接領域68A、68Bは、相対する方向に向き合っており、成形孔36に見られる非当接領域69A、69Bにより互いから離れて間隔をおいて配置されている。
【0027】
ある実施形態においては、凹部26の1以上の部分は、それぞれ、ネジ留め要素22の1以上の部分を収容できる。例えば、凹部26の溝44は、少なくとも底面28に形成され、2つの対向する大きな側面46の間に延在する。該溝は、ネジ留め要素22のベース部分48の上部領域24に対し補足的形状であり、そこに該上部領域24を収容できる。同様に、凹部26の成形孔36は、例えば、以下に詳細に述べられるように、スリーブ32から延在する突出部分34または締め付けネジ40のネジ頭42をそこに収容できる。
【0028】
スリーブ32は、概略円筒形状またはその他の便宜的な形状を有し、その縦軸に沿って中空である。スリーブ32は、ネジ30のようなネジ込み部材をそこに収容するために、内部ネジ50を有する。突出部分34は、スリーブ32から突出し、突出高さhを有する。突出部分34は、例えば、概略半円盤形状またはその他の便宜的な形状を有し、突出部分34の取り付け面52の、成形孔26により形成されている切削インサート20の2つの向き合っている内面38のうちの一方との当接を可能とする。
【0029】
ある実施形態においては、インサート・ポケット18の大きな側壁54は、ネジ孔56を含み、そこにネジ30を収容することを可能とする。ネジ30は、差動ネジ30であり、例えば、ネジ切り方向がそれぞれ反対である第1のネジ58および第2のネジ60を有し、第1のネジ58および第2のネジ60がそれぞれネジ孔56および内部ネジ50に同時に収容されることを可能とする。したがって、スリーブ32が、本明細書でS軸として称されるネジ30の縦軸に沿って摺動するとき、ネジ30の締め付けまたは解放は、それぞれ、スリーブ32と大きな側壁54を引き寄せたり引き離したりする。ある実施形態においては、S軸は、X軸とY軸により画定されるX−Y平面上にあり、ネジ孔56からスリーブ32に向って画定される正方向を有する。正方向S軸は、例えば、以下に詳細に説明されるように、正方向X軸と鈍角を形成する。
【0030】
スリーブ32は、インサート・ポケット18の底壁64に、ネジ留め要素22の底部領域66をそこに収容できるように形成されている溝切り部分62に沿って摺動する。ある実施形態において、例えば、図3Aを参照すると、溝切り部分62は、スリーブ32の底部領域66を収容できる。別の実施形態において、例えば、図5Aを参照すると、溝切り部分62は、ネジ30とスリーブ32の機能を実質的に遂行する締め付けネジ40の底部分を収容できる。溝切り部分62は、S軸と一致する縦軸を有する半円筒形状、または円筒の一部分の形状、あるいはネジ留め要素22の底部領域66に対し補足的形状であるその他の便宜的な形状を有し、ネジ留め要素22がそこで摺動することを可能とし得る。
【0031】
切削インサート20がインサート・ポケット18内に位置決めされ、ネジ30がしっかりと固定されると、取り付け面52は、2以上の別個の当接副領域、例えば、2つの当接副領域を含み得る、または、内面38と取り付け面52との間に延在する連続した当接面を含み得る当接領域68に沿って内面38に当接する。
【0032】
同様に、別の実施形態においては、締め付けネジ40がネジ孔56内に収容される。該締め付けネジ40は、突出部分34の機能を実質的に遂行するネジ頭42を有する。ネジ頭42は、切削インサート20がインサート・ポケット18内に位置決めされると、成形孔36内に挿入される。該ネジ頭42は、内面に当接する取り付け面52の機能を実質的に遂行する下面(an under face)70を有する。
【0033】
以下に詳細に説明されるように、凹部26の形状および正中面の方向は、ネジ留め要素22の各要素の形状および位置に合致し、取り付け面52と2以上の当接領域68における内面38の一方との当接を可能とし、インサート・ポケット18内での切削インサート20の安定した押し付けを可能とする。
【0034】
例えば、ある実施形態において、取り付け面52は、通常、平坦であり、または、凹面をなしており、あるいは、便宜的な形状を有しており、例えば、少なくとも2つの別個の当接領域68において内面38に当接する。ある実施形態においては、内面38は平坦であり、他方、取り付け面52は、わずかに凹面をなしており、あるいは逆になっており、それにより、2つの別個の当接領域68においてそれらの間の当接を可能とする。
【0035】
別の実施形態においては、取り付け面52と内面38は、いずれも平坦であり、したがって、当接領域68の連続した部分にわたって、すなわち、当接面全体にわたって当接する。別の実施形態は、別の便宜的な構成を含み、取り付け面52と内面38との間に少なくとも2つの別個の当接領域68を形成し得る。
【0036】
ネジ30がしっかりと固定されることにより、また、切削工具10の動作中に加えられる外力により、内面38と取り付け面52は、互いに力を加える。2以上の当接領域68における内面38と取り付け面52との当接は、例えば、加えられた力が2以上の当接領域68の間で分割されることを可能とし、それにより、当接領域68上の圧力を減少させる。したがって、内面38と取り付け面52は、それに加えられた比較的大きい力の適用に耐えるべく耐久性があり得る。
【0037】
切削インサート20がインサート・ポケット18に位置決めされ、ネジ30がしっかりと固定されると、取り付け面52は、内面を押し、したがって、全体として、インサート・ポケット18に対し切削インサート20を押し、以下に詳細に説明されるように、インサート・ポケット18の複数の壁それぞれに対し切削インサートの複数の面を押し付ける。同様に、図5Aを参照すると、締め付けネジ40がしっかりと固定されると、下面70は、内面38に当接し、該内面38を押し、したがって、全体として、インサート・ポケット18の複数の壁に対して切削インサート20を押し、切削インサート20をそこにしっかりと押し付ける。
【0038】
ある実施形態において、締め付けネジ40の縦軸、ネジ孔56の縦軸および溝切り部分62の縦軸は、本明細書においてT軸と称される共通軸Tに沿って同軸上に整列する。該共通軸Tは、ネジ孔56からネジ頭42に向って画定される正方向を有する。正方向のT軸は、正方向のZ軸と鋭角を形成し得る。さらに、T軸のX−Y平面上への投影は、S軸と一致する。したがって、締め付けネジ40が固定されると、下面70は、切削インサート20を下方且つ中心に向って、すなわち、底面28、大きな側面46および小さな側面72を、それぞれ、インサート・ポケット18の底壁64、大きな側壁54および小さな側壁74に対して押し、例えば、別の実施形態を参照して以下に同様に詳細に示されるように、切削インサート20をインサート・ポケット18にしっかりと固定する。
【0039】
ある実施形態において、ネジ孔56、内部ネジ50およびネジ30の各縦軸は、同軸上に整列し、S軸と一致し得る。取り付け面52は、例えば、平面形状を有する場合、負方向S軸と鋭角αを形成し得る。例えば、鋭角αは、約75度、または、約72度、あるいは、せいぜい80度、あるいはその他の便宜的な鋭角であってもよい。さらに、正方向S軸は、正方向X軸と鈍角βを形成し得る。例えば、鈍角βは、約97.5度、または約102度、あるいは、90度以上、あるいは、その他の便宜的な角度であってもよい。
【0040】
切削インサート20がインサート・ポケット18に位置決めされ、ネジ30がしっかりと固定されると、締め付け力が加えられ、切削インサート20をインサート・ポケット18に固定する。切削部分16の形状により、特に、取り付け面52と負方向S軸との間の鋭角αの形成により、及び、正方向S軸と正方向X軸との間の鈍角βの形成により、締め付け力は、負方向S軸の力成分及び負方向Z軸の力成分を有する。
【0041】
したがって、締め付け力の力成分は、切削インサート20をインサート・ポケット18の複数の壁に対して中心に向って且つ下方に向って押し、切削インサート20をそれにしっかりと押し付ける。例えば、締め付け力の力成分は、大きな側面46、小さな側面72及び底面28を、それぞれ、大きな側壁46、小さな側壁74及び底壁64に対して押し付け、したがって、切削インサート20をインサート・ポケット18にしっかりと固定し、位置決めする。したがって、切削インサート20は、インサート・ポケット18にしっかりと押し付けられ、位置決めされたままであり、例えば、切削動作中、例えば、それに外力が加えられることに抵抗することができる。
【0042】
ここで、本発明の実施形態に係る切削インサート20のいくつかの図を示す図7B〜7Dに言及する。切削インサート20の縦正中面Lは、切削インサート20の縦軸を通って延在し、大きな側面46に略平行な切削インサート20の正中面として画定されている。切削インサートの横正中面Mは、切削インサート20の横軸を通って延在し、大きな側面46に概略直交する切削インサート20の正中面として画定されている。
【0043】
上述したように、ある実施形態においては、凹部26は、ネジ留め要素22の1以上の部分をそこにしっかりと収容できる。ある実施形態においては、例えば、この点に限定されるものではないが、凹部26は、溝44を含み、該溝44は、少なくともベース部分の領域、例えば、ベース部分の少なくとも上部領域24をそこに収容できる。別の実施形態においては、凹部26は、成形孔36を含むだけであり、したがって、突出部分34は、凹部26に収容されるネジ留め要素22の唯一の部分である。
【0044】
ある実施形態において、例えば、溝44は、実質的に、底面28の中間領域78に配置され得る。溝44は、2つの大きな側面46の間で縦方向に延在し、本明細書でG軸と称される縦軸を有する。G軸は、S軸と一致し得る。溝44は、概略半円筒形状、または円筒形の一部分の形状を有し得る。ある実施形態において、溝44は、断面楕円形または断面アーチ形を有していてもよい。あるいは、溝44は、別の便宜的な形状を有し、例えば、例えば、スリーブ32の上部領域をそこに収容できるように、ネジ留め要素22の上部領域24をそこにしっかりと収容できる。
【0045】
切削インサート20の形状、特に、溝44の形状とベース部分48がそこに収容されることは、高さhが比較的小さいことを可能にし、依然として取り付け面52が切削インサート20をインサート・ポケット18にしっかりと押し付けることを可能にする。このことは、結果として、突出部分34が比較的耐久力があり、すなわち、破壊することなく、また、切削インサート20を適切な位置にしっかりと押し付け損なうことなく、比較的大きな力に耐えることができることをもたらす。例えば、突出部分34に加えられる大きな力でさえも、高さhが比較的小さいことにより、比較的小さなトルクがそこに加えられることなるので、このことは、そのように言える。ある実施形態においては、例えば、高さhは、切削インサート20の厚さより小さくてもよいし、例えば、切削インサート20の厚さの半分未満であってもよいし、あるいは、切削インサート20の厚さの45%であってもよいし、切削インサート20の厚さの40%程度であってもよい。
【0046】
ある実施形態において、例えば、成形孔36は、上面29に向って、底面28の実質的に中間領域78の間に延在する。成形孔36は、上面29まで延在し、該上面29に開口している。したがって、該成形孔36は、上面29において開口部を形成している。このことは、切削インサート20の製造を容易にし得る。別の実施形態においては、成形孔36は、底面28から上面29に向って延在し、上面によって閉じ込められ、したがって、穴の開いていない上面を維持している。
【0047】
ある実施形態において、成形孔は、円筒形でない水平断面を有する。ある実施形態においては、横正中面Mおよび縦正中面Lそれぞれにいずれも直交する成形孔36の断面は、本明細書でE軸と称される細長い軸(an elongated axis)上を延在する細長い形状を有し得る。E軸は、S軸に対し直角である。ある実施形態においては、切削インサート20の上面図において、成形孔36は、E軸に沿って延在する細長い形状を有している。
【0048】
ある実施形態において、例えば、内面38が平坦である場合、2つの内面38それぞれは、成形孔36の縦正中面とゼロでない鋭角、例えば鋭角αを形成している。さらに、成形孔36の横正中面のその水平断面との交差部分は、S軸に平行であるかまたは該S軸と一致している。このことは、当接内面38と取り付け面52との間の面当接をぴったりと合わせることを可能とし、それにより、上述したように、合わせ用インサート・ポケット(matching insert pocket)18に合わせ用切削インサート20をしっかりと押し付けることを可能にする。別の実施形態においては、合わせ用切削インサート20の種々の部分の間の便宜的な別の角度が形成され得る。
【0049】
しかしながら、上述した全ての実施形態において、凹部26は、底面28を介して、当接領域の少なくとも一方に対し締め付け力を加えるネジ留め要素22を収容するように形成されている。
【0050】
本発明は、1以上の具体的な実施形態を参照して記載されてきたが、該記載は、全体として説明に役立つことを目的としており、本発明を示される実施形態に限定するものとして解釈されるべきではない。当然のことながら、本明細書には特に示されていないけれども、それにも拘らず発明の範囲内にある種々の変更を当業者は知り得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートおよび該切削インサートを切削工具に固定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
解放可能な切削インサートのような切削インサートを切削工具のインサート・ポケットに固定するための多くの異なる方法および装置が知られている。
【0003】
これらの装置は、通常、切削インサートの貫通孔内に挿入され、インサート・ポケットに形成されているネジ孔内にネジ留め可能に収容される、締め付けネジのような締め付け要素を含んでいる。
【0004】
回転切削工具のある用途においては、切削インサートは、「半径方向に」、すなわち、締め付けネジの縦軸が切削工具の回転軸に平行であって且つ該回転軸を通って延在する放射面に略直交するように、インサート・ポケット内に押し付けられる。
【0005】
回転切削工具の別の用途においては、切削インサートは、「接線方向に」、すなわち、締め付けネジの縦軸が回転軸に直交する面に略平行であり、また、切削工具の回転軸に平行であって且つ該回転軸を通って延在する放射面に平行であるように、インサート・ポケット内に押し付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半径方向に押し付けられる多数の切削インサートを有する切削工具は、十分に間隔をおいて離れて配置され、それぞれ、切削インサートから締め付けネジを取り外すために、また、該切削インサートに締め付けネジを挿入するために十分な余地を与えることを切削インサートに要求する。このことにより、単一の切削工具の半径方向に押し付けられる切削インサートの可能な限りの数が比較的制限され、切削工具の性能が制限される可能性があり得る。接線方向に押し付けられる切削インサートは、比較的円周方向に厚い。したがって、単一の切削工具の接線方向に押し付けられる切削インサートの可能な限りの数も比較的制限され、同様に、切削工具の性能が制限され得る。
【0007】
例えば、80mmの直径を有するフライス工具は、最大で7つの切削インサートを有するように制限され得るのに対し、100mmの直径を有するフライス工具は、最大で8つの切削インサートを有するように制限され得る。
【0008】
さらに、半径方向または接線方向の何れかに押し付けられる切削インサートを有する切削工具に関し、切削インサートの交換は、そのインサート・ポケットから締め付けネジが完全に取り除かれることを求める。したがって、交換手順は、特に、切削工具が比較的多数の切削インサートを有する場合、時間を浪費し、扱いが面倒である。
【0009】
さらに、ある切削工具の、例えば、接線方向に押し付けられる切削インサートを有する切削工具の押し付け機構は、そこに加えられる小さな圧力に耐えることしかできない構成部品を含み得る。これらの構成部品は、例えば、インサートの形状および/または含まれる押し付け機構の形状により強さまたは性能で制限される締め付けピンまたはネジ頭を含み得る。
【0010】
本発明の目的は、したがって、上述した不都合を著しく減少または克服する、金属切削動作を行う切削工具およびそのための切削インサートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある実施形態によれば、切削工具は、少なくとも1つの切削部分を含み、該少なくとも1つの切削部分は、そこに解放可能に保持される片面切削インサートを有するインサート・ポケットを含んでいる。切削インサートは、底面、上面、該上面と底面との間に延在する2つの対向する大きな側面および2つの対向する小さな側面を含んでいる。本発明によれば、片面切削インサートの上面は、少なくとも1つの切削刃および関連するすくい面(a rake surface)を含んでいる。少なくとも1つの切削刃に隣接して、逃げ面(a relief surface)がある。底面には、該底面を介してネジ留め要素を収容するように形成されている凹部が形成されている。ネジ留め要素は、インサート・ポケットの大きな側壁に形成されているネジ孔にネジ留め可能に収容されるベース部分を含み、大きな側壁は、大きな側面の一方に当接している。凹部は、2つの向かい合う内面を形成する成形孔を含んでおり、2つの向かい合う内面は、切削インサート内での当接領域として役立つ。組み立てられた工具において、ネジ留め要素は、当接領域の少なくとも1つに対して、締め付け力を加える。ある実施形態においては、ネジ留め要素は、凹部内に延在する突出部分を有し、成形孔は、そこに突出部分の取り付け面を収容できる。取り付け面は、それぞれが2以上の間隔をおいて離れて配置される当接副領域を備え得る当接領域の一方に当接する。成形孔は、上面まで延在し、上面に開口し、そこに開口部を形成し得る。
【0012】
本発明のある実施形態によれば、凹部は、2つの大きな側面の間であって且つ底面に沿って延在する溝を含み、そこにベース部分の少なくとも一部を収容できる。また、成形孔は、溝から上面に向って延在する。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、切削インサートの上面図において、成形孔は、細長い形状を有する。ある実施形態において、成形孔の縦正中面(a longitudinal median plane)は、切削インサートの縦正中面と第1のゼロではない鋭角を形成する。また、成形孔の縦正中面は、内面と第2のゼロではない鋭角を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る切削工具の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る切削工具の側面図である。
【図3A】本発明の実施形態に係る切削工具の切削部分の分解組み立て図である。
【図3B】本発明の実施形態に係る図3Aの切削部分の斜視図である。
【図3C】部分的に切り取られた切削インサートおよびスリーブを含んでいる図3Aの切削部分の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る図3A−Cの切削部分のスリーブの斜視図である。
【図5A】本発明の別の実施形態に係る切削工具の切削部分の斜視図である。
【図5B】本発明の別の実施形態に係る図5Aの分解組み立て図である。
【図6】本発明の実施形態に係るインサート・ポケットの斜視図である。
【図7A】本発明の実施形態に係る切削インサートの斜視図である。
【図7B】図7Aの切削インサートの側面図である。
【図7C】図7Aの切削インサートの上面図である。
【図7D】線A−Aに沿う図7Aの切削インサートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明をよりよく理解するために、また、本発明が実際にどのように実行され得るかを示すために、添付図面に対する言及がなされる。
【0016】
当然のことながら、説明を簡単且つ明瞭とするために、図に示される要素は、必ずしも縮尺で描かれているものではない。例えば、いくつかの要素のおおきさは、明瞭とするために、別の要素に対して誇張して示されており、あるいは、いくつかの物理的構成部品は、1つの機能ブロックまたは要素に含まれているかもしれない。さらに、適当であると考えられる場合、参照数字は、対応するまたは類似している要素を示すために、図の中で繰り返され得る。
【0017】
以下の説明において、本発明の種々の形態が説明されるだろう。本発明の完全な理解を提供するために、説明のために、具体的な構成および詳細が説明される。しかしながら、本発明は、本明細書で提示される具体的詳細な説明がなくても実行され得ることは、当業者にとって明白である。さらに、周知の機能は、本発明をあいまいとしないために、省略または簡略化され得る。
【0018】
本明細書におけるいくつかの図面は、回転する切削工具、例えば、フライス工具を示しているけれども、本発明は、これに限られるものではない。例えば、本発明のある実施形態は、ドリル工具、旋盤工具、または工具に保持されている1以上の解放可能な切削インサートを有する金属切削工具のような種々の回転工具を含む、切削工具に保持される1以上の解放可能な切削インサートを有する別の切削工具に言及し得る。
【0019】
ここで、本発明のある実施形態に係る切削工具10を示す図1および2に言及がなされる。切削工具10は、前端部12、後端部14、および回転軸Rを有する。切削工具10は、1以上の切削部分16を含んでいる。切削部分16それぞれは、そこに切削インサート20を解放可能に保持するインサート・ポケット18を含んでいる。
【0020】
切削部分16は、以下に詳細に説明されるネジ留め要素22を含み、切削インサート20をインサート・ポケット18にしっかりと固定している。切削インサート20は、ネジ留め要素22の縦軸が回転軸Rに直交する面に略平行となるように、あるいは、該面と小さな角度を形成するように、インサート・ポケット18に接線方向に固定されている。ネジ留め要素22の縦軸は、また、回転軸Rに平行であって且つ該回転軸Rを通って延在する放射面に略平行である。あるいは、ネジ留め要素22の縦軸は、該放射面と小さな角度を形成する。
【0021】
ある実施形態においては、切削インサート20は、インサート・ポケット18に位置決めされる。例えば、切削インサート20は、ネジ留め要素22の上に置かれ、その上部領域24に当接している。この位置において、以下に詳細に説明される突出部分34および/またはネジ留め要素22のその他の部分は、それぞれ、例えば、以下に詳細に説明されるように、切削インサート20の少なくとも底面28に形成されている凹部26の1以上の補足的成形部分に挿入される。このような接線方向の押し付けは、切削工具のより細かいピッチ(a finer pitch)を可能にする、すなわち、切削工具10における切削インサート20の比較的接近した間隔を可能にする。例えば、切削工具10は、該切削工具10が80mmの直径を有するフライス工具である場合、10個の切削インサート20を有し、切削工具10が100mmの直径を有する場合、13個の切削インサート20を有し得る。
【0022】
限定されない実施形態においては、例えば、図3A〜4を参照して、以下に詳細に説明されるように、ネジ留め要素22は、(例えば、図3Aに例示されるように)差動ネジ30およびそれに搭載されているスリーブ32を含んでいる。スリーブ32は、凹部26の成形孔36内に挿入される突出部分34を有する。差動ネジ30がしっかりと固定されると、突出部分34は、成形孔36により形成される、切削インサート20の2つの向かい合う内面38の一方に対して押し付けられる。それにより、当接内面38は、切削インサート20をインサート・ポケット18に押し付ける。
【0023】
別の限定されない実施形態においては、例えば、図5A〜5Bを参照すると、ネジ留め要素22は、代わりに、別の要素、例えば、締め付けネジ40を含んでいる。インサート・ポケット18に切削インサート20が位置決めされると、締め付けネジ40のネジ頭42の一部が凹部26内に挿入され、結果として、ネジ頭42は、内面に当接する。したがって、締め付けネジ40がしっかりと固定されると、例えば、以下に詳細に説明されるように、該締め付けネジ40が切削インサート20をインサート・ポケット18に押し付ける。
【0024】
ある実施形態において、切削インサート20の交換または割り出し(indexing)は、例えば、限られた所定の範囲までネジ留め要素22を緩める、または該要素22を部分的に開くステップを含み得る。このことは、ネジ留め要素22をインサート・ポケット18から完全に取り外すことなく、切削インサート20のインサート・ポケット18からの取り外し、および/または該ポケット18への切削インサート20の挿入を可能とする。したがって、例えば、切削インサート20の交換は、それにより、比較的労力をかけることなく、また、比較的短時間内に実行され得る。
【0025】
ここで、本発明のある実施形態に係る切削部分16を示す図3A〜4に、本発明の別の実施形態に係る切削部分16を示す図5Aおよび5Bに、それぞれ、本発明の実施形態に係るインサート・ポケット18および切削インサート20の斜視図を示す図6および7Aに言及がなされる。
【0026】
説明を明瞭とするために、右直交座標系(a right-hand Cartesian coordinate system)が導入され、図3Aに例示されている。該座標系は、添付図面3A〜7Aの説明に言及する。該座標系において、X軸は、切削インサート20の横正中面Mに直交するように画定される。該横正中面Mは、図7B〜7Dを参照して、以下に詳細に説明され、画定される。X軸の正方向(the positive direction)は、全体の前端部12から後端部14への方向に画定される。座標系のY軸は、切削インサート20の縦正中面Lに直交するように画定される。縦正中面Lは、図7Aを参照して、以下に詳細に説明され、画定される。Y軸の正方向は、全体の中心に向かう放射方向に画定される。Z軸の正方向は、正方向X軸および正方向Y軸とともに、右直交座標系を完成する。図7Cおよび7Dから理解されるように、第1の内面38Aは、関連する第1の当接領域68Aを備え、該第1の当接領域68Aは、少なくとも実質的に縦正中面Lの第1の側にあり、関連する大きな側面46Aを有する、他方、第2の内面38Bは、関連する第2の当接領域68Bを備え、該第2の当接領域68Bは、少なくとも実質的に縦正中面Lの対向する第2の側にあり、また、関連する、対向する大きな側面46Bを有する。また、これらの図において理解されるように、第1および第2の当接領域68A、68Bは、相対する方向に向き合っており、成形孔36に見られる非当接領域69A、69Bにより互いから離れて間隔をおいて配置されている。
【0027】
ある実施形態においては、凹部26の1以上の部分は、それぞれ、ネジ留め要素22の1以上の部分を収容できる。例えば、凹部26の溝44は、少なくとも底面28に形成され、2つの対向する大きな側面46の間に延在する。該溝は、ネジ留め要素22のベース部分48の上部領域24に対し補足的形状であり、そこに該上部領域24を収容できる。同様に、凹部26の成形孔36は、例えば、以下に詳細に述べられるように、スリーブ32から延在する突出部分34または締め付けネジ40のネジ頭42をそこに収容できる。
【0028】
スリーブ32は、概略円筒形状またはその他の便宜的な形状を有し、その縦軸に沿って中空である。スリーブ32は、ネジ30のようなネジ込み部材をそこに収容するために、内部ネジ50を有する。突出部分34は、スリーブ32から突出し、突出高さhを有する。突出部分34は、例えば、概略半円盤形状またはその他の便宜的な形状を有し、突出部分34の取り付け面52の、成形孔26により形成されている切削インサート20の2つの向き合っている内面38のうちの一方との当接を可能とする。
【0029】
ある実施形態においては、インサート・ポケット18の大きな側壁54は、ネジ孔56を含み、そこにネジ30を収容することを可能とする。ネジ30は、差動ネジ30であり、例えば、ネジ切り方向がそれぞれ反対である第1のネジ58および第2のネジ60を有し、第1のネジ58および第2のネジ60がそれぞれネジ孔56および内部ネジ50に同時に収容されることを可能とする。したがって、スリーブ32が、本明細書でS軸として称されるネジ30の縦軸に沿って摺動するとき、ネジ30の締め付けまたは解放は、それぞれ、スリーブ32と大きな側壁54を引き寄せたり引き離したりする。ある実施形態においては、S軸は、X軸とY軸により画定されるX−Y平面上にあり、ネジ孔56からスリーブ32に向って画定される正方向を有する。正方向S軸は、例えば、以下に詳細に説明されるように、正方向X軸と鈍角を形成する。
【0030】
スリーブ32は、インサート・ポケット18の底壁64に、ネジ留め要素22の底部領域66をそこに収容できるように形成されている溝切り部分62に沿って摺動する。ある実施形態において、例えば、図3Aを参照すると、溝切り部分62は、スリーブ32の底部領域66を収容できる。別の実施形態において、例えば、図5Aを参照すると、溝切り部分62は、ネジ30とスリーブ32の機能を実質的に遂行する締め付けネジ40の底部分を収容できる。溝切り部分62は、S軸と一致する縦軸を有する半円筒形状、または円筒の一部分の形状、あるいはネジ留め要素22の底部領域66に対し補足的形状であるその他の便宜的な形状を有し、ネジ留め要素22がそこで摺動することを可能とし得る。
【0031】
切削インサート20がインサート・ポケット18内に位置決めされ、ネジ30がしっかりと固定されると、取り付け面52は、2以上の別個の当接副領域、例えば、2つの当接副領域を含み得る、または、内面38と取り付け面52との間に延在する連続した当接面を含み得る当接領域68に沿って内面38に当接する。
【0032】
同様に、別の実施形態においては、締め付けネジ40がネジ孔56内に収容される。該締め付けネジ40は、突出部分34の機能を実質的に遂行するネジ頭42を有する。ネジ頭42は、切削インサート20がインサート・ポケット18内に位置決めされると、成形孔36内に挿入される。該ネジ頭42は、内面に当接する取り付け面52の機能を実質的に遂行する下面(an under face)70を有する。
【0033】
以下に詳細に説明されるように、凹部26の形状および正中面の方向は、ネジ留め要素22の各要素の形状および位置に合致し、取り付け面52と2以上の当接領域68における内面38の一方との当接を可能とし、インサート・ポケット18内での切削インサート20の安定した押し付けを可能とする。
【0034】
例えば、ある実施形態において、取り付け面52は、通常、平坦であり、または、凹面をなしており、あるいは、便宜的な形状を有しており、例えば、少なくとも2つの別個の当接領域68において内面38に当接する。ある実施形態においては、内面38は平坦であり、他方、取り付け面52は、わずかに凹面をなしており、あるいは逆になっており、それにより、2つの別個の当接領域68においてそれらの間の当接を可能とする。
【0035】
別の実施形態においては、取り付け面52と内面38は、いずれも平坦であり、したがって、当接領域68の連続した部分にわたって、すなわち、当接面全体にわたって当接する。別の実施形態は、別の便宜的な構成を含み、取り付け面52と内面38との間に少なくとも2つの別個の当接領域68を形成し得る。
【0036】
ネジ30がしっかりと固定されることにより、また、切削工具10の動作中に加えられる外力により、内面38と取り付け面52は、互いに力を加える。2以上の当接領域68における内面38と取り付け面52との当接は、例えば、加えられた力が2以上の当接領域68の間で分割されることを可能とし、それにより、当接領域68上の圧力を減少させる。したがって、内面38と取り付け面52は、それに加えられた比較的大きい力の適用に耐えるべく耐久性があり得る。
【0037】
切削インサート20がインサート・ポケット18に位置決めされ、ネジ30がしっかりと固定されると、取り付け面52は、内面を押し、したがって、全体として、インサート・ポケット18に対し切削インサート20を押し、以下に詳細に説明されるように、インサート・ポケット18の複数の壁それぞれに対し切削インサートの複数の面を押し付ける。同様に、図5Aを参照すると、締め付けネジ40がしっかりと固定されると、下面70は、内面38に当接し、該内面38を押し、したがって、全体として、インサート・ポケット18の複数の壁に対して切削インサート20を押し、切削インサート20をそこにしっかりと押し付ける。
【0038】
ある実施形態において、締め付けネジ40の縦軸、ネジ孔56の縦軸および溝切り部分62の縦軸は、本明細書においてT軸と称される共通軸Tに沿って同軸上に整列する。該共通軸Tは、ネジ孔56からネジ頭42に向って画定される正方向を有する。正方向のT軸は、正方向のZ軸と鋭角を形成し得る。さらに、T軸のX−Y平面上への投影は、S軸と一致する。したがって、締め付けネジ40が固定されると、下面70は、切削インサート20を下方且つ中心に向って、すなわち、底面28、大きな側面46および小さな側面72を、それぞれ、インサート・ポケット18の底壁64、大きな側壁54および小さな側壁74に対して押し、例えば、別の実施形態を参照して以下に同様に詳細に示されるように、切削インサート20をインサート・ポケット18にしっかりと固定する。
【0039】
ある実施形態において、ネジ孔56、内部ネジ50およびネジ30の各縦軸は、同軸上に整列し、S軸と一致し得る。取り付け面52は、例えば、平面形状を有する場合、負方向S軸と鋭角αを形成し得る。例えば、鋭角αは、約75度、または、約72度、あるいは、せいぜい80度、あるいはその他の便宜的な鋭角であってもよい。さらに、正方向S軸は、正方向X軸と鈍角βを形成し得る。例えば、鈍角βは、約97.5度、または約102度、あるいは、90度以上、あるいは、その他の便宜的な角度であってもよい。
【0040】
切削インサート20がインサート・ポケット18に位置決めされ、ネジ30がしっかりと固定されると、締め付け力が加えられ、切削インサート20をインサート・ポケット18に固定する。切削部分16の形状により、特に、取り付け面52と負方向S軸との間の鋭角αの形成により、及び、正方向S軸と正方向X軸との間の鈍角βの形成により、締め付け力は、負方向S軸の力成分及び負方向Z軸の力成分を有する。
【0041】
したがって、締め付け力の力成分は、切削インサート20をインサート・ポケット18の複数の壁に対して中心に向って且つ下方に向って押し、切削インサート20をそれにしっかりと押し付ける。例えば、締め付け力の力成分は、大きな側面46、小さな側面72及び底面28を、それぞれ、大きな側壁46、小さな側壁74及び底壁64に対して押し付け、したがって、切削インサート20をインサート・ポケット18にしっかりと固定し、位置決めする。したがって、切削インサート20は、インサート・ポケット18にしっかりと押し付けられ、位置決めされたままであり、例えば、切削動作中、例えば、それに外力が加えられることに抵抗することができる。
【0042】
ここで、本発明の実施形態に係る切削インサート20のいくつかの図を示す図7B〜7Dに言及する。切削インサート20の縦正中面Lは、切削インサート20の縦軸を通って延在し、大きな側面46に略平行な切削インサート20の正中面として画定されている。切削インサートの横正中面Mは、切削インサート20の横軸を通って延在し、大きな側面46に概略直交する切削インサート20の正中面として画定されている。
【0043】
上述したように、ある実施形態においては、凹部26は、ネジ留め要素22の1以上の部分をそこにしっかりと収容できる。ある実施形態においては、例えば、この点に限定されるものではないが、凹部26は、溝44を含み、該溝44は、少なくともベース部分の領域、例えば、ベース部分の少なくとも上部領域24をそこに収容できる。別の実施形態においては、凹部26は、成形孔36を含むだけであり、したがって、突出部分34は、凹部26に収容されるネジ留め要素22の唯一の部分である。
【0044】
ある実施形態において、例えば、溝44は、実質的に、底面28の中間領域78に配置され得る。溝44は、2つの大きな側面46の間で縦方向に延在し、本明細書でG軸と称される縦軸を有する。G軸は、S軸と一致し得る。溝44は、概略半円筒形状、または円筒形の一部分の形状を有し得る。ある実施形態において、溝44は、断面楕円形または断面アーチ形を有していてもよい。あるいは、溝44は、別の便宜的な形状を有し、例えば、例えば、スリーブ32の上部領域をそこに収容できるように、ネジ留め要素22の上部領域24をそこにしっかりと収容できる。
【0045】
切削インサート20の形状、特に、溝44の形状とベース部分48がそこに収容されることは、高さhが比較的小さいことを可能にし、依然として取り付け面52が切削インサート20をインサート・ポケット18にしっかりと押し付けることを可能にする。このことは、結果として、突出部分34が比較的耐久力があり、すなわち、破壊することなく、また、切削インサート20を適切な位置にしっかりと押し付け損なうことなく、比較的大きな力に耐えることができることをもたらす。例えば、突出部分34に加えられる大きな力でさえも、高さhが比較的小さいことにより、比較的小さなトルクがそこに加えられることなるので、このことは、そのように言える。ある実施形態においては、例えば、高さhは、切削インサート20の厚さより小さくてもよいし、例えば、切削インサート20の厚さの半分未満であってもよいし、あるいは、切削インサート20の厚さの45%であってもよいし、切削インサート20の厚さの40%程度であってもよい。
【0046】
ある実施形態において、例えば、成形孔36は、上面29に向って、底面28の実質的に中間領域78の間に延在する。成形孔36は、上面29まで延在し、該上面29に開口している。したがって、該成形孔36は、上面29において開口部を形成している。このことは、切削インサート20の製造を容易にし得る。別の実施形態においては、成形孔36は、底面28から上面29に向って延在し、上面によって閉じ込められ、したがって、穴の開いていない上面を維持している。
【0047】
ある実施形態において、成形孔は、円筒形でない水平断面を有する。ある実施形態においては、横正中面Mおよび縦正中面Lそれぞれにいずれも直交する成形孔36の断面は、本明細書でE軸と称される細長い軸(an elongated axis)上を延在する細長い形状を有し得る。E軸は、S軸に対し直角である。ある実施形態においては、切削インサート20の上面図において、成形孔36は、E軸に沿って延在する細長い形状を有している。
【0048】
ある実施形態において、例えば、内面38が平坦である場合、2つの内面38それぞれは、成形孔36の縦正中面とゼロでない鋭角、例えば鋭角αを形成している。さらに、成形孔36の横正中面のその水平断面との交差部分は、S軸に平行であるかまたは該S軸と一致している。このことは、当接内面38と取り付け面52との間の面当接をぴったりと合わせることを可能とし、それにより、上述したように、合わせ用インサート・ポケット(matching insert pocket)18に合わせ用切削インサート20をしっかりと押し付けることを可能にする。別の実施形態においては、合わせ用切削インサート20の種々の部分の間の便宜的な別の角度が形成され得る。
【0049】
しかしながら、上述した全ての実施形態において、凹部26は、底面28を介して、当接領域の少なくとも一方に対し締め付け力を加えるネジ留め要素22を収容するように形成されている。
【0050】
本発明は、1以上の具体的な実施形態を参照して記載されてきたが、該記載は、全体として説明に役立つことを目的としており、本発明を示される実施形態に限定するものとして解釈されるべきではない。当然のことながら、本明細書には特に示されていないけれども、それにも拘らず発明の範囲内にある種々の変更を当業者は知り得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面(28)、
上面(29)、
上面(29)と底面(28)との間に延在する、2つの対向する大きな側面(46)と2つの対向する小さな側面(72)、
2つの小さな側面(72)および上面(29)および底面(28)に交差する縦正中面(L)、
2つの大きな側面(46)および上面(29)および底面(28)に交差する横正中面(M)、および
底面(28)に形成され、上面(29)に向って延在する成形孔(36)を含む凹部(26)、
を備え、
前記成形孔(36)は、少なくとも実質的に、前記縦正中面(L)の第1の側に、第1の当接領域(68A)を含む第1の内面(38A)を有し、
前記成形孔(36)は、少なくとも実質的に、前記縦正中面(L)の第2の側に、第2の当接領域(68B)を含む第2の内面(38B)を有し、
前記第1の当接領域(68A)と前記第2の当接領域(68B)は、相対する方向に向き合っており、
前記凹部(26)は、前記底面(28)を介して、前記第1および第2の当接領域(68A、68B)の少なくとも一方に対し締め付け力を加えるネジ留め要素(22)を収容するように形成されていることを特徴とする片面切削インサート(20)。
【請求項2】
前記第1および第2の当接領域(68A、68B)は、前記成形孔(36)に含まれる非当接領域(69A、69B)により互いから離れて間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項3】
前記凹部(26)は、前記2つの大きな側面(46)の間であって且つ前記底面(28)に沿って延在している単一の溝(44)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項4】
前記溝(44)は、前記切削インサート(20)の側面から見て、アーチ形状を有していることを特徴とする請求項3に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項5】
前記成形孔(36)は、前記上面(29)に対して開口し、それにより、前記上面(29)に開口部を形成することを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項6】
前記切削インサート(20)の上面から見て、前記成形孔(36)は、細長い軸Eに沿って延在する細長い形状を有することを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項7】
前記成形孔(36)の前記細長い軸Eは、前記縦正中面(L)とゼロでない第1の鋭角αを形成していることを特徴とする請求項6に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項8】
前記凹部(26)は、ネジ留め要素(22)の突出部分(34)の取り付け面(52)の、前記第1および第2の当接領域のうちの一方との当接のために、前記ネジ留め要素(22)の前記突出部分(34)を収容できるように構成され、特定の寸法に作られていることを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項9】
少なくとも1つの切削部分(16)を有する切削工具(10)であって、 前記少なくとも1つの切削部分(16)は、
ネジ孔(56)が設けられている大きな側壁(54)を有するインサート・ポケット(18)、
底面(28)、上面(29)、該上面(29)と前記底面(28)との間に延在する2つの対向する大きな側面(46)と2つの対向する小さな側面(72)、および前記底面828)に形成され、前記上面(29)に向って延在する成形孔(36)を含む凹部(26)を備える切削インサート(20)であって、
前記成形孔(36)は、前記2つの小さな側面(72)と前記上面(29)と前記底面(28)に交差する縦正中面(L)の少なくとも実質的に第1の側に第1の当接領域(68A)を含んでいる第1の内面(38A)を有し、
前記成形孔(36)は、前記縦正中面(L)の少なくとも実質的に第2の側に第2の当接領域(68B)を含んでいる第2の内面(38B)を有し、
前記第1および第2の当接領域(68A、68B)は、相対する方向に向き合っており、
前記凹部(26)は、前記底面(28)を介して、前記第1および第2の当接領域(68A、68B)の少なくとも一方に対し締め付け力を加えるネジ留め要素(22)を収容するように形成されている切削インサート(20)、および
前記インサート・ポケット(18)に前記切削インサート(20)を解放可能に保持するネジ留め要素(22)であって、前記第1および第2の当接領域(68A、68B)の少なくとも一方に当接する取り付け面(52)を含んでいるネジ留め要素(22)、
を備えることを特徴とする切削工具(10)。
【請求項10】
前記インサート・ポケット(18)は、さらに、底壁(64)と該底壁(64)に形成される溝切り部分(62)を含み、
前記ネジ留め要素(22)の底部領域は、前記インサート・ポケット(18)の前記溝切り部分(62)に収容されることを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項11】
前記ネジ留め要素(22)は、ネジ頭(42)を有する締め付けネジ(40)を含み、
前記締め付けネジ(40)は、前記インサート・ポケット(18)の前記ネジ孔(56)内に収容され、
前記ネジ頭(42)は、前記取り付け面(52)としての機能を果たし、前記第1および第2の当接領域(68A、68B)の少なくとも一方に当接する下面(70)を有することを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項12】
前記ネジ留め要素(22)は、内部ネジ(50)を有するスリーブ(32)及びネジを含み、
前記スリーブ(32)は、前記ネジに装着され、
前記取り付け面(52)は、前記スリーブ(32)に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項13】
前記ネジは、異なるネジ切り方向を有し、第1のネジ(58)を前記ネジ孔(56)内におよび第2のネジ(60)を前記内部ネジ(50)内に同時に収容することを可能にする前記第1および第2のネジ(58、60)を有する差動ネジ(30)を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項14】
前記ネジ留め要素(22)は、
前記インサート・ポケット(18)の前記ネジ孔(56)にネジ留め可能に収容されるベース部分、
前記切削インサート(20)の前記凹部(26)内に延在する突出部分(34)であって、前記取り付け面(52)が該突出部分(34)に形成されている突出部分(34)、
を備えていることを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項15】
前記突出部分(34)は、前記切削インサート(20)の厚さの半分ほどの高さを有することを特徴とする請求項14に記載の切削工具(10)。
【請求項1】
底面(28)、
上面(29)、
上面(29)と底面(28)との間に延在する、2つの対向する大きな側面(46)と2つの対向する小さな側面(72)、
2つの小さな側面(72)および上面(29)および底面(28)に交差する縦正中面(L)、
2つの大きな側面(46)および上面(29)および底面(28)に交差する横正中面(M)、および
底面(28)に形成され、上面(29)に向って延在する成形孔(36)を含む凹部(26)、
を備え、
前記成形孔(36)は、少なくとも実質的に、前記縦正中面(L)の第1の側に、第1の当接領域(68A)を含む第1の内面(38A)を有し、
前記成形孔(36)は、少なくとも実質的に、前記縦正中面(L)の第2の側に、第2の当接領域(68B)を含む第2の内面(38B)を有し、
前記第1の当接領域(68A)と前記第2の当接領域(68B)は、相対する方向に向き合っており、
前記凹部(26)は、前記底面(28)を介して、前記第1および第2の当接領域(68A、68B)の少なくとも一方に対し締め付け力を加えるネジ留め要素(22)を収容するように形成されていることを特徴とする片面切削インサート(20)。
【請求項2】
前記第1および第2の当接領域(68A、68B)は、前記成形孔(36)に含まれる非当接領域(69A、69B)により互いから離れて間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項3】
前記凹部(26)は、前記2つの大きな側面(46)の間であって且つ前記底面(28)に沿って延在している単一の溝(44)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項4】
前記溝(44)は、前記切削インサート(20)の側面から見て、アーチ形状を有していることを特徴とする請求項3に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項5】
前記成形孔(36)は、前記上面(29)に対して開口し、それにより、前記上面(29)に開口部を形成することを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項6】
前記切削インサート(20)の上面から見て、前記成形孔(36)は、細長い軸Eに沿って延在する細長い形状を有することを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項7】
前記成形孔(36)の前記細長い軸Eは、前記縦正中面(L)とゼロでない第1の鋭角αを形成していることを特徴とする請求項6に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項8】
前記凹部(26)は、ネジ留め要素(22)の突出部分(34)の取り付け面(52)の、前記第1および第2の当接領域のうちの一方との当接のために、前記ネジ留め要素(22)の前記突出部分(34)を収容できるように構成され、特定の寸法に作られていることを特徴とする請求項1に記載の片面切削インサート(20)。
【請求項9】
少なくとも1つの切削部分(16)を有する切削工具(10)であって、 前記少なくとも1つの切削部分(16)は、
ネジ孔(56)が設けられている大きな側壁(54)を有するインサート・ポケット(18)、
底面(28)、上面(29)、該上面(29)と前記底面(28)との間に延在する2つの対向する大きな側面(46)と2つの対向する小さな側面(72)、および前記底面828)に形成され、前記上面(29)に向って延在する成形孔(36)を含む凹部(26)を備える切削インサート(20)であって、
前記成形孔(36)は、前記2つの小さな側面(72)と前記上面(29)と前記底面(28)に交差する縦正中面(L)の少なくとも実質的に第1の側に第1の当接領域(68A)を含んでいる第1の内面(38A)を有し、
前記成形孔(36)は、前記縦正中面(L)の少なくとも実質的に第2の側に第2の当接領域(68B)を含んでいる第2の内面(38B)を有し、
前記第1および第2の当接領域(68A、68B)は、相対する方向に向き合っており、
前記凹部(26)は、前記底面(28)を介して、前記第1および第2の当接領域(68A、68B)の少なくとも一方に対し締め付け力を加えるネジ留め要素(22)を収容するように形成されている切削インサート(20)、および
前記インサート・ポケット(18)に前記切削インサート(20)を解放可能に保持するネジ留め要素(22)であって、前記第1および第2の当接領域(68A、68B)の少なくとも一方に当接する取り付け面(52)を含んでいるネジ留め要素(22)、
を備えることを特徴とする切削工具(10)。
【請求項10】
前記インサート・ポケット(18)は、さらに、底壁(64)と該底壁(64)に形成される溝切り部分(62)を含み、
前記ネジ留め要素(22)の底部領域は、前記インサート・ポケット(18)の前記溝切り部分(62)に収容されることを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項11】
前記ネジ留め要素(22)は、ネジ頭(42)を有する締め付けネジ(40)を含み、
前記締め付けネジ(40)は、前記インサート・ポケット(18)の前記ネジ孔(56)内に収容され、
前記ネジ頭(42)は、前記取り付け面(52)としての機能を果たし、前記第1および第2の当接領域(68A、68B)の少なくとも一方に当接する下面(70)を有することを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項12】
前記ネジ留め要素(22)は、内部ネジ(50)を有するスリーブ(32)及びネジを含み、
前記スリーブ(32)は、前記ネジに装着され、
前記取り付け面(52)は、前記スリーブ(32)に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項13】
前記ネジは、異なるネジ切り方向を有し、第1のネジ(58)を前記ネジ孔(56)内におよび第2のネジ(60)を前記内部ネジ(50)内に同時に収容することを可能にする前記第1および第2のネジ(58、60)を有する差動ネジ(30)を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項14】
前記ネジ留め要素(22)は、
前記インサート・ポケット(18)の前記ネジ孔(56)にネジ留め可能に収容されるベース部分、
前記切削インサート(20)の前記凹部(26)内に延在する突出部分(34)であって、前記取り付け面(52)が該突出部分(34)に形成されている突出部分(34)、
を備えていることを特徴とする請求項9に記載の切削工具(10)。
【請求項15】
前記突出部分(34)は、前記切削インサート(20)の厚さの半分ほどの高さを有することを特徴とする請求項14に記載の切削工具(10)。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【公表番号】特表2012−506778(P2012−506778A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532767(P2011−532767)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000979
【国際公開番号】WO2010/046892
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(306037920)イスカーリミテッド (93)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000979
【国際公開番号】WO2010/046892
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(306037920)イスカーリミテッド (93)
【Fターム(参考)】
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