説明

切断可能なリンカーを有する一本鎖抗体

所望のグリコシル化を有する抗体及び抗体を作製する方法と効率的な産生が開示されている。シグナル配列、軽及び重免疫グロブリン鎖(各々可変領域と定常領域を含み、少なくとも1つのタンパク分解切断部位を含むスペーサーペプチドによって隔てられている。)を含む融合タンパク質をコードする核酸で形質転換された宿主細胞が、核酸を発現するために培養され、抗体を産生するために、適切なプロテアーゼによって切断される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
哺乳動物の細胞系は、治療用抗体を産生するために成功裏に使用されているが、それらは、開発するのが高価であり、抗体に対して予想される将来の需要を満たすには、現在、製造能力が十分ではない。下等な真核生物及び細菌から得られるタンパク質の発現用細胞系は、より安価であり、操作がより単純であるが、抗体の作製に他の困難を伴う。これらの細胞種での従来の研究の多くは、このような系内での折り畳み及び/又は完全な状態の抗体の収率が不良であるために、完全な状態の抗体ではなく、抗体断片の発現に限定されている(例えば、Better et al,Science 240,1041−1043(1988)参照)。しかしながら、抗体断片は、抗体の結合が治療活性に対して十分である状況においてのみ、換言すれば、エフェクター機能が必要とされていない場合にのみ有用である。
【0002】
エフェクター機能が必要とされない場合でさえ、原核生物及び下等真核生物によって産生される抗体は、適切なグリコシル化の欠如のために、哺乳動物細胞由来のものに比べて、しばしば、有用性が劣る。同じタンパク質のグリコシル化パターン及び各オリゴ糖の組成が、当該タンパク質が発現される宿主系に応じて異なるように、様々な生物が、様々なグリコシル化酵素(例えば、グリコシル転位酵素及びグリコシダーゼ)を産生し、利用可能な様々な基質(ヌクレオチド糖)を有する。細菌は、典型的には、タンパク質をグリコシル化せず、グリコシル化する場合でも、極めて非特異的な様式でグリコシル化するに過ぎない(Moens and Vanderleyden,Arch Microbiol 168(3):169−175(1997))。糸状菌及び酵母などの下等真核生物は、マンノース及びマンノシルホスファート糖を主として添加する。得られるグリカンは、「高マンノース」型グリカン又はマンナンとして知られる。植物細胞及び昆虫細胞(Sf9細胞など)は、さらに別の方法で、タンパク質をグリコシル化する。これに対して、ヒトなどの、より高等な真核生物では、幾つかのマンノース残基を除去するために、新生オリゴ糖側鎖が装飾され得、下等真核生物のN−グリカン中には通例見出されない追加の糖残基で伸長され得る(Coloma et al.,2000,Mol. Immunol. 37:1081−1090;Raju et al.,2000,Glycobiology,10:477−486;Weikert,et al Nature Biotechnology,1999,17,1116−1121;Malissard,et al Biochemical and Biophysical Research Communications,2000,267,169−173)。細菌又は下等真核生物によって産生される抗体中に適切なグリコシル化が欠如していることは、治療用タンパク質の免疫原性、薬物動態学的特性、輸送及び効力に悪影響を与え得る。
【0003】
細菌及び下等真核細胞中で発現された抗体断片の一形態は、一本鎖抗体として知られている(例えば、米国特許4,946,778号及び同第5,132,405号を参照。)。このような分子は、スペーサーペプチドによって、重鎖可変領域から隔てられた軽鎖可変領域を含むが、典型的には、定常領域の幾つかを欠如し、通常は定常領域の全てを欠如している。一本鎖抗体形態は、特にファージディスプレイによって、所望の結合特異性に対して抗体の多数をスクリーニングするのに特に適している(例えば、McCafferty et al.,Nature 348,552,554(1990))。このようなスクリーニングでは、完全な状態の抗体に比べて一本鎖抗体のサイズがより小さいことはファージの生存性を損なわずにディスプレイを得るのに有利であり、定常領域の欠如は結合特異性とは無関係である。定常領域を欠如する一本鎖抗体の小さなサイズは、エフェクター機能を必要としない抗体の用途において、治療目的に対して利点を有することも提案されている(Cochet et al.,Cancer Detect. Prev.,23,506−510(1999);McCall et al.,Mol. Immunol,36,433−445(1999);Pavlinkova et al.,J. Nuclear Med.,40,1536−1546(1999))。小さなサイズは、標的組織の改善された浸透をもたらすことが提唱されている。小さなサイズは、想定され得る抗体高次構造の数を減少させるので、不正確な折り畳みを減少させる上でも有利であるということも報告されている(Jaeger et al.,FEBS Letters,462,307−312(1999))。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、抗体を作製する方法を提供する。本方法は、N末端からC末端への順序で、(a)シグナル配列と、(b)可変領域及び定常領域を含む第一の免疫グロブリン鎖と、(c)融合タンパク質とは別個の分子であるプロテアーゼによって切断可能なタンパク分解切断部位を含むスペーサーペプチドと、並びに(d)可変領域及び定常領域を含む第二の免疫グロブリン鎖とを含む融合タンパク質をコードする核酸で形質転換された真菌細胞を培養することを含み;前記第一の免疫グロブリン鎖は軽鎖であり、及び前記第二の免疫グロブリンは重鎖であり、又はこの逆であり;前記融合タンパク質は前記スペーサーペプチドと前記第二の免疫グロブリン鎖との間に第二のシグナル配列を含まず;並びに前記スペーサーペプチドは自己プロセッシング切断部位を欠如する。融合タンパク質は、発現され、シグナル配列を除去するために前記シグナル配列のC末端終末部で切断され、及びプロテアーゼによって、前記スペーサーペプチド中の前記タンパク分解部位において切断される。分子間会合された免疫グロブリン重鎖と軽鎖の対を含む抗体が作製される。
【0005】
好ましくは、抗体が、分子間会合された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の2つの対を含む四量体抗体である。幾つかの方法では、第一の免疫グロブリン鎖は軽鎖であり、及び第二の免疫グロブリン鎖は重鎖である。他の方法では、第一の免疫グロブリン鎖は重鎖であり、及び第二の免疫グロブリン鎖は軽鎖である。
【0006】
幾つかの方法では、融合タンパク質の軽鎖及び重鎖が、分子内結合によって互いに会合しており、並びに融合タンパク質の2つのコピーが、タンパク分解部位での切断が起こる前に、それらの各重鎖定常領域の分子間結合によって互いに結合している。幾つかの方法では、タンパク分解部位における切断後に、分子間会合された重鎖及び軽鎖の対を形成するための免疫グロブリン重鎖と軽鎖の分子間会合と、並びに四量体抗体を形成するための分子間会合された重鎖と軽鎖の2つの対間での分子間会合とが続く。幾つかの方法では、スペーサーペプチドが、第一及び第二のプロテアーゼによって切断可能な第一及び第二のタンパク分解切断部位を含み、両プロテアーゼは融合タンパク質融合タンパク質とは別個の分子であり、第一及び第二のタンパク分解切断部位はペプチドリンカーによって隔てられており、並びに第一及び第二のプロテアーゼによるタンパク分解切断部位の切断が融合タンパク質からペプチドリンカーを除去する。幾つかの方法では、第一及び第二のプロテアーゼは同一のプロテアーゼである。
【0007】
幾つかの方法では、第一及び第二のタンパク分解部位の切断は細胞中で起こる。幾つかの方法では、細胞は、抗体を分泌する。幾つかの方法では、細胞は、第一及び第二のタンパク分解部位を切断するプロテアーゼをコードする核酸で形質転換されている。幾つかの方法では、核酸は、プロテアーゼに融合された第二のシグナル配列を含む第二の融合タンパク質をコードし、前記第二のシグナル配列がプロテアーゼの小胞体中への取り込みを引き起こす。幾つかの方法では、融合タンパク質はシグナル配列なしに細胞から分泌され、及び前記方法が、分泌された融合タンパク質を、スペーサーペプチド中のタンパク分解部位を切断するプロテアーゼで処理することをさらに含む。
【0008】
幾つかの方法は、細胞から、又はその中で細胞が培養されている培地から抗体を回収することをさらに含む。幾つかの方法は、抗体を実質的な均質状態まで精製することをさらに含む。幾つかの方法は、医薬組成物中において、抗体を医薬担体と組み合わせることをさらに含む。幾つかの方法は、融合タンパク質をコードする核酸を細胞中に導入することをさらに含む。
【0009】
幾つかの方法では、細胞は糸状菌細胞である。幾つかの方法では、細胞は酵母細胞である。好ましい細胞は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・ミニュータ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピチア・オプンチアエ(Pichia opuntiae)、ピチア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピチア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)及びニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)から得られる細胞からなる群から選択される株から得られる。
【0010】
幾つかの方法において、タンパク分解切断部位はKex2p部位である。場合により、タンパク分解切断部位はアミノ酸配列XXKR(Xは、任意のアミノ酸である。)を有する。場合によって、タンパク分解切断部位はアミノ酸配列XXKR(Xは、任意の疎水性又は親水性アミノ酸である。)を有する。場合によって、タンパク分解切断部位はアミノ酸配列RHKRを有する。場合によって、スペーサーペプチドはアミノ酸配列LVKRを有するN末端タンパク分解切断部位及びアミノ酸配列RLVKRを有するC末端タンパク分解切断部位を有する。場合により、抗体がスペーサーペプチドの全ての残基を欠如する。
【0011】
幾つかの方法では、四量体抗体はエフェクター機能を有する。場合によって、エフェクター機能は、補体固定又は抗体依存性細胞毒性である。
【0012】
幾つかの方法では、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖は、ヒト化された免疫グロブリン軽鎖及び重鎖である。
【0013】
幾つかの方法では、抗体は、少なくとも50mg/リットル培地の収量で作製される。幾つかの方法では、抗体は、少なくとも位置Asn297においてグリコシル化されている。
【0014】
幾つかの方法において、重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含む。幾つかの方法において、重鎖定常領域は、CH4領域をさらに含む。
【0015】
幾つかの方法は、抗体を精製すること及び診断キット中に抗体を組み込むことをさらに含む。
【0016】
幾つかの方法では、融合タンパク質は、シグナル配列と第一の免疫グロブリン鎖の間に、又はペプチドスペーサーと第二の免疫グロブリン鎖の間に、宿主タンパク質からのペプチドセグメントを欠如する。
【0017】
本発明は、さらに、N末端からC末端への順序で、(a)シグナル配列と、(b)可変領域及び定常領域を含む第一の免疫グロブリン鎖と、(c)融合タンパク質とは別個の分子であるプロテアーゼによって切断可能なタンパク分解切断部位を含むスペーサーペプチドと、並びに(d)可変領域及び定常領域を含む第二の免疫グロブリン鎖とを含み;前記第一の免疫グロブリン鎖が軽鎖であり、及び前記第二の免疫グロブリンが重鎖であり、又はこの逆であり;前記融合タンパク質が前記スペーサーペプチドと前記第二の免疫グロブリン鎖との間に第二のシグナル配列を含まず;並びに前記スペーサーペプチドが自己プロセッシング切断部位を欠如する融合タンパク質をコードする核酸を提供する。本発明は、制御配列に作用可能に連結されたこのような核酸を含むベクター及びこのような核酸で形質転換された細胞も提供する。
【0018】
さらに、本発明、上記方法によって作製された抗体の分子の複数を含み、前記複数の各々が糖型を有し、並びに主な糖型が複合型であり、及びフコースを欠如する、抗体組成物を提供する。場合によって、主要なグリカン構造は、抗体組成物の次に主要なグリカン構造より少なくとも約10〜25モル%多いレベルで存在する。
【0019】
さらに、本発明は、上記方法によって作製されたモノクローナル抗体を提供する。場合によって、前記モノクローナル抗体は、EGFR、CD20、CD33又はTNF−αに特異的に結合する。
【0020】
本発明は、さらに、抗体を作製する方法を提供する。このような方法は、シグナル配列と、可変領域及び定常領域を含む第一の免疫グロブリン軽鎖と、第一及び第二のプロテアーゼ(同一又は別異であり得、何れも、融合タンパク質とは別個の分子である。)によって切断可能な第一及び第二のタンパク分解切断部位を含むスペーサーペプチドと、並びに可変領域及び定常領域を含む免疫グロブリン重鎖を含む融合タンパク質をコードする核酸で形質転換された細胞を培養することを含み、前記スペーサーペプチドが自己切断可能なタンパク分解部位を含まず、前記融合タンパク質が発現され、シグナル配列を除去するために前記シグナル配列のC末端終末部で切断され、及び第一及び第二のプロテアーゼによって、前記スペーサーペプチド中の前記第一及び第二のタンパク分解部位において切断され;並びに、分子間会合された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の対を含む抗体が作製される。
【0021】
幾つかの方法では、抗体は、分子間会合された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の2つの対を含む四量体抗体である。幾つかの方法では、第一の免疫グロブリン鎖は軽鎖であり、及び第二の免疫グロブリン鎖は重鎖である。他の方法では、第一の免疫グロブリン鎖は重鎖であり、及び第二の免疫グロブリン鎖は軽鎖である。
【0022】
幾つかの方法では、融合タンパク質の軽鎖及び重鎖は、分子内結合によって互いに会合しており、並びに融合タンパク質の2つのコピーが、タンパク分解部位での切断が起こる前に、それらの各重鎖定常領域の分子間結合によって互いに結合している。幾つかの方法では、タンパク分解部位における切断後に、分子間会合された重鎖及び軽鎖の対を形成するための免疫グロブリン重鎖と軽鎖の分子間会合と、並びに四量体抗体を形成するための分子間会合された重鎖と軽鎖の2つの対間での分子間会合とが続く。
【0023】
幾つかの方法では、スペーサーペプチドが、第一及び第二のプロテアーゼによって切断可能な第一及び第二のタンパク分解切断部位を含み、両プロテアーゼは融合タンパク質融合タンパク質とは別個の分子であり、第一及び第二のタンパク分解切断部位はペプチドリンカーによって隔てられており、並びに第一及び第二のプロテアーゼによるタンパク分解切断部位の切断が融合タンパク質からペプチドリンカーを除去する。幾つかの方法では、第一及び第二のプロテアーゼが同一のプロテアーゼである。
【0024】
幾つかの方法では、第一及び第二のタンパク分解部位の切断が細胞中で起こる。幾つかの方法では、細胞は、抗体を分泌する。幾つかの方法では、細胞は、第一及び第二のタンパク分解部位を切断するプロテアーゼをコードする核酸で形質転換されている。
【0025】
幾つかの方法では、核酸は、プロテアーゼに融合された第二のシグナル配列を含む第二の融合タンパク質をコードし、前記第二のシグナル配列はプロテアーゼの小胞体中への取り込みを引き起こす。幾つかの方法では、融合タンパク質はシグナル配列なしに細胞から分泌され、及び前記方法は、分泌された融合タンパク質を、スペーサーペプチド中のタンパク分解部位を切断するプロテアーゼで処理することをさらに含む。幾つかの方法は、細胞から、又はその中で細胞が培養されている培地から抗体を回収することをさらに含む。このような方法は、抗体を実質的な均質状態まで精製することをさらに含む。
【0026】
幾つかの方法は、医薬組成物中において、抗体を医薬担体と組み合わせることをさらに含む。
【0027】
幾つかの方法は、融合タンパク質をコードする核酸を細胞中に導入することをさらに含む。
【0028】
幾つかの方法において、細胞は糸状菌細胞である。幾つかの方法において、細胞は酵母細胞である。好ましい細胞は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・ミニュータ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピチア・オプンチアエ(Pichia opuntiae)、ピチア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピチア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)及びニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)から得られる細胞からなる群から選択される。
【0029】
幾つかの方法では、タンパク分解切断部位はKex2p部位である。場合によって、タンパク分解切断部位はアミノ酸配列XXKR(Xは、任意のアミノ酸である。)を有する。場合によって、タンパク分解切断部位はアミノ酸配列XXKR(Xは、任意の疎水性又は親水性アミノ酸である。)を有する。場合によって、タンパク分解切断部位はアミノ酸配列RHKRを有する。場合によって、スペーサーペプチドはアミノ酸配列LVKRを有するN末端タンパク分解切断部位及びアミノ酸配列RLVKRを有するC末端タンパク分解切断部位を有する。場合によって、抗体はスペーサーペプチドの全ての残基を欠如する。
【0030】
幾つかの方法では、四量体抗体はエフェクター機能を有する。場合によって、エフェクター機能は、補体固定又は抗体依存性細胞毒性である。
【0031】
幾つかの方法では、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖が、ヒト化された免疫グロブリン軽鎖及び重鎖である。
【0032】
幾つかの方法では、抗体は、少なくとも50mg/リットル培地の収量で作製される。幾つかの方法では、抗体は、少なくとも位置Asn297においてグリコシル化されている。
【0033】
幾つかの方法では、重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含む。幾つかの方法では、重鎖定常領域は、CH4領域をさらに含む。
【0034】
幾つかの方法は、抗体を精製すること及び診断キット中に抗体を組み込むことをさらに含む。
【0035】
幾つかの方法では、融合タンパク質は、シグナル配列と第一の免疫グロブリン鎖の間に、又はペプチドスペーサーと第二の免疫グロブリン鎖の間に、宿主タンパク質からのペプチドセグメントを欠如する。
【0036】
定義
基本的な抗体構造単位は、サブユニットの四量体を含むことが知られている。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対を有し、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識に必要とされる、約100〜110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主として、エフェクター機能のために必要とされる定常領域を規定する。
【0037】
軽鎖は、κ又はλの何れかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ又はεとして分類され、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEとして、抗体のイソタイプを規定する。軽鎖及び重鎖は、可変領域及び定常領域へさらに細かく分けられる(一般的には、 Fundamental Immunology(Paul,W.,ed.,2nd ed. Raven Press,N.Y.,1989),Ch.7参照(あらゆる目的のために、その全体が、参照により組み込まれる。)。
【0038】
各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。従って、完全な状態の抗体は、2つの結合部位を有する。二機能性又は二特異的抗体を除き、2つの抗原部位は同一である。鎖は全て、3つの超可変領域によって連結された、相対的に保存されたフレームワーク領域(FR)(相補性決定領域又はCDRとも称される。)の同じ一般的構造を呈する。各対の2つの鎖から得られるCDRは、特異的なエピトープへの結合を可能にするフレームワーク領域によって並列される。N末端からC末端へと、軽鎖及び重鎖は何れも、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ、CH2、CH3及び(幾つかの事例では)CH4領域にさらに分けられる。各ドメインへのアミノ酸の割り当て及びアミノ酸の付番は、「Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)」の定義に従う。
【0039】
完全な状態の抗体は、完全長の免疫グロブリン可変領域及び定常領域を有する、上述のような四量体構造を意味する。完全な状態の免疫グロブリンにおける可変領域は成熟状態にあり、これは免疫グロブリンシグナル配列を欠如することを意味する。「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、互換的に使用される。完全な状態の抗体の結合断片(Fabなど)も、抗体と称される。
【0040】
疎水性アミノ酸は、met、ala、val、leu、ileであり、場合によって、cys、phe、pro、trp、及びtyrでもある。親水性アミノ酸は、arg、asn、asp、gln、glu、his、lys、ser及びthrである。
【0041】
2つの要素間の特異的結合は、少なくとも10、10、10、10又は1010−1の親和性を意味する。10−1より大きな親和性が好ましい。
【0042】
本発明の抗体に対する目的の標的には、成長因子受容体(例えば、FGFR、PDGFR、EGFR,NGFR及びVEGF)及びそれらのリガンドが含まれる。他の標的は、Gタンパク質受容体であり、サブスタンスK受容体、アンギオテンシン受容体、α及びβアドレナリン作動性受容体、セロトニン受容体及びPAF受容体が含まれる。例えば、「Gilman,Ann. Rev. Biochem. 56:625−649(1987)」を参照のこと。他の標的には、イオンチャンネル(例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウムチャンネル)、ムスカリン受容体、アセチルコリン受容体、GABA受容体、グルタミン酸受容体及びドーパミン受容体が含まれる(Harpold、5,401,629及び米国特許第5,436,128号参照)。他の標的は、インテグリン、セレクチン及び免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーなどの接着タンパク質である(Springer,Nature346:425−433(1990) Osborn,Cell 62:3(1990);Hynes,Cell 69:11(1992)を参照。)。他の標的は、インターロイキンIL−1〜IL−13、腫瘍壊死因子α&β、インターフェロンα、β及びγ、腫瘍成長因子β(TGFβ)、コロニー刺激因子(CSF)及び顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)などのサイトカインである。「Human Cytokines:Handbook for Basic & Clinical Research(Aggrawal et al.,eds.,Blackwell Scientific,Boston,MA 1991)」参照。他の標的は、ホルモン、酵素並びにアデニルシクラーゼ、グアニルシクラーゼ及びホスホリパーゼCなどの細胞内及び細胞間メッセンジャーである。興味深いその他の標的は、CD20及びCD33などの白血球抗原である。薬物も、興味深い標的であり得る。標的分子は、ヒト、哺乳動物又は細菌のものであり得る。他の標的は、微生物病原体(ウイルスと細菌の両方)及び腫瘍から得られるタンパク質、糖タンパク質及び炭水化物などの抗原である。さらに別の標的が、米国特許第4,366,241号に記載されている。
【0043】
1つ又はそれ以上の記載された要素を「含む」組成物又は方法は、具体的に記載されていない他の要素を含み得る。
【0044】
核酸が、別の核酸配列と、機能的な関係に置かれたときに、核酸は作用可能に連結されている。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写を増加させる場合に、プロモーター又はエンハンサーはコード配列に作用可能に連結されている。作用可能に連結されたとは、連結されているDNA配列が、典型的には、連続していることを意味し、2つのタンパク質コード領域を連結するために必要な場合には、連続的であり、及びリーディングフレーム中にあることを意味する。しかしながら、最大数キロ塩基又はそれ以上、プロモーターから隔たっている場合にも、エンハンサーは、一般的には、機能するので、幾つかのポリヌクレオチド要素は作用可能に連結され得るが、連続していなくてもよい。
【0045】
本明細書において使用される、グリカン種に対する「主に」という用語又は「主な」又は「主要である」などの変形語は、グリカン種が、質量分析法、例えば、MALDI−TOFMSによって分析された、糖タンパク質がPNGアーゼで処理された後の総N−グリカン及び放出されたグリカンの最高モルパーセント(%)を有することを意味する。換言すれば、あらゆる他の個別の構成要素より大きなモルパーセントで存在する、個別の構成要素(特異的な糖型など)は、「主要」である。例えば、組成物が、40モルパーセントの種A、35モルパーセントの種B及び25モルパーセントの種Cからなる場合には、組成物は主に種Aを含む。
【0046】
本発明の抗体は、典型的には、宿主細胞の可溶性タンパク質を含む望ましくない混入物から、実質的に純粋な形態で単離される。これは、抗体が、典型的には、少なくとも約50%w/w(重量/重量)純粋であることを意味する。時には、抗体は、少なくとも約80%w/wの純度であり、より好ましくは、少なくとも90又は約95%w/w純度である。慣用のタンパク質精製技術を用いて、少なくとも99%w/w純度の抗体を取得することが可能である。非還元条件下で、ゲル上で単一のバンドとして走行する場合、及び還元条件下で、成分免疫グロブリン重鎖及び軽鎖に対応する2つのバンドとして走行する場合、抗体は実質的な均一状態まで精製されている。
【0047】
本明細書で使用される下等真核宿主細胞は、通常、高マンノース含有N−グリカンを産生する全ての真核細胞を表し、従って、幾つかの動物又は植物細胞、及び多くの典型的な下等真核細胞(酵母及び糸状菌細胞を含む。)が含まれるものとする。
【0048】
本明細書において使用される「N−グリカン」という用語は、N結合型オリゴ糖(例えば、ポリペプチドのアスパラギン残基に、アスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合によって結合されているもの)を表す。N−グリカンは、ManGlcNAc(「Man」はマンノースを表し、「Glc」はグルコースを表し、「NAc」はN−アセチルを表し、GlcNAcは、N−アセチルグルコサミンを表す。)の共通の五糖コアを有する。N−グリカンは、ManGlcNAc(「Man3」)コア構造に付加された末端糖(例えば、フコース及びシアル酸)を含む分岐(触覚)の数が異なる。N−グリカンは、それらの分岐した構成要素(例えば、高マンノース複合体又はハイブリッド)に従って分類される。「高マンノース」種N−グリカンは、5又はそれ以上のマンノース残基を有する。「複合」型N−グリカンは、典型的には、1,3マンノースアームに結合された少なくとも1つのGlcNAc及び「トリマンノースコア」の1,6マンノースアームに結合された少なくとも1つのGlcNAcを有する。「トリマンノースコア」は、Man3構造を有する五糖コアである。複合N−グリカンは、シアル酸又は誘導体で場合によって修飾されたガラクトース(「Gal」)残基も有し得る(「NeuAc」(「Neu」はノイラミン酸を表し、「Ac」はアセチルを表す。)。)。複合N−グリカンは、「二股」GlcNAc及びコアフコース(「fuc」)を含む鎖内置換も有し得る。「ハイブリッド」グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端上に少なくとも1つのGlcNAc及びトリマンノースコアの1,6マンノース上にゼロ又はそれ以上のマンノースを有する。
【0049】
本発明中のスペーサーペプチドは、本発明の発現された融合タンパク質から軽鎖及び重鎖を切断するための1つ又はそれ以上のタンパク分解部位を含む。スペーサーペプチドは、ペプチドリンカーを含むことも可能である。リンカーの1つの機能は、本発明の融合タンパク質内に、軽鎖と重鎖の間に物理的空間と柔軟性を提供することである。場合によって、リンカーは、他の機能も有する。例えば、リンカーは、機能的な分泌されたタンパク質ドメインをコードすることが可能である。しかしながら、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖の何れかは、融合タンパク質がその中で発現されるべき宿主のタンパク質由来のペプチド配列と融合される必要はない。融合タンパク質のN末端におけるシグナル配列の存在は、以下に記載されているプロセッシング及び集合段階が起こるようにするために、融合タンパク質を適切な細胞位置に誘導するのに十分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
I.総説
本発明は、様々な細胞種中で、完全な状態の抗体を発現させるのに適した方法を提供する。本方法は、下等な真核生物中での発現に特に適しているが、本方法は、高等な真核生物及び細菌中でも実施することが可能である。本方法は、単一のプロモーターの制御下にある一本鎖抗体をコードする核酸を発現させることを含む。一本鎖抗体は、可変領域及び定常領域を含む免疫グロブリン軽鎖、スペーサーペプチド並びに可変領域及び定常領域を含む免疫グロブリン重鎖を含む。スペーサーペプチドは、少なくとも1つ、通常は、2つ又はそれ以上のタンパク分解切断部位を含む。本発明の実施は、機序の理解に依存しないが、融合タンパク質中での結合による、等モル比での重鎖及び軽鎖の発現は、下等真核生物及び細菌中で、完全な状態の抗体の集合を取得する上で以前に経験された困難を少なくとも部分的に克服すると考えられる。スペーサーペプチドは、抗体の集合の前、最中又は後に、タンパク分解切断によって除去され得る。いつ除去されるかに関わらず、スペーサーペプチドは、重鎖−軽鎖対又は四量体抗体の形成を妨げない。このような発現及びタンパク分解切断の最終産物は、重鎖及び軽鎖の少なくとも1つ、好ましくは2つの対を含み、並びにスペーサー残基の殆ど又は全てを欠如する抗体である。
【0051】
遺伝的に修飾された下等真核生物宿主細胞の選択によって、適切なグリコシル化を達成することも可能である。これらの遺伝的に修飾された宿主によって産生された抗体の重大な利点は、このような細胞から産生される抗体が1つの主要な糖型を有し、(フコースが宿主中に加工されていなければ)フコースを欠如することである。本方法は、従って、哺乳動物細胞培養の発現に内包される非効率と出費なしに、及びグリカン構造の均一性などの潜在的に有利なある種の特性を有して、哺乳動物細胞中で産生された抗体の形質と類似の、多くの所望される形質(機能及び治療活性など)を有する抗体組成物をもたらすことが可能である。
【0052】
II.一本鎖抗体の成分
本発明の抗体は、当初、幾つかの成分を有する融合タンパク質として発現される。前記成分は、少なくとも、N末端からC末端へと、シグナル配列、第一の免疫グロブリン鎖、スペーサーペプチド及び第二の免疫グロブリン鎖を含む。軽鎖又は重鎖の何れかを第一の鎖として指定し、他方は、任意の選択として、第二の鎖として指定することができる。シグナル配列は、細胞質から細胞小器官内へ、及び/又は細胞膜を横切る(生物による)までの経路に融合タンパク質を誘導する。原核生物では、シグナル配列は、細胞膜を横切って、その中で抗体が形成する周辺質へと、融合タンパク質を誘導する。真核生物では、シグナル配列は、細胞質から小胞体、ゴルジへと融合タンパク質を誘導し、通常、細胞からの分泌が続く。融合タンパク質が本経路に沿って移動するにつれ、融合タンパク質は、以下でさらに詳しく記載されている幾つかのタンパク分解性プロセッシング工程、グリコシル化及び折り畳み工程に供される。
【0053】
シグナル配列に連結されるのは、スペーサーペプチドによって隔てられた第一及び第二の免疫グロブリン鎖である。第一の免疫グロブリン鎖のN末端側に位置する単一のシグナル配列は、免疫グロブリン重鎖と軽鎖の両方を含む完全な融合タンパク質の細胞小器官標的誘導及び/又は分泌を誘導する役割を果たす。従って、スペーサーペプチドと第二の免疫グロブリン鎖の間に第二のシグナル配列を含めることは不要であり、望ましくない。
【0054】
軽鎖及び重鎖は何れも、可変領域及び定常領域を有する。可変領域は、好ましくは、完全な可変領域であり、又は、完全でなければ、可変領域は、少なくとも、合わせて、標的抗原への特異的な結合を付与するのに十分である。重鎖及び軽鎖定常領域は、重鎖及び軽鎖の安定な対(例えば、Fab断片)の形成を可能とするのに少なくとも十分である。好ましくは、軽鎖定常領域は、重鎖及び軽鎖の対の形成を可能にするのに十分であり、並びに重鎖定常領域は、分子間ジスルフィド及び重鎖と軽鎖の定常領域の非共有結合を介した軽鎖−重鎖対の形成及び重鎖と軽鎖の2つの対を含む四量体の形成を何れも可能とするのに十分である(前記2つの対は、各重鎖領域の非共有結合及びジスルフィド結合を通じて会合されている。)。好ましくは、重鎖及び軽鎖定常領域は何れも、完全長である。好ましくは、抗体は、補体固定又は抗体依存性細胞毒性などのエフェクター機能を有する四量体抗体である。エフェクター機能の性質は、イソタイプに依存する。例えば、ヒトイソタイプIgG1及びIgG3は補体活性を有するが、イソタイプIgG2及びIgG4は補体活性を有しない。
【0055】
通常、融合タンパク質のN末端におけるシグナル配列は何れも、分泌経路を通じたさらなるプロセッシングのために、融合タンパク質転写物(mRNA)をERに誘導する役割を果たす(すなわち、ゴルジを通じ、細胞外へ)。シグナル配列は、しばしば、抗体発現がその中で起こるべき細胞と同じ生物に由来する。しかしながら、このようなことは、必須ではない。使用することが可能なシグナル配列の例には、以下の分泌されるタンパク質:S.セレビシアエα接合因子プレ、アスペルギルスαアミラーゼ、アスペルギルスグルコアミラーゼ(GLA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、K.ラクティス(K.lactis)イヌリナーゼ(INU)、S.セレビシアエインベルターゼ(INV)、P.パストリス(P.pastoris)KAR2、S.セレビシアエキラートキシンプレ(KILM)、P.パストリスホスファターゼI(PHOI)、S.セレビシアエα接合因子プレプロ、P.パストリスα接合因子プレプロKR及びニワトリリゾチーム(ChicLys)のうち1つに由来するシグナル配列が含まれる。シグナル配列は、典型的には、細胞内プロセッシングの時点で、融合タンパク質転写物から切断される。
【0056】
免疫グロブリン重鎖及び軽鎖は、抗体のあらゆる種類から得ることが可能である。ポリクローナル抗体も組換え的に発現されることができるが(例えば、米国特許6,555,310号参照)、通常、抗体はモノクローナル抗体である。発現され得る抗体の例には、ネズミ又はマウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ベニア化(veneered)抗体及びヒト抗体が含まれる。キメラ抗体とは、その軽鎖及び重鎖遺伝子が、典型的には遺伝子工学によって、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから構築された抗体である(例えば、Boyce et al.,Annals of Oncology 14:520−535(2003)参照。)。例えば、マウスモノクローナル抗体から得られる遺伝子の可変(V)セグメントは、ヒト定常(C)セグメントに連結され得る。従って、典型的なキメラ抗体は、マウス抗体由来のV又は抗原結合ドメイン及びヒト抗体由来のC又はエフェクタードメインからなるハイブリッドタンパク質である。
【0057】
ヒト化抗体は、ヒト抗体(アクセプター抗体と名付けられる。)に実質的に由来する可変領域フレームワーク残基及びマウス抗体(ドナー免疫グロブリンと称される。)に実質的に由来する相補性決定領域を有する。「Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)」及びWO 90/07861、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,530,101号及びWinter,米国特許第5,225,539号を参照されたい。存在すれば、定常領域も、実質的に又は完全にヒト免疫グロブリンに由来する。抗体は、採取源のうち特に、慣用のハイブリドーマアプローチ、ファージディスプレイ(例えば、Dower et al.,WO 91/17271及びMcCafferty et al.,WO 92/01047参照)、ヒト免疫系を有するトランスジェニックマウスの使用(Lonberg et al.,WO93/12227(1993))によって取得することができる。免疫グロブリン鎖をコードする核酸は、ハイブリドーマ又は抗体産生細胞株から取得し、又は公表された文献中の免疫グロブリン核酸又はアミノ酸配列に基づいて取得することが可能である。
【0058】
軽鎖及び重鎖は、スペーサーペプチドによって隔てられる。ペプチドは、シグナル配列に連結された鎖のC末端を、他の鎖のN末端に連結する。スペーサーペプチドは、融合タンパク質とは別の分子であるプロテアーゼによって切断可能な、少なくとも1つ、好ましくは2つ又はそれ以上のタンパク分解切断部位を含有する。すなわち、本発明において、タンパク分解切断部位の切断は、分子内ではなく、分子間反応である。ペプチドスペーサーは、融合タンパク質、又は特にそのスペーサーペプチド成分によって実施される分子内自己触媒的機序によって切断可能な自己プロセッシング切断部位を欠如する。自己プロセッシング切断部位の例は、「de Felipe et al.,J.Biol.Chem.278,11441−11448(2003)」によって記載されている。このような自己切断可能部位は、細胞小器官標的誘導及び抗体集合などの他のプロセッシング工程が起こる前に、ペプチドスペーサーを未成熟に切断する。このような未成熟な切断の結果、少なくとも下等な真核生物では、同じシグナルペプチドは、両免疫グロブリン鎖を、さらなるタンパク分解プロセッシングのために、小胞体へと標的誘導することができない。
【0059】
ペプチドスペーサーが2つ又はそれ以上のタンパク分解切断部位を含有する場合には、タンパク分解部位は同一又は別異とすることができ、同一又は別異のプロテアーゼによって切断することが可能である。通常、ペプチドスペーサーが2つ又はそれ以上のタンパク分解切断部位を含有する場合には、全てが、同一のプロテアーゼによって切断される。しかしながら、ペプチドスペーサーが、異なるプロテアーゼによって切断される、2つ又はそれ以上のタンパク分解切断部位を含有する場合には、異なるプロテアーゼは、全て融合タンパク質とは別個の分子である。すなわち、タンパク分解切断部位は全て、自己切断タンパク分解切断部位でない。
【0060】
場合によって、スペーサーペプチドは、1つ又はそれ以上の直列のタンパク分解切断部位からなる。あるいは、スペーサーペプチドは、タンパク分解切断部位の対によって隣接されたリンカーからなることができる。タンパク分解部位での切断が、同じ融合タンパク質の成分から重鎖及び軽鎖を分離し、それらを別個の鎖として放出するように、タンパク分解部位が配置される。ペプチド結合によって連結されていないという意味で、鎖は隔てられている。しかしながら、鎖は、重鎖と軽鎖の間の分子間ジスルフィド結合及び非共有結合によって連結することが可能である。好ましくは、タンパク分解切断部位は、いかなる免疫グロブリン残基も切断せずに、スペーサーペプチドの殆ど又は全てから、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖を分離するように配置される。
【0061】
タンパク分解部位の選択は、1つには、宿主細胞の選択に依存する。幾つかの方法では、本部位は、所望の宿主細胞中に天然に存在するプロテアーゼによって切断される部位である。他の方法では、タンパク分解部位は、遺伝子工学によって、所望の宿主細胞中に導入されたプロテアーゼによって切断される。タンパク分解切断部位は、好ましくは、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖上に、同じ部位が存在しないように選択される。酵母宿主細胞に対する好ましいタンパク分解切断部位は、プロテアーゼKex2pである。本酵素は、アミノ酸対KRのC末端側を切断する。好ましくは、この対の前には、VLなどの1つ若しくは2つの疎水性残基又はRH若しくはKHなどの親水性残基がN末端側に先行する。場合によって、アルギニン残基もRLVにおけるように存在する。融合タンパク質に対する好ましい規格は、シグナル配列−軽鎖−LVKRリンカーRLVKR−重鎖である。Kex2p切断は、KR残基対の両方の後に生じる。別のプロテアーゼによる分解は、LVKR残基を除去し、分離された免疫グロブリン軽鎖及び重鎖を残し、介在するスペーサー残基を残さない。
【0062】
Kex2pの他に、他の公知の内在性酵母タンパク分解酵素には、何れもゴルジ後部中に位置するKex1P及びSte13p並びに液胞(リソゾーム)中に位置するBplIp、CPYp及びPep4pが含まれる。これらの酵素に対する切断配列は、以前に開示されている(JCB,1992,119:1459−1468;Yeast,1994,10:801−810;FEMS Microbiol.Lett,1995,130:221−229;Ann.Rev Genet.1984,18:233−270)。内在性Kex2pの発現が低い場合には、リンカー中のKex2p部位の一方又は両方の後へのEAEAの付加は(例えば、LVKREAEA)、Kex2p及び/又はSte13pによる切断を改善する。EAEAの付加は、第二のKex2p部位後に特に有用である。場合によって、S.セレビシアエ又はP.パストリス由来のKex2pは、切断を改善するために、誘導性プロモーターの調節下で、宿主細胞中において過剰発現される。
【0063】
哺乳動物宿主細胞中でのインビボ切断の場合、使用できるタンパク分解部位及び酵素には、第Xa因子、トロンビン、シグナルペプチダーゼI及びフリンが含まれ得る。これらのタンパク分解酵素は、本分野において周知である。
【0064】
タンパク分解切断部位以外では、スペーサーペプチドの組成は重要でない。スペーサーペプチドが、タンパク分解切断部位より多くからなり、及びリンカー、一本鎖抗体の発現に適した様々なリンカーを含有するのであれば、それらの設計のための原理は本分野において公知である(Huston et al,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 5879− 5883(1988);Bird et al.,Science 242,423−426(1988);米国特許第4,946,778号、米国特許第5,132,405号及び米国特許第5,482,858号、米国特許第5,258,498号)。一般に、リンカーは、同じ融合タンパク質の重鎖及び軽鎖の分子内会合又は異なる融合タンパク質上の重鎖及び軽鎖間の分子間会合を許容するのに十分な長さと柔軟性を有するべきである。グリシン及び/又はセリンは、特に、リンカー中に含めるのに適している。適切な長さは、約0から100アミノ酸の範囲である。15アミノ酸又はそれ以上の総スペーサーペプチド長(タンパク分解切断部位を含む。)は、重鎖及び軽鎖の分子内結合を好む。より短いスペーサーペプチド長は、分子間結合を好む。適切なリンカーの一例は、16回反復される4つのグリシン及び1つのセリンモチーフの後に、プロリン(P)及びC末端タンパク分解切断部位の直前に位置する5つのさらなるグリシン残基が続く[(GGGGS)16PGGGGG]。箱型の環構造を有するプロリンは、柔軟なグリシンリンカーに安定な蝶番様構造を与える。柔軟なリンカーの別の例は、gly、serの少なくとも3単位の反復[例えば、GSGSGS]である。さらなる代替として、スペーサーは、タンパク分解切断部位(例えば、5−30個のKex2部位)の鎖を直列に有することが可能である。
【0065】
上記成分の他に、ペプチドスペーサーは、分泌されたタンパク質ドメインを含むことが可能である。分泌されたタンパク質ドメインは、少なくとも2つの役割で機能することが可能である。第一に、分泌されたタンパク質ドメインは、下流鎖の分泌及び集合を増強及び/又は促進することが可能である。第二に、下等な真核生物宿主では、この分泌されたタンパク質ドメインは、O−グリコシル化酵素を飽和するために使用することにより、発現された重鎖及び軽鎖上に存在する非ヒトO−グリコシル化の程度を低減することが可能である。
【0066】
しかしながら、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖の何れかは、融合タンパク質がその中で発現されるべき宿主のタンパク質由来のペプチド配列と融合される必要はない。融合タンパク質のN末端におけるシグナル配列の存在は、以下に記載されているプロセッシング及び集合段階が起こるようにするために、融合タンパク質を適切な細胞位置に誘導するのに十分である。従って、例えば、シグナル配列は、介在するアミノ酸なしに、第一の免疫グロブリン鎖に直接融合させることが可能であり、スペーサーペプチドは、第二の免疫グロブリン鎖に直接融合させることが可能であり、スペーサーペプチド自体は、宿主タンパク質由来のペプチド配列を一切含まないことができる。
【0067】
融合タンパク質の場合によって使用されるさらなる成分は、融合タンパク質又は融合タンパク質のプロセッシングによって生じる融合タンパク質又は抗体の同定又は精製を補助するためのペプチドタグである。このようなタグは、スペーサーペプチド内の、若しくはスペーサーペプチドの一方端に連結された第一の免疫グロブリン鎖のN末端又は第二の免疫グロブリン鎖のC末端に配置することが可能である。タグの例は、FLAGTM系(Kodak)である。FLAGTM分子タグは、標的結合部分に連結された8アミノ酸FLAGペプチドマーカーからなる。FLAGペプチドマーカーとの使用に適した抗体。別の例は、金属キレートリガンドによって結合されることが可能なポリヒスチジンタグ(Hochuli in Genetic Engineering:Principles and Methods(ed. JK Setlow,Plenum Press,NY),Ch. 18,pp.87−96参照)及びマルトース結合タンパク質(Maina,et at,Gene 74:365−373(1988))である。幾つかの他のペプチドタグが公知であり、容易に入手可能である。
【0068】
III.融合タンパク質をコードする核酸
上記融合タンパク質は、核酸によってコードされる。核酸は、DNA又はRNA、好ましくはDNAであり得る。融合タンパク質をコードする核酸は、融合タンパク質の発現を可能とする制御配列へ、作用可能に連結されている。このような制御配列には、融合タンパク質をコードする核酸に対して上流又は5’に位置するプロモーター及び場合によって使用されるエンハンサー並びに融合タンパク質をコードする核酸から3’又は下流に位置する転写終結部位が含まれる。核酸は、典型的には、リボソーム結合部位を有する5’UTR及び3’非翻訳領域もコードする。核酸は、しばしば、抗体がその中で発現される細胞中で複製可能なベクターの成分である。ベクターは、形質転換された細胞の認識を可能とするためにマーカーを含有することもできる。しかしながら、幾つかの細胞種、特に酵母は、外来ベクター配列を欠く核酸で首尾よく形質転換することが可能である。
【0069】
免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードする核酸は、幾つかの採取源から取得することが可能である。cDNA配列は、保存された領域に対するプライマーを用いて、抗体を発現するハイブリドーマ又は他の細胞株から増幅することが可能である(例えば、Marks et al.,J. Mot Biol.581−596(1991)参照。)。核酸は、科学文献中の配列に基づいて、新規に合成することも可能である。所望の配列を包含する、重複するオリゴヌクレオチドの伸長によって、核酸を合成することも可能である(例えば、Caldas et al.,Protein Engineering,13,353−360(2000)参照)。
【0070】
IV.宿主細胞
下等真核生物は、経済的に培養し、高い収率を与えることができ、適切に修飾した場合には、適切なグリコシル化を行うことができるので、抗体の発現のために好ましい。酵母及び糸状菌は、特に、確立された遺伝学を提供し、迅速な形質転換、検査されたタンパク質局在化戦略及び容易な遺伝子ノックアウト技術を可能にする。適切なベクターは、所望に応じて、プロモーターなどの発現調節配列(3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他の解糖系酵素を含む。)、及び複製起点、終結配列などを有する。ベクターは、本発明の融合タンパク質をコードする核酸に隣接するセグメント(このセグメントは、宿主染色体の選択された領域と組み換えることができる。)を含むことも可能であり、これにより、発現を好む染色体位置へと核酸を標的誘導する。
【0071】
ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・ミニュータ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピチア・オプンチアエ(Pichia opuntiae)、ピチア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピチア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの様々な酵母は、高い細胞密度まで増殖し、組換えタンパク質の大量を分泌することが可能であるので、これらは、細胞培養のために好ましい。同様に、本発明のグリコシル化された抗体を産業規模で製造するために、アスペルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)及びニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)などの糸状菌(例えば、米国特許5,364,770号、EP214,914号及びWO90/15860号)などの糸状真菌及びその他を使用することが可能である。
【0072】
下等な真核生物、特に酵母及び糸状菌は、グリコシル化パターンがヒト様又はヒト化されている抗体(又はその他のタンパク質)を発現するように、遺伝的に修飾することが可能である。このようなことは、Gerngross et al.,US 20040018590;Hamilton et al.,2003,Science,301 :1244−1246)によって記載されているように、特定の内在性グリコシル化酵素を除去し、及び/又は外在性酵素を供給することによって達成することが可能である。例えば、宿主細胞は、本来、糖タンパク質上のN−グリカン上にマンノース残基を付加するα−1,6−マンノシル転位酵素活性が枯渇されるように選択し、又は操作することが可能である。
【0073】
このような宿主細胞は、これに加えて又はこれに代えて、インビボで、複合炭水化物構造(及びその合成中間体)の産生を可能とする1つ又はそれ以上の酵素を発現するように操作することが可能である。このような酵素は、例えば、酵素に本来伴っていないシグナルペプチドを用いて、酵素がその中で最適な活性を有する宿主細胞内小器官へと標的誘導されることが可能である。このような宿主細胞は、糖ヌクレオチド輸送体及び/又はヌクレオチドジホスファターゼ酵素を発現するように修飾することも可能である。輸送体及びジホスファターゼ酵素は、適切な区画中にグリコシル化酵素に対する適切な基質を提供することにより、競合産物阻害を減少することにより、及びヌクレオチド二リン酸の除去を促進することにより、操作されたグリコシル化工程の効率を改善する。
【0074】
これらの操作された宿主細胞の別の利点は、フコースが特異的に操作されていなければフコースを欠如する主に1つの糖型構造を有する抗体組成物を産生するためにそれらを使用できることである。他の糖タンパク質におけるグリコシル化の役割と同様に、抗体のオリゴ糖側鎖はこの糖タンパク質の機能に影響を与える。例えば、減少したフコシル化されたN結合型グリカンを有する抗体組成物は、ヒトFcγRIIIへの結合を増大させ、従って、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を増大させることが示されている(Shields et al,2002,J Biol Chem,277:26733−26740;Shinkawa et al,2003,J. Biol. Chem. 278:3466−3473)。CHO細胞中で作製された、フコシル化されたG2(GalGlcNAcManGlcNAc)IgGの均一な形態は、不均一な抗体より大きな程度まで、CDC活性を増加させる(Raju,2004,米国特許出願第2004/0136986号)。
【0075】
適切に操作された下等真核生物の宿主細胞中での本発明の方法の実施は、主に均一な糖型をもたらす。すなわち、このような細胞によって産生された抗体は、対応するN−グリコシル化部位に主なN−グリカン構造を有する。さらに、本発明に開示されている酵母及び糸状菌宿主中で産生されたグリカンは、天然には、フコースを欠如する。従って、本発明の操作された宿主細胞は、主に1つの糖型構造の複合N−グリカンを有し、(フコースが特異的に操作されていなければ)フコースを欠如する抗体を産生することが可能である。一実施形態において、本発明は、主に1つのグリカン構造を含む、本発明の方法によって作製された抗体組成物を提供し、ここにおいて、主なグリカン構造は、抗体組成物の次に主要なグリカン構造より少なくとも約5モルパーセント多いレベルで存在する。
【0076】
別の実施形態において、本発明は、主に1つのグリカン構造を含む、本発明の方法によって作製された抗体組成物を提供し、ここにおいて、主なグリカン構造は、抗体組成物の次に主要なグリカン構造より少なくとも約10〜25モルパーセント多いレベルで存在する。
【0077】
別の実施形態において、本発明は、主に1つのグリカン構造を含む、本発明の方法によって作製された抗体組成物を提供し、ここにおいて、主なグリカン構造は、抗体組成物の次に主要なグリカン構造より少なくとも約25〜50モルパーセント多いレベルで存在する。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、主に1つのグリカン構造を含む、本発明の方法によって作製された抗体組成物を提供し、ここにおいて、主なグリカン構造は、抗体組成物の次に主要なグリカン構造より少なくとも約50モルパーセント多いレベルで存在する。
【0079】
抗体を発現するために使用することが可能な原核生物宿主には、E.コリ、バチルス・ズブチリスなどの桿菌並びにサルモネラ、セラチア及び様々なシュードモナス種などの他の腸内細菌科が含まれる。原核生物は、培養の容易さの観点で、下等な真核生物の利点の幾つかを有するが、適切なグリコシル化を実施することはできない。原核生物宿主では、発現ベクターを作製することも可能であり、これは、典型的には、宿主細胞と適合性のある発現調節配列(例えば、複製起点)を含有する。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系又はλファージ由来のプロモーター系など、周知の様々なプロモーターが存在する。プロモーターは、典型的には、場合によってオペレーター配列とともに、発現を制御し、並びに転写及び翻訳を開始及び完了するために、リボソーム結合部位配列などを有する。
【0080】
植物及び植物細胞培養物は、本発明の抗体を発現するために使用し得る。(Larrick & Fry,Hum Antibodies Hybridomas 2(4):172−89(1991);Benvenuto et al.,Plant Mol.Biol.17(4):865−74(1991);Durin et al.,Plant Mol.Biol.15(2):281−93(1990);Hiatt et al.,Nature 342:76−8(1989))。好ましい植物宿主には、例えば、アラビドプシス(Arabidopsis)、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ・ラスティカ(Nicotiana rustica)及びソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum)が含まれる。
【0081】
典型的には、バキュロウイルスをベースとした発現系を用いて、本発明の抗体を作製するために昆虫細胞培養物を使用することも可能である(Putlitz et al.,Bio/Technology 8:651−654(1990)参照)。
【0082】
下等真核生物及び原核生物ほど培養が経済的ではないが、哺乳動物の組織細胞も、本発明のポリペプチドを発現及び産生するために使用することが可能である(Winnacker,From Genes to Clones(VCH Publishers,NY,1987参照。)。適切な宿主には、CHO細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株など、又は形質転換されたB細胞若しくはハイブリドーマが含まれる。これらの細胞に対する発現ベクターは、複製起点、1つ又はそれ以上のプロモーター、1つ又はそれ以上のエンハンサー(Queen et al.,Immunol.Rev.89:49−68(1986))などの発現調節配列、及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位及び転写終結因子配列などの必要なプロセッシング情報部位を含むことが可能である。発現調節配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターであり得る。好ましいプロモーターは、恒常性又は誘導性であり得る。一般的には、neoR発現カセットなどの選択可能なマーカーが発現ベクター中に含められる。
【0083】
発現されるべき免疫グロブリン鎖をコードする核酸は、細胞宿主の種類に応じて異なる慣用の方法によって宿主細胞中に導入することが可能である。例えば、塩化カルシウム形質移入は原核細胞に対して一般に使用されるのに対して、リン酸カルシウム処理、プロトプラスト融合、天然の増殖、リポフェクション、粒子衝撃、ウイルスベースの形質導入又は電気穿孔を、他の細胞宿主に対して使用することが可能である。植物細胞及び組織に対しては、タングステン粒子衝撃遺伝子組み換えが好ましい。(一般的には、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,1982)を参照、あらゆる目的のために、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。)好ましくは、核酸は、エピスームとして、又は宿主細胞のゲノム中に組み込まれて、宿主細胞中に安定に維持される。
【0084】
一旦発現されると、本発明の抗体は、硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などの、本分野の標準的な手法に従って精製することが可能である(一般的には、Scopes,R.,Protein Purification(Springer− Verlag,N. Y.,1982)を参照、あらゆる目的のために、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。)。医薬に使用するためには、少なくとも約90〜95%の均一状態の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98〜99%又はそれ以上の均一状態が最も好ましい。部分的に、又は所望の均一状態まで一旦精製されると、次いで、ポリペプチドは治療的に使用されるか(体外での使用を含む。)、又はアッセイ操作、免疫蛍光染色などの開発及び実行において使用することが可能である。(一般的には、Immunological Methods,Vols. I and II(Lefkovits and Pernis,eds.,Academic Press,NY,1979 and 1981)を参照。)
【0085】
V.抗体発現、プロセッシング、集合及び分泌
シグナル配列、免疫グロブリン軽鎖、スペーサーペプチド及び免疫グロブリン重鎖を含む融合タンパク質をコードする核酸は、当初、融合タンパク質として発現される。次いで、融合タンパク質は、鎖が分子内会合ではなく分子間会合された、重鎖と軽鎖の対を含む抗体を産生する一連のプロセッシング及び折り畳み現象に供される。これらの現象には、細胞小器官への融合タンパク質の標的誘導及び/又はシグナル配列によって媒介される宿主からの分泌、シグナル配列のプロセッシング、ヘテロ二量体の対を形成するための免疫グロブリン重鎖と軽鎖の分子内又は分子間会合、四量体を形成するための2つのヘテロ二量体の対合、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、及び重鎖と軽鎖がもはや同じペプチド鎖の成分でないようにする、スペーサー中のタンパク分解部位の切断が含まれ得る。これらの現象の順序及び正確な性質は、培養条件、構築物の性質、シグナル配列、スペーサーペプチド及び宿主細胞に応じて変動し得る。機序の理解は、本発明の実施に必要でない。
【0086】
図2は、融合タンパク質の翻訳後修飾の1つの可能な配列における中間体を示している。図は、2つの融合タンパク質の会合によって形成された四量体抗体を示している。各融合タンパク質において、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖は、軽鎖及び重鎖可変領域間の非共有結合及び定常領域間のジスルフィド結合によって分子内会合される。2つの融合タンパク質は、各重鎖のFc領域間の非共有相互作用及びジスルフィド相互作用によって一緒に保たれる。重鎖定常領域の残基Asn297は、両融合タンパク質においてグリコシル化されている。図3は、スペーサーペプチド中のタンパク分解部位の切断後における同じ抗体を示している。四量体抗体の立体構造は、同じ融合タンパク質の一部であり、分子間会合されている重鎖及び軽鎖が、この段階では、別個の鎖であり、及び分子間会合されていることを除き不変である。抗体に結合されたまま残存しているスペーサーペプチドが存在している場合、その長さは、スペーサーペプチド中の切断部位の位置及び何れかの残存スペーサーペプチドを分解する上での何れかのエキソぺプチダーゼの作用に依存する。Kex2p部位LVKR及びRLVKRによって隣接されたリンカーは、R残基後に、Kex2P切断によって除去sれ、その後のエキソプロテアーゼ活性は、第一の(N末端)タンパク分解切断からLVKRを除去して、スペーサーペプチド残基を欠如する実質的に均一な抗体産物を与える。抗体産物に不均一性が存在する限り、抗体の望ましい形態は、インビトロで行われるさらなる切断、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)及び陽イオン交換クロマトグラフィーによって、他の切断産物から分離され得る(実施例3参照)。
【0087】
タンパク分解部位の切断はインビボで好ましく生じるが、インビトロで実施することも可能である。抗体は、宿主細胞から分泌又はその他の方法で放出され、タンパク分解部位を切断することが知られたプロテアーゼで処理される。幾つかのタンパク分解部位を使用することが可能である。宿主細胞中で見られるものに加え、融合タンパク質構築物中に他のタンパク分解部位を導入することが可能である。これらの部位は、インビトロ切断のために、タンパク分解酵素を宿主細胞中に導入することによって、又は切断されていない融合タンパク質を発現及び精製し、インビトロ反応においてリンカー領域を切断することによって切断することが可能である。インビトロ切断反応において使用するために、インビボで機能することが開示されている全てのタンパク分解酵素を精製又は購入することが可能である。
【0088】
インビトロでのKex2p切断のために、Kex2pをまず精製し(PNAS,1992,89:922−926)、次いで、Kex2p及びプロテインA精製された切断されていない抗体(例X)の両方を、記載のとおり(JBC,1995,270:3154−3159)、温置する。このインビトロ切断の後には、Kex2pタンパク質から重鎖及び軽鎖を単離するための第二のプロテインAクロマトグラフィーが続く。
【0089】
通常、シグナル配列は、シグナル配列に融合されたタンパク質を宿主細胞から分泌される。分泌が起こらない場合には、抗体は、誘導された溶解によって宿主細胞から放出され得る。溶解は、数ある方法のうち、とりわけ、音波処理、凍結融解の繰り返し又はリゾチームでの処理によって誘導することが可能である。
【0090】
VII.変形
上述のとおり、スペーサーペプチド中のタンパク分解部位を切断するために必要なプロテアーゼは、細胞中に天然に存在するか、細胞へ外来的に供給されるか、又はインビトロで提供されることが可能である。変形では、適切なシグナルペプチドの選択によって、プロテアーゼは、分泌経路中の細胞小器官へ標的誘導される。このような標的誘導は、プロテアーゼに連結されたシグナルペプチドの選択によって達成することが可能である。このような標的誘導は、宿主細胞とともに自然に見出されるプロテアーゼ(例えば、酵母細胞中のKex2p)又は外来的に供給されるプロテアーゼの両方に対して使用することが可能である。標的誘導は、他のプロセッシング工程に対してタンパク分解切断が生じるタイミングに影響を与える。例えば、分泌経路の初期細胞小器官にプロテアーゼが標的誘導される場合、タンパク分解プロセッシングは、融合タンパク質の折り畳みより初期に生じる。このような状況では、タンパク分解プロセッシングは、完全である可能性がより高い。例えば、天然の酵母細胞では、多くのKex2pプロセッシングがゴルジ後部において起こる。融合タンパク質がゴルジ後部に達する時点までに、抗体集合は実質的完了する。ER標的誘導ペプチドに連結されたさらなるKex2pを発現させることによって、Kex2pは、小胞体中で発現される。この場合には、実質的な抗体折り畳みが起こる前に、タンパク分解切断部位がプロセッシングされ、より効率的な切断をもたらす。
【0091】
本発明の方法によって産生された抗体の収率は、好ましくは少なくとも50mg/L培地、より好ましくは少なくとも100mg/L、500mg/L、1g/L又は2g/L培地である。
【0092】
VIII.医薬組成物
本発明の抗体は、活性治療剤としての抗体と、及び医薬として許容される他の様々な成分とを含む医薬組成物中に取り込ませることが可能である。「Remington’s Pharmaceutical Science(15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,1980)」を参照されたい。好ましい形態は、予定される投与の様式及び治療用途に依存する。組成物は、所望される製剤に応じて、医薬として許容される無毒の担体又は希釈剤(動物又はヒトに投与するための医薬組成物を調合するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される。)も含むことが可能である。希釈剤は、組み合わせの生物活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理的リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液及びハンクの溶液である。さらに、医薬組成物又は製剤は、他の担体、アジュバント、又は無毒、非治療的、非免疫原性安定化剤なども含むことが可能である。
【0093】
非経口投与用医薬組成物は、無菌であり、実質的に等張であり、発熱物質を含まず、FDA又は類似機関のGMPに従って調製される。抗体は、水、油、生理的食塩水、グリセロール又はエタノールなどの無菌の液体であり得る医薬担体とともに、生理的に許容される希釈剤中で、物質の溶液又は懸濁液の注射可能な投薬として投与することが可能である。さらに、湿潤剤又は乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などの補助物質が、組成物中に存在することも可能である。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物又は合成起源の成分、例えば、落花生油、大豆油及び鉱物油である。一般的に、プロピレングリオール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射可能溶液に対して好ましい液体担体である。抗体は、活性成分の持続的放出を可能とする様式で調合することが可能なデポ注射又はインプラント調製物の形態で投与することも可能である。典型的には、組成物は、注射可能剤として(液体溶液又は懸濁液の何れかとして、)調製される。注射前に液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に適した固体形態も調製することが可能である。調製物は、上記のように、はポリラクチド、ポリグリコリドなどのリポソーム若しくは微粒子中に、又は増強したアジュバント効果のための共重合体中に乳化又は封入することも可能である(Langer,Science 249,1527(1990) and Hanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28,97−119(1997)参照)。
【0094】
IX.診断用製品
本発明の抗体は、アレイなどの様々な診断キット及びその他の診断用製品中に取り込ませることも可能である。抗体は、しばしば、マイクロタイター皿のウェルなどの固相に予め結合されて提供される。キットは、しばしば、抗体結合を検出するための試薬及びキットの使用について指示を与えるラベルも含む。免疫計測的又はサンドイッチアッセイは、診断キットに対して好ましい規格である(米国特許第4,376,110号、同第4,486,530号、同第5,914,241号及び同第5,965,375号を参照。)。抗体アレイは、例えば、米国特許第5,922,615号、同第5,458,852号、同第6,019,944号及び同第6,143,576号によって記載されている。
【実施例】
【0095】
1.融合タンパク質及び融合タンパク質をコードする核酸の設計
抗体抗DXを発現するための融合タンパク質を、以下のように設計した。
【0096】
【化1】

αアミラーゼシグナル配列は、斜字体で示されている。成熟した軽鎖と重鎖間のスペーサーペプチドは、下線で示されている。シグナル配列をコードするDNA配列は、以下のとおりである。
【0097】
【化2】

【0098】
リンカーをコードするDNA配列は、以下のとおりである。
【0099】
【化3】

【0100】
抗DX抗体の軽鎖の可変領域をコードするDNAは、PCRオーバーラップによって合成され、第一の免疫グロブリン鎖の上流にMly1部位を付加した。IgG1の軽鎖定常領域をコードするDNAは、GeneArt Incから注文した。完全な軽鎖をコードするDNAは、PCRオーバーラップ伸長によって調製され、pCR2.1トポベクターをクローニングした。完全な軽鎖は、5’末端にMly1部位及び停止コドンの3’にNot1部位を有していた。完全な軽鎖をコードするDNAは、αアミラーゼシグナル配列をコードするDNAとともに、pPICZAベクター中に連結された。αアミラーゼシグナル配列は、重複するオリゴヌクレオチドから合成された。シグナル配列は、ATGの前にKozak配列を有し、5’末端にEcoR1部位も有する。pPICZAは、EcoR1及びNot1によって消化された。αアミラーゼシグナル配列は、平滑末端化された5’及び3’末端に突出するEcoR1部位を有する。軽断片は、pCR2.1トポベクターから、Mly1及びNot1によって消化され、これら3つの片を一緒に連結した。得られたプラスミドは、pDX398である。
【0101】
抗DX抗体の重鎖及び軽鎖可変領域をコードするDNAは、重複するオリゴヌクレオチドを用いて合成された。IgG1の重鎖定常領域をコードするDNAは、GeneArt Incから注文した。次いで、オーバーラップPCRによって、完全な状態の重鎖をコードするDNAを調製し、pCR2.1トポベクター中にクローニングして、プラスミドDX344を得た。
【0102】
ベクターpPICZAは、EcoR1及びNot1によって切断された。軽鎖定常領域の末端に位置するEcoR1及びSph1によって、αアミラーゼシグナル配列を含む軽鎖断片を消化した。重複するオリゴヌクレオチドによって、軽鎖定常領域の一部を含むリンカーを合成した(5’末端のオリゴヌクレオチドは1つのSph1部位を含有する。)。Mly1及びNot1によって、重鎖を有するプラスミドpCR2.1トポを消化し、アガロースゲルからバンドを回収した。4つの断片を連結して、図4に示されているベクターを得た。
【0103】
Pme1によってプラスミドpDX560を直鎖化し、幾つかのピチア・パストリス株、例えば、α1,6マンノシル転位酵素(Δoch1)(Choi et al.,2003,100:5022−5027)、マンノシルホスファート(Δpno1、Δmnn4b)(米国特許出願11/020808号)及びαマンノシダーゼ耐性2(Δamr2)遺伝子を欠如する背景で、α−マンノシダーゼI、II、N−アセチルグルコサミン転位酵素I、II及びガラクトシル転位酵素で形質転換された株YAS306中に形質転換された。(米国特許出願60/566736号及び60/620186号)。
【0104】
2.P.パストリス株−例えば、YAS306用の培養条件
1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mMリン酸カルシウム緩衝液(pH6.5)、1.34%酵母窒素塩基、4×10−5%ビオチン及び1%グリセロールからなる緩衝化されたグリセロール複合培地(BMGY)の10mL培養物を、プラスミドpDX560を含有するYAS306の新鮮なコロニーに播種し、2日間増殖させた。次いで、1Lフラスコ中の新鮮なBMGY100mL中に、培養物を1日間移した。次いで、この培養物を遠心し、BMMY(緩衝化された最小メタノール:1%グリセロールの代わりの0.5%メタノールを除き、BMGYと同一)で細胞ペレットを洗浄した。元のMBGY培養物の1/5容積まで、細胞ペレットをBMMY中に再懸濁し、1.5Lの発酵反応装置中に24時間配置した。遠心によってバイオマスを沈降させ、培地を新鮮なチューブに移すことによって、分泌されたタンパク質を採集した。分泌された抗体を含有する上清を、精製のために集めた。
【0105】
3.融合タンパク質の精製
Streamline ProteinAカラムを用いて、モノクローナル抗体を培養上清から捕捉した。Tris−グリシンpH3.5中に抗体を溶出し、1MTrispH8.0を用いて中和した。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いて、さらなる精製を実施した。HICカラムの具体的種類は、抗体に依存する。抗DX抗体の場合、20mMTris(7.0)、1M(NHSO緩衝液とともに、フェニルSepharoseカラムを使用し、1Mから0Mへの(NHSOの直線グラジエント緩衝液を用いて溶出した。フェニルSepharoseカラムから得られた抗体画分をプールし、陽イオン交換(SP Sepharose Fast Flow)(GE Healthcare)カラムを通じた最終精製のために、50mMNaOAc/TrispH5.2緩衝液中に交換した。50mMTris、1MNaCl(pH7.0)を用いて、直線グラジエントで抗体を溶出した。
【0106】
図5は、重鎖及び軽鎖の四量体集合物について予測されるとおり、約150kDaで移動する重鎖及び軽鎖を示すCoomassieブルー非還元SDS−PAGEゲルである(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1998;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)。レーン1は、商業的に調製されたIgG対照を示し、レーン2は、別個のプロモーターによって、重鎖及び軽鎖の発現が駆動される組換え抗体産生のための伝統的方法を用いてP.パストリス中に産生されたDX−IgGを示し、レーン3は、本発明の単一プロモーター法によって、P.パストリス中に産生されたSC−DX−IgGを示す。
【0107】
Bio−Rad LaboratoriesからSDS−PAGE Tris−HClゲル(4〜20%グラジエント及び15%)を購入し、Bio−Rad Prestained SDS−PAGE Broad Range Molecular Weight Standardsから分子量マーカーを購入した。クマシーブルータンパク質株は、Bio−Radから購入した。
【0108】
公知の方法(Nature,227,680,1970)に従って、抗DX抗体20μgを産生し、上記例に開示されているとおりに精製し、分子量及び精製の程度を分析するためにSDS−PAGEに供した。図5に示されているように、分子量中の約150kDaの単一バンドが、非還元条件下で存在した。この分子量は、IgG抗体が、非還元条件下で約150kDaの分子量を有すること、並びに分子中のジスルフィド結合の切断のために、約50kDaの分子量を有する重鎖及び約25kDaの分子量を有する軽鎖に分解されることを述べる報告と合致する(Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1998;Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996)。
【0109】
4.抗原結合ELISAアッセイ
PBS、pH7.4中の抗原10μgで、高結合マイクロタイタープレート(Costar)を被覆し、4℃で一晩温置した。緩衝液を除去し、ブロッキング緩衝液(PBS中の3%BSA)を添加し、次いで、室温で1時間温置する。ブロッキング緩衝液を除去し、PBSで、プレートを3回洗浄した。最後の洗浄後、0.2ngから100ngまでの精製された抗体の漸増量を添加し、室温で1時間温置する。次いで、PBS+0.05%Tween20でプレートを洗浄する。最後の洗浄後、1:2000PBS溶液中に抗ヒトFc−HRPを添加し、次いで、室温で1時間温置する。次いで、PBS−Tween20で、プレートを4回洗浄する。製造業者の指示書(Pierce Biotechnology)に従って、TMB基質キットを用いてプレートを分析した。
【0110】
5.Fc受容体結合アッセイ
前記プロトコールに従って、FcγRI、FcγRII、FcγRIII及びFcγRnに対するFc受容体結合アッセイを実施した(JBC,2001,276:6591−6604)。FcγRIII結合の場合、PBS、pH7.4中1μg/mLのFcγRIII融合タンパク質を、4℃で48時間、ELISAプレート(Nalge−Nunc,Naperville,IL)上に被覆する。25℃で1時間、PBS中の3%ウシ血清アルブミン(BSA)でプレートをブロッキングした。25℃で1時間、抗DXIgG及びHRP抱合されたF(Ab’)2抗F(Ab’)2の2:1モル量を混合することによって、PBS中の1%BSA中に、抗DXIgG1二量体複合体を調製する。次いで、1%BSA/PBS中、1:2で、二量体複合体を系列希釈し、25℃で1時間、プレート上に被覆した。使用した基質は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)(Vector Laboratories)である。製造業者の指示書に従って(Vector Laboratories)、450nmの吸光度を読み取る。図6は、P.パストリス中で産生された、DXIgGとSCDXIgGの結合を比較する。
【0111】
6.ErB2/Fc抗原への抗体の結合
室温で2時間、PBS中、10μg/mLの組換えErbB2/Fc融合タンパク質(R&D Systems)の100μL/ウェルで、ELISAプレート(Coming Costar)を被覆した。上清を吸引し、PBS中の3%ウシ血清アルブミン(Sigma)の250μL/ウェルを添加し、1時間温置した。PBS中の1%BSA中に抗体を希釈し、ブロッキング溶液を吸引した後、100μL/ウェルを添加した。次いで、0.5%Tween−20を加えたPBSの250μL/ウェルで、プレートを3回洗浄した。HRP抱合された抗FAB抗体(Sigma)の100μL/ウェルを、PBS中の1%BSA中に1:1000希釈し、1時間温置した。上記のようにプレートを洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(Sigma)の100μL/ウェルを添加した。青い色を呈した時点で、1MH2SO4によって反応を停止し、450nmの吸収を読み取った。図7は、何れもP.パストリス中で産生された、DXIgGとSC−DXIgGを比較する。
【0112】
理解を明確にするために、先述の発明を詳しく説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記されている本発明の範囲内である種の修飾を実施し得ることは当業者に自明である。本明細書に引用されている全ての公報及び特許文献は、各々が個別に表記されているのと同じ程度まで、あらゆる目的のために、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。各実施形態の文脈から別段の意味であることが自明でなければ、本発明の特徴、態様、要素又は工程は、他の全ての実施形態、特徴、態様、要素又は工程と組み合わせて使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、転写及び翻訳制御配列の単一のセットに由来する単一の転写及び翻訳単位として表されている重鎖及び軽鎖を示している。
【図2】図2は、ペプチドスペーサーを有する集合された抗体を示している。
【図3】図3は、インビトロ又はインビボで切断されて、完全に集合された抗体を残存させるペプチドスペーサーを示している。
【図4】図4は、一本鎖抗体を発現するために使用された構築物を示している。
【図5】図5は、四量体抗体の発現を確認するゲルを示している。
【図6】図6は、FCγRIIIA−LVへの抗体二量体の結合を示している。
【図7】図7は、抗体の、その抗原への結合を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を作製する方法であり、N末端からC末端への順序で、(a)シグナル配列と、(b)可変領域及び定常領域を含む第一の免疫グロブリン鎖と、(c)融合タンパク質とは別個の分子であるプロテアーゼによって切断可能なタンパク分解切断部位を含むスペーサーペプチドと、並びに(d)可変領域及び定常領域を含む第二の免疫グロブリン鎖とを含む融合タンパク質をコードする核酸で形質転換された真菌細胞を培養することを含み;前記第一の免疫グロブリン鎖が軽鎖であり、及び前記第二の免疫グロブリン鎖が重鎖であり、又はこの逆であり;前記融合タンパク質が前記スペーサーペプチドと前記第二の免疫グロブリン鎖との間に第二のシグナル配列を含まず;並びに前記スペーサーペプチドが自己プロセッシング切断部位を欠如し、;
前記融合タンパク質が発現され、前記シグナル配列のC末端終末部で切断されてシグナル配列が除去され、及び前記プロテアーゼによって、前記スペーサーペプチド中の前記タンパク分解部位において切断され;並びに、
分子間会合された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の対を含む抗体が作製される、前記方法。
【請求項2】
抗体が、分子間会合された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の2つの対を含む四量体抗体である、請求項1の方法。
【請求項3】
第一の免疫グロブリン鎖が軽鎖であり、及び第二の免疫グロブリン鎖が重鎖である、請求項2の方法。
【請求項4】
第一の免疫グロブリン鎖が重鎖であり、及び第二の免疫グロブリン鎖が軽鎖である、請求項2の方法。
【請求項5】
融合タンパク質の軽鎖及び重鎖が、分子内結合によって互いに会合しており、並びに融合タンパク質の2つのコピーが、タンパク分解部位での切断が起こる前に、それらの各重鎖定常領域の分子間結合によって互いに会合している、請求項2の方法。
【請求項6】
タンパク分解部位における切断後に、分子間会合された重鎖及び軽鎖の対を形成するための免疫グロブリン重鎖と軽鎖の分子間会合と、並びに四量体抗体を形成するための分子間会合された重鎖と軽鎖の2つの対間での分子間会合とが続く、請求項2の方法。
【請求項7】
スペーサーペプチドが、第一及び第二のプロテアーゼによって切断可能な第一及び第二のタンパク分解切断部位を含み、両プロテアーゼは融合タンパク質とは別個の分子であり、第一及び第二のタンパク分解切断部位はペプチドリンカーによって隔てられており、並びに第一及び第二のプロテアーゼによるタンパク分解切断部位の切断が融合タンパク質からペプチドリンカーを除去する、請求項2の方法。
【請求項8】
第一及び第二のプロテアーゼが同一のプロテアーゼである、請求項7の方法。
【請求項9】
第一及び第二のタンパク分解部位の切断が細胞中で起こる、請求項8の方法。
【請求項10】
細胞が抗体を分泌する、請求項9の方法。
【請求項11】
細胞が、第一及び第二のタンパク分解部位を切断するプロテアーゼをコードする核酸で形質転換されている、請求項8の方法。
【請求項12】
核酸が、プロテアーゼに融合された第二のシグナル配列を含む第二の融合タンパク質をコードし、前記第二のシグナル配列がプロテアーゼの小胞体中への取り込みを引き起こす、請求項11の方法。
【請求項13】
融合タンパク質がシグナル配列なしに細胞から分泌され、及び前記方法が、分泌された融合タンパク質を、スペーサーペプチド中のタンパク分解部位を切断するプロテアーゼで処理することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項14】
細胞から、又はその中で細胞が培養されている培地から抗体を回収することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項15】
実質的な均一状態まで抗体を精製することをさらに含む、請求項14の方法。
【請求項16】
医薬組成物中において、抗体を医薬担体と組み合わせることをさらに含む、請求項15の方法。
【請求項17】
融合タンパク質をコードする核酸を細胞中に導入することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項18】
細胞が糸状菌細胞である、請求項1の方法。
【請求項19】
細胞が酵母細胞である、請求項1の方法。
【請求項20】
細胞が、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・ミニュータ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピチア・オプンチアエ(Pichia opuntiae)、ピチア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピチア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)及びニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)から得られる細胞からなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項21】
タンパク分解切断部位がKex2p部位である、請求項10の方法。
【請求項22】
タンパク分解切断部位がアミノ酸配列XXKR(Xは、任意のアミノ酸である。)を有する、請求項21の方法。
【請求項23】
タンパク分解切断部位がアミノ酸配列XXKRを有し、Xがmet、ala、val、leu、ile、cys、phe、pro、trp及びtyrからなる群から選択される疎水性アミノ酸であり、又はarg、asn、asp、gln、glu、his、lys、ser及びthrからなる群から選択される親水性アミノ酸である、請求項21の方法。
【請求項24】
スペーサーペプチドが、アミノ酸配列LVKRを有するN末端タンパク分解切断部位及びアミノ酸配列RLVKRを有するC末端タンパク分解切断部位を有する、請求項23の方法。
【請求項25】
抗体がスペーサーペプチドの全ての残基を欠如する、請求項24の方法。
【請求項26】
四量体抗体がエフェクター機能を有する、請求項2の方法。
【請求項27】
エフェクター機能が、補体固定又は抗体依存性細胞毒性である、請求項26の方法。
【請求項28】
免疫グロブリン軽鎖及び重鎖が、ヒト化された免疫グロブリン軽鎖及び重鎖である、請求項1の方法。
【請求項29】
抗体が、少なくとも50mg/リットル培地の収量で作製される、請求項1の方法。
【請求項30】
グリコシル化が、少なくとも位置Asn297に位置する、請求項1の方法。
【請求項31】
重鎖定常領域が、CH1、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含む、請求項1の方法。
【請求項32】
重鎖定常領域が、CH4領域をさらに含む、請求項31の方法。
【請求項33】
抗体を精製すること及び診断キット中に抗体を組み込むことをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項34】
融合タンパク質が、シグナル配列と第一の免疫グロブリン鎖の間に、又はペプチドスペーサーと第二の免疫グロブリン鎖の間に、宿主タンパク質からのペプチドセグメントを欠如する、請求項1の方法。
【請求項35】
N末端からC末端への順序で、(a)シグナル配列と、(b)可変領域及び定常領域を含む第一の免疫グロブリン鎖と、(c)融合タンパク質とは別個の分子であるプロテアーゼによって切断可能なタンパク分解切断部位を含むスペーサーペプチドと、並びに(d)可変領域及び定常領域を含む第二の免疫グロブリン鎖とを含み;前記第一の免疫グロブリン鎖が軽鎖であり、及び前記第二の免疫グロブリンが重鎖であり、又はこの逆であり;前記融合タンパク質が前記スペーサーペプチドと前記第二の免疫グロブリン鎖との間に第二のシグナル配列を含まず;並びに前記スペーサーペプチドが自己プロセッシング切断部位を欠如する融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項36】
制御配列に作用可能に連結された請求項34の核酸を含むベクター。
【請求項37】
請求項35の核酸で形質転換された細胞。
【請求項38】
請求項1の方法によって作製された抗体の分子の複数を含み、前記複数の各々が糖型を有し、並びに主要な糖型が複合型であり、及びフコースを欠如する、抗体組成物。
【請求項39】
主要なグリカン構造が、抗体組成物の次に主要なグリカン構造より少なくとも約10〜25モル%多いレベルで存在する、請求項38の組成物。
【請求項40】
請求項1の方法によって作製されたモノクローナル抗体。
【請求項41】
EGFR、CD20、CD33又はTNF−αに特異的に結合する請求項40のモノクローナル抗体。
【請求項42】
抗体を作製する方法であり、
シグナル配列と、可変領域及び定常領域を含む免疫グロブリン軽鎖と、第一及び第二のプロテアーゼ(同一又は別異であり得、何れも、融合タンパク質とは別個の分子である。)によって切断可能な第一及び第二のタンパク分解切断部位を含むスペーサーペプチドと、並びに可変領域及び定常領域を含む免疫グロブリン重鎖を含む融合タンパク質をコードする核酸で形質転換された細胞を培養することを含み、前記スペーサーペプチドが自己切断可能なタンパク分解部位を含まず;前記融合タンパク質が発現され、前記シグナル配列のC末端終末部で切断されてシグナル配列が除去され、及び前記第一及び第二のプロテアーゼによって、前記スペーサーペプチド中の前記第一及び第二のタンパク分解部位において切断され;並びに、分子間会合された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の対を含む抗体が作製される、前記方法。
【請求項43】
抗体が、分子間会合された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の2つの対を含む四量体抗体である、請求項42の方法。
【請求項44】
第一の免疫グロブリン鎖が軽鎖であり、及び第二の免疫グロブリン鎖が重鎖である、請求項42の方法。
【請求項45】
第一の免疫グロブリン鎖が重鎖であり、及び第二の免疫グロブリン鎖が軽鎖である、請求項42の方法。
【請求項46】
融合タンパク質の軽鎖及び重鎖が、分子内結合によって互いに会合しており、並びに融合タンパク質の2つのコピーが、タンパク分解部位での切断が起こる前に、それらの各重鎖定常領域の分子間結合によって互いに結合する、請求項42の方法。
【請求項47】
タンパク分解部位における切断後に、分子間会合された重鎖及び軽鎖の対を形成するための免疫グロブリン重鎖と軽鎖の分子間会合と、並びに四量体抗体を形成するための分子間会合された重鎖と軽鎖の2つの対間での分子間会合とが続く、請求項42の方法。
【請求項48】
スペーサーペプチドが、第一及び第二のプロテアーゼによって切断可能な第一及び第二のタンパク分解切断部位を含み、両プロテアーゼが融合タンパク質融合タンパク質とは別個の分子であり、第一及び第二のタンパク分解切断部位がペプチドリンカーによって隔てられており、並びに第一及び第二のプロテアーゼによるタンパク分解切断部位の切断が融合タンパク質からペプチドリンカーを除去する、請求項2の方法。
【請求項49】
第一及び第二のプロテアーゼが同一のプロテアーゼである、請求項48の方法。
【請求項50】
第一及び第二のタンパク分解部位の切断が細胞中で起こる、請求項49の方法。
【請求項51】
細胞が抗体を分泌する、請求項50の方法。
【請求項52】
細胞が、第一及び第二のタンパク分解部位を切断するプロテアーゼをコードする核酸で形質転換されている、請求項49の方法。
【請求項53】
核酸が、プロテアーゼに融合された第二のシグナル配列を含む第二の融合タンパク質をコードし、前記第二のシグナル配列がプロテアーゼの小胞体中への取り込みを引き起こす、請求項52の方法。
【請求項54】
融合タンパク質がシグナル配列なしに細胞から分泌され、及び前記方法が、分泌された融合タンパク質を、スペーサーペプチド中のタンパク分解部位を切断するプロテアーゼで処理することをさらに含む、請求項52の方法。
【請求項55】
細胞から、又はその中で細胞が培養されている培地から抗体を回収することをさらに含む、請求項52の方法。
【請求項56】
実質的な均一状態まで抗体を精製することをさらに含む、請求項55の方法。
【請求項57】
医薬組成物中において、抗体を医薬担体と組み合わせることをさらに含む、請求項56の方法。
【請求項58】
融合タンパク質をコードする核酸を細胞中に導入することをさらに含む、請求項42の方法。
【請求項59】
細胞が糸状菌細胞である、請求項42の方法。
【請求項60】
細胞が酵母細胞である、請求項42の方法。
【請求項61】
細胞が、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・ミニュータ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピチア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピチア・オプンチアエ(Pichia opuntiae)、ピチア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピチア・ピペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニドゥランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)及びニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)から得られる細胞からなる群から選択される、請求項42の方法。
【請求項62】
タンパク分解切断部位がKex2p部位である、請求項51の方法。
【請求項63】
タンパク分解切断部位がアミノ酸配列XXKR(Xは、任意のアミノ酸である。)を有する、請求項62の方法。
【請求項64】
タンパク分解切断部位がアミノ酸配列XXKRを有し、Xがmet、ala、val、leu、ile、cys、phe、pro、trp及びtyrからなる群から選択される疎水性アミノ酸であり、又はarg、asn、asp、gln、glu、his、lys、serからなる群から選択される親水性アミノ酸である、請求項62の方法。
【請求項65】
スペーサーペプチドが、アミノ酸配列LVKRを有するN末端タンパク分解切断部位及びアミノ酸配列RLVKRを有するC末端タンパク分解切断部位を有する、請求項64の方法。
【請求項66】
抗体がスペーサーペプチドの全ての残基を欠如する、請求項65の方法。
【請求項67】
四量体抗体がエフェクター機能を有する、請求項43の方法。
【請求項68】
エフェクター機能が、補体固定又は抗体依存性細胞毒性である、請求項67の方法。
【請求項69】
免疫グロブリン軽鎖及び重鎖が、ヒト化された免疫グロブリン軽鎖及び重鎖である、請求項42の方法。
【請求項70】
抗体が、少なくとも50mg/リットル培地の収量で作製される、請求項42の方法。
【請求項71】
グリコシル化が、少なくとも位置Asn297に位置する、請求項42の方法。
【請求項72】
重鎖定常領域が、CH1、ヒンジ、CH2及びCH3領域を含む、請求項42の方法。
【請求項73】
重鎖定常領域が、CH4領域をさらに含む、請求項72の方法。
【請求項74】
抗体を精製すること及び診断キット中に抗体を組み込むことをさらに含む、請求項42の方法。
【請求項75】
融合タンパク質が、シグナル配列と第一の免疫グロブリン鎖の間に、又はペプチドスペーサーと第二の免疫グロブリン鎖の間に、宿主タンパク質からのペプチドセグメントを欠如する、請求項42の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−538926(P2008−538926A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509153(P2008−509153)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/016166
【国際公開番号】WO2006/116657
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(503007287)グライコフィ, インコーポレイテッド (37)
【Fターム(参考)】