説明

切替バルブ構造

【課題】構造を小型化することができると共に、製造コストを削減することができる切替バルブ構造を提供する。
【解決手段】
ハウジング(31)と、前記ハウジング(31)に嵌挿される第1の排気管(41)、第2の排気管(42)及び第3の排気管(43)と、前記第1の排気管(41)及び第2の排気管(42)の少なくとも一方を閉塞する弁体(33)と、を備え、前記第1の排気管(41)及び第2の排気管(42)は、その端部が弁座(35)として形成されており、前記弁体(33)が閉成することにより、前記弁体(33)と前記弁座(35)とが密接することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの配管等に用いられる切替バルブ構造に関し、より詳細には、小型化が可能な切替バルブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される内燃機関の排熱を回収し、この熱エネルギーを他の用途(暖房や発電)に利用することにより、内燃機関の燃費効率を高めている。
【0003】
排熱の回収は、内燃機関の排気管の途中に排熱回収器を設け、この排熱回収器に冷却水等を流通させることにより行うことが一般的である。この場合、内燃機関の運転状態によっては、常に排熱回収器に冷却水を流通させることが適切でない場合がある。
【0004】
そこで、排気管の途中を分岐させ、この分岐された経路の一方に排熱回収器を備え、他方はバイパス経路とする。分岐された経路は、再び合流部において一つの排気管に合流され、その後大気へと排出される。この分岐部及び合流部の少なくとも一方に、切替バルブを備えて、排熱回収器への排ガスの流量を調節することが一般的である。
【0005】
このように、排ガス経路中の分岐部分の流量を調整する切替バルブの構造として、駆動軸により回転駆動される切替バルブにより、二つの通路にそれぞれ連結される第1及び第2開口部を交互に開閉する切替バルブ(特許文献1参照。)が開示されている。
【0006】
また、EGRガスクーラ及びバイパス配管の排気ガス流れの下流側に配置された排気ガス流量比調節弁を備えるEGRモジュール(特許文献2参照。)が開示されている。
【特許文献1】特開2002−174119号公報
【特許文献1】特開2007−9724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、排気管の経路を切り替える切替バルブ構造は、バルブと、バルブに当接するシール部分との加工精度によって、排ガスの分岐の流れに影響を与える。そのため、排熱回収器における熱の回収/非回収時の性能が大きく左右される。
【0008】
一方で、シール部分の加工は、切替バルブ構造の排気管接合部分の開口部から工具を挿入することにより行う。または、シール部分の形状によっては、ハウジングを分割して開口を大きくとり、シール部の加工を行う。そのため、ハウジングが大型化するほか、ハウジングを分割する場合には、部品点数や製造工数が増加する。
【0009】
特に、排気管は、エンジンルームや床下など狭小な部分に配置されることが一般的であり、スペース効率や燃費の向上のため、切替バルブ構造の小型化が望まれている。
【0010】
本発明はこのような問題点を鑑みてなされたものであり、構造を小型化することができると共に、製造コストを削減することができる切替バルブ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、内燃機関の排ガスの通路を分岐する切替バルブ構造であって、ハウジングと、前記ハウジングに嵌挿される第1の排気管、第2の排気管及び第3の排気管と、前記ハウジングに内装され、前記第1の排気管及び第2の排気管の少なくとも一方を閉塞する弁体と、を備え、前記第1の排気管及び第2の排気管は、その端部が弁座として形成されており、前記弁体が閉成することにより、前記弁体と前記弁座とが密接することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の切替バルブ構造において、前記第1の排気管及び第2の排気管は、その端部が予め弁座として形成され、前記ハウジングに所定の差し込み長で嵌挿された後、固定されることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の切替バルブ構造において、前記弁体は、回転軸に軸支されており、前記回転軸を中心として回動可能に構成され、前記第1の排気管又は第2の排気管の差し込み長に対応して、前記弁体の作動角度が変更されることを可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によると、第1の排気管及び第2の排気管は、その端部が弁座として形成されているので、ハウジング側に弁座を加工する必要がなく、部品点数を削減でき、切替バルブ構造を小型化できると共に、製造コストを低減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によると、第1の排気管及び第2の排気管の端部に弁座を加工し、所定の差し込み深さまで嵌挿するので、フランジ加工やボルト止め等を施す必要がなく、加工コスト及び組立てコストを低減することができる。
【0016】
請求項3の発明によると、第1の排気管又は第2の排気管の差し込み長に対応して、前記弁体の作動角度が変更されるので、排気管側の加工のみで容易に設計変更が行える。またさらに、弁体の作動角度を小さくすることにより、弁体を作動するアクチュエータを小型化することができ、切替バルブ構造を小型化できると共に、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態のエンジン10を中心とした駆動システムの説明図である。
【0019】
本実施形態の駆動システムは、車両に搭載されたエンジン10により車両を駆動させる。
【0020】
内燃機関としてのエンジン10は、空気と気化された化石燃料とによる混合燃料を爆発燃焼させることにより回転駆動力を得る。爆発燃焼後の排ガスは、マニホルド12、排気管20等を経て、大気へと排出される。
【0021】
エンジン10は、エンジン10を適切な温度に保つための冷却水系統100が備えられる。冷却水系統100は、ラジエタ11、ヒータ13、ウォーターポンプ101、サーモスタット102が備えられる。
【0022】
ウォーターポンプ101により冷却水系統100内を循環させられる冷却水は、ラジエタ11において熱交換を行うことで適切に冷却され、エンジン10を適切な温度に保つ。サーモスタット102は、冷却水温度が所定温度以下の場合に閉成し、ラジエタ11をバイパスさせることにより、エンジンの暖機を促進する。ヒータ13は、冷却水の余熱を用いて、車室内を暖房する。
【0023】
排気管20は、マニホルド12、触媒21、分岐部22、分岐管23、排熱回収器24、合流部25、バイパス管26、消音器27及びテールパイプ28により構成される。
【0024】
エンジン10から排出される排ガスは、マニホルド12を経て、触媒21により浄化される。分岐部22は、排ガスを分岐管23に送るか、バイパス管26に送るかを切り替える切替バルブ構造30を備える。この切替バルブ構造30の詳細は後述する。
【0025】
分岐管23は排熱回収器24が備えられる。排熱回収器24は、導入される媒体と排ガスとで熱交換を行うことによって、媒体の温度を上昇させる。
【0026】
排熱回収器24は、通常、エンジン10の冷却水系統100に接続され、媒体としての冷却水温度を上昇させる。なお、排熱回収器24には、冷却水系統100とは別の経路を接続してもよい。また、媒体は冷却水に限られず、例えば、フロン類や二酸化炭素等を用いてもよい。
【0027】
バイパス管26は、排ガスを排熱回収器24に流通させない場合に、排ガスの流通経路となる。排ガスを排熱回収器24に流通させるか、バイパス管26を経由させるかは、エンジン10の運転状態や媒体である冷却水の温度等によって決定される。
【0028】
排熱回収器24又はバイパス管26を通過した排ガスは、合流部25を経由して消音器27で消音させられた後、テールパイプ28から排出される。
【0029】
なお、分岐部22ではなく、合流部25に、切替バルブ構造30を備えてもよい。
【0030】
このように構成することにより、本実施形の駆動システムは、エンジン10のから排出される排熱を、冷却水等の媒体により回収することができる。回収された熱エネルギーは、他の用途(例えば、暖房や、熱エネルギーを運動エネルギーに変換することによる発電等)に用いることができる。
【0031】
次に、切替バルブ構造30について説明する。
【0032】
図2は、本発明の実施形態の切替バルブ構造30の断面図である。
【0033】
切替バルブ構造30は、その外形を決定するハウジング31と、ハウジングに嵌挿される三つの排気管(第1の排気管41、第2の排気管42及び第3の排気管43)と、これら排気管のうち二つを選択的に閉成するバルブ(弁体)33と、によって構成されている。
【0034】
このような構造により、一の排気管(第3の排気管43)から流入した排ガスを、他の二つの排気管(第1の排気管41及び第2の排気管42)の少なくとも一方に流通させるように切り替えることができる。なお、図中太点線矢印は、排ガスの流れ方向を示す。
【0035】
これら三つの排気管は、図1における分岐管23が第1の排気管41に、図1におけるバイパス管26が第2の排気管42に、図1における排気管20の分岐部22のエンジン10側が第3の排気管43に、それぞれ対応する。
【0036】
ハウジング31は、三つの開口部(第1の開口部36、第2の開口部37及び第3の開口部38)が形成されている。そして、これら第1の開口部36、第2の開口部37及び第3の開口部38に、それぞれ、第1の排気管41、第2の排気管42及び第3の排気管43が、所定の差し込み長さで嵌挿された後、固定される。
【0037】
ハウジング31には、バルブ33が内装される。バルブ33は、回転軸32を軸として回動する支部33aに支持されている。これにより、バルブ33は、この回転軸32を中心として、図中細線点線矢印のように円弧状に回動するように構成されている。
【0038】
バルブ33をこのように構成することによって、第1の排気管41及び第2の排気管42の少なくとも一方が、バルブ33によって閉成される。なお、このバルブ33は、モータやソレノイド等のアクチュエータが回転軸32を回転駆動することにより、回動される。
【0039】
第1の排気管41及び第2の排気管42の端面、すなわち、バルブ33と当接する部分は、シール部(弁座)35として構成されている。このシール部35は、バルブ33の面に対応した形状に加工され、バルブ33がこのシール部35へと閉成することで、排ガスが漏れなく排気管を密閉するように構成される。
【0040】
なお、ハウジング31と排気管との接合は、例えば第1の排気管41に、シール部35から所定の差し込み長の位置にマークを付しておき、この位置まで嵌挿する。または、シール部35から所定の差し込み長の位置にビード加工やフランジ加工を行うことによって、ハウジング31の開口部とで機械的に位置決めをしてもよい。
【0041】
その後、嵌挿された第1の排気管41、第2の排気管42及び第3の排気管43を、それぞれ、溶接等の方法によりハウジング31に接合する。
【0042】
このように構成された本実施形態の切替バルブ構造30は、上流側(第3の排気管43)から流入する排ガスを、第1の排気管41及び第2の排気管42の少なくとも一方に流通させるように、バルブ33の開閉状態により制御することができる。
【0043】
例えば、排ガスを排熱回収器24に流通させる場合(排熱回収時)には、バルブ33により第2の排気管42を閉成して、第3の排気管43から第1の排気管41(分岐管23)にのみ排ガスを流通させるように制御する。
【0044】
また、媒体温度の状況等により排ガスを排熱回収器24に流通させない場合(非回収時)には、バルブ33により第1の排気管41を閉成して、第3の排気管43から第2の排気管42(バイパス管26)にのみ排ガスを流通させるように制御する。
【0045】
またさらに、バルブ33の開度を制御して、第1の排気管41及び第2の排気管42に、排ガスを所定の割合で分配して流通させることもできる。
【0046】
以上説明したように、本発明の実施形態の切替バルブ構造30は、バルブ33を備えるハウジング31の内部に弁座となるシール構造を備えるのではなく、ハウジング31に嵌挿された排気管にシール部35を備えた。
【0047】
このように、排気管をハウジング31の内部でバルブ33に突き当てるように構成することによって、ハウジング31にシール加工を施す必要がなくなる。これにより、シール加工のためにハウジング31を大型化したり、ハウジングを分割構造とする必要がなくなるので、切替バルブ構造30を小型化することができると共に、製造コストを低減することができる。
【0048】
特に、シール部35は、排気管の端部に形成するため、シール部35の加工が容易になり、製造コストを低減することができる。
【0049】
また、排気管を嵌挿する差し込み長及びシール部35の形状を調整することによって、バルブ33の作動角度を調整することができる。
【0050】
例えば、排気管をハウジング31内部により深く嵌挿することにより、バルブ33との突き当て角度が鋭角となり、バルブ33の作動角度を小さくすることもできる。
【0051】
このように、バルブ33の作動角度を小さくすることで、バルブ33を回動させるためのアクチュエータの必要トルクが小さくなる。これにより、より小型のアクチュエータを用いることができるので、切替バルブ構造30を含めた排気管の構成を小型化することができる。
【0052】
また、ハウジング31に排気管を嵌挿するので、ハウジング31と排気管との接合のためにフランジ等を形成して、これをボルト及びナットで固定するといった工作が必要なくなり、切替バルブ構造30周辺の配管を大型化することなく、製造コストを低減することができる。
【0053】
なお、本発明の実施形態では、エンジン10の排ガスを回収する排熱回収器24の分岐部22に用いられる切替バルブ構造30を例に説明したが、これに限られることはない。例えば、排ガスをエンジンに環流するEGRシステムにおいて、本実施形態の切替バルブ構造を用いることにより、前述のように、EGRシステムを小型化することができると共に、製造コストの削減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態のエンジンを中心とした駆動システムの説明図である。
【図2】本発明の実施形態の切替バルブ構造の断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 エンジン(内燃機関)
20 排気管
30 切替バルブ構造
31 ハウジング
32 回転軸
33 バルブ(弁体)
35 シール部(弁座)
41 第1の排気管
42 第2の排気管
43 第3の排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスの通路を分岐する切替バルブ構造であって、
ハウジング(31)と、前記ハウジング(31)に嵌挿される第1の排気管(41)、第2の排気管(42)及び第3の排気管(43)と、前記ハウジング(31)に内装され、前記第1の排気管(41)及び第2の排気管(42)の少なくとも一方を閉塞する弁体(33)と、
を備え、
前記第1の排気管(41)及び第2の排気管(42)は、その端部が弁座(35)として形成されており、前記弁体(33)が閉成することにより、前記弁体(33)と前記弁座(35)とが密接することを特徴とする切替バルブ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の切替バルブ構造において、
前記第1の排気管(41)及び第2の排気管(42)は、その端部が予め弁座(35)として形成され、前記ハウジング(31)に所定の差し込み長で嵌挿された後、固定されることを特徴とする切替バルブ構造。
【請求項3】
請求項2に記載の切替バルブ構造において、
前記弁体(33)は、回転軸(32)に軸支されており、前記回転軸(32)を中心として回動可能に構成され、
前記第1の排気管(41)又は第2の排気管(42)の差し込み長に対応して、前記弁体(33)の作動角度が変更されることを特徴とする切替バルブ構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−138780(P2010−138780A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315408(P2008−315408)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】