説明

制吐剤及びエンケファリナーゼ阻害物質の新規組み合わせ

本発明は、制吐剤とエンケファリナーゼ阻害物質の新たな組み合わせに関連し、その下痢及び/又は胃腸炎を治療するための前記組み合わせの使用に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
胃腸炎は、様々な細菌、ウィルス又は寄生生物によって生ずる感染症由来の疾患である。
【0002】
それは本質的に、下痢(即ち、水及び電解質の正味腸分泌過多)、吐き気、嘔吐及び腹痛により明らかである。これら兆候のなかでも、流体及び電解質の減少、即ち、嘔吐及び下痢が特に若い子供にとって危険であり、生命を脅かす兆候である脱水症状が生じうる。
【0003】
長い間、このような感染症は、アヘン剤(又はアヘン剤様薬物)、 抗感染症剤及び経口水分補給飲料を使用することによって治癒されてきたが、これらによる治療からはその欠点を被る。従って、アヘン剤は、細菌感染症及び吐き気を高め、嘔吐及び反応性の便秘を誘導し且つ幼児において潜在的CNS毒性を示す傾向があるが;抗感染症剤は、通常の製剤の小さな一部に対してのみ活性があり;水分補給溶液は、幼児において非常に良く推奨されているが、疾患の期間を短くすることは無く且つ吐き気及び嘔吐を増大させる。時として、有力な抹消作用を有するドーパミンアンタゴニストの例えば、ドンペリドン又はメトクロプラミドは、吐き気及び嘔吐を予防するために抗下痢治療に関連しているが、かかる製剤は、錐体外路系症状を生じうる。一層最近、薬物の2つの新規クラスが、胃腸炎の様々な症状を軽減するために実験されそれは:エンケファリナーゼ、即ちネプリリシン(NEP)阻害物質の例えば、水及び電解質の正味胃腸分泌過多を阻害するラセカドトリル又はデキセカドトリル(Lecomte, Int. J. of Microbial Agents 2000, 14, 81で概観されている)並びに胃腸炎において生ずる胃腸管からのセロトニン放出に関連する嘔吐を阻害する5-HT3レセプターアンタゴニストである(Cubedduら, Aliment. Pharmacol. Ther., 1997,11, 189; Ramsookら, Ann. Emerg. Med., 2002,39, 397; Reevesら, Pediatrics, 2002, 109, e 62)。
【0004】
しかし、これら2つのクラスの剤の各々は、胃腸炎のいくつかの症状を予防することができるが、それらは全体的に症状を予防することはできない。
【0005】
従って、NEP阻害物質は、薬物減少及び電解質(hydroelectrolyte)減少をもたらしうる吐き気及び嘔吐を予防することが無く且つ治療コンプライアンスに制限を加える。他方、5-HT3レセプターアンタゴニストは現在、それらの制吐効果にもかかわらず、胃腸炎においての認可はされておらず、何故なら、それらは下痢による電解質の減少に制限を加えるとは報じられておらず、そしてこれらの剤のうちの1つであるオンダンセトロンは、下痢に対する効果を欠く(Reevesら, op. cit.)又は下痢の持続時間を増加しさえもする(Ramshookら, op. cit.)からである。実際に、下痢は、オンダンセトロンによる胃腸炎の治療によるもたらされる副作用としての記載がある(Cubedduら, Alimentary Pharmacology and Therapeutics, 1997,11 (1), 18 (-191)。
【0006】
従って、胃腸炎を有する患者など下痢を被る患者において、5-HT3レセプターアンタゴニストを使用することに対する偏見がある。結果として、NEP阻害物質との組み合わせにおける5-HT3レセプターアゴニストの使用は、開示されていない又は想定されてもいない。
【発明の開示】
【0007】
本発明者は胃腸炎の治療法を非常に改善するような組み合わせを以外にも発見した。
【0008】
一層正確には、5-HT3レセプターアンタゴニストの例えば、オンダンセトロン又はグラニセトロン、並びにエンケファリナーゼ阻害物質の例えば、ラセカドトリル又はデキサカドトリルは予想外の相乗効果を実現することが発見された。従って、前記組み合わせは、急性胃腸炎の主たる又はすべての兆候を抑制することを可能にする。
【0009】
特定の理論にとらわれることなく、本発明者により本発明の組み合わせの以下の意外な利点が確認された:
【0010】
1)本発明の組み合わせは、より広い細菌に対しての活性を示し且つ相補的機構を伴う。
【0011】
正味腸電解質分泌過多は両方のタイプの製剤によって部分的に阻害され;この効果は個別の神経機構と関連し、それゆえに一緒に使用された場合に相乗効果が可能になる。
【0012】
同調して、セロトニンはその5-HT3レセプターを介して、分泌前効果を示し、一方でエンケファリン(エンケファリナーゼ阻害物質による分解に対して保護された場合)、それらのデルタレセプターを介して反対の効果を発揮する(Shookら, J. P. E. T. 1989, 249, 83)。
【0013】
更に、2つのクラスの剤の腸抗分泌活性は、それらの分泌前活性に関連する様々な神経経路の結果、予測できる様々な実際の細菌に対して誘発される。従って、オンダンセトロンは、サルモネラによって誘発される分泌過多のみならずコレラ又は大腸菌(E. coli)の毒素によって誘発される分泌過多を予防し(Grodahl et al., J. Med. Microbiol. 1998,47, 151; Rolfe ら, J. Physiol. 1992, 446, 1078)、他方エンケファリナーゼ阻害物の例えば、ラセカドトリル又はデキサドトリルは、コレラ及び大腸菌の毒素に対して活性である(Primi et al., Dig. Dis. Sci. 1986,31, 172; Banks, Bose, Farthing, The effects of enkephalinase inhibitor racecadotril on enterotoxin-induced intestinal secretion in rat. Submitted).
【0014】
エンケファリナーゼ阻害物質は低用量(例えば、デキサカドトリル0.1mg/kg)で抗下痢活性を、様々な実験モデルの例えば、カスター油及びL.P.Sチフィリウム誘導下痢において評価されたように有する。意外にも、デキサカドトリル(0.1mg/kg)とオンダンセトロン(1mg/kg)の組み合わせは非常に良く(p<0.01)抗下痢活性を増強し且つ下痢を完全に予防する。
【0015】
急性胃腸炎は往々にしていくつかの細菌が関連し、いずれかの場合、治療は任意の微生物診断前に開始されるべきである。従って、本発明の組み合わせは、組織的に二つの薬物と様々な細菌に対して且つ個別のメカニズムを介して誘発される抗分泌活性を組み合わせることを可能にする。
【0016】
2)本発明の組み合わせは、胃腸炎の主要な兆候の阻害を可能にする。
【0017】
嘔吐、胃腸炎の主要な兆候、特に子供における兆候は、オンダンセトロンの場合に示される5-HT3アンタゴニストにより有意に誘導されるが(Cubedduら, op. cit.; Reevesら., op. cit.)、下痢に対しては有意な影響が無く又は増加させさえもする。
【0018】
対照的に、様々な臨床トライアルは、エンケファリナーゼ阻害物質が、それらの抗下痢効果にもかかわらず、このような兆候を減らさないことを示す(Lecomte, op. cit.に示されている)。
【0019】
意外にも、しかしながら、本発明は、エンケファリナーゼ阻害物質と5-HT3アンタゴニストは、5-HT3アンタゴニストの抗下痢効果を増強することを発見した。特に本発明者は、典型的な動物モデル中、即ち、フェレットにおけるシスプラチン誘導嘔吐を、デキサカドトリルが低用量(0.1mg/kg p.o.)において、オンダンセトロン(1mg/kg)の制吐効果を増強することが示されている。従って、本発明の組み合わせは、疾患の2つの主要な兆候及び胃腸管の2つの末端で生ずる電解質減少を症状遮断するための2つのクラスの剤の有機的な組み合わせを可能にする。
【0020】
3)本発明の組み合わせは、単独で投与されたエンケファリナーゼ阻害物の投与を非常に最適化する。
【0021】
エンケファリナーゼ阻害物質と一緒に制吐剤を含んで成る本発明の組み合わせの投与は、嘔吐を介するその排除を予防することによって後の生物学的利用能を増強する。ラセカドトリルと水分補給飲料の組み合わせは、胃腸炎における有用な治療戦略が証明されている(Lecomte, op. cit.)が、これらの溶液の投与は嘔吐の傾向を高める傾向があり、従って治療の効率を下げて時として入院及び静脈を介する水分再補給をもたらす(Inserman et Lemg, Can. Fam. Physician 1993,39, 2129)。従って、本発明の組み合わせの投与は、相乗効果を提供し且つエンケファリナーゼ阻害物質に加えて経口水分補給飲料の投与を促す。
【0022】
4)本発明の組み合わせは、単独で投与されたエンケファリナーゼ阻害物質の作用を有意に改善する。
【0023】
ヒトの結腸を介する輸送は、5-HT3アンタゴニストの投与によって遅延させられる(Goreら, Aliment Pharmacol. Ther., 1990, 4, 139)。エンケファリナーゼ阻害物質は見掛上、回腸輸送を遅延させることはない(Bergmannら, Aliment. Pharmacol. Ther. 1992,6, 305)。しかしながら、本発明の発明者はラセカドトリルがデキサカドトリルに対して少ない程度で、げっ歯類の結腸輸送を加速させる傾向があることを発見した。この効果は、オンダンセトロンの共投与によって遮断させられる。輸送は胃腸炎においてすでに強力に加速させられているので、本発明の組み合わせは、エンケファリナーゼ阻害物質の抗分泌性吸収前活性が、水状の腸内腔含有物により、より長い時間に渡り発揮されることを可能にし、従って相乗的な抗下痢効果をもたらす。
【0024】
5)本発明の組み合わせは、腹痛に対する相乗効果を示す。
【0025】
腹部けいれんは、胃腸炎の一般的な兆候のひとつである。それは、エンケファリナーゼ阻害物質の例えば、ラセカドトリル(Lecomte, op. cit.)による治療によって有意に最小限にされる。この薬物は、腹部けいれんのげっ歯類モデルにおける内部オピオイドペプチドの保護を介して部分的な抗侵害受容作用効果を発揮する(Lecomteら, J. P. E. T. 1986, 237, 937)。同じげっ歯類モデルにおいて、5-HT3アンタゴニストは、明らかに異なる天然のメカニズムによって内臓の疼痛の兆候を部分的に予防する(Veevanpaneyuluら, Pharm. Pharmacol. Communic. 2000,6, 513)。
【0026】
本発明の組み合わせは、げっ歯類の腹痛の典型的なモデルを使用することで発見された本発明者が記載のように腹痛に対して相乗効果を伴う(Morteauら, Gastroenterology, 1993,104, 47)。ラットを、直腸拡張により誘発された腹部けいれんの評価により評価した場合、腸炎症及び疼痛感受性を誘導するためにトリニトロベンゼンスルホン酸により前処理した。5-HT3アンタゴニスト(特にオンダンセトロン)及びエンケファリナーゼ阻害物質(特に、ラセカドトリル又はデキサカドトリル)は、単独で投与された場合にこれらの疼痛の兆候を部分的に予防するのみならず2つのクラスの化合物が組み合わされた場合に完全に当該疼痛の兆候を予防する。
【0027】
従って、内臓痛、胃腸炎における主要な症状に関して、明らかな相乗効果がある。
【0028】
6)本発明の組み合わせは、最適化された薬物動態を示す。エンケファリナーゼ阻害物質、例えば、ラセカドトリル(又はデキサカドトリル)及び5-HT3レセプターアンタゴニストの例えば、オンダンセトロンは、2つのクラスの薬物の共投与と見掛上適合する。
【0029】
典型的に、ラセカドトリルは、血しょう半減期が約3時間であり且つ一日あたり3回投与される。
【0030】
典型的に、オンダンセトロン(及びグラニセトロン)は約3時間の半減期を示し且つ一日あたり3回投与される。
【0031】
従って、本発明の好適な観点によれば、本発明の組み合わせは、同じ投与形態(カプセル、錠剤、粉末など)で投与される。
【0032】
5-HT3レセプター阻害物質の例えば、オンダンセトロン(グラニセトロン)の代謝は、様々なシトクロームP450サブタイプによる酸化を伴い、その一方で、本発明者は、エンケファリナーゼ阻害物質の例えば、ラセカドトリル(及びデキサカドトリル)並びにそれらの活性物質及びそれらの活性代謝物は、シトクロームP450サブタイプと有意に反応せず且つそれらの代謝は主にS-メチル化を介する。従って、この結果は、本発明の組み合わせにおいて存在する2つのクラスの薬物の限定された代謝性相互作用をもたらす。
【0033】
7)本発明者は、本発明の組み合わせは十分に寛容され且つ動物データは、それらの組み合わせが無毒性であることを示唆することに気付いた。
【0034】
従って、本発明の第一の観点によれば、本発明は、制吐剤とエンケファリナーゼ阻害物質の組み合わせを提供する。更に好適に観点によれば、前記制吐剤は、5-HT3レセプターアンタゴニストである。
【0035】
更に好適な観点によれば、前記5-HT3レセプターアンタゴニストは、オンダンセトロン又はグラニセトロンから成るリストから選択されている。
【0036】
他の好適な観点によれば、前記エンケファリナーゼ阻害物質は、ラセカドトリル又はデキセカドトリルから成るリストから選択される。
【0037】
第二の観点によれば、本発明は、医薬的に許容できるビヒクル又は賦形剤を伴い、上記本発明の組み合わせを含んで成る医薬組成物を提供する。
【0038】
好適な観点によれば、前記医薬組成物は、その活性成分の投与と同時、個別及び逐次に投与されて良い。
【0039】
尚更に好適な観点において、前記医薬組成物は、経口投与のために適している。
【0040】
有利な観点によれば、好適な組み合わせは相乗効果を示すものである。
【0041】
他の好適な観点によれば、前記医薬組成物は、錠剤、ドラジェー、粉末、エリキシル、シロップ、液状組成物の例えば、懸濁、スプレー、ロゼンジ、エマルション、溶液、顆粒、カプセルが挙げられ、一層好適に、錠剤、カプセル又は顆粒状粉末が挙げられる。
【0042】
他の好適な観点によれば、本発明の医薬組成物は、成人の投与単位あたり約50〜100mgの前記エンケファリナーゼ阻害物質を含んで成り、そして子供又は乳幼児の体重に従って対応する投与量を含んで成る。
【0043】
他の好適な観点によれば、前記医薬組成物は、成人の投与単位あたり約1〜8mgの5-HT3アンタゴニストであり、そして子供又は乳幼児の体重に従って対応する投与量を含んで成る。
【0044】
好適な観点によれば、前記組成物は成人の投与単位あたり2〜8mgのオンダンセトロンを含んで成り、そして子供又は乳幼児の体重に従って対応する単位投与量を含んで成る。
【0045】
他の更に好適な観点によれば、本発明の医薬組成物は、投与単位あたり1〜4mgのグラニセトロンを含んで成る。
【0046】
更に好適な観点によれば、前記医薬組成物は、同投与単位中に本発明の組み合わせを含んで成る。
【0047】
他の対象によれば、本発明は、急性胃腸炎の治療のための本発明の医薬組成物の調製における本発明の組み合わせの使用を供する。
【0048】
好適な観点によれば、本発明は、嘔吐と関連した急性の下痢の治療のための本発明の医薬組成物の調製における本発明の組み合わせの使用を供する。
【0049】
更に好適な観点によれば、前記下痢は、成人、子供又は乳幼児における化学療法により誘導される下痢、カルチノイド下痢、旅行者の下痢、様々な細菌、ウィルス又は寄生生物により誘発される下痢である。
【0050】
他の好適な観点によれば、前記治療は、経口投与、好適に一日につき2〜4回の経口投与を含んで成る。
【0051】
特に有利な対象によれば、本発明は、ラセカドトリルとオンダンセトロンの組み合わせを提供する。
【0052】
更に有利な観点によれば、本発明は、ラセカドトリル及びオンダンセトロンを含んで成る、好適には、同時、個別又は逐次投与ための医薬組成物を提供する。
【0053】
本発明の皿に有利な観点によれば、本発明は、嘔吐と関連した急性胃腸炎又は下痢を治療するための医薬組成物の調製するためのラセカドトリル及びオンダンセトロンの使用を供する。
【0054】
特に有利な対象によれば、本発明は、デキセカドトリル及びオンダンセトロンの組み合わせを提供する。
【0055】
更に有利な対象によれば、本発明は、デキセカドトリル及びオンダンセトロンを含んで成る、好適には、同時、個別又は連続投与のための医薬組成物を提供する。
【0056】
更に有利な対象によれば、本発明は、嘔吐と関連した急性胃腸炎又は下痢を治療するための医薬組成物を調製するためのデキセカドトリル及びオンダンセトロンの使用を供する。
【0057】
本明細書中、上記の好適な実施態様及び/又は本明細書中下に記載の実施態様は、他の実施態様に基づいて又は組み合わせにおいて理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明によれば、医薬組成物とは、上記活性成分を1又は複数及び以下の群から選択された少なくとも1つの成分を、投与の方法及び投与形態の性質に依存して含んで成る組成物を意味する。当該群は、医薬的に許容できる担体、希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルの例えば、防腐剤、充填剤、錠剤分解促進剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、香味料、香料、抗細菌剤、抗真菌剤、潤滑剤及び分散剤である。懸濁剤の例としては、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー-アガー及びトラガカント、又はこれら物質の混合物が挙げられる。微生物の作用の予防は、様々な抗細菌及び抗真菌剤の例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にされて良い。等張剤の例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことも望ましい。注射可能医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる剤の例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされて良い。適切な担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルとしては、水、エタノール、ポリオール、それらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)並びに注射可能有機エステルの例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。賦形剤の例としては、ラクトース、ミルクシュガー、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムが挙げられる。錠剤分解促進剤の例としては、でんぷん、アルギン酸及び所定の複合シリケートが挙げられる。潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、並びに高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0059】
医薬的に許容できるとは、通常の医療の判断において、不都合な毒性、炎症、アレルギー反応などを伴わずヒト及び下等動物の細胞との接触において使用するために適切であり、そして有利なベネフィット/リスク比を有する基準の範囲内であることを意味する。
【0060】
本発明の医薬組成物の代表的な投与形態は、例えば、錠剤、ドラジェー、粉末、エリキシル、シロップ、液体製剤、例えば、懸濁、スプレー、吸入剤、ロゼンジ、エマルション、溶液、顆粒、カプセル及び座薬並びに注射のための液体製剤の例えば、リポソーム製剤、錠剤、ドラジェー、粉末、エリキシル、シロップ、液体製剤の例えば、懸濁、スプレー、ロゼンジ、エマルション、溶液、顆粒、カプセルであり、一層好適に、錠剤、カプセル又は顆粒状粉末である。技術及び処方は、一般に、最新版Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.,Easton, PAにおいて発見されて良い。
【0061】
好適な製剤としては、錠剤、ドラジェー、粉末、エリキシル、シロップ、液体製剤の例えば、懸濁、スプレー、吸入剤、ロゼンジ、エマルション、溶液、顆粒、カプセルが挙げられ、一層好適に、錠剤、カプセル又は顆粒状粉末が挙げられる。
【0062】
ビヒクルの選択及び当該ビヒクル中の活性物質の含有量は、一般に、活性化合物の溶解度及び化学的特性により決定されて良く、特に、投与の態様及び医薬の実際で確認される条件に従う。賦形剤の例えば、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム及び錠剤分解促進剤の例えば、でんぷん、アルギン酸、及び潤滑剤の例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクなどと組み合わせた所定の複合シリケートが錠剤を処方するために使用されて良い。カプセルを調製するために、ラクトース及び高分子量ポリエチレングリコールを使用することは有利である。水性懸濁が使用される場合、それらは懸濁を促す1又は複数の乳化剤を含んで良い。希釈剤の例えば、スクロース、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール及びクロロホルム又はそれらの混合物も使用されて良い。
【0063】
小児科製剤の例えば、粉末、顆粒状粉末、シロップ又は懸濁は、即ち、希釈剤、アジュバント及び適切な風味マスキング剤としてサッカロースを使用することで調製できうる。
【0064】
固形組成物は、ラクトース又はミルクシュガー、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用することで軟及び硬充填ゼラチンカプセルにおける充填物質として使用されても良い。
【0065】
医薬組成物は、経口、吸入、直腸、鼻腔、舌下、口腔、非経口的(例えば、舌下、筋内、静脈内)に、局所又は全身投与によりヒト及び動物へ、適切な処方で投与されて良い。好適な経路は、例えば、受容者の状態により変化して良い。
【0066】
好適に、本発明の医薬組成物は、成人、子供及び乳幼児へ投与するために適切である。
【0067】
本発明によれば、経口投与のために適切な医薬組成物とは、患者へ経口的に投与されるのに適切な形態である医薬組成物を意味する。組成物は、所定量の活性成分を含む、カプセル、カテーテル又は錠剤などの個別の単位として;粉末又は顆粒として;水性液体又は非水性液体における溶液又は懸濁として;又は水中油液体エマルション又は油中水液体エマルションとして存在して良い。活性成分は、ボーラス、舐剤又はペーストとしても存在して良い。
【0068】
組成物は、医薬の業界において周知の任意の方法によって調製されて良い。かかる方法は、活性成分と1又は複数の付属成分(accessory ingredients)を構築する担体を組み合わせる段階を含む。一般に、組成物は、当該活性成分と液状担体もしくは微細に分割した固体担体又はその両方を均一に且つ親密に組み合わせ、そしてもし必要なら、産物の形状を整えることによって調製されて良い。
【0069】
錠剤は、圧縮又は成形によって、任意に1又は複数の付属成分を伴い調製されて良い。圧縮された錠剤は、自由流動形態の例えば、粉末又は顆粒にある活性成分から、任意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、表層活性物質又は分散剤と混合され、適当な機械において圧縮されることによって調製されて良い。成形された錠剤は、適切な機械において、不活性な液状希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物において成形することによって調製される。錠剤は、そこで、任意にコーティングされる又はスコアリングされてよく且つ活性成分の遅い又はコントロールされた放出を供するように処方されて良い。
【0070】
酸付加塩は、塩基性官能基(function)の例えば、アミノ、アルキルアミノ又はジアルキルアミノが存在する本発明の活性成分を伴い形成される。医薬的に許容できる、即ち、無毒性の酸付加塩が好適である。選択される塩は、慣用の医薬ビヒクルと任意に適合性であり且つ経口又は非経口投与のために適合性である。本発明の有用な化合物の酸付加塩は、遊離塩基と適切な酸との、公知の方法の適用又は適合による、反応によって調製されて良い。例えば、本発明の有用な化合物の酸付加塩は、遊離塩基を水もしくは水性アルコール溶液もしくは適切な酸を含有する他の適切な溶媒中で溶かし、そして当該塩を当該溶媒を除去することにより単離することによって、又は遊離塩基と酸を有機溶媒中で反応させることのいずれかにより調製されてよく、後者の場合、塩は直接分離されるかあるいいは溶液の濃縮により獲得されて良い。かかる塩の調製において使用するための適切な酸は、塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、様々な有機カルボン酸及びスルホン酸、例えば、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、コハク酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、アスコルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、脂肪酸、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、重硫酸塩、ブチレート、乳酸塩、ラウリンサン塩、ラウリル硫酸、リンゴ酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、グリセロリン酸塩、ピクリン酸塩、ピルビン酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、チオシアン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、ニコチン酸塩、ヘミスルフェート、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、カンフォレート、カンファースルホネートなどがあげられる。
【0071】
本発明の活性成分の酸付加塩は、当業者に公知の方法の適用又は適合によって塩から生成されて良い。例えば、本発明の有用な親化合物は、それらの酸付加塩から、水性重炭酸ナトリウム溶液又は水性アンモニア溶液などアルカリによる処理によって再生されて良い。
【0072】
本発明の活性成分は、当業者に公知の方法の適用又は適合によってそれらの塩基付加塩から再生されて良い。例えば、本発明の有用な親化合物は、塩化水素酸などの酸による処理により塩基付加塩から再生されて良い。
【0073】
塩基付加塩が形成されてよく、ここで本発明の有用な化合物は、カルボキシル基、又は十分な酸性ビオイソステア(bioisostere)を含む。塩基付加塩を調製するために使用されて良い塩基としては、好適に、遊離酸と組み合わせた場合に、医薬的に許容できる塩を生産できるものであり、即ち、塩であってそのカチオンは、当該塩の医薬投与量において患者に対して毒性が無く、従って、遊離塩基における固有の有用な阻害効果は陽イオンに起因する副作用によって汚染されない塩である。医薬的に許容できる塩、例えば、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から由来するものが挙げられ、以下の塩基から誘導されたものが本発明の範囲内である:水素化ナトリウム、水素酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水素化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、アンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N'-ジベンジル-エチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチル-アミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシルエチル)-アミノメタン、テトラ-メチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
【0074】
本発明の活性成分は、都合良く調製されて良い、又は溶媒として (例えば、水和物)、本発明の方法の間に形成されて良い。本発明の活性成分の水和物は、有機溶媒の例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はメタノールなどの有機溶媒を使用することで、水性/有機溶媒からの再結晶化により都合よく調製されて良い。
【0075】
本発明によれば、「相乗効果」とは、それ自身任意の活性成分によっては発揮されない効果を達成するため、又は各活性成分それ自体により獲得される効果又は各々の活性成分の更なる効果を向上させる、本発明の活性成分の組み合わせの能力である。
【0076】
一層好適に、「相乗効果」とは、各活性成分の更なる効果よりも優れた効果を達成するための本発明の組み合わせの能力を意味する。
【0077】
効果には、生物活性、有利な薬物動力学的効果もしくは特性、又副作用の減少効果が挙げられる。
【0078】
以下の例は、本発明の代表的且つ非限定的な観点として与えられている。
【実施例】
【0079】
実施例:本発明の組み合わせのIn vivo活性
本発明の組み合わせの顕著な活性は、動物モデルの実験的な下痢により証明された。本発明の組み合わせは、Niemegeers ら(Armeim.-Forsch. (Drug Res), 1974,24 No. 10)による、ラットのカスター油誘導下痢により評価した。
【0080】
ラットには、オンダンセトロン(0.1 mg/kg, p. o.)及びラセカドトリル(40 mg/kg p.o.)を一緒に投与した。この組み合わせはほぼ完全な抗下痢効果を6〜7時間に渡り示した。
【0081】
比較例として、オンダンセトロン及びラセカドトリルを単独において同じ投与量での投与した。
【0082】
オンダンセトロン(0.1mg/kg, p.o.)は、単独で投与した場合、このモデルに対して不活性であったことを発見した。
【0083】
単独で投与したラセカドトリル(40 mg/kg, p. o.)は、このモデルに対して4時間に渡り部分的な保護を誘導した。
【0084】
更に、オンダンセトロン(1 mg/kg)は、このモデルに対して不活性であることも発見され、0.1mg/kgのデキセカドトリルと組み合わせた場合、このモデルに対して下痢の発生を完全に予防した(他方、デキセカドトリルは単独で部分的にのみ不活性であった).
【0085】
結果的に、活性剤の両方のクラスの組み合わせは、単独で投与された各活性剤の活性に加えて明らかに優れた活性を誘導した。従って、本発明のこの組み合わせは、相乗効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制吐剤とエンケファリナーゼ阻害物質の組み合わせ。
【請求項2】
前記制吐剤が5-HT3レセプターアンタゴニストである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記5-HT3レセプターアンタゴニストが、オンダンセトロン及びグラニセトロンからなる群から選択される、請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記エンケファリナーゼ阻害物質が、ラセカドトリル及びデキセカドトリルからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組み合わせ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組み合わせ、及び医薬的に許容できるビヒクル又は賦形剤を含んで成る、医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、前記エンケファリナーゼ阻害物質と前記制吐剤の組み合わせの投与と同時、個別又は逐次に投与するためである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が経口投与のために適切である、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が錠剤、カプセル又は顆粒状粉末である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
本発明の前記医薬組成物は、前記エンケファリナーゼ阻害物質を、成人のための投与単位あたり50〜100mg含んで成り、そして子供及び乳幼児の体重に従って対応する投与量で含んで成る、請求項5〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は、前記5-HT3アンタゴニストを、成人のための投与単位あたり1〜8mg含んで成り、そして子供及び乳幼児の体重に従って対応する投与量で含んで成る、請求項5〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物は、前記オンダンセトロンを、成人のための投与単位あたり2〜8mg含んで成り、そして子供及び乳幼児の体重に従って対応する投与量で含んで成る、請求項5〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物は、前記グラニセトロンを、成人のための投与単位あたり1〜4mg含んで成り、そして子供及び乳幼児の体重に従って対応する投与量で含んで成る、請求項5〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が本発明の組み合わせを同じ投与単位で含んで成る、請求項5〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
急性胃腸炎を治療するための請求項5〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の調製における請求項1〜4のいずれか1項に記載の組み合わせの使用。
【請求項15】
嘔吐に関連した急性下痢の治療のための請求項5〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の調製における請求項1〜4のいずれか1項に記載の組み合わせの使用。
【請求項16】
前記下痢が、化学療法により誘導された下痢、カルチノイド下痢、旅行者の下痢、細菌、ウィルス又は他の寄生生物により誘導された下痢である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記治療が、好適には一日当たり2〜4回の経口投与を含んで成る、請求項14〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記治療が、一日あたり2〜4回の請求項5〜13のいずれか1項に記載の組成物の投与を含んで成る、請求項14〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記組み合わせが、活性成分の同時、個別又は逐次経口投与によって急性胃腸炎を治療するための医薬組成物を調製するためにデキセカドトリル及びオンダンセトロンを含んで成る、請求項14〜18のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2007−522202(P2007−522202A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552718(P2006−552718)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000351
【国際公開番号】WO2005/079850
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(501379856)
【Fターム(参考)】