説明

制御された電気特性を有するナノコンポジット

ポリマーマトリックスの中に分布しているナノ粒子充填剤の電界グレーディング有効量を含む電界グレーディング材料であって、ナノ粒子充填剤がポリマーマトリックスの中に不均一に分布している前記電界グレーディング材料


【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、2003年8月21日に出願した米国仮出願番号60/496,777に基づく優先権を主張する。
【発明の背景】
【0002】
第一の媒質から第二の媒質への電界の遷移時に、電界の不連続が原因で、電気設備に有害な電気的ストレスが結果として起きることがある。例えばシールドした高電圧ケーブルにおいて、電界はケーブル軸に沿って一様であり、半径方向にのみ電界の変動が存在する。ケーブルを終端処理する場合又は接続する場合には、ケーブルに沿ってある長さにわたりケーブルのシールドを除去する。シールドの除去はシールド端部に電界の不連続を引き起こし、その結果高い電気的ストレスとなる。この高いストレスは、そのシステムの期待耐用期間を損なわないように軽減されなければならない。
【0003】
問題の電気的ストレスは、第一の媒質から第二の媒質へ、例えばケーブルのシールドした部分から当初のシールドを除去してしまった部分への電界の遷移点で、電界の勾配を緩和することにより軽減することができる。この種の電界グレーディング(field grading)のために数多くの方法が開発され採用されてきた。本発明は、いわゆる抵抗性及び容量性の電界グレーディングに関する。
【0004】
抵抗性電界グレーディングは、交流用途にも直流用途にも使用できる。抵抗性電界グレーディングはまた、電圧がインパルスの形態で発生しつつある時の電界グレーディングを達成する目的でも使用できる。上に指摘したようなケーブル端部の場合、ケーブルのシールドした部分に最近接する領域にあり且つそのシールドと電気的接触にあるケーブルのシールドしていない部分の周囲に、適当な抵抗を有する物体を導入する。ケーブルを横切って正の電圧を印加する場合、ケーブルのシールドの方に向かってその物体を通して電流が流れる(この場合、ケーブルのシールドはアース電位[earth potential]である)。その時、その物体中に抵抗性の電圧降下が発生し、その結果、電位分布がより一様になる。その物体が、電界増加とともに減少するような非線形の電気抵抗を示す物質からなる場合、その電位分布はより線形になるであろう。シールドの端に近ければ近いほど、その電界グレーディング物体中の電界はより高くなり、その物体がそのような非線形の電気抵抗を示す場合には、その結果、その物体中の電気抵抗はより低くなる。こうして、電界グレーディング物体に沿う電圧降下は、そのような非線形の電気抵抗を示す物体中での方がそれを示さない物体中でよりも、より一様に分布するようになるのである。
【0005】
容量性電界グレーディングは、交流用途に使用する。容量性電界グレーディングはまた、電圧がインパルスの形態で発生しつつある時の電界グレーディングを達成する目的でも使用できる。上に指摘したようなケーブル端部の場合、ケーブルのシールドした部分に最近接する領域にあり且つそのシールドと電気的接触にあるケーブルのシールドしていない部分の周囲に、絶縁層の誘電定数よりも高い誘電定数を有し、できるだけ低い損失を有する材料の物体を導入する。それにより、等電位線の拡がりが達成されるであろう。容量性電界グレーディング特性はまた、高電圧の直流用途において、電圧サージが突然発生する場合、電界グレーディングを達成するように電界の勾配を緩和するのに適している材料においても望ましい特性である。
【0006】
ポリマーは、その高い電気強度、製造の容易性、低コスト、及び簡単な維持管理のため、電気絶縁及び電界グレーディングの技術において重要な役割を演じている。従来、ポリマーの劣化に対する抵抗性の改良、機械的・熱機械的特性の修正、及び高電界安定性のような電気的特性の改良を目的として、ポリマーマトリックス中にさまざまな添加剤を混合してきた。従来の添加剤の限界の一つは、電気的特性に対して添加剤が有する負の効果である。理想的な場合には、添加剤は、前記特性も修正し、他の特性をも改良し、又は少なくとも他の特性を低下しないであろう。ポリマーマトリックスと均一又は不均一に混合するナノ構造充填剤からなるナノコンポジット構造体が、米国特許第6,228,904号明細書に記載されている。多数相と少数相を含み、少数相は半結晶性ポリマーに分散したカーボンブラック・黒鉛・金属粒子・導電性ポリマー・炭素繊維・フラーレン及び/又はカーボンナノチューブ等の導電性充填剤を含む、架橋導電性ポリマーコンポジットが、米国特許第6,417,265号明細書に開示されている。上の特許のいずれも電界グレーディング又は絶縁用途について言及していない。WO2004/038735は、ナノ粒子充填剤を含むポリマーマトリックスからなる電界グレーディング材料及び当該材料を利用する装置を記載するが、粒子の表面処理にも粒子の一様でない分布にも言及していない。JP11086634は、ミクロンサイズの酸化マグネシウム粒子をビニルシランで表面処理し、エチレンホモポリマー又はコポリマーと混合した絶縁材料に関する。WO2004/034409は、ポリマーマトリックスの中に埋め込まれた化学量論的ナノ微粒子状充填剤を含み、強化された電気強度と改良された耐電圧特性を有する、ナノメートルのコンポジットを開示する。充填剤の一様でない分布の記載はない。しかしながら、強化された特性バランスを有するポリマーコンポジットに対する継続的な要求が、特にこれらの技術分野における用途向けに、依然として存在する。
【発明の要約】
【0007】
ポリマーマトリックス内に不均一に分布した半導体ナノ粒子又は誘電性ナノ粒子が、容量性又は抵抗性の電界グレーディング材料又は絶縁材料として使用されるコンポジット材料の、機械的特性のみならず誘電特性、抵抗率、誘電率及び/又は電気破壊強度をも向上し得ることを思いがけなく発見した。半導体材料は0eV〜5eVの範囲のエネルギーバンドギャップを有し、誘電性材料は無限高周波(infinitely high frequencies)におけるバルク誘電定数少なくとも5を有する。本発明はまた、ポリマーマトリックスの中に均一に又は不均一に分布したナノ粒子充填剤を含む電界グレーディング材料又は電界絶縁材料に関するものであり、その場合、ナノ粒子充填剤の表面が有機シラン化合物又は有機チタネート化合物による処理で修飾され、そして、有機シラン化合物がアルキル基、アルキルアミノ基、アミノ基及びカルボキシ基から選択される有機基を含むものである。有機基は好ましくは、メチル基、デシル基、オクチル基、ビニル基、アミノプロピル基又はアセトキシ基である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、印加電界強度10kV/cmにおけるLDPE/ZnOコンポジットの電気抵抗率をZnO含量の関数として示す。均一な又は不均一な充填剤分布を有する試料のデータを示す。
【0009】
【図2】図2は、ZnO/LDPEの均一でないコンポジットの電気抵抗率を印加電界強度の関数として示す。
【0010】
【図3】図3は、1kHzで測定したナノコンポジットの誘電率を示す。
【0011】
【図4】図4は、LDPEマトリックスにおけるシラン処理したTiOナノ粒子と乾燥TiOナノ粒子との吸水率を未処理粒子と比較する。
【発明の詳細な説明】
【0012】
本発明は、ポリマーマトリックスの中に分布したナノ粒子充填剤を含むポリマーナノコンポジットに関するものであり、この場合、ナノ粒子充填剤がポリマーマトリックスの中に不均一に分布しているものである。このナノコンポジットは電界グレーディング材料又は絶縁材料として使用される。ナノ粒子充填剤は半導体材料でも誘電性材料でもよい。半導体材料は0eV〜5eVの範囲のエネルギーバンドギャップを有し、誘電性材料は無限高周波におけるバルク誘電定数少なくとも5を有する。本発明において使用するナノ粒子は結晶性材料であり、ナノ結晶性と呼ばれる。各ナノ結晶性粒子は、単一の粒、即ち規則的形態に配列している原子からなる単結晶からなる。ナノ結晶性材料は、従来の粒における数百万個又は数兆個の原子と比較すると、数千個〜数万個の原子を含む単一の粒を有し、粒子の表面に存在する原子の割合が著しく高い。
【0013】
本発明のポリマーナノコンポジットに使用するナノ粒子は、金属酸化物、混合金属酸化物、炭化ケイ素又はシリカからなる。半導体カーボンナノチューブもまた使用してもよい。半導体カーボンナノチューブは導電性カーボンナノチューブとは区別される。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化スズアンチモン、酸化セリウム、酸化銅、酸化インジウム、酸化スズインジウム、酸化鉄、酸化スズ、二酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ネオジム、及び酸化ストロンチウムが含まれる。(本発明の目的には、ケイ素は金属ではなく半導体とみなされる)例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、及びケイ酸ジルコニウムを挙げることができる金属チタン酸塩ナノ分子及び金属ケイ酸塩ナノ分子も使用することができる。特に、酸化亜鉛又は炭化ケイ素のナノ粒子は、抵抗性電界グレーディング材料として使用してもよい。酸化アルミニウム、二酸化チタン又はチタン酸バリウムは、容量性電界グレーディング材料として使用してもよい。他の好ましいナノ粒子としては、SnO、InO、CeO、TiO、BaTiO、Al、SiO及びそれらの混合物が含まれる。ナノ粒子の選択は、特定用途に要求される特性に支配される。
【0014】
本発明によるポリマーナノコンポジットのポリマーマトリックスとしては、ゴム、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性エラストマーを含む。好ましくは、マトリックスとしては、ポリオレフィンゴム又は熱可塑性ポリオレフィンエラストマー/プラストマーが含まれるか(好ましくは、例えば、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム又はシリコーンゴムを挙げることができる)、あるいは結晶性熱可塑性プラスチック、好ましくはポリエチレンが含まれる。いくつかの実施態様において、本発明によるポリマーナノコンポジットのポリマーマトリックスとしては、ゴム、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性エラストマーからなるか、あるいは少なくとも本質的に前記のものからなる。好ましくは、マトリックスとしては、ポリオレフィンゴムもしくは熱可塑性ポリオレフィンエラストマー/プラストマーからなるか(好ましくは、例えば、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムもしくはシリコーンゴムを挙げることができる)、又は少なくとも本質的に前記のものからなり、あるいは結晶性熱可塑性プラスチック、好ましくはポリエチレンからなるか、又は少なくとも本質的に前記のものからなる。例えば、水、油、カップリング剤、架橋剤、希釈剤、顔料及び分散剤を含む、当業者によく知られている様々な希釈剤及び添加剤をポリマー樹脂と混合してもよい。
【0015】
ポリマーマトリックスとして使用してもよい他のポリマーとしては、エポキシ、ポリカーボネート、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、合成ゴム、ポリウレタン、ナイロン、ポリビニル芳香族、アクリル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール、ポリハロゲン化ビニル、ポリフェニレンオキシド、及びポリケトンの各樹脂、各ホモポリマー及び各コポリマー、並びにそれらのブレンド物が含まれる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、並びに、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びエチレンコポリマーのポリエチレンが含まれる。ポリハロゲン化ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニルのポリマー及びコポリマー、並びにポリ塩化ビニリデンのポリマー及びコポリマー、フッ素ポリマーが含まれる。ポリビニル芳香族樹脂としては、ポリスチレンのポリマー及びコポリマー、及びα−メチルスチレンのポリマー及びコポリマーが含まれる。アクリレート樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートエステルのポリマー及びコポリマーが含まれる。ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、及びナイロン12、及びポリアミドコポリマー並びにそれらのブレンド物が含まれる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートのポリアルキレンテレフタレート、及びポリエステルコポリマーが含まれる。合成ゴムとしては、スチレン−ブタジエンコポリマー及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーが含まれる。そしてポリケトンとしては、ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンが含まれる。
【0016】
ナノ粒子は、普通の溶融混合によりポリマーマトリックスの中にうまく分散される。しかしながら、ナノ粒子充填剤の導入によりコンポジットに引き起こされる変化は、ポリマーマトリックスにおける充填剤粒子の分散状態により強く制御することが可能である。充填剤の良好な分散状態を達成することは、ポリマーナノコンポジットの加工における主要問題の一つであった。ナノ粒子を充填剤として採用することにより獲得した改良特性のいくつかを、アグロメレーションによって喪失する結果となることが頻繁にある。良好な分散が決定的であるのに、最善の結果を得るために充填剤の分布がマトリックス全体に一様であることが必要であるということは、いつも確かとは限らない。よく分散しているが分布が一様でない充填剤粒子が最適の特性をもたらすかもしれない。本発明によるナノコンポジットは、必ずしも一様に分散していないけれども、よく分散したナノ粒子を含み、そして、アグロメレートした粒子及び/又はアグリゲートした粒子を本質的に含まないことに注意すべきである。本発明の文脈において、「アグロメレートした」とはいくつかの個別粒子が隣接する粒子に主に静電気力によって付着することを意味し、そして、「アグリゲートした」とはいくつかの個別粒子が隣接する粒子に化学的に結合することを意味する。均一でない、不均一な又は一様でない充填剤分布により、改良した電気特性を達成することが可能である。
【0017】
マトリックスにおける充填剤の一様でない分布は、ナノ粒子をミクロンサイズのポリマー粉末と混合することにより達成してもよい。ポリマー粒子の粒径は、典型的にはナノ粒子充填剤の粒径よりも少なくとも1000倍大きく、好ましくはナノ粒子充填剤の粒径よりも少なくとも100倍大きく、最も好ましくはナノ粒子充填剤の粒径よりも少なくとも10倍大きい。例えば、ナノ粒子と微粒子状形体にある固体ポリマーとの混合物は、ナノ粒子がポリマー粒子の軟らかい表面に埋め込まれるように、ボールミル粉砕してもよい。次いでその混合物を加熱して固体ポリマーを溶融し、不均一な分布を形成してもよい。典型的には粒子は隙間にとどまっている。分布は、固体ポリマーの粒径を変えることにより変えてもよい。
【0018】
代わりに、不均一な分布は、不混和性の複数のポリマーをブレンドすることにより達成してもよい。その結果ナノ粒子がポリマー内に不均一に分布するので多重相となる。相は典型的に、相の一つにおいて又はその境界面でナノ粒子と共に連続(co−continuous)している。ポリマーの一つが比較的高い結晶性を有する半結晶性ポリマーである場合、ナノ粒子はそのポリマーの非晶質領域に、又はポリマーと他の相との境界面に、濃縮してもよい。材料の選択は、好ましい相の形態学、即ち相分離、が相間に発達するような材料を選択すべきである。相分離が発達する可能性があるのは、コンポジット材料用に選択されるポリマーが、混和性を促進する相互作用、従って結果的に混合エンタルピーが負になる相互作用、にその相が無関係であるようなポリマーの場合である。多重相を形成するポリマー対の例は、ポリエチレン/EPDM、LDPE/HDPE、及び無水マレイン酸修飾EPDM/EPDMを含む。
【0019】
本発明の一つの観点において、本発明によるポリマーナノコンポジットは、電界グレーディング材料として使用してもよい。電界グレーディング材料と結びつく重要な特性は、電気抵抗率、パーコレーション閾値(percolation limit)、電気破壊強度、及び複素誘電定数(誘電率)を含む。電界グレーディング用途に有効なナノ粒子の量(「電界グレーディング有効量」)は典型的に、約40容量%未満であり、好ましくは約30容量%未満であり、より好ましくは約20容量%未満である。例えば、ZnOに対して、約40容量%未満は約80重量%未満に相当する。ナノコンポジットはまた、絶縁材料として使用してもよい。絶縁用途に有効なナノ粒子の量(「絶縁有効量」)は典型的に、約20容量%未満であり、好ましくは約10容量%未満であり、より好ましくは約5容量%未満である。これは典型的に、金属酸化物粒子に対しては、約5重量%未満である。そのようなナノコンポジットに使用するナノ粒子は、カーボンブラックの他に上記のものを含む。二酸化チタンは絶縁材料に使用する好ましい材料である。
【0020】
ポリマーナノコンポジットを抵抗性電界グレーディング材料として使用する場合、ナノコンポジットは、半導体材料、即ち0eVより大きく約5eVより小さいエネルギーバンドギャップを有する材料、好ましくはZnO又はSiCからなる充填剤を含む。ZnO又はSiCのような半導体充填剤材料を使用すると通常結果的に、電界グレーディング材料の非線形の電気抵抗、即ち電界増加と共に減少する抵抗となる。抵抗のこの非線形性は、前記のある種の用途において好ましくあり得る。抵抗の非線形性の開始、即ち抵抗が本質的に線形の作用から非線形の作用へと変化する電界強度は、充填剤の粒径減少とともに増加する。従って、本発明のこの変異態様による材料は、より大きいサイズの粒子からなる充填剤を含む対応材料に比べて、抵抗の非線形性の開始がより高い電界強度にあることを示す。抵抗の非線形性の開始がより高い電界強度にある場合、高電界において、信頼できる抵抗性電界グレーディングが可能となる。これを適当な容量性電界グレーディング特性と組み合わせてもよい。
【0021】
ポリマーナノコンポジットを容量性電界グレーディング材料として使用する場合、充填剤は、そのバルク(bulk)が無限高周波にける誘電定数少なくとも5を有する材料からなり、好ましくは二酸化アルミニウム、二酸化チタン又はチタン酸バリウムからなる。これが意味するのは、電界グレーディング材料が抵抗性電界グレーディング特性との可能な組み合わせにおいて有効な容量性電界グレーディング特性を有するということである。充填剤を有するポリマーマトリックスからなる材料の誘電定数は、高い誘電定数の充填剤粒子のサイズに全く依存しないということが知られている。しかしながら、驚くべきことに、充填剤粒子の少なくとも一寸法が100nm以下の寸法を有する程度まで、充填剤における粒子のサイズが減少する場合、誘電定数に劇的な増加があるということを見出したのである。従って、充填剤粒子の少なくとも一寸法が100nm以下の寸法を有する程度まで、充填剤における高い誘電定数の粒子のサイズを減少することにより、望ましい誘電定数を有する電界グレーディング材料を、より大きいサイズの粒子からなる充填剤を含む対応材料に比べて本質的により低い充填剤濃度で得ることができる。
【0022】
本発明のもう一つの観点において、ナノ粒子充填剤の表面はナノコンポジット製造に先立ち、有機シラン化合物又は有機チタネート化合物等のカップリング剤を用いる処理により修飾される。表面を修飾したナノ粒子は、ポリマーマトリックスの中に均一に又は不均一に分布してもよい。カップリング剤はコンポジット材料の強化材と樹脂マトリックスとの双方と反応できる化学物質であり、無機充填剤又は繊維を有機樹脂と結合させて、その境界面により強い結合を形成又は促進してもよい。カップリング剤は、強化材に対して溶液から又は気相から付与してもよいし、樹脂に添加してもよいし、又はその両方でもよい。カップリング剤は、ポリマーマトリックスとナノ粒子充填剤との間の境界面として働き、二者の間に化学的な橋を形成する。例は、有機トリアルコキシシラン、チタネート、及びジルコネートを含む。シランカップリング剤は、式
(化1)
Si2n+2
で表されるシラン、及びナノ粒子充填剤のような無機材料を有機樹脂に結合する能力を有する他のモノマーケイ素化合物である。接着メカニズムは、シラン構造にある二つの基、つまり加水分解できる基(通常アルコキシ基又は塩素基)及び有機官能基、に起因する。Si(OR)部分が無機強化材と反応し、有機官能基(ビニル基、アミノ基、エポキシ基等)が樹脂と反応する。カップリング剤は、前処理として無機材料に付与してもよいし、及び/又はポリマー又は樹脂に添加してもよい。チタネート及びジルコネートカプラーは、典型的に1〜3個のペンダント有機官能基を有するアルコキシチタネート及びジルコネートの一族である。チタネートカプラーはまた、はるかに高いローディングを可能にするか、及び/又はよりよいフローを達成するための可塑剤として働いてもよい。
【0023】
本発明のナノコンポジットのナノ粒子表面を修飾するのに有用な有機シラン化合物は、式:
(化2)
SiR(4−n)
を有し、n個の加水分解できるR基を含み、前記式において、nは1〜3であり、Rは通常塩素基又はアルコキシ基である。Rは、アルキル基、アルキルアミノ基、アリール基、アミノエポキシ基、アセトキシ基、メルカプト基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基であってもよい。好ましくは、有機基は、メチル基、デシル基、オクチル基、ビニル基、アミノプロピル基及び/又はアセトキシ基である。ポリエチレンのような疎水性ポリマーに対しては、例えば、炭素原子少なくとも10個を有する非極性のアルキル基が改良特性を生じることがある。エポキシ樹脂のような親水性ポリマーに対しては、Rとしては好ましくは、アミノ基又はエポキシ基のような極性の官能基が含まれることがある。使用してもよい疎水性シランの例としては、n−デシルトリクロロシラン、n−デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルメトキシジクロロシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、及びウンデシルトリクロロシランが含まれる。有機官能基を含むシランの例は、n−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、n−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(methacryloxypropyltrimethoxysilane)、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、アセトキシエチルトリメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル;3−acryloxypropyl)トリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、(3−シアノイソブチル)−トリクロロシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、及びn−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが含まれる。ジクロロシランとしては、アリルジクロロシラン、アリルジクロロシラン、及びアリルジクロロシランが含まれる。
【0024】
チタネート及びジルコネートカプラーは、テトラアルコキシチタネート
(化3)
[Ti(OR)
及びテトラアルコキシジルコネート
(化4)
[Zr(OR)
(ここで、Rは、アルキル基、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、又はt−ブチル基である)、並びに有機チタネート
(化5)
[RTiR(4−n)
及び有機ジルコネート
(化6)
[RZrR(4−n)
を含む。最も普通のアルコキシ基は、メトキシ基、及びエトキシ基である。チタネートカプラーの例は、チタン・メタクリレート・トリイソプロポキシドである。
【0025】
本発明の文脈において、「ナノ粒子」は、1〜100ナノメートルの間の平均粒径又は粒サイズを有する微粒子状材料と定義される。ナノ粒子は、ミクロン範囲即ち約1μmより大きい粒径を有する粒子とは区別できる。約1nm〜約100nm未満の範囲のいずれのサイズのナノ粒子でも本発明に使用してもよい。粒径は好ましくは約2nm〜約80nmの範囲にあり、より好ましくは約5nm〜約50nmの、最も好ましくは5〜30nmの範囲にある。
【0026】
ナノ粒子の粒径分布は典型的には狭い。狭い粒径分布は、90%を超える粒子が平均粒径の0.2〜2倍の範囲の粒径を有するような分布と定義される。好ましくは、95%を超える粒子がこの範囲の粒径を有し、より好ましくは99%を超える粒子がこの範囲の粒径を有する。粒径分布を定義するもう一つの方法は、平均粒径と分布の幅とによるものである。この方法はナノ粒子業界で使用される。極大値の2分の1における分布曲線の幅(full width−half max 又はFWHM)と平均粒径との関係が、分布の広さ又は狭さの目安として使用される。例えば、平均粒径を超えるFWHM値を有する分布は、比較的広いとみなされる。特に、狭い粒径分布は、FWHMの観点からは、分布曲線のFWHMが平均粒径プラス平均の40%と平均粒径マイナス平均の40%との差に等しいような分布と定義される。(これを平均の40%の2倍、又は平均の80%と簡略化してもよい。この簡略化した方式を使用すると、FWHMは平均の80%に等しいかそれ未満である)好ましくは、FWHMは平均プラス30%と平均マイナス30%との差(平均の60%)以下である。より好ましくは、FWHMは平均プラス20%と平均マイナス20%との差(平均の40%)以下である。
【0027】
本発明に有用なナノ粒子は、その形状が準球形であるような等軸のものであってもよい。粒子の長軸は粒子を貫く最も長い軸と定義され、短軸は粒子を貫く最も短い軸を意味する。本発明に使用するナノ粒子の長軸は短軸におよそ等しく、結果として準球形の粒子形状となる。この場合、ナノ粒子の少なくとも90%に対して、短軸の長さの長軸の長さに対する比は、少なくとも0.1であり、好ましくは0.4、より好ましくは0.8である。
【0028】
非球形ナノ粒子もまた、本発明に使用してもよい。この場合、粒径は粒子の最も小さい次元のサイズと定義される。例えば、およそ1−<100nmの平均粒子直径を有するナノチューブを使用してもよいし、そのような粒子の粒径は粒子直径1−<100nmである。ナノチューブは非常に高いアスペクト比、即ち長さの直径に対する比を有し、典型的には25〜1,000,000の範囲にある。ナノチューブでも等軸のものでもなく1〜25の間のアスペクト比を有するナノ粒子を使用してもよい。
【0029】
更に、本発明に利用するナノ粒子の表面は典型的に、化学的にきれいな、即ち合成プロセスで使用する化学薬品の残留物により汚染されていない状態にある。ガス凝縮法のように気相からナノ粒子を製造する方法は、例えば米国特許第5,128,081号明細書及び第5,320,800号明細書に記載されており、その内容は参照することによりここに含まれるのであるが、典型的にきれいな表面をもたらす。湿式化学法により製造されるナノ粒子は、そのプロセスに使用した化学薬品からの残留物により汚染されていることがしばしばある。これらの粒子は、化学的にきれいな表面を与えるために、製造後の清浄化工程にかけてもよい。例えば、二酸化チタン粒子の製造プロセスの多くは、TiClのTiOへの酸化を含む。このプロセスにより製造した粒子の表面はTiClからの残留塩素イオンを含む。必要なら、これらの残留物は化学的清浄化工程により除去してもよい。ガス凝縮法により製造したナノ粒子は、溶媒や試薬や中間体を使用しないため、プロセス残留物による汚染はない。従って、本発明に使用する酸化亜鉛又は二酸化チタンは好ましくは、ガス凝縮法により製造される。
【0030】
ナノ粒子の製造のためのガス凝縮法は典型的に、金属前駆物質の蒸発を含み、金属前駆物質から1気圧以下のガス圧でナノ粒子が合成されるのである。蒸発した金属はガス雰囲気において凝縮して小さい粒子になる。生じたナノ粒子は反応器内の表面上に集める。揮発可能な金属又は金属化合物はいずれもこのプロセスに使用可能である。金属の例は、チタン、銅、銀、金、白金、及びパラジウムである。金属ナノ粒子は更に、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物、フッ化物、及び塩化物を形成するために、反応性のガス雰囲気にさらしてもよい。金属酸化物ナノ粒子の例は、酸化アルミニウム、酸化スズアンチモン、酸化セリウム、酸化銅、酸化インジウム、酸化スズインジウム、酸化鉄、酸化スズ、二酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ネオジム、及び酸化ストロンチウムからなるナノ粒子である。金属チタン酸塩ナノ粒子及び金属ケイ酸塩ナノ粒子(例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、及びケイ酸ジルコニウムを挙げることができる)もまた使用してもよい。ガス凝縮法により合成した様々な粒径の酸化亜鉛ナノ粒子は、上のリストに記載したナノ粒子の多くと共に、Nanophase Technologies Corporationから市販されている。
【0031】
本発明の文脈において、アルキル基は、直鎖状、分岐状、又は環状炭化水素構造及びそれらの組み合わせを含むことを意味し、例えば、低級アルキル基及び高級アルキル基を挙げることができる。好ましいアルキル基は、C20又はそれ以下のアルキル基である。低級アルキル基は、炭素原子1〜6個の、好ましくは炭素原子1〜4個のアルキル基を指し、そして、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、並びにn−、s−及びt−ブチル基を含む。高級アルキル基は、炭素原子7個又はそれ以上、好ましくは炭素原子7〜20個を有するアルキル基であり、n−、s−及びt−ヘプチル基、オクチル基、及びドデシル基を含む。シクロアルキル基はアルキル基の下位集合であり、炭素原子3〜8個の環状炭化水素基を含む。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びノルボルニル基を含む。
【0032】
アリール基及びヘテロアリール基は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選択されるヘテロ原子0〜3個を含む5−又は6−員の芳香環基又は複素芳香環基;窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選択されるヘテロ原子0〜3個を含む二環式9−又は10−員の芳香環基又は複素芳香環基;又は窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選択されるヘテロ原子0〜3個を含む三環式13−又は14−員の芳香環基又は複素芳香環基を意味する。芳香族6−〜14−員の炭素環式環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、及びフルオレンを含み、5−〜10−員の芳香族複素環式環としては、例えば、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールを含む。
【0033】
アルキルアリール基は、アリール環に結合したアルキル残基を意味する。例としては、ベンジル基及びフェネチル基を挙げることができる。ヘテロアルキルアリール基は、ヘテロアリール環に結合したアルキル残基を意味する。例としては、ピリジニルメチル基及びピリミジニルエチル基を挙げることができる。アリールアルキル基は、1個又はそれ以上のアルキル基を結合して有するアリール残基を意味する。例としては、トリル基及びメシチル基を挙げることができる。
【0034】
アルコキシ基又はアルコキシル基は、酸素原子を介して親構造に結合される炭素原子1〜8個の直鎖状、分岐状、環状構造、及びそれらの組み合わせの基を指す。例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基を含む。低級アルコキシ基は1〜4個の炭素原子を含む基を指す。
【0035】
アシル基は、親構造にカルボニル官能性を介して結合される炭素原子1〜8個の直鎖状、分岐状、環状構造、飽和、不飽和及び芳香族、並びにそれらの組み合わせの基を指す。アシル残基の1個以上の炭素原子は、親構造に結合する点がカルボニル基にとどまる限り、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子で置換されてもよい。例としては、アセチル基、ベンゾイル基、プロピオニル基、イソブチリル基、t−ブトキシカルボニル基、及びベンジルオキシカルボニル基を挙げることができる。低級アシル基は1〜4個の炭素原子を含む基を指す。
【0036】
複素環基は、1〜2個の炭素原子が、例えば酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のヘテロ原子で置換されているシクロアルキル残基又はアリール残基を意味する。本発明の範囲内にある複素環基の例としては、ピロリジン基、ピラゾール基、ピロール基、インドール基、キノリン基、イソキノリン基、テトラヒドロイソキノリン基、ベンゾフラン基、ベンゾジオキサン基、ベンゾジオキソール基(置換基として存在する場合、通常、メチレンジオキシフェニル基と呼ぶ)、テトラゾール基、モルホリン基、チアゾール基、ピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、チオフェン基、フラン基、オキサゾール基、オキサゾリン基、イソキサゾール基、ジオキサン基、及びテトラヒドロフラン基を含む。
【0037】
置換したというのは、以下に限定されるものではないが、アルキル基、アルキルアリール基、アリール基、アリールアルキル基、及びヘテロアリール基を挙げることができる残基について言及しており、その場合、その残基の水素原子3個までが、低級アルキル基、置換アルキル基、置換アルキニル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシ基、カルボキシアルコキシ基(carboxalkoxy)、カルボキサミド基、アシルオキシ基、アミジノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、OCH(COOH)基、シアノ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、スルホキシド基、スルホン基、フェニル基、ベンジル基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヘテロアリール基、又はヘテロアリールオキシ基で置き換えられている。
【0038】
ハロアルキル基は、水素原子1個以上がハロゲン原子で置換されているアルキル残基を指す。ハロアルキル基の用語はペルハロアルキル基を含む。本発明の範囲内にあるハロアルキル基の例としては、CHF、CHF、及びCFを挙げることができる。
【実施例】
【0039】
《実施例1: LDPEマトリックスにおけるZnOナノ粒子の不均一分布》
実験:
ZnOナノ粒子は、Nanophase Technologies Corporationにより提供され、その平均粒径はTEM観察からおよそ50nmであると決定された。充填剤粒子の一様な分布のために、ナノ粒子を、トルク・レオメーター(Haak batch mixer system 90)を使用して、低密度ポリエチレン(LDPE、DOW681I)ペレットと共に溶融混合した。得られたコンポジットは次いで、電界放射走査型電子顕微鏡(field emission scanning electron microscope;FESEM、JEOL JSM−6335F)を用いて検査し、そして、充填剤がポリマーマトリックス中によく分散し一様に分布していることを観察した。マトリックス中充填剤の一様でない分布は、ナノ粒子を、Ultra Chemical Inc.から得たミクロンサイズのLDPE粉末と共にボールミル粉砕することにより達成した。粒子の混合物を室温で24時間ボールミル粉砕して、ZnOナノ粒子がLDPE粒子の軟らかい表面に埋め込まれた。LDPE粉末及びZnOナノ粒子のいずれもボールミル粉砕中に壊れてより小さい断片になることは観察されなかった。同時にそれらは、ZnOナノ粒子で被覆された多数のLDPE粉末粒子からなる直径およそ1mmの大きいアグロメレートを形成した。前記混合物を次いで、およそ170℃でホットプレスして、直径7.5cm、厚さおよそ0.03cmのディスク型標本を形成した。均一でない充填剤分布を有するコンポジットのミクロ構造をFESEMで検査した。表面伝導の如何なる影響をも除去するための保護リングを有するディスク標本(disc specimens)の厚さ方向に10kV/cmの電界を印加して、その電気抵抗率を測定した。
【0040】
結果:
標本を液体窒素中で砕いて、そして、前記破砕表面をFESEMで検査した。充填剤粒子の均一な及び均一でない分布を検査した。ポリマーマトリックスは充填剤アグリゲートよりも機械的に強かったので、コンポジットは主に充填剤アグリゲートを貫通して壊れた。それ故、充填剤ナノ粒子がコンポジットの破砕表面に露出した。アグリゲート粒子の塊が顕微鏡写真に現れるが、個々の粒子は相互によく分離している。ZnOナノ粒子は、ボールミル粉砕工程中にLDPE粒子の表面に埋め込まれた後、150℃での圧縮成形の間にLDPE粒子間境界にアグリゲートしたままでいる。しかしながら、LDPE粒子は溶融し、粒子間スペース中に押し出されているので、結果として、LDPEコア領域間のコンポジット層は充填剤濃度が高くなり、LDPEコア領域の粒子濃度は低いままである。このプロセスはホットプレス下に進行するので、結果として生じる構造は、充填剤濃度の高い領域と低い領域との均一でない混合物へ発達する。充填剤濃度が低いところでは、その粒子はLDPE粒子の表面を完全には覆うことなく、LDPEコアがつながって連続したマトリックス相を形成し、ZnOナノ粒子が塊で散らばったまま残っている。充填剤濃度が増すにつれて、体積分率の高い領域は標本全体にわたって拡がる多くの経路を形成する。
【0041】
充填剤濃度の異なるディスク標本の電気抵抗率を測定し、そして、それを図1に示す。比較のため、均一なミクロンサイズ及びナノサイズ充填剤分布を有する標本の抵抗率も示す。パーコレーション閾値は、粒径が減少するにつれて減少し、そして、均一でない充填剤分布の結果としてはなお一層減少した。均一でない分布を有する試料の充填剤含量の関数としての抵抗率曲線の傾きは、均一に分布したミクロン粒子を有するコンポジットの傾きに近かった。一方、均一に分布したナノ粒子を有するコンポジットの抵抗率は、パーコレーション閾値以上でゆっくりと減少を示したが、充填剤濃度が更に増加するにつれて速やかな減少が続いた。電気伝導メカニズムが二組の試料に対して異なることが考えられる。充填剤粒子の均一な分布を有するコンポジットにおいて、電子は、絶縁マトリックスの薄い層を通して粒子の間のポテンシャル障壁を突き抜けることができ、このトンネル効果が標本全体にわたり起きる。これの結果がより低い傾きとなる。均一でない充填剤分布を有するコンポジットにおいては、電子は、隣接して接触する粒子の間を輸送されるか又は非常に短い粒子間距離をこえてポテンシャル障壁を突き抜ける。このメカニズムは伝導率を増すが、電気伝導は主に相対的に純粋なLDPE粒の間の高度に充填された領域のネットワークに沿って生じる。従って、均一でないコンポジットに対する電気伝導経路は、所定濃度に対して、均一に分布したコンポジットにおける電気伝導経路に比べて、より伝導性であるが、空間的により小さい限られた領域に限定されている。しかしながら、コンポジットの正味の抵抗率は、これら二つの競合する効果の組み合わせにより決定される。十分に高い充填剤濃度においては、全ての試料が充填剤濃度とともに抵抗率の同様な急降下を示す。これは接触粒子を通しての電気伝導メカニズムを示している。
【0042】
図2は、均一でないナノコンポジットの非線形電気抵抗率を印加電界強度の関数として示す。パーコレートしたコンポジットの抵抗率は、印加電界強度が増加するにつれて減少した。各曲線の傾きは、電流−電圧(I−V)関係における非線形性の程度を示す。純粋なLDPEの抵抗率は、図2に示す電界強度範囲では何ら顕著な変化を示さなかった。この電界強度範囲における非線形性は、ZnOナノ粒子から受け継ぐものであり、そして、ZnO充填剤濃度とともに増加することを示す。非線形性の増加は、ZnOナノ粒子のまわりの増加した局所電界から理解することができる。コンポジットにおける電界線は、絶縁マトリックスの伝導率よりもはるかに高い伝導率を有するナノ粒子の存在により歪んでいる。等電位線は粒子から押しのけられ、ナノ粒子表面のまわりの局所電界はこの電界線の歪みのために平均印加電界強度よりも大きくなる。この増加した局所電界の効果は、充填剤粒子分布が均一でなくなるほど強くなる。最も強い局所電界は、充填剤の高濃度領域と低濃度領域の間の境界面にある粒子に対して感じられる。ZnOの非線形性は高い電界下にあるほど大きくなり、均一でない充填剤分布を有するコンポジットは、コンポジット内の(平均印加電界に比べて)増加した局所電界のためにより大きい非線形性示す。
【0043】
結論:
ポリマーナノコンポジットの電気抵抗率に対するパーコレーション閾値を、充填剤のサイズのみならず充填剤粒子の分布状態によって制御できることが示された。コンポジットを通る電気伝導メカニズムはまた、充填剤粒子分布とともに変化する。電気抵抗率におけるこの変化は、充填剤粒子のサイズのみならずミクロ構造の制御により注文どおりの電気特性を有するナノコンポジットを設計する可能性を示唆する。様々なサイズの充填剤とマトリックス粉末を使用することにより、充填剤粒子分布のよりよい制御及び、それ故に、ミクロ構造のよりよい制御が期待される。
【0044】
ZnOナノ粒子充填剤を含むLDPEマトリックスナノコンポジットの非線形電気抵抗率はまた、コンポジット内のこれらのナノ粒子の空間的分布によっても影響された。充填剤とマトリックスとの間の抵抗率の大きな違いのために、ナノ粒子のまわりの電界分布が変化し、標本の厚さ方向に印加された平均電界強度よりも高い局所電界強度をもたらすのである。
【0045】
《実施例2: ZnO/LDPEナノコンポジットの誘電特性》
実験:
ZnO/LDPEナノコンポジットを、市販品級のDOW681ILDPEと49nmのZnOナノ粒子とをHaake batch mixer中で溶融混合することにより製造した。ZnOナノ粒子は、Nanophase Technologies Corporationから得た。ポリマーマトリックスの如何なる熱分解をも避けるために、混合時間は200℃で10〜13分に設定した。次いで、誘電率測定用に、標本をホットプレスして直径6.35cmのディスク型にした。
【0046】
ナノスケールの充填剤の添加から生ずる特性変化を実現するために、充填剤はマトリックス内によく分散しなければならない。分散を観察するために、コンポジットをそのガラス転移温度以下に冷却して砕いた。破砕表面を、5kVで操作される電界放射走査型電子顕微鏡(JEOL JSM−6335F)を用いて検査した。SEM像は粒子が極めてよく分散していることを示した。
【0047】
ナノコンポジットの誘電率は、電気容量測定中のエッジ効果を最小限に抑えるために接地した保護リングとともに、Quadtech 1689LCR meter及び自家製の電極固定具を使用して測定した。
【0048】
結果及び議論:
ナノコンポジットの誘電率を測定したところ、次の関係式
【数1】

に従い、コンポジット中のZnO粒子の体積含有率に概略比例していた。
【0049】
この関係式は、低誘電定数εを有するマトリックスの中に分散した誘電定数εを有し、それぞれ体積分率v及びvを有する球形粒子混合物に対してMaxwellにより導かれた。図3に示す傾向は、ナノ粒子の比表面積がはるかに高いにもかかわらず、ナノ粒子充填剤とミクロン粒子充填剤との両方に対して同様であった。従って、ZnO充填剤とLDPEマトリックスとの間の境界面は、コンポジットの誘電率に対して明白な寄与をしていない。
【0050】
ナノ粒子の高度の表面積は、ナノ粒子の表面をシランカップリング剤でコーティングすることによりコンポジット中に余分の有機材料を導入するために使用することができる。そのようなコーティングが粒子の表面上にある場合、コーティング剤の誘電特性に依存して誘電率を増加できる。それは、図3に示すように、様々なカップリング剤を用いた充填剤濃度14vol%のコンポジットで実証される。
【0051】
コンポジットの誘電率の温度依存性もまた、温度を上げたシリコーン油浴中に電極と標本を置くことにより測定した。純粋なポリエチレンは、温度増加につれて誘電率のわずかな減少を示した。コンポジットに対しては、より高温での誘電率の減少は、温度とともに増加するZnO充填剤粒子の誘電率により補償された。約20wt%ZnOにおいて、誘電率は試験した温度範囲にわたり本質的に一定のままであった。ところが一方約40wt%ZnOの試料に対しては、温度が高い方において、測定可能な増加が観察された。より高濃度のZnO(80wt%)を有する、測定されるコンポジットは、温度とともに誘電率の強い増加を示した。温度とともに誘電率を増加するという同様の作用がLDPE/ZnOミクロン粒子コンポジットで観察された。
【0052】
結論:
研究したZnO/LDPEナノコンポジットの誘電率は、充填剤として使用したナノ粒子の高い表面積や小さい粒径により影響されなかった。ZnOとLDPEとの間の境界面は、誘電特性に寄与しているようには見えない。一方、ナノ粒子充填剤の高い表面積は、コンポジット中により高い誘電率を有する表面コーティング剤を導入するために使用することができる。均一に分布したナノ粒子のZnO体積含有率を増加するとともに、抵抗率は指数関数的に減少した。しかし、その減少は、急激なパーコレーション開始に対して期待されるよりもかなり小さい割合であった。誘電率はZnO体積含有率を増すとともに増加した。濃度の低い方での電気伝導はZnO充填剤粒子間のトンネル効果によると思われる。十分に高い濃度においては、粒子から粒子への直接的伝導が結果として起こる。
【0053】
《実施例3: TiO/LDPEナノコンポジットの破壊強度》
実験方法:
この研究において使用したマトリックスは、低密度ポリエチレン(LDPE)DOW681Iであった。LDPE681Iの基本的特性は、密度0.922g/cc及びメルトインデックス1.2g/10minである。Aldrichからのミクロンスケール(1〜2μm)のTiO及びNanophase Technologies Corporationからのナノサイズ(平均直径23nm)のTiOの両方を充填剤として使用した。TiO粒子5重量%を溶融混合機において130℃でLDPE中に混合した。約14MPaの圧力下に160℃で圧縮成形を使用して、厚さ10〜40μmのフィルムを得た。フィルムの温度を、圧力下に型の中でゆっくり50〜60℃まで低下させた後に、フィルムを型から取り出し、室温まで空冷した。次いで、残余内部応力が実験結果に影響する場合に備えて、各試料を破壊強度測定前少なくとも1日間デシケーター中に保管した。結果に対するプロセスの影響を減らすために、未充填の純粋なLDPEを、正確に同じプロセスを通過させた。三つの異なる表面状態を有するTiO粒子を使用した。即ち、入手したままのもの(as−recieved)、195℃で24hrs真空乾燥したもの、及び表面を修飾したものである。
【0054】
表面修飾はトルエン還流により実施した。N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピル−トリメトキシシラン(AEAPS)及びデシルトリクロロシラン(Decyl)の両方とも、Gelest. Inc.が提供しているものを、カップリング剤として使用した。トルエンは最初にN雰囲気中CaH粉末により乾燥し、蒸留により精製した。10グラムの乾燥ナノTiOを乾燥トルエン中5分間70%能力の超音波処理により分散した。ナノTiO/トルエン混合物にカップリング剤をゆっくり添加した。次いで、その混合物を135℃の油浴中に置き、機械的に24hrs撹拌した。得られたスラリーを6,000rpmで10分間遠心分離し、次いでトルエンで2回洗浄した。最後に、修飾した粒子を真空オーブン中約30℃で24hrs乾燥した。
【0055】
破壊測定のために、球−平面装置を使用した。球の直径は1/4インチ(0.635cm)であった。球形電極は高電位に接続し、一方平面電極はアース電位(ground potential)に接続した。試験は段階的電圧を使用して室温で行なった。各電圧の段差は100Vであり、およそ1秒間維持してから、高電圧電極を接地し、次の段階のより高電圧を印加した。このプロセスを、急激な電流増加を示す破壊が起きるまで続けた。破壊強度は、破壊時の電圧を試料の厚さで除した値として定義される。吸水率は、試料を50℃で水中に浸しその重量変化を測定することにより調べた。
【0056】
破壊データを解析するために、Weibull分布を使用した。この分布は破壊の解析に最適であると考えられてきた。電気的破壊の累積確率は次の形式をとる。
【数2】

【0057】
ここで、βは形状パラメータであり、Eは累積破壊確率(cumulative failure probability)0.632における破壊強度を表すスケールパラメータである。発明者は、いくつかの組の破壊データ間の差における有意性を示すためにEを使用した。
【0058】
結果:
破壊強度は、材料中に「絶縁体から導体へ」の変化を引き起こし、電流の急激な増加を伴う電界強度と定義される。純粋なLDPE試料、及び入手したままのナノTiO粒子、乾燥したナノTiO粒子又は乾燥したミクロTiO粒子を含む試料の破壊強度のWeibull分布をプロットした。これら4種の試料に対するWeibullプロットの直線回帰から得られるEの差は、表1に明瞭に示される。
【表1】

【0059】
入手したままのナノスケールTiOを5wt%混合した場合、E値3.78MV/cmを有する純粋なLDPEに比べて、破壊強度の40%減少が観察された。95%信頼区間(ここに示していない)は、この差が有意であることを示している。乾燥ナノスケールTiO/LDPEの破壊強度、E、は3.51MV/cmであり、純粋なLDPEの値に近かった。95%信頼限界の部分的重複のため、乾燥ナノスケールTiOを含む試料の破壊強度は、未充填LDPEの値と有意差がない。しかしながら、入手したままのナノスケールチタニア/LDPEコンポジットと、乾燥したナノスケールチタニア/LDPEコンポジットとの間の破壊強度の差は有意であり、ナノ粒子表面を乾燥することは破壊強度に有意の影響があることを示している。
【0060】
この結論は、入手したままのナノスケールTiOを充填した試料のEと乾燥ミクロTiOを充填した試料のEとを比較することにより更に証明された。後者の添加粒子の平均サイズは前者の添加粒子の平均サイズよりも40〜90倍大きいけれども、後者の方がより高い破壊強度を示す。このことは、ナノ充填剤表面への水の吸収が、破壊強度に対して、粒子サイズよりもはるかに大きい効果があることを示している。
【0061】
酸化物ナノ粒子の表面は、常にヒドロキシル基(M−OH)により覆われており、そして、表面ヒドロキシル基に水素結合した水を物理吸着している。乾燥処理前と後の酸化物表面を調べるために熱重量分析(TGA)を用いた。300℃以下での乾燥後重量減少がないことにより示されるように、195℃での乾燥プロセスは表面水を効果的に除去していたことがわかった。乾燥後、300℃以上で重量減少があり、表面に未だヒドロキシル基があったことを示した。ナノ粒子表面に物理吸着した水層が全部除去されたために300℃での重量減少の差が生じることを仮定すると、そのとき、表面水は入手したままのナノスケールTiOにおいて約0.93wt%を占める。入手したままのナノ粒子5wt%をポリマーマトリックス中に入れた場合、全含水量は0.047wt%という低い値まで低下する。如何にしてそのように少量の水が破壊強度に対してそのような著しい効果を有するのかを追求することは価値がある。可能な理由を示す。最初に、ナノスケールTiO表面の導電性水層は導電性電力損失を引き起こす。これが局所的に温度増加をもたらすかもしれず、周囲のポリマーの焼成と分解を引き起こすこともある。こうして、熱的な破壊が起きる。加えて、導電性の水層は、空間電荷分布(space charge distribution)を変えることにより局所の電界歪みを更に増加するかもしれない。これが境界面を横切って破壊をもたらす可能性がある。水の除去に加えて、境界面を乾燥することはよりよい境界面をもたらす。これは、乾燥粒子が水に浮きやすいのに対して湿った粒子は沈みやすいことにより観察されるように、その表面の親水性がより少ないからである。最後に、ナノ充填剤粒子により引き起こされたポリマーの形態学的変化は、乾燥ナノスケールTiO充填試料の破壊強度の増加に寄与することもある。ナノスケールTiOが核生成場所として働き、LDPEの不均一な結晶核生成を促進するという可能性がある。核生成中心の表面張力は、ラメラの厚さを決める因子の一つである。水の存在は、異なる表面エネルギーを引き起こし、それ故異なるラメラ厚さを引き起こし、結果的にそのことが破壊強度に影響することもある。そのメカニズムを完全に理解するためには、もっと多くの研究がなされる必要がある。
【0062】
図4は、未充填LDPE、乾燥ナノスケールTiO充填LDPE及びDecylコートナノスケールTiO充填LDPEの吸水率を示す。水は純粋なLDPEにはわずか2日後に飽和するが、乾燥ナノスケールTiO充填LDPEに対しては、水の吸収は17日後でさえも続いていた。これは容易に理解できる。明らかに、吸水率は疎水性マトリックス中にかなり多くの親水性ナノ粒子を入れることにより向上した。水が時間とともに粒子上に再吸着し破壊強度を減少し得るという可能性のために、水への抵抗を増すようナノスケールTiO表面をコートするため、疎水性のDecylを使用した。表面修飾の結果、吸水率が減少したことが、図4からわかる。未充填PEのEを、入手したままのナノスケールTiO充填LDPE及びAEAPSコートナノスケールTiO充填LDPEのEと比較した。
【0063】
表面修飾後にEは依然として未充填LDPEよりも低いけれども、コートしないナノスケールTiO充填PEよりも約40%高い。この場合もやはり、表面の化学がEに重要な影響を有することを示している。それは、AEAPS中の極性基の存在のため、試料における電子散乱(electron scattering)の増加か、又は、空間電荷分布の変化かの何れかによる可能性がかなりある。この結果は将来性がある。非常に「よい」カップリング剤を選択することにより、得られるEを純粋なLDPEのEよりも一層高くできることを期待することができる。
【0064】
破壊強度を完全に特徴づけるために、Eだけでなくデータの拡がりも考慮しなければならない。直線回帰法で決定した形状パラメータβは、破壊強度の拡がりを表す。βは、バラツキの増加とともに減少する傾向にある。本発明における結果は、βと、表1に示す標準偏差とを比較することにより同様の傾向を示した。乾燥ナノスケールTiO充填試料を除いては、入手したままのナノスケールTiO、乾燥ミクロンTiO、又はAEAPSコートナノスケールTiOで充填したコンポジットに対するデータは、未充填LDPEのデータよりもはるかに低いバラツキを示す。
【0065】
要約すれば、例えば、表面水及び表面シランの存在の表面化学は、破壊強度に対してナノ粒子のサイズよりもはるかに意味のある影響を有していた。乾燥ナノスケールTiOを使用することにより、累積破壊確率63.2%における破壊強度Eは、入手したままのナノスケールTiOを充填した試料と比べて50%だけ増加し、未充填LDPEの値に近かった。AEAPSコートナノスケールTiO充填試料は、コートしないナノスケールTiO充填試料の値と比べて、Eで40%増加を示した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスの中に分布しているナノ粒子充填剤の電界グレーディング有効量を含む電界グレーディング材料であって、前記ナノ粒子充填剤がポリマーマトリックスの中に不均一に分布している前記電界グレーディング材料。
【請求項2】
ナノ粒子充填剤が、0eV〜5eVの範囲のエネルギーバンドギャップを有する半導体材料と、無限高周波におけるバルク誘電定数少なくとも5を有する誘電性材料とから選択される、請求項1に記載の電界グレーディング材料。
【請求項3】
ナノ粒子充填剤が半導体材料を含む、請求項1に記載の電界グレーディング材料。
【請求項4】
ナノ粒子充填剤が、ZnO、SnO、InO、CeO、TiO、SiC、BaTiO、Al、SiO及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の電界グレーディング材料。
【請求項5】
ポリマーマトリックスが、ゴム、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性エラストマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電界グレーディング材料。
【請求項6】
ポリマーマトリックスが、ポリオレフィンゴム、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー/プラストマー、シリコーンゴム又は結晶性熱可塑性ポリマー、好ましくは結晶性熱可塑性ポリマー、より好ましくはポリエチレンを含む、請求項5に記載の電界グレーディング材料。
【請求項7】
ポリマーマトリックスが、EPDM及びポリエチレンから選択されるポリマーを含む、請求項5に記載の電界グレーディング材料。
【請求項8】
ポリマーマトリックスが、不混和性ポリマーのポリマーブレンドを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電界グレーディング材料。
【請求項9】
ポリマーブレンドが、ポリエチレン/EPDM、LDPE/HDPE及び無水マレイン酸修飾EPDM/EPDMから選択される、請求項8に記載の電界グレーディング材料。
【請求項10】
ナノ粒子が、2〜80nm、より好ましくは5〜50nm、最も好ましくは5〜30nmの範囲の粒径を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電界グレーディング材料。
【請求項11】
ナノ粒子充填剤が、電界グレーディング材料の40容量%未満、好ましくは電界グレーディング材料の30容量%未満、より好ましくは電界グレーディング材料の20容量%未満を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電界グレーディング材料。
【請求項12】
ナノ粒子充填剤の表面を有機シラン化合物又は有機チタネート化合物による処理で修飾し、有機シラン化合物がアルキル基、アルキルアミノ基、アミノ基及びカルボキシ基から選択される有機基を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の電界グレーディング材料。
【請求項13】
有機基が、メチル基、デシル基、オクチル基、ビニル基、アミノプロピル基及びアセトキシ基から選択される、請求項12に記載の電界グレーディング材料。
【請求項14】
ポリマーマトリックスの中に分布しているナノ粒子充填剤を含む電界グレーディング材料であって、ナノ粒子充填剤の表面を有機シラン化合物又は有機チタネート化合物による処理で修飾し、有機シラン化合物がアルキル基、アルキルアミノ基、アミノ基及びカルボキシ基から選択される有機基を含む、電界グレーディング材料。
【請求項15】
有機基が、メチル基、デシル基、オクチル基、ビニル基、アミノプロピル基及びアセトキシ基から選択される、請求項14に記載の電界グレーディング材料。
【請求項16】
ポリマーマトリックスの中に分布しているカーボンナノチューブ充填剤を含む電界グレーディング材料であって、前記充填剤がポリマーマトリックスの中に不均一に分布しており、そして、ポリマーマトリックスが、ゴム、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性エラストマー、好ましくはポリオレフィンゴム、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー/プラストマー、シリコーンゴム又は結晶性熱可塑性ポリマー、より好ましくは結晶性熱可塑性ポリマー、最も好ましくはポリエチレンを含む、前記電界グレーディング材料。
【請求項17】
ポリマーマトリックスが、EPDM及びポリエチレンから選択されるポリマーを含む、請求項16に記載の電界グレーディング材料。
【請求項18】
電気ケーブルの接続部又は末端部における電界ストレスを軽減する方法であって、前記方法が、電界グレーディング材料として請求項1〜17のいずれか一項に記載の電界グレーディング材料をその接続部又は末端部に導入することを含む、前記方法。
【請求項19】
ポリマーマトリックスの中に分布しているナノ粒子充填剤の絶縁有効量を含む絶縁材料であって、前記ナノ粒子充填剤がポリマーマトリックスの中に不均一に分布している、前記絶縁材料。
【請求項20】
ナノ粒子充填剤が、0eV〜5eVの範囲のエネルギーバンドギャップを有する半導体材料と、無限高周波におけるバルク誘電定数少なくとも5を有する誘電性材料とから選択される、請求項19に記載の絶縁材料。
【請求項21】
ナノ粒子充填剤が半導体材料を含む、請求項19に記載の絶縁材料。
【請求項22】
ナノ粒子充填剤が、ZnO、SnO、InO、CeO、TiO、SiC、BaTiO、Al、SiO及びそれらの混合物から選択される、請求項19に記載の絶縁材料。
【請求項23】
ポリマーマトリックスが、ゴム、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性エラストマーを含む、請求項19〜22のいずれか一項に記載の絶縁材料。
【請求項24】
ポリマーマトリックスが、ポリオレフィンゴム、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー/プラストマー、シリコーンゴム又は結晶性熱可塑性ポリマー、好ましくは結晶性熱可塑性ポリマー、より好ましくはポリエチレンを含む、請求項23に記載の絶縁材料。
【請求項25】
ポリマーマトリックスが、EPDM及びポリエチレンから選択されるポリマーを含む、請求項23に記載の絶縁材料。
【請求項26】
ポリマーマトリックスが、不混和性ポリマーのポリマーブレンドを含む、請求項19〜25のいずれか一項に記載の絶縁材料。
【請求項27】
ポリマーブレンドが、ポリエチレン/EPDM、LDPE/HDPE、及び無水マレイン酸修飾EPDM/EPDMから選択される、請求項26に記載の絶縁材料。
【請求項28】
ナノ粒子が、2〜80nm、より好ましくは5〜50nm、最も好ましくは5〜30nmの範囲の粒径を有する、請求項19〜27のいずれか一項に記載の絶縁材料。
【請求項29】
ナノ粒子充填剤が、絶縁材料の20容量%未満、好ましくは絶縁材料の10容量%未満、最も好ましくは絶縁材料の5容量%未満を含む、請求項19〜28のいずれか一項に記載の絶縁材料。
【請求項30】
ナノ粒子充填剤の表面を有機シラン化合物又は有機チタネート化合物による処理で修飾し、有機シラン化合物がアルキル基、アルキルアミノ基、アミノ基及びカルボキシ基から選択される有機基を含む、請求項19〜29のいずれか一項に記載の絶縁材料。
【請求項31】
有機基が、メチル基、デシル基、オクチル基、ビニル基、アミノプロピル基及びアセトキシ基から選択される、請求項30に記載の絶縁材料。
【請求項32】
ポリマーマトリックスの中に分布しているナノ粒子充填剤を含む絶縁材料であって、前記ナノ粒子充填剤の表面を有機シラン化合物又は有機チタネート化合物による処理で修飾し、有機シラン化合物がアルキル基、アルキルアミノ基、アミノ基及びカルボキシ基から選択される有機基を含む、前記絶縁材料。
【請求項33】
有機基が、メチル基、デシル基、オクチル基、ビニル基、アミノプロピル基及びアセトキシ基から選択される、請求項32に記載の絶縁材料。
【請求項34】
ポリマーマトリックスの中に分布しているカーボンナノチューブ充填剤を含む絶縁材料であって、前記充填剤がポリマーマトリックスの中に不均一に分布しており、そして、ポリマーマトリックスが、ゴム、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性エラストマー、好ましくはポリオレフィンゴム、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー/プラストマー、シリコーンゴム又は結晶性熱可塑性ポリマー、より好ましくは結晶性熱可塑性ポリマー、最も好ましくはポリエチレンを含む、前記絶縁材料。
【請求項35】
ポリマーマトリックスが、EPDM及びポリエチレンから選択されるポリマーを含む、請求項34に記載の絶縁材料。
【請求項36】
電界グレーディング材料を製造する方法であって、
ナノ粒子充填剤を少なくとも一種の微粒子状形ポリマーと混合し、そして、
その混合物を加熱し、ポリマーのマトリックス中にナノ粒子充填剤の不均一な分布を形成すること、
を含む前記方法。
【請求項37】
ポリマー少なくとも1つが不混和性ポリマーを含む、請求項37に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503101(P2007−503101A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524078(P2006−524078)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/027122
【国際公開番号】WO2005/036563
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(502263411)レンセラール ポリテクニック インスティチュート (14)
【Fターム(参考)】