説明

制御弁およびパワーエレメント

【課題】ベローズを感圧部材として用いる制御弁を低コストに提供する。
【解決手段】制御弁1は、ボディ5に形成された特定の圧力室25の圧力を感知して弁部の開閉方向に伸縮するベローズ24を含み、ベローズ24の伸縮動作によりソレノイド力に対抗する駆動力を主弁体18へ付与可能なパワーエレメント6を備える。パワーエレメント6は、ベローズ24の開口部を封止するように接合され、ベローズ24との間に基準圧力室Sを形成するベース部材72と、ベース部材72とベローズ24との間に介装され、ベローズ24を伸長方向に付勢するスプリング74とを含み、ベローズ24とベース部材72とが、ベローズ24の開口端部に沿って連続抵抗溶接が施されることにより気密に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の圧力を感知して駆動力を発生させる感圧部を備える制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
【0003】
この圧縮機としては、エンジンの回転数によらず一定の冷房能力が維持されるように、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機(単に「圧縮機」ともいう)が用いられている。この圧縮機は、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることで連続的に変えられる。このクランク室内の圧力(以下「クランク圧力」という)Pcは、圧縮機の吐出室とクランク室との間、またはクランク室と吸入室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」ともいう)により制御される。
【0004】
このような制御弁として、例えば吸入圧力Psに応じてクランク室への冷媒の導入量を調整することにより、クランク圧力Pcを制御するものがある(例えば特許文献1参照)。この制御弁は、吸入圧力Psを感知して変位する感圧部と、感圧部の駆動力を受けて吐出室からクランク室へ通じる通路を開閉制御する弁部と、感圧部による駆動力の設定値を外部電流によって可変できるソレノイドとを備える。このような制御弁は、吸入圧力Psが外部電流により設定された設定圧力に保持されるように弁部を開閉する。一般に、吸入圧力Psは蒸発器出口の冷媒温度に比例するため、その設定圧力を所定値以上に保持することにより、蒸発器の凍結等を防止できる。また、車両のエンジン負荷が大きいときにはソレノイドをオフにすることで弁部を全開状態とし、クランク圧力Pcを高くして揺動板を回転軸に対してほぼ直角にすることで、圧縮機を最小容量で運転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−45526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような制御弁の感圧部は、一般にダイヤフラムやベローズといった感圧部材に区画された基準圧力室を形成し、その基準圧力室の内外の圧力差による感圧部材の変位によりソレノイド力に対抗する駆動力を発生させるのであるが、その感圧部材としてダイヤフラムとベローズのいずれを採用するかという問題がある。ダイヤフラムは一般に薄膜状の部材からなり部品コストを低く抑えることができるが、得られるストロークが小さいため、制御可能な範囲に規制がかかるといった問題がある。
【0007】
この点、ベローズは蛇腹状の本体が伸縮する構造を有するため、大きなストロークを得ることができる。しかしながら、ベローズそのものが比較的複雑な構造を有するため、ダイヤフラムに比べて部品コストが嵩む。また、感圧部はベローズ単体としては成立せず、そのベローズとの間に基準圧力室を形成するためのベース部材が必要となる。すなわち、このような感圧部は一般に、ベース部材をベローズと同種の金属材料にて構成し、それらをレーザ溶接やプラズマ溶接などにより接合して基準圧力室が形成される。しかし、レーザ溶接やプラズマ溶接等のいわゆる融接を行う場合、一般に設備コストが高い。また、そのベース部材のコストも無視できない。このため、感圧部材としてベローズを採用しつつその製造コストを抑えることが望まれる。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ベローズを感圧部材として用いる制御弁を低コストに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、作動流体の導入ポートおよび導出ポートが設けられたボディと、導入ポートと導出ポートとをつなぐ通路に設けられた弁部を開閉する弁体と、ボディに取り付けられ、供給される電流量に応じて弁体を開弁方向または閉弁方向に駆動するためのソレノイド力を発生するソレノイドと、ボディに形成された特定の圧力室の圧力を感知して弁部の開閉方向に伸縮するベローズを含み、そのベローズの伸縮動作によりソレノイド力に対抗する駆動力を弁体へ付与可能なパワーエレメントと、を備える。パワーエレメントは、ベローズの開口部を封止するように接合され、ベローズとの間に基準圧力室を形成するベース部材と、ベース部材とベローズとの間に介装されて、ベローズを伸長方向に付勢する付勢部材と、を含み、ベローズとベース部材とが、ベローズの開口端部に沿って連続抵抗溶接が施されることにより気密に接合されている。
【0010】
この態様によると、ベローズとベース部材とが、ベローズの開口端部に沿って連続抵抗溶接が施されることにより気密に接合されてパワーエレメントが形成される。すなわち、ベローズとベース部材との接合に抵抗溶接、つまりいわゆる圧接が採用されるため、例えばレーザ溶接やプラズマ溶接といった融接を採用するよりも設備コストを少なくすることができ、結果的に感圧部ひいては制御弁全体のコストを抑えることが可能になる。
【0011】
本発明の別の態様は、パワーエレメントである。このパワーエレメントは、ベース部材と、ベース部材との間に気密な基準圧力室を形成し、基準圧力室の外部圧力を感知して軸線方向に伸縮するベローズと、ベース部材とベローズとの間に介装されてベローズを伸長方向に付勢する付勢部材と、を備え、軸線方向の駆動力を生成するパワーエレメントであって、ベローズとベース部材とが、ベローズの開口端部に沿って連続抵抗溶接が施されることにより気密に接合されている。
【0012】
この態様によると、ベローズとベース部材との接合に連続抵抗溶接が採用されるため、例えばレーザ溶接やプラズマ溶接といった他の溶接よりも設備コストを少なくすることができ、結果的にパワーエレメントのコストを抑えることが可能になる。このため、この態様のパワーエレメントを制御弁に適用することにより、制御弁全体のコストを抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベローズを感圧部材として用いる制御弁を低コストに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【図2】図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【図3】パワーエレメントの製造工程の主要部を示す説明図である。
【図4】制御弁の動作を表す図である。
【図5】制御弁の動作を表す図である。
【図6】第2実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【図7】第3実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
本実施形態の制御弁1は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される図示しない可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)を制御する制御弁(電磁弁)として構成されている。この圧縮機は、冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻されて冷凍サイクルを循環する。圧縮機は、自動車のエンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。制御弁1は、その圧縮機の吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御することで揺動板の角度、ひいてはその圧縮機の吐出容量を変化させる。
【0017】
制御弁1は、圧縮機の吸入圧力Psを設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁1は、吐出冷媒の一部をクランク室へ導入するための冷媒通路を開閉する弁部を含む弁本体2と、その弁部の開度を調整してクランク室へ導入する冷媒流量を制御するソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5の内部に設けられた弁部、ボディ5の内部に設けられて弁部を開閉するための駆動力を発生するパワーエレメント6(「感圧部」として機能する)等を備えている。
【0018】
ボディ5には、その上端側からポート12(「クランク室連通ポート」として機能する)、ポート14(「吐出室連通ポート」として機能する)、ポート16(「吸入室連通ポート」として機能する)が設けられている。ボディ5内には、ポート12とポート14とを連通させる第1内部通路と、ポート12とポート16とを連通させる第2内部通路とが形成されている。第1内部通路にはそれを開閉する主弁が設けられ、第2内部通路にはそれを開閉する副弁が設けられている。第1内部通路には主弁孔21が設けられ、その下端開口端縁のテーパ面に主弁座22が形成されている。
【0019】
ポート14は、圧縮機の吐出室に連通し、吐出圧力Pdの冷媒を導入する。ポート12は、圧縮機のクランク室に連通し、主弁を経由したクランク圧力Pcの冷媒をクランク室へ向けて導出する一方、圧縮機の起動時にはクランク室から排出されたクランク圧力Pcの冷媒を導入する。このとき導入された冷媒は、副弁に導かれる。ポート16は、圧縮機の吸入室に連通し、吸入圧力Psの冷媒を導入する一方、圧縮機の起動時に副弁を経由した吸入圧力Psの冷媒を吸入室へ向けて導出する。
【0020】
ポート14には、ボディ5の内部へのごみ等の侵入を抑制するための環状のフィルタ15が取り付けられている。一方、ポート12には、ボディ5の内部へのごみ等の侵入を抑制するための有底円筒状のフィルタユニット13が取り付けられている。フィルタユニット13には弁座形成部材17が連設されている。弁座形成部材17は、ボディ5の上半部にわたって延在し、その下端部には半径方向外向きに延出するフランジ部19が設けられ、その下面に副弁座23が形成されている。
【0021】
ボディ5には、主弁および副弁を開閉する機構を備える弁駆動体10が設けられている。弁駆動体10は、その本体に主弁体18、副弁体20およびパワーエレメント6を同軸状に設けて構成される。弁駆動体10は、上部および下部が縮径された段付円筒状をなし、その上部にて主弁体18が構成される。主弁体18が主弁座22に着脱して主弁を開閉し、吐出室からクランク室へ流れる冷媒流量を調整する。
【0022】
一方、弁駆動体10の下半部の内方にはパワーエレメント6が設けられている。パワーエレメント6は、吸入圧力Psを感知して変位するベローズ24を含み、そのベローズ24の変位によりソレノイド力に対抗する駆動力を主弁体18に付与する。副弁体20は、ベローズ24と一体動作可能に設けられている。副弁体20が副弁座23に着脱して第1の副弁を開閉し、クランク室から吸入室へリリーフする冷媒流量を調整する。弁座形成部材17と副弁体20との間には、副弁体20を開弁方向に付勢するスプリング26(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0023】
一方、ソレノイド3は、ヨークとしても機能する円筒状のケース30と、ケース30に対して固定された有底円筒状のスリーブ31と、スリーブ31の上半部に内挿された円筒状のコア32と、スリーブ31の下半部に収容されてコア32と軸線方向に対向配置された円筒状のプランジャ33と、外部からの供給電流により磁気回路を生成する電磁コイル34と、ケース30の下端開口部を封止するように設けられた端部部材35とを備える。
【0024】
ソレノイド3と弁本体2とは、ボディ5の下端部が内方に加締められてケース30の上端部に連結されることにより固定されている。また、コア32の上端部が外方に加締められるようにしてボディ5の下端開口部に固定されている。コア32の上端部外周面、スリーブ31の上端面、およびボディ5の下端面により囲まれた空間にはシールリング40が介装され、ソレノイド3の内外のシールを確保している。コア32は、その上端開口部が拡径され、弁駆動体10の下端部を収容可能となっている。
【0025】
コア32の中央を軸線方向に貫通するように、長尺状の伝達ロッド36が挿通されている。伝達ロッド36は、その下端部がプランジャ33の上半部に同軸状に圧入されている。その結果、伝達ロッド36とプランジャ33とが固定されている。伝達ロッド36は、その上端部がパワーエレメント6に連結されており、ソレノイド力をパワーエレメント6を介して主弁体18に伝達する。
【0026】
コア32の上端部にはリング状の軸支部材37が圧入されており、伝達ロッド36は、その軸支部材37によって軸線方向に摺動可能に支持されている。軸支部材37の外周面の所定箇所には、軸線に平行な連通溝38が形成されている。ポート16から導入出される吸入圧力Psは、弁駆動体10とコア32とのクリアランスおよび連通溝38を通ってスリーブ31の内部にも導かれる。コア32とプランジャ33との間には、両者を互いに離間させる方向に付勢するスプリング43(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0027】
スリーブ31は、非磁性材料からなり、その底部中央部がやや凸となり、図示のようにプランジャ33が下死点に位置しても背圧室39が形成されるようになっている。吸入圧力Psは、プランジャ33とスリーブ31との間隙を通って背圧室39に導かれる。また、スリーブ31には円筒状のボビン41が外挿されており、そのボビン41に電磁コイル34が巻回されている。ボビン41からは電磁コイル34につながる一対の接続端子44が延出し、それぞれ端部部材35を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。
【0028】
端部部材35は、ケース30に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部部材35は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース30と電磁コイル34との間隙にも満たされている。このように樹脂材がケース30と電磁コイル34との間隙に樹脂材を満たすことで、電磁コイル34で発生した熱をケース30に伝達しやすくし、その放熱性能を高めている。端部部材35からは接続端子44の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。
【0029】
図2は、図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
ボディ5は、段付円筒状の第1ボディ51と段付円筒状の第2ボディ52とを軸線方向に組み付けて構成される。第1ボディ51の下半部が小径化され、その先端部が第2ボディ52の上端部に圧入されている。ポート14は、第1ボディ51の小径部の基端部(大径部との境界部近傍)に設けられている。第2ボディ52の上端面が第1ボディ51の大径部との間に間隙を形成するように位置するため、ポート14の開放状態は確保される。
【0030】
フィルタ15は、第1ボディ51と第2ボディ52との結合部を覆うようにボディ5に組み付けられ、ポート14への異物の侵入を防止または抑制している。フィルタ15は、帯状の金属メッシュをその長手方向の両端部が所定量オーバラップするように丸め、そのオーバーラップ部に沿って幅方向にシーム溶接(連続抵抗溶接)を施すことにより環状に形成されている。フィルタ15は、第1ボディ51と第2ボディ52との組み付け工程を利用してボディ5に固定される。
【0031】
すなわち、第1ボディ51と第2ボディ52とを組み付ける際には、その組み付けに先立って予め第2ボディ52の上端部にフィルタ15を外挿する。このとき、フィルタ15の下端部が、第2ボディ52の外周面に突設されたフランジ状の係止部53に係止される。一方、フィルタ15の上端は、図示のように第2ボディ52の上端面の上方に位置する。この状態から第1ボディ51を上方から組み付ける。すなわち、第1ボディ51の下端部を第2ボディ52の上端開口部に圧入する。このとき、フィルタ15の上端部が、第1ボディ51の外周面に突設されたフランジ状の係止部54に係止される。すなわち、フィルタ15は、第1ボディ51と第2ボディ52との間に挟まれるように軸線方向に支持され、ボディ5からの脱落が防止される。
【0032】
フィルタユニット13は、有底円筒状の支持部材60に有底円筒状のフィルタ62を固定して構成されている。支持部材60は、金属材をプレス成形して得られ、その底部中央に下方に向けて円ボス状に突設された嵌合部64を有する。また、支持部材60の底部の所定箇所には、ボディ5の内部とポート12とを連通させる連通孔66が設けられている。一方、フィルタ62は、金属メッシュを有底円筒状に成形して得られる。フィルタユニット13は、フィルタ62を支持部材60に互いの開口端部を当接させるようにして内挿し、その開口端部に沿って周方向にシーム溶接(連続抵抗溶接)を施すことにより形成される。フィルタユニット13は、支持部材60をポート12に圧入するようにしてボディ5に組み付けられる。
【0033】
弁座形成部材17は、下方に向けて拡径される段付円筒状をなし、その小径の底部が嵌合部64に圧入されてフィルタユニット13に同軸状に固定されている。すなわち、弁座形成部材17は、フィルタユニット13の底部中央に固定されるようにして片持ち状に支持され、軸線に沿って下方に延出している。
【0034】
第1ボディ51と第2ボディ52とにより囲まれる圧力室25には、弁駆動体10の本体11が配置されている。そして、その本体11の内方にパワーエレメント6および副弁体20が配置されている。また、本体11の上部が小径化されて円筒状の主弁体18が設けられている。主弁体18は、第1ボディ51の下部に設けられたガイド孔70に摺動可能に支持されている。
【0035】
主弁体18は、その上端部が主弁座22に着脱して主弁を開閉する一方、下端部がフランジ部19に着脱して第2の副弁を開閉する。すなわち、主弁体18の下端部は副弁体80として機能し、フランジ部19の上面に形成された副弁座82に着脱して第2の副弁を開閉する。本体11のポート16に対応する位置には、内外を連通させる連通孔69が設けられている。それにより、その本体内部に設けられたパワーエレメント6に圧力室25の冷媒圧力Psが負荷される。
【0036】
パワーエレメント6は、ベース部材72とベローズ24を含んで構成される。ベローズ24は、蛇腹状の本体の上端部が閉止され、下端開口部がベース部材72に気密に固定されている。ベース部材72は、金属材をプレス成形して有底段付円筒状に構成されており、その下端開口部がやや拡径されて弁駆動体10の下端部に接合されている。ベローズ24は、その下端部がベース部材72の下端部と弁駆動体10の下端部との間に挟まれるようにして片持ち状に固定されている。ベース部材72の小径部は、ベローズ24の内方をその底部近傍まで延在し、その上底部がベローズ24の底部に近接配置されている。ベース部材72の小径部には、伝達ロッド36の上端部が摺動可能に内挿されている。
【0037】
ベローズ24の内部は密閉された基準圧力室Sとなっている。ベローズ24の底部とベース部材72の大径部との間には、ベローズ24を伸長方向に付勢するスプリング74が介装されている。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。ベローズ24は、圧力室25の吸入圧力Psと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(弁部の開閉方向)に伸長または収縮する。ただし、その差圧が大きくなってもベローズ24が所定量収縮すると、ベース部材72の先端面が当接して係止されるため、その収縮は規制される。
【0038】
副弁体20は、有底円筒状をなし、その底部中央がベローズ24の上面中央と嵌合するようにして連結されている。また、その嵌合構造により副弁体20とベローズ24との芯合わせが行われている。副弁体20の底部の所定位置には連通孔78が設けられている。
【0039】
このような構成において、制御弁1の安定した制御状態においては、圧力室25内の吸入圧力Psが所定の設定圧力Psetとなるよう主弁が自律的に動作する。この設定圧力Psetは、基本的にはスプリング74およびスプリング26のばね荷重によって予め調整され、蒸発器内の温度と吸入圧力Psとの関係から、蒸発器の凍結を防止できる圧力値として設定されている。設定圧力Psetは、ソレノイド3への供給電流(設定電流)を変えることにより変化させることができる。本実施形態では、制御弁1の組み付けが概ね完了した状態でフィルタユニット13の圧入量を再調整することで、スプリング74の設定荷重を微調整することができ、設定圧力Psetを正確に調整することが可能となっている。
【0040】
本実施形態においては、主弁体18の主弁における有効受圧経A、主弁体18の摺動部の有効受圧経B、主弁体18の第2の副弁における有効受圧経C、副弁体20の第1の副弁における有効受圧経Dが等しく設定されている。このため、主弁体18および副弁体20に作用する冷媒圧力の影響がキャンセルされる。
【0041】
図3は、パワーエレメント6の製造工程の主要部を示す説明図である。(A)はその製造工程の一例を示し、(B)は他の例を示している。
本実施形態においては、パワーエレメント6(感圧部)を低コストに実現するために、ベース部材72としてプレス成形品を用いるとともに、ベローズ24とベース部材72との接合に連続抵抗溶接を採用している。具体的には、ベース部材72をベローズ24と同種の金属材料(例えばリン青銅などの銅合金)をプレス成形して作製する。ベローズ24は深絞りによる一般的な製法により形成される。
【0042】
そして、図3(A)に示すように、ベース部材72とベローズ24とをスプリング74を収容した状態で同軸状に組み付け、両者の開口端部をオーバラップさせる。そして、弁駆動体10の本体11を、ベローズ24との間に所定のクリアランスを形成するように組み付け、その縮径された開口端部をさらにオーバラップさせる。このとき、図示のように、ベース部材72の開口端部と本体11の開口端部との間にベローズ24の開口端部が挟まれる形となる。この状態でシーム溶接機を用いてそのオーバラップ部に沿ってシーム溶接(連続抵抗溶接)を施す。
【0043】
図示の例では、シーム溶接機として、外電極91と中電極92を備えたものを使用し、それらの外電極91を回転させながら両電極に通電することによりオーバラップ部の周方向に全周にわたる連続的な抵抗溶接を施している。このシーム溶接は分子の拡散接合を利用するものであり、金属材料の溶融温度よりも低い温度にて接合することが可能となっている。シーム溶接は抵抗溶接の1種であり、冶金学的には「圧接」に分類される。このシーム溶接は、レーザ溶接やプラズマ溶接などの「融接」と比較して設備コストを抑えることができるというメリットもある。なお、変形例においては図3(B)に示すように、シーム溶接機として、外電極91,93を備えたものを使用し、それらの外電極を回転させながら両電極に通電することによりシーム溶接を施すようにしてもよい。
【0044】
次に、制御弁の動作について説明する。
図4および図5は、制御弁の動作を表す図であり、図2に対応する。既に説明した図2は、制御弁の最小容量運転状態を示している。図4は、制御弁のブリード機能を動作させたときの状態を示している。図5は、比較的安定した制御状態を示している。以下においては、図1に基づき、適宜図2,図4,図5を参照しつつ説明する。
【0045】
制御弁1において、ソレノイド3が非通電のとき、つまり自動車用空調装置が動作していないときには、コア32とプランジャ33との間に吸引力が作用しない。このため、図2に示すように、スプリング26の付勢力によりパワーエレメント6が下方に変位し、主弁体18が主弁座22から離間して主弁が全開状態となる。このとき、副弁体80が副弁座82に着座するため、第2の副弁は閉弁状態となる。このとき、圧縮機の吐出室からポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁を通過し、ポート12からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが高くなり、圧縮機は最小容量運転を行うようになる。このとき、副弁体20が弁座形成部材17から離間した状態となるため、パワーエレメント6は実質的に機能しない。
【0046】
一方、自動車用空調装置の起動時など、ソレノイド3の電磁コイル34に最大の制御電流が供給されると、図4に示すように、ソレノイド力が伝達ロッド36およびパワーエレメント6(正確にはベース部材72)を介して弁駆動体10にそのまま伝達される。その結果、主弁体18が主弁座22に着座して主弁を閉じるとともに副弁体80が副弁座82から離間して第2の副弁を開弁させる。一方、起動時は吸入圧力Psが比較的高いため、副弁体20も副弁座23から離間し、第1の副弁の開弁状態が維持される。すなわち、ソレノイド3に起動電流を供給されると、主弁が閉じてクランク室への吐出冷媒の導入を規制すると同時に副弁が直ちに開いてクランク室内の冷媒を吸入室に速やかにリリーフさせる。その結果、圧縮機を速やかに起動させることができる。
【0047】
そして、ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定された制御状態にあるときには、図5に示すように、吸入圧力Psが比較的低いためにベローズ24が伸長し、副弁体20が副弁座23に着座して第1の副弁を閉弁させる。一方、そのように第1の副弁が閉じられた状態で主弁体18が動作して主弁の開度を調整する。このとき、主弁体18は、スプリング26による開弁方向の力と、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psにより動作するパワーエレメント6によるソレノイド力を低減する方向の力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
【0048】
そして、たとえば冷凍負荷が大きくなり吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなると、ベローズ24が縮小するため、弁駆動体10ひいては主弁体18が相対的に上方(閉弁方向)へ変位する。その結果、主弁の弁開度が小さくなり、圧縮機は吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下する方向に変化する。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなると、ベローズ24が伸長する。その結果、パワーエレメント6による付勢力がソレノイド力を低減させる方向に作用する。この結果、主弁体18への閉弁方向の力が低減されて主弁の弁開度が大きくなり、圧縮機は吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに維持され、過剰冷房が防止される。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、ボディと弁駆動体の構成を除き、第1実施形態と共通する部分を多く有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図6は、第2実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【0050】
制御弁201は、弁本体202とソレノイド203とを一体に組み付けて構成される。そして、弁本体202のボディ205が、第1ボディ51と第2ボディ252からなり、その第2ボディ252がソレノイド203のコア232と一体成形されている。フィルタ15は、第1ボディ51と第2ボディ252とが軸線方向に組み付けられる際に、両ボディ間に挟まれるようにして固定される。
【0051】
弁駆動体210は、金属材料をプレス成形して得られた段付円筒状の本体211を有する。パワーエレメント206は、ベース部材272の開口端部の外径がベローズ224の最外径とほぼ等しくなるように形成され、ベローズ224の開口端部をオーバラップさせている。本体211の開口端部とベローズ224の開口端部との間には、リング状のスペーサ280が介装されている。スペーサ280の厚みは、本体211とベローズ224との間のクリアランスの大きさと等しくされている。パワーエレメント206の製造工程においては、このようにスペーサ280を介装させた状態で第1実施形態と同様のシーム溶接が施される。
【0052】
一方、ソレノイド203においては、コア232が第2ボディ252と一体成形されているのは上述のとおりであり、スリーブ231は、その開口端部がコア232の下端部に外挿されるように固定されている。
【0053】
以上のように構成された制御弁201は、第1実施形態の制御弁1と同様の動作を行うが、その説明については省略する。
【0054】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、ボディと弁駆動体の構成を除き、第2実施形態と共通する部分を多く有する。このため、第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図7は、第3実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
【0055】
制御弁301は、弁本体302とソレノイド203とを一体に組み付けて構成される。そして、弁本体302のボディ305が、第1ボディ351と第2ボディ352とからなり、その第2ボディ352がソレノイド203のコア232と一体成形されている。第1ボディ351の係止部354には凹状の嵌合溝361が環状に周設され、第2ボディ352の係止部353には凹状の嵌合溝362が環状に周設されている。フィルタ15は、第1ボディ351と第2ボディ352とが軸線方向に組み付けられる際に、両ボディ間に挟まれるようにして固定されるが、その一端部が嵌合溝361に嵌合し、他端部が嵌合溝362に嵌合する形で安定に支持される。
【0056】
弁駆動体310は、本体211の内方にパワーエレメント306を収容する。パワーエレメント306は、第2実施形態のようなスペーサ280は設けられておらず、ベース部材372の開口端部の外径が本体211の内径とほぼ等しくなるように形成されている。本体211の開口端部とベース部材372の開口端部との間にベローズ324の開口端部が挟まれるように組み付けられている。すなわち、ベローズ324の開口端部の外径は、そのベローズ324の蛇腹状の本体の最外径よりもやや大きくされている。パワーエレメント306の製造工程においては、本体211の開口端部とベース部材372の開口端部との間にベローズ324の開口端部を介装させた状態で第1実施形態と同様のシーム溶接が施される。
【0057】
以上のように構成された制御弁301は、第1実施形態の制御弁1と同様の動作を行うが、その説明については省略する。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0059】
例えば、上記実施形態では、フィルタ15を金属メッシュのオーバラップ部に沿ってシーム溶接を施すことにより環状に形成する例を示した。変形例においては、そのオーバラップ部にスポット溶接などの抵抗溶接を施すことにより環状に形成してもよい。同様に、上記実施形態では、フィルタユニット13を、フィルタ62と支持部材60とのオーバラップ部に沿って周方向にシーム溶接を施すことにより形成する例を示した。変形例においては、オーバラップ部にスポット溶接などの抵抗溶接を施すことにより形成してもよい。
【0060】
上記実施形態では、本発明の制御弁を可変容量圧縮機用制御弁として構成した例を示したが、他の用途の制御弁として構成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 6 パワーエレメント、 10 弁駆動体、 18 主弁体、 20 副弁体、 24 ベローズ、 72 ベース部材、 80 副弁体、 201 制御弁、 202 弁本体、 203 ソレノイド、 205 ボディ、 206 パワーエレメント、 210 弁駆動体、 224 ベローズ、 272 ベース部材、 301 制御弁、 302 弁本体、 305 ボディ、 306 パワーエレメント、 310 弁駆動体、 324 ベローズ、 372 ベース部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の導入ポートおよび導出ポートが設けられたボディと、
前記導入ポートと前記導出ポートとをつなぐ通路に設けられた弁部を開閉する弁体と、
前記ボディに取り付けられ、供給される電流量に応じて前記弁体を開弁方向または閉弁方向に駆動するためのソレノイド力を発生するソレノイドと、
前記ボディに形成された特定の圧力室の圧力を感知して前記弁部の開閉方向に伸縮するベローズを含み、そのベローズの伸縮動作により前記ソレノイド力に対抗する駆動力を前記弁体へ付与可能なパワーエレメントと、
を備え、
前記パワーエレメントは、
前記ベローズの開口部を封止するように接合され、前記ベローズとの間に基準圧力室を形成するベース部材と、
前記ベース部材と前記ベローズとの間に介装されて、前記ベローズを伸長方向に付勢する付勢部材と、
を含み、前記ベローズと前記ベース部材とが、前記ベローズの開口端部に沿って連続抵抗溶接が施されることにより気密に接合されていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記ベース部材が、前記ベローズと同種の金属材料をプレス成形して得られ、その開口端部と前記ベローズの開口端部とのオーバラップ部に沿って周方向に連続抵抗溶接が施されていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記ベース部材は、その底部が前記ベローズの縮小時のストッパとなるよう前記ベローズの内方にて同心状に延在していることを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
【請求項4】
吸入室の吸入圧力を設定圧力に保つように吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる制御弁として構成され、
一端側から前記クランク室に連通するクランク室連通ポート、前記吐出室に連通する吐出室連通ポート、前記吸入室に連通する吸入室連通ポートが設けられた前記ボディと、
前記吐出室連通ポートと前記クランク室連通ポートとを連通させる内部通路に設けられた前記弁部を開閉する前記弁体と、
前記ボディの他端側に設けられ、前記弁体を閉弁方向に駆動するためのソレノイド力を調整可能な前記ソレノイドと、
前記ボディと前記ソレノイドとに囲まれる圧力室に設けられるとともに、前記吸入圧力を感知して変位する前記ベローズを含み、そのベローズの変位により前記ソレノイド力に対抗する駆動力を前記弁体へ付与可能な前記パワーエレメントと、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御弁。
【請求項5】
ベース部材と、
前記ベース部材との間に基準圧力室を形成し、その基準圧力室の外部圧力を感知して軸線方向に伸縮するベローズと、
前記ベース部材と前記ベローズとの間に介装されて前記ベローズを伸長方向に付勢する付勢部材と、
を備え、軸線方向の駆動力を生成するパワーエレメントであって、
前記ベローズと前記ベース部材とが、前記ベローズの開口端部に沿って連続抵抗溶接が施されることにより気密に接合されていることを特徴とするパワーエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246937(P2012−246937A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116615(P2011−116615)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】