説明

制御盤保守システム

【課題】制御盤に実装される電子基板の実装チェックが作業を迅速かつ簡単に行えるようにする。
【解決手段】電子基板31,32a〜32dに貼り付けたRFID4の認識番号及び位置情報を、制御盤2に設置されたリーダ5から読み取り、リーダ5から読み取られたRFIDの認識番号及び位置情報と、保守ツール1内のデータベース及び実装図の情報を、保守ツールにおいて照合して、実装図で指定された位置に指定された型式の電子基板が制御盤2に実装されているかどうかを判定し、判定結果を保守ツールのモニタに表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板が実装される制御盤の保守システムに関し、特に、RFID(Radio Frequency Identification)を用いて保守する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の電子基板が実装されて、機器や各種システムの制御を行う制御盤は、工場での製作時に、その制御盤の基板装着部に電子基板が取付けられて、実装作業が行われる。電子基板としては、例えば、制御演算を行なうコントローラや、信号処理を行なう入出力装置といった各種回路が組まれた基板である。
【0003】
このような制御盤製作の際、制御盤に実装される電子基板は、工場での組立時に、あらかじめ設計された実装図で指示される位置へ実装される。そして正しく実装されたかをチェックする必要があるが、従来このチェック作業は、紙の実装図と実物を見比べながら作業者が目視で行なっていた。
【0004】
特許文献1には、エレベータ制御盤に取付けられる基板に、基板情報などを記憶した無線ICタグを設けて、その無線ICタグと制御盤に取付けられた送受信ユニットとで通信を行って、基板情報などを読み出すことについての記載がある。
【特許文献1】特開2005−112480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のように、制御盤に実装された複数枚の電子基板をチェックする作業は、人手でチェックする作業であり、手間と時間がかかる問題があった。特に、大規模なシステム用の制御盤の場合には、実装される電子基板の枚数が膨大となり、正しく実装されたかをチェックする作業に多大な工数を要する、という問題があった。
【0006】
特許文献1には、制御盤に取付けられた基板の情報を、無線ICタグを使用して読み出す技術が記載されている。この特許文献1に記載された技術を適用することで、少なくとも必要な基板が制御盤に実装されているか否かは判断できる。ところが、実際の制御盤は、実装させる基板の数が多数である場合が多く、チェック作業としては、必要な基板が必要な位置に実装されているかをチェックする必要があるが、従来の無線ICタグを使用したチェックでは、そのような実装位置まで細かくチェックするのは困難であった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、制御盤に実装される電子基板の実装チェックが作業を迅速かつ簡単に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、電子基板に貼り付けたRFIDの認識番号及び位置情報を制御盤に設置されたリーダから読み取り、リーダから読み取られたRFIDの認識番号及び位置情報と、保守ツール内のデータベース及び実装図の情報を、保守ツールにおいて照合して、実装図で指定された位置に指定された型式の電子基板が制御盤に実装されているかどうかを判定し、判定結果を保守ツールのモニタに表示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子基板に貼り付けたRFIDの認識番号及び位置情報を制御盤に設置されたリーダから読み取り、リーダから読み取られたRFIDの認識番号及び位置情報と、保守ツール内の情報とを照合して、指定された位置に指定された型式の電子基板が制御盤に実装されているかどうかを判定し、判定結果を表示することができるため、大規模なシステムにおいても制御盤に実装される電子基板の実装チェック作業を、迅速かつ正確に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態におけるシステム全体の構成図である。本例においては、RFIDを用いて、制御盤を保守し管理するシステムとしてある。システム構成について説明すると、プラント機器を制御するためのコントローラなどの機器が内蔵された制御盤2を備え、制御盤2には、コントローラの保守をするための保守ツール1がネットワーク6により接続されている。
【0011】
制御盤2の内部には、制御演算を実行するコントローラとして構成された電子基板31や、プラント機器からの信号入力処理やプラント機器への信号出力処理等の各種機能を持つ複数枚の電子基板32a〜32dが実装されたユニット3が内蔵されている。なお、以下の説明では、電子基板31は、コントローラ31と述べる場合もある。電子基板31及び電子基板32a〜32dは、例えばユニット3に用意されたスロットに装着可能であり、制御盤2の製作時に、ユニット3に実装(装着)する作業が行われる。
【0012】
コントローラ31は伝送装置33を具備している。コントローラ31及び各電子基板32a〜32dには、電子基板の型式などの情報を記録し、後述するリーダと無線通信を行って、記録した情報を伝送可能なRFID4が貼り付けられている。また、制御盤2の前面には、扉2aが蝶番2bで開閉自在に取付けてあり、閉じた状態のときに、電子基板31及び電子基板32a〜32dが実装されたユニット3を、扉2aで覆う構成としてある。
【0013】
制御盤2の扉2aの裏面には、RFID4に記録された情報を読み取るためのリーダ5が複数個設置してある。図1の例の場合には、扉2aの裏面の四隅にリーダ5を設置してある。各リーダ5はコントローラ31内の伝送装置33に接続してあり、リーダ5で読み取った情報を、伝送装置33を介して外部へ伝送できるようになっている。また、本例の各リーダ5で受信した信号の判定を行う処理部(保守ツール1側又はコントローラ31など)では、各RFID4からの信号の到達時間を判断し、その判断した到達時間から、RFID4の設置位置を判断する構成としてある。なお、ここでは制御盤2の扉2aにリーダ5を取り付けた例で説明するが他の場所に取り付けることも出来る。また、制御盤2、ユニット3、コントローラ31、電子基板32などの設置数はプラントの規模によって様々である。さらに、制御盤2は、他にもコントローラ31や電子基板32などに電源を供給するための電源装置や、インタロック回路を構成するリレー、表示灯、スイッチなどにより構成される。
【0014】
保守ツール1は、中央処理装置11と、記憶装置12と、伝送装置13と、モニタ14からなる。リーダ5で読取って伝送装置33から送信された情報は、伝送装置13で受信されて、中央処理装置11に送られる。中央処理装置11では、送られた情報を判断して、記憶装置12に記憶された情報との照合処理を行うようにしてある。具体的な処理については後述する。なお、中央処理装置11では、コントローラ31で判断した、ユニット3内のRFID4の配置位置(即ち電子基板31及び電子基板32a〜32dの実装位置)についても照合に使用する構成としてある。記憶装置12には、電子基板に関するデータベース及び実装図が記憶させてある。図示していないが、保守ツール1にはこの他キーボードやマウスなどの機器も具備される。保守ツール1と制御盤2とは、伝送装置13及び33によりネットワークで互いに接続される。
【0015】
次に、各機器の機能と動作を説明する。
まず、制御盤2に内蔵されている機器について説明する。電子基板32a〜32dは例えば温度計や圧力計からの電気信号を入力処理するアナログ入力や、リレーの接点信号を入力処理するディジタル入力などの機能毎に種類があり、どのような種類の電子基板を何枚使用するかは制御対象やプラント規模により決まる。各電子基板32で信号処理された信号はコントローラ31に入力される。コントローラ31は入力された信号と格納されているプログラムに基づいて演算処理を行い、演算結果を、電子基板32を介してバルブ等のプラント機器や他の制御装置に出力してプラントを制御する。
【0016】
また、コントローラ31内のデータは、伝送装置33及びネットワーク6を介して保守ツール1や他の装置(図示せず)と相互に送受信される。コントローラ31や電子基板32に貼り付けられたRFID4には、固有の認識番号が記録されており、リーダ5は電波によってRFID4に記録されている情報を読み取ることができる。さらに各リーダ5はある特定のRFID4に対する電波の到達時間の情報(位置検出情報)も得ることができる。リーダ5が得た情報は伝送装置33及びネットワーク6を介して保守ツール1に送信される。保守ツール1は伝送装置13及びネットワーク6を介して外部とのデータの送受信を行なう。
【0017】
保守ツール1内の記憶装置12には、プログラムやデータが格納されており、中央処理装置11はプログラムやデータに基づいて処理を行ない、モニタ14に演算結果やデータを表示する。また、中央処理装置11は、キーボードやマウス等の入力デバイスからの信号に基づき、プログラムに従った処理を行なう。保守ツール1は、コントローラ31に格納するプログラムの作成やダウンローディングといったコントローラ保守機能、コントローラ31のデータをモニタするモニタ機能、コントローラ31のデータを保存するデータ収録機能といったような機能を備えている。
【0018】
これらの一般的な機能に加えて、保守ツール1は、制御盤2内に格納されているコントローラ31や電子基板32の実装情報(実装図と称す)のデータを記憶装置12が記憶し、その実装図をモニタ14に表示することができる。また、制御盤2内の複数のリーダ5から送られてくる、ある特定のRFID4に対する電波の到達時間情報から、多点測量によりそのRFID4がどのユニットのどのスロットにあるのかを特定することができる。また、各RFID4の認識番号とそのRFID4が貼り付けられているコントローラ31または電子基板32の型式、レビジョン、製造年月日、実装位置といった情報を結び付けたデータベースを記憶装置12内にもち、データベースの情報をオペレータのリクエスト等によりモニタ14に表示することができる。データベースの内容の例を図4のデータベース7に示す。
【0019】
次に、本実施の形態による保守管理処理例について説明する。
電子基板31及び電子基板32a〜32dは、工場での制御盤2の組立時に、あらかじめ設計された実装図で指示される位置へ実装される。ここで、大規模なシステムの場合には電子基板の枚数が膨大となり、正しく実装されたかをチェックする作業も多大な工数を要する。本実施の形態はこの実装チェック作業を自動化することによって工数を低減するものである。
【0020】
図2に、電子基板実装管理処理のフローチャートを示す。まず、各電子基板31,32a〜32dを製作したらRFID4を貼り付ける(ステップS11)。そして、そのRFID4の認識番号のデータベース7に電子基板の型式、レビジョン、製造年月日を登録する(ステップS12)。この登録作業は保守ツール1で直接行なうこともできるし、他の設備で実施してデータを別途保守ツール1に移動することもできる。これらの作業とは別にシステム設計者は制御盤2を設計し、どの型式の電子基板をどこに実装するのかを示す実装図を作成する(ステップS13)。この実装図は電子データとして保守ツール1に格納しておく。そして、制御盤2の組立作業は実装図を紙あるいはモニタ14で見ながら実施する(ステップS14)。次に、実装図の指示どおりに正しく電子基板が制御盤2に実装されたかどうかをチェックし(ステップS15)、基板の実装位置をデータベースに登録する(ステップS16)。
【0021】
次に、このチェック作業の詳細を、図5の実装図の表示を参照しながら、図3のフローチャートで説明する。まず、保守ツール1の操作によりモニタ14に実装図を表示させ(図5の実装図画面8)、チェック開始操作を行なう(ステップS21:図5のチェック開始ボタン81を押下)。この操作により保守ツール1は、チェック対象制御盤2のリーダ5からのRFID4位置検出情報に基づき、そのRFID4が貼り付けられている電子基板の実装位置を取得する(ステップS22)。保守ツール1は、得られた実装位置情報と実装図の情報(型式、実装位置)をRFIDの認識番号をキーとしてデータベース7を参照して照合する(ステップS23)。そして、照合結果をモニタ14に表示されている実装図画面8上に表示する(ステップS24)。
【0022】
モニタ14での表示状態としては、例えば、図5に示すように、正しい型式の電子基板が正しい位置に実装されていれば電子基板実装表示エリア82上の該当電子基板を緑色で表示し、間違って実装されていれば該当電子基板を赤色で表示する。そして、正しく実装された電子基板についてはデータベース7の該当認識番号の実装位置情報に取得した実装位置データを反映する。
【0023】
以上のように本実施の形態では、電子基板に貼り付けたRFIDの認識番号及び位置情報を制御盤に設置されたリーダから読み取り、リーダから読み取られたRFIDの認識番号及び位置情報と、保守ツール内のデータベース及び実装図の情報を、保守ツールにおいて照合して、実装図で指定された位置に指定された型式の電子基板が制御盤に実装されているかどうかを判定し、判定結果を保守ツールのモニタに表示することができるため、大規模なシステムにおいても制御盤に実装される電子基板の実装チェック作業を迅速に行なうことができる。特に、電子基板の実装位置まで含めて、実装図と照合するため、正確な判断が可能である。図1の例では、基板は5枚で構成させた例としてあるが、実際には、より多くの枚数の基板が実装される制御盤に適用可能であり、そのような実装枚数の多い制御盤の保守管理に適用することで、より効果が大きい。
【0024】
なお、上述した実施の形態では、使用するRFIDは、予め情報を記録させて、制御盤に取付けたリーダで記録情報を読み出す構成としたが、リーダとして、情報の記録(書き込み)が可能なリーダ・ライタとして構成して、保守や管理に使用する情報を、各基板に取付けられたRFIDに記録可能と構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態におけるRFIDを用いた制御盤保守システムの構成例を示した全体構成図である。
【図2】本発明の電子基板実装管理方法のフローチャートである。
【図3】本発明の電子基板実装チェック作業のフローチャートである。
【図4】本発明の電子基板データベース例を示す説明図である。
【図5】本発明の制御盤実装図表示画面例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1…保守ツール、2…制御盤、3…ユニット、4…RFID、5…リーダ、6…ネットワーク、7…データベース、8…実装図画面、11…中央処理装置、12…記憶装置、13…伝送装置、14…モニタ、15…通信装置、31…コントローラ(電子基板)、32a〜32d…電子基板、33…伝送装置、81…チェック開始ボタン、82…電子基板実装表示エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の電子基板を実装する制御盤と、
前記制御盤のコントローラとネットワークにより接続されて、前記コントローラの保守又は監視を行う保守ツールを具備する制御装置とで構成される制御盤保守システムにおいて、
前記制御盤に実装される電子基板にRFIDを取付け、
前記制御盤に、前記RFIDの認識番号及び前記RFIDの位置情報を読取るリーダを配置し、
前記リーダから読み取られた前記RFIDの認識番号及び位置情報を、前記制御盤のコントローラからネットワークを介して前記制御装置に伝送し、
前記制御装置が備える保守ツールを使用して、前記制御装置に伝送されたRFIDの認識番号及び位置情報から、前記電子基板の実装状況の判定を行い、判定結果を表示することを特徴とする制御盤保守システム。
【請求項2】
請求項1記載の制御盤保守システムにおいて、
前記リーダを前記制御盤に複数配置し、前記コントローラは、複数配置した各リーダと前記電子基板に取付けられたRFIDとの通信状況から、前記RFIDの位置情報を判断することを特徴とする制御盤保守システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制御盤保守システムにおいて、
前記保守ツールは、前記制御盤に実装される電子基板に関するデータベース及び実装図を備え、前記制御装置に伝送されたRFIDの認識番号及び位置情報から判断した実装状態と照合して表示することを特徴とする制御盤保守システム。
【請求項4】
請求項3記載の制御盤保守システムにおいて、
前記照合した結果の表示として、前記保守ツールが備えた実装図を表示し、実装図中の照合で正しく実装された電子基板の色を変更して表示することを特徴とする制御盤保守システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御盤保守システムにおいて、
前記保守ツールが備えるデータベースは、前記RFIDの認識番号と、前記RFIDが貼り付けられた前記電子基板の型式とレビジョンと製造年月日と実装位置の情報から構成されることを特徴とする制御盤保守システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−317866(P2007−317866A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145594(P2006−145594)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】