説明

制御装置、撮影装置および制御方法

【課題】 撮影対象自体が広いダイナミックレンジを有する場合でも、撮影領域全体において飽和や入出力特性が不良な出力を減らしつつ、コントラストを向上させる。
【解決手段】 X線検出器104は動画撮影可能なイメージセンサであり、蓄積容量を画素毎に変更することができる。制御装置103の特性算出部112は各線量モード毎に線量を変えて複数の白画像データを撮影するキャリブレーション撮影を行い、各画素の入出力特性を取得する。本撮影によりフレーム画像が制御装置103に入力されると、飽和判定部113は各画素が飽和しているか否かを入出力特性に基づき判定し、飽和していない場合にはモード決定部116が蓄積容量を大きくする決定をする。データ収集部105が次フレームの撮影に際して蓄積容量を大きく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの各画素の蓄積容量を変更する制御装置、制御方法および当該センサを有する撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在様々な分野において半導体センサを用いた撮影装置が用いられている。例えば、医療用または産業用のX線撮影装置では、蛍光体と大面積アモルファスシリコン(A−Si)センサを密着させたX線検出器を使用し、光学系等を介さずにX線像を直接デジタル化する方式が実用化されている。
【0003】
また、シリコン等の単結晶撮像素子を用いて、各画素内に駆動モードに応じた増幅手段と駆動モード切替え手段(スイッチ手段)を備えるセンサが実用化されている。特許文献1には、X線センサにおいて画素毎に複数のゲートサイズの異なるソースフォロワアンプを備える技術が開示されている。この技術では、低線量での撮影ではセンサの全画素についてゲートサイズの小さいソースフォロワアンプを選択することによりセンサを高感度とする。一方比較的高線量での撮影では、センサの全画素についてゲートサイズの大きなソースフォロワアンプを選択することにより、低ノイズで広いダイナミックレンジの撮影を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−134396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、センサの各画素について受光する光量の差が大きい場合、受光量の大きな画素については飽和や入出力特性が不良になるという問題がある一方で、受光量の小さな画素を含む領域ではコントラストが低くなってしまう。このため、画素間で受光する光量の差が大きい場合に、画像全体で飽和を低減しつつ良好なコントラストの良好とすることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明の一態様に係る制御装置は、画素毎に電荷の蓄積容量の大きさを変更可能なセンサを制御する制御装置であって、前記センサの各画素の蓄積電荷に応じた出力値を取得する取得手段と、前記出力値に基づいて、前記各画素の蓄積容量が飽和しているか否かを判定する判定手段と、前記判定に応じて前記各画素の蓄積容量を画素毎に決定する決定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように、センサ出力値が飽和しているか否かを画素毎に判定し、判定結果に基づいて蓄積容量を画素毎に決定することで、撮影領域全体において飽和や入出力特性が不良な出力を減らしつつ、良好なコントラストの画像を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1によるX線動画撮影装置全体の構成図である。
【図2】X線検出器のハードウェア構成を示す図である。
【図3】X線検出器の画素の回路構成を示す図である。
【図4】キャリブレーション動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】撮影動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】低線量モードの画素に対する処理手順を示すフローチャートである。
【図7】高線量モードの画素に対する処理手順を示すフローチャートである。
【図8】実施例2に係るX線動画撮影装置全体の構成図である。
【図9】画素の等価回路の概要を示す図である。
【図10】実施例2に係るキャリブレーション動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施例2に係る撮影動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】実施例2に係る低線量モードの画素に対する処理手順を示すフローチャートである。
【図13】実施例2に係る中線量モードの画素に対する処理手順を示すフローチャートである。
【図14】実施例2による高線量モードの画素に対する処理手順を示すフローチャートである。
【図15】実施例3による撮影動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】各画素の入出力特性を説明する図である。
【図17】入出力特性のモデル近似と飽和レベルの算出結果を説明する図である。
【図18】欠陥画素の抽出を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を適宜参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明の第一の実施例に係るX線動画撮影装置について図1乃至図7を用いて説明する。図1はX線動画撮影装置の全体構成、図2はX線検出器の構成、図3は検出器の画素の回路構成である。
【0011】
図1に示すX線撮影装置100はX線発生部101、FPD(フラットパネルディテクタ)102、制御装置103を有している。X線発生部101はX線ビームを被検体103に対して照射する。FPD102はこのX線ビームを受光してデジタルX線画像データを取得する。制御装置103はこのデジタルX線画像データを表示部111に表示する。
【0012】
FPD102はX線検出器104、データ収集部105、オフセット補正部106を有する。X線検出器104はX線を可視光等に変換する蛍光体と、可視光を受光し光電変換によりアナログ画像信号を得るイメージセンサとを備える。これによりX線発生部101から照射されたX線の2次元の強度分布に応じてアナログ画像信号を取得する。アナログ画像信号はデジタル画像信号に変換され、データ収集部105はデジタル画像信号から画像データを生成する。データ収集部105は画像データをオフセット補正部106に供給する。オフセット補正部106では、X線を照射しない状態で取得した画素毎の固有のオフセットをデジタル画像信号から減算することでオフセットばらつきを補正する。このオフセットばらつきが補正されたデジタル画像信号はX線画像データとして、制御装置103に対して出力する。
【0013】
X線発生部101が継続的にX線を発生し、X線検出器104はX線の受光に応じて信号出力値を出力するので、表示部111にはX線動画像として表示される。もちろん静止画の撮影および表示も可能である。
【0014】
X線検出器104の各画素は撮影可能なX線の強度範囲(線量域)の異なる2つの駆動モードを備え、画素毎に低線量モードと高線量モードのいずれかの駆動モードを設定可能である。これについては図2、図3を用いて後述する。
【0015】
制御装置103はCPU108、メインメモリ109、操作パネル110、表示部111、特性算出部112、飽和判定部113、特性補正部114、飽和補正部115、モード決定部116を有する。これらの各部はCPUバス107を介して互いにデータ授受が可能に接続されている。制御装置103は不図示の出力取得部で画素の出力値のまとまりであるX線画像データ(第一のフレーム画像データ)を取得し、次のフレーム画像(第二のフレーム画像)を撮影する際の駆動モードを画素毎に決定する。
【0016】
X線撮影装置100において、メインメモリ109は、CPU108での処理に必要な各種データを記憶するとともに、CPU108のワーキング・メモリとして機能する。CPU108は、メインメモリ109を用いて操作パネル110からの操作に従った装置全体の動作制御を行う。
【0017】
図2に基づいてFPD102のハードウェア構成を説明する。
【0018】
X線検出器104はX線を可視光に変換する不図示のシンチレータと、可視光を受光し光電変換を行い受光量に応じたアナログ信号を出力する複数の半導体基板206を有している。半導体基板206は複数の画素がマトリックス上に配置されており、例えばCMOS撮像素子を用いることができる。差動増幅器207はマルチプレクサを介してX線検出器104の各画素が出力するアナログ出力値を受け取り、増幅する。AD変換器208はアナログ出力値をデジタル出力値に変換する。
【0019】
撮影制御部209はAD変換器208でAD変換されたデジタル出力値を合成してX線画像データとして得る。撮影制御部209は予め撮影されたダーク画像データとX線画像データの差分を取るオフセット補正処理を行う。撮影制御部209はこのX線画像データを制御装置103に対して出力する。このように撮影制御部209は図1におけるデータ収集部105およびオフセット補正部106として機能する。
【0020】
また撮影制御部209は制御装置103と通信して同期信号や制御コマンド等を送受信することにより、制御装置103からの制御信号に応じてFPD102を制御する。コマンド制御用インターフェース210は制御コマンドをやり取りするため通信路である。画像データインターフェース211は撮影制御部209から制御装置103に画像を転送するための通信路である。READY信号212は放射線撮像装置100が撮影可能状態になったことを撮影制御部209から制御装置103へ伝える信号である。外部同期信号213は、制御装置103が撮影制御部209のREADY信号212を受け、撮影制御部209にX線照射のタイミングを知らせる信号である。照射許可信号214は、X線検出器104の撮像準備が完了していることを示す信号である。照射許可信号214がイネーブルの間に制御装置103からX線発生部101に照射信号が送信され、照射信号に応じてX線が照射される。
【0021】
上述のX線検出器104の画素301の構成を図3に基づいて説明する。フォトダイオードPDは光を電気に変換する。フローティングディフュージョンCfdは電荷を蓄積するフローティングディフュージョン(浮遊拡散領域)の容量である。フォトダイオードPDと、フォトダイオードPDの寄生容量と、フローティングディフュージョンCfdにより電荷を蓄積する光電変換素子が形成される。アンプ303でCfdに蓄積した電荷の蓄積量に応じた信号電圧が得られる。
【0022】
クランプ電圧VCLが印加されるクランプ回路でkTCノイズが除去され、アンプ304で増幅される。受光に応じて得られた信号電圧は光電荷用サンプルホールド回路でサンプルホールドされ、固定パターンノイズに対応する信号電圧はノイズ用サンプルホールド回路でサンプルホールドされる。それぞれ光電荷用の信号線、ノイズ用の信号線を介して外部に出力され、差動増幅器207でそれぞれの出力の差分が得ることで、センサ内の回路要因の固定パターンノイズを除去することができる。
【0023】
リセットスイッチM2はフローティングディフュージョンCfdに蓄積された電荷を放電させるためのリセットMOSトランジスタ(リセット回路)である。EN信号はアンプ303、304に電源に対する電源の供給のオンオフを制御する信号である。PCL信号はクランプ回路に印加するクランプ電圧VCLのオンオフを制御する信号である。TS信号、TN信号はそれぞれ光電荷用およびノイズ用のサンプルホールド回路に対するサンプルホールドを制御するための信号である。
【0024】
電荷を蓄積する容量はコンデンサを形成しており、容量に対する蓄積電荷の蓄積量の比に応じた信号値が得られる。そのため、容量を大きくすると蓄積電荷の量の増分に対する信号地の増分が小さくなるため感度は低下するものの、蓄積電荷の量を大きくすることができ、ダイナミックレンジを大きくすることができる。容量を小さくするとダイナミックレンジは小さくなるが、感度は向上する。
【0025】
X線検出器104の画素は蓄積容量が2段階に変更可能である。感度スイッチM1は高ダイナミックレンジモードと高感度モードを切り換えるための感度切り換え用MOSトランジスタである。追加容量素子Cfd1はダイナミックレンジ拡大用の追加容量であり、感度スイッチM1をオンすると電荷の蓄積が可能となる。感度スイッチM1をオンするとフローティングノード部の容量が実質増え、感度は低くなるがダイナミックレンジを拡大することができる。よって例えば高感度が必要な透視撮影時には撮影制御部209は感度スイッチM1をオフし、高ダイナミックレンジが必要なDSA撮影時などには感度スイッチM1をオンする。
【0026】
WID信号は、感度切り換えスイッチのゲートに接続され感度の切換を制御する。WID信号がローレベルである場合には、感度切り換えスイッチがオフし低線量の信号値を得るのに好適な高感度モード(低線量モード)に設定される。WID信号がハイレベルである場合には感度切り換えスイッチをオンしダイナミックレンジが大きくなるため、高線量のX線を受光するのに好適な高ダイナミックレンジモード(高線量モード)に設定される。このWID信号は撮影制御部209によりX線センサの各画素に対して送信される。
【0027】
WID信号はS(シグナル)線と平行な信号線Aを通じてセンサ外から供給され、感度スイッチM1に入力される。各画素からWID信号を与える信号線Aが伸び、撮影制御部209と接続される。撮影制御部209はフレームごとかつ画素ごとにWID信号を制御する。このようにすることでフレームごとかつ画素毎にセンサの蓄積容量を変更することが可能である。この点で撮影制御部209は蓄積容量の設定部として機能する。
【0028】
このようにX線検出器104の各画素にはフォトダイオードで受光に応じて生ずる電荷を蓄積するための蓄積容量が可変となっている。蓄積容量を大きく設定すると画素のダイナミックレンジを大きくすることができ、蓄積容量を小さく設定すると画素の感度を大きくすることができる。制御装置103はX線検出器104の出力値が基準より大きい場合には蓄積容量を大きくし、出力値が基準より小さい場合には蓄積容量を大きくする。このように各画素の蓄積容量を適応的に変更することで、画像全体で白とびまたは飽和を減らしつつ感度を大きくすることができる。
【0029】
ところで、画素毎に蓄積容量を変更した場合、同じ放射線量の放射線を照射しても得られる出力値が異なる。そこで異なる蓄積容量を有する複数の画素から1つの画像を生成する場合に、入出力特性の補正が必要となる場合がある。
【0030】
そこで、以下X線撮影装置100が実行する処理を説明する。実行する処理の1つはキャリブレーション用の撮影を行い本実施の形態の特徴的な動作である画素毎の入出力特性および飽和レベルを算出する動作(以下、キャリブレーション動作と呼ぶ)である。もう1つは、被検体を繰り返し撮影した画像の入出力特性のばらつきを補正するとともに、所定フレームの画像に基づいて次フレームの駆動モードを画素毎に決定する動作(以下、撮影動作と呼ぶ)である。図4はキャリブレーション動作の流れを示す。図5は撮影動作の流れを示す。図6は撮影動作において低線量モードである画素についての処理の流れを示す。図7は撮影動作において画素が高線量モードである画素についての処理の流れを示す。
【0031】
<キャリブレーション動作>
図1のX線動画撮影装置100のキャリブレーション動作について図2に示すフローチャートを用いて具体的に説明する。まず操作パネル110を介したオペレータの指示によりFPD102がキャリブレーション動作を開始すると、データ収集部105(撮影制御部209)がX線検出器104の全画素の駆動モードを低線量モードに設定する(s401)。これは全画素のWID信号をローレベルとすることで、追加容量素子Cfd1にも電荷の蓄積が可能とすることに対応する。
【0032】
操作パネル110を介して制御装置103が取得した指示に応じてキャリブレーション撮影を行う。キャリブレーション撮影とは、被検体をFPD102とX線発生部101との間に置かない状態でX線を照射し画像を得る撮影を指す。この際、CPU108の制御に従いX線発生部101から照射されるX線ビームの強度を変えた複数回の撮影を行う。また、不図示の線量計で各撮影時のX線検出器104への入射X線量を合わせて計測する。この撮影データは、オフセット補正部106でオフセット補正されたのち、X線画像データとして、測定した入射X線量と関連付けられてメインメモリ109に記憶される(s402)。記録されたデータに基づいて、図16に示すような入射線量に対する各画素の出力値の関係を示すデータが得られ、これを各画素の入出力特性を示すデータとする。図16は入射線量(X)に対する画素の出力値(Y)を示すグラフであり、画素1,2,3についての入出力特性のグラフが示されている。なお、本実施の形態では入射X線量を線量計で計測する構成としたが、これに限定されるものではなく撮影条件やX線画像データから推定しても良い。
【0033】
次に、特性算出部112において、s403〜s405のステップを実行することで、蓄積容量を変化させ、それぞれの蓄積容量について画素の入出力特性を算出する。
【0034】
ステップs403で特性算出部112は入射X 線量{x | i=1,2…N かつ x < xi+1}および、x に対応する任意の画素の出力値{y | i=1,2…N}をその画素の入出力特性を示すサンプルデータとして取得する(s403)。ここで、X線検出器104の各画素の出力値は、画像データにおいて対応する位置の画素値とする。画像データの画素値は各画素の出力値にダーク補正を加えたものとなっているが、各画素の出力値として扱う。
【0035】
次に取得したサンプルデータに基づいて画素の入出力特性を関数モデルF で近似するための最適パラメータおよび画素の飽和レベルを算出し、メインメモリ109に記憶する(s404)。ここで本実施の形態では、例えば関数モデルFとして下記式のような合成関数を用いる。
【0036】
【数1】

【0037】
上記式は、xがTL0未満では1次式を用いることで入出力特性が線形近似できる線量域をモデル化している。TL0〜TL1 では2次式を用いることで入出力特性が非線形近似できる線量域をモデル化している。更にTL1を超えた場合は一定値とすることで、飽和レベルに達する線量域をモデル化したものである。
【0038】
ここで、上記式の未知パラメータはA、B、C、TL0、TL1 であり、s403で取得したサンプルデータ、即ち入射X 線量xとそれに対応する出力値yを良く近似する最適パラメータを求めれば良い。多数のサンプルデータから最小二乗基準に従って線形代数的に未知パラメータの最適値を求める方法は、周知の方法を用いて行えばよい。
【0039】
また、飽和レベルS は入射X線量xがTL1を超えた場合の画素の出力値であり、下記式で算出することができる。
【0040】
【数2】

【0041】
上記処理s403〜s404の動作を全画素に対して繰り返し実行し(s405)、図17に示すように画素毎の最適パラメータによるモデル近似および飽和レベルSを算出し、低線量モードにおけるキャリブレーション動作を完了する。図17は画素1について入射線量(X)に対する出力値(Y)の関係を示すグラフであり、画素1についての実測値と(数1)でモデル近似したグラフとが示されている。
【0042】
なおこれに限らず3次関数等を用いて近似することとしてもよい。
【0043】
続いて、s206〜s210において駆動モードが高線量モードのときのキャリブレーション動作を行い、画素毎の最適パラメータA、B、C、TH0、TH1と飽和レベルSを算出する。データ収集部105がX線検出器104の全画素の駆動モードを高線量モードに設定(s406)した後は、低線量モードにおける前記s402〜s405と同様の処理であるため説明を省略する。
【0044】
このように、駆動モードすなわち蓄積容量毎に、各画素の入出力特性を近似した最適パラメータおよび飽和レベルを算出する。
【0045】
キャリブレーション動作の最後に、高線量モードのときの出力値を低線量モードのときの出力レベルに変換するための出力変換係数RHLを画素毎に算出する(s411〜s412)。本実施の形態では、低線量モードおよび高線量モードにおける入出力特性が線形な線量域での最適パラメータAおよびAを用いて、下記式にて画素毎に算出する。
【0046】
【数3】

【0047】
以上により、駆動モードが低線量モードのときの最適パラメータA、B、C、TL0、TL1と飽和レベルS、高線量モードのときの最適パラメータA、B、C、TH0、TH1と飽和レベルS、高線量モードの出力変換係数RHLをそれぞれ画素毎に算出できる。これでキャリブレーション動作が完了する。
【0048】
以上のキャリブレーション動作により、蓄積容量の異なる画素の出力値の対応関係を把握ことができる。蓄積容量の異なる画素では同じ線量を照射しても出力値される値は異なるが、上述の出力変換係数で対応関係を得られる。よってこの出力変換係数により高線量モードか低線量モードいずれか一方の画素の出力値を補正することで補正全体としてX線画像データを生成することができる。
【0049】
ここで、画素毎に入出力特性を求めるのは画素毎に入出力特性が異なっているからである。画素毎に駆動モード毎の入出力特性を得ることにより、画素毎にモードの違いを補正することができる。
【0050】
<撮影動作>
次に、図1のX線撮影装置100の撮影動作について図5乃至図7に示すフローチャートを用いて説明する。なお、撮影動作では上述のキャリブレーション動作で取得した画素毎の入出力特性および飽和レベルに基づき、被検体を撮影した画像の入出力特性のばらつきを補正するとともに、次フレームの駆動モードを画素毎に決定する動作を行う。
【0051】
まず、図5に示すフローチャートを用いて撮影動作全体の流れを説明する。被検体103は、オペレータによりX線検出器104に対して適切な位置となるように整位されたものとする。この状態で操作パネル110を介して入力された情報に基づき制御装置103のCPU108は撮影条件を設定する。また、撮影指示に応じてCPU108はX線発生部101およびFPD102に対してX線動画撮影の開始を指示する(s501)。
【0052】
X線動画撮影の開始直後では、制御装置103のモード決定部116からの指示に応じて、撮影制御部209(データ収集部105)は全画素の駆動モードを低線量モードに設定する(s502)。これにより、線量が低い場合でも画像のコントラストを向上させることができるため、撮影者に線量をなるべく上げさせず、被験者の被爆量を低減させることができる効果がある。
【0053】
ここで、DSA等の高線量を要する撮影であることが予めわかっている場合には、DSA撮影を実行するために入力された撮影条件に基づき撮影開始直後の画素の駆動モードを高線量モードとすることができる。これにより撮影開始直後の画素の飽和を減らし撮影直後から観察しやすい画像を得ることができる。
【0054】
X線動画撮影では、CPU108の制御に従いX線発生部101がX線ビームを連続的に、または間欠(パルス)的に照射する。X線ビームは、被検を減衰しながら透過して、X線検出器104に到達する。この撮影データは上述したようにオフセットばらつきが補正されたのち、CPU108の制御に従いX線画像データの1フレームとしてメインメモリにいったん記憶される(s503)。なお、本実施の形態では、被検体を人体とする。すなわち、X線検出器104から出力されるX線画像データは人体画像データとなる。
【0055】
次に、画像データにおける1画素を選択しCPU108はデータ収集部105からこの画像における1画素に対応するセンサの画素について、設定されている駆動モードを取得する(s504)。以下この画像における選択された画素を注目画素として説明する。なお各画素の駆動モードは制御装置103のメモリに記憶しておいてもよい。ステップs505でCPU108は注目画素の駆動モードが高線量モードであるか否かを判定し(s505)、判定結果に応じて低線量モードにおける処理(s506)または高線量モードにおける処理(s507)のいずれかを実施する。これら処理は、入出力特性の補正処理と、飽和画素の補正処理と、駆動モードすなわち蓄積容量の変更処理とを含む処理である。s506およびs507の処理の詳細については後述する。
【0056】
CPU108は上記処理s504〜s507をX線画像データの1フレームに含まれる全ての画素について繰り返し実施する(s508)。更に上記処理s503〜s508を画像が撮影されるたびに撮影終了指示があるまで繰り返し、順次取得したX線画像データの1フレームを連続的に処理する(s509)することで、撮影動作が継続的に行われる。
【0057】
先述のs506の低線量モードである画素に対する処理について、図6に示すフローチャートを用いて具体的に説明する。はじめに飽和判定部113において、画素の出力値I(x,y)(先述のyiに対応している)を取得する(s601)。ここで言う出力値は注目画素の画素値である。次に飽和判定部113は注目画素に対応するセンサの画素が飽和しているか否かを判定する(s602)。ここでは、撮影したX線画像データにおける注目画素(x,y)の出力値I(x,y)と、注目画素に対応するセンサの画素の飽和レベルS(x,y)に基づいて、下記式の条件を満たす場合に飽和していると判定する。
【0058】
【数4】

【0059】
ここで、係数kは飽和レベルS(x,y)に対するマージンを設定するパラメータであり、1以下の値を設定する。通常、飽和した画素からの出力値は一定値となるが、多少のばらつきが生じる。そこで、ばらつきを考慮して経験的に係数kを設定する。なお、本実施の形態ではk=0.95とする。
【0060】
次に、飽和していると判定された画素に対応する注目画素(x,y)に対しては、飽和補正部115において出力値I(x,y)を補正する(s603)。ここでは、注目画素と相関の高い近傍画素を用いて補正する。具体的には、例えば注目画素を中心とした5×5画素からなる画素ブロックを形成し、ブロック内の平均値を注目画素の補正後の出力値とする。このとき形成した画素ブロック内の各画素について前記処理s601と同等の判定を行い、飽和している画素を除く画素に対応する画素値についての平均値を算出するものとする。
【0061】
更に、飽和していると判定された画素に対応する注目画素(x,y)に対しては、モード決定部116において、次フレームの駆動モードを高線量モードに設定する(s604)。この制御により、現在の低線量モードにおいてX線量の過多により飽和しているセンサの画素が、次フレームでは同程度のX線量で飽和をさせないようにすることができる。
【0062】
一方、前記処理s602において飽和していないと判定された画素に対応する画像の注目画素(x,y)に対しては、特性補正部114が出力値I(x,y)の入出力特性を補正する(s405)。ここでは、注目画素に対応する最適パラメータA(x,y)、B(x,y)、C(x,y)および閾値TL0(x,y)、TL1(x,y)に基づいて、下記式のように代数的に求めた関数モデルFの逆関数F−1 にて注目画素の出力値I(x,y)を補正する。
【0063】
【数5】

【0064】
これにより、各画素の出力値が画素の入出力特性のばらつきに影響されない線量相当値に補正される。なお、本実施の形態では、逆関数を代数的に求めたが、これに限定されるものではなく、直接探索法(2分法、線形逆補間法など)や逐次近似法(ニュートン・ラフソン法、ベイリー法など)を用いて解析的に値を求めても良い。
【0065】
先述のs507における高線量モードの画素に対する処理について、図7に示すフローチャートを用いて具体的に説明する。はじめに飽和判定部113において、注目画素の出力値を取得し注目画素に対応するセンサの画素が飽和しているか否かを判定する(s701〜s702)。判定方法は前記低線量モードにおける処理s601〜s602と同等であるため説明を省略する。
【0066】
次に、画素が飽和していると判定された場合、飽和補正部115において出力値I(x,y)を補正する(s703)。補正方法は前記低線量モードにおける処理s603と同等であるため説明を省略する。
【0067】
更に、飽和していると判定された画素に対応する注目画素(x,y)に対しては、飽和判定部113において、注目画素に対応する画素を低線量モードとした場合に、飽和するか否かを判定する(s704)。判定方法は処理s601〜s602と同等であるが、判定に用いる飽和レベルはS(x,y)の代わりにS(x,y)を用いる。
【0068】
低線量モードの出力レベルにおいて飽和していないと判定された場合、モード決定部116は、当該注目画素に対応する画素の次フレームの駆動モードを低線量モードと決定する。決定に応じて撮影制御部209(データ収集部105)に対して蓄積容量を小さくするよう指示する。これに応じて撮影制御部209はWID信号をローレベルとし、追加容量素子Cfd1と光電変換素子を並列に接続するスイッチをオフする。これにより、駆動モードが低線量モードに設定される。(s705)。これにより高線量モードにおいてX線量の不足によりS/Nの悪化している画素が、次フレームでは同程度のX線量でもS/Nを改善できることが期待される。また、低線量モードの出力レベルにおいて飽和すると判定された場合、モード決定部116は低線量モードへと変更しない決定または高線量モードを維持する決定を行う。
【0069】
一方、s702で画素が飽和していないと判定された場合、特性補正部114において出力値I(x,y)の入出力特性を補正する(s706)。補正方法は前記低線量モードと同様である。注目画素に対応する最適パラメータA(x,y)、B(x,y)、C(x,y)および閾値TH0(x,y)、TH1(x,y)に基づいて、関数モデルFの逆関数F−1 で注目画素の出力値I(x,y)を補正する。詳細については前記低線量モードにおける処理s605と同等であるため説明を省略する。
【0070】
更に、画素が飽和していない場合、特性補正部114において出力値I(x,y)を低線量モードの出力レベルに変換する(s707)。ここでは、注目画素の出力値I(x,y)と、この画素に対応する出力変換係数RHL (x,y)に基づいて、下記式で変換する。
【0071】
【数6】

【0072】
これにより、X線画像データの1フレームに含まれる全ての画素を、駆動モードが低線量モードであるときの出力レベルに統一することができ、各画素の入出力特性および駆動モードに影響されない線量相当値に変換される。
【0073】
以上、実施例1では画素毎の入出力特性および飽和レベルを算出し、被検体を撮影した画像の入出力特性のばらつきを補正するとともに、次フレームの駆動モードを画素毎に決定する。これにより各画素の受光量に応じて画素の飽和を減らしつつ感度を向上させ、適切な画質の画像を得ることができる。よって、撮影対象自体が広いダイナミックレンジを有する場合でも適切に動態検査や3D撮影を行うことができる。
【実施例2】
【0074】
実施例2では線量域すなわち蓄積容量の異なる3つの駆動モードを備え、蓄積容量を3段階に変更可能である。また、イメージセンサに生じる欠陥画素に対応した処理を行うことができる。
【0075】
本実施例の概要を図8乃至図14および図18を参照しつつ説明する。
【0076】
図8に基づいてX線発生装置800の構成を説明する。FPD802のX線検出器804のイメージセンサにおける画素の構成が異なっている。
【0077】
また、X線撮影装置800の制御装置803が欠陥判定部801を有しており、駆動モード毎に欠陥画素の位置情報を取得しメインメモリ109に格納するとともに、画像データに基づいて欠陥画素であるか否かを判定する。この点で欠陥判定部801は欠陥取得部としても機能する。欠陥判定部801により欠陥画素と判定された場合にはモード決定の処理を省略することで画素に対する処理時間を全体として低減することができる。
【0078】
図9に基づいてX線検出器804のイメージセンサにおける画素について説明する。各画素901は蓄積容量素子Cfd1、Cfd2を有しており、それぞれスイッチ素子を介して光電変換素子PDと並列に接続されている。Cfd1はCfd2よりも容量が小さい。信号WID1、信号WID2はそれぞれCfd1、Cfd2に接続された各スイッチ素子のオンオフを制御する信号である。この信号WID1、信号WID2によりモード設定が変更される。FPD802の撮影制御部209が信号WID1をハイに、WID2をローにすることでCfd1のみを接続状態としCfd2を非接続状態となる。これによって画素が低線量モードに設定される。逆に、Cfd1を非接続状態としCfd2のみを接続状態とすることで中線量モードに設定される。またCfd1とCfd2の両方を接続状態とすることで高線量モードに設定される。
【0079】
その他、制御装置803の欠陥判定部801は駆動モード毎に欠陥マップを生成する。また欠陥判定部801は生成された欠陥マップとX線画像データの画素値とから各画素が欠陥であるか否かを判定する。ここで、駆動モード毎に使用する回路内の蓄積容量が異なることにより、欠陥画素の数や位置が駆動モード毎に変化するという問題がある。これに対応して、駆動モード毎に欠陥マップを生成することで、駆動モード毎に異なる欠陥画素に対応した処理が実行でき、欠陥画素に起因する画質の劣化を抑えることができる。なお、駆動モード毎に用いる回路素子の違いが無視できる場合には、駆動モードによらずX線検出器804について1つの欠陥マップを生成しておけばよい。
【0080】
その他、X線撮影装置の構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0081】
上述のX線撮影装置800のCPU108により制御されるキャリブレーション動作および撮影動作は実施例1と異なっており、以下図10乃至図14および図18を用いて説明する。なお、図8のX線撮影装置800において、図1のX線動画撮影装置100と同様に動作する箇所は同じ符号を付し、その詳細は省略する。また、図10乃至図14に示すフローチャートにおいて、それぞれ実子例1の図4乃至図7に示したフローチャートと同様の処理を実行するステップについては実施例1と同じ符号を付す。以下実施例1とは異なる構成について説明する。
【0082】
<キャリブレーション動作>
図10のフローチャートに従い本実施例に係るキャリブレーション動作の処理手順を説明する。まず操作パネル110を介したオペレータの指示により制御装置803がキャリブレーション動作を開始させる。実施例1と同様に、モード決定部116は駆動モードを低線量モードに設定する決定を行い、撮影制御部209が全画素の駆動モードを低線量モードに設定する。また、X線ビームの強度を変えた複数回の撮影を行い、特性算出部112は低線量モードのときの最適パラメータA、B、C、TL0、TL1と飽和レベルSを画素毎に算出する(s401〜s405)。
【0083】
次に、本実施の形態の特徴的な処理として、欠陥判定部801が低線量モードにおける欠陥マップDを生成し保持する(s1001)。ここで欠陥画素とは、入射線量に対する出力が変化しないか、また入出力特性のモデル化ができない画素である。また欠陥マップとは、正常画素と欠陥画素を識別するフラグを画素毎に保持したものであり、本実施の形態では正常画素は0、欠陥画素は1を保持するものとする。欠陥判定部801は、例えば、図18に示す方法を用いる。図18の左部分には、被写体を介さずにX線を照射し得られた白画像データを適当なサイズの画素ブロックに分割した状態が示されている。図18の右部分には、横軸をブロック内の位置、縦軸を画素値とした画素値の空間的な変化を示すグラフが示されている。このブロック内の平均値、標準偏差を求め、nを指定値として画素値が平均値±(n×標準偏差)の範囲に入っていない画素を欠陥画素と判定する。その他、欠陥画素を判定するための周知の方法を利用可能である。
【0084】
続いて、s1002〜s1007、s1006〜s1010、s1008において駆動モードが中線量モードと高線量モードのときのキャリブレーション動作を行い、中線量モードおよび高線量モードにおける画素毎の最適パラメータと飽和レベルと欠陥マップを算出する。これらの処理は低線量モードにおける前記s601〜s605、s1001と同様であるため説明を省略する。
【0085】
最後にモード決定部116は中線量モードの出力値を低線量モードの出力レベルに変換する出力変換係数RML、高線量モードの出力値を中線量モードの出力レベルに変換する出力変換係数RHM、高線量モードの出力値を低線量モードの出力レベルに変換する出力変換係数RHLを画素毎に下記式の通り算出する(s1009〜s1010、s411)。
【0086】
【数7】

【0087】
以上により、駆動モードが低線量モード、中線量モード、高線量モードのときの最適パラメータと飽和レベルと欠陥マップ、更に中線量モード、高線量モードのときの出力変換係数をそれぞれ画素毎に算出できる。
【0088】
<撮影動作>
次に、図8のX線撮影装置800の撮影動作について図11乃至図14に示すフローチャートを用いて説明する。なお、撮影動作では上述のキャリブレーション動作で取得したセンサの各画素の入出力特性、飽和レベルおよび欠陥マップに基づき、被検体を撮影した画像の入出力特性のばらつきを補正するとともに、次フレームの駆動モードを画素毎に決定する動作を行う。
【0089】
まず、全体的な流れについて図11に示すフローチャートを用いて説明する。はじめに実施例1と同様に、CPU108の制御に基づいてX線動画撮影を開始する(s501)。モード決定部116の決定に応じて撮影制御部209は全画素の駆動モードを低線量モードに設定する(s502)。制御装置803はFPD802からX線画像データの1フレームを取得し(s503)、CPU108に順次選択される注目画素の駆動モードを取得する(s504)。
【0090】
次に、取得した駆動モードに従った処理を行う(s1101)。即ち、駆動モードが低線量モードの画素に対しては低線量モード用の処理、中線量モードの画素に対しては中線量モード用の処理、高線量モードの画素に対しては高線量モード用の処理を行う。それぞれの駆動モードの処理に関しては駆動モード毎に図12、図13、図14に基づき説明する。
【0091】
上記処理s504、s1101をX線画像データの1フレームに含まれる全ての画素について繰り返し実施する(s508)。更に上記処理s503〜s504、s1101、s508を撮影終了指示があるまで繰り返す。このように順次取得したX線画像データの1フレームを連続的に処理する(s509)することで本実施の形態の撮影動作が継続的に行われる。
【0092】
図12に示すフローチャートに従い上述のs1101における低線量モードのときの注目画素に対する処理を説明する。はじめに欠陥判定部801において、注目画素に対応するセンサの画素が低線量モードにおいて欠陥画素か否かを判定する(s1201)。ここでは、本実施の形態におけるキャリブレーション動作で生成した欠陥マップD(x,y)を用いて判定する。具体的には、D(x,y)=1のとき欠陥画素と判定する。
【0093】
次に、低線量モードにおいて欠陥画素でないと判定された画素に対応する画像データの注目画素(x,y)について、飽和判定部113が飽和しているか否かを判定する(s1202)。判定方法は実施例1における処理s601〜s602と同等であるため説明を省略する。
【0094】
次に、飽和していないと判定された画素に対応する画像データの注目画素(x,y)に対しては、特性補正部114において出力値I(x,y)の入出力特性を補正する(s1203)。補正方法は実施例1における処理s605と同等であるため説明を省略する。
【0095】
一方、前記処理s1202において飽和していると判定された場合、モード決定部116は、次フレームの駆動モードを中線量モードに設定し(s1204)、更に、飽和補正部115において出力値I(x,y)を補正する(s1205)。これらの処理は、実施例1における処理s603〜s604と基本的には同等である。しかし本実施の形態のs1205においては、補正値としてブロック内の平均値を算出する際に、ブロック内の飽和画素と欠陥画素を平均値の算出から除外し残りの画素の平均値をブロック内の平均値として算出するものとする。
【0096】
前記処理s1201で、低線量モードにおいて欠陥画素であると判定された画素に対しては、欠陥判定部801は中線量モードにおける欠陥マップD(x,y)を用いて欠陥画素か否かを判定する(s1206)。中線量モードにおいて欠陥画素でないと判定された画素に対しては、前記処理s1204〜s1205によって、次フレームの駆動モードを中線量モードに設定し、出力値I(x,y)を補正する。
【0097】
更に、前記処理s1206で、中線量モードにおいて欠陥画素であると判定された画素に対しては、欠陥判定部801が高線量モードにおける欠陥マップD(x,y)を用いて欠陥画素か否かを判定する(s1207)。高線量モードにおいて欠陥画素でないと判定された画素に対しては、モード決定部116において、次フレームの駆動モードを高線量モードに設定し(s1208)、その後、判定結果に関わらずs1205で特性補正部114が出力値I(x,y)を補正する。
【0098】
図13に示すフローチャートに従い、前記処理s1101における中線量モードのときの注目画素に対する処理を説明する。はじめに、欠陥判定部801は欠陥マップD(x,y)を用いて注目画素が中線量モードにおいて欠陥画素か否かを判定する(s1301)。欠陥画素でない場合は、飽和判定部113は飽和レベルS(x,y)を用いて飽和しているか否かを判定する(s1302)。飽和していない注目画素に対しては特性補正部114が関数F−1(x,y)を用いて出力値I(x,y)の入出力特性を補正する(s1303)。これらの処理は低線量モードの画素に対する処理s1201〜s1203と同等であるため説明を省略する。
【0099】
次に、特性補正部114が出力変換係数RML(x,y)を用いて、入出力特性を補正した出力値I(x,y)を低線量モードの出力レベルに変換する(s1304)。変換方法は実施例1における処理s707と同様に下記式で変換する。
【0100】
【数8】

【0101】
次に、飽和判定部113は低線量モードの出力レベルに変換した出力値I’(x,y)と、その画素に対応した飽和レベルS(x,y)に基づいて、注目画素に対応するセンサの画素が低線量モードにおいて飽和しているか否かを判定する(s1305)。飽和していない場合は、欠陥判定部801が欠陥マップD(x,y)に基づいて欠陥画素か否かの判定(s1306)を行い、両方とも否判定である場合に限り、モード決定部116の決定に応じて次フレームの駆動モードを低線量モードに設定する(s1307)。
【0102】
前記処理s1302で、飽和していると判定された画素に対しては、モード決定部116の決定に応じて次フレームの駆動モードを高線量モードに設定する(s1308)。また飽和補正部115が出力値I(x,y)を補正する(s1309)。これらの処理は、低線量モードの画素に対する処理s1204〜s1205と同等であるため説明を省略する。
【0103】
前記処理s1301で、中線量モードにおいて欠陥画素であると判定された画素に対しては、同様に高線量モードにおける欠陥マップD(x,y)を用いて欠陥画素か否かを判定する(s1310)。高線量モードにおいて欠陥画素でないと判定された画素に対しては、前記処理s1308〜s1309によって、次フレームの駆動モードを高線量モードに設定し、出力値I(x,y)を補正する。
【0104】
更に、前記処理s1310で、高線量モードにおいて欠陥画素であると判定された画素に対しては、欠陥判定部801は低線量モードにおける欠陥マップD(x,y)を用いて欠陥画素か否かを判定する(s1311)。低線量モードにおいて欠陥画素でないと判定された画素は、モード決定部116の決定に応じて次フレームの駆動モードを低線量モードに設定し(s1312)、その後、判定結果に関わらず前記処理s1309で特性補正部114が出力値I(x,y)を補正する。
【0105】
図14に示すフローチャートに従いs1101における高線量モードのときの注目画素に対する処理について説明する。はじめに、欠陥判定部801は欠陥マップD(x,y)を用いて注目画素に対応するセンサの画素が高線量モードにおいて欠陥画素か否かを判定する(s1401)。欠陥画素でない場合は、飽和判定部113が飽和レベルS(x,y)を用いて飽和しているか否かを判定する(s1402)。飽和していない画素に対しては特性補正部114が関数F−1(x,y)を用いて出力値I(x,y)の入出力特性を補正し(s1403)、出力変換係数RHM(x,y)を用いて中線量モードの出力レベルに変換する(s1404)。その後飽和判定部113が飽和レベルS(x,y)を用いて中線量モードにおいて飽和しているか否かの判定(s1405)を行うとともに、欠陥判定部801が欠陥マップD(x,y)を用いて欠陥画素か否かの判定(s1406)を行う。両方とも否判定である場合に限り、モード決定部は画素を中線量モードとする決定を行い、これに応じて撮影制御部209(データ収集部105)が次フレームの駆動モードを中線量モードに設定する(s1407)。これらの処理は、中線量モードの画素に対する処理s1301〜s1307と同様であるため説明を省略する。
【0106】
次に、前記処理s1405およびs1406の判定結果に関わらず、前記処理s1404で中線量モードの出力レベルに変換した出力値を、更に出力変換係数RML(x,y)を用いて低線量モードの出力レベルに変換する(s1408)。変換方法は、中線量モードの画素に対する処理s1304と同様であるため説明を省略する。
【0107】
前記処理s1402で、飽和していると判定された画素に対しては、飽和補正部115において出力値I(x,y)を補正する(s1409)。補正方法は、中線量モードの画素に対する処理s1309と同様であるため説明を省略する。
【0108】
前記処理s1401で、高線量モードにおいて欠陥画素であると判定された画素対しては、欠陥判定部801が中線量モードにおける欠陥マップDを用いて欠陥画素か否かを判定する(s1410)。中線量モードにおいて欠陥画素でないと判定された画素に対しては、モード決定部116において、次フレームの駆動モードを中線量モードに設定する旨の決定を行い、決定に応じて撮影制御部209は画素の駆動モードを中線量モードに設定する(s1411)。
【0109】
更に、前記処理s1410で、中線量モードにおいて欠陥画素であると判定された画素に対しては、欠陥判定部801が低線量モードにおける欠陥マップD(x,y)を用いて欠陥画素か否かを判定する(s1412)。低線量モードにおいて欠陥画素でないと判定された画素に対しては、モード決定部116の決定に応じて、次フレームの駆動モードを低線量モードに設定する(s1413)。その後、判定結果に関わらず特性補正部114が前記処理s1409により出力値I(x,y)を補正する。
【0110】
以上、実施例2では駆動モードに依存した欠陥画素が存在する場合においても、その影響を回避して、画素毎に最適な駆動モードを設定することができる。
【0111】
なお上述の実施例では、飽和と判定された画素について蓄積容量を増やす場合には欠陥画素であるか否かの判定をしないこととしているが、欠陥画素の判定をすることとしてもよい。
【実施例3】
【0112】
実施例3では、8種類の撮影モードが画素毎に設定可能となっており、蓄積容量を8段階に変更可能である。更に、各画素の駆動モードを示す次フレーム駆動マップをメインメモリ109に格納してモード決定部116の決定に応じて逐次更新する。ここで、各画素の駆動モードを当該画素の周辺の駆動モードに基づいて補正する。当該補正処理はモード決定部116により行われる。図15を参照しながら本実施例を説明する。
【0113】
イメージセンサの各画素では例えば容量比が1:2:4の追加容量素子Cfd1、Cfd2、Cfd3がそれぞれスイッチ素子を介して光電変換素子と並列接続が可能となっている。更に、スイッチ素子を介さずに光電変換素子に接続された蓄積容量素子Cfdを有している。各スイッチ素子はそれぞれ撮影制御部から出力されるWID1、WID2、WID3によってオンオフされる。このように撮影制御部209はCfd1、Cfd2、Cfd3それぞれと光電変換素子との接続状態を独立に制御することができるため、蓄積容量の大きさを8パターン設定することができる。
【0114】
先述の実施例では画素毎に駆動モードを判定しているが、通常X線画像において局所的には駆動モードが大きく変化しないため、隣り合う画素で駆動モードが大きく異なる場合は、ノイズの影響でよるものである場合が多いと考えられる。そこで本実施例では各画素の駆動モードを画素の出力値と周辺の駆動モードに基づいて補正する。画素の駆動モードを周辺画素の駆動モードで補正することで、ノイズの影響を抑え、画素毎にモードが大きくばらつくことに起因するノイズを低減することができる。
【0115】
X線撮影装置100の撮影動作での処理手順は実施例1と異なり、図15に示したフローチャートに従った動作とする。なお、図1のX線動画撮影装置100において、実施例1と同様に動作する箇所は同じ符号を付し、その詳細は省略する。また、図15に示すフローチャートにおいて、図4に示したフローチャートと同様に処理実行するステップは同じ符号を付し、ここでは、上述した実施例1とは異なる構成についてのみ具体的に説明する。
【0116】
<キャリブレーション動作>
実施例1と同様に図2に示すフローチャートに従ってキャリブレーション動作を行う。ただし、実施例1では低線量モードと高線量モードの2つの駆動モードであったのに対して、本実施の形態では、モードM1からモードM8までの8モードについて、同様のキャリブレーション動作を行うものとする。なおM1〜M8は使用可能な線量域が異なっている。M1が最小の線量域であり、M2以降順に線量域が増加し、M8で最大の線量域となるものとする。キャリブレーション動作の詳細については、実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0117】
<撮影動作>
本実施例に係るX線撮影装置100の撮影動作について図15に示すフローチャートを用いて説明する。はじめに実施例1と同様に、X線動画撮影の開始し(s501)、全画素の駆動モードを最も低線量なモードであるM1に設定し(s502)する。
【0118】
次に、本実施の形態の特徴的な処理として、次フレーム駆動マップM(x,y)を初期化する(s1501)。次フレーム駆動マップとは、X線検出器104の次のフレームの駆動モードを画素毎に保持したものであり、本実施の形態では、モードM1〜M8に対応した値として1〜8のいずれかを保持するものとする。ここでは初期化動作として、次フレーム駆動マップM(x,y)の全画素の値を1と設定する。
【0119】
次に、X線画像データの1フレームを取得し(s503)、あるひとつの画素に着目して駆動モードを取得し(s504)、取得した駆動モードに従った処理を行う(s1502)。すなわち、駆動モードM1の画素に対してはM1用の処理、M2の画素に対してはM2用の処理といった具合にM1〜M8用のいずれかの処理を行う。それぞれの駆動モードにおける処理は、基本的に実施例1または2と同様である。画素が飽和していたら、次フレームの駆動モードを一段階高線量側に変更する。飽和していなかったら、一段階低線量側の駆動モードにおいて飽和判定部113による飽和判定を行う。否判定であれば一段階低線量側に変更する。
【0120】
続いて、前記処理s1502において注目画素(x,y)の次フレームにおける駆動モードが変更された場合は、それに対応した値によって次フレーム駆動マップM(x,y)を更新する(s1503)。例えばs1502において駆動モードM3で動作していた画素が次のフレームでM4に変更となった場合は、当該画素に対応する次フレーム駆動マップM(x,y)の値を4に更新する。
【0121】
X線画像データの1フレームに含まれる全ての画素 (x,y)について、上記処理s304、s1502〜s1503を繰り返し実施(s508)した後、モード決定部116において、次フレーム駆動マップM(x,y)の補正を行う(s1504)。ここでは、M(x,y)の各画素と相関の高い近傍画素の重み付け加算を補正後の値とする。
【0122】
【数9】

【0123】
ここで、N は参照する近傍画素の範囲を指定する定数であり、本実施の形態では例えばN=2 とする。また、W は近傍の各画素に対する重み係数を設定する関数である。なお、この関数系については特に限定するものではないが、本実施の形態では、例えば下記式に示すようなガウス関数を用いる。
【0124】
【数10】

【0125】
ここで、σはガウス関数の標準偏差を表し、本実施の形態では例えばσ=N とする。なお、補正後の次フレーム駆動マップM’(x,y)には1〜8の整数を格納する必要があるため、実際には上記式により算出したM’(x,y)を四捨五入して格納する。
【0126】
最後に、モード決定部116において、各画素の次フレームの駆動モードを、前記処理s1504で補正した次フレーム駆動マップM’(x,y)に従って設定する指示を出力する(s1505)。この指示に応じて撮影制御部209(データ収集部105)は各画素の駆動モードを変更する。更に、前記処理s503以降を撮影終了指示があるまで繰り返し、順次取得したX線画像データの1フレームを連続的に処理する(s509)することで本実施の形態の撮影動作が継続的に行われる。
【0127】
以上、実施例3ではノイズ等の影響により、次フレームの駆動モードが近傍画素のそれとは大きく異なる場合においても、相関の高い近傍画素の飽和状況または駆動モードに基づいて補正することができ、画素毎に最適な駆動モードを設定することができる。
【0128】
なお、本実施例において、例えば駆動モードM4とした場合でも、駆動モードM3とした場合でも、駆動モードM2とした場合でも飽和していないと判定された場合には、モード決定部116は駆動モードをM2に設定する旨の決定をすることとしてもよい。このように入出力特性に基づいて蓄積容量の変更量を決定することにより、高ダイナミックレンジと高感度を両立した画像を得ることができる。
【実施例4】
【0129】
上述の実施例では画素の入出力特性について低線量域を線型関数で、高線量域を非線型関数でモデル化しているが、あまりに線量相当値が小さ過ぎる場合、SN比が低下し画質が劣化してしまう場合がある。そこで、入射線量に対するSN比の特性を求め、許容されるSN比を下回る場合には、例え飽和判定部113に飽和すると判定されない場合でも当該モードへの変更をさせないこととする。装置の構成については実施例1または2と同様であるため説明を省略する。
【0130】
制御装置103の特性算出部112は各線量モード毎に線量を変えて複数の白画像データを撮影し、画像データについてSN比を算出する。SN比の算出方法は周知の方法を用いることとする。これにより各線量モード毎に入射線量に対するSN比の特性を示すデータを得ることができる。このSN比特性データをメインメモリ109に格納する。このように特性算出部112はSN特性の特性取得部として機能する。
【0131】
また、予めSN比の下限を示す閾値をメインメモリ109に格納しておく。この閾値はユーザが設定してもよいし、実験的に求められた既定値を格納しておいてもよい。
【0132】
制御装置103のモード決定部116は、低線量モードに設定された画素が飽和していないと判定された場合に、SN比特性データを参照して当該画素の出力値に対応するSN比を求める。この処理は実施例1の(数5)に基づいて出力値に対応する入射線量を求め、当該入射線量とSN比特性データから対応するSN比を特定することにより行われる。
【0133】
SN比がメインメモリ109に格納された閾値よりも小さいと判定された場合には、高線量モードに変更する。
【0134】
また別の状況として、高線量モードに設定された画素が飽和していないと判定された場合に、モード決定部116はSN比特性データを参照して当該画素の出力値に対応するSN比を求める。SN比がメインメモリ109に格納された閾値よりも小さいと判定された場合には、低線量モードに変更する。
【0135】
このように、各画素の入出力特性とSN特性とに基づいて蓄積容量を減少させるか否かを決定することで、画像のSN特性が大きく低下してしまうことを減らし、画質の良い画像をユーザに提供することができる。
【0136】
(その他の実施例)
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0137】
上述の例では画素毎に飽和判定処理と補正処理を行ったが、X線画像データを例えば5×5画素からなる画素ブロックに分割し、実施例1と同様の処理を画素ブロック毎に行っても同様の効果が得られる。加えてこの場合には、画素毎に判定する場合に比べて処理の負荷を軽減することができる。また、図3に示すように画素毎に感度スイッチM1からの信号線Aを引き出す場合に比べ、センサ内の信号線の和を減らすことができるため、センサ製造時の歩留まりを向上させ、品質を維持しやすくなる効果がある。
【0138】
あるいは、画素毎に蓄積容量を制御するためのメモリの機能を果たすコンデンサを設け、かかるコンデンサを複数の感度スイッチM#のベース側に接続する。そして、撮影制御部の制御により画素ごとのコンデンサに印加する電圧の大きさで感度スイッチのオンオフを制御させることができる。例えば、電圧の値を小さいほうから順にI1、I2,I3、I4として、電圧I1を印加した際には全てのスイッチがオフ、電圧I2を印加すると1つのスイッチのみオン、電圧I3を印加すると2つのスイッチがオン、電圧I4を印加すると全てのスイッチがオンとなるように、スイッチの種類或いは抵抗器等を利用して構成することができる。
【0139】
また別の例として、オペレータが操作パネル110を介して指定した範囲に基づいて、CPU108で画像上の部分領域を特定し、モード決定部116は当該部分領域に対応するセンサの画素についてのみ他の領域と駆動モードを変更する。これにより、ユーザが選択した範囲についてのみ高感度の画像を得ることや、高ダイナミックレンジの画像を得ることができる。
【0140】
また、上述の例では飽和しているか、またはSN比が許容値以内か否かに応じて蓄積容量を強制的に変更することとしていたが、モードの変更により撮影中の予期しないタイミングで画像が微妙に変化してしまうことも考えられる。このような場合を避けるために、その他の実施例ではユーザに警告し、操作部を介した入力に応じてユーザが手動でモードを変更できるようにする。
【0141】
これは、制御装置103が画素の飽和にまたはSN比の低下に応じて、警告を示すメッセージ、画像またはアイコン等及びそれらの組み合わせを表示部111に表示させる。表示は、1画素でも飽和した場合には表示させることとしてもよいし、所定の閾値を超える画素が飽和した場合にその旨を通知する表示をすることとしてもよい。あるいは、飽和した画素の位置を縮小画像中に重畳表示させ、動画の撮影と同期させることとしてもよい。さらには、画像の中央付近の部分領域で飽和する画素が所定の閾値より多く存在する場合に警告を表示することとしてもよい。係る表示の制御は飽和判定部113の出力結果を受け、CPU108がプログラムを読み込むことで行う。
【0142】
操作パネル110は駆動モードを指示する入力を受付られるようにモード変更用のボタンを有し、係るボタンの押下に応じてモード決定部116は駆動モードを変更する処理を行う。モード決定部116はボタンが押下されたタイミングで検出器104が電荷の蓄積中であれば次のフレーム画像の撮影に用いる蓄積容量を変更するよう、FPD102の撮影制御部209にWID信号をハイまたはローにするよう指示する。検出器104が電荷の蓄積中でない場合には、直ちにWID信号をハイまたはローにするよう指示する。このようにすることで、撮影中の予期しない画像の変化を防ぐことができる。
【0143】
また、上述の例では飽和するか否かを判定していたが、線形性のよい領域から外れた場合に駆動モードを自動変更することとしてもよい。この場合、飽和判定部113は特性算出部112で算出された各画素の入出力特性に基づいて入出力特性が非線形となる線量が照射されているか否かを画素毎に判定する。非線形と判定された画素について、モード決定部116は撮影モードを変更し蓄積容量を拡大させる決定を画素毎に行う。これに応じてFPD102の撮影制御部209は各画素の蓄積容量を設定するべくWID信号を出力する。これにより、常に入出力特性が線形性を有することとなるため、線形領域及び非線形領域を含む入出力特性のモデル化及び補正に伴う画像のノイズを抑制することができる。特に、低線量での撮影や、センサの感度が十分である場合には有効である。また、上述の通りに警告表示を行い、手動でのモード変更を促すこととしてもよい。
【0144】
上述の例では画素内の蓄積容量を変更する例を示したが、画素外またはセンサ基板外の差動増幅器208のゲインを変更することも考えられる。この場合、実施例2や実施例3のように複数の追加容量を設けずともよく、安価な構成で多段階にゲインを変えることができる。
【0145】
また上述の実施例ではX線撮影装置について説明したが、本発明を可視光やその他の波長帯域の光による撮影を行う撮影装置に用いることができる。この場合、上述の実施例で「線量」として説明した概念は「光量」に置き換えられることとなる。
【0146】
ただし、X線画像は診断に用いられる画像であること、色情報を有しないこと、人体のような比較的大きなダイナミックレンジを有する被写体を撮影することが大きいことなどの特有の特徴がある。これら特有の特徴により、高感度の撮影とダイナミックレンジを大きくした撮影とを両立するという点が重要な意義を有する。そのため、本発明をX線撮影装置またはX線センサの制御装置に用いることで、診断上有用な画像を得ることができる。
【0147】
また、本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施例では図に示すフローチャートに対応したプログラム)を、装置に供給し、装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することで達成される場合を含む。
【0148】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0149】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施例の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS などが、上述の処理の一部または全部を行う場合にも、前述した実施例の機能が実現され得る。
【符号の説明】
【0150】
100 X線撮影装置
101 X線発生部
102 FPD(フラットパネルディテクタ)
103 制御装置
104 X線検出器
105 データ収集部
108 CPU
112 特性算出部
113 飽和判定部
114 特性補正部
115 飽和補正部
116 モード決定部
209 撮影制御部(データ収集部)
Cfd 蓄積容量素子
Cfd1 追加容量素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素毎に電荷の蓄積容量の大きさを変更可能なセンサを制御する制御装置であって、
前記センサの各画素の蓄積電荷に応じた出力値を取得する取得手段と、
前記出力値に基づいて、前記各画素の蓄積容量が飽和しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定に応じて前記各画素の蓄積容量を画素毎に決定する決定手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記決定手段により決定された蓄積容量が設定された前記センサの各画素が出力する出力値を取得することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記出力値のまとまりであるフレーム画像に補正を施し画像データを生成する生成手段を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記センサの出力値のまとまりである第一のフレーム画像に基づいて前記各画素が飽和しているか否かを判定し、
前記生成手段は、前記判定に応じて決定された蓄積容量が設定された前記センサからの出力値に基づき第二のフレーム画像を得ることを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記決定手段に決定された蓄積容量が設定された前記センサの各画素が出力する出力値を前記センサの各画素の入出力特性に基づいて補正する補正手段を更に有することを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記出力値が飽和していると判定された場合には前記蓄積容量を拡大する決定をすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記出力値が飽和していないと判定された場合には前記蓄積容量を減少させまたは維持する決定をすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記センサの出力値のまとまりであるフレーム画像における欠陥画素の位置を取得する欠陥取得手段を更に有し、
前記判定手段は、前記欠陥画素の位置と前記出力値とに基づいて前記各画素の蓄積容量が飽和しているか、飽和していないが欠陥画素であるか、飽和しておらずかつ欠陥画素でないかを判定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記決定手段は、前記センサの各画素の入出力特性に基づいて前記各画素の蓄積容量の変更量を決定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記判定手段は、前記センサの各画素の入出力特性に基づいて前記各画素が飽和しているか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記センサの各画素に照射された光量と該光量に応じた蓄積した電荷の量に対する出力値との関係を示す前記センサの各画素の入出力特性を取得する特性取得手段を更に有する請求項1乃至10のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記特性取得手段は前記入出力特性として、前記光量に対する出力値の関係が線形近似できる光量の範囲と、前記光量に対する出力値の関係が非線形である光量の範囲と、前記光量に対して出力値が一定である光量の範囲と、に分けたモデルを取得することを特徴とする請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記特性取得手段は、前記センサに対し光量を変えて複数回に分けて光を照射し得られた複数の画像の画素値に基づいて前記入出力特性を得ることを特徴とする請求項11に記載の制御装置。
【請求項14】
前記決定手段は、前記センサの各画素の入出力特性またはSN特性の少なくともいずれかに基づいて前記各画素の蓄積容量を変更するか否かを決定することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記各画素が出力する出力値は前記蓄積容量に対する蓄積した光電荷の量に応じて定まることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記センサは受光した放射線量に応じた出力値を得るX線センサであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項17】
画素毎に電荷の蓄積容量の大きさを変更可能なセンサを制御する制御装置であって、
前記センサの各画素の蓄積電荷に応じた出力値を取得する出力取得手段と、
前記センサの各画素について電荷の蓄積量に対する出力値の特性である入出力特性を取得する特性取得手段と、
前記出力値と前記入出力特性とに基づいて前記センサの各画素の蓄積容量を画素毎に決定する決定手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の制御装置と、前記センサと、を有することを特徴とする撮影装置。
【請求項19】
前記センサの各画素は、光電変換素子と、該光電変換素子が受光に応じて発生させる電荷を蓄積する容量素子と、該光電変換素子と容量素子とを接続状態および非接続状態とするスイッチ素子とを有し、
前記センサは、前記決定手段の決定に応じて前記スイッチ素子を制御する制御手段を更に有する
ことを特徴とする請求項18の撮影装置。
【請求項20】
画素毎に電荷の蓄積容量の大きさを変更可能なセンサの制御方法であって、
受光させた前記センサから第一のフレーム画像を取得するステップと、
前記センサの各画素の入出力特性を取得するステップと、
前記第一のフレーム画像と前記各画素の入出力特性とに基づいて前記各画素の蓄積容量を決定するステップと、
前記決定された蓄積容量が各画素に設定された前記センサから第二のフレーム画像を取得するステップと、
ことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−62792(P2013−62792A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167043(P2012−167043)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】