説明

制御装置および投写型映像表示装置

【課題】撮像画像内からスクリーン位置を検出する際の精度を向上させる。
【解決手段】スクリーン位置検出部40は、撮像された画像内に写ったスクリーンの左辺および右辺の位置を検出する。水平方向ハイパスフィルタ42は、画像信号の水平方向の変化分を順次、検出する。垂直方向ハイパスフィルタ44は、画像信号の垂直方向の変化分を順次、検出する。減衰処理部50は、垂直方向の変化分にもとづいて、対応する位置の水平方向の変化分を減衰する。エッジ抽出部46は、減衰処理を経た水平方向の変化分のうち、所定の閾値を超える変化分を、スクリーンの左辺または右辺の一部をなすべき水平エッジ成分として抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写型映像表示装置を駆動制御するための制御装置、およびそれを搭載した投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラを搭載した投写型映像表示装置(以下適宜、プロジェクタと表記する)が実用化されている。カメラを搭載したプロジェクタのなかには、スクリーンに投影されたテストパターンをそのカメラで撮像し、撮像された画像をもとに台形歪み補正やオートフォーカス調整を行うことができるものもある。
【0003】
撮像画像をもとに台形歪み補正またはオートフォーカス調整を行う場合、スクリーンにテストパターンを投写する前提として、スクリーン位置を確定させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−241874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーンがプロジェクタに対して正対していない場合、すなわち、スクリーンが傾斜している場合、撮像画像内に写ったスクリーンに歪みが発生する。たとえば、スクリーンが左右方向に傾いている場合、撮像画像内に写ったスクリーンの上辺および下辺は斜め線となる。その撮像画像内から水平エッジ成分を抽出して、当該スクリーンの左辺および右辺を検出する際、当該スクリーンの上辺および下辺も水平エッジ成分を持つため、当該スクリーンの左辺および右辺以外の位置でも水平エッジ成分が抽出されてしまう。このエッジ成分がスクリーン位置検出精度の低下を招いていた。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、撮像画像内からスクリーン位置を検出する際の精度を向上させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御装置は、スクリーンに映像を投写する投写部と、前記スクリーンを撮像するための撮像部と、を備える投写型映像表示装置に搭載されるべき制御装置であって、前記撮像部により撮像された画像内に写ったスクリーンの左辺および右辺の位置を検出するスクリーン位置検出部を備える。前記スクリーン位置検出部は、前記撮像部から出力される画像信号の水平方向の変化分を順次、検出する水平方向ハイパスフィルタと、前記撮像部から出力される画像信号の垂直方向の変化分を順次、検出する垂直方向ハイパスフィルタと、垂直方向の変化分にもとづいて、対応する位置の水平方向の変化分を減衰する減衰処理部と、前記減衰処理部による減衰処理を経た水平方向の変化分のうち、所定の閾値を超える変化分を、前記スクリーンの左辺または右辺の一部をなすべき水平エッジ成分として抽出するエッジ抽出部と、を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、投写型映像表示装置である。この装置は、スクリーンに映像を投写する投写部と、スクリーンを撮像するための撮像部と、上述した制御装置と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像画像内からスクリーン位置を検出する際の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置と、スクリーンとの位置関係を示す図である。
【図2】図1に示した位置関係において、撮像部により撮像された撮像画像の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置の構成を示す図である。
【図4】ある実施例に係るスクリーン位置検出部の構成を示す図である。
【図5】水平方向ハイパスフィルタの一例を示す図である。
【図6】別の実施例に係るスクリーン位置検出部を示す図である。
【図7】スクリーン位置検出部によって検出されるスクリーンの左辺エッジおよび右辺エッジを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置200と、スクリーン300との位置関係を示す図である。実施の形態に係る投写型映像表示装置200は、スクリーン300方向を撮影するための撮像部30を備える。撮像部30は、その光軸中心と、投写型映像表示装置200から投写される投写光の光軸中心とが平行な関係になるよう、設置される。図1では、スクリーン300が投写型映像表示装置200に対して正対せずに、右側が奧に傾いている。
【0013】
図2は、図1に示した位置関係において、撮像部30により撮像された撮像画像PuIの一例を示す。撮像画像PuI内には、スクリーン300の画像SIが写っている。そのスクリーン300の画像SIには、水平台形歪みが発生が発生している。スクリーン300の右側が奧に傾いているため、そのスクリーン300の画像SIの左側に膨らみが発生している。
【0014】
図3は、本発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置200の構成を示す図である。投写型映像表示装置200は、投写部10、レンズ駆動部20、撮像部30および制御装置100を備える。制御装置100は、スクリーン位置検出部40、台形歪み補正部60、オートフォーカス調整部70、画像メモリ82、映像信号設定部84および駆動信号設定部86を備える。
【0015】
制御装置100の構成は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0016】
投写部10は、スクリーン300に映像を投写する。投写部10は、光源11、光変調部12およびフォーカスレンズ13を含む。光源11には、フィラメント型の電極構造を有するハロゲンランプ、アーク放電を発生させる電極構造を有するメタルハライドランプ、キセノンショートアークランプ、高圧型の水銀ランプ、LEDランプなどを採用することができる。
【0017】
光変調部12は、映像信号設定部84から設定される映像信号に応じて、光源11から入射される光を変調する。たとえば、光変調部12にはDMD(Digital Micromirror Device)を採用することができる。DMDは、画素数に対応した複数のマイクロミラーを備え、各マイクロミラーの向きが各画素信号に応じて制御されることにより、所望の映像光を生成する。
【0018】
フォーカスレンズ13は、光変調部12から入射される光の焦点位置を調整する。フォーカスレンズ13は、レンズ駆動部20によりそのレンズ位置が光軸上で移動される。光変調部12により生成された映像光は、フォーカスレンズ13を介して、スクリーン300に投写される。
【0019】
レンズ駆動部20は、駆動信号設定部86から設定される駆動信号に応じて、フォーカスレンズ13の位置を移動させる。レンズ駆動部20には、ステッピングモータ、ボイスコイルモータ(VCM)、ピエゾ素子などを採用することができる。
【0020】
撮像部30は、スクリーン300を、主な被写体として、撮像する。撮像部30は、固体撮像素子31および信号処理回路32を含む。固体撮像素子31には、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサなどを採用することができる。信号処理回路32は、固体撮像素子31から出力される信号に対して、A/D変換や、RGBフォーマットからYUVフォーマットへの変換などの各種信号処理を施し、制御装置100に出力する。本実施の形態では、スクリーン位置検出部40、台形歪み補正部60およびオートフォーカス調整部70に出力する。
【0021】
スクリーン位置検出部40は、撮像部30により撮像された画像内に写ったスクリーンの左辺および右辺の位置を検出する。スクリーン位置検出部40は、それら左辺および右辺の、対応する頂点同士を結ぶことにより、上辺および下辺の位置も検出することができる。以下、スクリーン位置検出部40の構成についてより具体的に説明する。
【0022】
図4は、実施例1に係るスクリーン位置検出部40を示す図である。実施例1に係るスクリーン位置検出部40は、ラインメモリ41、水平方向ハイパスフィルタ42、絶対値変換部43、垂直方向ハイパスフィルタ44、絶対値変換部45、減衰処理部50、エッジ抽出部46、エッジ選択部47および辺生成部48を有する。減衰処理部50は、比較部51および選択部52を含む。
【0023】
実施例1では、水平方向ハイパスフィルタ42と垂直方向ハイパスフィルタ44の特性が実質的に同じであることを前提とする。たとえば、水平方向ハイパスフィルタ42と垂直方向ハイパスフィルタ44とを、同じタップ数のFIR(Finite Impulse Response)デジタルフィルタで構成する。
【0024】
ラインメモリ41は、撮像部30から出力される画像信号を一時記憶する。ラインメモリ41は少なくとも、垂直方向ハイパスフィルタ44のタップ数よりひとつ少ないライン数のデータを保持できるように設計される。たとえば、水平方向ハイパスフィルタ42および垂直方向ハイパスフィルタ44が4タップフィルタで構成される場合、ラインメモリ41は少なくとも3ライン分の画像信号を保持できるように設計される。
【0025】
ラインメモリ41は、保持している画像信号を主走査方向に読み出して、水平方向ハイパスフィルタ42に供給する。それと共に、ラインメモリ41は、保持している画像信号を副走査方向に読み出して、垂直方向ハイパスフィルタ44に供給する。
【0026】
水平方向ハイパスフィルタ42は、撮像部30からラインメモリ41から介して供給される画像信号の水平方向の変化分を順次、検出する。絶対値変換部43は、水平方向ハイパスフィルタ42から出力される水平方向の変化分を、絶対値に変換する。
【0027】
図5は、水平方向ハイパスフィルタ42の一例を示す図である。図5では、4タップFIRデジタルフィルタの例を描いている。当該4タップFIRデジタルフィルタは、三つの遅延器(第1遅延器D1、第2遅延器D2および第3遅延器D3)、四つのアンプ(第1アンプAP1、第2アンプAP2、第3アンプAP3および第4アンプAP4)および三つの加算器(第1加算器AD1、第2加算器AD2および第3加算器AD3)を含む。
【0028】
当該4タップFIRデジタルフィルタでは、下記式(1)を演算する。
出力値Y(n)=入力値X(n)+入力値X(n−1)−入力値X(n−2)−入力値(n−3) ・・・式(1)
【0029】
このように、当該4タップFIRデジタルフィルタでは、水平方向の4画素分の信号から、水平方向の信号変化を検出する。なお、実装上は、ノイズの影響を受けにくくするために、6タップフィルタや8タップフィルタを使用して水平方向の変化を検出することがある。
【0030】
図4に戻る。垂直方向ハイパスフィルタ44は、水平方向ハイパスフィルタ42と同様の構成であり、撮像部30からラインメモリ41から介して供給される画像信号の垂直方向の変化分を順次、検出する。絶対値変換部45は、垂直方向ハイパスフィルタ44から出力される垂直方向の変化分を、絶対値に変換する。
【0031】
減衰処理部50は、エッジ抽出処理によって水平エッジ成分が検出されたときであっても、対応する位置で垂直エッジ成分の方がより大きく検出される場合は、検出された水平エッジ成分を無効にし、水平エッジ成分の検出を抑制する処理を行う。
【0032】
減衰処理部50の具体的な構成と動作を説明する。比較部51は、絶対値変換部43が出力する水平方向の変化分と絶対値変換部45が出力する垂直方向の変化分を大小比較する。比較部51は、垂直方向の変化分が水平方向の変化分よりも大きいならば、水平エッジ成分の検出を抑制する指示を選択部52に与え、垂直方向の変化分が水平方向の変化分以下ならば、選択部52に何も指示を与えない。このとき、垂直方向の変化分が水平方向の変化分に比べて所定のしきい値よりも大きいならば、水平エッジ成分の検出を抑制する指示を選択部52に与えるようにしてもよい。
【0033】
選択部52は、比較部51から何も指示がない限り、絶対値変換部43が出力する水平方向の変化分を検出位置の座標情報とともにエッジ抽出部46に出力する。比較部51から水平エッジ成分の検出を抑制する指示が与えられた場合は、選択部52は、絶対値変換部43が出力する水平方向の変化分をエッジ抽出部46に出力しない。
【0034】
減衰処理部50による水平エッジ成分の検出抑制処理の後、エッジ抽出部46は、ライン毎に、減衰処理部50から受け取った水平成分の変化分の内、所定の閾値を越えるものを水平エッジ成分として抽出し、抽出された水平エッジ成分を検出位置の座標情報とともにエッジ選択部47に与える。
【0035】
エッジ選択部47は、撮影画像の中心よりも左側の領域と右側の領域の二つに分けて、各領域において、ライン毎に、エッジ抽出部46により抽出された水平エッジ成分の内、値が最大のものを選択し、その選択された水平エッジ成分の座標情報を辺生成部48に与える。
【0036】
辺生成部48は、撮影画像の中心よりも左側の領域と右側の領域の各領域において、エッジ選択部47により選択された水平エッジ成分の座標をもとに最小二乗法を用いて、スクリーン300の左辺または右辺とすべき回帰直線を求める。これにより、撮影画像の中心よりも左側の領域ではスクリーン300の左辺が、右側の領域ではスクリーン300の右辺がエッジとして検出される。
【0037】
ここで、撮影画像の中心よりも左側の領域と右側の領域の各領域において、複数本のエッジが検出される場合は、ある設定値以上の長さをもち、最も画像中心に近いものを左辺エッジまたは右辺エッジとして決定する。これは、スクリーン300の外部に棒のような物体があったり、スクリーン300の背後の壁に模様があったりすると、それを誤ってエッジとして検出してしまうおそれがあるからである。スクリーン300の内部には通常は何も物体が置かれていないため、複数本のエッジが抽出されるときは、画像中心に最も近いものを選べば、スクリーン300の左辺または右辺以外のものを誤ってエッジと検出することを防ぐことができる。
【0038】
さらに、辺生成部48は、検出されたスクリーン300の左辺エッジと右辺エッジの上端同士、下端同士を結ぶ線分を求めることで、スクリーン300の上辺エッジと下辺エッジを求めることができる。辺生成部48は最終的に得られたスクリーン300の四辺のエッジからスクリーン300の四つの頂点の座標データを求めて出力する。
【0039】
別の方法として、より精度を高めるために、上辺エッジと下辺エッジについても同様のエッジ抽出処理を用いて検出してもよい。これは、上述の水平エッジ成分の抽出処理の手法を垂直エッジ成分の抽出処理に適用することにより、可能である。
【0040】
具体的には、ラインメモリ41が保持している画像信号を主走査方向に読み出して、垂直方向ハイパスフィルタ44に供給するとともに、ラインメモリ41が保持している画像信号を副走査方向に読み出して、水平方向ハイパスフィルタ42に供給するようにすれば、水平方向と垂直方向を入れ替えることができる。すなわち、水平方向ハイパスフィルタ42は、実際には垂直方向のエッジフィルタとして動作し、垂直方向ハイパスフィルタ44は、実際には水平方向のエッジフィルタとして動作する。減衰処理部50の働きにより、検出された垂直方向の変化分は、対応する位置で検出された水平方向の変化分の方が大きい場合には、無効化される。
【0041】
そして、エッジ抽出部46、エッジ選択部47および辺生成部48により、撮影画像の中心より上側の領域で上辺エッジが検出され、撮影画像の中心より下側の領域で下辺エッジが検出される。
【0042】
図6は、実施例2に係るスクリーン位置検出部40を示す図である。実施例2に係るスクリーン位置検出部40は、実施例1に係るスクリーン位置検出部40とは減衰処理部50の構成が異なり、それ以外の構成は同じである。同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。実施例2の減衰処理部50は、コアリング部53、増幅部54、クリップ部55、減算部56、乗算部57および正規化部58を含む。
【0043】
実施例1では、水平方向ハイパスフィルタ42と垂直方向ハイパスフィルタ44の特性が実質的に同じである、たとえば、同じタップ数のFIRデジタルフィルタで構成されていることを前提として、減衰処理部50は、水平方向ハイパスフィルタ42によって検出される水平方向の変化分と垂直方向ハイパスフィルタ44によって検出される垂直方向の変化分を大小比較して、検出された水平エッジ成分を無効にするかどうかを決めた。
【0044】
実施例1において、エッジ検出精度を高くするために、水平方向ハイパスフィルタ42のタップ数をたとえば8にした場合、垂直方向ハイパスフィルタ44のタップ数も8にする必要がある。減衰処理部50の比較部51において大小比較することの前提として、水平方向ハイパスフィルタ42と垂直方向ハイパスフィルタ44の性能は同じであることが望ましいからである。しかし、その場合、ラインメモリ41は8本分のラインデータを保持する必要があり、回路規模が大きくなってしまう。
【0045】
そこで、実施例2では、水平方向ハイパスフィルタ42と垂直方向ハイパスフィルタ44の特性が異なる場合、たとえば、水平方向ハイパスフィルタ42のタップ数が垂直方向ハイパスフィルタ44のタップ数よりも大きい場合であっても有効な水平方向のエッジ成分の減衰処理を提供する。
【0046】
コアリング部53は、絶対値変換部45により出力される垂直方向の変化分の絶対値を受け取り、レジスタに設定された所定のコアリング量のもとでコアリング処理を行い、検出値のノイズを低減する。増幅部54は、コアリング部53からコアリング処理後の垂直方向の検出値を、レジスタに設定された所定の水平成分抑圧強度をゲインとして増幅する。クリップ部55は、増幅部54により増幅された垂直方向の検出値を所定のクリップ値を上限としてクリッピングし、減算部56に出力する。減算部56は、クリップ部55から受け取る入力値をクリップ値から減算した値を減衰係数として求め、減衰係数を乗算部57に出力する。
【0047】
たとえば、クリップ値として64を用いた場合、増幅部54により増幅され、クリップ部55によりクリッピングされた入力値をGとすると、減算部56は、64−Gを出力する。ここで、Gはクリッピング処理により64以下の値に丸められている。
【0048】
乗算部57は、絶対値変換部43が出力する水平方向の変化分と、減算部56が出力する減衰係数とを乗算した値を求めて、正規化部58に出力する。正規化部58は、乗算部57から受け取る入力値をクリップ値で割ることにより、入力値を正規化してエッジ抽出部46に出力する。
【0049】
クリップ値が64の場合、絶対値変換部43が出力する水平方向の変化分の値をhとすると、乗算部57は(64−G)hを出力し、正規化部58は(64−G)h/64を出力する。たとえば、G=64、すなわち、垂直方向の変化分の増幅後の値が最大である場合、正規化部58の出力結果は0であり、検出された水平方向の変化分の値hはキャンセルされる。G=32であれば、正規化部58の出力結果はh/2であり、検出された水平方向の変化分の値hは半分に減衰される。G=0であれば、正規化部58の出力結果はhのままであり、全く減衰されない。このように、垂直方向ハイパスフィルタ44により検出される垂直方向の変化分が大きいほど、水平方向ハイパスフィルタ42により検出される水平方向の変化分の減衰率が大きくなる。
【0050】
エッジ抽出部46は、減衰処理部50による減衰処理後の水平方向の変化分を検出位置の座標情報とともに受け取る。それ以降の処理は、実施例1と同じである。
【0051】
実施例2によれば、検出される垂直方向の変化分の大きさに応じて、水平方向の変化分を減衰させるため、より高い精度で水平エッジ成分を検出することができ、撮影されたスクリーン300の形状が台形になっている場合でも、より正確にスクリーン300の左辺エッジと右辺エッジを求めることができる。
【0052】
図7(a)、(b)は、実施例1および2に係るスクリーン位置検出部40によって検出されるスクリーン300の左辺エッジおよび右辺エッジを説明する図である。図7(a)は、エッジ選択部47によりライン毎に選択された水平エッジ成分を示す。画像中心より左側の領域内に1本、右側の領域内に1本のエッジが検出されている。これを辺生成部48が最小二乗法により線形近似することにより、図7(b)のようにスクリーン300の左辺エッジと右辺エッジが検出される。
【0053】
図3に戻る。スクリーン位置検出部40が検出したスクリーン300の四辺(上辺、下辺、左辺および右辺)の位置に関する情報、たとえば、四つの頂点の座標データは、台形歪み補正部60およびオートフォーカス調整部70に供給され、台形歪み補正およびオートフォーカス調整において用いられるテストパターンの検出領域の確定に用いられる。
【0054】
台形歪み補正部60は、スクリーン300に投影される画像の台形歪みを補正する。台形歪みは、スクリーン300と投写型映像表示装置200とが正対していない場合に発生する。たとえば、投写光の光軸が上向きにずれている場合、スクリーン300には上部が膨らんだ台形歪みが発生する。
【0055】
投写型映像表示装置200の起動時や、ユーザ操作により台形歪みの調整が指示されたとき、映像信号設定部84は、画像メモリ82から台形歪み調整用のテストパターンを読み出し、投写部10に投写させる。当該テストパターンは、たとえば、四角形(正方形、長方形、平行四辺形、菱形など)で形成される。撮像部30は、スクリーン300に投影されたテストパターンを撮像する。台形歪み補正部60は、撮像画像に写ったテストパターンの形状をもとに、台形歪みを検出し、その台形歪みがキャンセルされるよう、映像信号設定部84に設定すべき映像信号を補正する。
【0056】
オートフォーカス調整部70は、コントラスト検出法を用いて、フォーカスを合わせる。投写型映像表示装置200の起動時や、ユーザ操作によりオートフォーカス調整が指示されたとき、映像信号設定部84は、画像メモリ82からオートフォーカス調整用のテストパターンを読み出し、投写部10に投写させる。当該テストパターンは、たとえば、ストライプパターンやチェッカーフラグパターンで形成される。撮像部30は、スクリーン300に投影されたテストパターンを撮像する。オートフォーカス調整部70は、複数のレンズ位置にて、撮像部30によりそれぞれ撮像された当該テストパターンの鮮明度をもとに、フォーカスレンズ13の位置を決定する。
【0057】
オートフォーカス調整部70は、フォーカスレンズ13を所定のステップ幅で順次、移動させるための制御信号を駆動信号設定部86に設定する。駆動信号設定部86は、上記制御信号に応じた駆動信号をレンズ駆動部20に設定する。
【0058】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0059】
10 投写部、 11 光源、 12 光変調部、 13 フォーカスレンズ、 20 レンズ駆動部、 30 撮像部、 31 固体撮像素子、 32 信号処理回路、 40 スクリーン位置検出部、 41 ラインメモリ、42 水平方向ハイパスフィルタ、 43 絶対値変換部、 44 垂直方向ハイパスフィルタ、 45 絶対値変換部、 46 エッジ抽出部、 47 エッジ選択部、 48 辺生成部、 50 減衰処理部、 51 比較部、 52 選択部、 53 コアリング部、 54 増幅部、 55 クリップ部、 56 減算部、 57 乗算部、 58 正規化部、 60 台形歪み補正部、 70 オートフォーカス調整部、 82 画像メモリ、 84 映像信号設定部、 86 駆動信号設定部、 100 制御装置、 200 投写型映像表示装置、 300 スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンに映像を投写する投写部と、前記スクリーンを撮像するための撮像部と、を備える投写型映像表示装置に搭載されるべき制御装置であって、
前記撮像部により撮像された画像内に写ったスクリーンの左辺および右辺の位置を検出するスクリーン位置検出部を備え、
前記スクリーン位置検出部は、
前記撮像部から出力される画像信号の水平方向の変化分を順次、検出する水平方向ハイパスフィルタと、
前記撮像部から出力される画像信号の垂直方向の変化分を順次、検出する垂直方向ハイパスフィルタと、
垂直方向の変化分にもとづいて、対応する位置の水平方向の変化分を減衰する減衰処理部と、
前記減衰処理部による減衰処理を経た水平方向の変化分のうち、所定の閾値を超える変化分を、前記スクリーンの左辺または右辺の一部をなすべき水平エッジ成分として抽出するエッジ抽出部と、
を含むことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記減衰処理部は、垂直方向の変化分と、対応する位置の水平方向の変化分とを比較し、前者が大きい場合、当該水平方向の変化分を無効とすることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記減衰処理部は、垂直方向の変化分が大きいほど、対応する位置の水平方向の変化分を大きく減衰することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記スクリーン位置検出部は、
水平ライン毎に、前記エッジ抽出部により抽出される水平エッジ成分の内、値が最大のものを選択するエッジ選択部と、
前記エッジ選択部により選択された水平エッジ成分をもとに最小二乗法を用いて、前記スクリーンの左辺または右辺とすべき回帰直線を生成する辺生成部をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御装置。
【請求項5】
スクリーンに映像を投写する投写部と、前記スクリーンを撮像するための撮像部と、を備える投写型映像表示装置に搭載されるべき制御装置であって、
前記撮像部により撮像された画像内に写ったスクリーンの上辺および下辺の位置を検出するスクリーン位置検出部を備え、
前記スクリーン位置検出部は、
前記撮像部から出力される画像信号の垂直方向の変化分を順次、検出する垂直方向ハイパスフィルタと、
前記撮像部から出力される画像信号の水平方向の変化分を順次、検出する水平方向ハイパスフィルタと、
前記水平方向の変化分にもとづいて、対応する前記垂直方向の変化分を減衰する減衰処理部と、
前記減衰処理部による減衰処理を経た垂直方向の変化分のうち、所定の閾値を超える変化分を、前記スクリーンの上辺または下辺の一部をなすべき垂直エッジ成分として抽出するエッジ抽出部と、
を含むことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
スクリーンにレンズを介して映像を投写する投写部と、
前記スクリーンを撮像するための撮像部と、
請求項1から5のいずれかに記載の制御装置と、
を備えることを特徴とする投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−182103(P2011−182103A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42804(P2010−42804)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】