説明

制振パイプ及びその製造方法

【課題】多くのスポーツ用具の素材としてパイプは広く用いられており、近年その剛性の向上及び軽量化は著しく進んでいるが、制振機能については余り配慮されておらず、実際の使用の際にプレーヤーの腕や手に衝撃を与え、スポーツ傷害を発生させることがあった。
【構成】パイプ本体1の内径側壁面2に繊維強化プラスチック製の吸振材4を固着せしめて制振パイプを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は制振パイプ及びその製造方法、詳しくは、スポーツ用具の素材として最適な制振パイプ及びそれを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプは各種器材の素材として多用されており、スポーツ用具、たとえば野球用バット、ゴルフ用クラブ、テニス用ラケット、アイスホッケー用スティック、自転車用のハンドルなどにも多く用いられている。
【特許文献1】なし
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スポーツ用具などに用いられているパイプは、剛性の向上及び軽量化が進み、その機能は格段に向上しているが、制振性については特に配慮されておらず、外部から大きな衝撃が加えられると、瞬間的に激しく振動し、これを握持している者の腕などにダメージを与えることがあった。
【0004】
たとえば、野球用バットの場合、従来の木製バットではボールが衝突した瞬間の衝撃力は木が適度に吸収するので、これを握持する者の腕にはそれ程大きな衝撃力は加わらないが、木よりはるかに剛性が大きく軽量でもある繊維強化プラスチックや金属素材でバットを構成した場合、ボールが衝突した瞬間の衝撃力がバットを握持する者の腕や手に直接加わり、運動障害の原因となることもあった。
【0005】
本発明者は、制振性に欠ける従来のパイプの欠点を除去し、スポーツ用具の素材として最適な制振性を有するパイプを開発すべく鋭意研究を行った結果、すぐれた制振性を有するパイプを完成するに至り、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
パイプ本体1の内径側壁面2に繊維強化プラスチック製の吸振材4を固着せしめて制振パイプを構成することにより上記課題を解決した。又、その製造は、気体を充填したナイロンパイプ5の外周面に所望形状の合成樹脂を含浸させた繊維マット片6を貼り付け、更にその上を合成樹脂を含浸させた繊維シート7で回巻し、これらを加熱成形型の中に入れ、内側及び外側から加圧しながら所定温度で加熱して繊維マット片6及び繊維シート7にそれぞれ含浸している合成樹脂を硬化させた後、加熱成形型から取り出すと共に、ナイロンパイプ5を抜き去るという方法により行われる。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る制振パイプは上述の通り、パイプ本体1と吸振材4とによって二層構造になっているので、パイプ本体1に外部から衝撃が加わると、パイプ本体1の内側に位置した吸振材4が衝撃力を吸収し、パイプ本体1の振動を減衰させる。従って、この制振パイプでゴルフクラブや野球用バットを構成した場合、ボールによってゴルフクラブやバットに加えられる衝撃は著しく減少し、これらを握っているプレーヤーの腕や手がしびれることはなく、スポーツ傷害を有効に阻止することが出来る。又、外観は従来のパイプと全く同じであるので、ユーザーに違和感を与えることもなく、互換性においてもすぐれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
パイプ本体1の内径側壁面2に外部から加えられる衝撃を吸収する為の吸振材4を固着せしめたことに最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0009】
図1はこの発明に係る制振パイプの実施例1の斜視図、図2はその横断面図、図3は図2における矢視A−A線断面図である。
【0010】
図中1はパイプ本体であり、この実施例1においては、カーボン繊維やガラス繊維に合成樹脂を含浸させた所謂繊維強化プラスチックによって構成されているが、金属を素材とするものでも良い。そして、このパイプ本体1の内径側壁面2には、壁面2の曲率と同じ曲率で弯曲した円弧状の外周面3を有する樋状をなした繊維強化プラスチック製の吸振材4が、その長手方向芯軸にそって相互に等しい間隔a,aを保って一体的に固着せしめられている。
【0011】
吸振材4はパイプ本体1の内径側壁面2に確実に固定されていることが肝要であり、パイプ本体1が繊維強化プラスチック製の場合、次に述べる方法により製作される。即ち、図4に示す様に、内部に空気などの気体を充填した円柱状のナイロンパイプ5を用意しておき、このナイロンパイプ5の外周面に吸振材4になるべき、合成樹脂を含浸させた繊維マット片6を等間隔で貼り付け、更にその上をパイプ本体1となるべき合成樹脂を含浸させた繊維シート7で巻き付け、図5に示す様な状態とし、これらを加熱成形型の中に入れてナイロンパイプ5及び加熱成形型によって内側及び外側から加圧しながら所定温度で加熱して合成樹脂を硬化させた後、加熱成形型から取り出すと共にナイロンパイプ5から空気を抜いてこれを収縮させて抜き去り、二層構造となった制振パイプを完成させる。この様なプロセスにより、パイプ本体1の内径側壁面2に吸振材4が一体的に固着せしめられた制振パイプを得ることが出来る。
【0012】
なお、パイプ本体1が金属製の場合には、吸振材4をパイプ本体1の内径側壁面に接着剤によって固着せしめれば良い。又、吸振材4は上述の様な樋形をしたもの以外に、丈の短い円筒状をしたものでも良く、この場合には図6に示す様に、所定の間隔bを保って、パイプ本体1の内径側壁面2にその外周面が接する様に、複数個を直列状に固着せしめる。更に、図7及び図8に示すものの様に、パイプ本体1の内径側壁面2の全面を覆った長尺円筒状をなした吸振材4を用いても良く、吸振材4の形状は実施例1に示したものに限定されない。
【0013】
又、パイプ本体1の横断面形状も、円形のものに限らず、図9に示すものの様に四角形断面や図10に示す様に三角形断面など多角形断面あるいは楕円形断面のものでも良い。
【0014】
この発明に係る制振パイプは上述の通り、パイプ本体1と吸振材4とによって二層構造となっているので、パイプ本体1に外部から衝撃が加わると、パイプ本体1の内側に位置した吸振材4が衝撃力を吸収し、パイプ本体1の振動を減衰させる。従って、この制振パイプでゴルフクラブや野球用バットを構成した場合、ボールによってゴルフクラブやバットに加えられる衝撃は著しく減少し、これらを握っているプレーヤーの腕や手がしびれることはなく、スポーツ傷害を有効に阻止することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0015】
野球やソフトボールのバット、アイスホッケーのスティック、テニスやバドミントンのラケット、ゴルフクラブのシャフト、自転車のフレームやハンドルなど各種スポーツ用具の素材として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る制振パイプの実施例1の斜視図。
【図2】その横断面図。
【図3】同じく、図2における矢視A−A線縦断面図。
【図4】この発明に係る制振パイプの製造方法の最初の工程を説明する為の斜視図。
【図5】同じく、次の工程を説明する為の斜視図。
【図6】実施例1とは異なった形状の吸振材4を用いた実施例の縦断面図。
【図7】更に別の形状の吸振材4を用いた実施例の内部を透視して描いた斜視図。
【図8】同じく、その縦断面図。
【図9】実施例1とはパイプ本体1の断面形状が異なった実施例の端面図。
【図10】同じく、実施例1とはパイプ本体1の断面形状が異なった実施例の端面図。
【符号の説明】
【0017】
1 パイプ本体
2 内径側壁面
3 外周面
4 吸振材
5 ナイロンパイプ
6 繊維マット片
7 繊維シート



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ本体1の内径側壁面2に繊維強化プラスチック製の吸振材4を固着せしめたことを特徴とする制振パイプ。
【請求項2】
気体を充填したナイロンパイプ5の外周面に所望形状の合成樹脂を含浸させた繊維マット片6を貼り付け、更にその上を合成樹脂を含浸させた繊維シート7で回巻し、これらを加熱成形型の中に入れ、内側及び外側から加圧しながら所定温度で加熱して繊維マット片6及び繊維シート7にそれぞれ含浸している合成樹脂を硬化させた後、加熱成形型から取り出すと共に、ナイロンパイプ5を抜き去ることを特徴とする制振パイプの製造方法。
【請求項3】
パイプ本体1が繊維強化プラスチック製であることを特徴とする請求項1記載の制振パイプ。
【請求項4】
パイプ本体1が金属製であることを特徴とする請求項1記載の制振パイプ。
【請求項5】
吸振材4が円弧状に弯曲した外周面を有する樋状をなしていることを特徴とする請求項1記載の制振パイプ。
【請求項6】
吸振材4が丈の短い円筒状をなしており、パイプ本体1の内径側壁面2に等間隔で直列状に固着せしめられていることを特徴とする請求項1記載の制振パイプ。
【請求項7】
吸振材4が長尺円筒状をなし、パイプ本体1の内径側壁面2に固着せしめられていることを特徴とする請求項1記載の制振パイプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−224971(P2007−224971A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44908(P2006−44908)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(595102813)有限会社ケイ・コーポレーション (1)
【出願人】(594056030)
【出願人】(506061635)
【Fターム(参考)】