説明

制振装置及びこれを用いた建物

【課題】建物のスペース効率を高め、ひいてはプラン対応力を向上させることができる制振装置及びこれを用いた建物を得る。
【解決手段】建物の屋上には制振装置24が設置されている。制振装置24は、ALCパネル52の上面に載置された架台60と、これを覆うTMDカバーケース66によってその外郭が構成されている。架台60の上面にはマウント78が配置されており、かかるマウント78に蓄電池34が載置されている。蓄電池34は重量物であり、これを付加質量として利用するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置及びこれを用いた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、高層建物の軸組構造において制振装置を設置した技術が開示されている。簡単に説明すると、建物外周にはPC構造の柱が所定間隔で配置されていると共に、柱間には鉄骨梁が配置されている。また、建物中央のコア部の四隅には平面視でL字状のコア壁が配置されていると共に、コア壁間には鉄骨梁が配置されている。さらに、コア壁と建物外周の柱との間には、鉄骨梁が配置されている。これにより躯体が構成され、更に屋上階のコア壁間に制振装置がそれぞれ配置されている。
【特許文献1】特許2002−317498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された先行技術による場合、以下に説明する点において改良の余地がある。
【0004】
すなわち、制振装置を高層建物の建築構造との関係でどのように設置するかに主眼がおかれているため、制振装置のカウンターウエイトやマウント等の要素は専用品を使うことを前提としている。このため、例えば一般住宅等の低層建物等に適用しようとすると、スペースの有効活用が図れないものとなり、この点において改良の余地がある。
【0005】
その一方で、一般住宅等の建物に蓄電システムを導入することが検討されている。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、建物のスペース効率を高め、ひいてはプラン対応力を向上させることができる制振装置及びこれを用いた建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る制振装置は、建物上部に設置される重量物支持体と、この重量物支持体に支持されると共に建物全体の揺れを抑制する付加質量として用いられる蓄電池と、を有している。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の制振装置において、さらに、前記蓄電池が載置される載置部と、この載置部に一体に又は別体として設けられ、蓄電池が載置部から脱落しないように蓄電池を保持する保持手段と、を備えた、ことを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2記載の制振装置において、前記載置部は蓄電池収納ケースの底部であると共に、前記保持手段は蓄電池収納ケースの側部である、ことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2記載の制振装置において、前記載置部はプレート状の載置板又は台座とされると共に、前記保持手段は蓄電池を位置決めした状態で載置板又は台座に固定する固定手段である、ことを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の制振装置において、前記蓄電池が前記保持手段によって前記載置部に保持された状態では、隣り合う蓄電池間に所定の隙間が設けられている、ことを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の制振装置において、前記重量物支持体は、蓄電池を弾性支承するマウントである、ことを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の制振装置において、前記蓄電池は、当該蓄電池の雰囲気温度が所定の範囲内となるように断熱された断熱室内に収容されている、ことを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7記載の制振装置において、前記断熱室は蓄電池の周囲の一部又は全部を断熱材で覆うことにより形成されており、かつ当該断熱材には点検口が形成されている、ことを特徴としている。
【0015】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8記載の制振装置において、前記断熱室には、換気装置及び空調装置の少なくとも一方が設置されている、ことを特徴としている。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の制振装置において、前記蓄電池は、重量物を昇降可能な昇降装置又は重量物を水平移動させる水平移動装置の少なくとも一方を用いて出し入れ可能とされている、ことを特徴としている。
【0017】
請求項11の発明に係る建物は、低層階の建物本体と、この建物本体の上部に設置された請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載された制振装置と、を有している。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、建物上部に重量物支持体が設置されており、この重量物支持体に蓄電池が支持される構造となっている。つまり、蓄電池を建物全体の揺れを抑制する付加質量として利用するというものである。これにより、本来であれば専用品である付加質量を設置していたスペースに、重量物である蓄電池を設置することができるので、蓄電池専用の設置スペースを確保する必要がなくなる。よって、建物のスペースの有効活用を図ることができる。
【0019】
請求項2記載の本発明によれば、制振装置は載置部と保持手段とを備えており、蓄電池は載置部に載置される。さらに、本発明では、蓄電池が載置部に載置された状態で、保持手段によって蓄電池が保持される。これにより、制振時に蓄電池が載置部から脱落することを防ぐことができ、ひいては付加質量に質量欠損が生じることを防ぐことができる。
【0020】
請求項3記載の本発明によれば、載置部が蓄電池収納ケースの底部とされ、保持手段が蓄電池収納ケースの側部とされている。つまり、蓄電池は蓄電池収納ケースの底部に載置される。そして、制振時に蓄電池が変位すると、当該蓄電池は蓄電池収納ケースの側部に当たり側部を越えることはない。
【0021】
また、載置部及び保持手段を蓄電池収納ケースが兼ね備えているので、両者を別部品で構成するものに比べ、部品点数が少なくコスト削減に資する。
【0022】
請求項4記載の本発明によれば、プレート状の載置板又は台座が載置部とされ、この載置部に蓄電池を載置させて固定手段で載置板又は台座に固定することとしたので、つまり載置部と固定手段とを分けたので、解体し易く、組立て易い。
【0023】
請求項5記載の本発明によれば、蓄電池が保持手段によって載置部に保持された状態では隣り合う蓄電池間に所定の隙間が設けられているので、蓄電池から生じる熱を隙間から逃がすことができる。
【0024】
請求項6記載の本発明によれば、重量物支持体が蓄電池を弾性支承するマウントとされているので、制振装置の設置後に蓄電池を追加して付加質量を増加又は減少させたときに、マウントもそれに合わせたばね定数のものに容易に交換することができる。
【0025】
請求項7記載の本発明によれば、蓄電池の雰囲気温度が所定の範囲内となるように断熱された断熱室内に蓄電池を収容させたので、蓄電池を適温で保管することができる。
【0026】
請求項8記載の本発明によれば、断熱室は蓄電池の周囲の一部又は全部を断熱材で覆うことにより形成されており、かつ当該断熱材に点検口を設けたので、メンテナンスが容易になる。
【0027】
請求項9記載の本発明によれば、断熱室に換気装置及び空調装置の少なくとも一方が設置されているので、断熱室内の雰囲気温度を更に好適な範囲に維持することができる。
【0028】
請求項10記載の本発明によれば、蓄電池は、重量物を昇降可能な昇降装置又は重量物を水平移動させる水平移動装置の少なくとも一方を用いて出し入れ可能とされているので、重量物である蓄電池を交換するとき等に便利である。
【0029】
請求項11記載の本発明によれば、地震時や強風時に建物本体が揺れると、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載された制振装置の付加質量である蓄電池が、揺れと反対方向へ変位する。これにより、建物本体の揺れが抑えられる。
【0030】
しかも、この制振装置の付加質量は蓄電池で構成されているので、建物に蓄電システムを導入した場合に、スペース効率が非常に良い。つまり、建物に蓄電システムを導入する場合、蓄電池専用の設置スペースを確保しなければならないが、特に狭小住宅等の建物の場合、その設置スペースを確保することは非常に困難である。しかし、本発明によれば、制振装置の付加質量の設置スペースを蓄電池の設置スペースとして利用することができるので、蓄電池専用の設置スペースを確保する必要がなくなる。これにより、実施可能なプランニングの種類が増える。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の制振装置は、建物のスペース効率を高め、ひいてはプラン対応力を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項2記載の本発明に係る制振装置は、制振装置としての機能が損なわれることを防止することができるという優れた効果を有する。
【0033】
請求項3記載の本発明に係る制振装置は、低コストで蓄電池を保持することができるという優れた効果を有する。
【0034】
請求項4記載の本発明に係る制振装置は、蓄電池の交換時等の作業負担を軽減し、作業性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0035】
請求項5記載の本発明に係る制振装置は、蓄電池の性能を良好に維持することができるという優れた効果を有する。
【0036】
請求項6記載の本発明に係る制振装置は、制振装置の設置後に付加質量の増減があった場合にも制振性能を良好に保つことができるという優れた効果を有する。
【0037】
請求項7記載の制振装置は、蓄電池の性能が低下することを防止することができるという優れた効果を有する。
【0038】
請求項8記載の本発明に係る制振装置は、メンテナンス性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0039】
請求項9記載の本発明に係る制振装置は、蓄電池の性能をより一層良好に保つことができ、蓄電池の耐久性の向上を図ることができるという優れた効果を有する。
【0040】
請求項10記載の本発明に係る制振装置は、メンテナンス性をより一層向上させることができるという優れた効果を有する。
【0041】
請求項11記載の本発明に係る建物は、スペースの有効活用を図ることができ、ひいてはプラン対応力を向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
〔第1実施形態〕
【0043】
まず、図1〜図7を用いて、本発明に係る制振装置及びこれを用いた建物の第1実施形態について説明する。
【0044】
<建物の全体構成>
図1には、本実施形態に係る建物10の概略立面図(概念図)が示されている。この図に示されるように、本実施形態に係る建物10は、敷地12に底部が埋設された基礎部分14と、この基礎部分14の上に設けられた一階部分16と、更にその上に設けられた二階部分18と、更にその上に設けられた三階部分20と、を備えた三階建ての建物とされている。
【0045】
また、建物10は狭小な敷地12に建築された細長い建物として構成されている。すなわち、図1の一点鎖線Pは隣地境界を示しており、建物10の両側には隣地が近接した配置となっている。なお、このような建物プランは住宅密集地や商業地区によく見られる。
【0046】
<制振装置の概要>
上述した建物10の屋上22には、制振装置24が設置されている。本実施形態の制振装置24は、電源等のエネルギーの供給なしに制振効果を発揮するパッシブ制振に属し、パッシブ制振の中でも建物10の周期と同じ周期で揺れる重りを利用するTMD(Tuned Mass Damper)方式によるものである。
【0047】
一般にTMD方式の制振装置は付加質量とこれを支持するマウント(弾性体)を備えており、本実施形態の制振装置24においてもその点は同様である。但し、本実施形態の制振装置24では、付加質量として後述する蓄電システム30で用いる蓄電池34が使用されている。すなわち、本来であれば制振装置24のための専用の付加質量が用いられるが、これに替えて、建物10に付加された蓄電システム30で用いる蓄電池34が用いられている。なお、蓄電池34の具体的な構成については後述するが、蓄電池34は建物重量の5%程度(400〜500kg)にして制振装置24内に配設されている。
【0048】
<蓄電システム>
図2には、上述した建物10に設けられた蓄電システム30のシステム構成を示すブロック図が示されている。この図に示されるように、蓄電システム30は、複数個の小容量蓄電池32を電気的に接続して大容量化した大容量蓄電池(以下、この蓄電池群を単に「蓄電池34」と称す。)を備えている。
【0049】
小容量蓄電池32は、一例として、電圧が12(V)で重量が20(kg)、サイズが幅190(mm)×奥行165(mm)×高さ175(mm)のものが使用されている。この小容量蓄電池32を13個直列に繋いで156(V)の蓄電池列を形成し、更にこれを二組用意して並列に繋ぐことにより、定格出力が3(kw)、定格容量が7(kwh)の蓄電池34を形成している。従って、この蓄電池34では、小容量蓄電池32を合計26個使用し、全重量は520(kg)となっている。
【0050】
上述した蓄電池34は、蓄電システムコントローラ36に接続されており、その作動が制御されている。この蓄電池34と蓄電システムコントローラ36によって蓄電部38が形成されている。蓄電部38には、太陽電池等の発電モジュール40が接続されていると共に商用電力系統42ともインバータ44を介して接続されている。これにより、発電モジュール40又は商用電力系統42から受電して蓄電池34に蓄電するようになっている。その他にも、自動車で使用する燃料電池を接続して余剰電力を蓄電池34に蓄電するようにしてもよい。
【0051】
一方、蓄電部38は建物10内の電気設備に接続されている。直流を通電するLED照明装置等の直流負荷46に対しては蓄電部38と当該直流負荷46とを直接接続し、交流を通電する一般照明装置やその他の交流負荷48に対しては蓄電池34と当該交流負荷48とをインバータ50を介して接続している。
【0052】
上記構成によれば、蓄電池34は、商用電力系統42から深夜電力を受電することにより、或いは屋上22に設置された太陽電池等の発電モジュール40から受電することにより、或いは燃料電池の余剰電力を受電すること等により、蓄電する。蓄電した電力は必要に応じて建物10で使用するエアコン、照明装置、プラグインハイブリッド車、自然冷媒ヒートポンプ給湯器等の直流負荷46又は交流負荷48に給電される。つまり、この蓄電システム30は、蓄電池34を使い、建物10で使用する電気を蓄電及び給電する省エネ技術の一種である。例えば、この蓄電システムを住宅に適用して住宅用蓄電システムとした場合、昼間はソーラーシステムで得られた電力等を蓄電池に蓄えると共に夜間は料金が安い深夜電力を蓄電池に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電池で蓄電した電力を放電して利用するといった使い方ができる。
【0053】
<制振装置の具体的構成>
図3には、制振装置24の拡大断面図が示されている。この図に示されるように、建物10の屋上22の床面は、ALC(軽量気泡コンクリート)パネル52で構成されている。ALCパネル52は、水平方向に所定の間隔で配置された鉄骨梁54の上フランジに支持されている。さらに、ALCパネル52の上面にはパネル状の断熱材56が敷設されており、更にその上面には防水シート58が敷設されている。
【0054】
制振装置24を設置するALCパネル52の上面には、矩形平板状の架台60が載置されている。架台60の四隅は、ALCパネル52にハンガーボルト62及びナット64によって締結固定されている。
【0055】
上記架台60の周囲には、箱体状に形成されたTMDカバーケース66が架台60の上方側から天地を逆にして被嵌されている。TMDカバーケース66の内側面には、上記断熱材56と同一構成の断熱材68が複数枚取り付けられている。これにより、TMDカバーケース66内に蓄電池34を収容するための断熱室70が形成されている。なお、断熱材68を保持するため、TMDカバーケース66の適宜位置には、長手直角方向の断面形状がコ字状に形成された断熱材保持フレーム72が配設されている。また、断熱材68としては、一例として硬質ウレタンフォーム保温板、住宅用グラスウール断熱材、住宅用ロックウール断熱材を用いることができる。断熱材68としてこれらの硬質ウレタンフォーム保温板、住宅用グラスウール断熱材、住宅用ロックウール断熱材を用いた場合、断熱室70は所定の範囲(10度〜30度)に維持される。なお、蓄電池34は、蓄電性能を担保する観点から、気温が10度〜30度の範囲で保管することが好ましい。よって、断熱材68を用いた断熱室70に蓄電池34を保管しただけでは、10度〜30度の範囲を維持できない場合は、後述する換気手段や空調装置を制振装置24に付加して補うとよい。
【0056】
さらに、上記TMDカバーケース66の頂部66Aには、左右一対の点検口74が形成されている。各点検口74には、取外し可能でかつ断熱材68で構成された蓋76が嵌め込まれている。
【0057】
上述した架台60の上面には、ゴム等によって構成された複数のマウント78が配置されている。マウント78の下面は架台60に固定されており、又マウント78の上面は後述する蓄電池収容ケース80の底壁部80Aに固定されている。
【0058】
<蓄電池収容ケース及び蓄電池の詳細構成>
上述したマウント78に支持される蓄電池34の蓄電池収容ケース80は上方が開放された箱体形状に形成されており、矩形平板状の底壁部80Aと、該底壁部80Aの外周四辺から立ち上げられた側壁部80Bと、底壁部80A上に立設された平面視で格子状の仕切り壁80Cと、によって構成されている。なお、仕切り壁80Cは底壁部80A及び側壁部80Bと一体に形成してもよいし、底壁部80A及び側壁部80Bと別体で構成して側壁部80Bの内側に上方から落とし込んでもよい。また、蓄電池収納ケースの底壁部80Aが本発明における「載置部」に相当し、側壁部80Bが「保持手段」に相当する。
【0059】
蓄電池収容ケース80を上記の構成とすることにより、蓄電池収容ケース80の内部には直方体形状の収容室82が升目状に形成されている。なお、升目の一辺が後述する小容量蓄電池32を収容可能な長さとなるように、仕切り壁80Cの対向面間の距離が決められている。
【0060】
上述した蓄電池収容ケース80には、小容量蓄電池32が所定の配列で収容されている。例えば、図4(A)、(B)に示される並列型の配列例では、小容量蓄電池32を7列×2行の配列とし、合計13個の小容量蓄電池32を蓄電池収容ケース80に収容させ、余ったスペースにはスペーサ84を装着している。なお、スペーサ84は小容量蓄電池32と同一寸法に設定されている。また、小容量蓄電池32の端子32A、32B間の配線はブスバー(金属板)接続が用いられている。さらに、蓄電池収容ケース80は、その高さh(図4(B)参照)が小容量蓄電池32の液面管理が可能な(即ち、液面が見える)高さに設定されている。そして、この蓄電池収容ケース80を二式用意し、両者を接続して大容量の蓄電池34としている。なお、図4(A)に示される符号「122」は、後述する第2実施形態で説明する押さえ材である。
【0061】
一方、図5(A)〜(C)に示される一体型の配列例では、小容量蓄電池32を7列×4行の配列とし、合計26個の小容量蓄電池32を図4とは異なる形状の蓄電池収容ケース90に収容させている。なお、小容量蓄電池32の端子32A、32B間の配線はブスバー(金属板)接続が用いられている。
【0062】
この蓄電池収容ケース90では、中央部分92を底部94から嵩上げした構造となっている。すなわち、中央部分92は7列×2行の升目構造のケースとし、この中央部分92に小容量蓄電池32を6列×2行の配列で合計12個収容させ、余ったスペースには二升分のスペーサ96が装着されている。そして、この中央部分92の下方に、中央部分92と一体的に設けられた底部94が配置されている。底部94は平面視で7列×4行の大きさを有しており、その中央2行分に中央部分92が配置されている。底部94の中央2行分の位置には、複数の矩形平板状の仕切り板98が適宜間隔で垂直に立設されており、これらの仕切り板98の上端部に中央部分92が載置されて固定されている。なお、中央部分92の底部94への固定方法は、底部94の仕切り板98の上に中央部分92を載せて列方向側から溶接等により接合してもよいし、アングル状のブラケットを用いてねじ止め等により固定してもよい。
【0063】
また、上記蓄電池収容ケース90では、底部94の側壁の高さh1(図5(C)参照)が下段側に収容された小容量蓄電池32の液面管理が可能な(即ち、液面が見える)高さに設定されている。さらに、底部94の底面から上部の側壁上端までの高さh2は、底部94の底面から底部94に収容された小容量蓄電池32の上面までの高さと同一か又はこれよりも若干高い高さ(即ち、中央部分92に収容された小容量蓄電池32の液面管理が可能な高さ)に設定されている。
【0064】
なお、上述した蓄電池34(又は小容量蓄電池32)としては、例えば、ニッケル水素蓄電池や鉛蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池といった蓄電池が適用可能であるが、他の蓄電池であってもよい。
【0065】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0066】
本実施形態では、建物10の屋上22に、付加質量を蓄電システム30で用いる蓄電池34で置き換えた制振装置24を設置したので、建物10の内部及び敷地12に蓄電池専用の設置スペースを確保する必要がなくなり、建物10のスペースの有効活用を図ることができる。
【0067】
例えば、図6に示される対比例に係る建物100の場合、制振装置102は小屋裏に設けられている。なお、参考までに図7に小屋裏置きの制振装置102の概略構成を示した。概説すると、マウント78の上面には、カウンターウエイト(重り板)104が複数枚積層されており、マウント78の固有周期を建物100の固有周期に合わせ逆位相で振動させることで、建物100の振動を抑制する仕組みになっている。そのため、カウンターウエイト104は重り以外の役割を担っていない。
【0068】
図6に戻り、この制振装置102を用いた場合、蓄電池34は屋外の敷地12又は一階床106或いは地下部分108等に設置されることになる。しかし、前二者の場合は建物100としての使い勝手が悪く、後者の場合はコストがかかると共にメンテナンス作業もし難くなる。また、蓄電池34を二階以上に設置しようとすると、蓄電池34は重量物であるため、床を補強しなければならなくなると共に建物100自体の構造計算も見直さなければならなくなる。
【0069】
これに対し、本実施形態によれば、上記制振装置102のカウンターウエイト104に替えてこれと略同一質量の蓄電池34を配置したので、蓄電池専用の設置スペースを確保する必要がない。しかも、制振装置24の内部空間は言わばデッドスペースのようなものである。これらのことから、本実施形態によれば、建物10のスペース効率を高め、ひいては狭小物件等敷地に余裕のない建物のプランニングの自由度が増すという意味でプラン対応力を向上させることができる。
【0070】
なお、蓄電池34を建物屋上置きとしたことにより、居住スペースや建物内の通路等を圧迫しないというメリットもある。
【0071】
また、本実施形態に係る制振装置24では、箱状に形成されると共に内部が升目状に仕切られた蓄電池収納ケース80(又は蓄電池収納ケース90)に小容量蓄電池32を収納させたので、制振時(地震等の発生時)に小容量蓄電池32が蓄電池収納ケース80から脱落したり転倒したりすることを防止することができ、小容量蓄電池32を安定した状態で保持することができる。つまり、仮に蓄電池収納ケースから小容量蓄電池が脱落すると、付加質量に質量欠損が生じ制振時の制振機能が損なわれるが、本実施形態によれば、そのようなことは生じない。
【0072】
特に本実施形態では、蓄電池34を載置する載置部(底壁部80A)と蓄電池34が載置部(底壁部80A)から脱落しないように蓄電池34を保持する保持手段(側壁部80B)とが一体に形成された蓄電池収納ケース80(又は蓄電池収納ケース90)を用いたので、両者を別部品で構成するものに比べ、部品点数が少なくコスト削減に資する。その結果、本実施形態によれば、低コストで蓄電池34を保持することができる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る制振装置24では、蓄電池34を支持する重量物支持体を弾性体であるマウント78としたので、制振装置24の設置後に小容量蓄電池32を追加して付加質量を増加又は減少させたときに、マウント78もそれに合わせたばね定数のものに容易に交換することができる。その結果、制振装置24の設置後に付加質量の増減があった場合にも制振性能を良好に保つことができる。
【0074】
この点について補足すると、例えば、図7に示されるカウンターウエイト104でも付加質量の要求質量が増減した場合にはそれに合わせてカウンターウエイト104を1枚単位で増減させればよいが、仮に1枚が50(kg)だとすると50(kg)単位での調整ということになる。これに対し、1枡が1個分の小容量蓄電池32の収容スペースとされた本実施形態の場合、20(kg)単位で付加質量を調整することができる。なお、仮に付加質量の調整単位を更に本実施形態に近づけようとした場合、1枚のカウンターウエイトの板厚を薄くすればよいが、あまり薄くすると滑りやすくなるので、制振時(地震等の発生時)の滑動を防止するための手段を講じる必要が生じてくる。また、1枚が50(kg)のカウンターウエイト104を使用した場合において付加質量を増加させるときには、カウンターウエイト104の全高が図7図示状態よりも高くなるので、高さ方向にスペースを確保した構造にする必要が生じてくる。本実施形態の場合には、これらの不利が生じない。
【0075】
また、本実施形態に係る制振装置24では、蓄電池34の周囲を断熱材68で覆い、蓄電池収納ケース80(又は蓄電池収納ケース90)の頂部66Aに配置された断熱材68に一対の点検口74を設けたので、メンテナンスが容易になる。その結果、本実施形態によれば、メンテナンス性を向上させることができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、制振装置24の要部である蓄電池34の周囲を断熱材68で包囲したので、蓄電池34の雰囲気温度を所定の範囲に維持することができる。なお、前述したように、この所定の範囲は10度〜30度である。すなわち、蓄電池34を蓄電性能に悪影響が及ばない適温で保管することができる。その結果、本実施形態によれば、蓄電池34の性能が低下することを防止することができる。
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、図8〜図12を用いて、本発明に係る制振装置及びこれを用いた建物の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0078】
図8及び図9に示されるように、この第2実施形態では、蓄電池収容ケース80に替えて、プレート120及び押さえ材122を用いて複数の小容量蓄電池32を一括して保持した点に特徴がある。
【0079】
具体的には、制振装置24は、矩形平板状のプレート120と、このプレート120との間に複数の小容量蓄電池32を同時に固定的に保持する1本の押さえ材122と、プレート120との間に複数個の小容量蓄電池32を同時に挟持した状態で固定する長ボルト124及びナット126と、を備えている。このうち、プレート120が請求項4記載の「載置板」に相当し、押さえ材122及び長ボルト124及びナット126が請求項4記載の「固定手段」に相当する。また、図4(A)、図5(A)に、押さえ材122が複数個の小容量蓄電池32を同時に押さえた状態を二点鎖線で図示したので、そちらも参照されたい。このようなブスバー接続とすることにより、押さえ材122との干渉が避けられる。
【0080】
プレート120の上面には、所定の間隔で角棒状のスペーサ127が固定されている。隣り合うスペーサ127間の間隔(ピッチ)は、小容量蓄電池32の幅方向寸法に略一致されている。また、プレート120の端部には、長尺状の横ずれ防止部材129が立設されている。
【0081】
一方、押さえ材122は、チャンネル材によって構成されている。押さえ材122の全長は、プレート120との間に保持する複数個の小容量蓄電池32を一度に保持できる長さに設定されている。また、押さえ材122のウェブ面122Aは、プレート120に対して平行に配置されるようになっている。
【0082】
上記押さえ材122のウェブ面には、断面形状がL字状とされて基部128Aと屈曲部128Bとを備えた枠押さえ128が所定の間隔で配置されている。なお、枠押さえ128の配設ピッチは、スペーサ127の配設ピッチと同一に設定されており、又各枠押さえ128は押さえ材に対して直交するように配置されている。また、基部128Aが押さえ材122のウェブ面に固定され、隣合う一対の枠押さえ128の屈曲部128Bが、隣合う一対のスペーサ84間に小容量蓄電池32を載置させたときの小容量蓄電池32の両側面に対応するようになっている。
【0083】
上記押さえ材122の長手方向の両端部及びプレート120の長手方向の両端部には、同軸上のボルト挿通孔130、132がそれぞれ形成されている。プレート120の下面側から長ボルト124をプレート120のボルト挿通孔132内へ挿通させると共に押さえ材122のボルト挿通孔130内へ挿通させ、貫通端部にナット134を螺合させることにより、小容量蓄電池32が押さえ材122とプレート120との間に挟持された状態で保持されるようになっている。
【0084】
図9に示されるように、プレート120上のスペーサ127間に小容量蓄電池32が載置され、押さえ材122で固定した状態では、隣合う小容量蓄電池32の側面間にスペーサ127の厚さに相当する隙間136が形成されている。その意味では、スペーサ127は小容量蓄電池32の位置決め手段であると共に隙間形成手段として機能する部材である。
【0085】
(作用・効果)
上記構成によっても、前述した第1実施形態と同様の基本的な作用・効果が得られる。
【0086】
また、本実施形態によれば、載置部としてのプレート120と固定手段としての押さえ材及び長ボルト124、ナット134とが分かれているので、解体し易く、組立て易い。従って、蓄電池34の交換時等の作業負担を軽減し、作業性を向上させることができる。
【0087】
さらに、複数の小容量蓄電池32が押さえ材122を用いてプレート120に固定された状態では、隣合う小容量蓄電池32間に所定の隙間136が形成されるので、小容量蓄電池32から生じる熱を隙間136から逃がすことができる。その結果、小容量蓄電池32ひいてはその集合体である蓄電池34の性能を良好に維持することができる。
【0088】
なお、図8及び図9に示される実施形態では、長ボルト124及びナット134といった締結具を用いたが、これに限らず、図10に示されるように、ゴムバンド140を用いてもよい。すなわち、この実施形態では、押さえ材122の長手方向の両端部及びプレート120の長手方向の両端部に三角形状のフック142、144が取り付けられている。そして、上下に対向するフック142、144同士がゴムバンド140によって連結されている。ゴムバンド140は上下に対向するフック142、144に掛けられた状態では、引張力を発生するようになっている。この構成によっても、プレート120上に載置された複数の小容量蓄電池32を押さえ材122で押さえ込むことができるので、長ボルト124及びナット134と同様の作用効果が得られる。その意味では、ゴムバンド140及びフック142、144は、本発明における「固定手段」に相当する。
【0089】
さらに、ゴムバンド140を上下に対向するフック142、144に架け渡すだけでよいので、締結作業をするより簡単である。なお、ゴムバンド140に替えてバネを用いてもよい。
【0090】
また、図8及び図9に示される実施形態では、プレート120の上面に(小容量蓄電池32の位置決めをする)スペーサ127を一体的に設ける構成を採ったが、これに限らず、図11及び図12に示されるように、小容量蓄電池32の側面の下端角部に平面視でL字状に形成された第1係止部146及び第2係止部148を設けて、隣合う一方の小容量蓄電池32の第1係止部146に他方の小容量蓄電池32の第2係止部148を上方から差込んで連結するようにしてもよい。この場合、第1係止部146と第2係止部148の脚の張出し長さLを同一に設定し、第1係止部146と第2係止部148との向きを180°回転させておくことにより、両者を噛み合わせることができる。また、第1係止部146及び第2係止部148を小容量蓄電池32の側面に対して着脱可能にしておくと好ましい。
【0091】
上記構成によれば、隣合う一方の小容量蓄電池32の第1係止部146に他方の小容量蓄電池32の第2係止部148を係止(連結)させることにより、隣合う小容量蓄電池32間に隙間136が形成されるので、小容量蓄電池32同士の位置決め及び連結と同時に隙間136を形成するためのスペーサとしての機能も兼ねる。
【0092】
また、第1係止部146及び第2係止部148を着脱可能にした場合には、隙間136の間隙寸法を比較的容易に変更することができる。すなわち、最初に設定した隙間136の間隙寸法では、小容量蓄電池32の放熱が不充分である場合に、第1係止部146及び第2係止部148を取り外して予め用意された別の第1係止部及び第2係止部(即ち、第1係止部146、第2係止部148よりも脚の長さが長いもの)を取り付けて、相互に係止(連結)させれば、隙間136が拡大され、放熱性能を高めることができる。
【0093】
〔第3実施形態〕
次に、図13を用いて、本発明に係る制振装置及びこれを用いた建物の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0094】
図13に示されるように、この第3実施形態では、制振装置24に換気手段を設けた点に特徴がある。具体的には、制振装置24の断熱室70内には、ガス検知センサ150が配設されていると共に、断熱室70の気温を検出する内気温検出センサ152が配設されている。また、制振装置24の外側面には外気温を検出する外気温検出センサ154が配設されている。これらのガス検知センサ150、内気温検出センサ152及び外気温検出センサ154は、建物10内の所定位置に配設された制御手段であるコントローラ156に接続されており、常時その検出結果を出力している。
【0095】
また、制振装置24の側壁部には、給気口158が設けられている。給気口158は、支軸160回りに開閉可能なシャッタ162によって開閉可能とされている。支軸160には、図示しない捩じりコイルスプリング等の付勢手段が配設されており、シャッタ162を常時閉止方向へ回転付勢している。なお、給気口158の下縁側には、シャッタ162が側壁部の外側へ回転するのを規制する図示しないストッパが設けられている。
【0096】
一方、制振装置24の反対側の側壁部には、換気装置164が配設されている。換気装置164は図示しないモータが駆動することにより作動して、断熱室70内の空気を排気するようになっている。換気装置164はコントローラ156に接続されており、その作動が制御されている。
【0097】
また、コントローラ156では、内気温検出センサ152によって検出された内気温が所定温度以上でかつ外気温検出センサ154によって検出された外気温が内気温よりも低い場合に、換気装置164のモータを駆動させるようになっている。なお、前記所定温度は蓄電池34の性能との関係で決められるが、一例として30度に設定される。さらに、コントローラ156では、ガス検知センサ150によって蓄電池34からの排出ガスが検知された場合には、換気装置164のモータを駆動させるようになっている。
【0098】
(作用・効果)
上記構成によっても、前述した第1実施形態等と同様の基本的な作用・効果が得られる。
【0099】
さらに、本実施形態では、換気装置164を備えているので、断熱室70の気温が上がり過ぎるのを抑制することができる。具体的には、前記のように内気温検出センサ152によって検出された断熱室70内の気温が所定温度(例えば、30度)以上になると、換気装置164が作動して断熱室70内の気温が断熱室70外へ排気される。なお、給気口158は付勢手段の付勢力によって通常は閉止されているが、換気装置164が作動すると、シャッタ162に負圧が作用して開放される。これにより、外気が断熱室70内に取り込まれて、適温になるまで断熱室70内の気温が降下される。
【0100】
但し、真夏のように外気温が30度を超えているような場合には、内気温と外気温とを比較して内気温が外気温よりも高い場合にのみ換気装置164が作動するように一定の制限がかけられている。
【0101】
また、蓄電池34(小容量蓄電池32)の種類及び密閉度によっては蓄電する過程でガスが発生することが考えられるので、ガス検知センサ150によってガスの発生を監視する。具体的には、ガス検知センサ150によってガスが検知された場合には、そのガスを排気するべく換気装置164を作動させる。なお、このとき換気装置164をどのように運転するかは任意に設定すればよい。例えば、ガス検知センサ150によってガスが検知されている間は換気装置164を作動させるようにしてもよいし、ガス検知センサ150によってガスが検知されたらタイマを起動させて換気装置164を一定時間連続運転させてもよいし、一定時間間欠運転させてもよい。
【0102】
なお、上述した実施形態では、断熱室70に換気装置164を設置したが、これに限らず、換気装置164に替えて冷暖房可能な空調装置を設けてもよいし、換気装置164と空調装置とを併設してもよい。空調装置を設置すれば、断熱室70内の雰囲気温度を更に好適な範囲に維持することができる。その結果、蓄電池34の性能をより一層良好に保つことができ、蓄電池34の耐久性の向上を図ることができる。
【0103】
〔第4実施形態〕
次に、図14を用いて、本発明に係る制振装置及びこれを用いた建物の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0104】
図14に示されるように、この第4実施形態では、建物10の外部に、蓄電池34を交換等する際に利用する運搬装置170を設けた点に特徴がある。具体的には、運搬装置170は、蓄電池34を屋上22に沿って水平移動させる水平移動装置172と、蓄電池34を建物10の壁面174に沿って垂直に移動させる昇降装置176と、によって構成されている。
【0105】
水平移動装置172は建物側方から見て六角形状に形成されており、互いに平行に配置された頂部172A及び底部72Bと、これらの頂部172Aと底部72Bとをくの字状に繋ぐ左右一対の上側側部172C及び下側側部172Dと、を備えている。上側側部172Cは頂部172Aに対して相対回転可能となるようにヒンジ部178によってヒンジ結合されている。同様に、下側側部172Dは底部72Bに対して相対回転可能となるようにヒンジ部178によってヒンジ結合されている。上側側部172Cと下側側部172Dとは、両者間のなす角が増減するようにヒンジ部178によってヒンジ結合されている。
【0106】
また、底部72Bの上面には駆動源となる油圧シリンダ180が立設されており、図示しない油圧ホースを介して油圧が増減されるようになっている。ピストンロッド182はシリンダ184に対して伸縮可能とされており、更にその先端部は頂部172Aの下面に固定されている。
【0107】
さらに、底部72Bの下面には、図示しないモータの駆動力によって駆動回転する車輪186が取り付けられている。なお、モータは、図示しない遠隔操作装置を用いた電波の送受信により駆動及び停止するようになっている。
【0108】
建物10の屋上22にはレール188が敷設されており、当該レール188に沿って水平移動装置172の車輪186が走行するようになっている。レール188は、建物10の屋上22の端まで敷設されている。
【0109】
建物10の側面でかつ上記レール188の延長方向上には、昇降装置176が配設されている。昇降装置176は、蓄電池34が搬入可能な開口及び内部スペースを有する昇降ケージ190を備えている。昇降ケージ190の底部上面には、レール188の延長上にレール188と同一構成の別のレール194が敷設されている。
【0110】
また、昇降ケージ190の底部下面には、側面視でL字状に形成された支持体192が固定されている。支持体192は水平部192Aと垂直部192Bとを備えている。垂直部192Bには断面形状がT字状とされた溝195が形成されており、この溝195に建物10の側面に敷設されたレール196が挿嵌されている。レール196の縦断面形状(長手方向に対して直交する方向に切断したときの断面形状)は、溝195に嵌合可能なT字状とされている。さらに、水平部192Aの上面には、上記昇降ケージ190の底部が固定されている。
【0111】
上記昇降ケージ190は、図示しないウインチ等の駆動手段を用いて、昇降されるようになっている。ウインチのワイヤは昇降ケージ190の頂部に固定又は係止されている。
【0112】
(作用・効果)
上記構成によっても、前述した第1実施形態等と同様の基本的な作用・効果が得られる。
【0113】
また、本実施形態では、重量物である蓄電池34を運搬装置170を用いて屋上22から敷地12まで降ろすことができるので、蓄電池34の交換時等のときには非常に便利である。その結果、メンテナンス性をより一層向上させることができる。
【0114】
なお、本実施形態では、水平移動装置172と昇降装置176とを併用したが、これに限らず、いずれか一方だけ用いてもよいし、両方用いてもよい。
【0115】
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した各実施形態では、制振装置24を建物10の屋上22に設置したが、これに限らず、小屋裏等でもよく、建物上部であればよい。
【0116】
また、上述した各実施形態では、固定蓄電池を重りとした場合を説明したが、必ずしも重りはこの形態に限られない。例えば、スロッシングダンパー(容器の中に液体が入れられた重りで、建物の動きとは逆に液体が動き制振するもの)でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】第1実施形態に係る建物の概略立面図(概念図)である。
【図2】第1実施形態に係る建物に適用される蓄電システムのシステム構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示される制振装置の具体的な構成を示す縦断面図である。
【図4】蓄電池の配列例を示しており、(A)は並列型で配列された蓄電池収容ケース及び蓄電池を示す平面図であり、(B)はその側面図である。
【図5】蓄電池の別の配列例を示しており、(A)は一体型で配列された蓄電池収容ケース及び蓄電池を示す平面図であり、(B)はその側面図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図6】対比例に係る建物の概略立面図(概念図)である。
【図7】図6に示される制振装置を拡大して示す図3に対応する縦断面図である。
【図8】第2実施形態に係り、蓄電池収容ケースの変形例を示す斜視図である。
【図9】図8に示される押さえ材を使った蓄電池の固定状態を示す正面図である。
【図10】図9に示される長ボルト及びナットに替えてゴムバンドを用いた変形例を示す図9に対応する正面図である。
【図11】図8に示されるスペーサに替えて小容量蓄電池に係止部を設けた変形例を示す平面図である。
【図12】図11に示される係止部を使って小容量蓄電池同士を連結する様子を示す斜視図である。
【図13】第3実施形態に係る制振装置を示す図3に対応する縦断面図である。
【図14】第4実施形態に係る建物の要部を示す部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0118】
10 建物
22 屋上(建物上部)
24 制振装置
34 蓄電池
68 断熱材
70 断熱室
74 点検口
78 マウント(重量物支持体)
80 蓄電池収容ケース
80A 底壁部(載置部)
80B 側壁部(保持手段)
90 蓄電池収容ケース
120 プレート(載置部)
122 押さえ材(固定手段)
124 長ボルト(固定手段)
126 ナット(固定手段)
140 ゴムバンド(固定手段)
142 フック(固定手段)
144 フック(固定手段)
158 給気口(換気手段)
164 換気装置(換気手段)
172 水平移動装置
176 昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物上部に設置される重量物支持体と、
この重量物支持体に支持されると共に建物全体の揺れを抑制する付加質量として用いられる蓄電池と、
を有する制振装置。
【請求項2】
さらに、前記蓄電池が載置される載置部と、
この載置部に一体に又は別体として設けられ、蓄電池が載置部から脱落しないように蓄電池を保持する保持手段と、
を備えた、ことを特徴とする請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
前記載置部は蓄電池収納ケースの底部であると共に、前記保持手段は蓄電池収納ケースの側部である、
ことを特徴とする請求項2記載の制振装置。
【請求項4】
前記載置部はプレート状の載置板又は台座とされると共に、前記保持手段は蓄電池を位置決めした状態で載置板又は台座に固定する固定手段である、
ことを特徴とする請求項2記載の制振装置。
【請求項5】
前記蓄電池が前記保持手段によって前記載置部に保持された状態では、隣り合う蓄電池間に所定の隙間が設けられている、
ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の制振装置。
【請求項6】
前記重量物支持体は、蓄電池を弾性支承するマウントである、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の制振装置。
【請求項7】
前記蓄電池は、当該蓄電池の雰囲気温度が所定の範囲内となるように断熱された断熱室内に収容されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の制振装置。
【請求項8】
前記断熱室は蓄電池の周囲の一部又は全部を断熱材で覆うことにより形成されており、かつ当該断熱材には点検口が形成されている、
ことを特徴とする請求項7記載の制振装置。
【請求項9】
前記断熱室には、換気装置及び空調装置の少なくとも一方が設置されている、
ことを特徴とする請求項7又は請求項8記載の制振装置。
【請求項10】
前記蓄電池は、重量物を昇降可能な昇降装置又は重量物を水平移動させる水平移動装置の少なくとも一方を用いて出し入れ可能とされている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の制振装置。
【請求項11】
低層階の建物本体と、
この建物本体の上部に設置された請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載された制振装置と、
を有する建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−127007(P2010−127007A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303180(P2008−303180)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】