刺繍データ生成装置及び刺繍縫い可能なミシン
【課題】 糸切れのない刺繍縫いが可能なデータを生成する刺繍データ生成装置及び刺繍縫い可能なミシンを提供する。
【解決手段】
模様選択装置11により模様の選択を行い、模様位置設定装置1により模様位置の設定、変更を行い、模様縫い順設定装置2により縫い順を設定し、模様間距離算出装置3により模様20の終了点F1の座標と模様30の開始点S2の座標から、2点間の距離を求め、設定値以下であれば、止め縫いデータ消去装置5により模様20の終了止め縫いデータ260と模様30の開始止め縫いデータ350を削除し、更に模様連結装置6により、模様20の終了点F1の座標と模様30の開始点S2の座標を接続する接続データ401を挿入する。
【解決手段】
模様選択装置11により模様の選択を行い、模様位置設定装置1により模様位置の設定、変更を行い、模様縫い順設定装置2により縫い順を設定し、模様間距離算出装置3により模様20の終了点F1の座標と模様30の開始点S2の座標から、2点間の距離を求め、設定値以下であれば、止め縫いデータ消去装置5により模様20の終了止め縫いデータ260と模様30の開始止め縫いデータ350を削除し、更に模様連結装置6により、模様20の終了点F1の座標と模様30の開始点S2の座標を接続する接続データ401を挿入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、刺繍データ生成装置及び刺繍縫い可能なミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍縫い可能なミシンは、刺繍枠に装着された布をXY方向に移動させて刺繍縫いを行う機構を備えており、既成の刺繍模様の縫いデータやユーザが作成した縫いデータを用いて種々の刺繍縫いが可能になっている。
また、近年既にある刺繍模様を種々組み合わせ、また自由に配置して刺繍を行える編集機能を有する刺繍データ生成装置を備えた刺繍可能なミシンも普及している。
このような編集機能を有する刺繍データ生成装置を備えたミシンにおいては、独立した模様を自由に組み合わせ又配置し、その結果に基づいて連続して縫えるよう該刺繍模様の刺繍データを連結させ、ひとつの刺繍データを作成し縫製を行うように構成されている。
しかし、模様を連結させた場合、前の模様の縫い終了位置と後の模様の縫い開始位置とに設けられた糸解れを防止のための止め縫いが近接した位置に縫われることがあり、そのため糸切れや縫い目の盛り上がりなどの問題が生じていた。特に、一筆書き模様を連続的に刺繍縫いするスティップリング模様縫いなどの場合には多数の模様を連続的に連結することが行われ、模様の連結部分も多くなることから、止め縫いによる糸切れや縫い目の盛り上がりが大きな問題となる。
このような刺繍縫いにおける縫い目の集中を除去するための技術として、縫い目を分散させる技術(文献1)や、縫い目を削除する技術(文献2)が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11ー239685号公報
【特許文献2】特開平08ー71274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、文献1のように縫い目を分散させると、模様形状が多かれ少なかれ崩れる問題がある。前記したスティップリング模様のように多数の模様を連続的に連結する場合には、模様の形状の崩れは大きな問題となる。
また、上記した従来の方法では、止め縫いだけではなく、縫い目が集中している部分を一律に検出して削除するため、模様連結部分の止め縫い部分のみを処理することができず、処理不要な部分の縫い目の削除や分散が行われ、模様形状を変更してしまう問題がある。
更に模様を連結する場合には、前の模様の縫い終了位置と後の模様の縫い開始位置との距離によっては、止め縫いを除去する必要がない場合もあり、距離に応じて止め縫いの維持と除去を選択することができない。
また、模様を連結する場合には、連結のための縫いデータの処理が必要であり、このデータ処理は止め縫いの除去を行うか否かで異なってくるが、これらの連結の際のデータ処理を止め縫いの除去、非除去を考慮して行う技術は、まだ提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたもので、複数の模様を連結して1つの模様にまとめることが可能な編集機能を有する刺繍データ生成装置において、開始止め縫いデータと終了止め縫いデータと模様縫い目データとを含む複数の模様を記憶する模様記憶装置と、前記模様記憶装置から複数の模様を選択する模様選択装置と、該選択された複数の模様の位置を設定する模様位置設定装置と、前記模様の縫い順を設定する縫い順設定装置と、前記選択され、位置を設定され、縫い順を設定された、連続する模様であって、縫い順が後の模様の縫い開始点と、該後の模様の1つ前の縫い順である前の模様の縫い終了点と、の距離を算出する距離算出装置と、前記距離算出装置により算出された距離が所定距離以下か否か判定する判定装置と、前記模様の開始止め縫いデータと終了止め縫いデータとを識別する識別装置と、前記判定装置により、前記距離算出装置により算出された距離が所定距離以下と判定された場合、前記識別装置により識別された前記後の模様の開始止め縫いデータと前の模様の終了止め縫いデータとを消去する止め縫いデータ消去装置と、前記前の模様と後の模様を連結して縫うためのデータを生成する模様データ連結装置と、を備えたことを特徴とする。
上記構成により、縫い終了点と縫い開始点が所定距離内にある時に、止め縫いデータのみが識別され、消去されるから、模様の形状に影響を与えることなく、止め縫いのみが除去され、良好な刺繍縫いが行われる。
前記開始止め縫いデータと終了止め縫いデータの識別は、止め縫いデータである旨の識別データにより、識別装置が前記開始止め縫いデータと終了止め縫いデータとを識別するように構成することが可能である。該識別データとしては、止め縫い開始コマンドと止め縫い終了コマンドなどを用いることが望ましい。
また前記判定装置による判定に用いる所定距離を、ユーザが任意に設定できるように所定距離設定装置を備えることも可能であり、これによりユーザは状況に合わせて止め縫いデータの消去を行わせることが可能になる。
なお、上記刺繍データ生成装置は、刺繍データ生成装置を備えた刺繍縫い可能なミシンとして実現することも可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の刺繍データ生成装置及び刺繍縫い可能なミシンによれば、模様を連結するに際して、模様間の距離に応じて止め縫いのみの除去を行えるため、模様形状に変更を与えることなく、効率的に止め縫いの重なりにより生じる不具合を回避できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を示す表示装置71の説明図。
【図3】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図4】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図5】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図6】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図7】本発明の一実施形態の動作を示すデータ構造説明図。
【図8】本発明の一実施形態の動作を示すデータ構造説明図。
【図9】本発明の一実施形態の動作を示すデータ構造説明図。
【図10】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【図11】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は刺繍データ生成装置を備えた刺繍可能なミシンであるが、前述したように刺繍データ生成装置単体として実現することも可能である。
図1は、本願に係る刺繍可能なミシンのブロック図である。このミシンは、CPU10及びミシン制御プログラム13により全体を制御されており、ミシンモータ駆動装置60とミシンモータ61により縫いを行うように構成されている。またXY駆動装置50と刺繍枠51を備え、刺繍縫いを行えるようになっている。
また、表示制御装置70と表示装置71を備えており、刺繍すべき模様を表示し、選択した模様、模様の位置の変更や組み合わせなどを、そのまま表示できるように構成されている。表示装置71はタッチパネルを兼ねており、ユーザは該タッチパネルから種々の命令を行うことが可能である。
【0009】
模様記憶装置12には、複数の模様の模様データが格納されており、CPU10は模様選択装置11によりユーザが選択した模様について、該模様データを読み出すように構成されている。
模様記憶装置12に格納された模様データは、模様を形成するための縫い目データと止め縫いデータ及び表示データなどを含んでいる。この模様データについては、後に詳細に説明する。
なお、本明細書中で「模様」とは、刺繍され、また表示される形状とそれに伴う上記模様データ全体を含むものを意味している。
【0010】
模様位置設定装置1は、模様選択装置11で選択した、複数の模様の刺繍位置を設定するものである。模様選択装置11で選択された模様20は図3に示すように表示装置71に表示され、ユーザは該表示装置71に表示された模様を見ながら、該模様の位置を動かして模様の位置、即ち模様が縫われる位置を設定できるように構成されている。
模様の位置は具体的には、模様の開始点SのXY座標で表される。
【0011】
図3においては、最初に模様20を選択し(図3A)、次に模様30を選択した例(図3B)を示している。
模様縫い順設定装置2は選択した複数の模様の縫い順を設定するものである。図3の例では、模様20、模様30の順に縫うように設定している。ここでは、簡単のため2つの模様が選択された例を示しているが、3以上n個の模様を選択した場合も同じである。
なお縫い順は、模様選択装置11により模様を選択した順に、設定するように構成することも可能である。
【0012】
各模様には、開始点Sと終了点Fが存在し、該開始点Sと終了点Fには止め縫いが行われるようになっている。図3においては、模様20の開始点S1には開始止め縫い25が縫われ、終了点F1には終了止め縫い26が縫われるように構成されている。また、模様30の開始点S2には開始止め縫い35が縫われ、終了点F2には終了止め縫い36が縫われるように構成されている。
なお、この例では、模様20の中に密接縫い目21、21部分及び模様30の中に密接縫い目31、31が存在する。該密接縫い目21と密接縫い目31は、止め縫い25、26、35、36とほぼ同じ密度かそれ以上の密度を有する。
【0013】
模様の刺繍位置と縫い順が設定されたら、模様間距離算出装置3により模様間の距離Lが算出される。具体的には、図3(B)に示すように先に縫われる、即ちn−1番目の模様20の終了点F1と、後に縫われる、即ちn番目の模様30の開始点S2との距離が算出される。
終了点F1(X1z、Y1z)の位置座標は、開始点S1の位置(X1、Y1)から、縫い目の相対座標を累積することにより簡単に求めることができる。開始点S1の位置(X1、Y1)は、模様位置設定装置1による位置設定の際に決められる。模様30の開始点S2は、同様に模様位置設定装置1による位置設定の際に、その座標(X2、Y2)が決められているから、終了点F1(X1z、Y1z)と開始点S2(X2、Y2)間の距離Lを求めることが可能である。
【0014】
前記した模様間の距離Lは、模様間距離判定装置7により所定距離以下か否か判別される。距離Lが所定距離以下の場合、止め縫いによる弊害の可能性があるので、図4に示すように止め縫いデータ消去装置5により終了止め縫い26と開始止め縫い35が削除される。同時に模様連結装置6により模様20と模様30が連結され、終了点F1と開始点S2が連結されるように構成されている。これにより連結模様40が得られる。
このようにn−1番目の模様20の終了点F1とn番目の模様30の開始点S2の距離Lが所定値以下の時に、終了止め縫い26と開始止め縫い35を消去した上で、終了点F1と開始点S2の連結がなされるため、止め縫いによる糸切れや縫い目の盛り上がりなどの弊害を除去できる。
終了止め縫い26と開始止め縫い35の消去は、止め縫いデータ識別装置8により止め縫いデータを識別して行われる。そのため、終了止め縫い26と開始止め縫い35のみが消去され、密接縫い目21や密接縫い目31は消去されず、模様の形状が崩れることがない。
【0015】
前記模様間の距離Lのしきい値は、所定距離設定装置4によりユーザが任意に設定可能になっており、止め縫いデータを消去する場合と消去しない場合の模様間の距離を任意に設定できるように構成されている。図2は、所定距離設定装置4による設定の際の表示装置71の表示を示すものであり、この例ではしきい値として0.8mmを設定している。即ち、しきい値を0.8mmに設定すると、前記距離Lが0.8mmを超える場合には、終了止め縫い26と開始止め縫い35を残したまま、終了点F1と開始点S2の連結処理がなされ、前記距離Lが0.8mm以下の場合には、終了止め縫い26と開始止め縫い35が消去されて、終了点F1と開始点S2の連結処理がなされるように構成されている。
【0016】
図5により、止め縫いの具体的な構成を説明する。止め縫いには種々の構成があり、終了点Fあるいは開始点Sと同一点を縫うタイプと異なる点を縫うタイプがあるが、図5では異なる点を縫うタイプについて説明する。
模様20の針落点Pn−4〜針落点Pn−1を縫い、終了点F1を縫った後に、止め縫いの針落ち点FZ1(止め縫い開始点)、針落ち点FZ2(止め縫い終了点)が縫われて終了止め縫いが行われる。
一方模様30の開始点S2においては、開始点S2が縫われる前に、開始止め縫いの針落ち点SZ1(止め縫い開始点)、針落ち点SZ2(止め縫い終了点)が縫われて、その後開始点S2が縫われ、順次針落点P’1〜針落点P’5が縫われて模様30の刺繍が行われるように構成されている。
【0017】
終了点F1と開始点S2の距離が所定値以下の場合、止め縫いデータ消去装置5により前記針落ち点FZ1、針落ち点FZ2と針落ち点SZ1、針落ち点SZ2のデータが消去され、これらの針落ち点に縫いは行われない。止め縫いデータと同等或はそれ以上に密な針落点Pn−3〜針落点Pn−1から成る密接縫い目21と針落点P’1〜針落点P’4からなる密接縫い目31は消去されず、図7に示すそれぞれの密接縫い目データ210、密接縫い目データ310は消去されない。そのため、模様形状に悪影響はない。
そして、模様連結装置6により終了点F1と開始点S2を接続する処理が実行され、模様20と模様30の模様の連結がなされ、模様20と模様30のデータが連結され、一体の模様として刺繍縫いされる。
この構成により、複数の模様を連結する際に、糸切れや盛り上がりを生じる止め縫いの除去が適切に行われる。
【0018】
図7と図8により止め縫いデータと縫い目データの構成を説明する。
図7に示すように、模様20は模様縫い目を形成する縫い目データ201と開始止め縫いデータ250及び終了止め縫いデータ260の縫い目データを備えている。同様に、模様30は縫い目データ301と開始止め縫いデータ350及び終了止め縫いデータ360を備えている。模様20、30は上記縫い目データ以外に表示装置71に表示させるための表示データなどを備えている。
【0019】
前記したように、模様位置設定装置1により表示装置71上で模様20、30の位置が決定されると、開始点S1と開始点S2に絶対座標が与えられ、該開始点S1、開始点S2を出発点として、以後は相対位置を示す縫い目データ201と縫い目データ301により、縫い目が形成されていく。
開始点S1、開始点S2からの縫い開始前には、開始止め縫いデータ250、開始止め縫いデータ350による止め縫いが実行される。
【0020】
止め縫いデータ250、260、350、360は、止め縫い開始コマンド、ベクトルデータ、止め縫いデータ、止め縫い終了コマンドを備えている。該止め縫い開始コマンドと止め縫い終了コマンドにより、止め縫いデータ識別装置8は止め縫いデータ250、260、350、360であることを認識するように構成されている。該止め縫い開始コマンドと止め縫い終了コマンドに代えて他の識別データにより止め縫いデータ識別装置8に識別するように構成することも可能である。
【0021】
模様位置設定装置1により模様の位置が設定されると、開始点Sに絶対座標(X,Y)が与えられ、この開始点Sから止め縫いデータのベクトルデータによりXY方向に移動し、そこを始点として止め縫いデータに基づいて開始止め縫いが行われる。止め縫いの終了点は開始点Sに一致し、該開始点Sから縫い目データ201、301により順次刺繍縫いが行われるようになっている。
【0022】
終了点Fにおいて、縫い目データ201、301により模様縫いが終了すると、止め縫いデータにより止め縫いが実行され、止め縫い終了コマンドにより止め縫いが終了し、模様の縫い動作が完了するように構成されている。
【0023】
前記したように模様間距離算出装置3により算出された終了点F1と開始点S2の距離が所定値以下の場合には、止め縫いデータ消去装置5により、終了止め縫いデータ260と開始止め縫いデータ350が消去される。開始止め縫いデータ250は、そのままである。終了止め縫いデータ360は次に接続される模様との距離により消去されるか否かが決定されるが、この段階では消去されず、温存される。
【0024】
終了止め縫いデータ260と開始止め縫いデータ350の消去後、模様連結装置6により図8に示されるように、模様20と模様30のデータに接続データ401が加えられ、また開始点S2の絶対座標が消去されて、連結模様40のデータが作成される。作成されたデータは一時記憶装置14に格納される。
模様連結装置6は、図6に示すように模様20の開始点S1絶対座標に縫い目データ201の相対座標を加えて終了点F1の絶対座標(X1z、Y1z)を算出し、この終了点F1から開始点S2へのXY移動量(dxconnect、dyconnect)を求め、この移動量データである接続データ401を縫い目データ201の後に入れ、開始点S2の絶対座標を消去して、模様20と模様30のデータを連結するように構成されている。これにより、図8の連結模様40のデータが得られる。
なお、終了点F1と開始点S2の距離に応じて、終了点F1と開始点S2の間に中間針落ち点を設定することも可能である。
【0025】
終了点F1と開始点S2の距離が所定値を超える場合には、止め縫いデータ消去装置5による終了止め縫いデータ260と開始止め縫いデータ350の消去は行われず、これらを維持したまま、模様連結装置6による連結処理がなされる。この場合、図5に示すように、終了止め縫いデータ260の針落ち点FZ2と開始止め縫いデータ350の針落ち点SZ1間のXY移動量(dxconnect、dyconnect)が算出され、この移動量データが模様30の開始止め縫いデータ350のベクトルデータに代えて、ここに接続データ401として挿入され、連結模様40’のデータが生成される。連結模様40’のデータは一時記憶装置14に格納される。
【0026】
図10と図11により動作を説明する。
ユーザは表示装置71に表示された模様を見ながら、模様選択装置11により模様の選択を行い(ステップS1)、位置変更や模様組み合わせなどの編集を行うか否かをユーザが指示し(ステップS2)、模様位置設定装置1により模様位置の設定、変更を行う(ステップS3)。また、模様を追加する場合には(ステップS4)、更に次の模様を選択し(ステップS5)、同様に位置設定を行い(ステップS6)、模様の追加、設定がなくなった時に編集を終了する(ステップS7)。選択した模様が複数の場合には、模様縫い順設定装置2により縫い順を設定し(ステップS8)、次のデータ処理を行う(ステップS9)。
【0027】
図11によりステップS9のデータ処理を説明する。
最初に、ユーザが所定距離設定装置4を操作して、図2に示すように止め縫いデータを消去する模様間距離のしきい値を設定する(ステップS10)。
CPU10は模様カウンタをリセット(N=1)し(ステップS11)、模様間距離算出装置3によりN番目の模様20の終了点F1の座標とN+1番目の模様30の開始点S2の座標から、2点間の距離を求め(ステップS12)、該2点間の距離が設定距離以下かを判定する(ステップS13)。設定値を超える場合にはステップS17へ進む。設定値以下であれば、止め縫いデータ識別装置8により止め縫いデータ250、260、350、360を識別する(ステップS14)。そして止め縫いデータ消去装置5によりN番目の模様20の終了止め縫いデータ260とN+1番目の模様30の開始止め縫いデータ350を削除し(ステップS15)、更に模様連結装置6により、N番目の模様20の終了点F1の座標とN+1番目の模様30の開始点S2の座標を接続する接続データ401を挿入する(ステップS16)。次にN=N+1とし、次の模様に移る(ステップS18)。ステップS13で、終了点F1と開始点S2の距離が設定値を超える場合には、止め縫いデータの消去は行わず、模様20の針落ち点FZ2と模様30の針落ち点SZ1を接続するデータを生成する(ステップS17)。Nが最後の模様であれば処理を終了し、(ステップS19)、生成したデータを一時記憶装置14に記憶する(ステップS20)。
【0028】
なお、止め縫いを削除するか否かを決定するN番目の模様の終了座標とN+1番目の模様の開始座標の距離のしきい値は、あらかじめ設定されている値(距離)としても良い。
また編集後の刺繍データ生成終了後、生成された刺繍データを保存できるようにしてもよい。更に編集後の刺繍データ作成時、止め縫いを削除するとき、その旨の確認画面を表示させてもよい。また、確認画面上で、止め縫いを削除するか否かの選択をさせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1:模様位置設定装置、2:模様縫い順設定装置、3:模様間距離算出装置、4:所定距離設定装置、5:止め縫いデータ消去装置、6:模様連結装置、7:模様間距離判定装置、8:止め縫いデータ識別装置、10:CPU、11:模様選択装置、12:模様記憶装置、13:ミシン制御プログラム、14:一時記憶装置、20:模様、21:密接縫い目、25:開始止め縫い、26:終了止め縫い、30:模様、31:密接縫い目35:開始止め縫い、36:終了止め縫い、40:連結模様、50:XY駆動装置、51:刺繍枠、60:ミシンモータ駆動装置、61:ミシンモータ、70:表示制御装置、71:表示装置、201:縫い目データ、210:密接縫い目データ、250:開始止め縫いデータ、260:終了止め縫いデータ、301:縫い目データ、310:密接縫い目データ、350:開始止め縫いデータ、360:終了止め縫いデータ、401:接続データ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、刺繍データ生成装置及び刺繍縫い可能なミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍縫い可能なミシンは、刺繍枠に装着された布をXY方向に移動させて刺繍縫いを行う機構を備えており、既成の刺繍模様の縫いデータやユーザが作成した縫いデータを用いて種々の刺繍縫いが可能になっている。
また、近年既にある刺繍模様を種々組み合わせ、また自由に配置して刺繍を行える編集機能を有する刺繍データ生成装置を備えた刺繍可能なミシンも普及している。
このような編集機能を有する刺繍データ生成装置を備えたミシンにおいては、独立した模様を自由に組み合わせ又配置し、その結果に基づいて連続して縫えるよう該刺繍模様の刺繍データを連結させ、ひとつの刺繍データを作成し縫製を行うように構成されている。
しかし、模様を連結させた場合、前の模様の縫い終了位置と後の模様の縫い開始位置とに設けられた糸解れを防止のための止め縫いが近接した位置に縫われることがあり、そのため糸切れや縫い目の盛り上がりなどの問題が生じていた。特に、一筆書き模様を連続的に刺繍縫いするスティップリング模様縫いなどの場合には多数の模様を連続的に連結することが行われ、模様の連結部分も多くなることから、止め縫いによる糸切れや縫い目の盛り上がりが大きな問題となる。
このような刺繍縫いにおける縫い目の集中を除去するための技術として、縫い目を分散させる技術(文献1)や、縫い目を削除する技術(文献2)が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11ー239685号公報
【特許文献2】特開平08ー71274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、文献1のように縫い目を分散させると、模様形状が多かれ少なかれ崩れる問題がある。前記したスティップリング模様のように多数の模様を連続的に連結する場合には、模様の形状の崩れは大きな問題となる。
また、上記した従来の方法では、止め縫いだけではなく、縫い目が集中している部分を一律に検出して削除するため、模様連結部分の止め縫い部分のみを処理することができず、処理不要な部分の縫い目の削除や分散が行われ、模様形状を変更してしまう問題がある。
更に模様を連結する場合には、前の模様の縫い終了位置と後の模様の縫い開始位置との距離によっては、止め縫いを除去する必要がない場合もあり、距離に応じて止め縫いの維持と除去を選択することができない。
また、模様を連結する場合には、連結のための縫いデータの処理が必要であり、このデータ処理は止め縫いの除去を行うか否かで異なってくるが、これらの連結の際のデータ処理を止め縫いの除去、非除去を考慮して行う技術は、まだ提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたもので、複数の模様を連結して1つの模様にまとめることが可能な編集機能を有する刺繍データ生成装置において、開始止め縫いデータと終了止め縫いデータと模様縫い目データとを含む複数の模様を記憶する模様記憶装置と、前記模様記憶装置から複数の模様を選択する模様選択装置と、該選択された複数の模様の位置を設定する模様位置設定装置と、前記模様の縫い順を設定する縫い順設定装置と、前記選択され、位置を設定され、縫い順を設定された、連続する模様であって、縫い順が後の模様の縫い開始点と、該後の模様の1つ前の縫い順である前の模様の縫い終了点と、の距離を算出する距離算出装置と、前記距離算出装置により算出された距離が所定距離以下か否か判定する判定装置と、前記模様の開始止め縫いデータと終了止め縫いデータとを識別する識別装置と、前記判定装置により、前記距離算出装置により算出された距離が所定距離以下と判定された場合、前記識別装置により識別された前記後の模様の開始止め縫いデータと前の模様の終了止め縫いデータとを消去する止め縫いデータ消去装置と、前記前の模様と後の模様を連結して縫うためのデータを生成する模様データ連結装置と、を備えたことを特徴とする。
上記構成により、縫い終了点と縫い開始点が所定距離内にある時に、止め縫いデータのみが識別され、消去されるから、模様の形状に影響を与えることなく、止め縫いのみが除去され、良好な刺繍縫いが行われる。
前記開始止め縫いデータと終了止め縫いデータの識別は、止め縫いデータである旨の識別データにより、識別装置が前記開始止め縫いデータと終了止め縫いデータとを識別するように構成することが可能である。該識別データとしては、止め縫い開始コマンドと止め縫い終了コマンドなどを用いることが望ましい。
また前記判定装置による判定に用いる所定距離を、ユーザが任意に設定できるように所定距離設定装置を備えることも可能であり、これによりユーザは状況に合わせて止め縫いデータの消去を行わせることが可能になる。
なお、上記刺繍データ生成装置は、刺繍データ生成装置を備えた刺繍縫い可能なミシンとして実現することも可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の刺繍データ生成装置及び刺繍縫い可能なミシンによれば、模様を連結するに際して、模様間の距離に応じて止め縫いのみの除去を行えるため、模様形状に変更を与えることなく、効率的に止め縫いの重なりにより生じる不具合を回避できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を示す表示装置71の説明図。
【図3】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図4】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図5】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図6】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図7】本発明の一実施形態の動作を示すデータ構造説明図。
【図8】本発明の一実施形態の動作を示すデータ構造説明図。
【図9】本発明の一実施形態の動作を示すデータ構造説明図。
【図10】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【図11】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は刺繍データ生成装置を備えた刺繍可能なミシンであるが、前述したように刺繍データ生成装置単体として実現することも可能である。
図1は、本願に係る刺繍可能なミシンのブロック図である。このミシンは、CPU10及びミシン制御プログラム13により全体を制御されており、ミシンモータ駆動装置60とミシンモータ61により縫いを行うように構成されている。またXY駆動装置50と刺繍枠51を備え、刺繍縫いを行えるようになっている。
また、表示制御装置70と表示装置71を備えており、刺繍すべき模様を表示し、選択した模様、模様の位置の変更や組み合わせなどを、そのまま表示できるように構成されている。表示装置71はタッチパネルを兼ねており、ユーザは該タッチパネルから種々の命令を行うことが可能である。
【0009】
模様記憶装置12には、複数の模様の模様データが格納されており、CPU10は模様選択装置11によりユーザが選択した模様について、該模様データを読み出すように構成されている。
模様記憶装置12に格納された模様データは、模様を形成するための縫い目データと止め縫いデータ及び表示データなどを含んでいる。この模様データについては、後に詳細に説明する。
なお、本明細書中で「模様」とは、刺繍され、また表示される形状とそれに伴う上記模様データ全体を含むものを意味している。
【0010】
模様位置設定装置1は、模様選択装置11で選択した、複数の模様の刺繍位置を設定するものである。模様選択装置11で選択された模様20は図3に示すように表示装置71に表示され、ユーザは該表示装置71に表示された模様を見ながら、該模様の位置を動かして模様の位置、即ち模様が縫われる位置を設定できるように構成されている。
模様の位置は具体的には、模様の開始点SのXY座標で表される。
【0011】
図3においては、最初に模様20を選択し(図3A)、次に模様30を選択した例(図3B)を示している。
模様縫い順設定装置2は選択した複数の模様の縫い順を設定するものである。図3の例では、模様20、模様30の順に縫うように設定している。ここでは、簡単のため2つの模様が選択された例を示しているが、3以上n個の模様を選択した場合も同じである。
なお縫い順は、模様選択装置11により模様を選択した順に、設定するように構成することも可能である。
【0012】
各模様には、開始点Sと終了点Fが存在し、該開始点Sと終了点Fには止め縫いが行われるようになっている。図3においては、模様20の開始点S1には開始止め縫い25が縫われ、終了点F1には終了止め縫い26が縫われるように構成されている。また、模様30の開始点S2には開始止め縫い35が縫われ、終了点F2には終了止め縫い36が縫われるように構成されている。
なお、この例では、模様20の中に密接縫い目21、21部分及び模様30の中に密接縫い目31、31が存在する。該密接縫い目21と密接縫い目31は、止め縫い25、26、35、36とほぼ同じ密度かそれ以上の密度を有する。
【0013】
模様の刺繍位置と縫い順が設定されたら、模様間距離算出装置3により模様間の距離Lが算出される。具体的には、図3(B)に示すように先に縫われる、即ちn−1番目の模様20の終了点F1と、後に縫われる、即ちn番目の模様30の開始点S2との距離が算出される。
終了点F1(X1z、Y1z)の位置座標は、開始点S1の位置(X1、Y1)から、縫い目の相対座標を累積することにより簡単に求めることができる。開始点S1の位置(X1、Y1)は、模様位置設定装置1による位置設定の際に決められる。模様30の開始点S2は、同様に模様位置設定装置1による位置設定の際に、その座標(X2、Y2)が決められているから、終了点F1(X1z、Y1z)と開始点S2(X2、Y2)間の距離Lを求めることが可能である。
【0014】
前記した模様間の距離Lは、模様間距離判定装置7により所定距離以下か否か判別される。距離Lが所定距離以下の場合、止め縫いによる弊害の可能性があるので、図4に示すように止め縫いデータ消去装置5により終了止め縫い26と開始止め縫い35が削除される。同時に模様連結装置6により模様20と模様30が連結され、終了点F1と開始点S2が連結されるように構成されている。これにより連結模様40が得られる。
このようにn−1番目の模様20の終了点F1とn番目の模様30の開始点S2の距離Lが所定値以下の時に、終了止め縫い26と開始止め縫い35を消去した上で、終了点F1と開始点S2の連結がなされるため、止め縫いによる糸切れや縫い目の盛り上がりなどの弊害を除去できる。
終了止め縫い26と開始止め縫い35の消去は、止め縫いデータ識別装置8により止め縫いデータを識別して行われる。そのため、終了止め縫い26と開始止め縫い35のみが消去され、密接縫い目21や密接縫い目31は消去されず、模様の形状が崩れることがない。
【0015】
前記模様間の距離Lのしきい値は、所定距離設定装置4によりユーザが任意に設定可能になっており、止め縫いデータを消去する場合と消去しない場合の模様間の距離を任意に設定できるように構成されている。図2は、所定距離設定装置4による設定の際の表示装置71の表示を示すものであり、この例ではしきい値として0.8mmを設定している。即ち、しきい値を0.8mmに設定すると、前記距離Lが0.8mmを超える場合には、終了止め縫い26と開始止め縫い35を残したまま、終了点F1と開始点S2の連結処理がなされ、前記距離Lが0.8mm以下の場合には、終了止め縫い26と開始止め縫い35が消去されて、終了点F1と開始点S2の連結処理がなされるように構成されている。
【0016】
図5により、止め縫いの具体的な構成を説明する。止め縫いには種々の構成があり、終了点Fあるいは開始点Sと同一点を縫うタイプと異なる点を縫うタイプがあるが、図5では異なる点を縫うタイプについて説明する。
模様20の針落点Pn−4〜針落点Pn−1を縫い、終了点F1を縫った後に、止め縫いの針落ち点FZ1(止め縫い開始点)、針落ち点FZ2(止め縫い終了点)が縫われて終了止め縫いが行われる。
一方模様30の開始点S2においては、開始点S2が縫われる前に、開始止め縫いの針落ち点SZ1(止め縫い開始点)、針落ち点SZ2(止め縫い終了点)が縫われて、その後開始点S2が縫われ、順次針落点P’1〜針落点P’5が縫われて模様30の刺繍が行われるように構成されている。
【0017】
終了点F1と開始点S2の距離が所定値以下の場合、止め縫いデータ消去装置5により前記針落ち点FZ1、針落ち点FZ2と針落ち点SZ1、針落ち点SZ2のデータが消去され、これらの針落ち点に縫いは行われない。止め縫いデータと同等或はそれ以上に密な針落点Pn−3〜針落点Pn−1から成る密接縫い目21と針落点P’1〜針落点P’4からなる密接縫い目31は消去されず、図7に示すそれぞれの密接縫い目データ210、密接縫い目データ310は消去されない。そのため、模様形状に悪影響はない。
そして、模様連結装置6により終了点F1と開始点S2を接続する処理が実行され、模様20と模様30の模様の連結がなされ、模様20と模様30のデータが連結され、一体の模様として刺繍縫いされる。
この構成により、複数の模様を連結する際に、糸切れや盛り上がりを生じる止め縫いの除去が適切に行われる。
【0018】
図7と図8により止め縫いデータと縫い目データの構成を説明する。
図7に示すように、模様20は模様縫い目を形成する縫い目データ201と開始止め縫いデータ250及び終了止め縫いデータ260の縫い目データを備えている。同様に、模様30は縫い目データ301と開始止め縫いデータ350及び終了止め縫いデータ360を備えている。模様20、30は上記縫い目データ以外に表示装置71に表示させるための表示データなどを備えている。
【0019】
前記したように、模様位置設定装置1により表示装置71上で模様20、30の位置が決定されると、開始点S1と開始点S2に絶対座標が与えられ、該開始点S1、開始点S2を出発点として、以後は相対位置を示す縫い目データ201と縫い目データ301により、縫い目が形成されていく。
開始点S1、開始点S2からの縫い開始前には、開始止め縫いデータ250、開始止め縫いデータ350による止め縫いが実行される。
【0020】
止め縫いデータ250、260、350、360は、止め縫い開始コマンド、ベクトルデータ、止め縫いデータ、止め縫い終了コマンドを備えている。該止め縫い開始コマンドと止め縫い終了コマンドにより、止め縫いデータ識別装置8は止め縫いデータ250、260、350、360であることを認識するように構成されている。該止め縫い開始コマンドと止め縫い終了コマンドに代えて他の識別データにより止め縫いデータ識別装置8に識別するように構成することも可能である。
【0021】
模様位置設定装置1により模様の位置が設定されると、開始点Sに絶対座標(X,Y)が与えられ、この開始点Sから止め縫いデータのベクトルデータによりXY方向に移動し、そこを始点として止め縫いデータに基づいて開始止め縫いが行われる。止め縫いの終了点は開始点Sに一致し、該開始点Sから縫い目データ201、301により順次刺繍縫いが行われるようになっている。
【0022】
終了点Fにおいて、縫い目データ201、301により模様縫いが終了すると、止め縫いデータにより止め縫いが実行され、止め縫い終了コマンドにより止め縫いが終了し、模様の縫い動作が完了するように構成されている。
【0023】
前記したように模様間距離算出装置3により算出された終了点F1と開始点S2の距離が所定値以下の場合には、止め縫いデータ消去装置5により、終了止め縫いデータ260と開始止め縫いデータ350が消去される。開始止め縫いデータ250は、そのままである。終了止め縫いデータ360は次に接続される模様との距離により消去されるか否かが決定されるが、この段階では消去されず、温存される。
【0024】
終了止め縫いデータ260と開始止め縫いデータ350の消去後、模様連結装置6により図8に示されるように、模様20と模様30のデータに接続データ401が加えられ、また開始点S2の絶対座標が消去されて、連結模様40のデータが作成される。作成されたデータは一時記憶装置14に格納される。
模様連結装置6は、図6に示すように模様20の開始点S1絶対座標に縫い目データ201の相対座標を加えて終了点F1の絶対座標(X1z、Y1z)を算出し、この終了点F1から開始点S2へのXY移動量(dxconnect、dyconnect)を求め、この移動量データである接続データ401を縫い目データ201の後に入れ、開始点S2の絶対座標を消去して、模様20と模様30のデータを連結するように構成されている。これにより、図8の連結模様40のデータが得られる。
なお、終了点F1と開始点S2の距離に応じて、終了点F1と開始点S2の間に中間針落ち点を設定することも可能である。
【0025】
終了点F1と開始点S2の距離が所定値を超える場合には、止め縫いデータ消去装置5による終了止め縫いデータ260と開始止め縫いデータ350の消去は行われず、これらを維持したまま、模様連結装置6による連結処理がなされる。この場合、図5に示すように、終了止め縫いデータ260の針落ち点FZ2と開始止め縫いデータ350の針落ち点SZ1間のXY移動量(dxconnect、dyconnect)が算出され、この移動量データが模様30の開始止め縫いデータ350のベクトルデータに代えて、ここに接続データ401として挿入され、連結模様40’のデータが生成される。連結模様40’のデータは一時記憶装置14に格納される。
【0026】
図10と図11により動作を説明する。
ユーザは表示装置71に表示された模様を見ながら、模様選択装置11により模様の選択を行い(ステップS1)、位置変更や模様組み合わせなどの編集を行うか否かをユーザが指示し(ステップS2)、模様位置設定装置1により模様位置の設定、変更を行う(ステップS3)。また、模様を追加する場合には(ステップS4)、更に次の模様を選択し(ステップS5)、同様に位置設定を行い(ステップS6)、模様の追加、設定がなくなった時に編集を終了する(ステップS7)。選択した模様が複数の場合には、模様縫い順設定装置2により縫い順を設定し(ステップS8)、次のデータ処理を行う(ステップS9)。
【0027】
図11によりステップS9のデータ処理を説明する。
最初に、ユーザが所定距離設定装置4を操作して、図2に示すように止め縫いデータを消去する模様間距離のしきい値を設定する(ステップS10)。
CPU10は模様カウンタをリセット(N=1)し(ステップS11)、模様間距離算出装置3によりN番目の模様20の終了点F1の座標とN+1番目の模様30の開始点S2の座標から、2点間の距離を求め(ステップS12)、該2点間の距離が設定距離以下かを判定する(ステップS13)。設定値を超える場合にはステップS17へ進む。設定値以下であれば、止め縫いデータ識別装置8により止め縫いデータ250、260、350、360を識別する(ステップS14)。そして止め縫いデータ消去装置5によりN番目の模様20の終了止め縫いデータ260とN+1番目の模様30の開始止め縫いデータ350を削除し(ステップS15)、更に模様連結装置6により、N番目の模様20の終了点F1の座標とN+1番目の模様30の開始点S2の座標を接続する接続データ401を挿入する(ステップS16)。次にN=N+1とし、次の模様に移る(ステップS18)。ステップS13で、終了点F1と開始点S2の距離が設定値を超える場合には、止め縫いデータの消去は行わず、模様20の針落ち点FZ2と模様30の針落ち点SZ1を接続するデータを生成する(ステップS17)。Nが最後の模様であれば処理を終了し、(ステップS19)、生成したデータを一時記憶装置14に記憶する(ステップS20)。
【0028】
なお、止め縫いを削除するか否かを決定するN番目の模様の終了座標とN+1番目の模様の開始座標の距離のしきい値は、あらかじめ設定されている値(距離)としても良い。
また編集後の刺繍データ生成終了後、生成された刺繍データを保存できるようにしてもよい。更に編集後の刺繍データ作成時、止め縫いを削除するとき、その旨の確認画面を表示させてもよい。また、確認画面上で、止め縫いを削除するか否かの選択をさせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1:模様位置設定装置、2:模様縫い順設定装置、3:模様間距離算出装置、4:所定距離設定装置、5:止め縫いデータ消去装置、6:模様連結装置、7:模様間距離判定装置、8:止め縫いデータ識別装置、10:CPU、11:模様選択装置、12:模様記憶装置、13:ミシン制御プログラム、14:一時記憶装置、20:模様、21:密接縫い目、25:開始止め縫い、26:終了止め縫い、30:模様、31:密接縫い目35:開始止め縫い、36:終了止め縫い、40:連結模様、50:XY駆動装置、51:刺繍枠、60:ミシンモータ駆動装置、61:ミシンモータ、70:表示制御装置、71:表示装置、201:縫い目データ、210:密接縫い目データ、250:開始止め縫いデータ、260:終了止め縫いデータ、301:縫い目データ、310:密接縫い目データ、350:開始止め縫いデータ、360:終了止め縫いデータ、401:接続データ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の模様を連結して1つの模様にまとめることが可能な編集機能を有する刺繍データ生成装置において、
開始止め縫いデータと終了止め縫いデータと模様縫い目データとを含む複数の模様を記憶する模様記憶装置と、
前記模様記憶装置から複数の模様を選択する模様選択装置と、
該選択された複数の模様の位置を設定する模様位置設定装置と、
前記模様の縫い順を設定する縫い順設定装置と、
前記選択され、位置を設定され、縫い順を設定された、連続する模様であって、縫い順が後の模様の縫い開始点と、該後の模様の1つ前の縫い順である前の模様の縫い終了点と、の距離を算出する距離算出装置と、
前記距離算出装置により算出された距離が所定距離以下か否か判定する判定装置と、
前記模様の開始止め縫いデータと終了止め縫いデータとを識別する識別装置と、
前記判定装置により、前記距離算出装置により算出された距離が所定距離以下と判定された場合、前記識別装置により識別された前記後の模様の開始止め縫いデータと前の模様の終了止め縫いデータとを消去する止め縫いデータ消去装置と、
前記前の模様と後の模様を連結して縫うためのデータを生成する模様データ連結装置と、
を備えたことを特徴とする刺繍データ生成装置。
【請求項2】
前記開始止め縫いデータと終了止め縫いデータが、止め縫いデータである旨の識別データを有し、
前記識別装置が、該識別データにより前記開始止め縫いデータと終了止め縫いデータとを識別する、
請求項1に記載の刺繍データ生成装置。
【請求項3】
前記止め縫いデータである旨の識別データが、止め縫い開始コマンドと止め縫い終了コマンドである、
請求項2に記載の刺繍データ生成装置。
【請求項4】
前記判定装置による判定に用いる所定距離を、ユーザが設定するための所定距離設定装置、を更に備えた、
請求項1又は2又は3に記載の刺繍データ生成装置。
【請求項5】
模様データ連結装置は、前記止め縫いデータが消去された場合には、前記前の模様の終了点と前記後の模様の開始点を接続する接続データを生成し、前記止め縫いデータが消去されない場合には、前記前の模様の終了止め縫いの止め縫い終了点と前記後の模様の開始止め縫いの止め縫い開始点とを接続する接続データを生成する、
請求項1又は2又は3又は4に記載の刺繍データ生成装置。
【請求項6】
請求項1又は2又は3又は4又は5に記載の刺繍データ生成装置を備えた刺繍縫い可能なミシン。
【請求項1】
複数の模様を連結して1つの模様にまとめることが可能な編集機能を有する刺繍データ生成装置において、
開始止め縫いデータと終了止め縫いデータと模様縫い目データとを含む複数の模様を記憶する模様記憶装置と、
前記模様記憶装置から複数の模様を選択する模様選択装置と、
該選択された複数の模様の位置を設定する模様位置設定装置と、
前記模様の縫い順を設定する縫い順設定装置と、
前記選択され、位置を設定され、縫い順を設定された、連続する模様であって、縫い順が後の模様の縫い開始点と、該後の模様の1つ前の縫い順である前の模様の縫い終了点と、の距離を算出する距離算出装置と、
前記距離算出装置により算出された距離が所定距離以下か否か判定する判定装置と、
前記模様の開始止め縫いデータと終了止め縫いデータとを識別する識別装置と、
前記判定装置により、前記距離算出装置により算出された距離が所定距離以下と判定された場合、前記識別装置により識別された前記後の模様の開始止め縫いデータと前の模様の終了止め縫いデータとを消去する止め縫いデータ消去装置と、
前記前の模様と後の模様を連結して縫うためのデータを生成する模様データ連結装置と、
を備えたことを特徴とする刺繍データ生成装置。
【請求項2】
前記開始止め縫いデータと終了止め縫いデータが、止め縫いデータである旨の識別データを有し、
前記識別装置が、該識別データにより前記開始止め縫いデータと終了止め縫いデータとを識別する、
請求項1に記載の刺繍データ生成装置。
【請求項3】
前記止め縫いデータである旨の識別データが、止め縫い開始コマンドと止め縫い終了コマンドである、
請求項2に記載の刺繍データ生成装置。
【請求項4】
前記判定装置による判定に用いる所定距離を、ユーザが設定するための所定距離設定装置、を更に備えた、
請求項1又は2又は3に記載の刺繍データ生成装置。
【請求項5】
模様データ連結装置は、前記止め縫いデータが消去された場合には、前記前の模様の終了点と前記後の模様の開始点を接続する接続データを生成し、前記止め縫いデータが消去されない場合には、前記前の模様の終了止め縫いの止め縫い終了点と前記後の模様の開始止め縫いの止め縫い開始点とを接続する接続データを生成する、
請求項1又は2又は3又は4に記載の刺繍データ生成装置。
【請求項6】
請求項1又は2又は3又は4又は5に記載の刺繍データ生成装置を備えた刺繍縫い可能なミシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−177313(P2011−177313A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43633(P2010−43633)
【出願日】平成22年2月27日(2010.2.27)
【出願人】(000002244)蛇の目ミシン工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月27日(2010.2.27)
【出願人】(000002244)蛇の目ミシン工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
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