説明

削岩装置における空気流監視構造及び空気流監視方法

本発明は、ドリルビット(20)の表面にある少なくとも一つのフラッシング孔(23)に空気流(34)を供給するために用いられる容積形圧縮機(32)の上流に吸気弁(31)を配置した削岩装置(10)内の構造に関する。削岩装置(10)は、容積形圧縮機の下流にある空気流流路(34)のシステム圧力を調整するために設けられたレギュレータ(35)と、ドリルビットの表面にある少なくとも一つのフラッシング孔(23)を通る空気の流れを検知する検知手段とを、さらに備えている。前記検知手段は、空気レギュレータ(36)と吸気弁(31)との間に配置された圧力センサ(37)を備え、低下したシステム圧力を測定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルビットのフラッシング孔を通る低下した空気流を検知する方法及び削岩装置内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築作業において、岩に孔を開けるために、様々なサイズの削岩装置が頻繁に使用される。削岩装置は、ドリルビットを備えた削岩機を有し、ドリルビットは岩の特定の条件に適合され、岩に突き刺して、粉砕した岩を削るために使用される。貫通力は、高いレベルの送り力又は衝撃波形によって生み出される。回転モータによって生み出される回転トルクが粉砕した岩を削ぎ取ることになる。
【0003】
表面削岩処理では、岩の切り屑を吹き飛ばし、岩の表面をきれにして、ドリルビットが常に、きれいで固い岩肌に接触することを保証するために圧縮空気を使用することが標準的な技法である。切り屑が取り除かれていないと、ドリルビットは切り屑を貫通し、切り屑をさらに小さいサイズに破壊することになる。この二次的な破壊は、相当に大きなエネルギ消耗になり、掘削効率を低下させるので、望ましくない。さらにまた、切り屑の蓄積は、ドリルビットの回転の抵抗になり、最終的に詰まってドリルビットを停止させることになる。
【0004】
ドリルビットはフラッシング孔を有し、圧縮空気が掘削中にフラッシング孔を通って流れ出るように構成されている。しかし、フラッシング孔が泥で詰まったり、細かい切り屑がフラッシング孔の中に詰まったりすると、空気の流れは止まる。削岩処理が行われる地面の条件は大きく変わるもので、また、地面の泥の存在は、フラッシング孔の詰まりの危険を実質的に高める。地面が柔らかく、掘削速度がとても速く、供給される空気が切り屑を取り除くのに充分でない時、ドリルビットは、細かい切り屑がフラッシング孔の中に詰まることによって詰まらせられる。
【0005】
フラッシング孔が詰まると、ドリルビットは固まって動けなくなり、掘削は完全に止められる。そうすると、相当な時間をかけて掘削孔を清浄しなければならなくなる。それはドリルストリング全体を引き抜くことを伴う。そのため、ドリルビットのフラッシング孔に連続的に空気流を通すことを保証することが重要である。
【0006】
ドリルビットのフラッシング孔内の空気流の低下又は停止を検知するために一般的に用いられる方法は、空気流監視装置、例えば、ベンチュリフローノズルを、圧縮機の下流で空気流流路内に配置することである。このような装置では、数psiの範囲内で低い差圧が生み出されるが、作業圧力は非常に高い。通常、差圧は5psiより小さい。特定の差圧は、フラッシング孔を空気流が通常通り通っていることを示す。特定の差圧が消失すると、空気流が停止したことが示される。スイッチを使用する機械的又は電気的な装置が、差圧を検知し、例えば、空気の供給と掘削の停止を切り換えるために制御ユニットに信号を送るために使用される。使用されている装置が比較的に非常に高い圧力環境で作動しているので、差圧の生成と検知には、高い感度と高い精度が要求される。
【0007】
従って、従来技術の構造は、比較的高い圧力環境下で小さな圧力変動を検知するために非常に高感度な検知装置を必要とする。この種の電気的及び/又は機械的な装置は、非常に高価であり、また、メンテナンスコストも高い。
【0008】
さらにまた、従来技術の監視装置は、空気流流路内に圧力降下を生じさせ、ドリルビット内のフラッシング孔を通って出る空気流に悪影響を与える。また、これはエネルギ消費にも悪影響を与える。
【0009】
従って、削岩装置におけるドリルビットのフラッシング孔を通る空気流の低減又は停止を検知するための改良された構造及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、上述したような空気流監視装置による上述した問題点を改善することにある。
【0011】
本発明の第一の特徴によれば、ドリルビットの表面にある少なくとも一つのフラッシング孔に空気流を供給するために用いられる容積型圧縮機の上流にある流路内に吸気弁を配置した削岩装置から成る特別な特徴を備えた問題になっている種類の構造によって、上述の問題は解決される。削岩装置は、さらに、圧縮機の下流の空気流流路内のシステム圧力を調整するために設けられた空気レギュレータと、ドリルビットの表面にある少なくとも一つのフラッシング孔を通る空気の流れの変動を検知する検知手段とを有する。前記検知手段は、空気レギュレータと吸気弁との間に配置された圧力センサから成り、該センサは、低下したシステム圧力を測定するように構成されている。
【0012】
本発明による解決手段は、圧縮機の上流に、ドリルビットのフラッシング孔を通過する空気の流れを監視するためのポイントを設けることも可能である。低下したシステム圧力を測定し、かつ、吸気弁を認識することを通して、システムを通る空気流量が間接的に監視される。
【0013】
通常、圧力レギュレータは、システム内の流量変化によって生じる低下したシステム圧力を感知するアンローダシリンダを備えている。圧力レギュレータは広い圧力変動範囲を有しているため、本発明では、空気感知のためにこの特徴を使用している。
【0014】
吸気弁は、大気圧に対して機能するように配置されており、吸気弁開弁領域は、差圧に反比例する。
【0015】
低下したシステム圧力と吸気弁の特性を認識することは、吸気弁と圧縮機との間の圧力に繋がる。
【0016】
レギュレータにおける圧力変動は、圧縮機の下流の空気流量に反比例する。従って、監視された低下したシステム圧力は、システムの空気流量に反比例する。
【0017】
空気システム圧力が100〜150psiの間にある間、低下したシステム圧力は、約0〜40psiである。本発明による解決手段は、従来技術の構造に比べると非常に高い測定分解能と精密度を提供する。
【0018】
従って、吸気弁と圧縮機との間より、レギュレータと吸気弁との間の低下したシステム圧力の測定の方が実質的に容易である。さらに、吸気弁と圧縮機との間の圧力は陰圧であり、陰圧を測定するためには、より複雑で高価が装置が必要になる。
【0019】
本発明による解決手段は、同じ空気監視機能に対する同じ又はより良い性能を達成するために、センサの分解能及び精密度が必要とされないので、比較的安価で標準的なセンサを使用することを可能にする。これにより、圧力センサが信頼性のある測定結果を提供し、かつ、複雑な構成部品が少なく、容易に利用可能であり導入が簡単であるので、安価な価格でより良い性能を有する構造が得られる。
【0020】
さらなる利点は、従来技術の解決手段に比べて構成部品の数が減らされていることにあり、例えば、圧力高価を生じさせる装置が空気流流路内にないことにある。このことは、エネルギ消費に対して有利が影響を与える。
【0021】
本発明の一実施例によれば、容積型圧縮機は、スクリュー圧縮機又は任意の形式の容積型圧縮機である。
【0022】
本発明の一実施例によれば、容積型圧縮機は、一定の回転速度を有するロータリ圧縮機である。
【0023】
本発明の一実施例によれば、容積型圧縮機(32)は、可変回転速度を有するロータリ圧縮機である。
【0024】
本発明の第二の特徴によれば、削岩装置に配置されたドリルビットの前面にある少なくとも一つのフラッシング孔を通る空気流量を検知することから成る特別な特徴を備えた問題になっている種類の方法によって、上述の問題は解決される。削岩装置は、ドリルビットにある少なくとも一つのフラッシング孔に空気流を供給するために用いられる容積型圧縮機の上流に配置された吸気弁を有する。さらに、削岩装置は、圧縮機の下流で空気流流路内のシステム圧力を調整するために配置された空気圧レギュレータを有する。この方法は、レギュレータと吸気弁との間の低下したシステム圧力を測定する。さらに、この方法は、測定した低下したシステム圧力が空気流量に反比例するという事実に基づいてドリルビットを通る空気流量を検知する。
【0025】
この方法は、圧縮機の一定の回転速度を基礎とし、システム空気流が圧縮機の回転速度に依存しているという事実に基づく。
【0026】
一実施例は、決められた空気流量と所定の値と比較するステップを含む方法である。決められた空気流量が所定の値より低い場合、ドリルビットの速度を下げるか、又は、掘削を停止するために制御ユニットに信号が送られる。さらに、決められた空気流量が所定の値と等しいか、又は、それより高い場合には、掘削を継続するために制御ユニットに信号が送られる。この方法は、掘削中にフラッシングを制御するために所定のインターバルで繰り返される。
【0027】
可変回転速度の圧縮機を考慮すると、本発明による解決手段は、他の作業ポイントにおける空気流を教示する。
【0028】
本発明の一実施例が、添付図面に概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る構造が用いられた掘削装置を示している。
【図2】ドリルビットの斜視図である。
【図3】本発明に係る構造を概略的に示す図である。
【図4】低下したシステム圧力変動(アンローダ圧力で示されている)に対するベンチュリフローノズルによって生じる差圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、表面削岩装置(サーフェイスロックドリルリグ)10が示されている。削岩装置10は、様々な種類の建築作業や採掘作業において穿孔加工をするために使用される。削岩装置10は、削岩装置本体11を有し、該削岩装置本体11は、削岩装置の移送を可能にし、掘削を実行するために必要な動力を供給する機械装置と容積型圧縮機(図示せず)とを有する。ドリルは、削岩装置本体11から前方に向かってのびる細長いアーム12の外端に配置される。アーム12は、孔の予定の位置までの移動を容易にするために位置を変えることができる。
【0031】
図2に示されたドリルビット20は、岩に突き刺し、粉砕岩石を少しずつ削るために使用される。ドリルビット20の前面21には、岩に突き刺すために用いられる複数のドリルエレメント22が設けられている。前面21には、さらに、四つのフラッシング孔23が設けられている。削岩装置本体11に設けられた容積型圧縮機から送られる圧縮空気が、フラッシング孔23から流れ出て、岩の掘屑を吹き飛ばし、岩の表面をきれいにする。これにより、ドリルビット20が、常に、きれいで固い岩肌に接触することが保証され、穿孔中の孔に、岩の堀屑が残らない状態が維持される。
【0032】
図3は、削岩装置空気システムの一部を図式的に示している。このシステムは、吸気路30を備え、吸気弁31を介し、吸気路30を通して、動力源Mによって動力供給される圧縮機32へ空気が導かれる。圧縮機32からの圧縮空気が圧縮容器33に送られる。空気は、圧縮容器33から、空気流流路34を介してドリルビット20に送られ、フラッシング孔23を介してドリルビットから出る。空気レギュレータ36が、空気システム圧力を調整するための吸気弁31を調整するために配置されている。空気システム圧力は、圧縮機によって、圧縮機の下流にある空気流流路34内に生み出される。
【0033】
吸気弁31は圧縮機32へ供給される空気量を調整するために使用され、ドリルビット20のフラッシング孔23を通る空気流が詰まった時にシステム圧力が上昇するのを回避する。
【0034】
このシステムは、さらに、レギュレータ36と吸気弁31との間に配置された圧力センサを備えている。この圧力センサは、低下したシステム圧力を測定し、対応する信号を制御ユニット37に送るように構成されている。ドリルビット20を通る空気流量は、測定された低下したシステム圧力が空気流量に反比例するという事実に基づいて決められる。
【0035】
容積型圧縮機32が、可変回転速度を持つロータリ圧縮機である場合、この方法は、各作業ポイントにおける望ましい回転速度に基づくものになる。
【0036】
決められた空気流量が、所定の値より低い場合には、ドリルビットの速度が下げられるか、及び/又は掘削が止められる。
【0037】
決められたエアフローレイトが、所定の値と等しいか、又はそれより高い場合には、穿孔は続けられる。
【0038】
図4は、ベンチュリフローノズルを備えた表面削岩装置で実行した試験の結果を示すグラフである。このグラフは、低下したシステム圧力(アンローダ圧力で示されている)と空気流量との間の関係を示している。空気流量は、ベンチュリフローノズルを通る空気流によって生じる差圧で示されている。差圧は、空気流量に比例する。
【0039】
空気流がゼロに達する時、低下したシステム圧力は最高レベルに達する。この低下したシステム圧力は、システム圧力の約30%であり、一般的に用いられるベンチュリ管生成差圧よりずっと高い。完全に流れている状態(フルフロー)と流れがゼロの状態(ゼロフロー)との間の差は、低下したシステム圧力の変化を監視することによって非常に容易に検知される。そのため、空気流の状態を検知するために、安価で簡単な圧力センサを使用することができる。
【0040】
差圧がゼロに近づく時、即ち、フラッシング孔を通る空気流がゼロに近づく時、低下したシステム圧力が最高になる。
【0041】
差圧が最高になる時、即ち、フラッシング孔を通る空気流が最大で、吸気弁が完全に開いている時、低下したシステム圧力は最低になる。
【0042】
従って、フラッシング孔23を通る空気流が止まると、システム圧力が上昇することを防止するために、空気レギュレータ36は吸気弁31を閉弁する。これは、吸気弁を低下したシステム圧力によって制御することで達成される。
【0043】
本発明によれば、圧力センサが低下した空気システム圧力を検知し、それにより、フラッシング孔を通る空気の流量を間接的に監視する。
【0044】
本発明によれば、圧力と圧縮機の回転速度との両方が考慮され、従って、空気流量は完全に制御される。
【0045】
本発明によれば、吸気流路に圧力を加え、圧縮機の回転速度を変更することによって、空気流量が、圧縮機の回転速度に伴って線形に変化することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルビット(20)の表面にある少なくとも一つのフラッシング孔(23)に空気流(34)を供給するために用いられる容積形圧縮機(32)の上流に吸気弁(31)を配置し、
容積形圧縮機の下流にある空気流流路(34)のシステム圧力を調整するために設けられたレギュレータ(35)と、ドリルビットの表面にある少なくとも一つのフラッシング孔(23)を通る空気の流れを検知する検知手段とを備えた
削岩装置内構造において、
検知手段が、空気レギュレータ(36)と吸気弁(31)との間に配置された圧力センサ(37)を備え、低下したシステム圧力を測定するように構成されている
ことを特徴とする削岩装置内構造。
【請求項2】
容積型圧縮機(32)が、一定の回転速度を持ったロータリ圧縮機である
ことを特徴とする請求項1に記載の削岩装置内構造。
【請求項3】
容積型圧縮機(32)が、可変式回転速度を持ったロータリ圧縮機である
ことを特徴とする請求項1に記載の削岩装置内構造。
【請求項4】
ドリルビット(20)にある少なくとも一つのフラッシング孔(23)へ空気流(34)を供給するために用いられる容積型圧縮機(32)の上流に吸気バルブ(31)を配置し、
容積型圧縮機(32)の下流にある空気流流路(34)内のシステム圧力を調整するために設けられたレギュレータ(35)を備えた
削岩装置(10)に配置されたドリルビット(20)の前面にある少なくとも一つのフラッシング孔(23)を通る空気流量を検知する方法であって、
レギュレータ(35)と吸気弁(31)との間の低下したシステム圧力を測定し、
測定した低下したシステム圧力が空気流量に反比例することに基づいてドリルビット(20)を通る空気流量を決める
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
圧縮機の回転速度を所望の速度に設定する
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
決定した空気流量を所定の値と比較し、
決定した空気流量が所定の値より低い場合には、ドリルビット(20)の速度を低減するか、又は掘削を停止し、
決定した空気流量が所定の値より高いか、又は所定の値と等しい場合には、掘削を継続する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−525512(P2012−525512A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509469(P2011−509469)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/002668
【国際公開番号】WO2009/139825
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(398056193)アトラス コプコ ロツク ドリルス アクチボラグ (66)
【出願人】(510003210)アトラス コプコ ドリリング ソルーションズ リミテツド ライアビリティ カンパニー (3)
【Fターム(参考)】