説明

前立腺癌の治療用の前立腺特異的抗原をコードするポックスウィルスベクター

本発明は、前立腺特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると、その細胞内で発現する、被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを含む、遺伝子ワクチン構築物を提供する。遺伝子ワクチン構築物は前立腺癌の治療用である。前立腺特異的ポリペプチドは、好ましくはラット前立腺酸性フォスファターゼであり、好ましくは被検体にとって異種である。ポックスウィルスベクターはアビポックスウィルスベクターであり、好ましくは鶏痘ウィルスベクターである。遺伝子ワクチン構築物はまた、1種以上のサイトカインをコードし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に、遺伝子ワクチン接種の分野に関し、特に前立腺癌の遺伝的免疫療法および/または免疫予防法に関する。より具体的には、本発明は前立腺細胞(前立腺ガン細胞を含む)に対する選択的免疫反応を刺激しうる遺伝子構築物を提供する。また、本発明はとりわけ、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防のための組成物、それらに対する抗体、および診断試薬、ならびに前立腺癌の治療および/または予防のための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中、著者名で引用した刊行物の詳細は本発明の説明の最後にまとめる。
【0003】
明細書中のいずれの先行技術に対する参照も、この先行技術が一般的な技術常識を形成しているといずれの国においても了承するものでも、またはそのように示唆するものでもなく、そしてそのように認識されるものでもない。
【0004】
分子生物学および情報科学における最近10年の進歩により、生物学的事象のより広い理解が進み、より理解が深まる可能性が広がり、医薬産業および関連する産業が疾患及び他の障害の予防及び治療に関するストラテジーを進歩させる可能性が多数得られた。特に重要な問題としては、前立腺癌および他の前立腺関連疾患または状態の予防及び治療に関するものが挙げられる。
【0005】
前立腺癌は男性の癌による死因の中でも二番目に多い。前立腺癌は、前立腺に限定されている場合には、以下の2種類の局部的治療方法のいずれか1つでの治療可能性があるのみである:外科手術(前立腺全摘出術)または根治的放射線治療法(外部ビームまたは近接照射療法)。しかし、限局性疾患の治療処置を受けた男性の約40%が、続いて転移性疾患を発症する。男性の約70%は疾患の経過中のいずれかの時点において転移を生じている。
【0006】
転移性疾患を有する男性では、内科的去勢または去勢手術により一時的に回復することも多いが、化学療法に比較的耐性である致死性アンドロゲン抵抗性疾患を必ず併発する(Logothetis, C.J. ら、Semin. Oncol. 21:620, 1994に概説されている)。転移性前立腺癌は不治の病であり、疾患の末期ホルモン抵抗性段階はいずれの治療に対しても最も反応性が低い。
【0007】
去勢手術は両側精巣摘除術の施術により達成され、その治療効果はLHRHアゴニスト/アンタゴニストと抗アンドロゲン剤の組合せを用いての完全なアンドロゲン遮断とほぼ等しい(Santen R.J., J Clin. Endocrinal. Metab. 75:685-689, 1992;Thenot, S. ら、Mol. Cell Endocrinol. 156:85-93, 1999)。どちらの手術も、手術者に応じて失禁およびインポテンスの罹患率とかなり関連し、50%に到達する場合もある。転移性疾患を有する男性の約70〜80%はいずれかの種類のホルモン療法に応答し、平均約2年半で有効に緩解する。ホルモン療法はそれ自体が、昏睡、衰弱および認識機能障害に関連する副作用を有する。やがて「アンドロゲン非依存性」癌増殖を併発し、これは通常、致死性である(Thenot S.ら、上記)。疾患のこのホルモン抵抗性段階では、平均生存期間は40〜50週間である。併用化学療法は症例の約25%に臨床上有益であるが、生存期間の延長はない。
【0008】
癌患者が自身の癌に対して、効果はないが、自然に免疫反応を生じるという証拠がある(Lee, P.P.ら、Nature Medicine 5(6):677-685, 1999; Albert, M. L.ら、Nature Medicine 4:1321-1324, 1998)。これら免疫反応のほとんどは癌が由来する組織の通常の成分に対して生じ、分化抗原として公知である。このことはメラニン細胞分化抗原(確定されているメラノーマ腫瘍抗原の主要なクラスを含む)に関して多く報告されている(Rosenberg, S.A.ら、Immunity 10:281-287, 1999)。さらに、メラニン細胞分化抗原は、養子免疫伝達による生体外膨張腫瘍浸潤リンパ球の腫瘍拒絶抗原として定義されている(Rosenberg, S.A. ら、J Am Med Assoc 271:903, 1994)。
【0009】
他方、前立腺癌の場合、前立腺分化抗原が癌患者の免疫系により認識されるという証拠は限られている。特に、これらの抗原で腫瘍拒絶抗原として定義されているものはない。しかし、ヒト前立腺特異的抗原(hPSA)およびヒト前立腺酸性フォスファターゼ(hPAP)に対するT細胞増殖性反応は、ヘルパーTサイトカインであるインターフェロン−γのヒトPAP特異的産生と共に、それぞれ前立腺癌患者の6%および11%において検出されている。これらの知見は、PAP特異的細胞傷害性Tリンパ球をサポートしうる免疫環境が前立腺癌患者体中に存在しうることを示唆する(McNeel D.G.ら、Cancer Research 61:5161-5167, 2001)。ヘルパーT細胞依存性のヒトPAPに対する既存の免疫系を支持するさらなる証拠は、前立腺癌患者の約5%および男性対照でのヒトPAP特異的抗体の発見である(McNeel D.G.ら、J. Urinol. 164(5):1825-1839, 2000)。さらなる研究により、多数のヘルパーT細胞エピトープが同定され、これらは天然でプロセシングされているヒトPAP特異的MHCクラスIIエピトープを提示し得る(McNeelら、2001、上述)。さらに、以下のいずれかを負荷した樹状細胞で免疫感作した前立腺癌患者において抗腫瘍反応が観察された:ヒト前立腺酸性フォスファターゼ (hPAP) (Peshwa, M.V.ら、Prostate 36:129-138, 1998)またはヒト前立腺特異的膜抗原由来ペプチド(hPSMA) (Lodge, P.A.ら、Cancer Research 60:829-833, 2000; Murphyら、Prostate 38:73-78, 1999(a); Murphy, G.P.ら、Prostate 39:54-59, 1999(b))。
【0010】
続いて、前立腺特異的抗原を標的化する治療ストラテジーの開発にかなりの努力が費やされている。これらの抗原の中で最も良く特徴付けられているものはPSA(前立腺特異的抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)およびPAP(前立腺酸性フォスファターゼ)である。前立腺癌は免疫療法の絶好の候補である。というのも、腫瘍がゆっくりと増殖し、通常、免疫抑制量での化学療法が患者に行われていないからである。Fongらは、特に、抗原負荷樹状細胞を投与したヒト被検体での抗PAP T細胞増殖性反応を示した。樹状細胞は末梢血単核細胞から増加し、マウスPAPを負荷すると異種刺激の免疫反応を提供した(Fong, L.ら、J Immunol 167:7150-7156, 2001)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前立腺癌の治療または予防のための、効率が良く、特異的かつ安全な免疫治療的および/または免疫予防的ストラテジーが必要とされている。本発明おいて、本発明者は、前立腺酸性フォスファターゼのような前立腺特異的ポリペプチドを発現する組換えポックスウィルス構築物を、好ましくは、免疫刺激性サイトカインのような(特にIL-2等)免役刺激分子と共に用いる遺伝子ワクチン接種に基づくストラテジーを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本明細書を通して、特に記載しない限り、用語「含む(comprise)」ならびに「含有する(comprisesおよびcomprising)」のようなバリエーションは、定まった全体(integer)もしくは段階(step)または全体群もしくは段階群の包含を意味し、いずれの全体もしくは段階または全体群もしくは段階群の排除を意味しないことが理解される。
【0013】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列識別番号(配列番号、SEQ ID NO:)により参照される。配列番号は、配列識別子<400>1、<400>2等の番号に対応する。配列番号の要旨は表1に示す。配列表を別に提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、特に、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組込み、被検体に投与されるとその細胞中でそれらを発現する、生産的には被検体に感染しないポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物を提供する。
【0015】
いくつかの態様において、この遺伝子ワクチン構築物の発現産物はPAP特異的免疫反応を刺激する。他の態様において、この遺伝子ワクチン構築物の発現産物は前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する。他の態様において、遺伝子ワクチン構築物の発現産物は自己免疫性前立腺炎を刺激する。
【0016】
本発明の他の態様は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列、ならびに免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組込み、被検体に投与されるとその細胞中でそれらを発現する、生産的には被検体に感染しないポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物を提供する。
【0017】
いくつかの態様において、遺伝子ワクチン構築物の発現産物は前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する。他の態様において、遺伝子ワクチン構築物の発現産物は自己免疫性前立腺炎を刺激する。
【0018】
好ましいポックスウィルスベクターはアビポックスまたはオルトポックスベクターである。特に好ましいポックスウィルスベクターは家禽ポックスウィルスベクターである。
【0019】
関連する局面において、本発明の遺伝子ワクチン構築物またはそれらの発現産物の1つ以上に特異的に結合する、またはそれらを識別することができる抗体、核酸プローブおよび/または他の試薬は、本発明の範囲内にあると意図される。
【0020】
好ましくは、前立腺特異的ポリペプチドは前立腺酸性フォスファターゼまたはそのホモログ、誘導体またはアナログである。
【0021】
さらに好ましい態様において、前立腺酸性フォスファターゼはその異種ホモログである。いくつかの態様において、ヒト被検体で用いるための異種ホモログはげっ歯類、より具体的にはラットホモログである。特に、ラット前立腺酸性フォスファターゼが好ましい。
【0022】
従って、本発明の他の態様は、異種前立腺酸性フォスファターゼをコードするヌクレオチド配列および免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組込み、被検体に投与されるとその細胞中でそれらを発現する、生産的には被検体に感染しないポックスウィルスベクターを含む、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を意図する。
【0023】
本発明のさらに他の態様において、免疫刺激性ポリペプチドは免疫刺激性サイトカインである。例えば、このサイトカインはTh-1またはTh-2型サイトカインが好ましい。
【0024】
適切なサイトカインは、IFNγ、IL-12、IL-2、TNFα、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-6、IL-15、IL-18またはflt-3リガンドのうちの1種以上である。
【0025】
好ましい態様において、サイトカインはIL-2、IFNγまたはIL-12の1種以上である。
【0026】
特に好ましいサイトカインはIL-2である。
【0027】
従って、本発明のさらに他の態様は、異種前立腺酸性フォスファターゼをコードするヌクレオチド配列と、IL-2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とを組込み、被検体に投与するとその細胞中で発現する、被検体に生産的には感染しない家禽ポックスウィルスベクターを含む、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を意図する。
【0028】
本発明のさらに他の態様は、ラット前立腺酸性フォスファターゼをコードするヌクレオチド配列およびIL-2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞中で発現する、被検体に生産的には感染しない家禽ポックスウィルスベクターを含む、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を意図する。
【0029】
適切には、前立腺細胞特異的免疫反応は、被検体中の前立腺由来細胞の数または増殖の阻害、溶解または他の形のダウンレギュレーションを強化するT細胞の増殖を含む。
【0030】
本発明の他の態様は、前立腺特異的ポリペプチド、またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組込み、被検体に投与するとその細胞中で発現する、被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを含む、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を、製薬上許容される担体1種以上とともに含有する組成物を提供する。
【0031】
本発明のさらに他の態様は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列、ならびに免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体への投与時にその細胞中で発現する、被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを含む、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を、製薬上許容される担体1種以上と共に含有する組成物を提供する。
【0032】
本発明のさらに他の態様は、被検体における前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する、または増強する方法を提供し、この方法は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、遺伝子ワクチン構築物の発現産物に充分な条件下で一時的にそれらを発現して前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するまたは増強する、被検体に産生的には感染しないポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物を含有する組成物を有効量で被検体に投与する工程を包含する。
【0033】
本発明のさらに別の関連する局面は、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防法を提供し、この方法は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、被検体に産生的には感染しない、発現産物が前立腺癌の治療および/または予防に有効な前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するポックスウィルスベクターを含む、遺伝子ワクチン構築物を含有する組成物を有効量で投与する工程を含む。
【0034】
本発明のさらに関連する局面は、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防法のための医薬の製造における遺伝子ワクチン構築物の使用に関し、この構築物は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、被検体に生産的には感染せず、その発現産物が前立腺癌の治療および予防に有効な前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するポックスウィルスベクターを含む。
【0035】
本発明のなおさらなる態様は、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防のための医薬の製造における遺伝子ワクチン構築物の使用を意図し、この構築物は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列、ならびに免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、被検体に生産的には感染せず、その発現産物が前立腺癌の治療または予防に有効な前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するポックスベクターを含む。
【0036】
ある態様において、前立腺特異的ポリペプチドは前立腺酸性フォスファターゼまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログである。
【0037】
本発明の実施態様において特に好ましい免疫刺激性ポリペプチドは免疫刺激性サイトカインである。例えば、サイトカインはTh-1またはTh-2型サイトカインであることが好ましい。
【0038】
サイトカインの好ましい例は、IFNγ、IL-12、IL-2、TNFα、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-6、IL-15、IL-18またはflt-3リガンドのうちの1種以上である。
【0039】
より好ましくは、サイトカインはIL-2、IFNγまたはIL-12のうちの1種以上である。
【0040】
特に好ましいサイトカインはIL-2である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
好ましい態様の説明
本発明は、一部は、通常は前立腺細胞表面上またはその近傍のみで発現されるポリペプチドを、好ましくは免疫刺激性ポリペプチドと共にコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体の細胞内で発現する生存ポックスウィルスベクターに基づく遺伝子ワクチン構築物が、被検体内での免疫性前立腺炎を選択的に誘発しうるという判断に基づき予測される。
【0042】
従って、本発明はとりわけ、前立腺癌のような前立腺関連疾患または状態を治療または予防するための遺伝子ワクチンおよび方法を提供する。具体的な理論または操作態様に限定されることなく、被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを用いることにより、ウィルス感染進行の危険性、および/または広範なおそらく不適切な細胞での前立腺特異的ポリペプチドの発現が最小限となる。さらに、被検体内における他のポリペプチドとの類似性が低い前立腺特異的ポリペプチドを用いることにより、不適切な免疫反応発生の危険性も減少する。
【0043】
従って、本発明の1局面は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物を意図し、この遺伝子ワクチン構築物の発現産物は前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する。
【0044】
「遺伝子ワクチン構築物」は、免疫感作を目的として、少なくともその核酸分子の一部によりコードされる抗原性ポリペプチド1種以上が発現される被検体に投与される、組換え核酸分子を含む組成物を意図する。
【0045】
本発明によると、ポックスウィルスベクターは被検体に「生産的には感染」しない。語句「生産的には感染しない」または「生産的な感染」無しとは、ベクターは被検体の細胞(例えば、投与部位近傍)に感染しうるが、ウィルスは増殖せず、ウィルス感染の危険性および/またはおそらく不適切な広範な細胞での前立腺特異的ポリペプチドの発現が最小限となることを意味する。具体的には、これは、ウィルス複製の効率が悪いか、不完全であるか、または制限されることにより、生じうる。
【0046】
例えば、ポックスウィルスベクターが重要な非前立腺細胞器官の細胞内で増殖し、繁殖することにより免疫破壊の標的とすることは不適切であるか、または望ましいことではない。当然のことながら、初期感染及びベクターによるタンパク質の発現は必要であり、免疫反応を引き起こす。
【0047】
当業者は、ポックスウィルスが宿主範囲に応じて伝統的に分類されている多様なウィルス群を含むことを知っている。例えば、野生型アビポックスウィルスは非鳥類種の細胞内では複製しない。複製における制限工程は、不十分な後期遺伝子発現であるか、または不十分なウィルス粒子の成熟化である(Somogyi P.ら、Virology 197:439-444, 1993)。しかし、初期ポックスウィルスプロモーターの制御下にある遺伝子は、ヒトのような非鳥類の細胞内で発現され、外来性遺伝子は定期的にこの様式で発現される(Taylor, J. ら、Vaccine 6:497-503, 1988; Cox, W.ら、Virology 195:845-850, 1993)。免疫応答性宿主では、ポックスウィルス感染(例えば、特定のワクシニア株でのヒトの感染)は通常は制限されるが、それでもやはりヒトはワクシニアウィルスにとって宿主種であり、少なくとも初めは、実質的なウィルス複製が期待されるであろう。
【0048】
本発明に従い、生産的感染が存在しないことの評価は、ポックスウィルスベクターが、最初に感染した細胞中で増殖できないか、またはそこから増殖することができないことである。好ましい態様において、被検体内において生産的感染がないことは、許容状態の宿主で観察される全ウィルス複製が約10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.1%未満、およびなおさらに好ましくは0.01%未満であることである。従って、ポックスウィルスベクターの選択は、とりわけ、被検体の種に依存する。
【0049】
疑陽性を回避するために、本発明において、鶏痘ベクターを含む本発明の組換えアビポックスは、非鳥類宿主に生産的に感染しない。
【0050】
あるいは、条件的複製欠損ポックスウィルスベクターを、当該分野で公知の方法により生産的に宿主に感染しないように遺伝子操作してもよい。例えば、ワクシニアポックスウィルス株にける宿主特異性に関する遺伝的基礎の幾つかの局面は理解されており、複製欠損ワクシニアウィルスは「宿主域」遺伝子の欠失により作製されている(Perkus, M.E. ら、Virology 179:276-28, 1990)。また、複製欠損または弱毒化ウィルス(例えば、改変型ワクシニアウィルス(modified vaccine virus)(MVA))は、ヒト被検体に生産的には感染しないポックスウィルスの例である。このような改変型または弱毒型ポックスウィルスベクターは、インビトロで細胞内において(例えば、鳥胎仔線維芽細胞において)、ウィルスの反復継代により入手することができる。
【0051】
用語「ポックスウィルス」は、アビポックス(例えば、鶏痘、カナリア痘ウイルス、ペンギンポックス(penguinpox)、ハトポックス)、オルトポックス(例えば、ワクシニア)カプリポックス(例えば、ヒツジ、ヤギ)およびスイポックス(suipox)(例えば、豚痘)等から選択されるウィルスを含む。アビポックスベクターが好ましいベクターである。特に好ましいベクターは鶏痘である。
【0052】
ヒト被検体が主に意図されるが、「被検体」という場合、霊長類(例えば、ヒト、サル)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ヤギ、ブタ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、アヒル、イヌ、モルモット、ラビット、ハムスター(hampsters))、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、鳥)、および捕獲野生動物(例えば、カンガルー、シカ、キツネ)を含む哺乳動物を挙げることができると理解されるべきである。好ましくは、被検体は霊長類であり、ヒト被検体がさらに好ましい。
【0053】
「細胞内で発現」の場合の「細胞」とは、抗原提示細胞、例えば樹状細胞をいうことが挙げられる。
【0054】
組換えポックスウィルスベクターの作製及び使用するための一般原則及び方法は当該分野において周知である。簡単に説明すると、宿主細胞内でのドナー組換えベクターとポックスウィルスとの間での相同組換えにより、所望の配列を正確に導入することができる。ドナーベクターは、ポックスウィルスベクターとの部位特異的相同組換えを可能にするヌクレオチド配列および前立腺特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、原核生物宿主での増幅、トランスフェクト細胞の選択、および核酸配列の転写に必要な任意の他のエレメント1種以上とともに含む。免疫刺激性ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含むベクターのような二重のさらなる組換体は、基本的に同じ様式で作製することができるが、異なるプロモーターおよび選択マーカーを使用することもできる。
【0055】
好ましい局面において、本発明は前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現するアビポックスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物を意図し、ここで、アビポックスベクターは産生的には被検体に感染せず、遺伝子ワクチン構築物の発現産物は前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する。
【0056】
鶏痘ベクターが好ましいアビポックスベクターである。鶏痘ウィルスがとりわけ好ましい。なぜならば、異種タンパク質を適切なレベルで発現するからである。鶏痘ウィルスをヒトにおいて用いることも好ましい。なぜならば、鶏痘に対する免疫は、通常は存在しないからである。反対に、ヒト集団の大部分は、先のワクチン接種レジメの結果として、ワクシニアウィルスと接触している。結果として、ワクシニアウィルスをヒト患者に導入することにより、ワクシニアウィルスベクターに対する免疫反応を誘発することができる。このような状況では、ベクターは抗原性タンパク質が発現する前に中和されるかもしれない。
【0057】
本発明の遺伝子ワクチン構築物はまた、核酸ベースのアッセイによる検出に有用なマーカーであるヌクレオチド配列を含みうる、または発現されて酵素または抗体ベースのアッセイを含むタンパク質アッセイ等による検出に有用であり得る。
【0058】
本発明のベクターは、ヘテロ二本鎖分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、配列特異的ハイブリダイゼーションプローブ(SSO)、一本鎖DNA高次構造多型解析(SSCP)、配列決定、質量分析、酵素切断、タンパク質プローブ(抗体、酵素または免疫反応ベースのアッセイを含む)、ならびにこれらの組合せのような適当なプロトコールのいずれかを用いて同定することができる。
【0059】
本発明の別の局面は、本発明の遺伝子ワクチン構築物の発現産物中に特異的に形成されるエピトープにより決定される単離抗体を意図する。
【0060】
単離抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであって良い。あるいは、Fabフラグメントのような抗体のフラグメントを使用することができる。さらに、本発明は、組換え抗体及び合成抗体、ならびに抗体ハイブリッドにわたる。「合成抗体」は、本明細書中において抗体のフラグメントおよびハイブリッドを含むと意図される。
【0061】
1態様において、特異的抗体を用いて、ワクチン構築物の発現産物の存在について、被検体由来のサンプルをスクリーニングすることができる。
【0062】
あるいは、被検体がタンパク質型のワクチン構築物に対して特異抗体反応を備え得ることを用いて、被検体が本発明のワクチン構築物でのワクチン接種をすでに受けているか否かを決定することができる。本明細書中に記載のアッセイに関する技術は当該分野において公知であり、例えば、サンドイッチアッセイおよびELISAが挙げられる。
【0063】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体はいずれも、酵素またはタンパク質での免疫感作により手に入れることができ、いずれの型も免疫学的検定に有用である。いずれの型の血清も入手方法は当該分野において周知である。ポリクローナル血清の方はあまり好ましくないが、適当な実験動物にタンパク質型の分子マーカーまたはその抗原性部分を有効量で注射し、その動物から血清を回収し、公知の免疫吸着技術で特定の血清を単離することにより、比較的簡単に製造される。この方法により産生される抗体は実質的にいずれの型の免疫検定にも使用することができるが、生成物は不均一な可能性があるので、通常はあまり好ましくない。
【0064】
モノクローナル抗体は大量に産生することができ、生成物が均一であるので、免疫学的検定にモノクローナル抗体を用いるのが特に好ましい。不死化細胞株と免疫原性調製物に対して感作したリンパ球との融合に由来するモノクローナル抗体産生用ハイブリドーマ細胞株の作製は、当業者に周知の技術により行うことができる。
【0065】
本発明の別の局面は、被検体内における本発明の遺伝子ポックスウィルスワクチン構築物のタンパク質型を検出する方法を意図し、この方法は、この被検体由来の生物学的サンプルを、この遺伝子ポックスウィルスワクチン構築物のタンパク質型に特異的な抗体と、抗体−抗原複合体の形成に充分な時間および充分な条件下で接触させ、次いでこの複合体を検出することを含む。
【0066】
複合体の存在は多数の方法(ウェスタンブロッティングおよびELISA法など)により検出することができる。多様な免疫学的検定技術を利用することができ、この方法は米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号および同第4,018,653号を参照することにより見出すことができる。これらには、一部位および二部位の両方、または非競合型の「サンドイッチ」アッセイ、ならびに伝統的競合結合アッセイが挙げられる。これらのアッセイはまた、標識抗体の標的への直接結合を含む。
【0067】
サンドイッチアッセイは、最も有用かつ一般的に用いられるアッセイの1つであり、本発明での使用に好ましい。多様なサンドイッチアッセイ技術があり、それらは全て本発明に含まれることが意図される。簡単に説明すると、典型的なフォワード(forward assay)では、未標識の抗体を固体基質に固定し、試験試料を結合分子と接触させる。抗体−抗原複合体を形成させるのに充分な適切な時間インキュベーションした後、検出シグナルを生成し得るレポーター分子で標識した抗原特異的第2抗体を加え、次いでインキュベートして、充分な時間、抗体−抗原標識抗体の別の複合体を形成させる。未反応の物質を洗い流し、レポーター分子により産生されるシグナルを観察することにより、抗原の存在を測定する。結果は、目に見えるシグナルを単純に観察する定性的なものであってもよいし、または既知量のハプテンを含むコントロールサンプルと比較しての定量的なものであっても良い。フォワードアッセイでの変法としては、両方のサンプルと標識抗体を結合抗体に同時に加える同時定量法が挙げられる。これらの技術は当業者に周知であり、容易に明らかである小さい変更を含むものである。
【0068】
試料は通常、生物学的流体を含む生物学的試料であるが、細胞培養物のような上清液も含む。試料の調製方法は当業者に周知である。
【0069】
本明細書中で用いる「レポーター分子」は、その化学的性質により、抗原結合型抗体の検出を可能とする分析的に同定可能なシグナルを提供する分子を意味する。検出は定性的または定量的のいずれかであり得る。このタイプのアッセイにおいて最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、蛍光または放射性核種含有分子(すなわち、放射性同位体)、ならびに化学発光分子のいずれかである。酵素免疫検定の場合、通常、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩により酵素は二次抗体に結合されている。しかし、容易に認識されるように、種々の異なる結合技術が存在し、当業者であれば容易に利用することができる。一般的に用いられる酵素としては、とりわけ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる。特定の酵素と共に用いる基質は、通常、対応する酵素により加水分解される際に、検出可能な色の変化を生じる点で選択する。適当な酵素の例としては、アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼが挙げられる。また、上記色素原性基質以外の蛍光性産物を生じる蛍光性基質を用いることもできる。いずれも場合においても、酵素標識抗体を一次抗体ハプテン複合体に加え、結合させた後に過剰な試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含む溶液を抗体−抗原−抗体の複合体に加える。基質を二次抗体に結合させた酵素と反応させ、定性的可視シグナルを得、これをさらに定量して(通常は分光光度計を用いる)、試料中に存在するハプテンの量の指標を得る。また、「レポーター分子」とは、細胞凝集または凝集阻害(例えば、ラテックスビーズ上の赤血球細胞)等を用いることも含む。
【0070】
あるいは、蛍光化合物(例えば、フルオレセインおよびローダミン)を、抗体に結合能力を変化させることなく化学的に連結させてもよい。特定波長の光を照射して活性化させると、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子内で励起状態を誘発し、光学顕微鏡を用いて可視的に検出することができる特徴的な色の光を発する。EIAの場合、蛍光標識した抗体を一次抗体−ハプテン複合体に結合させる。非結合型試薬を洗い流した後、残留した三次複合体を適当な波長の光に曝す。蛍光が観察されることにより、目的の分子が存在することが示される。免疫蛍光およびEIA技術はいずれも当該分野において非常に良く確立されているものであり、本発明の方法に特に好ましい。しかし、他のレポーター分子(例えば、放射性同位体、化学発光または生物発光分子)もまた、使用することができる。
【0071】
語句「発現産物」は、転写産物および/または翻訳産物を含む。従って、タンパク質が好ましい産物であるが、RNA型の転写物の活性も本発明の範囲から除外されるものではない。
【0072】
語句「前立腺特異的ポリペプチド」は広い意味で用いられ、前立腺細胞(前立腺癌を含む)の表面上、またはその近傍で発現され、非前立腺細胞の表面では実質的に発現されないポリペプチドを含む。このような場合、免疫反応は前立腺細胞を特異的に指向するものであり、他の被検体自身の細胞は指向しない。
【0073】
好ましい前立腺特異的ポリペプチドは、被検体内における他のポリペプチドに対する類似のレベルが低いポリペプチドである。この局面において、前立腺特異的ポリペプチドによっては決定されない交差反応性エピトープを発現する細胞よりも、好ましくは前立腺特異的ポリペプチドを発現する前立腺細胞を指向する免疫反応が提供される。
【0074】
さらなる明確化を目的として、前立腺特異的ポリペプチドは非前立腺細胞の表面上またはその近傍では実質的に発現されず、発現されるならば、前立腺細胞表面上またはその近傍で測定されるレベルが約10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.1%未満、さらにより好ましくは0.01%未満、またはより好ましくは0.001%未満である。
【0075】
特に好ましい態様において、本発明の前立腺特異的ポリペプチドは前立腺酸性フォスファターゼである。有利なことに、前立腺酸性フォスファターゼ (PAP) は前立腺細胞(前立腺癌細胞を含む)中で特異的に発現され、前立腺癌のマーカーとして広く用いられている。さらに、PAPは公知のタンパク質及びそれらをコードする核酸に対するアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の類似性のレベルが低い。また、PAPはアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の類似性のレベルが高い一連のホモログを有する。
【0076】
前立腺特異的ポリペプチドのホモログ、誘導体またはアナログ並びにそれらをコードするヌクレオチド配列もまた、明らかに予期される。通常、このような形態は、それらが由来する、またはそれらが基づく配列と比較して、本発明の機能は匹敵する、または向上していることを示す。
【0077】
本発明の目的のために、本発明の核酸配列の誘導体は本発明の利点を達成する機能的部分またはフラグメントであり得るか、または変異または改変を1箇所以上含みうる。変異はヌクレオチド欠失、挿入または置換を1箇所以上含む。変異はサイレント変異、保存的変異、ミスセンス変異またはフレームシフト変異でありうるが、ただし、そこから発現されるポリペプチドの抗原性機能は保持されているか、または向上している。好ましくは、誘導体は誘導体化前の分子または親分子に対して少なくとも50%の類似性を有し、好ましくは誘導体化前の分子または親分子に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の類似性を有する。配列比較は分子全体が好ましいが、その一部であっても良く、比較は少なくとも連続する約21ヌクレオチドで行うことが好ましい。前立腺特異的ポリペプチド(例えば、PAP、PSMAおよびPAP)のヌクレオチド配列はGenbankで公開されている。他の種由来のホモログは、周知のスクリーニング方法およびクローニング方法により容易に入手される。
【0078】
機能的誘導体は任意の経路により入手することができ、これは合成または組換えによるものであり得る。直接的ではあるが、手当たり次第の経路として、変異誘発法の後に試験するか、または発現させ、発現産物を試験する(例えば、抗ポリペプチド免疫反応を誘発する能力について試験する)ことを用いる。さらに、発現ペプチドのプロセシングおよび提示を向上させてそれらに対する免疫反応を増強すること等、他の有益な特性を有するように誘導体を改変しても良い。あるいは、またはさらに加えて、誘導体は、ポリペプチドまたはペプチドを野生型ポリペプチドを区別しうる修飾等のさらなる特徴を有しながら、機能を維持しうる。
【0079】
アナログは親分子の一部または変異型であるが、相似の機能を有する。アナログは組換え性でも合成性でも良く、免疫抑制性エピトープの排除等により、親分子よりも増強された機能を有することが好ましい。アナログは、発現タンパク質が前立腺特異的ポリペプチドの特定の免疫学的または生理学的特性を模倣するように設計されうる。
【0080】
前立腺特異的ポリペプチドのホモログとしては、アイソザイム、スプライス変異型、組織特異型および特定の型のポリペプチド種が挙げられる。種ホモログはまた、前立腺酸性フォスファターゼの異種形態とも呼ばれ、当然のことながら霊長類ホモログ、哺乳動物ホモログおよびげっ歯類ホモログを含む。「異種」とは、被検体の種本来のものと比較して異なる種由来の形態を使用することを意味する。それゆえ、ヒト被検体に関しては、異種前立腺特異的ポリペプチドは、ヒト由来ではない任意の形態である。好ましくは、ホモログは高いレベルでの配列または免疫学的類似性を示す。本発明のホモログの誘導体およびアナログもまた、本明細書中において意図されている。
【0081】
効果的なことに、種々のアルゴリズムが当該分野において利用可能であり、ペプチド配列およびそのホモログを分析して増強された機能を示す可能性を決定することができる。例えば、Parkerアルゴリズム (Parker, K.C. ら、Journal of Immunology 152:163-175, 1994)により、MHCクラスI型ペプチド結合モチーフの解離半減期を見積もる。
【0082】
核酸レベルでの類似性は当該分野で周知のように異なるハイブリダイゼーション条件を活用するアッセイで評価することができ、これは例えば、Ausubelら、2002に記載されている。好ましくは、本発明の誘導体核酸分子は前立腺特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の逆相補対に、42℃の低レベルのストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができ、より好ましくは中程度のレベルのストリンジェントな条件下、最も好ましくは高レベルのストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる。
【0083】
低レベルのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション用に少なくとも約0〜少なくとも約15% v/vホルムアルデヒドおよび少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含み、洗浄条件用に少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含む。通常、低レベルのストリンジェントな条件は、約25〜30℃から約42℃である。この温度は変更することができ、ホルムアミドを置き換えるため、及び/または別のストリンジェントな条件を与えるためにより高温を用いることができる。
【0084】
中程度のストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション用に少なくとも約16%〜少なくとも約30% v/vホルムアミドおよび少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩を含み、洗浄条件用に少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩を含む。高レベルのストリンジェンシーは、少なくとも約31% v/v〜少なくとも約50% v/vのホルムアミド、およびハイブリダイゼーション用に少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩を含み、洗浄条件用に少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩を含む。通常、洗浄はT=69.3+0.41(G+C)%で行う(Marmurら、J. Mol. Biol. 5:109, 1962)。しかし、二本鎖DNAのTは、ミスマッチ塩基対の数が1%増加する毎に1℃低下する(Bonnerら、Eur. J. Biochem. 46(1): 83-88, 1974)。これらのハイブリダイゼーション条件にはホルムアミドが適している。従って、特に好ましいレベルのストリンジェンシーを以下のように規定する:低いレベルのストリンジェンシーは、6×SSC緩衝液、0.1% w/v SDS、25〜42℃;中程度のストリンジェンシーは、2×SSC緩衝液、0.1% w/v SDS、温度範囲20℃〜65℃;高いレベルのストリンジェンシーは0.1×SSC緩衝液、0.1% w/v SDS、温度は低くとも65℃である。
【0085】
本明細書中で用いる用語「類似性」は、ヌクレオチドレベルまたはアミノ酸レベルでの比較配列間での正確な同一性を含む。ヌクレオチドレベルで同一性がない場合、「類似性」には、異なるアミノ酸を生じるが、それでも構造的、機能的、生化学的および/または立体配座レベルで互いに関連のある配列間の差異を含む。
【0086】
アミノ酸レベルで同一性がない場合、「類似性」とは、なおも構造的、機能的、生化学的および/または立体配座レベルで互いに関連のあるアミノ酸を含む。特に好ましい態様において、ヌクレオチドおよび配列比較は類似性よりも同一性のレベルで行われる。
【0087】
2以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間での配列関連性を記載するために用いる用語には、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列類似性」、「配列同一性」、「配列類似性割合」、「配列同一性割合」、「実質的に類似」および「実質的に同一」が挙げられる。「参照配列」は少なくとも12モノマー単位長(ヌクレオチドおよびアミノ酸残基長を含む)であるが、15〜18モノマー単位長であることが多く、少なくとも25以上(例えば、30モノマー単位長)であることも多い。2個のポリヌクレオチドは互いに、(1)2個のポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部のみ)、および(2)2個のポリヌクレオチド間で相違する配列を含むかもしれないので、2個(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、通常、「比較ウィンドウ」により2個のポリヌクレオチドの配列を比較して配列類似の部分領域を同定し、比較することにより行う。「比較ウィンドウ」とは、参照配列と比較する、通常は12個の連続残基のセグメント概念を意味する。比較ウィンドウは、2個の配列の最適なアラインメントのために参照配列(これは付加および欠失を含まない)と比較した場合に、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでも良い。比較ウィンドウを整列させるための最適な配列のアラインメントは、コンピューターによるアルゴリズムの実施により行ってもよいし(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USA のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または綿密な調査および選択した種々の方法のいずれかにより作製した最も良いアラインメント(すなわち、比較ウィンドウで最も高い相同性の割合を生じる)により行ってもよい。また、参照は、例えば、Altschulらにより開示されるBLASTファミリープログラムに対して行っても良い。配列分析の詳細な議論は、AusubelらのUnit 19.3に見出すことができる。
【0088】
本明細書中で用いる用語「配列類似性」および「配列同一性」は、比較ウィンドウにおいてヌクレオチド毎、またはアミノ酸毎で、配列が同一または機能的もしくは構造的に類似である程度を意味する。従って、「配列同一性割合」は、例えば、最適に整列させた2個の配列を比較ウィンドウで比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両方の配列中に見出される位置番号を決定して一致した位置数を得、比較ウィンドウ中の全位置数(すなわち、ウィンドウサイズ)で一致した位置数を割り、その結果に100をかけて配列同一性の割合を得ることにより計算する。本発明の目的において、「配列同一性」はDNASISコンピュータープログラム(windows用Version 2.5、Hitachi Software engineering Co., Ltd., South San Francisco, California, USAから入手)によりソフトウェアに添付のリファレンスマニュアルで用いらるように標準デフォルトを用いて計算した「一致割合」を意味すると理解される。同様の注釈は配列類似性に関しても適用される。
【0089】
本発明の1局面において、前立腺特異的ポリペプチドは被検体内における他の抗原性タンパク質に対して約70%以下のアミノ酸類似性を有する。より好ましくは、前立腺特異的ポリペプチドは60%以下、さらにより好ましくは、約50%以下のアミノ酸類似性を有する。
【0090】
従って、本発明の別の局面は、前立腺酸性フォスファターゼおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると被検体の細胞内で発現する、被検体に産生的には感染しないアビポックスベクターを含む、その発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を提供する。
【0091】
特定の実施態様において、前立腺酸性フォスファターゼの異種ホモログは、固有の前立腺酸性フォスファターゼホモログよりもHLA分子に対して結合親和性が高い可能性を示す好ましいホモログである。
【0092】
本発明の1局面において、本発明者らはラットPAP由来モチーフがヒトPAP由来モチーフよりもHLA分子に対して高い結合親和性を示すことを決定した。従って、幾つかの適用に関しては異種投与が提案される。ヒト被検体での特定の用途に好ましい異種形態の前立腺酸性フォスファターゼはラットPAPである。具体的な作用メカニズムまたは態様に拘束されることを意図するわけではないが、異種ホモログの使用は、自己免疫の克服を補助し、CD4+およびCD8+T細胞およびナチュラルキラー(NK)のような有効なイフェクター細胞を刺激する(illicit)ために提供される。通常、有効なT細胞は親和性が高く、および/またはアビディティーが高い免疫イフェクター細胞である。異種の、および固有の前立腺特異的ポリペプチドの組合せもまた意図される。
【0093】
本発明の別の局面は、前立腺酸性フォスファターゼの異種ホモログまたはそのさらなる誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると被検体の細胞内で発現する、生産的には被検体に感染しないポックスウィルスベクターを含む、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を提供する。
【0094】
語句「前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する」は、前立腺細胞(前立腺癌細胞を含む)の表面上またはその近傍で発現される前立腺特異的ポリペプチドの抗原性成分1種以上に対して、被検体体内で細胞性および/または体液性免疫反応を誘発する、増強する、あるいは刺激することへの言及を含む。好ましい態様において、免疫反応には免疫性前立腺炎を生じるのに充分な細胞性および体液性反応が挙げられ、これには被検体内の前立腺細胞(存在する場合には、前立腺癌細胞を含む)の数または増殖を阻害、溶解またはダウンレギュレーションする抗原特異的細胞傷害性細胞が挙げられる。さらにより好ましくは、免疫反応が選択的に前立腺細胞(存在する場合には、前立腺癌細胞を含む)へと向けられ、被検体内の他の細胞には向かわないことである。これまでに調査されているように、ワクチン中で自己抗原を充分に活用する際に、本発明者らは、基本的に前立腺に特異的であり、さらに被検体内における他のタンパク質とアミノ酸配列類似性またはヌクレオチド配列類似性のレベルが低いポリペプチドを選択した。
【0095】
インビトロおよびインビボアッセイを含む種々のアルゴリズムおよびアッセイを、本発明の範囲内にある特定の遺伝子ワクチン構築物の有効性および/または適合性を試験または予測するために利用することができる。特に、種々のヒトにおける前立腺癌の細胞モデルおよび動物モデル(霊長類、イヌおよびげっ歯類モデル)が利用可能である。
【0096】
さらに関連する実施態様において、前立腺細胞特異的免疫反応は、前立腺特異的ポリペプチドを免疫刺激性分子と共に同時発現することにより増強することができる。
【0097】
「増強(向上、増加)」により、本発明の組成物の投与により、被検体体内における前立腺関連疾患または前立腺関連状態の治療または予防に、本発明の組成物投与前に被検体体内に免疫反応がある場合はその反応よりも有効である、前立腺細胞特異的免疫反応を生じることを意味する。
【0098】
従って、本発明の別の局面は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列および免疫刺激性分子をコードするヌクレオチド配列および免疫刺激性分子をコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを含み、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を提供する。
【0099】
用語「免疫刺激性分子」は最も広い意味で用いられ、本明細書中、遺伝子ワクチン構築物に関して記載する場合、免疫系により産生された前立腺細胞特異的免疫反応を刺激または増強するポリペプチドまたはその機能的部分を含む。本明細書中に記載の特定の前立腺特異的ポリペプチドまたは特定のポックスウィルスベクターの場合、免疫刺激性分子は免疫性前立腺炎を産生するために必要とされうる。他の実施態様において、免疫刺激性分子は免疫反応を調節および/または増強する。
【0100】
好ましい免疫刺激性ポリペプチドとしては、サイトカイン、シャペロカイン(chaperokines)、ケモカイン、アクセサリー分子または接着分子(例えば、B7およびICAM)を含むポリペプチドの全てまたは機能的部分が挙げられる。免疫阻害分子をダウンレギュレートするポリペプチドもまた、本発明に含まれる。
【0101】
好ましい実施態様において、免疫刺激性分子はサイトカインである。本発明によると、サイトカインは1種以上の前立腺特異的ポリペプチドと共発現されることが予測される。抗原プロセシングの間、サイトカインは免疫反応を調節してその有効性を増加させる。好ましいサイトカインは、1種以上のIFNγ、IL-12、IL-2、TNFα、IL-4、IL-7、GM-CSFまたはIL-6である。さらにより好ましいサイトカインは、1種以上のIL-2、IFNγまたはIL-12である。特に好ましいサイトカインはIL-2である。
【0102】
IL-2は、本発明のベクターに対する免疫反応の増強能力があり、ならびに制御されている条件下ではヒトにおいて安全性が報告されているので、とりわけ好ましいサイトカインである。ヒト被検体の治療において、ヒト由来サイトカインが好ましい。
【0103】
従って、本発明のさらに別の局面は、異種前立腺酸性フォスファターゼをコードするヌクレオチド配列およびIL-2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると、その細胞内で発現する、被検体に生産的には感染しない鶏痘ウィルスベクターを含む、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を意図する。
【0104】
本発明のさらに別の局面は、ラット前立腺酸性フォスファターゼをコードするヌクレオチド配列およびIL-2 ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、鶏痘ウィルスベクターが被検体に生産的には感染しない鶏痘ウィルスベクターを含む、発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する遺伝子ワクチン構築物を意図する。
【0105】
本発明のさらに別の関連する局面は被検体内における前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する、または増強する方法を提供し、この方法は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると、前立腺細胞特異的免疫反応を刺激または増強するのに充分な時間及び条件下でその細胞内で発現する、被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物を含む組成物を有効な量で被検体に投与することを含む。
【0106】
遺伝子ワクチン構築物組成物の投与は、当該分野において周知のプロトコルを用いて最適化することができる。特に、用量及び頻度は、投与態様および被検体に関する種々のパラメータ(サイズ、先のワクチン暴露、前立腺癌の進行段階)に伴い変動する。組成物は、経口、静脈内、鼻内、筋肉内、腹腔内、皮下、皮内、粘膜または坐薬経路等のような、都合の良い経路により投与することができる。好ましい投与態様は、静脈内または筋肉内であるが、選択した経路は費用および用量形態の安定性等の因子に影響を受ける。
【0107】
「有効量」は、概して、少なくとも部分的には、所望の免疫反応を得るために必要なウィルス力価に対する参照を含む。当然のことながら、これは被検体の状態に応じて変動するので、前臨床および臨床研究の間に最適化される。
【0108】
種々のアジュバントを用いて本発明のワクチンの有効性を増強することができる。例としては、ミョウバン、レシチン、BCGおよびサポニン、ならびに樹状細胞のような細胞性アジュバントが挙げられる。
【0109】
ワクチン組成物は、他の分子と共に同時投与され得るか、または全体的なワクチン接種レジメの一部として投与され得る。例えば、本発明のワクチン構築物およびその発現産物は、種々の形式で抗原を免疫系に提示することにより免疫反応が増強される「プライム−ブースト」法でのプライムワクチン接種成分またはブーストワクチン接種成分の一部として投与され得る。
【0110】
本発明のさらに関連する別の局面は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、被検体に生産的には感染せず、その発現産物が前立腺癌の治療および/または予防に有効な前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するポックスウィルスベクターを含む組成物を有効量で投与することを含む、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防法を提供する。
【0111】
「免疫療法」という場合、前立腺癌の症状の緩解、または前立腺癌細胞の数及び増殖の低下、ならびに全体的な回復のための治療を含む。「免疫予防法」という場合、前立腺癌の発症または前立腺癌の症状の予防、ならびに前立腺癌の症状またはより重篤な症状の発症の可能性の低下が含まれる。被検体が前立腺癌進行のマーカーまたは前立腺癌に対する感受性のマーカーを示すと診断された場合、ポックスウィルスベクターは前立腺癌の診断前に投与される。
【0112】
医薬形態の組成物は、滅菌注射溶液または分散剤の即時調製用の滅菌水溶液及び滅菌散剤のような、注射用途に適しているかもしれない。
【0113】
組成物は、製造条件下および保存条件下にて安定でなければならず、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して保存的でなければならない。担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物および植物油などを含む媒体溶媒または分散媒であり得る。レシチン等のコーティングの使用などにより、適切な流動性を維持することができる。微生物活動からの保護は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等)によりもたらされる。多くの場合、糖または塩化ナトリウムなどの等張化剤を含有することが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収遅延剤を組成物中に用いることによりもたらされうる。
【0114】
滅菌注射溶液は、ウィルス粒子を必要量の適当な媒体中に、必要であれば上記列挙した種々の他の成分と共に組み込み調製する。滅菌性、タンパク質の混入、ウィルス濃度(pfu/ml)、ウィルス安定性、pHおよび充填体積に関してバッチを試験する。
【0115】
被検体、状態の重篤度ならびに提案されている投与経路および投与媒体に応じて、広範な用量を被検体に適用することができる。
【0116】
投与を簡便にし、用量を均一にするために、非経口組成物を用量単位形態(pfu/ml)で処方することが特に都合がよい。本明細書中で用いる用量単位形態は、治療する被検体にとっての単位用量として適している物理的に別個の単位を意味し、各単位は所望の治療効果または予防効果を生じるように計算されている活性物質を所定量で、製薬キャリアと共に含有する。本発明の新規投薬単位形態についての詳細は、(a)活性物質の独特な特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに(b)本明細書中に詳細に開示するように身体上の健康が損なわれている疾患状態を有する生体被検体の疾患治療用の活性物質の化合に特有の当該分野における制限により影響され、直接依存する。経腸的に生ワクチン製剤を配置する技術は当該分野において公知である。
【0117】
本発明のさらに関連する局面は、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防法のための医薬の製造における遺伝子ワクチン構築物の使用を意図し、この構築物は、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現し、被検体に生産的には感染せず、その発現産物が前立腺癌の治療または予防に有用な前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するポックスウィルスベクターを含む。
【0118】
本発明のなおさらなる関連する局面は、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防のための医薬の製造における遺伝子ワクチン構築物の使用を意図し、この構築物は前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列、および免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与するとその細胞内で発現する、被検体に生産的には感染せず、その発現産物が前立腺癌の治療または予防に有効な前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するポックスウィルスベクターを含む。
【0119】
本実施態様の関連する局面において、前立腺特異的ポリペプチドは、前立腺酸性フォスファターゼおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログである。
【0120】
本発明の実施態様に特に好ましい免疫刺激性分子は免疫刺激性サイトカイン(例えば、1種以上のIFNγ、IL-12、IL-2、TNFα、IL-4、IL-7、GM-CSFまたはIL-6などから選択されるサイトカイン)である。さらにより好ましいサイトカインは、1種以上のIL-2、IFNγまたはIL-12である。特に好ましいサイトカインはIL-2である。
【0121】
本発明はさらに、治療に用いるための、本明細書中に記載する遺伝子ワクチン構築物をさらに提供する。本発明は、前立腺癌の治療または予防用の医薬の製造においての、本明細書中に記載の遺伝子ワクチン構築物の使用をさらに提供する。
【0122】
以下の非限定的実施例により、本発明をさらに記載する。
【表1】

【実施例】
【0123】
実施例1
前立腺特異的ポリペプチドを含む遺伝子ベクターの構築
ヒトおよびラットのPAP核酸配列は公開されて利用可能であり、そのcDNAは当業者に周知の慣用的な方法を用いてクローニングし、配列決定することができる。細菌性組換えラットPAPおよびヒトPAPプラスミドベクターはDoug McNeel博士(Department of Medicine, division of Medical Oncology, University of Washington, Seattle, Washington 98195, USA)から提供して戴き、その生成物をELISAプレートのコーティングに用いた。組換えラットPAPおよびヒトPAPタンパク質はInsectSelect系の中で作製し、スケールアップした精製タンパク質産生を行った結果、ラットおよびヒト細胞性免疫学的アッセイの両方で用いることができた。
【0124】
シャトルベクター構築についての分子生物学的技術、Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」 Cold Spring Harbor Laboratory, 3rd Edition, 2001に記載の技術および組換えポックスウィルスを作製するための分子ウィルス学的技術を用いて、Boyle, D.B.ら、Gene 65(1):123-8, 1988; Coupar, B.E. et al., Gene 68(1): 1-10, 1988およびSmith G.L., Chapter 9, Expression of genes by vaccinia virus. In Molecular Virology, A Practical Approach. Ed. AJ Davison and RM Elliott. Practical Approach Series, IRL Press at Oxford University Press., 257-283, 1993に記載の方法を用いて、ヒトPAP(FPV.hPAP)およびラットPAP(FPV.rPAP)を発現する組換え鶏痘ウィルスを作製した。FPV.hPAPおよびFPV.rPAPの構築を、以下に簡単に概説する。
【0125】
i.PAP発現カセット
ヒトまたはラット起源のいずれかであるPAPタンパク質コード配列を動作可能に鶏痘ウィルス特異的プロモーター配列に連結した。この場合、プロモーター配列は鶏痘ウィルス特異的またはワクシニア特異的である必要はなく、他のアビポックス由来プロモーターを用いることができ、そして以下のクラスのいずれのものであってもよい:初期、後期または初期/後期(構成性)のプロモーター。感染中の有効な初期発現に好ましいエレメントは、ポックスウィルス初期転写停止配列であるモチーフ「TTTTTNT」の存在であり、ここでNは任意のヌクレオチド配列(例えば、AまたはTまたはGまたはC)であってよく、これはPAP翻訳停止コドンの3’下流側に配置されなければならない。このようなモチーフがPAP翻訳停止コドンのいくらか距離をあけた下流に偶然存在する場合、この初期転写停止モチーフの追加は必須ではない。PAPヌクレオチド配列の3’末端を標的とするPCRプライマー中にこのモチーフを含むプライマー組合せを用いて、RT-PCR増幅(RNAを鋳型として用いる)またはPCR増幅(cDNAを鋳型として用いる)によりこのモチーフを都合良くPAP配列に追加することができる。
【0126】
ii.PAP発現カセットの鶏痘ゲノムへの組み込みを助ける相同組換えベクター(いわゆるシャトルベクター)
上記工程(i)に記載の発現カセットを、「シャトルベクター」または「相同組換えベクター」と命名されているプラスミドベクターにクローニングして、以下に記載の構成を得た。
【0127】
クローニング目的で用いられる市販の標準細菌プラスミドベクターに、予めクローニングした鶏痘ゲノムDNA中に存在するヌクレオチド配列に相同である規定の長さの2つの短い鶏痘ヌクレオチド配列の間に、PAP発現カセットをクローニングした。これらの短い鶏痘ヌクレオチド配列は、隣接アーム(flank1およびflank2)の相同組換えアーム(左及び右)と称されることが多い。ここで重要となる特性は、発現カセットは2個の隣接アームの間(内側)に配置され、これらのアームの外側には配置されないことである。鶏痘ゲノム内におけるこれらのアームとそれらに相同な配列間での相同組換えの結果、鶏痘ゲノム内への発現カセットの挿入が助けられる。適当な挿入部位の例としては、TKコード領域、TKコード領域の3'およびORF7からORF9の領域(米国特許第5,180,675号)が挙げられる。
【0128】
シャトルベクターはまた、2個の相同組換えアームの外側に配置されている「レポーター」発現カセット(動作可能にポックスウィルス特異的プロモーターに連結されているβ−ガラクトシダーゼタンパク質コード配列)および「陽性選択」発現カセット(動作可能にポックスウィルス特異的プロモーターに連結されている大腸菌キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt))を含むものであった。この構成により、組換えウィルスの「トランス優性(transdominant)選択」が可能となる。
【0129】
iii.相同組換え
組織培養細胞の感染中に存在する鶏痘ウィルスゲノムDNAと、上記(ii)に記載のシャトルベクターの間での相同組換えにより、鶏痘ウィルスゲノムへのPAP発現カセットの挿入を行った。鶏胎仔由来細胞に鶏痘ウィルスを低い感染多重度(例えば、0.01感染単位/細胞)で感染させた。感染の1または2時間後、PAP発現カセットを含むシャトルベクターを、業者の取扱い説明書に従って市販のトランスフェクションキットを用いてこれらの感染細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション後、感染がコンフルエントに達した時点で細胞及び培地を回収した。機械的手段、または凍結及び融解の反復サイクル、または超音波処理のいずれかにより感染細胞からウィルスを放出させてウィルス抽出物を調製した。2個の相同組換え機構を調製した。1個はラットPAPを発現する組換え鶏痘ウィルスを作製するためのものであり、他方はヒトPAPを発現する組換え鶏痘ウィルスを作製するためのものである。
【0130】
iv.PAPを発現する組換え鶏痘ウィルスのクローン精製
組織培養培地中にXgalが存在した時点で「白色」プラークを観察することができなくなるまで、相同組換え工程由来のウィルス抽出物を鶏胎仔由来細胞中でのプラーク精製に複数回かけた。機能的Ecogptをゲノム中に挿入した組換えウィルスをポジティブに選択するために、感染中培養培地にミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチン(上記Smith G.L. 1993に記載)をも加えた。ミコフェノール酸は非組み換えウィルスの複製を阻害する。この選択手段は、相同アームのいずれか1つとウィルスゲノムとの間での1回の組換えによって、この選択条件下ではEcogptが複製しないウィルスとしてシャトルベクター全体をウィルスゲノムに組み込んでいるウィルスを選択する。
【0131】
次いで、Xgalの存在下で青色プラークを生じるウィルスクローンをミコフェノール酸選択無しで増幅し、隣接領域の挿入部位を標的とするPCRプライマーを用いるPCR分析により、非組み換えウィルス(空ベクター)の存在の有無について試験した。
【0132】
次いで、空ベクター混入についてネガティブであると評価した組換え鶏痘ウィルスクローンを、ミコフェノール酸、キサンチンおよびヒポキサンチンの非存在下でさらなる回数のプラーク精製にかけて、レポーターおよびポジティブ選択カセットの組換えウィルスからの欠失を生じる2次組換え事象を進めた。Xgalを培養培地に添加した後に白色プラークが得られたクローンを増幅し、空ベクター混入、レポーターおよびポジティブ選択カセットの除去、ならびにPAP発現の機能性について試験した。
【0133】
ヒトPAP(FPV.hPAP)をコードする組換え鶏痘ベクター(M3)をプラーク精製し、109pfu/mLの力価まで増幅する。ヒトPAP挿入物の存在をPCRにより確認する。野生型鶏痘ウィルスが混入していないこともPCRで確認する。ウェスタンブロット分析により、FPV.hPAPを感染した鶏胎仔皮膚(CES)細胞の上清中の分泌型PAPの存在を実証する。
【0134】
FPV.rPAP調製物を2回プラーク精製し、ラットPAP挿入物の存在についてPCRにより確認した。
【0135】
FPV.rPAPベクターを3回目および最後の回のプラーク精製にかける。次いで、プラーク精製したベクターを高力価になるまで増幅する。分泌型組換えラットPAPの発現をFPV.rPAP感染型CES細胞のウェスタンブロットによりアッセイする。野生型FPVの混入がないことをPCRにより確認する。FPV.rPAPまたはFPV.hPAPを用いてインビトロで感染させたヒト単球由来樹状細胞(moDC)のウェスタンブロット分析を行って、鶏痘誘導型トランスジーンがインビボでの発現に関し最も標的になる可能性がある細胞型で発現されていることを確認する。
【0136】
実施例2
免疫刺激性分子を共発現する遺伝子ベクターの構築
ヒトIL-2(hIL-2)cDNAをヒト末梢血リンパ球(PBL)からRT-PCRによりクローニングし、これをPMAおよびイオノマイシンにより24時間活性化させた。正確なDNA配列が存在することをDNA配列決定分析により確認した。
【0137】
鶏痘ウィルス特異的ヒトIL-2発現カセットのFPV.hPAPおよびFPV.rPAPへの挿入
ヒトIL-2 cDNAを鶏痘ウィルス特異的プロモーターに動作可能に連結した。鶏痘特異的プロモーターの代わりは、他のアビポックスウィルス特異的プロモーターのうちのワクシニア特異的プロモーターであり得る。このプロモーターおよびhIL2に、ポックスウィルス初期転写停止配列をIL-2翻訳停止コドンの下流に追加した。
【0138】
この発現カセットを、相同組換えアームが、PAPシャトルベクターが用いる領域とは異なる鶏痘ウィルスゲノムの領域に相同であることを除き、実施例1の工程ii)に記載するものと同じ構成および特徴で鶏痘シャトルベクターにクローニングした。
【0139】
相同組換えおよびウィルス選択を実施例1に記載するように行った。最終結果として2個の組換え鶏痘ウィルスが得られ、両方ともヒトIL-2を発現するが、1方はヒトPAP(FPV.hPAP/hIL-2)を発現し、他方はラットPAP(FPV.rPAP/hIL-2)を発現する。ELISAを用いて、これら2個のベクターのいずれかによる組織培養細胞の感染の際におけるヒトIL-2のインビトロ産生を測定した。
【0140】
実施例3
異種遺伝子ワクチンウィルス構築物のインビボ免疫原性
ウィルス構築物の免疫原性を適当な動物モデルで測定し、代表的実施態様においてFPV.rPAPおよびFPV.rPAP/hIL-2の免疫原性をマウスおよびウサギで決定する。
【0141】
抗ラットPAP抗体の検出については、ウサギを1×107pfuのFPV.rPAPまたはFPV.rPAP/hIL-2 IMIで免疫感作し、次いで、免疫感作の28日後にラットPAP特異的抗体に関する血清の直接ELISA用に採血した。ラットPAP特異的抗体が免疫感作28日後に検出されない場合は、次いで動物をFPV.rPAPで追加免役する。抗体産生およびELISAの両方についてのポジティブコントロールとして、ウサギをCFA中の組換えラットPAPを用いて免役感作し、21日目にIFA中の組換えラットPAPを用いて追加免疫する。追加免疫の14日後にELISA用に血液を採取し、血清を調製する。
【0142】
ラットPAPに対する細胞性反応の検出のために、マウスを1×107pfuのFPV.rPAPまたはFPV.rPAP/hIL-2 IMIで免疫感作する。免疫感作6日後および14日後に屠殺したマウスから採集した脾臓をそれぞれ用いて、細胞溶解性および増殖性細胞反応を測定する。ラットPAP特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の検出用に、IFNγの細胞内発現またはクロム遊離アッセイによる細胞傷害性機能のいずれかにより測定する。ナイロンウール精製した脾臓T細胞を、以下のいずれかの暴露した同系抗原提示細胞(APC)と共に6時間インキュベートする:ラットPAPでトランスフェクトしているEL-4細胞、またはネガティブコントロールとしてのEL-4細胞。CD8についての表面染色およびIFNγについての細胞内染色をフローサイトメトリーによりアッセイする。あるいは、精製脾臓T細胞を51Cr標識EL-4細胞形質転換体またはEL-4細胞と共に4時間インキュベートし、抗原特異的クロム遊離を測定する。ラットPAP特異的増殖反応の検出に関しては、脾臓T細胞をナイロンウールカラムで精製し、組換えラットPAPまたは鶏オボアルブミン(ネガティブコントロールとして)を負荷した照射型同系脾細胞と共に3日間インキュベートする。培養の最後の18時間は、トリチウム化チミジンを加え、その取込を抗原特異的増殖の指標として測定する。
【0143】
実施例4
遺伝子ワクチンウィルス構築物のインビトロ免疫原性
PAP5はヒトPAPのHLA-A2.1結合ペプチドエピトープであり、これはラットPAPにおけるものと同一である。Peshwaらは、PAP5特異的CTLをインビトロでどのように誘導することができるか、およびPAP5負荷T2細胞またはHLA-A2.1およびPAP前立腺癌細胞株であるLNCaPの両方を溶解する細胞株として増殖させることができるかを記載している。HLA-A2ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)培養物を得、これをPAP5ペプチドで刺激する。
【0144】
PAP5ペプチドに応答して増殖し続けるPBMC培養物をクローニングし、増殖させる。PAP5ペプチド特異性をIFNγ-ELISPOTアッセイにより試験する。クローンがポジティブである場合、PAP5負荷したT2細胞で増殖させる。PAP5特異的CTLの細胞溶解活性をLNCaP細胞を標的として用いるクロム遊離アッセイで試験する。FPV誘導型ラットPAPの適切な抗原プロセシングおよび提示をPAP5特異的CTLを用いてアッセイする。HLA-A2.1ドナー由来のMoDCをrFPV.rPAPで感染させ、抗原特異的反応性をIFNγ-ELISPOTアッセイにより測定する。
【0145】
実施例5
ラットモデルにおける異種免疫化(Xenoimmunization)
各実験群は5匹の8週齢雄性コペンハーゲンラットを含む。組換えウィルスベクターを2×10pfuで用いてラットを静脈内(IV)または筋肉内(IM)で免疫感作する。4週間後、ラットを屠殺し組織を回収する。抗PAP抗体の存在について直接ELISAにより血清を分析する。自己免疫性前立腺炎の証拠について前立腺を組織学的に試験する。単一細胞懸濁液を脾細胞から、Fongらによる研究に記載されているように、インビトロ復帰増殖(recall proliferation)アッセイおよび細胞傷害性アッセイ用に調製する。本発明者らは、Fong博士から、コペンハーゲンラットと同系の、それぞれ、PAPネガティブおよびPAPポジティブであるAT-1細胞およびAT-3細胞を入手した。
【0146】
自己免疫性前立腺炎の誘発用ポジティブコントロールとして、ラットをヒトPAP(rVV.hPAP)を発現する組換えワクシニアベクター(rVV)で免疫感作する。野生型ウィルスおよびラットPAPをコードする組換えウィルスをネガティブコントロールとして用いる。ウィルスベクターは、(i)Dendreon Corp. (Seattle, WA, USA)(Fongらにより公開)、(ii)Doug McNeel博士(未公開)から入手可能である。
【0147】
(rFPV.hPAP)をコードする組換え鶏痘ウィルスベクターを、抗PAP免疫反応および自己免疫性前立腺炎を誘発する能力について試験する。
【0148】
ヒトPAPおよびヒトIL-2(rFPV.rPAP/hIL-2)を共発現する組換え鶏痘ウィルスベクターもまた試験する。
【0149】
また、鶏痘ウィルスベクターを用いて追加免役する3週間前に、ラットをヒトPAP(pcDNA3.1-hPAP)をコードするプラスミドDNAを100μgで用いてIMでプライミングしても良い。追加免疫の約4週間後に分析を行う。
【0150】
実施例6
ラットPAPおよびIL-2を含有するVIR501ならびにヒトPAPおよびIL-2を含有するVIR502
さらなる組換えFPVベクターを以下のように構築し、試験した。具体的には、ラットPAPおよびヒトIL-2を含むVIR501ならびにヒトPAPおよびヒトIL-2を含むVIR502を、組込みベクターが別個のプロモータの制御下にある挿入物両方を含むことを除き、基本的には先に記載したとおりに組換え鶏痘M3中に作製した。図9は、FPVチミジンキナーゼ遺伝子に対するFPVへの挿入を示す。PAPおよびIL-2に対するカセットを含む組込ベクターを、ワクシニアウィルスp7.5(ヒトIL-2)および家禽ポックスウィルス初期後期プロモーターの制御下での発現があるように構築した(ラットPAPおよびヒトPAP)。組込ベクターのプラスミドマップを図10および11に記載する。VIR501およびVIR502に対する挿入部位のヌクレオチド配列を、図5および6、ならびに配列番号1、2、3および4に記載する。ベクターによりコードされるラットおよびヒトPAPのアミノ酸配列を配列番号5および6に記載し、図7に整列させる。両方のベクターによりコードされるヒトIL-2のアミノ酸配列を、図5および6、ならびに配列番号7に記載する。
【0151】
実施例7
VIR501およびVIR502はIL-2を発現する。
ヒトIL-2を発現する能力について、ELISAによりベクターを試験した。プラーク精製3回後、クローンをCEF細胞中で増幅した。感染後、ヒトIL-2 ELISAキットを用いてIL-2の存在について培養培地を試験した。ウェル中の色の視覚的変化が試験ウェル中のIL-2の存在を示している結果を図2に示す。
【0152】
実施例8
VIR501またはVIR502で感染させたTK143B細胞はPAPを発現する。
チミジンキナーゼ(TK)欠損ヒト骨肉腫細胞株143Bを1×10細胞で、10%FCSを加えた完全DMEMを入れたフラスコ(25cm)中で一晩プレーティングした。感染多重度(MOI)が10のFPVベクターを用いて、加湿インキュベーター(37℃)中、大気中5%CO2で48時間、細胞を感染させた。感染に用いたベクターは、VIR501(ラットPAPおよびヒトIL-2をコードするFPV)、VIR502(ヒトPAPおよびヒトIL-2をコードするFPV)、ネガティブコントロールとしてインフルエンザ赤血球凝集素をコードするFPV(FPV-HA)であった。感染後48時間および72時間目に、感染細胞を回収し、溶解緩衝液(0.15M NaCl、5mM EDTA、1% Triton X100、10mM Tris、pH 8、5mM DTTおよび100μM PMSF)を用いて溶解させた。12000gで15分間、4℃で遠心分離した後に清澄な溶解液を回収した。サンプルをサンプル緩衝液中で煮沸し、12% SDS-PAGEで分離した。ブロットをPVDFメンブレン(Amersham Pharmacia Biotech, Buckinghamshire, England)に移し、PBS中2%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて室温で1時間ブロックした。ブロッキング緩衝液を捨てた後、メンブレンをブロッキング緩衝液中に1:500で希釈したポリクローナルウサギ抗ヒトPAP(Signet Pathology System, MA, USA)を用いて4℃で一晩プロービングした。PBS中0.05%Tween-20を用いて洗浄した後、アルカリフォスファターゼに結合したヤギ抗ウサギ抗体のF(ab’)フラグメント(Jackson Immunoresearch, PA, USA)を1:2000の希釈で適用し、室温で1時間インキュベートした。タンパク質バンドをECL基質(Amersham Pharmacia Biotech, Buckinghamshire,England)を用いて検出し、蛍光産物をMolecular Dynamics FluorImagerを用いてスキャンした。
【0153】
ウェスタンブロッティング(図3を参照)により、VIR502 (FPV.hPAP)感染ヒト細胞株からのヒトPAPの発現を示す。検出用に用いるポリクローナル抗ヒトPAP抗体は、ラットPAP(レーン6)とは交差反応しない。しかし、実施例9に記載のVIR501で免役したヒツジの特異的反応により、VIR501がうまくラットPAPを発現することが示される。
【0154】
実施例9
ヒトPAPを発現するFPVベクターの免疫原性
細菌性組換えタンパク質であるpQE-hPAPまたはpQE-rPAP、あるいは昆虫細胞由来ヒトおよびラットPAP組換えタンパク質(InsectSelectTM発現系(Invitrogen, CA, USA)を用いてSf21ショウジョウバエ細胞株の安定な形質転換により産生)を0.03M重炭酸緩衝液(pH9.6)中で濃度5μg/mLに希釈し、Maxisorpマイクロタイタープレート(Nunc, Roskilde, Denmark)を4℃で一晩コーティングするために用いた。各々の場合において、組換えタンパク質を6×ヒスチジンでタグ化し、ニッケル親和性カラムで精製した。プレートをPBS中2%BSAを用いて37℃で1時間ブロックするか(図4)、またはPBS-アジド中5%正常ウマ血清を用いて37℃で1時間ブロッキングし(図8)、次いで、ブロッキング緩衝液中系列希釈したウサギ血清と共に37℃で2時間インキュベートするか(図4)、またはブロッキング緩衝液中系列希釈したヒツジ血清と共に37℃で3時間インキュベートする(図8)。PBS中0.05%tween-20を用いて洗浄した後、ヤギ抗ウサギIgG [F(ab')](図4)またはロバ抗ヒツジIgG [F(ab')](図8)のいずれかのアルカリフォスファターゼ結合体の1:2500希釈を添加し、さらに2時間インキュベートした。結合型抗体をp-ニトロフェニルフォスフェート基質の加水分解により検出し、発色をOD 405nmで測定した。
【0155】
ELISAデータ(図4を参照)により、VIR502での免疫感作の後にのみ、主にヒトPAPに対する雄性ウサギの体液性免疫反応が示されている。げっ歯類なので、おそらく、雄性ウサギは、VIR501によりコードされるラットPAP(これはヒトPAPよりも密接に関連している)に寛容性である。図8には、雄性去勢ヒツジをVIR501またはVIR502で免疫感作した場合、寛容性が破壊されることが示されている。VIR501(ラットPAP、ヒトIL-2)で免疫感作したヒツジはヒトPAPおよびラットPAPに応答し、この応答は、血清を昆虫細胞中で作製した組換えタンパク質に対して試験すると検出可能な程度に増強されていた。評価した時間経過にわたり、VIR502(ヒトPAP、ヒトIL-2)で免疫感作したヒツジは、VIR501(ラットPAP、ヒトIL-2)で免疫感作したヒツジにより示されるヒトPAPまたはラットPAPに対する反応ほど強くは反応を生じなかった。これらのデータはウサギでのデータを補完し、雄性ヒツジはラットPAPよりもヒトPAPに対して寛容であるかもしれないことを示す。PAPは前立腺特異的であるので、前立腺特異的免疫反応はVIR501またはVIR502での異種免疫化の後に実証された。
【0156】
ELISpotデータにより、VIR501に対するインビトロでのヒト細胞性免疫反応を確認する。ヒトHLA-A2.1ヒト単球由来樹状細胞 (MoDC) を、GM-CSFおよびIL-4において標準的な方法により製造した。MoDCをリポ多糖類を用いて24時間成熟させた後、感染多重度(MOI) 10のVIR501を用いて5日間感染させた。同一ドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC) をVIR501感染MoDCと7日間、共に培養し、次いでFicoll精製した18時間後、ペプチド+HLA-A2.1を発現するマウスT2細胞、またはワクシニアウィルス感染HLA-A2.1PBMCのいずれかを抗原提示細胞(APC)として用いるインターフェロン-γ(IFNγ) ELISpotアッセイを行った。コントロールAPC (APC無し自己PBMC、ペプチド無しT2細胞、HTLV-1由来の無関係なHLA-A2結合ペプチドでパルスしたT2細胞)と比較して、ラットおよびヒトPAPの間で同一であるHLA-A2.1-制限型PAP5ペプチド(Peshwaら、Prostate 129-138, 1998)を用いてパルスしたT2細胞は、IFNγスポット形成細胞(SFC)の数の4倍増加が誘発された。さらに、コントロールAPC(野生型ワクシニアで感染させたPBMC)と比較して、ラットまたはヒトPAPを発現するワクシニアを感染させたPBMCは、IFNγSFCの数の約3倍の増加が誘発された。これらのデータは、VIR501感染後は、ヒトAPCが正確に処理され、内在的に発現されたPAPタンパク質を自己T細胞に提示するという考えを支持するものである。
【0157】
参考文献一覧
Albert, M. L. ら、Nature Medicine 4:1321-1324, 1998.
Altschul ら、Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402, 1997.
Ausubel ら、"Current Protocols in Molecular Biology", 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., 2002.
Bonner ら、Eur. J. Biochem. 46(1): 83-88, 1974.
Boyle, D.B., ら、Gene 65(1):123-8, 1988.
Coupar, B.E. ら、Gene 68(1): 1-10, 1988.
Cox, W. ら、Virology 195:845-850, 1993.
Estcourt, M.J. ら、International Immunology 14(1):31-7, 2002.
Fong, L. ら、Journal of Immunology 159:3113-3117, 1997.
Fong, L. ら、J Immunol 167:7150-7156, 2001.
Kita, M. ら、Endocrinology 140:1392-1398, 1991.
Lee, P.P. ら、Nature Medicine 5(6):-677-685, 1999.
Lodge, P.A. ら、Cancer Research 60:829-833, 2000.
Logothetis, C.J. ら、Semin. Oncol. 21:620, 1994.
McNeel D.G. ら、J. Urinol. 164(5):1825-1839, 2000.
McNeel D.G. ら、Cancer Research 61:5161-5167, 2001.
Marmur ら、J. Mol. Biol. 5:109, 1962.
Murphy et al, Prostate 38:73-78, 1999(a).
Murphy, G.P. ら、Prostate 39:54-59, 1999(b).
Parker, K.C. ら、Journal of Immunology 152:163-175, 1994.
Perkus, M.E. ら、Virology 179:276-28, 1990.
Peshwa, M.V. ら、Prostate 36:129-138, 1998.
Rosenberg, S.A. ら、J Am Med Assoc 271:903, 1994.
Rosenberg, S.A. ら、Immunity 10:281-287, 1999.
Sambrook et al. "Molecular Cloning: A Laboratory Manual" Cold Spring Harbor Laboratory, 3rd Edition, 2001.
Santen R.J., J Clin. Endocrinal. Metab. 75:685-689, 1992.
Smith G.L., Chapter 9, Expression of genes by vaccinia virus. In Molecular Virology, A Practical Approach. Ed. AJ Davison and RM Elliott. Practical Approach Series, IRL Press at Oxford University Press., 257-283, 1993.
Somogyi P. ら、Virology 197:439-444, 1993.
Taylor, J. ら、Vaccine 6:497-503, 1988.
Thenot, S. ら、Mol. Cell Endocrinol. 156:85-93, 1999.
【0158】
本明細書中に開示される発明が具体的に記載されている態様以外に変更および改変されうることを当業者は理解する。本発明がこのような変更および改変を含むことが理解されるべきである。また、本発明は本明細書中に言及または記載した全ての工程、特徴、構成を、個別またはまとめて含み、これらの工程または特徴のいずれか、またはそれらの2以上の組合せを含む。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】電気泳動により分離したPCR-フラグメントを示す写真である。VIR501およびVIR502をPCRにかけ、遺伝子挿入の正確さについて試験した。PCR増幅はVIR501へのヒトIL-2およびラットPAP挿入、ならびにVIR502へのヒトIL-2およびヒトPAP挿入の検出のために、ヒトPAP、ラットPAPおよびヒトIL-2特異的プライマーを用いる。ネガティブコントロール実験はDNA鋳型の代わりに水を用いて行った。
【図2】VIR501およびVIR502によるヒトIL-2の分泌についての試験結果を示す、ELISAウェルの写真である。3回のプラーク精製の後、CEF細胞を感染させることにより、多数のプラーククローンを増幅させた。感染後、培養培地から試料を少量採取し、ヒトIL-2の存在についてヒトIL-2-ELISAキットを用いて試験した。目に見える色の変化は、試験試料中のIL-2の存在を示している。
【図3】ヒトPAPのFPV介在発現を示すウェスタンブロットを示す写真である。TK-143B細胞にFPV ベクターをMOI 10で感染させ、感染後(p.i.)48時間目、および72時間目にイムノブロット分析を行うために細胞を回収した。FPV-HAをネガティブベクターコントロールとして用いた。抗ヒトPAPポリクローナル抗体の交差反応性の欠損は、組換えラットPAPに対するバンドが存在しないことにより確認した。検出方法におけるネガティブコントロールとしては、二次抗体単独でのイムノブロットのプロービングを用いた。1, FPV-HA;2, VIR501 (感染後48時間目);3, VIR502(感染後48時間目);4, VIR501(感染後72時間目);5, VIR502(感染後72時間目);6, 細菌組換えラットPAP(pQE系);7, 分子量マーカー;8, FPV-HA; 9, VIR501(感染後48時間目);10, VIR502(感染後48時間目)。49.1kDaのマーカーを特定のヒトPAPバンドの位置と共に示す。
【図4】ヒトPAPを発現するFPVの免疫原性を示すELISAの結果を図示する。NZホワイトラビット3匹を、空ベクターコントロール、FPV-M3またはVIR501(ラットPAPおよびヒトIL-2をコードするFPV)またはVIR502(ヒトPAPおよびヒトIL-2をコードするFPV)を各々2×108プラーク形成単位(PFU)で筋肉内注射して免疫感作した。プライミング免疫感作の3週間後に同じスケジュールに従って動物を追加免役した。追加免疫の二週間後、動物から再度採血した。免疫血清の反応性を、pQE系中で作製した細菌組換えタンパク質に対して試験した。A.ヒトPAP、またはB.ラットPAP。以下の希釈曲線を示す:免疫前血清(薄灰色の点線);プライミング免疫感作3週間後の免疫後血清(中程度の灰色の線、黒三角);追加免疫感作2週間後の免疫後血清(黒の太線、黒ひし形)。ネガティブコントロールには、無関係のpQE由来タンパク質、ヒトLa/SS-B自己抗原またはブドウ球菌外毒素B(SEB)でコーティングしたプレートを含み、これらに関しては0.1未満のOD値(405nm)を得た(データは示さず)。
【図5】ヒトIL-2およびラットPAP配列を含むVIR501の挿入部位のヌクレオチド配列を示す。
【図6】ヒトIL-2およびヒトPAP配列を含むVIR502の挿入部位のヌクレオチド配列を示す。
【図7】VIR501由来ラットPAPとVIR502由来ヒトPAPのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図8】ラットPAPを発現するFPVの免疫原性を示すELISAを図示する。去勢動物(去勢雄ヒツジ)2匹に、2×108プラーク形成単位(PFU)のVIR501(ラットPAPおよびヒトIL-2をコードするFPV)[上方パネル]または3×10PFUのVIR502(ヒトPAPおよびヒトIL-2をコードするFPV)[下方パネル]のいずれかにより筋肉内注射により免疫感作した。免疫感作の4週間後、ELISA用に血清を回収した。免疫血清の反応性は、pQE細菌発現系(A.ヒトPAP、B.ラットPAP)またはInsectSelect発現系(C.ラットPAP(上方パネル)またはヒトPAP(下方パネル))中のいずれかで作製した組換えタンパク質に対して試験した。免疫前血清(薄灰色点線)およびプライミング免疫感作の4週間後の免疫後血清(中程度の濃さの灰色の線、黒三角)についての希釈曲線を示す。
【図9】ヒトIL-2およびPAP配列の単独での挿入が鶏痘ウィルスゲノムに位置するVIR501およびVIR502について示す模式図である。VIR501およびVIR502を構築するために用いる鶏痘ウィルスゲノムは未だに配列決定されていないので、鶏痘ウィルスGenbank配列(AF198100)を、チミジンキナーゼ(FPV086R)ORFに対する挿入部位の位置に対する参照として用いた。
【図10】VIR501を構築するために用いたプラスミド組込ベクターpVHL04のマップを示す模式図である。
【図11】VIR502を構築するために用いたプラスミド組込ベクターpVHL05のマップを示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺特異的ポリペプチドおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組込み、被検体に投与すると被検体細胞中でそれらを発現し、該被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物。
【請求項2】
前立腺特異的ポリペプチドおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列ならびに免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組込み、被検体に投与すると被検体細胞中でそれらを発現し、該被検体に生産的には感染しないポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物。
【請求項3】
前立腺特異的ポリペプチドが前立腺酸性フォスファターゼおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログである、請求項1または2に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項4】
ホモログが異種ホモログである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項5】
被検体がヒト被検体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項6】
異種ホモログがげっ歯類前立腺酸性フォスファターゼである、請求項4または5に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項7】
げっ歯類前立腺酸性フォスファターゼがラット前立腺酸性フォスファターゼである、請求項6に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項8】
免疫刺激性ポリペプチドがサイトカインである、請求項2に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項9】
サイトカインがIL-2、IL-12、TNFα、IFNγ、IL-6、IL-4、IL-7またはGM-CSFのいずれか1以上である、請求項8に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項10】
サイトカインがIL-2、IFNγまたはIL-12のいずれか1以上である、請求項9に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項11】
サイトカインがIL-2である、請求項10に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項12】
ポックスウィルスベクターが鶏痘ウィルスベクターである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物を含む組成物。
【請求項14】
基本的に、請求項1〜12のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物からなる、組成物。
【請求項15】
遺伝子ワクチン構築物の発現産物が前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
前立腺細胞特異的免疫反応がPAP特異的免疫反応である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
遺伝子ワクチン構築物の発現産物が自己免疫性前立腺炎を刺激する、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物を製造する際に用いる、以下を含有する組換えベクター:
i)ポックスウィルスベクターとの相同組換え用部位を含むポックスウィルスベクター核酸配列、
ii)プロモーター1種以上、
iii)前立腺特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【請求項19】
請求項2〜12のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物を製造する際に用いる、以下を含有する組換えベクター:
i)ポックスウィルスベクターとの相同組換え用部位を含むポックスウィルスベクター核酸配列、
ii)プロモーター1種以上、
iii)前立腺特異的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、および
iv)免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物を感染させた真核細胞。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の遺伝子ワクチン構築物の発現産物中に独自に形成されるエピトープを認識する、該遺伝子ワクチン構築物に対するマーカーとして作用しうる抗体。
【請求項22】
適当なハイブリダイゼーション条件下で遺伝子ワクチン構築物を特異的に認識する、請求項1〜12のいずれ1項に記載の遺伝子ワクチン構築物の全ヌクレオチドまたはその一部のヌクレオチドの連続配列の相補形態を含有する核酸プローブ。
【請求項23】
被検体における前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する、または増強する方法であって、前立腺特異的ポリペプチドおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると、その細胞中において、遺伝子ワクチン構築物の発現産物に充分な条件下で一時的にそれらを発現して前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するまたは増強する、被検体に産生的には感染しないポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物を含有する組成物を有効量で被検体に投与する工程を含む方法。
【請求項24】
被検体における前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する、または増強する方法であって、前立腺特異的ポリペプチドおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列と、免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると、その細胞中において、遺伝子ワクチン構築物の発現産物に充分な条件下で一時的にそれらを発現して前立腺細胞特異的免疫反応を刺激または増強し、被検体に産生的には感染しないポックスウィルスベクターと免疫刺激性ポリペプチドとを含む遺伝子ワクチン構築物を含有する組成物を有効量で被検体に投与する工程を含む方法。
【請求項25】
前立腺特異的ポリペプチドおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると、その細胞内で発現する、被検体に生産的には感染せず、その発現産物が前立腺癌の治療および/または予防に有効な前立腺細胞特異的免疫反応を刺激する、ポックスウィルスベクターを含む遺伝子ワクチン構築物を含有する組成物を有効量で投与することを含む、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防法のための方法。
【請求項26】
前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防法のための方法であって、前立腺特異的ポリペプチドまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログをコードするヌクレオチド配列と、免疫刺激性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み込み、被検体に投与すると、その細胞中でそれらを発現する、被検体に産生的には感染せず、その発現産物が前立腺癌の治療および/または予防に有効な前立腺細胞特異的免疫反応を刺激するポックスウィルスベクターを含有する遺伝子ワクチン構築物を含む組成物を有効量で投与することを含む、前立腺癌の免疫療法および/または免疫予防法のための方法。
【請求項27】
前立腺特異的ポリペプチドが前立腺酸性フォスファターゼおよび/またはそのホモログ、誘導体もしくはアナログであり、前立腺細胞特異的免疫反応がPAP特異的反応である、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ホモログが異種ホモログである、請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
被検体がヒトである、請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
異種ホモログがげっ歯類前立腺酸性フォスファターゼである、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
げっ歯類前立腺酸性フォスファターゼがラット前立腺酸性フォスファターゼである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
免疫刺激性ポリペプチドがサイトカインである、請求項24または26に記載の方法。
【請求項33】
サイトカインがサイトカインIL-2、IL-12、TNFα、IFNγ、IL-6、IL-4、IL-7またはGM-CSFのうちの1以上である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
サイトカインがサイトカインIL-2、IFNγおよび/またはIL-12の1以上である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
サイトカインがIL-2である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ポックスウィルスベクターが鶏痘ウィルスベクターである、請求項23〜35のいずれか1項に記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図5−3】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2007−502602(P2007−502602A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523492(P2006−523492)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001129
【国際公開番号】WO2005/019464
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(504210662)バイラックス・ディベロップメント・プロプライエタリー・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】VIRAX DEVELOPMENT PTY LTD
【Fターム(参考)】