説明

剥離シートおよび粘着体

【課題】 粘着シートから剥離する際の剥離不良を防止し、優れた剥離性を有する剥離シートおよび粘着体を提供すること。
【解決手段】 粘着体100(本発明の粘着体)は、図1に示すように、剥離剤層11と基材(剥離シート基材)12と、下地層13とで構成された剥離シート1に、粘着剤層21と粘着シート基材22とで構成された粘着シート2が、貼着された構成となっており、かかる粘着体100では、剥離剤層11に粘着剤層21が接している。下地層13は、アミノ樹脂を含む材料で構成されている。剥離剤層は、主としてシリコーン樹脂で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シートおよび粘着体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、粘着製品の粘着剤保護のために、プラスチックフィルム等の基材に、剥離剤層が設けられた剥離シートが用いられている。
この剥離剤層の構成材料としては、一般に、シリコーン樹脂が用いられる。
【0003】
しかし、シリコーン樹脂で構成された剥離剤層は、樹脂で構成された基材との密着性が悪く、剥離シートを粘着面から剥離する際に、剥離剤層と基材との間で不本意な剥離が生じてしまう場合があった。
【0004】
このような問題を解決するため、基材と剥離剤層との間に、下地層を設けて、基材と剥離剤層との間の密着性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、従来の下地層では、基材と剥離剤層との間の密着性を十分に向上させることができなかった。また、特に、特許文献1に記載の下地層では、剥離剤層を形成した際、すなわち、シリコーン樹脂を含む溶剤を塗工した際に、下地層の構成成分が溶剤に溶解してしまい、形成された剥離剤層は、下地層の構成成分を含むものとなってしまう。その結果、剥離性能が低下してしまうといった問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−186247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、粘着シートから剥離する際の剥離不良を防止し、優れた剥離性を有する剥離シートおよび粘着体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1) 主として樹脂材料で構成された基材と、主としてシリコーン樹脂で構成された剥離剤層とを有する剥離シートであって、
前記剥離剤層は、少なくともアミノ樹脂を含む下地層を介して前記基材上に設けられていることを特徴とする剥離シート。
【0009】
(2) 前記下地層中のアミノ樹脂の含有量は、10wt%以上である上記(1)に記載の剥離シート。
【0010】
(3) 前記下地層は、アミノ樹脂を、硬化触媒を用いて硬化させることにより形成されたものである上記(1)または(2)に記載の剥離シート。
【0011】
(4) 前記アミノ樹脂100重量部に対して、前記硬化触媒を0.01〜5.0重量部添加する上記(3)に記載の剥離シート。
【0012】
(5) 前記下地層は、アルキド樹脂を含む上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の剥離シート。
【0013】
(6) 前記下地層中の前記アルキド樹脂の含有量は、90wt%以下である上記(5)に記載の剥離シート。
【0014】
(7) 前記下地層中の前記アミノ樹脂の含有量をA[wt%]、前記アルキド樹脂の含有量をB[wt%]としたとき、A/B≧1/9の関係を満足する上記(5)または(6)に記載の剥離シート。
【0015】
(8) 前記下地層の平均厚さは、0.01〜10μmである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の剥離シート。
【0016】
(9) 前記剥離剤層を構成するシリコーン樹脂は、分子内に、フェニル基を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の剥離シート。
【0017】
(10) 前記剥離剤層の平均厚さは、0.01〜10μmである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の剥離シート。
【0018】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の剥離シートと、粘着剤層を有する粘着シートとを有することを特徴とする粘着体。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、粘着シートから剥離する際の剥離不良を防止し、優れた剥離性を有する剥離シートおよび粘着体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の粘着体を示す縦断面図、図2は、本発明の剥離シートを示す縦断面図、図3は、本発明の剥離シートをロール状に巻き取った状態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0021】
粘着体100(本発明の粘着体)は、図1に示すように、剥離剤層11と基材(剥離シート基材)12と下地層13とで構成された剥離シート1に、粘着剤層21と粘着シート基材22とで構成された粘着シート2が、貼着された構成となっており、かかる粘着体100では、剥離剤層11に粘着剤層21が接している。
【0022】
粘着体100では、粘着シート2が剥離シート1から剥離可能であり、剥離後、粘着シート2は、被着体に貼着される。
【0023】
以下、本発明の剥離シートについて説明する。
剥離シート1は、図2に示すように、基材12上に、下地層13を介して剥離剤層11が形成された構成となっている。
【0024】
基材12は、主として合成樹脂材料で構成され、剥離剤層を支持する機能を有している。
【0025】
基材12を構成する合成樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等のプラスチック等を用いることができる。
【0026】
中でも、基材12を構成する材料として、ポリエステル樹脂を用いた場合、耐久性に優れ、また、種々の厚さやグレードのものが入手可能であるが、ポリエステル樹脂で構成された基材は、従来の剥離剤層や下地層との密着性が特に劣るという問題があった。しかしながら、本発明によると、基材を構成する材料としてポリエステル樹脂を用いた場合であっても、後述する下地層13を用いることによって、剥離剤層11と基材12との間の密着性を十分高いものとすることができる。
【0027】
基材12の平均厚さは、特に限定されないが、5〜300μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。
【0028】
剥離剤層11は、主としてシリコーン樹脂で構成されている。
シリコーン樹脂は、剥離剤層11の材料として用いた場合、優れた剥離性を発揮する。
【0029】
シリコーン樹脂としては、付加型、縮合型、紫外線硬化型、電子線硬化型、無溶剤型等いずれのものでも用いることができる。
【0030】
中でも、特に、シリコーン樹脂として、分子内にフェニル基を有するものを用いた場合、後述する下地層との密着性をより向上させることができる。
【0031】
剥離剤層11の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10μmであるのが好ましく、0.03〜0.3μmであるのがより好ましい。剥離剤層11の平均厚さが前記下限値未満であると、剥離剤層としての機能が十分に発揮されない場合がある。一方、剥離剤層11の平均厚さが前記上限値を超えると、図3に示すように、剥離シート1をロール状に巻き取ったときに、剥離剤層11の表面11aと剥離シート背面12aとが接し、両者がブロッキングし易くなり、剥離剤層11の剥離性能がこのブロッキングにより、低下する場合がある。
【0032】
なお、剥離剤層は、他の樹脂成分や、可塑剤、安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
下地層13は、少なくともアミノ樹脂を含む材料で構成されている。
【0033】
本発明では、このように、少なくともアミノ樹脂を含む材料で構成された下地層を用いる点に特徴を有している。
【0034】
このように、下地層を構成する材料としてアミノ樹脂を含むものを用いることにより、剥離剤層と下地層との密着性を向上させることができる。特に、シリコーン樹脂としてフェニル基を有するものを用い、アミノ樹脂として芳香環を有するものを用いた場合、それぞれの樹脂の芳香環のπ電子同士が重なりあって、静電気的な力が働く。その結果、剥離剤層と下地層との密着性をより高いものとすることができる。
【0035】
また、下地層を構成する材料としてアミノ樹脂を含むものを用いることにより、剥離剤層を形成する際に、下地層を構成する材料が剥離剤層に移行してしまうのを防止することができ、その結果、剥離剤層の剥離性の低下を抑制することができる。これは、下地層内で、アミノ樹脂が架橋により、緻密なネットワークを形成し、下地層自体の耐溶剤性が高くなるためと考えられる。
【0036】
また、下地層を構成する材料としてアミノ樹脂を含むものを用いることにより、基材と下地層との密着性を向上させることができる。これは、アミノ樹脂を用いた場合、下地層の被膜強度が向上し、基材とのアンカー効果が大きくなるためであると考えられる。特に、基材を構成する樹脂としてフェニル基を有するもの(例えば、PET、PBT等)を用い、アミノ樹脂として芳香環を有するものを用いた場合、電気的な力が顕著なものとなる。その結果、基材と下地層との密着性をより高いものとすることができる。
【0037】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、尿素化メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0038】
中でも、アミノ樹脂としてメラミン樹脂、尿素樹脂を用いた場合、剥離剤層11と基材12との間の密着性をより高いものとすることができる。特に、これら樹脂は、分子内に芳香環を有していることから、フェニル基を有するシリコーン樹脂で構成された剥離剤層11や、フェニル基を有する材料で構成された基材12との密着性が特に高いものとなる。
【0039】
下地層13中のアミノ樹脂の含有量は、10wt%以上であるのが好ましく、40〜80wt%であるのがより好ましい。アミノ樹脂の含有量が前記下限値未満であると、下地層13中の他の成分の種類や含有量等によっては、十分な耐溶剤性を有する下地層13とするのが困難となる場合がある。また、アミノ樹脂の含有量が小さすぎる場合、下地層13中の他の成分の種類や含有量等によっては、剥離剤層11と基材12との間の密着性を十分に向上させるのが困難となる場合がある。
【0040】
また、剥離剤層11は、前述したアミノ樹脂の他に、アルキド樹脂を含むのが好ましい。これにより、以下のような効果が得られる。
【0041】
アルキド樹脂は、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られる樹脂であり、通常、その1分子内には、未反応の水酸基やカルボキシル基等の官能基が多数存在する。この官能基が、加熱等することにより架橋して、緻密なネットワークを形成し、溶剤に対して実質的に不溶のものとなる。これにより、下地層13は、より高い耐溶剤性を有するものとなる。その結果、剥離剤層11を形成する際に、下地層13を構成する材料が剥離剤層に移行してしまうのをより確実に防止することができ、その結果、剥離剤層11の剥離性の低下を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、アミノ樹脂とアルキド樹脂とは、互いに相溶性が高く、下地層13内において、互いに絡み合って存在し、より緻密なネットワークを形成するため、耐溶剤性をより高いものとすることができる。
【0043】
下地層13中のアルキド樹脂の含有量は、90wt%以下であるのが好ましく、20〜60wt%であるのがより好ましい。これにより、下地層13の耐溶剤性をより高いものとすることができる。
【0044】
下地層13中のアミノ樹脂の含有量をA[wt%]、アルキド樹脂の含有量をB[wt%]としたとき、A/B≧1/9の関係を満足するのが好ましく、2/3≦A/B≦4の関係を満足するのがより好ましい。これにより、より緻密なナットワークを形成することができ、より効果的に耐溶剤性を向上させることができる。
【0045】
下地層13の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10μmであるのが好ましく、0.05〜5.0μmであるのがより好ましい。下地層13の平均厚さが前記下限値未満であると、下地層13を設けることによる効果が十分に得られない場合がある。一方、下地層13の平均厚さが前記上限値を超えると、図3に示すように、剥離シート1をロール状に巻き取ったときに、剥離剤層11の表面11aと剥離シート背面12aとが接し、両者がブロッキングし易くなり、剥離剤層11の剥離性能がこのブロッキングにより、低下する場合がある。
【0046】
上述したようなアミノ樹脂には、アミノ樹脂を硬化させる硬化触媒が含まれていてもよい。
【0047】
本発明で用いる硬化触媒としては、酸触媒を用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸、塩酸等が挙げられる。
【0048】
アミノ樹脂100重量部に対して、硬化触媒を0.01〜5.0重量部添加するのが好ましく、1〜3重量部添加するのがより好ましい。
【0049】
なお、本発明の剥離シートは、下地層13を2層以上有していてもよい。下地層13を2層以上有する場合、例えば、各下地層13のアミノ樹脂の含有量が、剥離剤層11側から基材12側に向かって、徐々に大きくなるよう構成してもよいし、徐々に小さくなるよう構成してもよい。
【0050】
また、本発明の剥離シートは、必要に応じて、下地層に、前述した樹脂成分以外の成分、例えば、硬化触媒、安定剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0051】
以下、粘着シートについて説明する。
粘着シート2は、図1に示すように、粘着シート基材22上に粘着剤層21が形成された構成となっている。
【0052】
粘着シート基材22は、粘着剤層21を支持する機能を有しており、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、無塵紙、合成紙等の紙等の単体もしくは複合物で構成されている。
【0053】
粘着シート基材22の平均厚さは、特に限定されないが、5〜300μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。
【0054】
粘着シート基材22は、その表面(粘着剤層が積層する面と反対側の面)に印刷や印字が施されていてもよい。また、印刷や印字の密着をよくする等の目的で、粘着シート基材22は、その表面に、表面処理が施されていてもよい。また、粘着シート2は、ラベルとして機能してもよい。
【0055】
粘着剤層21は、粘着剤を主剤とした粘着剤組成物で構成されている。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。
【0056】
例えば、粘着剤がアクリル系粘着剤である場合、粘着性を与える主モノマー成分、接着性や凝集力を与えるコモノマー成分、架橋点や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体から構成することができる。
【0057】
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸メトキシエチル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0058】
コモノマー成分としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0059】
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0060】
これらの各成分を含むことにより、粘着剤組成物の粘着力、凝集力が向上する。また、このようなアクリル系樹脂は、通常、分子中に不飽和結合を有しないため、光や酸素に対する安定性の向上を図ることができる。さらに、モノマーの種類や分子量を適宜選択することにより、用途に応じた品質、特性を備える粘着剤組成物を得ることができる。
【0061】
このような粘着剤組成物には、架橋処理を施す架橋型および架橋処理を施さない非架橋型のいずれのものを用いてもよいが、架橋型のものがより好ましい。架橋型のものを用いる場合、凝集力のより優れた粘着剤層21を形成することができる。
【0062】
架橋型粘着剤組成物に用いる架橋剤としては、エポキシ系化合物、イソシアナート化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物等が挙げられる。
【0063】
また、本発明に用いられる粘着剤組成物中には、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、安定剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0064】
粘着剤層21の厚さは、特に限定されないが、5〜100μmであるのが好ましく、20〜40μmであるのがより好ましい。
【0065】
剥離シート1は、例えば、基材12を用意し、この基材12上に、アミノ樹脂と、アミノ樹脂を硬化(架橋)させる前述したような硬化触媒とを含む液体(下地層形成原料)を塗工し、加熱等により硬化させて下地層13を形成し、この下地層13上に、剥離剤を塗工等して剥離剤層11を形成することにより、作製することができる。
【0066】
下地層形成原料や剥離剤を塗工する方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の既存の方法が使用できる。
【0067】
粘着シート2は、粘着シート基材22を用意し、この粘着シート基材22上に粘着剤組成物を塗工して粘着剤層21を形成することにより、作製することができる。
【0068】
粘着剤組成物を粘着シート基材22上に塗工する方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の既存の方法が使用できる。
【0069】
この場合の粘着剤組成物の形態としては、溶剤型、エマルション型、ホットメルト型等が挙げられる。
【0070】
その後、粘着剤層21が剥離剤層11に接するように、剥離シート1と粘着シート2を貼り合わせることにより、粘着体100を得ることができる。
【0071】
なお、剥離シート1の剥離剤層11上に、粘着剤層21を形成し、次いで、粘着剤層上に粘着シート基材22を接合することにより粘着体100を製造してもよい。
【0072】
以上、本発明の剥離シートおよび粘着体の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、粘着体は、粘着シート基材の両面に粘着剤層が形成され、さらに、これら両粘着剤層の表面に、それぞれ剥離シートが形成されたものであってもよい。
【0073】
また、前述した実施形態では、粘着体が、剥離シートと粘着シートを貼着させた構成のものについて説明したが、基材の一方の面側に剥離剤層が形成されていて、他方の面側に粘着剤層が形成されたものであってもよい。
【実施例】
【0074】
次に、本発明の剥離シートの具体的実施例について説明する。
1.剥離シートの作製
【0075】
(実施例1)
[1]下地層の形成
まず、アミノ樹脂(メチル化メラミン樹脂) 50重量部(日立化成ポリマー社製:商品名「テスファイン200」)と、硬化触媒(50wt%p−トルエンスルホン酸・メタノール溶液) 1.5重量部と、アルキド樹脂(米ヌカ油変性アルキド樹脂) 50重量部(日立化成ポリマー社製:商品名「テスアジン3203−65タイプ」)とを溶媒(メチルエチルケトン/トルエン=60/40)で希釈し、固形分濃度2.5wt%の下地液を調製した。
【0076】
次に、下地液を、平均厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ポリエステル社製:商品名「T−100」)にマイヤーバー#4にて塗工した後、140℃、60秒間加熱して乾燥させ、基材上に平均厚さ0.2μmの下地層を形成した。
【0077】
[2]剥離剤層の形成
まず、シリコーン樹脂 100重量部(信越化学社製:商品名「KS847H」)をトルエン/メチルエチルケトン60/40で予め希釈し、これに硬化剤 1重量部(信越化学社製:商品名「CAT−PL50T」)を混合し、さらにトルエンで希釈し、固形分濃度1.4wt%の剥離剤液を調製した。
【0078】
得られた剥離剤液を、下地層上にマイヤーバー#4にて塗工し、100℃、60秒間加熱して乾燥させ、平均厚さ0.1μmの剥離剤層を形成し、剥離シートを作製した。
【0079】
(実施例2、3)
アミノ樹脂と硬化触媒とアルキド樹脂との重量比を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0080】
(実施例4、5)
下地層の平均厚さを表1に示すように、下地液を塗工した以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0081】
(実施例6)
剥離剤層の平均厚さを表1に示すように、剥離剤液を塗工した以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0082】
(実施例7〜9)
シリコーン樹脂として、フェニル基を有するもの(信越化学社製:商品名「KS774」)を用い、剥離剤層の平均厚さを表1に示すように剥離剤液を塗工した以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0083】
(実施例10)
アルキド樹脂を配合しなかった以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0084】
(実施例11)
アルキド樹脂として、ヤシ油変性アルキド樹脂(日立化成ポリマー社製:商品名「テスラック2403−60」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0085】
(実施例12)
アミノ樹脂として、尿素樹脂(日立化成ポリマー社製:商品名「テスアジン3103−60」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0086】
(比較例1)
下地層を形成せず、基材上に直接剥離剤層を形成した以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0087】
(比較例2)
下地液として、ポリエステル樹脂 100重量部(大日本インキ化学工業社製:商品名「HOF−862」)をトルエンで希釈した、固形分濃度2.5wt%のものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0088】
上記各実施例および各比較例で作製した剥離シートの各層の構成材料、配合比、平均厚さ等の製造条件等を表1にまとめた。
【0089】
【表1】

【0090】
2.粘着体の作製
まず、ポリエチレンテレフタレートフィルム(平均厚さ:38μm)上に、アクリル系粘着剤(リンテック社製、商品名「PLシン」)をアプリケーターにより塗工し、110℃、60秒間加熱して乾燥させ、固形分重量が24g/m、平均厚さ25μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0091】
その後、各実施例、各比較例で得られた剥離シートの剥離剤層と、粘着シートの粘着剤層とを貼り合わせ、粘着体を得た。
【0092】
3.評価
[基材と剥離剤層の密着性]
各実施例、各比較例で得られた剥離シートを60℃95%RHの条件下で48時間放置した後、各剥離シートの剥離層の表面を、指で強く10回擦り、曇りや脱落を観察し、以下の4段階の基準に従い、評価した。
【0093】
◎:曇りや脱落が全く見られない。
○:曇りがわずかに見られる。
△:曇りや脱落が少し見られる。
×:曇りや脱落が多く見られる。
【0094】
[剥離力試験]
各実施例および各比較例の剥離シートを使用した各粘着体について、剥離シートの剥離力を測定した。
【0095】
剥離力の測定は、JIS−Z0237に準拠し、粘着体を巾50mm、長さ200mmに裁断し、引っ張り試験機を用いて、剥離シートを固定し、基材を300mm/分の速度で180°方向に引っ張ることにより、剥離力を測定した。
【0096】
また、剥離シートの剥離剤層の表面を、摩擦堅牢試験機(大栄化学精機製作所社製:RT−200)を用いて研磨した剥離シートを用いて粘着体を作製し、上記と同様の試験を行った。なお、研磨は、研磨片として厚さ80μmの無延伸ポリプロピレンを使用し、荷重1kg、研磨回数50回往復の条件で行った。
これらの結果を表2に示した。
【0097】
【表2】

【0098】
表2から明らかなように、各比較例の剥離シートは、基材と剥離剤層との間の密着性が低いものであった。特に比較例2は、下地層を構成する材料が、剥離剤層内に移行したため、剥離力が高かった。これに対し、各実施例の剥離シートは、基材と剥離剤層との間の密着性が高く、また、剥離性にも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の粘着体を示す縦断面図である。
【図2】本発明の剥離シートを示す縦断面図である。
【図3】本発明の剥離シートをロール状に巻き取った状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0100】
100 粘着体
1 剥離シート
11 剥離剤層
11a 表面
12 基材
12a 剥離シート背面
13 下地層
2 粘着シート
21 粘着剤層
22 粘着シート基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として樹脂材料で構成された基材と、主としてシリコーン樹脂で構成された剥離剤層とを有する剥離シートであって、
前記剥離剤層は、少なくともアミノ樹脂を含む下地層を介して前記基材上に設けられていることを特徴とする剥離シート。
【請求項2】
前記下地層中のアミノ樹脂の含有量は、10wt%以上である請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記下地層は、アミノ樹脂を、硬化触媒を用いて硬化させることにより形成されたものである請求項1または2に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記アミノ樹脂100重量部に対して、前記硬化触媒を0.01〜5.0重量部添加する請求項3に記載の剥離シート。
【請求項5】
前記下地層は、アルキド樹脂を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の剥離シート。
【請求項6】
前記下地層中の前記アルキド樹脂の含有量は、90wt%以下である請求項5に記載の剥離シート。
【請求項7】
前記下地層中の前記アミノ樹脂の含有量をA[wt%]、前記アルキド樹脂の含有量をB[wt%]としたとき、A/B≧1/9の関係を満足する請求項5または6に記載の剥離シート。
【請求項8】
前記下地層の平均厚さは、0.01〜10μmである請求項1ないし7のいずれかに記載の剥離シート。
【請求項9】
前記剥離剤層を構成するシリコーン樹脂は、分子内に、フェニル基を有する請求項1ないし8のいずれかに記載の剥離シート。
【請求項10】
前記剥離剤層の平均厚さは、0.01〜10μmである請求項1ないし9のいずれかに記載の剥離シート。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の剥離シートと、粘着剤層を有する粘着シートとを有することを特徴とする粘着体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−289801(P2006−289801A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113990(P2005−113990)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】