説明

剥離シートおよび粘着体

【課題】放射線を照射しても重剥離化が起こりにくい剥離シートおよび該剥離シートを用いた粘着体を提供すること。
【解決手段】本発明の剥離シートは、基材と、該基材上に設けられ、主としてシリコーン樹脂で構成された剥離剤層とを有する剥離シートであって、剥離剤層は、ラジカル抑制剤を含み、シリコーン樹脂は、熱硬化型であり、放射線滅菌に供されることを特徴とする。ラジカル抑制剤は、芳香環を有する化合物を含むのが好ましい。また、ラジカル抑制剤は、フェノール系化合物を含むのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シートおよび粘着体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、剥離シートと粘着シートとを有する粘着体は、様々な用途に用いられている。中でも、医療用途に用いられる場合、通常、滅菌処理を施されるのが一般的である。このような滅菌処理としては、オートクレーブを用いた滅菌処理、エチレンオキサイドガスによる滅菌処理(EOG滅菌)、電子線やγ線等の放射線滅菌処理等が行われている。
【0003】
しかし、オートクレーブで滅菌する場合、高温高圧の蒸気を用いるため、その過酷な条件に耐え得る材料に限定されるという問題があり、EOG滅菌の場合、発癌性や遺伝的障害といった残存ガスの影響の問題があった。
このようなことから、近年、放射線滅菌が盛んに行われるようになってきている。
【0004】
ところで、一般に、剥離シートを構成する材料として、シリコーン樹脂を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような剥離シートは、滅菌のために放射線を照射すると、粘着シートから剥離しにくくなり、いわゆる重剥離化が発生するという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−336574号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討を行った結果、放射線、特に電子線を照射しても重剥離化が起こりにくい剥離シートを使用すれば、これを使用した粘着体においても、剥離シートの剥離力の上昇(重剥離化)を効果的に抑制することができることを知見した。
【0008】
本発明の目的は、放射線を照射しても重剥離化が起こりにくい剥離シートおよび該剥離シートを使用した粘着体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1) 基材と、
前記基材上に設けられ、主としてシリコーン樹脂で構成された剥離剤層とを有する剥離シートであって、
前記剥離剤層は、ラジカル抑制剤を含み、
前記シリコーン樹脂は、熱硬化型であり、
放射線滅菌に供されることを特徴とする剥離シート。
【0010】
(2) 前記ラジカル抑制剤は、芳香環を有する化合物を含むものである上記(1)に記載の剥離シート。
【0011】
(3) 前記ラジカル抑制剤が、フェノール系化合物を含むものである上記(1)または(2)に記載の剥離シート。
【0012】
(4) 前記ラジカル抑制剤は、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の剥離シート。
【0013】
(5) 前記ラジカル抑制剤は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の剥離シート。
【0014】
(6) 前記ラジカル抑制剤の添加量が、前記シリコーン樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の剥離シート。
【0015】
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の剥離シートと、粘着剤層を有する粘着シートとを有することを特徴とする粘着体。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、放射線を照射しても重剥離化が起こりにくい剥離シートおよび粘着体を得ることができる。
【0017】
よって、本発明によれば、放射線滅菌を施した後に置いても、粘着シートから剥離シートを簡便、確実に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の粘着体は、剥離剤層と基材(剥離シート基材)とで構成された剥離シートに、粘着剤層と粘着シート基材とで構成された粘着シートが、貼着された構成となっており、かかる粘着体では、剥離剤層に粘着剤層が接している。
【0019】
粘着体では、粘着シートが剥離シートから剥離可能であり、剥離後、粘着シートは、被着体に貼着される。
【0020】
以下、本発明の剥離シートについて説明する。
剥離シートは、基材上に剥離剤層が形成された構成となっている。
【0021】
基材を構成する材料としては、特に限定されず、従来より剥離シートにおいて基材として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、グラシン紙、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙等の紙基材、これら紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートした紙等で構成されている。
【0022】
基材の厚さは、特に限定されないが、5〜300μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。
【0023】
基材上に剥離剤層を設けることにより、粘着シートを剥離シートから剥離することが可能となる。
【0024】
剥離剤層は、剥離剤で構成され、この剥離剤は、主として、シリコーン樹脂で構成されるものである。
【0025】
ところで、従来、剥離シートを構成する剥離剤として、シリコーン樹脂が広く用いられてきた。このようなシリコーン樹脂は、優れた剥離性を有している。
【0026】
剥離シート(または、該剥離シートに粘着された粘着シート)が、例えば、医療用に用いられるもののように滅菌が必要となる場合には、当該剥離シートに放射線を照射することがあった。このような滅菌に用いる放射線としては、例えば、電子線、γ線、紫外線等が挙げられる。
【0027】
しかしながら、従来の剥離剤を用いた場合、放射線の照射により、重剥離化を起こすということがあった。特に、上述した放射線の中でも、電子線を用いた場合において、重剥離化が顕著であった。この重剥離化は、剥離シートの剥離剤層を構成する成分と、粘着シートの粘着剤層を構成する成分との間等でラジカルによる反応が起こるためであると考えられる。そこで本発明者らは、このような重剥離化を防止するということについて、詳細に検討したところ、剥離剤層に、ラジカルの発生を抑制したり、発生したラジカルを捕捉する機能を有するラジカル抑制剤を含むことにより、上述したような問題を解決することができることを見出した。
【0028】
このように、本発明では、主としてシリコーン樹脂で構成された剥離剤層に、ラジカル抑制剤を含むことを特徴とする。このようなラジカル抑制剤を含むことにより、前述のような放射線の照射に伴ってラジカルが発生した場合においても、例えば、ラジカル抑制剤が、ラジカルが発生した場合にそのラジカルを効率よく非局在化させること等により、前述のようなラジカルによる反応を抑制することができる。また、照射前の剥離力に対する照射後での剥離力の上昇率を抑制することができ、結果として、重剥離化を効果的に防止することができる。また、これにより、放射線滅菌した後であっても、十分な剥離性を確保することができる。
【0029】
このようなラジカル抑制剤としては、ラジカルの発生を抑制したり、発生したラジカルを捕捉するものであれば、特に限定されないが、以下のようなものが挙げられる。
【0030】
ラジカルの発生を抑制したり、発生したラジカルを捕捉する機能を有するラジカル抑制剤としては、例えば、N,N’−ジサリチリデン−1,2−プロパンジアミン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−2−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、スチレン化されたフェノール、スチレン化されたクレゾール、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール、2,2’−エチリデン−ビス−(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス−(2−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリ−エチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、2,2’−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオ−ジエチレン−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−t−ブチル−4−メチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフテート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシヒドロ−シナモイルオキシル)エチル]イソシアヌレート、トリス−(4−t−ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、エチル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)リン酸の金属塩(例えばカルシウム塩)、プロピル−3,4,5−トリ−ヒドロキシベンゼンカルボネート、オクチル−3,4,5−トリ−ヒドロキシベンゼンカルボネート、ドデシル−3,4,5−トリ−ヒドロキシベンゼンカルボネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のフェノール系化合物、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、4−t−オクチルフェニルサリシレートや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のサリシレート系化合物、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、トリルトリアゾール金属塩(例えば、カリウム塩)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]や、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のベンゾトリアゾール系化合物、フェニル−4−ピペリジニルカーボネート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]]、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、コハク酸と4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの共重合体、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−トリデシル−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−トリデシル−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物や、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のヒンダートアミン系化合物、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、ニッケルジブチル−ジチオカルバメート、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケル(II)、ニッケル−ビス(オクチルフェニル)サルファイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル酸モノエチルエステル−Ni錯体、2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノラート)トリエタノールアミンニッケル(II)や、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のNi系化合物、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のシアノアクリレート系化合物、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリドや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のオキザリックアシッドアニリド系化合物、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、1,12−ドデカン酸−ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジンや、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のサリチル酸誘導体、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、イソフタル酸−ビス[2−フェノキシプロピオニルヒドラジド]や、これらの誘導体(例えば、アルキル、アリール置換体)等のヒドラジド誘導体、酸アミン系化合物、グアニジン類、メルカプトベンゾチアゾール金属塩(例えば、ナトリウム塩)等が挙げられる。
【0031】
また、ラジカル抑制剤としては、芳香環を有する化合物を含むものを用いるのが好ましく、特に、水酸基を有するフェノール系化合物を含むものを用いるのがより好ましい。これにより、例えば、剥離剤層を構成する成分と粘着剤層を構成する成分との間でのラジカルによる反応を効果的に防止することができ、剥離力の上昇率をより効果的に抑制することができる。その結果、重剥離化をより効果的に防止することができる。
【0032】
このようなラジカル抑制剤の添加量は、シリコーン樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。添加量が前記下限値未満であると、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。一方、添加量が前記上限値を超えると、ラジカル抑制剤を加えることによるラジカル抑制または捕捉の効果のさらなる効果を得られない場合があり、また、基材表面に移行してくるラジカル抑制剤の量が多くなり、剥離剤の硬化反応阻害が発生することによって、剥離剤層と基材との密着性が低下するなど、剥離性能を十分に発揮することができない場合がある。
【0033】
本発明で用いられるシリコーン樹脂としては、特に限定されず、例えば、分子末端、または側鎖にアクリロイル基、メタクリロイル基、アルケニル基、ビニルアミド基、ヒドロシリル基、シラノール基、ジアゾ基、アセチレン基、チオール基、ヒドロキシル基等の官能基を有するポリオルガノシロキサンおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0034】
また、シリコーン樹脂としては、例えば縮合反応型シリコーン、付加反応型シリコーン、ラジカル反応型シリコーン、紫外線硬化型シリコーン等のように分類することもでき、いずれの反応系のものも用いることができる。中でも、付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば、分子中に、官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの中から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。上記の分子中に官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの好ましいものとしては、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサンおよびこれらの混合物などが挙げられる。
【0035】
なお、本発明において、シリコーン樹脂として、熱硬化型のシリコーン樹脂を用いる。
さらに、このようなシリコーン樹脂の一部に、フェニル基のような芳香環を有する置換基があってもよい。このような置換基があると、発生したラジカルが、ラジカル抑制剤の芳香環とシリコーン樹脂の芳香環との間でも非局在化するような相互作用で、さらに重剥離化を抑制することができる。
【0036】
また、シリコーン樹脂の重量平均分子量は、5.0×10〜1.5×10であるのが好ましく、1.0×10〜5.0×10であるのがより好ましい。
【0037】
なお、剥離剤層は、他の樹脂成分や、可塑剤、安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
剥離剤層の厚さは、特に限定されないが、0.01〜3.0μmであるのが好ましく、0.01〜1.5μmであるのがより好ましい。
【0039】
剥離剤層の厚さが前記下限値未満であると、剥離性能が不安定となる場合がある。一方、剥離剤層の厚さが前記上限値を超えると、剥離シートをロール状に巻き取ったときのシリコーン塗工面が、剥離シート背面とブロッキングし易くなり、シリコーン塗工面の剥離性能がブロッキングにより、低下する場合がある。
【0040】
以下、粘着シートについて説明する。
粘着シートは、粘着シート基材上に粘着剤層が形成された構成となっている。
【0041】
粘着シート基材は、粘着剤層を支持する機能を有しており、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、無塵紙、合成紙等の紙等の単体もしくは複合物で構成されている。
【0042】
粘着シート基材の厚さは、特に限定されないが、5〜300μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。
【0043】
粘着シート基材は、その表面(粘着剤層が積層する面と反対側の面)に印刷や印字が施されていてもよい。また、印刷や印字の密着をよくする等の目的で、粘着シート基材は、その表面に、表面処理が施されていてもよい。また、粘着シートは、ラベルとして機能してもよい。
【0044】
粘着剤層は、粘着剤を主剤とした粘着剤組成物で構成されている。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。
【0045】
例えば、粘着剤がアクリル系粘着剤である場合、粘着性を与える主モノマー成分、接着性や凝集力を与えるコモノマー成分、架橋点や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体から構成することができる。
【0046】
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸メトキシエチル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0047】
コモノマー成分としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0048】
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0049】
これらの各成分を含むことにより、粘着剤組成物の粘着力、凝集力が向上する。また、このようなアクリル系樹脂は、通常、分子中に不飽和結合を有しないため、光や酸素に対する安定性の向上を図ることができる。さらに、モノマーの種類や分子量を適宜選択することにより、用途に応じた品質、特性を備える粘着剤組成物を得ることができる。
【0050】
このような粘着剤組成物には、架橋処理を施す架橋型および架橋処理を施さない非架橋型のいずれのものを用いてもよいが、架橋型のものがより好ましい。架橋型のものを用いる場合、凝集力のより優れた粘着剤層を形成することができる。
【0051】
架橋型粘着剤組成物に用いる架橋剤としては、エポキシ系化合物、イソシアナート化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物等が挙げられる。
【0052】
また、本発明に用いられる粘着剤組成物中には、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、安定剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0053】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、5〜200μmであるのが好ましく、10〜100μmであるのがより好ましい。
【0054】
前記剥離シートは、基材を用意し、この基材上に剥離剤を塗工等して剥離剤層を形成することにより、作製することができる。
【0055】
剥離剤を基材上に塗工する方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の既存の方法が使用できる。
【0056】
前記粘着シートは、粘着シート基材を用意し、この粘着シート基材上に粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を形成することにより、作製することができる。
【0057】
粘着剤組成物を粘着シート基材上に塗工する方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の既存の方法が使用できる。
【0058】
この場合の粘着剤組成物の形態としては、溶剤型、エマルション型、ホットメルト型等が挙げられる。
【0059】
その後、粘着剤層が剥離剤層に接するように、剥離シートと粘着シートを貼り合わせることにより、粘着体を得ることができる。
【0060】
このような製造方法によれば、製造途中で剥離シートを高温に晒さなくても粘着体を製造することができる。さらに、例えば、粘着剤層を形成する際に用いられる溶剤の影響も受けにくくなる。
【0061】
なお、剥離シートの剥離剤層上に、粘着剤層を形成し、次いで、粘着剤層上に粘着シート基材を接合することにより粘着体を製造してもよい。
【0062】
以上、本発明の剥離シートおよび粘着体の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、粘着体は、粘着シート基材の両面に粘着剤層が形成され、さらに、これら両粘着剤層の表面に、それぞれ剥離シートが形成されたものであってもよい。
【0063】
また、前述した実施形態では、剥離シートが、剥離剤層と基材とで構成されたものとして説明したが、少なくとも剥離剤層を有するものであればよく、基材はなくてもよい。
【0064】
また、前述した実施形態では、粘着体が、剥離シートと粘着シートを貼着させた構成のものについて説明したが、基材の一方の面側に剥離剤層が形成されていて、他方の面側に粘着剤層が形成されたものであってもよい。
【実施例】
【0065】
次に、本発明の剥離シートの具体的実施例について説明する。
1.剥離シートの作製
塗工により、基材の片面に剥離剤層を形成し、剥離シートを作製した。
【0066】
各層の構成は、以下の通りである。
(実施例1)
シリコーン樹脂(信越化学社製、商品名「KS−847H」)100重量部、硬化剤(信越化学社製、商品名「CAT−PL−50T」)1重量部、2個の芳香環を有するフェノール系化合物であるラジカル抑制剤(2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、住友化学社製、商品名「スミライザーGS」)1重量部をトルエンに溶解して、固形分1wt%の剥離剤組成物を調製した。
【0067】
次いで、基材として厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ポリエステル社製、商品名「T−100」)に、前記剥離剤組成物をマイヤーバー♯4にて塗工した後、130度で加熱処理して硬化させ、厚さ0.1μmの剥離剤層を形成することにより剥離シートを作製した。
【0068】
(実施例2)
フェノール系化合物であるラジカル抑制剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(住友化学社製、商品名「スミライザーBHT−R」)を用いた以外は、実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0069】
(実施例3)
ラジカル抑制剤の添加量を0.5重量部とした以外は、実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0070】
(実施例4)
ラジカル抑制剤の添加量を3重量部とした以外は、実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0071】
(比較例)
ラジカル抑制剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして剥離シートを作製した。
【0072】
2.粘着体の作製
上記各実施例および比較例で作製した各剥離シートの剥離剤層の表面に、電子線を、照射量が0、0.6、1.2、1.8、3.6Mradとなるように照射した。その後、室温で24時間放置した後、アクリル系粘着剤(東洋インキ社製:商品名「オリバインBPS−5127」)を乾燥後の厚さが50μmとなるように、該剥離シートの剥離剤層の表面に塗工し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm)を貼り合わせて粘着体を作製した。
【0073】
3.評価
それぞれの粘着体について、作製から1日経過後の剥離シートの剥離力を測定した。
【0074】
剥離力の測定は、粘着体を巾20mm、長さ200mmに裁断し、引っ張り試験機を用いて、剥離シートを固定し、基材を300mm/分の速度で180°方向に引っ張ることにより行った。
【0075】
剥離力の上昇率は、得られた剥離力をもとに下記式(I)により求めた。
上昇率=(電子線を照射した剥離シートの剥離力)/(電子線を照射する前の剥離シートの剥離力) ・・・(I)
これらの結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から明らかなように、比較例の剥離シートは、電子線照射による剥離力の上昇率が大きく、剥離しにくくなるのに対して、各実施例の剥離シートは、電子線照射による剥離力の上昇率は小さく、重剥離化を十分に抑えたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられ、主としてシリコーン樹脂で構成された剥離剤層とを有する剥離シートであって、
前記剥離剤層は、ラジカル抑制剤を含み、
前記シリコーン樹脂は、熱硬化型であり、
放射線滅菌に供されることを特徴とする剥離シート。
【請求項2】
前記ラジカル抑制剤は、芳香環を有する化合物を含むものである請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記ラジカル抑制剤が、フェノール系化合物を含むものである請求項1または2に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記ラジカル抑制剤は、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートである請求項1ないし3のいずれかに記載の剥離シート。
【請求項5】
前記ラジカル抑制剤は、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールである請求項1ないし3のいずれかに記載の剥離シート。
【請求項6】
前記ラジカル抑制剤の添加量が、前記シリコーン樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部である請求項1ないし5のいずれかに記載の剥離シート。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の剥離シートと、粘着剤層を有する粘着シートとを有することを特徴とする粘着体。

【公開番号】特開2009−78560(P2009−78560A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295733(P2008−295733)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【分割の表示】特願2003−148311(P2003−148311)の分割
【原出願日】平成15年5月26日(2003.5.26)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】