説明

副甲状腺ホルモンのレセプターとそれをコードしているDNA

【課題】副甲状腺ホルモンレセプターの提供と利用。
【解決手段】副甲状腺ホルモンレセプターをコードしているDNA、組換え及び合成副甲状腺ホルモンレセプターポリペプチド及びその断片、副甲状腺ホルモンレセプター及びレセプター断片に対する抗体、候補化合物を副甲状腺ホルモンレセプターの作用に対するアンタゴニストあるいはアンタゴニスト効果についてスクリーニングする方法、及びこれらの化合物の利用による診断と治療法の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載する研究の助成金は一部アメリカ合衆国政府によって提供されたものであり、同政府は本発明に対し一定の権利を保有する。
本発明は内分泌レセプターに関する。
【背景技術】
【0002】
ホルモン作用発現の重要な段階は、ホルモンと標的細胞の原形質膜表面上にあるレセプターとの相互作用である。ホルモン−レセプター複合体の形成によって、細胞外シグナルを細胞内に導入して種々の生物学的反応を顕現化することが可能となる。例えば、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び絨毛性性腺刺激ホルモン(CG)のようなホルモンの、その細胞表面レセプターへの結合はレセプターの高次構造の変化を誘発し、その結果、レセプターと導入分子、即ち、その一成分が(G)である刺激性グアニンヌクレオチド(GTP)結合蛋白質との連携が起こる。この連携はアデニル酸シクラーゼを刺激し、次いで蛋白質のリン酸化、ステロイドの合成と分泌、及びイオンフラックスの調節のような他の細胞の過程を刺激する。アルギニンバソプレッシン(AV)、アンギオテンシンII、及びノルエピネフリンを含む他のホルモンの、その細胞表面レセプターへの結合の結果、(G)のような別のタイプのGTP結合蛋白質成分の活性化をもたらし、次いで酵素ホスホリパーゼCの活性を刺激する。ホスホリパーゼCによる加水分解の生成物は、細胞内カルシウムの動員と蛋白質のリン酸化を含む細胞内現象の複雑なカスケードを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
副甲状腺ホルモン(PTH)はカルシウムの恒常性の主要な調節物質であり、その重要な標的細胞は骨と腎臓に存在する。カルシウム濃度の調節は、胃腸、筋肉、神経、神経筋、及び心臓血管などの系の正常な機能のために必要である。PTHの合成と分泌は、主として血漿のカルシウムレベルによって制御される:低レベルでホルモンの合成と分泌の両方を刺激し、高レベルは抑制する。次いでPTHは、直接的または間接的に、3つのカルシウム交換部位、即ち、腸、骨、及び腎臓におけるカルシウムの血中への流入を促進することによって血漿カルシウムレベルを維持する。PTHは腎臓における活性型ビタミンDの生合成を助成することによってカルシウムの胃腸からの正味の吸収に寄与する。PTHは造骨細胞を阻害し、また、間接的に、骨吸収細胞である破骨細胞の分化を促進することによって骨からのカルシウム再吸収を促進する。このホルモンは、また、腎臓に対する少なくとも3つの効果:尿細管のカルシウム再吸収の刺激、リン酸クリアランスの向上、及び活性型ビタミンDの合成を完結する酵素量の増大促進を仲介する。PTHによるレセプター仲介のホスホリパーゼCの活性化も報告されてはいるが(Hruska et al., J.Clin.Invest 79:230,1987)、PTHはこれらの効果を主としてレセプター仲介によるアデニル酸シクラーゼの活性化を通じて発揮する。
【0004】
カルシウム恒常性の崩壊は多くの臨床的障害(例えば、重症な骨の疾患、貧血、腎障害、潰瘍、筋障害、及び神経障害)を引き起こすことがあり、普通は、副甲状腺ホルモンのレベルの変化を起こすような状態に起因するものである。高カルシウム血症は血漿カルシウムレベルの上昇を特徴とする症状である。それは、しばしば、副甲状腺の病変(例えば、腺腫、増殖、または癌腫)の結果としてPTHの生産過剰が起こる一次性副甲状腺機能亢進症に関連している。もう一つのタイプの高カルシウム血症、悪性の体液性高カルシウム血症(HHM)はもっとも普通の腫瘍の症候群である。それは大抵の場合、腫瘍(鱗状、腎臓、卵巣または膀胱の癌種)によるPTHとアミノ酸相同性を共有する新しいクラスの蛋白質ホルモンの生成に起因するようである。これらのPTH関連蛋白質(PTHrP)は一見、PTHの腎臓と筋肉に対する作用のあるものを模倣し、これらの組織におけるPTHレセプターと相互作用すると信じられている。PTHrPは、通常、ケラチノサイト、脳、下垂体、副甲状腺、副腎皮質、髄質、胎児の肝臓、造骨細胞様細胞、及び授乳期の乳腺を含む多くの組織に少量見出だされる。多くのHHM悪性腫瘍において、PTHrPは循環系に高レベルで見出だされ、HHM関連の高カルシウムレベルを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は脊椎動物の細胞のレセプター、望むべくは、副甲状腺ホルモンレセプターをコードしているDNA配列からなる分離されたDNAを特徴とする。このレセプターは、図3に示されているアミノ酸配列(配列番号: 3)に対し少なくとも30%(望ましいのは少なくとも50%、更に望ましいのは少なくとも60%、そして最も望ましいのは少なくとも75%)同一のアミノ酸配列を持つものである:即ち、2つのアミノ酸配列間で(標準の方法を用いて)最近似部位を求める場合、前者の配列のアミノ酸殘基の少なくとも30%が後者の配列のアミノ酸殘基と同一ということである。“分離された”とは、このDNAが、本発明のDNAが由来する(何であれ)生物に本来あるゲノム内で、本発明のDNAをコードしている遺伝子に直接隣接している遺伝子のコーディング配列を全く持たないということを意味する。分離されたDNAは一本鎖、または2本鎖でもよく、また、ゲノムDNA、cDNA、組換えハイブリッドDNA、あるいは合成DNAでもよい。それは自然に存在する細胞のレセプター(例えば、PTHレセプター)をコードしているDNA配列と同一かも知れず、あるいは、このような配列とは、1つあるいはそれ以上のヌクレオチドの欠落、付加、または、置換によって異なるかも知れない。本発明の一本鎖DNAは、一般に少なくとも8ヌクレオチドの長さを持ち(望ましいのは、少なくとも18ヌクレオチドの長さ、そして更に望ましいのは30ヌクレオチドの長さ)、遺伝子あるいはcDNAの全長に及ぶこともある。これらはハイブリッド形成プロ−ブとして用いるため、検出され易いように標識されていることが望ましく、また、アンチセンスのこともあり得る。出来れば、この分離されたDNAは高度緊縮条件下に、図1(配列番号:1)、図2(配列番号:2)、図3(配列番号:3)、あるいは図6(配列番号:4)に示されているDNA配列の全体、あるいは一部とハイブリッドを形成することが望ましい。“高度緊縮”とは、例えばヒト腎臓のPTHレセプターcDNAの分離のための以下に記載されているような条件を意味する(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons, New York, 1989も参照のこと、ここには引用して組み込まれている)。最も望ましいのは動物が哺乳類(オッポサム、ラットあるいははヒト)であり、DNA配列が図1(配列番号:1)、図2(配列番号:2)、図3(配列番号:3)、あるいは図6(配列番号:4)に示されているアミノ酸配列を本質的にすべてコードしており、あるいはAmerican Type Culture Collection(ATCC)に寄託され、ATCC受託番号68570あるいは68571と名付けられているプラスミドの1つのコーディング配列によってコードされていることである。本発明のDNAは、この発明の細胞レセプター(例えば、副甲状腺ホルモンレセプター)、あるいはそのレセプターの断片をコードするDNA配列を含むあるベクター[それは精製票品(例えば、ライブラリ−を形成するベクターの混合物から分離されたあるベクター)として提供されるかも知れない]に、及びそのベクター(あるいは上記の分離されたDNA)を含む細胞、または本質的に相同な細胞集団(例えば、原核細胞、あるいは哺乳動物細胞のような真核細胞)に組み込まれることもあり得る。“本質的に相同”とは、少なくとも99%の細胞が本発明のベクター(あるいは、場合によっては分離されたDNA)を含むことを意味する。望ましいのは、このベクター(例えば、R15B)が副甲状腺ホルモンレセプターの発現を(例えば、ベクターを移入され、あるいはベクターで形質転換された細胞に)指示する能力を持つことである。
【0006】
別の観点から見ると、本発明は、細胞レセプターをコードしている組換えDNA分子の発現によって生成される細胞レセプター、望むべくは副甲状腺ホルモンレセプター(あるいはその本質的に精製された標品)を特徴とする。“本質的に精製された標品”とは、それが自然状態下で結合している蛋白質や脂質を実質的には含まない標品のことである。
【0007】
関連した観点からは、本発明は、自然状態下に存在するこの発明の細胞レセプターの断片を含むポリペプチドを特徴とする。望ましいのは、このポリペプチドが、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質と結合する能力を持つ自然状態下に存在する副甲状腺ホルモンレセプターの断片を含むことである。好適な実施態様では、この断片は少なくとも6つのアミノ酸の長さで、以下のグループから選ばれた配列を持つ:
(a)TNETREREVFDRLGMIYTVG;(配列番号:5)
(b)YLYSGFTLDEAERLTEEEL;(配列番号:6)
(c)VTFFLYFLATNYYWILVEG;(配列番号:7)
(d)Y−RATLANTGCWDLSSGHKKWIIQVP;(配列番号:8)
(e)PYTEYSGTLWQIQMHYEM;(配列番号:9)
(f)DDVFTKEEQIFLLHRAQA;(配列番号:10)
(g)FFRLHCTRNY;(配列番号:11)
(h)EKKYLWGFTL;(配列番号:12)
(i)VLATKLRETNAGRCDTRQQYRKLLK;(配列番号:13) あるいは
(j)断片(即ち、少なくとも6殘基の長さを持つが、全体よりは短い部分)あるいは(a)−(i)の類似体(アナログ)で、副甲状腺ホルモン、あるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質[ここで“類似体(アナログ;analog)”とは、それが類似体であるペプチドと少なくとも50%(そして望ましいのは少なくとも70%)同等の配列を持つペプチドを指す]を結合する能力を持つもの。出来れば、本発明のポリペプチドは組換えDNA分子の発現によって生成されるか、または合成品(即ち、生物学的よりも化学的な手段によって組み立てられた)であることが望ましい。本発明はこのようなポリペプチドを生成する方法を提供し、この方法には、本発明の細胞レセプター、あるいはレセプターの断片をコードしている分離されたDNAを含む細胞を提供すること、及びこの細胞を、分離されたDNAからポリペプチドの発現を可能にするような条件下で培養することが含まれる。
【0008】
本発明は、また、この発明の細胞レセプター(出来ればヒトのPTHレセプターのような副甲状腺ホルモンレセプター)と免疫複合体を形成する能力のある抗体(単クローン性または多クローン性)及び抗体の精製標品を特徴とする。このような抗体は、抗原として(1)本発明の細胞レセプターの断片を含むポリペプチド、あるいは(2)細胞表面上に存在する本発明の細胞レセプターを用いることによって生成される。この抗体は、出来れば、本発明の細胞レセプターの活性(即ち、レセプターにそのリガンドが結合する時、レセプターによって本来引き起こされるカスケード反応の一部を構成するもの)を中和(即ち、部分的に、または完全に阻害する)する能力を持つことが望ましい。好適な実施態様において、本発明の抗体は副甲状腺ホルモンレセプターと免疫複合体を形成する能力を持ち、PTHレセプターの生物学的活性(即ち、アデニル酸シクラーゼの活性化、あるいはホスホリパーゼCの刺激)を中和することが出来る。
【0009】
また本発明には、製剤上許容出来る担体中に、(a)本発明の細胞レセプター、(b)本発明の細胞レセプターの断片を持つポリペプチド、あるいは(c)本発明の細胞レセプターに対する抗体を含む治療混合物が包含される。これらの治療混合物は、本発明の細胞レセプターのリガンドによる過剰刺激を特徴とする種々の疾病を処置する手段を提供する。好適な実施態様において、本発明のポリペプチドにはPTHレセプター、PTHレセプターの断片、及びPTHレセプターと免疫複合体を形成する抗体が含まれる。これらのポリペプチド及び抗体は、PTHあるいはPTHrPに関連する高カルシウム血症の症例を、これとは関連のないものと識別するための診断用薬として有用である。
【0010】
本発明の核酸プロ−ブは、遺伝子工学の一般研究者が、細胞レセプター同族体、あるいは本発明の細胞レセプターに関連した、いかなる動物由来にせよ、その細胞レセプターを同定し、クローン化することを可能にし、本発明の配列の有用性を拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1はオポッサムの腎臓のPTH/PTHrPレセプタークローン、OK−Hをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:1)。
【図1B】図1はオポッサムの腎臓のPTH/PTHrPレセプタークローン、OK−Hをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:1)。
【図1C】図1はオポッサムの腎臓のPTH/PTHrPレセプタークローン、OK−Hをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:1)。
【図2A】図2はオポッサムの腎臓のPTH/PTHrPレセプタークローン、OK−Oをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:2)。
【図2B】図2はオポッサムの腎臓のPTH/PTHrPレセプタークローン、OK−Oをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:2)。
【図2C】図2はオポッサムの腎臓のPTH/PTHrPレセプタークローン、OK−Oをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:2)。
【図3A】図3はラットの骨のPTH/PTHrPレセプターのクローン、R15Bをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:3)。
【図3B】図3はラットの骨のPTH/PTHrPレセプターのクローン、R15Bをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:3)。
【図3C】図3はラットの骨のPTH/PTHrPレセプターのクローン、R15Bをコードしている核酸とアミノ酸の配列の表示である(配列番号:3)。
【図4】図4はクローンOK−O及びR15BからのcDNAにコードされている推定アミノ酸配列の比較である。
【図5】図5はOK−O、OK−HとR15Bの推定アミノ酸配列を配列相同性に従って並べて比較したものである。
【図6A】図6はヒトのPTH/PTHrPレセプターをコードしている核酸とアミノ酸配列の表示である(配列番号:4)。
【図6B】図6はヒトのPTH/PTHrPレセプターをコードしている核酸とアミノ酸配列の表示である(配列番号:4)。
【図6C】図6はヒトのPTH/PTHrPレセプターをコードしている核酸とアミノ酸配列の表示である(配列番号:4)。
【図6D】図6はヒトのPTH/PTHrPレセプターをコードしている核酸とアミノ酸配列の表示である(配列番号:4)。
【図7】図7はラットの骨のPTH/PTHrPレセプターのcDNA、ヒトのゲノムDNAクローン及びヒトのPTH/PTHrPレセプターをコードしている2つのcDNAクローンの略図である。
【図8】図8はヒトの腎臓のPTH/PTHrPレセプターの推定アミノ酸配列の疎水性プロットである。予測される貫膜ドメインI〜VIIが示されている;A、B、Cは追加の疎水性部位を示す。
【図9】図9はOK−Hを移入したCOS細胞へのPTHrPの結合を示すグラフである。
【図10】図10はOK−Hを移入したCOS細胞におけるNlePTHによる細胞内遊離カルシウムの刺激を示すグラフである。
【図11】図11はOK−Oを移入したCOS細胞へのPTHrPの結合を示すグラフである。
【図12】図12はOK−Oを移入したCOS細胞におけるNlePTHによる細胞内遊離カルシウムの刺激を示すグラフである。
【図13】図13はR15Bを移入したCOS細胞へのPTHrPの結合を示すグラフである。
【図14】図14はR15Bを移入したCOS細胞におけるNlePTHによる細胞内遊離カルシウムの刺激を示すグラフである。
【図15】図15はOK−H、OK−O、あるいはR15Bを移入したCOS細胞におけるNlePTHによるイノシトールリン酸代謝の刺激を示すグラフである。
【図16】図16はCDM−8、OK−H,R15Bを移入したCOS細胞におけるNlePTHによるサイクリックAMP刺激を示すグラフである。
【図17】図17はヒトの腎臓(AとC)及びラットの骨(BとD)のPTH/PTHrPレセプターを一過性に発現しているCOS細胞への 125I−標識PTH(1−34)(AとB)及び 125I−標識PTHrP(1−36)(CとD)の結合を示すグラフである。競合するリガンドには、PTH(1−34)(□)、PTHrP(1−36)(*)、PTH(3−34)(■)、PTH(7−34)(+)が含まれる。データは特異的結合のパーセントとして示され、少なくとも3つの独立した実験の平均値±標準偏差を表すものである。
【図18】図18はヒトの腎臓のレセプターを一過性に発現しているCOS細胞における細胞内cAMPの蓄積刺激を示すグラフである。データは平均値±標準偏差を示し、少なくとも3つの独立した実験を表すものである。
【図19】図19はヒトの腎臓(A)とSaOS−2細胞(B)から作られた総RNA(〜10μg/レーン)のノーザンブロット分析の表示である。ブロットはヒト腎臓のPTH/PTHrPレセプターをコードしている完全長のcDNAとハイブリッドを形成した。28Sと18Sのリボソ−ムRNAバンドの位置が示されている。
【図20】図20はヒトのゲノムDNAをSstI、HindIII及びXhoI(〜10μg/レーン)で消化したもののサザーンブロット分析を示す。ブロットはヒトの腎臓のPTH/PTHrPレセプターをコードしている完全長のcDNAとハイブリッドを形成した。
【図21】図21はR15Bによってコードされているラットの骨のPTH/PTHrPレセプターの細胞膜における配置提案の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の他の特徴と利点は、以下の好適な実施態様の説明と請求の範囲から明らかになるであろう。
【0013】
材料と方法
一般:[Nle8,18,Tyr34]bPTH(1−34)アミド(PTH(1−34))、[Nle8,18,Tyr34]bPTH(3−34)アミド(PTH(3−34))及び[Nle8,18,Tyr34]bPTH(7−34)アミド(PTH(7−34))はBachem Fine Chemicals, Torrance, CAから購入した;[Tyr36]PTHrP(1−36)アミド(PTHrP(1−36))は記載(Keutman et al., Endocrinology 117:1230,1985)されているように,Applied Biosystems Synthesizer 420Aを用いて合成した。ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、EDTA/トリプシン及びゲンタマイシンはGIBCO(Grand Island, NY)から;牛胎児血清(FBS)はHiclone Laboratory, Logan, UTから入手した。ヒト腎臓の総RNAはスエーデン、ウプサラ、大学病院のPer Hellmann氏によって提供された。オリゴヌクレオチドプライマーはApplied Biosystems 380B DNA Synthesizerを用いて合成した。制限酵素類、クレノウ酵素、T4ポリヌクレオチドキナーゼとT4DNAリガーゼは、New England Biolabs,Beverly, MAから購入した。子牛アルカリホスファターゼは、Boehringer Mannheim, ドイツから購入した。すべての他の試薬は入手可能の最高純度のものであった。
【0014】
細胞
使用された細胞には、COS細胞、OK細胞、SaOS−2細胞、CHO細胞、AtT20細胞、LLC−PK1細胞及びUMR−106細胞が含まれ、Americann Type Culture Collection(Rockland, Maryland)、受託番号、夫々、CRL1650、CRL6551、HTB85、CCL61、CCL89、CL101及びCRL1161を含む種々の供給源から入手した。ROS17/2及びROS 17/2.8はGideon Rodan博士(Merck Laboratories, West Point, PA)を含むいくつかの供給源から入手した。MC−3T3細胞はマウスの骨細胞から誘導されるが、滋野長平博士(医化学、医学部、京都大学、京都、日本)を含む種々の供給源からも入手出来る。
【0015】
すべての細胞は湿度95%の空気、CO5%を含む気相で培養され、牛胎児血清(M.A. Bioproducts, Walkerville, MD)を5%、あるいは、10%添加したハムF−12培地、あるいはDMEM培地(Grand Island Biological Co.)で単層培養として維持された。培地は3乃至4日ごとに交換され、細胞は2乃至3週ごとに標準の方法を用い、トリプシン処理によって継代培養された。
【0016】
クローニング
ラット及びオポッサムのPTH/PTHrPレセプターをコードしているcDNAクローンの分離
総RNAは、最初にラットの骨肉腫(ROS)細胞(ROS 17/2.8)とオポッサムの腎臓(OK)細胞から、グアニジンイソチオシアネートを用いる標準法(Ullrich et al.,Science 196: 1313,1977; Chirgwin et al., Biochemistry 24: 5294,1979)と塩化セシウム密度勾配遠心法(Gilsen et al., Biochemistry 13: 2633,1974)によって分離された。次いでポリA+RNAs(mRNAs)は、AvivとLeder(Proc. Natl. Acad. Sci.USA 69:14087, 1972)の方法により、総RNAsをオリゴdTカラム(Pharmacia,Piscataway, NJ)を通した後回収された。ROS 17/2.8 mRNAからのcDNAライブラリーは、ポリA+RNAからGublerとHoffman(Gene(Amst.) 25: 263, 1983)の方法を用いて作られた。オリゴdTをプライマーとする、及びランダムプライマーをプライマーとするcDNAは、夫々、ポリA+ROS 17/2.8及びOK細胞のmRNAから合成された(AvivとLeder,前記)。cDNAはBstX1リンカー(Invitrogen,San Diego, CA)に連結され、5−20%の酢酸カリウム密度勾配遠心(3時間、55,000xg)によってサイズ選別が行われた。サイズ選別されたcDNAは、次いで、非自己アニーリングBstX1制限部位を用いてプラスミドベクター、pcDNAI(Invitrogen)に挿入された。その結果得られたプラスミドライブラリーは、次に、より大きなヘルパープラスミド、p3を持つE.coli(MC1061/P3、Invitrogen)を形質転換するのに用いられた。p3プラスミドは、2つの遺伝子にアンバ−変異を持ち、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性をコードしている。アンピシリン及びテトラサイクリンを用いると、p3とpcDNA I内に含まれているtRNAサプレッサー遺伝子の両方を持つ細胞のみが成長することが出来た。変異した細菌は、次いで集密状態まで培養され、プラスミドcDNAは標準技法(例えば、Ausebel et al., Current Protocols in Molecular Biology、 John Wiley Sons, New York、 1989を参照のこと)により分離された。これらDNAは、次いでDEAE−デキストラン溶液に取り込まれ、予め“サイドフラスコ”(Nunc、 デンマーク)中で75%の集密度にまで培養されたアフリカミドリザルの腎臓(COS)細胞に移入するのに用いられた。
【0017】
ROSあるいはOK細胞の機能的に完全な副甲状腺ホルモン/副甲状腺ホルモン関連蛋白質(PTH/PTHrP)のレセプターを発現する能力のあるプラスミドを含むCOS細胞のスクリーニングは、Gearingらの方法(EMBO J. : 3676, 1989)に従い、これにサイドフラスコ中でのDEAE−デキストラン移入を含むいくらかの変法を加えて行った。移入して48時間後、細胞は既述の方法(Yamamoto et al., Endocrinology 122: 1028, 1988)を用い、ただし例外として、インキュベーションの時間と温度は、夫々、2時間と室温に変更して、 125I−標識[Tyr36]PTHrP(1−36)アミドとの結合能を検査された。洗浄後、細胞は1.25%のグルタールアルデヒドで固定され、1%のゼラチンで洗浄された。サイドフラスコの先を折った後、残りの顕微鏡用スライドをNTB−2写真用乳液(Eastman Kodak, Rochester, NY)に浸した。4℃で3−4日間反応後、スライドは現像、固定され、そして0.03%のトルエンブルーで染色された。各スライドのスクリーニングは光学顕微鏡(オリンパス)下で行われた。ROS細胞からのプラスミド−DNAの1プール及びOK細胞からのプラスミド−DNAの2プール、(10,000個の独立クローン)から、夫々、PTH/PTHrPレセプターを発現している3−4個の移入されたCOS細胞が得られた。これらのプールは後に再分割された。サブプールはCOS細胞に移入するのに用いられ、そして個々のクローンは、放射性リガンドを結合することの出来るレセプター蛋白質を発現たことが確認された。
【0018】
ヒトのPTH/PTHrPレセプターをエンコードするcDNAとゲノムDNAクローンの分離
ラムダGT10中のヒト腎臓のオリゴdTをプライマーとするcDNAライブラリー(1.7x10 独立クローン)及びEMBL3(Sp6/T7)(Clontech, Palo Alto, CA)中のヒト胎盤DNAのゲノムライブラリー(2.5x10 独立クローン)は、32P−標識(ランダムプライマーをプライマーとする標識キット、ベーリンガー、マンハイム、ドイツ)されたBamHI/NotI 1.8kbの制限酵素断片で、ラットの骨のPTH/PTHrPレセプターをコーディング配列の大部分をコードしているものとのプラークハイブリッド形成法(Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2版、108−113頁、ColdSpring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY、 1989)によってスクリーニングされた(図3)。ニトロセルロースフィルターは、50%ホルムアミド、4xクエン酸ナトリウム生理食塩水(SSC; 1xSSC: 300mMNaCl,30mMクエン酸ナトリウム、pH 7.0)、2xデンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、100μg/mlのサケ精子DNA(最終濃度)を含む前ハイブリッド形成溶液中、42℃で4時間インキュベートした。ハイブリッド形成は、同じ溶液中で42℃で18−24時間行われた。フィルターは、2xSSC/0.1%SDSで室温で30分間、次いで、 1xSSC/0.1%SDSで45℃で30分間洗浄した。フイルムは、増強スクリーンを用い、−80℃で18−24時間、露出した。
【0019】
各ライブラリーから、約百万個のクローンがスクリーニングされた。陽性のクローンはプラーク法で精製され、ラムダファージDNAが分離された(Sambrook et al., 上記)。クローン化された挿入断片は、ファージDNAから、制限酵素エンドヌクレアーゼ HindIIおよびEcoRI(ラムダGT10ライブラリー)、あるいはXhoIおよびSstI(EMBL3ライブラリー)を用いて取り出され、次いで適当な脱リン酸化された制限酵素部位を用いてpcDNAI(Invitorgen, San Diego, CA)中にサブクローンされた。CsCl(密度勾配)で精製されたサブクローンの配列決定は、Sangerら(Biochem. 74:5463、 1977)の方法に従い、ジデオキシ ターミネーション法(Sequenase バージョン 2 sequencing キット、 United States Biochemical Corporation, Cleaveland, OH)によって行われた。
【0020】
逆転写とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
3μgのヒト腎臓由来のポリ(A)+RNA(Clontech,Palo Alto, CA)を73.5μlの水の中で100℃で30秒インキュベートし、氷冷して反応を静め、20μlの5xRT緩衝液(1xRT緩衝液:40mMトリス塩酸、pH8.2、40mMKCl、6.6mMMgCl、10mMジチオトレイトールと各5mMのデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP))、2μl(4単位)のRNasin(Promega Biotec, Madison, WI)、1μl(80pmol/μl)のヒトcDNAプライマーH12(5´−AGATGAGGCTGTGCAGGT−3´;配列番号:14)と80単位のトリ骨髄芽球炎ウイルスの逆転写酵素(Life Sciences, St. Pertersburg,FL)に加えた。反応混合物を42℃で40分間インキュベートした。次いで、10分の1容の最初の鎖を合成する反応混合物は、PCRにより、3mMMgSO 、200μMのdNTP、2単位のVentポリメラーゼ(New England Biolab,Beverly, MA)と各2μMの正方向と逆方向のプライマー(PCRの条件:変性、1分間、94℃;アニーリング、1分間、50℃;延長、72℃で3分間;40サイクル)を含む最終容量100μlの中で増幅された。
2つの独立したPCRは、以下の2つの異なった正方向のプライマーを用いて行われた:i)2つの以前にクローン化されたPTH/PTHrPレセプター
G CC
(上述)コーディング末端に基づく変性プライマーRK−1(5´−GGAATTCCATGGGAGCGGCCCGGAT−3´;配列番号:15)、及び、ii)ヒトゲノムクローンHPG1の5´−非コーディング領域に基づくプライマーRK−2(5´−CGGGATCCCGCGGCCCTAGGCGGT−3´;配列番号:16)。両PCR反応はヒトのPTH/PTHrPレセプターのコーディング領域の713〜731番目のヌクレオチドを現す逆プライマーH26(5´−AGTATAGCGTCCTTGACGA−3´)を用いた(図4)。PCRの生成物はクレノー酵素により末端を平滑にされ、EcoRVで切断されて、脱リン酸されたpcDNAIにクローン化された。
【0021】
ノーザンブロット分析:総RNAはSaOS−2細胞及びヒト腎臓からグアニジウムチオシアネート法(Chirgwin et al.,Biochem.18:5294, 1979)によって抽出された。ノーザンブロット分析のため、〜10μgの総RNAが1.5%/37%ホルムアルデヒドゲル上での電気泳動にかけられ、ニトロセルロースフィルター(Schleicher andSchuell, Keene, NH)にブロットされた。ハイブリッド形成条件はファージライブラリースクリーニングの条件と同じであった(上記参照)。フィルターは、0.5xSSC/0.1%SDSの最終洗浄条件で30分間、60℃で洗浄し、オートラジオグラフィ−のために露出した。
【0022】
サザンブロット分析:ヒトゲノムDNAはSDS/プロテイナーゼK法(Gross−Bellard et al.,Eur.J.Biochem.36:32, 1973)を用いて生成された。サザーン分析のため、〜10μgのDNAがSstI、PvuII及びXhoIによって消化され、0.8%アガロースゲル上の電気泳動にかけられ、ニトロセルロース膜(Schleicher and Schull, Keene, NH)にブロットされた。ハイブリッド形成条件はファージライブラリースクリーニングの条件と同じであった(上記参照)。フィルターは、0.5xSSC/0.1%SDSの最終洗浄条件で30分間、55℃で洗浄し、オートラジオグラフィーのために露出した。
【0023】
機能分析
COS細胞に発現されたクローン化レセプターの機能的諸性質を特徴づける試験には以下のものが含まれた:
I)PTHとPTHrPの断片及び類似体の結合、
II)PTHとPTHrPの断片及び類似体によるサイクリックAMP蓄積の刺激、
III)PTHとPTHrPの断片及び類似体による細胞内の遊離カルシウムの増大、及び
IV)PTHとPTHrPの断片及び類似体によるイノシトールリン酸代謝の活性化。方法論は次の通りである:
【0024】
ラジオレセプターアッセイ
[Nle ,Nle18,Tyr34]bPTH−(1−34)アミド(NlePTH)及び[Tyr36]PTHrP(1−36)アミド(PTHrP)は Na 125I(担体なし、New England Nuclear, Boston, MA)により既報(Segre et al., J.Biol.Chem. 254:6980, 1979)に従ってヨード化され、逆相HPLCによって精製された。簡略に述べると、標識されたペプチドは0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)に溶かされ、C18Sep−pakカートリッジ(Waters Associates, Inc., Milford, MA)にかけられ、0.1%TFA中60%アセトニトリル溶液によって溶出された。凍結乾燥後、ラジオリガンドは、次いで、C18−μBondapakカラム(3.9mmx30cm。Waters Associates)にかけられ、0.1%TFA中30−50%のアセトニトリルの直線密度勾配を用い、2ml/分の流速で30分かけて溶出した。ラジオリガンドは、2つのピ−クに別れて溶出した;最初のピークは約38%のアセトニトリルのところで溶出し、より高い総結合と特異的結合を示したので、この研究に用いられた。比活性は500±75mCi/mgで、これは平均のヨード−ペプチド比1に相当する。
【0025】
COS−7細胞は15cmのプレートで、DMEM、10%の熱不活性化FBS、10mg/Lゲンタマイシン中、80−90%の密集度まで培養された。DEAE/デキストラン法(Sambrook et al.,上記)により1−2μgのプラスミドDNAを移入した24時間後、細胞をトリプシン処理し、多穴プラスチック皿(直径16あるいは35mm、Costar, Cambridge, MA)に、細胞濃度5x10細胞/cmで再配分した。細胞数は移入後わずかに増加したのみであった。更に培養を48時間続けた後、ラジオレセプターアッセイが行われた。培養培地は、研究開始直前、50mMトリス−塩酸(pH7.7)、100mMNaCl、2mMCaCl 、5mMKCl、0.5%熱変性牛胎児血清(GICBO)、5%熱変性ウマ血清(KC Biological Inc., Lenexa, KS)を含む緩衝液と交換された。特に指示のない限り、研究は、細胞をこの緩衝液中、15℃、4時間、4x105 cpm/ml(9.6x10−11 M)の 125I−標識のNlePTHあるいはPTHrPとインキュベートして行われた。
【0026】
インキュベーションは、緩衝液を吸引除去し、粘着性細胞を含む培養皿を0.9%NaCl溶液で繰り返し(3回)、15秒間にわたって洗浄することによって終焉させた。細胞に結合した放射能は、各ウエルに連続(3回)1NNaOH(200μl)を加えることによって回収された。室温で30分後、このNaOHはガラス管に移された。二回目、三回目の1NNaOH(200μl)による抽出を、一回目のものと合わせ、総放射能はγ−スペクトロメター(Packard Instruments, Downers Grove, IL)で測定された。細胞を含まぬ培養皿へのトレイサーの付着は、たとえ容器が培養培地とプレインキュベーションされても、無視出来る程度であった(加えられた総カウントの0.2%以下)。
【0027】
cAMP蓄積の測定
細胞内cAMPの蓄積は既述(Abou−Samra et al., J.Biol.Chem.262:1129, 1986)のようにして測定された。24穴プレート内の細胞を0.1%BSAと2mMIBMXを含む培地で洗浄した。次いで、細胞はPTHまたはPTHrPと15分間、37℃でインキュベートした。上清を除き、細胞は直ちにプレート全体をドライアイス粉末中に置くことによって凍結した。細胞内cAMPは1mlの50mMHCl中で細胞を融かすことによって抽出され、抗cAMP抗体(例、Sigma, St.Louis, MO)を用い、特異的ラジオイムノアッセイによって分析された。cAMPの代わりにトレーサーとして用いられたcAMP類似体(2´−O−モノサクシニル−アデノシン3´:5´−サイクリックモノリン酸トシルメチルエステル、Sigmaより購入)は、クロラミンT法によりヨウ素化された。遊離のヨウ素は、ヨウ素化されたcAMP類似体をC18Sep−pakカートリッジ(Waters, Milford, MA)に吸着することによって除去した。
dHOで洗浄後、ヨウ化cAMP類似体はSep−pakカートリッジから40%アセトニトリル(ACN)と0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)によって溶出された。ヨウ化cAMP類似体は凍結乾燥され、1mlの0.1%TFAにもどし、C18逆相FPLCカラム(Waters)に注入された。カラムを0.10%ACNの1%TFA溶液で平衡化し、0.1%TFA中、10−30%ACNの密度勾配で溶出した。この操作によりモノヨウ化cAMP類似体を、非ヨウ化cAMP類似体から分離することが可能となる。トレーサーは−20℃で保存する時は、4ヶ月までは安定である。アッセイに用いられた標準品、アデノシン3´,5´りん酸はSigmaから購入した。試料(1−10μlのHCl抽出液)あるいは標準品(0.04−100fmol/チュ−ブ)を50mM酢酸ナトリウム(pH5.5)で希釈し、トリエチルアミンと無水酢酸の混合物(容量比 2:1)10μlでアセチル化した。アセチル化後、cAMP抗血清を、PBS(pH7.4)、5mMEDTA及び1%正常ウサギ血清中に作られた原液(1:4000)から加えた。トレーサーは、0.1%BSAを含むPBS(pH7.4)で希釈して加えられた(20,000cpm/チューブ)。アッセイは4℃で一晩インキュベートした。結合したトレーサーは100μlのヤギの抗ウサギ抗血清(1:20、PBS中)及び1mlの7%ポリエチレングリコール(分子量5000−6000)を加えて沈殿させ、2000rpmで30分間、4℃で遠心した。上清を除き、結合した放射能をγ−カウンター(Micromedic)で測定した。標準曲線はMicromedicから提供された4−パラメーターRIAプログラムを用いて算定した。典型的な例では、アッセイ感度は0.1fmol/チューブで、トレーサーの50%を置換する標準濃度は5fmol/チューブである。
【0028】
cAMP蓄積をアッセイする別法では、PTH/PTHrPレセプターcDNAを移入されたCOS細胞は、プラスチックポリスマンによって、10mMトリス−塩酸(pH7.5)、0.2mMMgCl、0.5mMエチレングリコールビス(2−アミノエチル)N,N´−四酢酸(EGTA)(Sigma)と1mMジチオトレイトール(Sigma)を含む溶液中に集められる。細胞は緊密に合ったダウンスホモジェナイザーの20ストロークでホモジェナイズし、13,000xgで15分間4℃で遠心する(Eppendorf, 5412型, Brinkmann Instruments, Inc., Westburg, NY)。原形質膜を含むペレットはダウンスホモジェナイザーで数ストロークにより同じ緩衝液に再度懸濁し、更に同緩衝液で希釈して蛋白質濃度を、Lowryらの方法(Lowry et al., J. Biol. Chem.193: 265, 1951)で測定して約1.2mg/mlとする。約30μg(25μl)の膜を、種々の濃度のホルモン、または媒体のみと10分間、37℃(最終容量、100μl)で、50mMトリス−塩酸(pH7.5)、0.8mMATP、4x10 cpm[α−32P]ATP(New EnglandNuclear, Boston, MA)、9mMテオフィリン、4.2mMMgCl 、26mMKCl、0.12%BSA、及び5mMクレアチンりん酸(Schwartz/Mann Division, Becton−Dickensen & Co., Orangeburg, NY)とクレアチンホスホキナーゼ(Schwarts/Mann)を含むATP再生系とインキュベートする。インキュベーションは、膜懸濁液を加えることによって開始され、100μlの20mMcAMP、約50,000cmpの[H]cAMPと80mMATPを含む溶液を加えることによって終了させる。反応混合物を煮沸し、生成された[32P]cAMPはイオン交換カラム(Dowex 50 W−X4,Biorad Lab, Richmond, CA)とアルミナ(Sigma)上の連続カラムクロマトグラフィーによって精製される。[32P]cAMPはβ−シンチレーションカウンター(Packard Instrument Co.)で、[32P]cAMPの回収に対する補正をして測定される。
【0029】
細胞内遊離カルシウムの測定
PTH/PTHrPレセプターcDNAを移入された細胞の細胞内カルシウムレベルの測定は、Fura−2 AM(Fura−2のアセトメトキシエステル、Molecular Probes Inc., Eugene, OR)を負荷した細胞を用いて行われた。方法論の詳細は以下の通りである:
COS細胞を塗布したカバーガラスを、Fura−2 AMを負荷し、以下のものを含む(mM濃度)緩衝液中でインキュベートした:HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N´−[2−エタンスルホン酸]),20;CaCl ,1; KCl,5; NaCl,145; MgSO ,0.5;NaHCO ,25; KHPO,1.4; グルコース,10;およびFura−2 AM(1−[2−(5´−カルボキシオキサゾール−2´−イル)−6−アミノベンゾフラン−5−オキシ]−2−(2´−アミノ−5´−メチルフェノキシ)エタン−N,N,N´,N´−四酢酸ペンタアセトキシメチルエステル),0.5; 37℃でpH7.4、95%空気と5%CO とを45分間通した。Fura−2 AMを負荷した細胞は、次いで、以下のものを含む(mM濃度で)修正クレブス・ヘンゼライト(KH)緩衝液で洗浄した: HEPES、 20; CaCl , 1; KCl, 5; NaCl, 145;MgSO 、 0.5; NaHPO , 1; グルコース、 5; pH7.4。エステルの開裂が起きたことをチェックするために、Fura−2 AMインキュベーション後、時間を変えて励起スペクトルを測定した。インキュベーション開始後5分で、励起スペクトルは約360nmにピークがあり、Fura−2 AMの不完全な加水分解を反映していたが、30分を越えると、励起スペクトルはFura−2の特徴である約345nmにピークがあった。
個々の細胞の蛍光を測定するために、カバーガラスを顕微鏡の組織チャンバー(Biophysica Technologies, Inc., MD)に置いた。チャンバーは、シリコンラバーシールを持つテフロン製の浅い、傾斜のついたコンパートメントからなっていた。カバーガラスはチャンバーの底の役割をした。カバーガラスを所定の場所に密着させるシリコンラバーには、ヒーター/クーラーリングが封じ込められていた。温度はヒーターに0−7.4ボルトを加えることによって、22℃〜37℃の間で変動させた。温度を特定しない限り、実験は37℃で施行された。チャンバーは倒立顕微鏡(Zeiss IM−35,Thornwood, NY)の載物台に載せた。Fura−2の蛍光のために、コンデンサー(Photon Technologies Intenational(PTI) Inc., NJ)の焦点におかれた75ワットのキセノンアーク灯で励起された。鏡板が透過光分割器と交番する回転チョッパーによって交番される回折格子単色光分光器が、波長選定に使用された。単色光分光器の出力は結集されて一本の共通の光路を形成し、調節可能な虹彩を通して発光源のハウジングを励起した。次いで、光は石英レンズを、そして100倍のニコン蛍光対物レンズを通して二色性の鏡を通過した。光量子計算PMT装置による検出が光の出力測定に使用された。データの分析は、MS−DOS操作系を用いるIBM互換性AT/286コンピュータにPTIソフトウエアを使用して行った。データは圧縮二者択一性形式に保存、操作された。
【0030】
細胞内のカルシウム濃度は次式に従って計算された: [Ca2+]i=Kd(R−Rmin)/(Rmax−R)B、ここで、Rは340と380nmにおける細胞の蛍光の比であり;RmaxとRminは、夫々、飽和量のカルシウムと実際上ゼロのカルシウムの存在下の、Fura−2の340と380nm励起波長における蛍光強度の比であり;Bは380nmにおけるゼロカルシウム存在下のFura−2の蛍光の、飽和量のカルシウム存在下の蛍光に対する比であり;KはFura−2のカルシウムに対する解離常数である。Rmaxを測定するために、実験の終末にイオノマイシンをFura−2を負荷した細胞に加えて細胞外(1mM)と細胞内環境の間のCa2+を平衡化した。次いで、Rminを計算するために、1mMのEGTAを細胞浸液に加えた。異なった温度では異なった解離常数が用いられた: 34−37℃においては224nM、及び24−27℃においては135nMである。
【0031】
イノシトールりん酸の測定
PTH/PTHrPレセプターを移入されたCOS細胞におけるイノシトールりん酸の代謝レベルは既報の方法を用いて測定された(Bonventre et al., J.Biol.Chem. 265: 4934, 1990)。
【0032】
結果
分子的性質
2つの別個のクローン(OK−H及びOK−O)は、ともにOK細胞のcDNAライブラリーから分離されたが、およそ2キロベースの長さを持っていた。これらのクローンの決定されたヌクレオチド配列と予想されるアミノ酸配列は、夫々、図1(配列番号:1)及び図2(配列番号:2)に示されている。ROS細胞のcDNAライブラリーから分離されたR15Bクローンは、およそ4キロベースの長さであった。ラットの骨のPTH/PTHrPレセプターの決定されたヌクレオチド配列と予想されるアミノ酸配列は図3(配列番号:3)に示されている。
【0033】
3つのcDNAクローンは、イニシエーターメチオニンとして有望な候補者と予想されるメチオニン残基をコードしているコドンを持つという範疇によって完全な長さのものと思われる。これらメチオニンコドンの後ろには、“シグナル−ペプチド”配列であることを示唆する性質を持つアミノ酸配列(DNAから演繹して)が続く。3つのレセプターcDNAはすべて、G−蛋白質関連のレセプターに典型的なモデル、推定の7回−貫膜モデルへの“適合”を可能にする位置に終止コドンを持つ。最も重要なことは、3つのクローン化されたレセプターが、すべて、リガンドと結合して活性化された時、細胞内のエフェクターを活性化する能力を有することである。これらの諸性質は、分離された3つのクローンすべてが、完全長のcDNAをエンコードすることを示唆する。
【0034】
図4は、OK−O及びROS 15BからのcDNAによってコードされているアミノ酸配列間の高度の相同性を示す。これら2つのレセプター間には、全体で87%の相同性があり、77.8%のアミノ酸の一致がある。このアミノ酸の長い範囲にわたっての高度の一致は、PTHレセプターのアミノ酸配列が進化の上で高度に保持されていることを証明している。これは、OK−OとR15B両者からのデータをヒトを含む他の動物種に外挿することを可能にする。
【0035】
図5は、3つのクローン化されたcDNAすべての推定アミノ酸配列を配列相同性に従って一線に整列させたものである。OK−H配列はOK−OとC−末端尾部を除き同一である。ここでOK−O配列は全部で585アミノ酸残基を持つが、OK−H配列は515アミノ酸で止まっている。これは、OK−O配列と比べてOK−H配列に欠けているただ1個のヌクレオチド(G)に起因し、前者におけるフレ−ムシフトと早期の終止コドンの原因となっている。OK−OとOK−Hが2つの別個の遺伝子の産物か、あるいは実験室の人為産物かは不明である。
【0036】
G蛋白質に共役したレセプターのいくつかは、イントロン無しの遺伝子によってコードされている(Kobilka et al., Nature 329:75, 1987; Kobilka et al., J.Biol.Chem. 262:7321, 1987; Heckert et al., Mol. Endocrinol., 6:70, 1992; Kobilka et al., Science 238:650, 1987; Bonner et al., Science 237:527, 1987; Sunahara et al., Nature 347:80, 1990)。ヒトのPTH/PTHrPレセプターcDNAを単離するために、ヒトcDNAライブラリーとヒトゲノムライブラリーの両者を、ラットの骨のPTH/PTHrPレセプターのコーディング領域の大部分を代表するプローブ(BamHI/NotI)を用いてスクリーニングした(図3)。ヒト腎臓のcDNAライブラリーのスクリーニングの結果、クローンHK−1が分離されるに至った(図6)[配列番号:4]。ラムダGT10の2つのEcoRIクローニングサイトの1つが、ライブラリー構成の結果、除去されたことが判明したので、cDNA挿入断片及び37kb(左)ラムダアームの〜250bpを含むHindIII/EcoRIファージ断片をpcDNAIの相当する制限部位にサブクローニングした。DNA配列決定の結果、クローン化されたcDNAは、3´コーディング領域の〜1000bpと、Aの多い3´−末端を含む3´非コーディング領域の〜200bpを含むことが判明した。XhoI部位に対する5´側コーディング領域は、次いでライブラリーを再スクリーニングするのに使用され、クローンHK−2の分離を導いたが、これは、pcDNAIへのサブスクリーニング後、コーディング領域の〜1400bpを含むことが判明した。ライブラリーの第三のスクリーニングに対しては、HK−2のPvuII/PstIが用いられた; 分離されたクローンHK−3はHK−2と同一であることが判明した。
【0037】
ゲノムライブラリーのスクリーニング(〜10 pfu)の結果、4つの独立したクローンが分離された。これらのクローンの制限酵素消化断片のサザーンブロット分析を正常ゲノムDNAのそれとの比較した結果、1つの15kbのゲノムクローン、HPG1(また、HG4Aとも呼ばれる)は、SstIで消化された正常のヒトゲノムDNAからの、ハイブリッドを形成するDNA種と同じサイズのSstI/SstI断片を含むことが判明した(下記参照)。SstI/SstI断片を構成するハイブリッドを形成する2.3kbのSstI/SstIDNA断片と、〜8kbXhoI断片は、共にpcDNAIにサブクローニングされた。さらにSstI/SstIDNA断片のサザーンブロット分析の結果、ある〜1000bpのBamHI/SstI断片がヒトのPTH/PTHrPレセプターの一部をコードしており、これが、後に、推定のシグナルペプチドと〜1000bpのイントロンによって中断されている5´−非コーディング領域をコードしているエキソンを代表していることが判明した(図7)。
【0038】
コーディング領域の残る〜450ヌクレオチドを分離するために、ヒト腎臓からのポリ(A)+RNAをH12でプライミングの後、逆転写した(図7)。一本鎖合成後、2つの独立したPCRを以下の2つの別個の正方向プライマーを用いて行った: i)2つの以前にクローン化されたPTH/PTHrPレセプター、OK−OとR15Bの5´−コーディング末端に基づく変性プライマーRK−1,及び、ii)HPG1の5´−非コーディング領域に基づくプライマーRK−2である。H−26が両反応の逆プライマーとして用いられた。サザーンブロットおよび制限地図分析によって、ヒトのPTH/PTHrPレセプターをコードしている増幅されたDNAの予想されたサイズが確認された。ヒトのPTH/PTHrPの5´−末端をコードしている平滑末端のPCR生成物は、脱リン酸されたEcoRV部位を用いてpcDNAIにクローン化された。各PCRクローンの配列分析によって、それらの5´ヌクレオチドの違いは正方向プライマーの配列の違いによることが確認されたが、それ以外は同一の配列であることが明らかとなった。ヒトのPTH/PTHrPレセプターcDNAの両鎖のヌクレオチド配列決定により、593アミノ酸残基を持つ蛋白質をコードしている開放読取り枠が明らかとなった(図6、配列番号:4)。
【0039】
完全長のヒト腎臓のPTH/PTHrPレセプターcDNA、HKrkは、PCRクローン#2とHK−2のBamHI/PvuII断片を用いて構成された。ヒトのPTH/PTHrPレセプターをコードしている完全長のcDNAを用いて、ヒト腎臓とSaOS−2細胞からの総RNA(〜10μg/レーン)のノーザンブロット分析の結果、〜2.5kbの1つの主要なハイブリッドを形成するDNA種が明かにされた(図19)。正常のヒトゲノムDNAのXhoI消化物は、同じ完全長のcDNA(図20)でプローブされると、1つの主要な約5.5kbのハイブリッドを形成する種と、弱くハイブリッドを形成する4と8kbの2つのDNA種が現れた。これらのデータは、ヒトのPTH/PTHrPレセプターが単一の遺伝子の産物であることを示唆している。完全長のクローンは、次いで、機能的及び生物学的諸性質検討のため、上述の方法によりCOS細胞に一過性に発現された。
【0040】
ヒトのレセプターのオッポサム腎臓のPTH/PTHrPレセプター及びラット骨のPTH/PTHrPレセプターとの比較により、夫々、81%と91%のアミノ酸配列の同一性が明らかになり、結果として非常に類似した疎水性プロットを示した(図8)。すべての細胞外システインは、推定シグナルペプチドにおける2つのシステイン残基を含めて、すべての可能性のある細胞外のN−グルコシル化部位のように、保存されている。ヒトの腎臓とラットの骨のPTH/PTHrPの間で同一でないアミノ酸のいくつかは、ヒトとオポッサムのレセプターの間では保存されていることが判明した。これらの保存されているアミノ酸残基は、51位のArgからLeu、58位のArgからTrp、262位のArgからHis、358位のAspからHis、422位のIleからThr、及び、427位のThrからLeuである。
【0041】
生物学的諸性質の検討
オポッサムとラットのPTH/PTHrPレセプターの生物学的性質の機能的特性の検討は一過性に移入されたCOS細胞において、放射性リガンドとして 125I−PTHrPと 125I−NlePTHの両方を用いるラヂオレセプターアッセイ法により、また、リガンドによるcAMPの蓄積、細胞内遊離カルシウムの増加、及びイノシトールりん酸代謝の促進を測定するバイオアッセイにより、上記の方法によって行われた。
【0042】
図9はOK−Hを発現しているCOS細胞が、 125I−PTHrPを結合することを示している。これらのデータは、また、無傷のPTH(1−34)、またはアミノ末端で短縮されている(即ち、3−34及び7−34類似体、これらは8位と18位にメチオニンの代わりにNle置換を、そして34位のフェニルアラニンの代わりにチロシン置換を持っている)PTH類似体が結合の競合阻害剤として用いられた場合、PTHrPの結合が阻害されることを示している。同様に、OK−Hを発現しているCOS細胞への 125I−NlePTHの結合は、PTHrPあるいはPTHrP断片が競合阻害剤として用いられた時、阻害された。これらのデータは、PTHとPTHrPは共にOK−Hによってコードされているレセプターに結合することを示唆している。
【0043】
図10は、OK−Hを発現しているCOS細胞が、NlePTHに暴露されると細胞内の遊離カルシウムの濃度を増大するが、OK−OあるいはR15Bレセプターを発現し(図12と図14)、NlePTHで刺激されているCOS細胞と比べると、増加は程度が低いか(平均=39nm)、あるいは全く無いことを示している。OK−OあるいはR15Bを発現しているCOS細胞とは異なり、OK−Hを発現しているCOS細胞はNlePTHで刺激された時、イノシトールりん酸の代謝の増加は検出されない(図15)。
【0044】
図11はOK−Oを発現しているCOS細胞が、 125I−PTHrPを結合することを示している。これらのデータは、また、PTHrPの結合が、無傷のPTH(1−34)、またはアミノ末端で短縮されている(即ち、3−34及び7−34類似体、これらは8位と18位にメチオニンの代わりにNle置換を、そして34位にフェニルアラニンの代わりにチロシン置換を持つ)PTH類似体が結合の競合阻害剤として用いられた場合、阻害されることを示している。同様に、OK−Hを発現しているCOS細胞への 125I−NlePTHの結合は、PTHrPあるいはPTHrP断片が競合阻害剤として用いられた時、阻害された。これらのデータは、PTHとPTHrPが共にOK−Oによってコードされているレセプターに結合することを示唆している。
【0045】
図12はOK−Oを発現しているCOS細胞が、NlePTHとPTHrPによる刺激後、細胞内の遊離カルシウム濃度及びイノシトールりん酸の代謝速度を増大することを示している(図15)。
【0046】
図13はR15Bを発現しているCOS細胞が、 125I−PTHrPを結合することを示している。これらのデータは、また、PTHrPの結合が、無傷のPTH(1−34)、またはアミノ末端で短縮されている(即ち、3−34及び7−34類似体、これらは8位と18位にメチオニンの代わりにNle置換を、そして34位にフェニルアラニンの代わりにチロシン置換を持つ)PTH類似体が結合の競合阻害剤として用いられた場合、阻害されることを示している。同様に、OK−Hを発現しているCOS細胞への 125I−NlePTHの結合は、PTHrPあるいはPTHrP断片が競合阻害剤として用いられた時、阻害された。これらのデータは、PTHとPTHrPが共にR15Bによってコードされているレセプターに結合することを示唆している。
【0047】
図14は、R15Bを発現しているCOS細胞が、OK−Oを発現しているCOS細胞が刺激された場合と同程度に細胞内カルシウム濃度を増大することを示している。
【0048】
図15は、R15BあるいはOK−Oを発現しているCOS細胞が、NlePTHあるいはPTHrPによる細胞の刺激後、イノシトール三りん酸(IP )とイノシトール二りん酸(IP )蓄積の急速な増加によって証明されるように、フォスファチジルイノシトールの加水分解速度を増大することを示している。逆に、OK−Hを発現しているCOS細胞は、NlePTH、あるいはPTHrPによる刺激後も、イノシトール三りん酸とイノシトール二りん酸の蓄積にいかなる増加も検出出来なかった。これらのデータは、R15BとOK−OによってコードされているPTHレセプターはホスホリパーゼCに、恐らくG を介して共役していることを示唆する。OK−OとOK−Hの間の唯一の違いはC末端尾部にあるので、これらのデータはOK−OとR15BによってコードされているPTHレセプターのC末端はホスホリパーゼCの活性化に関与していることを強く示唆する。
【0049】
図16は、R15BとOK−Hを発現しているCOS細胞が、NlePTHによる刺激後、cAMP蓄積を増大することを示している。同様の結果は、OK−Oを発現しているCOS細胞においても得られた。cDM18ベクターのみを移入されたCOS細胞ではcAMP刺激は認められなかった。これらのデータは、アデニル酸シクラーゼに共役しているPTHレセプターは、レセプターのC末端の細胞質側の完全長の尾部を必要としないことを示唆している。これらのデータは、OK及びROS細胞のcDNAライブラリーの双方からクローン化された3つのPTH/PTHrPレセプターのすべてが、両ペプチドのアミノ末端リガンドを同等に結合することを示唆している。リガンドによるこれらすべてのレセプターの活性化は、アデニル酸シクラーゼを、恐らくはグアニンヌクレオチド結合蛋白質(G−蛋白質)の1つの活性化を通じて、刺激する(細胞内cAMPの増加によって測定されるように)。G−蛋白質は、三量体ペプチド構造を持ち、そのうち、サブユニットの1つ、アルファーは、夫々、別個であるが、他の2つ、ベーターとガンマは同一か、または相同性が高い。これらG−蛋白質の1つ、(G )はG−アルファー“刺激性”(G−アルファーs)を含み、これはアデニル酸シクラーゼの活性化に関与する。
【0050】
リガンドのOK−Hへではなく、OK−OとR15Bへの結合もまた、細胞内の遊離カルシウムを増加してイノシトールりん酸の代謝を刺激する。これらの性質は、OK−OとR15Bレセプターのリガンドによる活性化は、共に第二の細胞内エフェクター、ホスホリパーゼCの刺激をもたらすことを強く示唆している。これら活性化されたレセプターとホスホリパーゼCとの共役機構は、G とは全く異なるG−蛋白質であるらしい。対照的に、カルボキシ末端で切り詰められている活性化されたOK−Hレセプターは、活性化された時のその性質が、ホスホリパーゼCを活性化しないか、あるいはホスホリパーゼCを効果のない活性化をすることを示唆する。
【0051】
PTH/PTHrPレセプターのカルボキシ末端尾部の生化学的役割は、鋳型としてR15Bを、そして481位に終止コドンを挿入された上流プライマーとを用いる標準PRC技法により、カルボキシ末端短縮ラットレセプターR480を構成することによって、さらに検討された。簡略に述べると、上流プライマーはラットcDNA配列(図3; 配列番号: 3を見よ)の1494−1513番のヌクレオチドに基づく合成オリゴヌクレオチドで、これに終止コドンとXbaIクローニング部位が加えられたものであった。30回のPCRサイクルが行われ、各サイクルは変性92℃、1分;アニーリング60℃、1分;延長72℃1分からなっていた。生成物はNsiIとXbaIによって切断され、ゲル電気泳動によって精製された。R15Bは、XbaIとNsiIによって順次消化され、精製されたPCR生成物は、次いで、XbaI−NsiIで切断されたR15Bベクターに連結された。その結果出来たプラスミド、R480は細菌中で増幅され、配列が決定された。
【0052】
R480は、591アミノ酸残基を持つレセプター中のものと同一な480のアミノ酸をコードしている。この短縮cDNAはCOS−7(一過性発現)とCHO細胞(安定発現)に発現された。短縮レセプター、R480と自然型レセプター、RBを発現しているCOS−7とCHO細胞は共にPTH(1−34)を同等の親和性を持って結合する。活性化されると、R480は、正常型レセプターと同様にCOS−7とCHO細胞におけるcAMP蓄積を刺激した。正常型レセプターとは対照的に、R480はPTHで刺激された時、COS−7細胞、あるいはCHO細胞にも[Ca2+]イオンの増加を仲介しなかった。これらのデータは、PTH/PTHrPレセプターによるホスホリパーゼCとアデニル酸シクラーゼの活性化に対する分子的要求性はお互いに異なっていることを示唆し、PTH/PTHrPレセプターのカルボキシ末端尾部のホスホリパーゼCとの、しかしアデニル酸シクラーゼとではない、共役における主要な役割を指摘している。勿論、活性化されたPTH/PTHrPレセプターが追加のG−蛋白質および/または細胞内のエフェクター分子を活性化する可能性もまたある。
【0053】
クローン化されたヒトのPTH/PTHrPレセプターを移入されたCOS−7細胞の分析によって、放射標識PTH(1−34)とPTHrP(1−36)(〜200,000 cpm)が発現されたレセプターに、R15B(特異的結合:夫々、8.1+3.5%と7.1+4.1%)を発現しているCOS−7細胞に対して観察されたのと同様の効率(特異的結合:夫々、10.1±3.7%と7.6±6.0%)で結合することが明らかとなった。発現されたヒトPTH/PTHrPレセプターは、ラット骨のレセプターよりも2倍高い見掛けのKdでPTH(1−34)と結合した: 〜5nM対〜10nM(図17)。しかしながら、それらの高度のアミノ酸相同性にも拘らず、2つのレセプターはPTH(3−34)とPTH(7−34)に対する親和性に著しい差異を表した。PTHrP(1−36)はヒトのPTH/PTHrPレセプターに対し、ラットのレセプターに対するよりも2から4倍低い親和性を示した(HKrKに対する〜35nM対R15Bに対する〜10nM)。このことはPTHrP(1−36)がラジオリガンドとして用いられた時の方が、さらに著明であった。PTH(3−34)及びPTH(7−34)に対する親和性は、発現されたHKrKの方がR15Bよりも7から35倍も高かった(PTH(3−34)に対して、夫々、〜7nM対〜45nM;PTH(7−34)に対して、夫々、〜60nM対〜2000nM)。いずれかのレセプターを発現しているCOS細胞において、PTH(1−34)とPTHrP(1−36)は共に細胞内の遊離カルシウムとcAMPの蓄積を同程度に刺激した(図18)。
【0054】
PTH/PTHrPレセプターの関係
ヒトのPTH/PTHrPレセプターのアミノ酸配列は、ラット、真獣類動物からの骨PTH/PTHrPレセプターと比べて、非常に高度の保存を示すが、オポッサム、有袋動物のPTH/PTHrPレセプターとの配列の相同性はそれほど著明ではない。オポッサムの腎臓及びラットの骨のレセプターのように、ヒトの腎臓のレセプターは、PTHまたはPTHrPで刺激された時、細胞内のcAMPと遊離のカルシウムの増加を誘引する。ヒトのPTH/PTHrPレセプターとオポッサム及びラットの同族体間の高度の相同性にも拘らず、一過性に発現されたヒトのレセプターは、ラットの骨のレセプターとは異なった機能的特徴を持っている。これには、PTH(1−34)に対するやや高い親和性とPTHrP(1−36)に対する著しく低い親和性が含まれる。より高い親和性はPTH(3−34)と特にPTH(7−34)に対して認められ、そのヒトのレセプターに対する親和性はラット骨レセプターと比較して約35倍も高かった。これらの発見は、PTH/PTHrP類自体の将来の開発に重要な意味を持つかも知れない、それは種得異的な組織は、インビトロでアンタゴニスト(とアゴニスト)の有効性検査に対する適当な組織であることを予言するからである。
【0055】
PTH/PTHrPレセプターの他のレセプターに対する関係
PTHとPTHrPレセプターの生化学的諸性質は、これらがG−蛋白質連携の膜レセプターとして知られている膜レセプター分子群のメンバーであることを示唆している。よく調べられているG−蛋白質レセプターの構造的特徴は、それらがすべて、数個の連続した疎水性アミノ酸からなる少なくとも7つの領域を持ち、これらの領域の各々が原形質膜を貫通するのに十分な長さのものであることである。
【0056】
G−蛋白質連繋の膜レセプターの1つのサブファミリー、糖ペプチドレセプターサブファミリーと呼ばれるものには、糖ペプチドホルモン(甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、濾胞刺激ホルモン、及び絨毛性性腺刺激ホルモン)によって結合され、活性化されるレセプターが含まれる。これらのレセプターは、すべて以下のような特徴がある:(1)リガンド結合ドメインの一部またはすべてを含むと思われる広範な推定アミノ末端細胞外ドメイン(300アミノ酸残基よりも大)を持ち、(2)著しいアミノ酸相同性を、殊に、7つの推定貫膜ドメインに示すことである。もう1つのサブファミリー、アドレナリン作動性/ムスカリン作動性サブファミリーと呼ばれるものには、カテコールアミン、神経筋伝達物質、及びレチノールのような小分子のリガンドによって活性化されるレセプターが含まれる。これらのレセプターは、すべて、特に7つの推定貫膜ドメインにおける著しいアミノ酸相同性に加えて、比較的短い(25−75アミノ酸)推定アミノ末端細胞外ドメインが特徴である。これらのレセプターのリガンドによる活性化には、多数の貫膜ドメインの内の少なくとも幾つかが関与すると思われ、レセプターのアミノ末端部が関与するとは思われない。
【0057】
ラットのPTH/PTHrPレセプター(図3)の推定アミノ酸配列から推論され得るいくつかの構造的特徴は、PTH/PTHrPが1つのG−蛋白質連繋のレセプターであることを示唆している。アミノ末端は、1つの疎水性ドメイン及び3つの連続したロイシン残基を含むシグナルペプチドの特性を示す。この20−28アミノ酸残基からなるアミノ酸範囲は、他の糖蛋白質レセプターの細胞外ドメインに先行するアミノ末端のように、リーダー配列として役立つのかも知れない。また、推定貫膜ドメインを代表する7つの疎水性部分の集団がある(図19)。
【0058】
オポッサムの腎臓、ラットの骨、及びヒト腎臓のPTH/PTHrPレセプターの予想されるアミノ酸配列は、これらがG−蛋白質連繋のレセプターサブファミリーのいずれにもうまく当て嵌まらないことを示唆している。ラット及びヒトのPTH/PTHrPレセプターの糖ペプチドレセプター及びアドレナリン作動性/ムスカリン作動性サブファミリーとの全般的相同性はおよそ10から20%であるが、貫膜ドメイン内の相同性はこれより幾分高い。後のことは、これらの領域に出て来る疎水性アミノ酸のすべては限られているので、当然のことと予想される。20%相同性は、これらサブファミリーの夫々のメンバーとして一般に受け入れられているレセプター間で見出だされる相同性よりも遥かに低い。加えて、これらの配列には、限られた領域にさえ、強い相同性(即ち、正確に合っているうアミノ酸配列)として特徴付けられるようなものを持つ部分は全く存在しない。
【0059】
新たに特性が解明されたセクレチン及びカルシトニンレセプターとの最近の比較(Ishihara et al., EMBO J. 10:1635, 1991; Lin et al., Science 254:1022, 1991)によって、これらのレセプターとPTH/PTHrPレセプターの間には30から40%の同一性のあることが判明している。PTH/PTHrPレセプターはカルシトニンレセプターより100個以上アミノ酸が長いけれども、オポッサム腎臓のPTH/PTHrPレセプター(配列番号:2)とブタ腎臓のカルシトニンレセプター(GenBank 受託番号 M74420)のアミノ酸配列の間には〜32%の一致がある。推定貫膜ドメインVIIの18アミノ酸のうち17の範囲は同一である。また、4つのN−連結グルコシル化部位のうち2つ、及び8つの細胞外システインとして可能性のあるもののうち7つの位置が保存されている。2つのレセプター間の主要な差異は、それらのNH −末端とCOOH−末端のドメインにあると思われる。ラットのセクレチンレセプター(GenBank 受託番号 X59132)とヒトのPTH/PTHrPレセプターのアミノ酸配列の比較により、推定貫膜ドメインVIIの25のアミノ酸のうち21の範囲が一致していて、これら2つのレセプター間には43%の相同性のあることが示唆されている。PTH/PTHrP、カルシトニン、及びセクレチンのレセプター間の類似性は、こいれらが7回膜貫通のG蛋白質に共役してアデニル酸シクラーゼを活性化するレセプターの新しいファミリーを代表することを示唆している。これらレセプターのアミノ酸配列が与えられれば、この道の専門家はこれらの配列を比較し、一致して核酸プローブ設計に役立つ領域を求め、このファミリーに属する他のレセプターの確認と分離に用いることが出来るであろう。
【0060】
クローンの寄託
特許手続きの目的のための微生物寄託についての国際的承認に関するブダペスト条約の約条の下に、cDNA発現プラスミドR15B、OK−O及びOK−H;ファージHPG1;及びヒトのクローンの一部を含むプラスミド(名称8A6)が、American Type Culture Collection (ATCC)に寄託され、そこでは、夫々の受託番号ATCC No.68571,68572,68573,40998,及び68570を付けられている。申請者の指定代理人、The General Hospital Corporationは、ATCCがこの寄託の永続性と、もし、特許が許可された場合には、その容易な分譲を提供する寄託所であることを申し立てる。このように寄託物質の分譲に関するすべての制限は、特許の許可と共に改変されることなく撤去される。物質は特許申請の未決期間中は、37 CFR 1.14及び35 U.S.C.122の下、コミッショナーによって資格ありと決定された者に分譲される。寄託された物質はあらゆる必要な注意を払って維持され、寄託されたプラスミドの試料提供に対する最も新しい要請後少なくとも5年間、そして、いかなる場合でも、寄託の日付後、少なくとも30年の期間、あるいは特許の実行期間、いずれか長い方の期間、生存状態で、汚染されないように保存を継続する。申請者の指定代理人は、もし、寄託物の状態のために、要請があっても寄託所が試料を提供出来ないならば、寄託物を取り替える責任のあることを認める。
【0061】
ポリペプチド
本発明によれば、ポリペプチドには、図1−3及び6に夫々、示されているオポッサム、ラット及びヒトの副甲状腺ホルモンレセプター、及びいかなる他の自然界に存在するレセプターにせよ、これらのレセプターをクローン化して発現するのに用いられたものに類似の方法により、あるいは、ここに記述されている配列の1つの全体または1部をプローブとして利用する方法によって生成され得るものを含む。さらに、副甲状腺ホルモン、または副甲状腺ホルモン関連蛋白質に対する結合能のあるPTHレセプターの類似体あるいは断片も本発明の範囲内にある。
【0062】
興味ある特異なレセプター類似体には、同類アミノ酸置換によってのみ異なる、例えば、同じクラスの他の代わりに1アミノ酸の置換(例えば、グリシンの代わりにバリン;リジンの代わりにアルギニン、等)、あるいは、1つ、またはそれ以上の非同類アミノ酸の置換、欠失、また副甲状腺ホルモン、または副甲状腺ホルモン関連蛋白質に結合するレセプターの能力を破壊しない位置にされた挿入によってのみ異なるアミノ酸配列を持つ完全長、あるいは部分長のレセプター蛋白質が含まれる。
【0063】
特に関心のある特異なレセプター断片には、これらに限られるわけではないが、レセプターの部分で、一次アミノ酸配列からChou−Fasman法(例えば、Chou and Fasman, Ann. Rev. Biochem. 47:251, 1978参照)のような疎水性/親水性計算法を用いて細胞外であると推定されたものが含まれる。親水性ドメイン、特に少なくとも10個のアミノ酸からなる疎水性区間(参照、貫膜ドメイン)は、細胞外ドメインの有力な候補者として現れて来る。図21は、1つのPTHレセプターの細胞外、細胞内及び貫膜ドメインの予測される配置を図示している。
【0064】
特定のPTHレセプター断片の例には、R15Bクローンの推定アミノ酸配列に由来する以下ののアミノ酸配列(標準の一文字記号で示されている)が含まれている:
細胞外ドメイン:
RP−1: TNETREREVFDRLGMIYTVG (配列番号:5)
RP−2: YLYSGFTLDEAERLTEEEL (配列番号:6)
RP−3: VTFFLYFLATNYYWILVEG (配列番号:7)
RP−4: Y−RATLANTGCWDLSSGHKKWIIQVP (配列番号:8)
RP−5: PYTEYSGTLWQIQMHYEM (配列番号:9)
RP−6: DDVFTKEEQIFLLHRAQA (配列番号:10)

細胞内ドメイン:
RPi−7: FFRLHCTRNY (配列番号:11)
RPi−8: EKKYLWGFTL (配列番号:12)
RPi−9: VLATKLRETNAGRCDTRQQYRKLLK (配列番号:13)
これらの断片はKeutmannらの方法(Ednocrinology 117: 1230, 1984)によって合成され,HPLCによって精製された。
【0065】
ポリペプチドの発現
本発明によるポリペプチドは、本発明の細胞レセプターの一部または全体をコードしている配列を持つ組換え核酸から、なにか適切な発現系、例えば、適当な宿主細胞(原核あるいは真核)の、適当な発現伝達体(例、pcDNAI)内の組換え核酸による突然変異を用いて、発現することにより生成することが可能である。正確にいかなる細胞を用いるかは、本発明にとって重要ではない。しかしながら、本発明のポペプチドがPTH/PTHrPレセプターの全体または一部を含む場合には、以下の宿主細胞が好適である:COS細胞、LLC−PK1細胞、OK細胞、AtT20細胞、及びCHO細胞。移入の方法及び発現伝達体の選択は選ばれた宿主系に依存する。哺乳類細胞の移入の方法は、例えば、Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology, John Willey & Sons, New York, 1989)に記載されており、発現伝達体は、例えば、Cloning Vectors: A Laboratory Manual (P.H. Pouwels et al., 1985, 補遺、 1987)に論じられているものから選んでもよい。安定に移入された細胞は、レセプターDNAを宿主細胞の染色体に組み込むことによって作ることが出来る。適当なDNAは、pcDNA,pcDNAI−Neo、あるいは他の適切なプラスミドに挿入され、次いで、細胞は,このプラスミドにより、psV−2−Neo、あるいはpsV−2−DHFRとの共同移入をして、あるいはしないで、標準電気が孔、りん酸カルシウム、及び/あるいはDEAE/デキストラン技法によって移入される。移入された細胞の選択は、累進的に上昇するレベルのG418(Geneticin, GIBCO)、そしてもし必要ならば、メトトレキサートを用いて行われる。
【0066】
本発明のポリペプチドをコードしているDNA配列は、また、原核宿主細胞にも発現することが出来る。細胞のレセプター、あるいはレセプター断片をコードしているDNAは、原核細胞宿主における発現をもたらすことの出来る制御シグナルに作動可能に連結されたベクター上を運ばれる。もし希望ならば、コーディング配列は、その5´−末端に、発現された蛋白質の宿主細胞の周辺腔への分泌をもたらし、それによって蛋白質の回収とその後の精製を容易にすることの出来る既知のシグナル配列をなにかコードしている配列を含むもとも出来る。最も頻繁に用いられる原核細胞は種々のE. coliの株である。しかし、他の微生物の株もまた使用してよい。プラスミドベクターは、複製起点、選択可能のマーカー、及び宿主微生物に適合する株に由来する制御配列を含むものが用いられる。例えば、E. coliは、pBR322、これはBoliver et al. (Gene 2: 95, 1977)によって、3つの自然界に存在するプラスミド、そにうち2つはSalmonellaの株から、1つはE. coliから分離されたものであるが、に由来する断片を用いて構成されたプラスミドであるが、その誘導体を用いて変異させることが出来る。pBR322は、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性由来の遺伝子を含み、そのため、希望する発現ベクターの構築において、保持され、あるいは破壊され得る多数の選択可能なマーカーを提供する。一般に用いられる原核細胞の制御配列(また、“調節因子”とも呼ばれる)は、ここでは、随意的にオペレーター、リボソーム結合部位配列と共に、転写開始のためのプロモーターを含むものと定義される。蛋白質の発現を指令するために一般に用いられるプロモーターには、ラムダー由来のPLプロモーター及びN−遺伝子リボソーム結合部位(Simatake et al.,Nature 292:128, 1981)ばかりでなく、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクト−ス(lac)(Chang et al., Nature 198: 1056, 1977)及びトリプトファン(Trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucl, Acids Res. : 4057,1980)も含まれる。
【0067】
本発明の細胞レセプター蛋白質は、以下のような性質を持っているので、細胞内に発現すると、それは細胞膜へ、部分的には膜を貫通して移動し、その結果、その一部は膜に埋め込まれて止まり、一部は細胞外に伸展し、一部は細胞内に止まる。このような埋め込まれた細胞レセプターを持つ形質転換された細胞は、それ自身、本発明の方法の中で用いられてもよく、あるいは、レセプター蛋白質は膜から抽出され、精製されることも可能である。
【0068】
無傷の蛋白質を細胞膜に繋ぎ止める責任を負う蛋白質の疎水性部分を欠くペプチド断片は、発現しても、膜に埋め込まれることは期待されない。これらが細胞内に止まるか、あるいは細胞外培地に分泌されるかは、分泌を促進する機構(例えば、シグナルペプチド)が含まれているか、否かによる。もし、分泌されれば、本発明のポリペプチドは培地から収穫することが出来る。もし、そうでなければ、細胞は解体して、所期のポリペプチドは細胞の全内容から分離しなければならない。発現される可能性のあるポリペプチドの特殊例は、限界はないが、以下のものが含まれる:
1)図3に示されるようなラットの骨のPTH/PTHrPレセプターの、推定リーダー配列を含む、アミノ酸1−192からなるアミノ末端部分。
2)図3に示されるようなラットの骨のPTH/PTHrPレセプターの、推定リーダー配列を除外した、アミノ酸27−192からなるアミノ酸末端部分。 3)図3に示されるようなラットの骨の完全長のPTH/PTHrPレセプター。
4)PR−1(上記のような)。
5)PR−2(上記のような)。
【0069】
本発明のポリペプチドは、アフィニティクロマトグラフィーを用いて容易に精製することが出来る。これらのポリペプチドの抗体、あるいはレセプター特異的リガンド(例、PTH/PTHrPレセプターに対するホルモンPTHとPTHrP)は、セファロース 4 CNBr−活性化セファロース(Pharmacia)のような固相支持体に共有結合し、本発明のポリペプチドをなんらかの混入物質から分離するのに用いてもよい。一般的には、1mgのリガンドあるいは抗体がCNBrで活性化されたセファロースと4℃で17−20時間(振盪下)インキュベートされる。セファロースは、1Mトリス塩酸(pH8)で洗浄して過剰の活性部位をブロックする。セファロース−PTH、セファロース−PTHrP、あるいはセファロース−抗体は、次いで、粗ポリペプチドとりん酸緩衝食塩液(pH7.4)中、4℃で2時間インキュベートされる(振盪下)。セファロースは、次いで、一般的にはカラムに充填され、入念にPBSで洗浄され(一般的にはカラム容の10倍)、水で希釈した塩酸(pH1.85)で溶出される。溶出液は、次いで、凍結乾燥により濃縮され、その純度は、例えば、逆層HPLCで検査される。
【0070】
抗細胞レセプター抗体
本発明の細胞レセプターあるいはレセプター断片は、専門家にはよく知られているなにか通常の方法によって、ポリクローナル抗体を産生する方法、及びモノクローナル抗体を産生する方法を含め、抗体を産生するのに用いることが出来る。例えば、PTHレセプターの推定アミノ酸配列は、他のG蛋白質連鎖レセプターに見出だされる領域に類似した細胞外と細胞内と思われる領域(図21を見よ)を点々配置した数個の貫膜(即ち、疎水性)ドメインを持つと思われる蛋白質構造を示している。この情報は、レセプター蛋白質の、細胞外に露出している見込みがあり、従ってin vivoで抗体に提示されるであろう領域の選択を手引きするために用いることが出来る。このような領域の1つ、あるいはさらに多くを表現する短いペプチドを合成し(例えば、化学的に、あるいは組換えDNA技法により)、ポリクローナル、あるいはモノクローナル抗体を産生するために動物(例えば、ウサギ、あるいはマウス)を免疫するのに用いることが出来る。例えば、上記のPTH/PTHrPレセプターのペプチドのあるもの(RP−1、RP−5、及びRP−6)は、標準の技法を用いて化学的に合成され、以下の手順によりウサギにポリクローナル抗体を産生するのに用いられた:
【0071】
完全フロイントアジュバントで乳化された所定のペプチドの標品をウサギに皮内に注射する。追加免疫は、不完全あるいは完全アジュバントで、1月間隔で注射される。
抗体価は2つの方法のいずれかを用いて評価される。第一に、抗体を1%正常ウサギ血清で連続希釈し、125I−標識PTH/PTHrPレセプター断片と常法(例えば、Segre et al., 上記)により24時間、4℃でインキュベーションする。結合した125I−標識PTH/PTHrPレセプター断片は、非結合のものから、100μlの第二抗体(抗ウサギIgG、 Sigma)を20倍に希釈したもの及び1mlの5%ポリエチレングリコールを加え、次いで、2000rpmで30分、4℃で遠心することによって分離される。上清を除去し、ペレットをγカウンターで、放射活性の分析をする。第二の方法では、自然型の(例えば、ROS 17/2.8、OK、SaOS−2細胞)あるいは組換え(R15B、OK−OあるいはOK−Hを移入されたCOS細胞あるいはCHO細胞)PTH/PTYHrPレセプターを発現している細胞系が、連続希釈された抗体と4℃、20℃、あるいは37℃で1−4時間インキュベートされる。細胞をPBSで(3回)洗浄し、 125I−標識(NEM、 Dupont)あるいはFITC−標識(Sigma)の第二抗体と2時間、4℃でインキュベートする。洗浄後(PBSで3回)、細胞は0.1MNaOHで溶解してγカウンターで測定されるか(もし、 125I−標識の第二抗体が用いられた時)、あるいは1%パラフォルムアルデヒドで固定し、蛍光顕微鏡法で検査された(もし、FITC−標識の第二抗体が用いられた時)。
【0072】
抗体を生成するもう1つの方法は、抗原として細胞(例えば、レセプターをコードしているDNAを移入されたCOA細胞のような哺乳類の細胞)の表面に発現されている本発明の無傷の細胞レセプター蛋白質を利用する。このような細胞は、常法、例えば、DEAE−デキストラン移入法により、細胞レセプターの高度の発現をコードし、且つ、指令することの出来るベクターを用いて生成することが出来る。例えば、PTH/PTHrPレセプターに特異的なモノクローナル抗体は以下の手順で生成される。
【0073】
ラットの組換えPTHレセプターを細胞表面に高度に発現している無傷のCOS細胞をBalb−cマウス(Charles River Laboratories, Willmington, MA)の腹腔内(IP)に注射する。マウスは4週ごとにIP注射により追加免疫を受け、融合の3日前に、静脈内(IV)追加免疫により超免疫される。このマウスから脾臓細胞を分離し、ミエローマ細胞と常法により融合する。ハイブリドーマは、標準のヒポキサンチン/アミノプテリン/チミン(HAT)培地で常法に従って選別される。PTHレセプターを認識する抗体を分泌するハイブリドーマは、最初、細胞あたりPTHレセプターのコピーを元来豊富に発現する細胞系(POS17/2.8あるいはOK細胞)で、標準の免疫的技法を用いてスクリーニングして確認される。PTHレセプターに結合することの出来る抗体を生成するこれらのハイブリドーマは培養して、サブクローニングされる。次いでモノクローナル抗体の性質を新たに検討するために、ラヂオレセプター及びcAMP刺激アッセイを用いる二次スクリーニングを行うことが出来る(以下参照)。
【0074】
PTHレセプターアンタゴニスト及びアゴニストのスクリーニング
本発明のポリペプチド及び抗体ならびに他の化合物は、PTH競合性、及びアンタゴニスト的あるいはアゴニスト的な性質について、ここに記載のアッセイを用いてスクリーニングすることが出来る。
【0075】
一例をあげると、無傷の細胞上のPTHレセプターを認識するこれらの抗体は、PTHあるいはPTHrPとPTH/PTHrPレセプターへの結合に対し競合する能力についてスクリーニングされる。細胞表面にPTHレセプターを発現している細胞は、 125I−PTH類似体である 125I−NlePTHあるいは 125I−PTHrPと、試料のポリクローナルあるいはモノクローナル抗体の存在下、4時間、15℃でインキュベートされる。使用される抗体は、粗抗血清、細胞培地、あるいは腹水由来のものか、あるいは精製された形のものである。インキュベーション後、細胞は結合緩衝液(例えば、生理食塩水)で洗浄、融解され、ガンマ−カウンターを用いて放射活性を定量分析される。PTHレセプターへのPTH類似体の結合を低減する抗体は、競合的、低減しないものは非競合的と分類される。
【0076】
抗体及びポリペプチドを含め、化合物は、それらのアゴニストあるいはアンタゴニストとしての性質につき、上記のcAMP蓄積、細胞内カルシウム、及び/あるいはイノシトールりん酸のアッセイを用いてスクリーニングすることが出来る。細胞表面上にPTHレセプターを発現している細胞は、PTH、PTHレセプター抗体、あるいは両者を組み合わせたものと、2mMIBMX(3−イソブチル−1−メチル−キサンチン、Sigma, St. Louis, MO)の存在下、5−60分間、37℃でインキュベートされる。サイクリックAMPの蓄積は、上述のように、特異的ラジオイムノアッセイによって測定される。PTHレセプターへの結合に対してPTHと競合し、且つ、PTHのcAMP蓄積に対する効果を阻害する化合物は、競合的PTHアンタゴニストと見做される。反対に、PTHレセプターへのPTHの結合と競合しないが、なお、PTHによるcAMP蓄積促進を阻害する(恐らくは、レセプター活性化部位を妨害することにより)化合物は、非競合的アンタゴニストと見做される。PTHレセプターへの結合に対しPTHと競合し、PTHの存在あるいは非存在下にcAMPの蓄積を刺激する化合物は競合的アゴニストである。PTHレセプターへの結合に対してPTHと競合しないが、PTHの存在あるいは非存在下に、なお、cAMP蓄積を刺激する能力があるか、あるいはPTH単独によって観察されるよりも高い蓄積を刺激する化合物は、非競合的アゴニストと見做される。
【0077】
使用例
本発明のポリペプチド、抗体、及び他の化合物は、本発明の細胞レセプターとその特異的リガンド間の相互作用に関連すると特徴づけられるような疾病の診断、分類、予後、及び/あるいは処置に有用である。例えば、高カルシウム血症及び低カルシウム血症のいくつかの型は、PTH及びPTHrPとPTH/PTHrPレセプター(複数)間の相互作用に関連している。高カルシウム血症は、血清のカルシウムレベルに異常な上昇のある状態である; それは、しばしば、副甲状腺機能亢進症、骨粗鬆症、乳腺、肺、及び前立腺の癌腫、食道の頭部及び頚部の類表皮癌、多発性骨髄腫、及び副腎腫を含む他の病気に関連している。低カルシウム血症は、血清カルシウムレベルが異常に低い状態であり、例えば、甲状腺手術後に起こる有効PTHの不足から生じることがある。
【0078】
初めの例では、本発明の化合物は、診断薬の製造に用いられ、これらは、高カルシウム血症を診断し、種々の高カルシウム状態を区別する、即ち、PTHあるいはPTHrPによって媒介される高カルシウム血症(例えば、副甲状腺機能亢進症及び悪性の体液性高カルシウム血症)を、これらの因子を含まぬ病気(例えば、骨に直接接触している悪性腫瘍の存在によって媒介される局所的骨軟化症、及び破骨細胞活性化因子(インターロイキン)、リンホトキシン、カルシトリオール、タイプEプロスタグランディン、及びビタミンD様ステロールのような体液性因子の増大によって媒介されるいくつかの希少型悪性腫瘍関連の高カルシウム血症)から区別するために用いられる。
【0079】
診断の1つの方法においては、血清の総カルシウム及び/あるいはイオン化されたカルシウムのレベルは、本発明のPTHあるいはPTHrPアンタゴニストの投与の前後に常法によって測定される。PTHあるいはPTHrP関連の高カルシウム血症は、本発明のアンタゴニストの投与後の血清カルシウムレベルの低下として検出することが出来る。対照的に、PTHあるいはPTHrP以外の因子によって媒介される高カルシウム血症状態に対しては、血清カルシウムレベルはアンタゴニストの投与後でさえ、不変のままの筈である。
【0080】
本発明の他の診断的応用として、PTHあるいはPTHrPに関連する癌、例えば、悪性の体液性高カルシウム血症に関連する癌、を診断するために、及び、癌治療の間、PTHあるいはPTHrPのレベルを監視するために、生物的試料中のPTHあるいはPTHrPのレベルの測定が可能でなる。この方法には、本発明の組換え副甲状腺ホルモンレセプターの、組織試料に存在するPTHあるいはPTHrPへの結合を、ここに記述されている結合アッセイを用いて、測定することが含まれている。結合のレベルは、直接測定することも出来る(例えば、放射標識をしたPTHレセプターを用い、内在性PTHに結合する放射能をアッセイすることによって)。代わりに、試料(例えば、組織切片)へのPTHレセプターの結合は、組織切片をPTHレセプターに特異的な抗体で、標準の免疫技法(Clin et al., Hybridoma :339, 1986)を用い染色して追跡することが出来る。
【0081】
第三の診断的アプローチでは、細胞系を(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Publishers, New York, 1987に記載されている方法により)適当なプロモーターに連結されたPTHレセプター遺伝子で安定に移入することが出来る。代わりに、PTH/PTHrPレセプターは、真核のベクター、即ち、pcDNAIから発現され、そして変異DHFR遺伝子を共移入して、メトトレキサート選択(Simonsen et al., Proc. Natl. Acad.Sci., 80:2495−2499、 1983)を経てさらに遺伝子の増幅を可能にすることが出来る。遺伝子のこのような高度の発現によって、PTHあるいはPTHrPに超感受性である不滅の細胞系が生成される。このような細胞は、PTHあるいはPTHrPの血液レベルを検出するための特に有用な手段を提供する。このような細胞系は、上昇したPTHあるいはPTHrPレベルを伴う状態(例えば、上記の状態)、あるいは、PTHあるいはPTHrPの異常に低いレベルを伴う状態(例えば、上記の状態)の診断に用いることが出来る。このような細胞系は、また、高カルシウム血症あるいは低カルシウム血症の治療の間に、夫々、PTHあるいはPTHrPレベルの退行あるいは増昇の監視に有用である。
【0082】
高カルシウム血症の疑いのある患者は、本発明の化合物を用いて治療してもよい。症状は突如として現れることがあり、逆転しなければ致命的なこともあり得るので早急な介入が重要である。1つの応用において、血清カルシウムレベルは、PTHあるいはPTHrPのアンタゴニストを含む、即座の治療の1コースで安定化する。この様なアンタゴニストには、PTHレセプター媒介による細胞の活性化に介入することが決定されている(ここに記述のアッセイにより)本発明の化合物が含まれる。アンタゴニストを投与するために、適当な抗体あるいはペプチドは、一般に、生理食塩水のような適当な担体中に調剤することによって薬剤の製造に用いられ、PTHレセプターへのPTHあるいはPTHrPの結合に対し適切な競合を提供する用量で、静脈内注射される(例えば、血清カルシウムレベルを10mg/dl以下に下げるのに十分な用量)。代表的な用量は、一日当たり、体重1kgにつき、抗体あるいはペプチド、1ngから10mgである。治療は、許容カルシウムレベル(即ち、レベルは10.1mg/dl以下)の長期維持のため、必要な時は反復してもよい。これは、高カルシウム血症の切っ掛けとなる、根底にある病状の緊急処置に必要かも知れない、あるいは、それは、例えば、骨粗鬆症のような病状の長期にわたる処置に用いてもよい。
【0083】
他の応用において、本発明の方法に従ってアゴニストであると特徴付けづけられている本発明の化合物は、治療上、例えば、副甲状腺の部分的あるいは完全な外科的除去からおこる低カルシウム血症の処置に用いられる。アゴニストは、適当な担体(例えば、生理食塩水)中で調剤され、血清のカルシウムを許容レベル(即ち、およそ8mg/dl)までの上昇をもたらす用量で、出来れば静脈内投与されるのが望ましい。有用な用量範囲は、1日、体重1kg当たり、アゴニスト1ngから10mgである。適切な血清カルシウムレベルを維持するために必要な場合、処置を繰り返すことも出来る。長期の処置は、副甲状腺切除を受けた患者に必要なことがある。
【0084】
本発明の核酸もまた治療のために用いることが出来る。PTHレセプターmRNA(あるいはPTHレセプターmRNAにアンチセンスであるRNAを表現する核酸構成)にアンチセンスであるオリゴヌクレオチドは、抗癌治療として用いられることもある。このアプローチは、例えば、PTHレセプター、PTHあるいはPTHrPの量あるいは活性を増大するゲノムの再配列あるいは増幅から生じる高カルシウム血症に対して有用である。この方法には、in vivoで、アンチセンスオリゴヌクレオチドを癌細胞に挿入することが含まれている。アンチセンス鎖は、内在性PTHレセプターmRNAとハイブリッドを形成して、蛋白質の翻訳を妨害し、それによって、この様な細胞におけるPTHレセプターの生成を低下させ、PTH/PTHrP関連の腫瘍増殖を抑制する。アンチセンスの設計及び宿主細胞への挿入方法は、例えば、Weinberg et al.,U.S.特許番号4,740,463に記載されており、ここでは引用して組み込まれている。本発明のOK−H,OK−O及びR15BPTH/PTHrPレセプターの生化学的特徴の検討は、PTHのそのレセプターとの相互作用によって引き起こされることが現在知られている2つの伝達経路は別個のものであり、分別されるかも知れないことを示している。これらレセプターの予想アミノ酸配列は、イノシトールりん酸代謝を検出可能な程度に活性化するようには見えないOK−Hは、OK−OあるいはR15Bよりも70アミノ酸分短いことを示唆している。本発明の配列とここに開示されている情報を用いて、いかなる動物種からのPTH/PTHrPレセプター遺伝子にせよ、これをクローン化、次いで改変して(例えば、部位特異的変異誘発により)、ホスホリパーゼCを活性化しないPTH/PTHrPレセプターを生成することが出来る。このことは、骨の再吸収及び骨の造成を含め、PTHによって仲介される種々の作用を分別する可能性を示すものであり、骨粗鬆症のような骨の疾病の治療に対して大きな重要性を持つ。
【0085】
PTHレセプターをコードしている本発明の核酸は、また、選択された組織特異的プロモーター及び/あるいはエンハンサーに連鎖し、その結果生じたハイブリッド遺伝子を、常法により(例えば、Leder et al., U.S.特許番号4,736,866に記述され、ここには参照して組み込まれているような)、初期の分化段階にある動物の胚(例えば、受精した卵母細胞)に導入して形質転換した動物を作り出し、選択した組織(例えば、骨のオステオカルシンプロモーター)にPTHレセプターを高レベルで発現することが出来る。この様なプロモーターは、形質転換動物におけるPTHレセプターの組織特異的発現を指令するために用いられる。利用されるPTHレセプターの型は、用いられる動物種のものに類似のPTHレセプターをコードしている型、あるいは、それは、別種のPTHレセプター類自体をコードすることも出来る。1つの特例において、形質転換されたニワトリが、ニワトリの輸卵管に高レベルの発現を指令するプロモーターからPTHレセプターを発現するように工作された。このような動物は、高いカルシウム含量と、従ってより固い殻を持つ卵を産むことが期待される。
【0086】
他の実施態様
他の実施態様は、以下の特許請求の範囲内にある。例えば、本発明の核酸には、トリ、あるいは有袋類、げっ歯類、またはヒトのような哺乳類を含むいかなる脊椎動物種にせよ、これらから本来分離された遺伝子、あるいはcDNAあるいはRNAを包含する。オポッサム、ラット、及びヒトのような多様な動物種からのPTHレセプターに対して証明された高度の相同性は、ここに開示されたPTHレセプターの分離方法が、多様な動物種からの関連した細胞レセプターの分離に広く応用されることを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の細胞レセプターをコードしているDNA配列からなる分離されたDNAであって、前記レセプターが、図3に示されているアミノ酸配列に少なくとも30%の同一性を持つアミノ酸配列を持つことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載されている分離されたDNAであって、前記DNA配列が図1に示されているアミノ酸配列(SEQ ID NO.1)の本質的にすべてをコードしていることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載されている分離されたDNAであって、前記DNAの配列が図3に示されているアミノ酸配列(SEQ ID NO.3)の本質的にすべてをコードしていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載されている分離されたDNAであって、前記分離されたDNAが(8A6)であって、ATCCに寄託され、ATCC寄託番号68570と呼ばれていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載されている分離されたDNAであって、前記DNAの配列が図6に示されているアミノ酸配列(SEQ.ID NO.4)の本質的にすべてをコードしていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載されている分離されたDNAであって、前記DNAの配列が、図1に示されているDNA配列(SEQ ID NO.1)とハイブリッドを形成することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載されている分離されたDNAであって、前記DNAの配列が図3に示されているDNA配列(SEW ID NO.3)とハイブリッドを形成することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載されている分離されたDNAであって、前記DNAの配列が図6に示されているDNA配列(SEQ ID NO.4)とハイブリッドを形成することを特徴とする方法。
【請求項9】
ベクターの精製標品であって、前記ベクターが副甲状腺ホルモンレセプターをコードしているDNA配列からなることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載されている分離されているDNAを含む細胞であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載されている細胞であって、前記細胞が前記の分離されているDNAから上記細胞レセプターを発現する能力のあることを特徴とする方法。
【請求項12】
本質的に均質な細胞群であって、その各々が請求項1に記載されている分離されたDNAを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
分離されたDNAが、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質を結合することの出来るポリペプチドをコードしているDNA配列からなることを特徴とする方法。
【請求項14】
ポリペプチドを生成する方法で、前記方法が以下のことからなることを特徴とする:
副甲状腺ホルモンレセプターあるいはその断片をコードしている分離されたDNAを含む細胞を提供する方法、及び
前記DNAからポリペプチドの発現を可能にする条件下に前記細胞を培養する方法。
【請求項15】
副甲状腺ホルモンレセプター遺伝子の1部からなる1本鎖DNAであって、前記部分が少なくとも18核酸の長さであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載されている1本鎖DNAであって、前記部分が前記副甲状腺ホルモンレセプター遺伝子のすべてよりも短いことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載されている1本鎖DNAであって、上記DNAが標識されて検出可能であることを特徴とする方法。
【請求項18】
副甲状腺ホルモンレセプターcDNAの1部からなる1本鎖DNAであって、上記部分が少なくとも18ヌクレオチドの長さであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載されている1本鎖DNAであって、前記DNAがアンチセンスであることを特徴とする方法。
【請求項20】
副甲状腺ホルモンレセプターをコードしている組換えDNA分子の発現によって生成される副甲状腺ホルモンレセプターを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載されている副甲状腺ホルモンレセプターの本質的に精製された標品を特徴とする方法。
【請求項22】
請求項5に記載されているDNAの発現によって、生成される副甲状腺レセプターの本質的に精製された標品を特徴とする方法。
【請求項23】
少なくとも6個のアミノ酸、そして副甲状腺ホルモンレセプターの完全なアミノ酸配列よりは少ないアミノ酸からなるポリペプチドであって、上記ポリペプチドが副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質を結合出来ることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載されているポリペプチドであって、上記副甲状腺ホルモンレセプターがヒト副甲状腺レセプターであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23に記載されているポリペプチドであって、上記断片が以下のものからなることを特徴とする方法。
(a)TNETREREVFDRLGMIYTVG、
(b)YLYSGFTLDEAERLTEEEL、
(c)VTFFLYFLATNYYWILVEG、
(d)Y−RATLANTGCWDLSSGHKKWIIQVP、
(e)PYTEYSGTLWQIQMHYEM、
(f)DDVFTKEEQIFLLHRAQA、
(g)FFRLHCTRNY、
(h)EKKYLWGFTL、
(i)VLATKLRETNAGRCGTRQQYRKLLK、あるいは
(j)副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質を結合出来る(a)から(i)の断片。
【請求項26】
製剤上許容される担体中に、(a)副甲状腺ホルモンレセプターあるいは(b)上記レセプターの断片からなるポリペプチドを含む治療混合物を特徴とする方法。
【請求項27】
副甲状腺ホルモンレセプターと免疫複合体を形成することが出来る抗体を特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載されている抗体と製剤上許容される担体からなる治療混合物を特徴とする方法。
【請求項29】
動物の血中カルシウムレベルを低減する方法であって、請求項26に記載されている治療混合物を、上記動物に、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質による、上記動物の副甲状腺ホルモンレセプターの活性化の阻害に効果的な用量で投与することからなることを特徴とする方法。
【請求項30】
動物の血中カルシウムレベルを低減する方法であって、請求項28に記載されている治療混合物を、上記動物に、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質による、上記動物の副甲状腺ホルモンレセプターの活性化の阻害に効果的な用量で投与することからなることを特徴とする方法。
【請求項31】
副甲状腺ホルモンレセプターへの結合に対し、副甲状腺ホルモンと競合する能力のある化合物を確認する方法であって、該方法が以下の内容からなることを特徴とする:
(a)請求項23に記載されているポリペプチドを副甲状腺ホルモンと、候補化合物の(i)存在下あるいは(ii)非存在下に接触させる、及び
(b)上記候補化合物の存在下における上記ポリペプチドの副甲状腺ホルモンへの結合レベル(i)を、上記候補化合物の非存在下における上記ポリポリペプチドの副甲状腺ホルモンへの結合レベル(ii)と比較する;上記候補化合物の存在下における結合レベルが、その非存在下よりも低い場合は、上記候補化合物は上記レセプターへの結合に対し、上記副甲状腺ホルモンと競合する能力のあることを示唆する。
【請求項32】
副甲状腺ホルモンレセプターへの結合に対し、副甲状腺ホルモン関連蛋白質と競合する能力のある化合物を確認する方法であって、該方法が以下の内容からなることを特徴とする:
(a)請求項23に記載されているポリペプチドを副甲状腺ホルモン関連蛋白質と、候補化合物の(i)存在下あるいは(ii)非存在下に接触させる、及び
(b)上記候補化合物の存在下における上記ポリペプチドの副甲状腺ホルモン関連蛋白への結合レベル(i)を、上記候補化合物の非存在下における上記ポリペプチドの副甲状腺ホルモン関連化合物への結合レベル(ii)と比較する;
上記候補化合物の存在下における結合レベルが、その非存在下よりも低い場合は、上記候補化合物が上記レセプターへの結合に対し、上記副甲状腺ホルモン関連蛋白質と競合する能力のあることを示唆する。
【請求項33】
副甲状腺ホルモンレセプターへの結合に対し、副甲状腺ホルモンと競合する能力のある化合物を確認する方法であって、該方法が以下の内容からなることを特徴とする:
(a)副甲状腺ホルモンを請求項11に記載されている細胞と、候補化合物の(i)存在下あるいは(ii)非存在下に組み合わせる、及び
(b)上記候補化合物の存在下における上記副甲状腺ホルモンへの上記レセプターの結合レベル(i)を、上記候補化合物の非存在下における上記副甲状腺ホルモンへの上記レセプター結合レベル(ii)と比較する;上記候補化合物の存在下における結合レベルが、その非存在下よりも低い場合は、上記候補化合物は上記レセプターへの結合に対し上記副甲状腺ホルモンと競合する能力のあることを示唆する。
【請求項34】
副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質の細胞表面上の副甲状腺レセプターへの結合を阻害する能力のある化合物を特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載されている化合物と製剤上許容される担体からなる治療混合物を特徴とする方法。
【請求項36】
副甲状腺ホルモンレセプターをコードしているDNA配列に相同なDNA配列を確認する方法であって、 該方法が以下の内容からなることを特徴とする:
ゲノムあるいはcDNAライブラリーを提供し;
上記ライブラリーを請求項18に記載されている1本鎖DNAと、上記1本鎖DNA及び上記ライブラリー中の相同DNA配列間にハイブリッド形成が可能なような条件下に接触させ;及び
上記ライブラリーから、上記1本鎖DNAとハイブリッドを形成しているクローンを割り出し確認する。そして、ハイブリッド形成は、上記クローンの中に、副甲状腺ホルモンレセプターをコードしているDNA配列に相同なDNA配列の存在することを示唆する。
【請求項37】
副甲状腺ホルモンレセプターあるいはその断片をコードしているDNA配列からなるトランス遺伝子を持つ形質転換されたヒト以外の脊椎動物を特徴とする方法。
【請求項38】
以下の内容からなる診断法を特徴とする方法:
(a)動物から1回目の血液試料取り;
(b)請求項35に記載されている混合物を上記動物に投与し;
(c)上記混合物の上記投与のあとに上記動物から2回目の血液試料を取り;
(d)上記1回目の血液試料中のカルシウムレベルを上記2回目の血液試料中のものと比較し、上記2回目の血液試料中のカルシウムレベルが低い場合は、副甲状腺ホルモン関連の状態をの診断に役立つ。
【請求項39】
請求項1に記載されている分離されたDNAであって、上記DNAの配列が副甲状腺ホルモンレセプターをコードしていることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項20に記載されている副甲状腺ホルモンレセプターを治療及び診断に用いることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項23に記載されているポリペプチドを治療及び診断に用いることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項27に記載されている抗体を治療及び診断に用いることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項26に記載されている治療混合物を、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺関連蛋白質による動物の副甲状腺ホルモンレセプターの活性化を阻害するための、あるいは、動物の血中カルシウムレベルを低減するための治療に用いることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項28に記載されている治療混合物を、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺関連蛋白質による動物の副甲状腺ホルモンレセプターの活性化を阻害するための、あるいは、動物の血中カルシウムレベルを低減するための治療に用いることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項20に記載されている副甲状腺ホルモンレセプターを、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質による動物の副甲状腺ホルモンレセプターの活性化を阻害するための、あるいは、動物の血中カルシウムレベルを低減するための治療に用いる薬剤の製造に利用することを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項23に記載されているポリペプチドを、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質による動物の副甲状腺ホルモンレセプターの活性化を阻害するための、あるいは、動物の血中カルシウムレベルを低減するための治療に用いる薬剤の製造に利用することを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項27に記載されている抗体を、副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質による動物の副甲状腺ホルモンレセプターの活性化を阻害するための、あるいは、動物の血中カルシウムレベルを低減するための治療に用いる薬剤の製造に利用することを特徴とする方法。
【請求項48】
患者における副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質によって仲介される高カルシウム血症状態を確認する方法であって、該方法が以下の内容からなることを特徴とする方法:
(a)患者からの1回目の血液試料中のカルシウムレベルを測定し、
(b)請求項28に記載されている治療混合物の投与後のある時期に患者から採取された2回目の血液試料中のカルシウムレベルを測定し、
(c)2つの血液試料のカルシウムレベルを比較して、2回目の血液試料中のカルシウムレベルの方がより低い場合は、患者に副甲状腺ホルモンあるいは副甲状腺ホルモン関連蛋白質に関係のある状態であることを示唆する。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−4889(P2010−4889A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188644(P2009−188644)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【分割の表示】特願2003−170024(P2003−170024)の分割
【原出願日】平成4年4月6日(1992.4.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】