力バランス移動ロボットシステム
力バランスロボットシステムおよび関連する方法が開示される。ロボットシステムは、本体と、バランス部材と、バランスシステムとを含み得る。ロボットシステムは、静的に不安定であり得、これは静的に不安定な本体を有する結果であり得る。バランス部材は、本体にジョイントで接続され得る。バランスシステムは、ロボットシステムのバランスを動的に取るために用いられる1つ以上のサブシステムを有し得る。そのようなサブシステムは、再位置決めシステムと、加速システムと、駆動システムとを含み得る。再位置決めシステムは、バランス部材を再位置決めして、質量中心を目標の上方に位置決めすることができる。加速システムは、バランス部材を加速させて、目標トルクを生じることができる。駆動システムは、前記ロボットシステムの車輪を駆動して、バランスを維持することができる。バランスを保持しながら、ロボットシステムは、外力を吸収し、外部対象物に力を加え得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2008年5月21日に出願され、その内容全体がこの明細書中に引用により援用される米国仮出願連続番号第61/054,903号の優先権を米国特許法第119条(e)の下に主張する。
【0002】
技術分野
この発明のさまざまな実施例は、移動体資産(mobile assets)に関し、より具体的には、対象物の輸送および操作のために利用可能な力バランス移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ほとんどの既存輸送システムは、人間または荷重の位置決めを静的安定性を通じて行なう。言い換えれば、そのようなシステムは、そのようなシステムの接地について予測されるすべての配置条件に関して機械的構造的に安定である。たとえば、自動車および三輪車は、その重心を、その車輪が形成する多角形の上方に維持する。自動車および三輪車は、その位置を、その速度を維持するのに必要な作動に作動を追加せずに維持する。
【0004】
静的安定システムの欠点は、一般的に、静的バランスを維持するために地面との複数の接点またはそれに代えて大きな接地面を必要とすることである。その結果、そのような装置は、起伏の多いまたは雑然とした地形の上で用いるためには実用的でない。
【0005】
既存の動的安定システムは、静的安定のシステムのこの問題を解決するが、さらなる問題を生じる。動的安定システムは、休止中は必ずしも安定ではないが、システムの能動的な動きによって安定させることができるシステムである。たとえば、動的安定システムには、米国特許第5,971,091号、第6,915,878号および第7,082,350号に記載されるものが含まれる。静的安定性は、そのようなシステムの要件ではないため、動的安定システムは、一般的に、静的安定システムが有するよりも少ないまたは小さい接点を有する。その結果、動的安定システムの中には、システムの動作のために利用可能な地面がより小さくとも利用可能なものがある。
【0006】
そのような動的安定システムの欠点は、接地面が任意に移動してバランスを維持することが許されている点である。たとえば、上記特許における動的安定システムの車輪は、絶え間なく前後に移動してバランスを維持することが許されている。したがって、これらのシステムは、人間と直接接触する用途には安全でないことがあり、またその上で動作するための任意に大きい地面を必要とすることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
起伏の多いまたは雑然とした地形上で使用可能な移動自己バランスロボットシステムが必要とされている。例示的な実施例において、そのようなロボットシステムは、おおよそ一定の速度を表面にわたって維持しながら動的に安定であることができる。加えて、このロボットシステムは、そのバランスを、力を吸収しながらおよび加えながら維持することが望ましい。この発明の実施例は、そのようなロボットシステムに関する。
【0008】
この発明の実施例は、ロボットシステムおよびその制御方法を含み得る。そのようなロボットシステムの例示的な実施例は、本体と、接地アセンブリと、少なくとも2つのバランス部材と、バランスシステムとを含み得る。
【0009】
本体は、ロボットシステムのための構造基礎としての役割を果たし得る。本体は、静的に不安定であり得、その結果、ロボットシステム全体が静的に不安定であり得る。バランスシステムは、本体とロボットシステムとを全体として動的に安定化するために設けられている。加えて、本体は、バランスシステムの構成要素などのロボットシステムの動作のためのさまざまな機器を収容し得る。
【0010】
接地アセンブリは、本体を地面などの表面の上方に支持し得る。例示的な実施例において、接地アセンブリは、地面に1つ以上の小さな接触域で接触する。接触域が小さいことにより、ロボットアセンブリは、小さく雑然としたまたは平らでない表面上で効果的に動作することができる。しかしながら接触域がそのように小さい結果、上述のように、本体は、静的に不安定であり得る。たとえば、接地アセンブリは、2つの軸方向に位置合わせされた車輪を含み得る。能動的バランスシステムがなければ、たった2つの車輪によって支持されるとき、本体は、倒れてしまうであろう。
【0011】
1つ以上のバランス部材がロボットシステムの動的安定化を可能にし得る。例示的な実施例において、バランス部材は、鎖状に配列されて、関節アームを形成する。アームにおいて、バランス部材をジョイントでつなぎ合わせるすることができ、各ジョイントを、アクチュエータに結合することができる。バランス部材の本体に対する位置は、ジョイントの配向がわかっているため容易に決定することができる。
【0012】
バランスシステムは、ロボットシステムによって吸収されるまたは加えられる力に晒されてもロボットシステムをバランスが取れた状態に保つために利用される1つ以上のサブシステムを有し得る。そのようなシステムには、再位置決めシステムと、加速システムと、駆動システムとが含まれ得る。再位置決めシステムおよび加速システムは、バランス部材を操作して、本体をバランスが取れた状態に保つことができる。より具体的には、再位置決めシステムは、バランス部材を再位置決めして、質量中心を再位置決めすることができる。加速システムは、バランス部材を加速させて、本体のバランスを取るのに有効なトルクを生じることができる。一方、駆動システムは、ロボットシステムの車輪を駆動して、バランスを維持することができる。バランスシステムのそのようなサブシステムの各々を、独立して用いてロボットシステムのバランスを取ることができ、またこれに代えて、サブシステムを互いに協調させて用いて、ロボットシステムの特定の用途専用のバランスを提供することができる。
【0013】
ロボットシステムおよび方法のこれらのおよび他の目的、特徴および利点は、以下の明細書を添付の図面に関連して読むとより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムを示す図である。
【図2】この発明の例示的な実施例に従った、ペイロードを固定位置に支持するロボットシステムを説明する図である。
【図3】この発明の例示的な実施例に従った、バランス部材およびペイロードのための平行鎖を有するロボットシステムを説明する図である。
【図4】この発明の例示的な実施例に従った、ペイロードのバランスを取るバランス部材の複数の鎖を有するロボットシステムを説明する図である。
【図5A】この発明の例示的な実施例に従った、ペイロードを関節アーム上に支持するロボットシステムを説明する図である。
【図5B】この発明の例示的な実施例に従った、閉鎖ループ状に配列された関節アーム上にペイロードを支持するロボットシステムを説明する図である。
【図6】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムのさまざまなハードウェア構成要素のブロック図である。
【図7A】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムの再位置決めシステムの効果を説明する図である。
【図7B】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムの再位置決めシステムの効果を説明する図である。
【図8】この発明の例示的な実施例に従った再位置決めシステムの動作方法を説明する図である。
【図9】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムの加速システムの動作を説明する図である。
【図10】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムの駆動システムの動作方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
この発明の原理および特徴を理解しやすくするために、以下にさまざまな例示的な実施例を説明する。この発明の例示的な実施例は、ロボットシステムと、そのようなシステムを制御し、そのバランスを動的に取る方法とを含む。特に、ロボットシステムの実施例は、対象物の輸送および操作のために用いることを背景において説明される。しかしながら、この発明の実施例は、この背景に限定されない。そうではなく、この発明のさまざまな実施例は、さまざまな他の背景において用いることができる。たとえば、バランスを維持しながら、さまざまな実施例は、外部対象物に力を加え得、または外力に晒されても対象物の配置を維持し得る。さまざまな実施例を状況に応じて用いることもできる。加えて、本願における図面に描かれるロボットシステムは、人間の身体的特徴を有するが、これは、この発明に従ったロボットシステムに必要ではない。たとえば、実施例によっては、ロボットシステムは、移動車両または他の移動体資産の外見を有し得る。
【0016】
この発明のさまざまな要素を構成するものとして以下に説明される構成要素は、例示的なものであることが意図されており、限定的なものではない。この明細書中に説明される構成要素と同じまたは類似の機能を行なうであろう多くの適切な構成要素が、ロボットシステムおよび方法の範囲内に包含されることが意図される。この明細書中に説明されないそのような他の構成要素には、たとえばこの発明の開発後に開発された構成要素が含まれ得るが、これに限定されない。
【0017】
次に、図面を参照して、ロボットシステムおよび方法のさまざまな実施例を詳細に説明する。図中、類似する参照番号は、類似する部品を図面を通して表わす。
【0018】
I. ロボットシステムの概要
図1には、ロボットシステム100の例示的な実施例が示されている。図1に示されるように、ロボットシステム100は、本体110と、接地アセンブリ120と、1つ以上のバランス部材135と、バランスシステム130とを含み得る。本体110は、ロボットシステム100のための構造基礎を提供し得る。接地アセンブリ120は、地面などの表面50の上方に本体110を支持し得る。バランス部材135は、ペイロードを支持するまたはロボットシステム100の動的安定化に寄与するなどのさまざまな機能を提供し得る。そのような動的安定化は、以下に詳細に説明される。
【0019】
ロボットシステム100は、ロボットシステム100に作用するすべての力のバランスが取れているとき平衡状態にあると考えられる。最も単純な静的場合において、ロボットシステム100に作用するトルクは、ロボットシステム100の質量に作用する重力から生じる。したがって、平衡状態は、一般的に、ロボットシステム100の質量中心が目標線上にあるときに達成され、この目標線は、目標点を垂直に貫通する。目標点は、地面などの表面50上の点であり、ロボットシステム100は、ロボットシステム100の質量中心が目標点の上方に位置決めされているときバランスが取れている。たとえば、ロボットシステム100が平坦な表面50の上方でゼロ速度を有するとき、目標点は、ロボットシステム100が表面50に接触する各点の間の中心点である。平坦な表面50上の二輪ロボットシステム100の場合、そのような目標点は、2つの車輪の各接点の間の中心位置である。
【0020】
バランスシステム130を通じて、ロボットシステム100は、そのさまざまな構成要素のバランスを取ることによって平衡状態を回復しようとする。ロボットシステム100は、静的に安定である必要はない。言い換えれば、ロボットシステム100の構成要素が固定された状態にあるとすると、ロボットシステム100は、一般的に、環境外乱などの外力下で平衡状態のままでいない。典型的に、ロボットシステム100は、バランスを失うことによって、その姿勢、高さ、またはピッチを変更するであろう。場合によっては、外力下でそのような固定された状態のままでいることは、ロボットシステム100が倒れることを引起す。
【0021】
静的に安定ではないが、ロボットシステム100は、動的に安定であり得る。言い換えれば、ロボットシステム100は、その状態を能動的に変化させることによって、外力が加えられるときそのバランスを保持することができる。さらに、ロボットシステム100の実施例の中には、ロボットシステム100が自身のバランスを絶え間なく取りながら、ペイロードをペイロードの目標点まで戻し得るものもある。
【0022】
一般的に、ロボットシステム100は、絶え間なく質量中心を「安定化」させようとすることによって、バランスが取れた状態のままでいることができる。この明細書中で用いられる用語「安定質量中心」は、ロボットシステム100全体がバランスが取れているまたは安定化されているよう位置決めされた質量中心を指す。質量中心を安定化させようとする他のシステムおよび装置は、装置を常に目標点の上方で傾けることによってそうする。目標点は、表面50上の点であり、質量中心は、目標点の上方に配置されると安定化される。一般的に、目標点は、一組の車輪125間など、接地アセンブリ120の各接点の中心となる位置である。しかしながら、他の装置の難しさは、装置が傾くにつれて装置の基部が移動し、それによって、目標点を動的に変化させることである。その結果、そのような他の装置は、前後に振動して、バランスが取れた状態のままでいることが多い。
【0023】
一方、ロボットシステム100の実施例は、接地アセンブリ120に厳しい動き制限を適用して、バランスを維持することができる。接地アセンブリ120の任意の固定場所を与えられたロボットシステム100に「動作点」の三次元体積を与えることができる。動作点は、ペイロードの目標位置、またはそれに代えてドリルまたはねじ回しの接触点など、力が加えられる点であり得る。
【0024】
ロボットシステム100は、大量の動作点と、接地アセンブリ120の変位の制限とを、バランス部材135の作動される運動または位置決めを通じて達成できる。その結果、ロボットシステム100の質量中心を、動作点の位置から完全にまたは部分的に切離すことができる。これにより、所与の目標点に対する大量の動作点が生じる。加えて、バランスシステム130は、ロボットシステム100が1つ以上の外力を吸収することを可能にし得、接地アセンブリ120の変位を制約しながら動作点を回復し得る。
【0025】
その結果、ロボットシステム100は、線、点、または絶え間なく変化する表面50に適用可能であり得る。ロボットシステム100は、バランスを取り、表面接触およびペイロード位置決めへの制約の絶え間ない変更を満足させることができる。さらに、ロボットシステム100装置は、可撓性機械構造を有し得るため、ロボットシステム100を、特定の工学的制約に適合させることができる。
【0026】
II.ロボットシステムの構成要素
上述のように、および図1に示すように、ロボットシステム100は、本体110と接地アセンブリ120と、1つ以上のバランス部材135と、バランスシステム130とを含み得る。
【0027】
例示的な実施例において、本体110およびバランス部材135などのロボットシステム100のさまざまな構成要素は、鋼、アルミニウムまたは強化重合体などの剛性で頑丈な材料から構成される。
【0028】
A.本体
本体110は、ロボットシステム100のための構造基礎であり得る。本体110は、静的に不安定であることによって、ロボットシステム100全体を静的に不安定にし得る。安定性とは、動作点または配向に戻るシステムの漸近挙動を指す。言い換えれば、ロボットシステム100がバランスを能動的にとらない場合、静的に不安定な本体110は、直立のままでいることができないことがあり得る。しかしながら、ロボットシステム100は、自己のバランスを能動的に取るものであり得るため、本体110を動的に安定化することができる。
【0029】
本体110は、ロボットシステム100のバランスシステム130の動作において利用されるさまざまな機器も収容し得る。以下に詳細に説明されるように、バランスシステム130は、ロボットシステム100をバランスが取れた状態に維持し得る。
【0030】
例示的な実施例の中には、本体110が基部115と、任意選択的な胴部118とを含み得るものもある。設けられている場合、胴部118は、基部115からおおむね上方へ延在し得る。1つ以上のバランス部材135は、図1に示されるように、胴部118から延在し得る。基部115および胴部118は、作動される腰部ジョイント119によって互いに取付けられ得、この腰部ジョイントは、電動機で制御可能である。
【0031】
B.接地アセンブリ
再び図1を参照して、接地アセンブリ120は、本体110を地面などの表面50上に支持することができる。たとえば、接地アセンブリ120は、1つ以上の車輪125を含み得る。例示的な実施例において、接地アセンブリ120の地面50との接触域は比較的小さい。したがって、地面50の対応して小さな表面域しかロボットシステム100の動作に必要でない。図1に示されるように、例示的な実施例において、接地アセンブリ120は、2つ以下の車輪125を含み得る。車輪125は、軸方向に位置合わせされ得る。そのような接地アセンブリ120によって支持されているため、ロボットシステム100は、静的に不安定であり得る。
【0032】
ロボットアセンブリ100は、この明細書中で2つの軸方向に位置合わせされた車輪125上に支持されるものとして説明されるが、これはロボットシステム100のすべての実施例に必要ではない。たとえば、ロボットシステム100は、1つの車輪またはより大きなローラ上に支持され得る。これに代えて、ロボットシステム100は、静的に安定でたとえば3つまたは4つの車輪上に支持され得る。その場合、起伏の多い地形を進むことなどによりロボットシステム100が不安定になると、バランスシステム130を依然として利用して、ロボットシステムを安定化することができる。
【0033】
この発明の実施例に従ったロボットシステム100は、ロボットシステム100と地面50との間の接触域が限られているまたは不規則な場合に動作可能であり得る。たとえば、ロボットシステム100は、危険な地雷地帯、取り壊されたまたは不安定な建物、ならびに最小限の接地およびセンサ、工具および検出器の正確な位置決めが必要な他の状況において有用であり得る。加えて、ロボットシステム100は、対象物を高速で平坦でない地形上で重力、求心力および水の波などの加速力の存在下で運送するための他の装置よりも、高い安定性を実現することができる。
【0034】
他の重要な用途には、工場自動化が含まれ得、この場合、プログラム可能な操作タスクは、限られた作業空間内での機械構成部品の輸送および組立を要求する。病院自動化において、ロボットシステム100は、患者の身体活動を監視し、可動性が制限されている人間に身体的支持および移動を提供することができる。
【0035】
そのような用途は、ロボットシステム100に必要な接地域が小さいことによって、ならびに以下に詳細に説明されるようにバランスシステム130によって提供されるバランシングおよび安定化が効果的であることによって可能となり得る。
【0036】
C.バランス部材
1つ以上のバランス部材135をロボットシステム100のバランスに寄与することも含めてさまざまな目的のために設けることができる。図1に示されるように、バランス部材135は、直列に関節アーム140に配列され得る。この構成は、空間効率がよく、バランス部材135における十分な自由度を提供して、バランス部材135の再位置決めか加速かのいずれかを通じてロボットシステム100のバランスを取ることを可能にし得る。
【0037】
本体110から1つ以上の関節アーム140が延在し得る。図1に示すように、ロボットシステム100の例示的な実施例は、2つの関節アーム140を有し得るが、これは、必要ではない。関節アーム140において、各バランス部材135を、作動されるジョイント150で隣接するバランス部材135に接続することができる。追加の作動されるジョイント150、肩部ジョイント155は、関節アーム140を本体110に取付け得る。ジョイント150は、各バランス部材135を隣接するバランス部材135に対して決められた位置に位置決めし得る。各ジョイント150は、隣接するバランス部材135に対して少なくとも1、最大6の自由度を提供し得る。加えて、各ジョイント150は、電動機または他のアクチュエータで制御可能であり得る。
【0038】
関節アーム140は、たとえばバランスをロボットシステム100に与えることおよびペイロードを支持することを含めて、さまざまな目的に役立ち得る。1つ以上の力センサ160をロボットシステム100にかかる力を検出するために設けることができる。そのような力センサ160を、関節アーム140のうち1つ以上の末端またはその近くに設けることができる。力センサ160は、ペイロードまたは他の環境要因によってロボットシステム100に加えられた力を検出することができる。したがって、ロボットシステム100は、その状態または構成を変化させて、バランスを取るまたは加えられた力に反作用することができる。ペイロード200の場合、検出された力を、ペイロード200のバランスをどのように取るかを決定する際に用いることができる。
【0039】
ペイロードは、人間、装置または他の対象物など、ロボットシステム100によって支持可能な多くの外部対象物であり得る。ロボットシステム100がペイロードを運ぶとき、ペイロードは、外力をロボットシステム100にかけ、ロボットシステム100の質量中心を変更し得る。したがって、ロボットシステム100のバランスシステム130は、バランス部材135を再位置決めすることによってなど、ロボットシステム100のバランスを回復する必要がある。
【0040】
2つの別個の関節アーム140としての配列に加えて、さまざまな代替的な配列をバランス部材135について実現することができる。ロボットシステム100の特定の作りのための配列を、ペイロードのバランスを取るようにまたは定常外力に耐えるように、技術者または他の使用者の仕様に従って選択することができる。
【0041】
図2には、ペイロード200を固定位置に支持するためのロボットシステム100が示されている。そのような実施例において、バランス部材135を、ロボットシステム100に作用する任意の外力およびロボットシステム100によって加えられる力とともにペイロード200のバランスを取るように配列することができる。バランス部材135は、ロボットシステム100が移動し、外力が加えられるにつれて、ペイロード200のバランスを取るように移動可能であり得る。
【0042】
図3には、ペイロード200およびバランス部材135が平行鎖310の構成要素であるロボットシステム100の実施例が示されている。第1の鎖310において、ペイロード支持部320は、ペイロード200を支持し得る。ペイロード支持部320は、駆動されるペイロードジョイント330によって本体110に取付けられ得、ペイロード200を本体110から離れるように延ばし得る。ペイロードジョイント330は、電動機などのさまざまな種類のアクチュエータで制御可能であり得る。第2の鎖310において、バランス部材135は、ペイロード200のロボットシステム100の残りの部分とのバランスを取り得る。そのようなバランシングは、バランス部材135の目標を定めた動きおよび再位置決めを含み得る。
【0043】
図4にはペイロード200を支持するロボットシステム100のさらに別の実施例が示されている。この実施例において、バランス部材135をペイロード200に平行な、関節アーム140などの複数の鎖310として配列することができる。加えて、ペイロード200を、示されるように、関節アーム140上に位置決めすることができる。図3のロボットシステム100と比較して、ロボットシステム100のこの実施例は、バランス構成の量の増加を実現することができる。
【0044】
さらにこれに代えて、図5Aから図5Bに示されるように、ペイロード200を、関節アーム140で支持することができる。示すように、ペイロード200を、関節アーム140の末端またはその近位に位置決めすることができる。これに代えて、図示しないが、ペイロード200を、関節アーム140の中間部分で支持することができる。
【0045】
加えて、図5Bに示されるように、バランス部材135は、閉鎖ループ510を形成し得る。閉鎖ループ510は、バランス部材135の位置決めまたは動きに冗長性をもたらし得る。その結果、バランス部材135の閉鎖ループ510の使用を通じてより多数の平衡状態が可能となり得る。
【0046】
組合せおよびペイロード200とバランス部材135とのさまざまな追加的な配列を実現することができる。
【0047】
D.バランスシステム
バランスシステム130は、ロボットシステム100のバランスを能動的に取り得る。例示的な実施例において、バランスシステム130は、ロボットシステム100が外力を吸収するまたは力をその環境に加える間でさえも、ロボットシステム100のバランスを取るのに効果的であり得る。例示的な実施例において、バランスシステム130は、ロボットシステム100がおおよそ一定の速度を表面50にわたって維持する間ロボットシステム100のバランスを取り得る。場合によっては、そのような一定の速度は、ゼロ速度であり得る。所望される速度および他の命令は、制御装置によってロボットシステム100に指示され得る。制御装置は、ロボットシステム100上に位置し得、または遠隔制御装置であり得る。遠隔制御装置が設けられる場合、そのような装置は、ロボットシステム100と有線または無線接続を介して通信し得る。
【0048】
図6には、バランスシステムが利用できるロボットシステム100のさまざまなハードウェア構成要素のブロック図が示されている。図6に示されるように、上述の構成要素に加えて、ロボットシステム100は、感知システム610と、少なくとも1つの記憶装置620と、少なくとも1つの処理装置630と、一組のコントローラ640と、一組のアクチュエータ650とをロボットシステム100のさまざまなジョイントを制御するために含み得る。
【0049】
感知システム610は、ロボットシステム100の姿勢の兆候を感知するための1つ以上の構成要素を含み得る。たとえば、例示的な実施例において、感知システム610は、ジャイロスコープ612と加速度計616とを含み得、これらのうちいずれかまたは両方は、基部115の中に収容され得る。ジャイロスコープ612は、基部115などのロボットシステム100の局所の角速度を感知することができる。より具体的には、ジャイロスコープ612は、ロボットシステム100の基部115または他の局所のロール(roll)、チルト(tilt)、およびヨー(yaw)における速度を感知することができる。加速度計616は、重力などの、基部115に作用する加速を感知することができる。重力の検出は、基部115のピッチ(pitch)を示し得る。感知システム610によって検出されたさまざまなデータを、少なくとも一時的に記憶装置620に格納することができる。
【0050】
処理装置630は、加速および角速度データを処理して、基部110のピッチおよびそのピッチが変化している速度を決定することができる。この情報を用いて、ロボットシステム100の質量中心を決定し、ロボットシステム100の基部110の今後の動きを予測することができる。加えて、この情報をロボットシステム100のバランスをどのように取るかを決定する際に用いることができる。たとえば、処理装置630は、ピッチ情報を用いて、1つ以上のコントローラ640にそのコントローラに対応するジョイント150を作動させるように命令することができる。ジョイント150の動きの結果、バランス部材135は、加速または再位置決めされて、ロボットシステム100のバランスを取ることができる。
【0051】
上記の構成要素を用いて、ロボットシステム100の実施例は、1つまたは複数のバランス技術を実現化することによって、以前のシステムおよび装置よりも効果的にバランスを達成することができる。各バランス技術は、バランスシステム130のサブシステムによって提供され得る。バランスシステム130のサブシステムには、再位置決めシステム170と、加速システム180と、駆動システム190とが含まれ得る。
【0052】
1.再位置決めシステム
再位置決めシステム170は、ロボットシステム100のさまざまな構成要素を再位置決めして重心を目標線または目標点まで移動させることによって、ロボットシステム100のバランスを取ることができる。そのような再位置決め構成要素には、たとえば、基部115と、胴部118と、本体110全体と、バランス部材135とが含まれ得る。ロボットシステム100が移動するにつれて、または外力がロボットシステム100に加わるにつれて、質量中心が安定した状態から不安定な状態に変化することがある。ロボットシステム100のさまざまな構成要素が質量中心の再安定化を担っている。再位置決めは、制御ループにおいて繰返し行なわれて、ロボットシステム100のバランスを保持することができる。
【0053】
ロボットシステム100のバランス部材135の各々は、決定可能な質量を有する剛性の、すなわち非可撓性の構成要素であり得る。場合によっては、バランス部材135は、予め定められた既知の質量を有するであろう。しかしながら他の場合においては、バランス部材135は、最初は未知の質量を有し得る。この場合、そのようなバランス部材135の質量は、バランス部材135がロボットシステム100にかける力に基づいて決定することができる。そのような力は、たとえば力センサ160で検出することができる。同様に、ロボットシステム100のさまざまな他の構成要素は、既知のまたは決定可能な質量を有し得る。ロボットシステム100のさまざまなジョイント150および119は既知の配向を有するので、バランス部材135および他の構成要素の基部115または予め定められた点に対する位置を決定することができる。加えて、基部115の姿勢を感知システム610から決定することができる。この、既知のおよび決定可能な情報の収集の結果、ロボットシステム100の質量中心を決定することができる。
【0054】
ロボットシステム100におよびによって加えられるさまざまな力を、ロボットシステム100の質量中心を計算する際に考慮することができる。たとえば、これに限定されないが、ロボットシステム100がペイロード200を支持する場合、ペイロード200は、少なくとも質量中心を計算するという目的のためには、ロボットシステム100の一部であると考えられる。
【0055】
加えて、再位置決めシステム170は、ロボットシステム100によって加えられるであろう力などの予期される力を考慮に入れ得る。たとえば、ロボットシステム100がテーブルを押すまたはドアを引くように命令される場合、そのような動作を予期することができる。力が加えられる場合、そのような力は、バランスシステム130で予期することができる。したがって、ロボットシステム100は、ロボットシステム100の1つ以上の構成要素を再位置決めして、予期される力に備えることによって、そのような力に対して準備することができる。さまざまな状況において、人間は、重い箱を引張る前にしゃがんで、大きな応力中心距離(lever arm)を作る空間を自身に与えるかもしれない。同様に、ロボットシステム100は、ロボットシステム100が予期される力を受けるまたは加える準備をすることができるように、さまざまな構成要素を再位置決めし得る。
【0056】
再位置決めシステム170は、ロボットシステム100の現在のまたは予期される質量中心を決定し得る。再位置決めシステム170は、質量中心が再位置決めされるべき目標線または点も決定し得る。次に再位置決めシステム170は、バランス部材135などの1つ以上の個別の構成要素をどのように再位置決めするかを決定して、質量中心を目標線または点に再配置することができる。
【0057】
再位置決めシステム170の単純な実施例の中には、さまざまな構成要素をどのように再位置決めするかを決定する力づく法(brute force method)を適用することができるものもある。力づく法において、バランス部材135の可能性のある再位置決めの部分または完全集合のサンプリングをシミュレーションすることができる。再位置決めの所与の集合のシミュレーション後、所与の再位置決めでの予想される質量中心位置を計算することができる。最もよい試験結果の再位置決めの集合を、ロボットシステム100に適用して、質量中心を再配置することができる。力づく法は、比較的大きなサンプリングサイズに適用されると効果的であり得るが、そのような方法は、不必要に時間がかかる。
【0058】
望ましい再位置決めを決定するより高度な方法は、ヤコビ行列を利用し得る。現在の質量中心位置と、目標線または目標点であり得る目標とから、再位置決めシステム170は、目標に向かっての質量中心の移動の速度ベクトルを決定することができる。ジョイント150操作をバランス部材135などのさまざまな構成要素の位置に関連付ける行列が存在する。そのような行列の導関数は、ジョイント150速度をさまざまな構成要素の速度に、したがって質量中心の速度に関連付けるヤコビ行列である。質量中心についての所望の速度ベクトルを決定して、質量中心を目標に向かって移動させることができる。ヤコビ行列の疑似逆元を用いて、そのような速度ベクトルをさまざまな構成要素の速度ベクトルの集合に写像することができる。したがって、各構成要素をそのような構成要素についての対応する個別の速度ベクトルに従って再位置決めすると、質量中心を目標に向かって移動させることができる。
【0059】
場合によっては、1つ以上の構成要素は、ロボットシステム100の他の構成要素よりも優先的に再位置決めされ得る。たとえば、バランス部材135の第1の集合と関連付けられるジョイント150および119は、固定されたままである必要があり得る。別の例では、バランス部材135の第2の集合の再位置決めは、必要な場合にのみ、バランス部材135の第3の集合の再位置決めがロボットシステム100のバランスを取るのに不十分なときに行われるよう、バランス部材135の第2の集合と関連付けられるジョイント150および119を非優先にすることができる。再位置決め優先順位のさまざまな組合せを、再位置決め構成要素の全体集合に適用することができる。
【0060】
そのような優先順位の実現化は、構成要素をどのように再位置決めするかを決定するために用いられるアルゴリズムによって異なり得る。上述の力づく法の場合、たとえば、選択された構成要素を固定することは、試験した集合の一覧から選択再位置決め集合を除くことによって行なうことができる。ヤコビ行列を利用するより高度な方法において、選択行列をヤコビ行列で乗算して、個別の再位置決め可能な構成要素を選択または選択解除することができる。その関連するジョイント150および119が固定されたままの構成要素の部分集合を、選択行列は識別することができる。これに代えて、重み付け集合をヤコビ行列で乗算して、各ジョイント150または119が質量中心に影響を及ぼすために用いられている程度または重みを決定することができる。
【0061】
図7Aから図7Bには、再位置決めシステム170の例示的な効果が示されている。図7Aには、平坦な表面50上に位置決めされたロボットシステム100の実施例の状態が描かれている。図7Bには、平坦でない地形によって傾けられたときの同じロボットシステム100が示されている。示されるように、ロボットシステム100の関節アーム140は、それ自体を再構成して、平坦でない地形上でロボットシステム100のバランスを取り戻す。
【0062】
図8には、再位置決めシステム170でロボットシステム100のバランスを取る方法800が示されている。図8に示されるように、810で、ロボットシステム100は、バランスシステム130を開始させ得る。820で、ロボットシステム100の処理装置630は、再位置決めシステム170を通じてロボットシステム100のバランスを取るための制御ループに入り得る。ループ内、830で、感知システム610は、ロボットシステム100の姿勢、力およびトルクに関連するさまざまなデータを検出し得る。840で、質量中心および目標を決定することができる。目標が目標線であり得る場合もあれば、目標が目標点であり得る場合もある。850で、再位置決めの集合をバランス部材135について計算することができる。860で、作動されるジョイント150は、計算されたとおりバランス部材135を再位置決めし得る。制御ループは、所望される限り繰返されて、再位置決めシステム170を通じてロボットシステム100のバランスを取ることができる。
【0063】
2.加速システム
加速システム180は、ロボットシステム100にトルクを生じることによってバランスをもたらすことができる。加速システム180の適用は、バランスを保持しようと腕を大きく動かす人の動作に類似する。加速システム180は、感知システム610およびさまざまな力センサ160からロボットシステム100にかかっている力に関するデータを受取り得る。加速システム180は、ロボットシステム100によって加えられるであろう力などの予期される力も考慮に入れ得る。たとえば、ロボットシステム100がテーブルを押すまたはドアを引くよう命令される場合、そのような動作を予期することができる。力が加えられようとする場合、そのような力は、バランスシステム130によって予期することができる。したがって、ロボットシステム100は、1つ以上のバランス部材135を加速させて、予期される力の印加に備えることによってそのような力に対して備えることができる。
【0064】
ロボットシステム100に影響する現在のおよび予期される力に応答して、加速システム180は、バランス部材135を加速させて、ロボットシステム100に目標トルクを生じさせて、ロボットシステム100のバランスを取ることができる。例示的な実施例において、目標トルクは、ロボットシステム100の本体110のバランスを維持または回復するように計算される。
【0065】
ジョイント150の平衡配位q0を考えると、トルクをそのようなジョイント150に以下の制御法則に従って加えることができる。
【0066】
【数1】
【0067】
式中、Θはジョイント150の角度を表わし、上付きのvは、導関数を表わし、初期値は、上付きの0によって表わされる。
【0068】
上記制御法則は、トルクに適用可能であり、直動ジョイント150に対する力に関して等価に書かれる。個別のジョイント150に対するゲインは、所望されるジョイント150運動、ロボットシステム100の構成および環境要素に基づいて選択され得る。ゲインの特定の値は、アクチュエータの種類、システムの質量および環境条件を含めてロボットシステム100において用いられる構成要素の詳細によって決定され得る。ゲインはまた、感知されたデータ、使用者がプログラム可能な仕様またはこれらの組合せに基づいてリアルタイムに選択されてもよい。
【0069】
加速システム180の背後にある直感は、ロボットシステム100に加えられる外力は、システムのどこかに反映されるであろうというものである。言い換えれば、外力に応答して、何かが加速されなくてはならない。しかしながら、作動されるジョイント150および119があるので、この加速するものはロボットシステム100の性能基準にとって重要である必要はない。たとえば、ペイロード200の位置などの重要な基準は、外力によって影響を受ける必要はない。加えて、ロボットシステム100の構成要素の構成は、構成要素がバランスを保持したまま互いに向かってまたは互いから離れるよう移動されて、おおよそゼロまたは他の目標値、正味トルクを達成することができるよう、いくらかの冗長性を提供し得る。
【0070】
図9には、ペイロード200がその位置を保持するよう、外力に応答して加速するバランス部材130が示されている。摩擦などの第2の外力と、内力を加える能力とが存在するとして、当初の外力は、1つ、複数、またはすべての制御可能なシステム構成要素を加速することによって相殺される。そのような構成要素には、基部115、胴部118、本体110全体、およびバランス部材135が含まれ得るが、これに限定されない。たとえば、図9に示されるように、地面との摩擦ffrictionが外力を供給すると仮定して、トルクτwを車輪125に加えることができ、バランス部材135がペイロード200に加えられた力f1に関して加速するよう、2つのジョイントトルクτ1およびτ2を追加的に加えることができる。これにより車輪125およびペイロード200は、外力f1をバランス部材135を加速することによって吸収しながら静止したままになり得る。
【0071】
数学的に、摩擦力ffrictionなど、接地アセンブリ120の並進を抑制する外力が存在すると仮定して、ロボットシステム100を以下のように表現することができる。
【0072】
【数2】
【0073】
上記の方程式において、小文字はベクトルを表わし、大文字は行列を表わす。ベクトルqは、ジョイント角度のベクトルである。ベクトルqvvは、ジョイント加速のベクトルである。行列Nは、現在のベクトルqに依存する行列であり、このベクトルは、カルマンフィルタまたは他の状態推定器で推定することができる。行列Cは、現在のベクトルqおよびqvに依存する行列であり、これらのベクトルは、ジョイント位置および速度を表わす。最後に、ベクトルtは、ジョイントトルクのベクトルである。
【0074】
役に立つ外力が加えられる点は、ロボットシステム100の中でジョイント150または119であると仮定することができる。たとえば、摩擦ffrictionの場合、加えられる力の点は、接地アセンブリ120が地面50に接触する点である。さらに、q0は、関連するジョイントの初期角度であり、q1は、車輪の角度であり、q2は、バランス部材135またはジョイント150もしくは119によって移動可能な他の構成要素の角度であると仮定することができる。
【0075】
上述の関連するジョイントの他に1つだけジョイントを有するロボットシステム100を考える。そのようなシステム100は、図9に描かれている。NABを行列NのA行目B列目にある要素として定義する。同様に、qAは、ベクトルqのA番目の要素として定義される。したがって、以下が当てはまり得る。
【0076】
【数3】
【0077】
0番目のジョイント(t0=0)の周りにはトルクが存在しないと仮定することができる。接地アセンブリ120の地面との接点の作動はないはずであるので、これは実際のところである。さらに、0番目のジョイント(q0vv=0)の周りでは加速がないはずである。そのような加速は、車輪125の横揺れ(rolling)を示すであろう。したがって、以下のとおりである。
【0078】
【数4】
【0079】
上記は、3つの方程式と2つの未知数とからなる系を説明する。よって、自由パラメータがこの方程式系の中に存在する。自由パラメータは、1つ以上のトルクt1およびt2が、ロボットシステム100のバランスを取るなど特定の目的を達成するように選択されることを可能にする。特に、t1を基部115を接地アセンブリ120に接続するジョイントが加速しない平衡条件を満たすように選択することができる。加えて、t2を、ロボットシステム100の選択された構成要素が加速することを許すように計算することができる。そのような選択は、方程式を並べ替え、解く上での事項である。
【0080】
ロボットシステム100が複数のジョイント150および119ならびに質量を含む状況において、冗長システムがもたらされる。上記の方程式に関して、この場合、t0=0であり、t1は、加えられた力f1への動的応答である。複数のジョイント150および119ならびに質量(すなわち可動構成要素)からなるそのようなシステムでは、より多くの垂直項(すなわち方程式)を用いることができる。結果として、t0およびt1が上記のように定義されている限り、我々はトルクをさまざまに選択することができる。加えるトルクを選択する方法は、再位置決めシステム170が構成要素をどのように再位置決めするかを決定するために利用する方法に似得る。ヤコビ行列およびその導関数、ハミルトン行列を用いて、ロボットシステム100のすべての構成要素の運動について全体最小値を決定することができる。加えて、我々は、再位置決めシステム100によって行なわれるのと同様に、構成要素に優先順位を付けることができる。たとえば、特定のジョイント150または119がその限界に近い場合、他のジョイント150および119の運動は、特定のジョイント150または119よりも優先させることができる。
【0081】
ロボットシステム100のさまざまな構成要素の加速を制御ループにおいて繰返し行なって、ロボットシステム100のバランスを保持することができる。
【0082】
3.駆動システム
駆動システム190は、他のバランスシステムおよび装置によって用いられるシステムに類似し得る。より具体的には、駆動システム190は、接地アセンブリ120を駆動して、質量中心を目標点にまたは目標点を垂直に貫通する目標線に位置決めすることができる。接地アセンブリ120をそのような目標に向かって駆動すると、ロボットシステム100のバランスを取ることができる。接地アセンブリ120の繰返される計算および動きは、制御ループにおいて提供されて、ロボットシステム100のバランスを保持することができる。
【0083】
適切に適用されると、状態推定器は、感知システム610から受取る雑音の多いデータを減らすことができる。そのような状態推定器は、カルマンフィルタであり得る。状態推定器を利用して、比較的平滑な、すなわち雑音が多くない本体110の動きの予測をもたらすことができる。その結果、接地アセンブリ120の前後の運動を、バランスシステム130の他のサブシステムが非アクティブにされているときでさえも、他のシステムおよび装置と比較して著しく低減することができる。
【0084】
図10には、駆動システム190でロボットシステム100のバランスを取る方法1000が示されている。図10で示されるように、1010で、ロボットシステム100は、バランスシステム130を開始させ得る。1020で、ロボットシステム100の処理装置630は、駆動システム190を通じてロボットシステム100のバランスを取るための制御ループに入り得る。ループ内、1030で、感知システム610は、ロボットシステム100の姿勢、力およびトルクに関連するさまざまなデータを検出し得る。1040で、状態推定器をそのようなデータに適用することができる。1050で、状態推定器の出力から、処理装置630は、ロボットシステム100に対する座標系における質量中心および目標を計算し得る。1060で、プロセッサは、接地アセンブリ120のコントローラに接地アセンブリを移動させて、目標をロボットシステム100の質量中心にまたはに向かって再配置するよう指示し得る。制御ループは、所望される限り繰返されて、駆動システム190を通じてロボットシステム100のバランスを取ることができる。
【0085】
バランスシステム130のサブシステム170、180および190は、相補的なものであり得、組合せて適用されて、性能を向上または専用化することができる。たとえば、バランス部材135位置、アクチュエータトルク限界、接地域、またはそれらの組合せに制限が存在する場合、サブシステム170、180および190の特定の組合せおよび重み付けを用いることができる。
【0086】
III.結論
したがって、この明細書中に説明されるように、ロボットシステム100の実施例は、平坦でない予測不可能なまたは雑然としたな地形でかつさまざまな力に晒されるまたは加えるとき、効果的に動作することができる。
【0087】
ロボットシステム100は例示的な形態で開示されたが、以下の特許請求の範囲に規定されるロボットシステム100、方法、およびその等価物の趣旨ならびに範囲から逸脱することなく多くの変形、追加および削除を行なってもよいことが当業者には、明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2008年5月21日に出願され、その内容全体がこの明細書中に引用により援用される米国仮出願連続番号第61/054,903号の優先権を米国特許法第119条(e)の下に主張する。
【0002】
技術分野
この発明のさまざまな実施例は、移動体資産(mobile assets)に関し、より具体的には、対象物の輸送および操作のために利用可能な力バランス移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ほとんどの既存輸送システムは、人間または荷重の位置決めを静的安定性を通じて行なう。言い換えれば、そのようなシステムは、そのようなシステムの接地について予測されるすべての配置条件に関して機械的構造的に安定である。たとえば、自動車および三輪車は、その重心を、その車輪が形成する多角形の上方に維持する。自動車および三輪車は、その位置を、その速度を維持するのに必要な作動に作動を追加せずに維持する。
【0004】
静的安定システムの欠点は、一般的に、静的バランスを維持するために地面との複数の接点またはそれに代えて大きな接地面を必要とすることである。その結果、そのような装置は、起伏の多いまたは雑然とした地形の上で用いるためには実用的でない。
【0005】
既存の動的安定システムは、静的安定のシステムのこの問題を解決するが、さらなる問題を生じる。動的安定システムは、休止中は必ずしも安定ではないが、システムの能動的な動きによって安定させることができるシステムである。たとえば、動的安定システムには、米国特許第5,971,091号、第6,915,878号および第7,082,350号に記載されるものが含まれる。静的安定性は、そのようなシステムの要件ではないため、動的安定システムは、一般的に、静的安定システムが有するよりも少ないまたは小さい接点を有する。その結果、動的安定システムの中には、システムの動作のために利用可能な地面がより小さくとも利用可能なものがある。
【0006】
そのような動的安定システムの欠点は、接地面が任意に移動してバランスを維持することが許されている点である。たとえば、上記特許における動的安定システムの車輪は、絶え間なく前後に移動してバランスを維持することが許されている。したがって、これらのシステムは、人間と直接接触する用途には安全でないことがあり、またその上で動作するための任意に大きい地面を必要とすることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
起伏の多いまたは雑然とした地形上で使用可能な移動自己バランスロボットシステムが必要とされている。例示的な実施例において、そのようなロボットシステムは、おおよそ一定の速度を表面にわたって維持しながら動的に安定であることができる。加えて、このロボットシステムは、そのバランスを、力を吸収しながらおよび加えながら維持することが望ましい。この発明の実施例は、そのようなロボットシステムに関する。
【0008】
この発明の実施例は、ロボットシステムおよびその制御方法を含み得る。そのようなロボットシステムの例示的な実施例は、本体と、接地アセンブリと、少なくとも2つのバランス部材と、バランスシステムとを含み得る。
【0009】
本体は、ロボットシステムのための構造基礎としての役割を果たし得る。本体は、静的に不安定であり得、その結果、ロボットシステム全体が静的に不安定であり得る。バランスシステムは、本体とロボットシステムとを全体として動的に安定化するために設けられている。加えて、本体は、バランスシステムの構成要素などのロボットシステムの動作のためのさまざまな機器を収容し得る。
【0010】
接地アセンブリは、本体を地面などの表面の上方に支持し得る。例示的な実施例において、接地アセンブリは、地面に1つ以上の小さな接触域で接触する。接触域が小さいことにより、ロボットアセンブリは、小さく雑然としたまたは平らでない表面上で効果的に動作することができる。しかしながら接触域がそのように小さい結果、上述のように、本体は、静的に不安定であり得る。たとえば、接地アセンブリは、2つの軸方向に位置合わせされた車輪を含み得る。能動的バランスシステムがなければ、たった2つの車輪によって支持されるとき、本体は、倒れてしまうであろう。
【0011】
1つ以上のバランス部材がロボットシステムの動的安定化を可能にし得る。例示的な実施例において、バランス部材は、鎖状に配列されて、関節アームを形成する。アームにおいて、バランス部材をジョイントでつなぎ合わせるすることができ、各ジョイントを、アクチュエータに結合することができる。バランス部材の本体に対する位置は、ジョイントの配向がわかっているため容易に決定することができる。
【0012】
バランスシステムは、ロボットシステムによって吸収されるまたは加えられる力に晒されてもロボットシステムをバランスが取れた状態に保つために利用される1つ以上のサブシステムを有し得る。そのようなシステムには、再位置決めシステムと、加速システムと、駆動システムとが含まれ得る。再位置決めシステムおよび加速システムは、バランス部材を操作して、本体をバランスが取れた状態に保つことができる。より具体的には、再位置決めシステムは、バランス部材を再位置決めして、質量中心を再位置決めすることができる。加速システムは、バランス部材を加速させて、本体のバランスを取るのに有効なトルクを生じることができる。一方、駆動システムは、ロボットシステムの車輪を駆動して、バランスを維持することができる。バランスシステムのそのようなサブシステムの各々を、独立して用いてロボットシステムのバランスを取ることができ、またこれに代えて、サブシステムを互いに協調させて用いて、ロボットシステムの特定の用途専用のバランスを提供することができる。
【0013】
ロボットシステムおよび方法のこれらのおよび他の目的、特徴および利点は、以下の明細書を添付の図面に関連して読むとより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムを示す図である。
【図2】この発明の例示的な実施例に従った、ペイロードを固定位置に支持するロボットシステムを説明する図である。
【図3】この発明の例示的な実施例に従った、バランス部材およびペイロードのための平行鎖を有するロボットシステムを説明する図である。
【図4】この発明の例示的な実施例に従った、ペイロードのバランスを取るバランス部材の複数の鎖を有するロボットシステムを説明する図である。
【図5A】この発明の例示的な実施例に従った、ペイロードを関節アーム上に支持するロボットシステムを説明する図である。
【図5B】この発明の例示的な実施例に従った、閉鎖ループ状に配列された関節アーム上にペイロードを支持するロボットシステムを説明する図である。
【図6】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムのさまざまなハードウェア構成要素のブロック図である。
【図7A】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムの再位置決めシステムの効果を説明する図である。
【図7B】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムの再位置決めシステムの効果を説明する図である。
【図8】この発明の例示的な実施例に従った再位置決めシステムの動作方法を説明する図である。
【図9】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムの加速システムの動作を説明する図である。
【図10】この発明の例示的な実施例に従ったロボットシステムの駆動システムの動作方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
この発明の原理および特徴を理解しやすくするために、以下にさまざまな例示的な実施例を説明する。この発明の例示的な実施例は、ロボットシステムと、そのようなシステムを制御し、そのバランスを動的に取る方法とを含む。特に、ロボットシステムの実施例は、対象物の輸送および操作のために用いることを背景において説明される。しかしながら、この発明の実施例は、この背景に限定されない。そうではなく、この発明のさまざまな実施例は、さまざまな他の背景において用いることができる。たとえば、バランスを維持しながら、さまざまな実施例は、外部対象物に力を加え得、または外力に晒されても対象物の配置を維持し得る。さまざまな実施例を状況に応じて用いることもできる。加えて、本願における図面に描かれるロボットシステムは、人間の身体的特徴を有するが、これは、この発明に従ったロボットシステムに必要ではない。たとえば、実施例によっては、ロボットシステムは、移動車両または他の移動体資産の外見を有し得る。
【0016】
この発明のさまざまな要素を構成するものとして以下に説明される構成要素は、例示的なものであることが意図されており、限定的なものではない。この明細書中に説明される構成要素と同じまたは類似の機能を行なうであろう多くの適切な構成要素が、ロボットシステムおよび方法の範囲内に包含されることが意図される。この明細書中に説明されないそのような他の構成要素には、たとえばこの発明の開発後に開発された構成要素が含まれ得るが、これに限定されない。
【0017】
次に、図面を参照して、ロボットシステムおよび方法のさまざまな実施例を詳細に説明する。図中、類似する参照番号は、類似する部品を図面を通して表わす。
【0018】
I. ロボットシステムの概要
図1には、ロボットシステム100の例示的な実施例が示されている。図1に示されるように、ロボットシステム100は、本体110と、接地アセンブリ120と、1つ以上のバランス部材135と、バランスシステム130とを含み得る。本体110は、ロボットシステム100のための構造基礎を提供し得る。接地アセンブリ120は、地面などの表面50の上方に本体110を支持し得る。バランス部材135は、ペイロードを支持するまたはロボットシステム100の動的安定化に寄与するなどのさまざまな機能を提供し得る。そのような動的安定化は、以下に詳細に説明される。
【0019】
ロボットシステム100は、ロボットシステム100に作用するすべての力のバランスが取れているとき平衡状態にあると考えられる。最も単純な静的場合において、ロボットシステム100に作用するトルクは、ロボットシステム100の質量に作用する重力から生じる。したがって、平衡状態は、一般的に、ロボットシステム100の質量中心が目標線上にあるときに達成され、この目標線は、目標点を垂直に貫通する。目標点は、地面などの表面50上の点であり、ロボットシステム100は、ロボットシステム100の質量中心が目標点の上方に位置決めされているときバランスが取れている。たとえば、ロボットシステム100が平坦な表面50の上方でゼロ速度を有するとき、目標点は、ロボットシステム100が表面50に接触する各点の間の中心点である。平坦な表面50上の二輪ロボットシステム100の場合、そのような目標点は、2つの車輪の各接点の間の中心位置である。
【0020】
バランスシステム130を通じて、ロボットシステム100は、そのさまざまな構成要素のバランスを取ることによって平衡状態を回復しようとする。ロボットシステム100は、静的に安定である必要はない。言い換えれば、ロボットシステム100の構成要素が固定された状態にあるとすると、ロボットシステム100は、一般的に、環境外乱などの外力下で平衡状態のままでいない。典型的に、ロボットシステム100は、バランスを失うことによって、その姿勢、高さ、またはピッチを変更するであろう。場合によっては、外力下でそのような固定された状態のままでいることは、ロボットシステム100が倒れることを引起す。
【0021】
静的に安定ではないが、ロボットシステム100は、動的に安定であり得る。言い換えれば、ロボットシステム100は、その状態を能動的に変化させることによって、外力が加えられるときそのバランスを保持することができる。さらに、ロボットシステム100の実施例の中には、ロボットシステム100が自身のバランスを絶え間なく取りながら、ペイロードをペイロードの目標点まで戻し得るものもある。
【0022】
一般的に、ロボットシステム100は、絶え間なく質量中心を「安定化」させようとすることによって、バランスが取れた状態のままでいることができる。この明細書中で用いられる用語「安定質量中心」は、ロボットシステム100全体がバランスが取れているまたは安定化されているよう位置決めされた質量中心を指す。質量中心を安定化させようとする他のシステムおよび装置は、装置を常に目標点の上方で傾けることによってそうする。目標点は、表面50上の点であり、質量中心は、目標点の上方に配置されると安定化される。一般的に、目標点は、一組の車輪125間など、接地アセンブリ120の各接点の中心となる位置である。しかしながら、他の装置の難しさは、装置が傾くにつれて装置の基部が移動し、それによって、目標点を動的に変化させることである。その結果、そのような他の装置は、前後に振動して、バランスが取れた状態のままでいることが多い。
【0023】
一方、ロボットシステム100の実施例は、接地アセンブリ120に厳しい動き制限を適用して、バランスを維持することができる。接地アセンブリ120の任意の固定場所を与えられたロボットシステム100に「動作点」の三次元体積を与えることができる。動作点は、ペイロードの目標位置、またはそれに代えてドリルまたはねじ回しの接触点など、力が加えられる点であり得る。
【0024】
ロボットシステム100は、大量の動作点と、接地アセンブリ120の変位の制限とを、バランス部材135の作動される運動または位置決めを通じて達成できる。その結果、ロボットシステム100の質量中心を、動作点の位置から完全にまたは部分的に切離すことができる。これにより、所与の目標点に対する大量の動作点が生じる。加えて、バランスシステム130は、ロボットシステム100が1つ以上の外力を吸収することを可能にし得、接地アセンブリ120の変位を制約しながら動作点を回復し得る。
【0025】
その結果、ロボットシステム100は、線、点、または絶え間なく変化する表面50に適用可能であり得る。ロボットシステム100は、バランスを取り、表面接触およびペイロード位置決めへの制約の絶え間ない変更を満足させることができる。さらに、ロボットシステム100装置は、可撓性機械構造を有し得るため、ロボットシステム100を、特定の工学的制約に適合させることができる。
【0026】
II.ロボットシステムの構成要素
上述のように、および図1に示すように、ロボットシステム100は、本体110と接地アセンブリ120と、1つ以上のバランス部材135と、バランスシステム130とを含み得る。
【0027】
例示的な実施例において、本体110およびバランス部材135などのロボットシステム100のさまざまな構成要素は、鋼、アルミニウムまたは強化重合体などの剛性で頑丈な材料から構成される。
【0028】
A.本体
本体110は、ロボットシステム100のための構造基礎であり得る。本体110は、静的に不安定であることによって、ロボットシステム100全体を静的に不安定にし得る。安定性とは、動作点または配向に戻るシステムの漸近挙動を指す。言い換えれば、ロボットシステム100がバランスを能動的にとらない場合、静的に不安定な本体110は、直立のままでいることができないことがあり得る。しかしながら、ロボットシステム100は、自己のバランスを能動的に取るものであり得るため、本体110を動的に安定化することができる。
【0029】
本体110は、ロボットシステム100のバランスシステム130の動作において利用されるさまざまな機器も収容し得る。以下に詳細に説明されるように、バランスシステム130は、ロボットシステム100をバランスが取れた状態に維持し得る。
【0030】
例示的な実施例の中には、本体110が基部115と、任意選択的な胴部118とを含み得るものもある。設けられている場合、胴部118は、基部115からおおむね上方へ延在し得る。1つ以上のバランス部材135は、図1に示されるように、胴部118から延在し得る。基部115および胴部118は、作動される腰部ジョイント119によって互いに取付けられ得、この腰部ジョイントは、電動機で制御可能である。
【0031】
B.接地アセンブリ
再び図1を参照して、接地アセンブリ120は、本体110を地面などの表面50上に支持することができる。たとえば、接地アセンブリ120は、1つ以上の車輪125を含み得る。例示的な実施例において、接地アセンブリ120の地面50との接触域は比較的小さい。したがって、地面50の対応して小さな表面域しかロボットシステム100の動作に必要でない。図1に示されるように、例示的な実施例において、接地アセンブリ120は、2つ以下の車輪125を含み得る。車輪125は、軸方向に位置合わせされ得る。そのような接地アセンブリ120によって支持されているため、ロボットシステム100は、静的に不安定であり得る。
【0032】
ロボットアセンブリ100は、この明細書中で2つの軸方向に位置合わせされた車輪125上に支持されるものとして説明されるが、これはロボットシステム100のすべての実施例に必要ではない。たとえば、ロボットシステム100は、1つの車輪またはより大きなローラ上に支持され得る。これに代えて、ロボットシステム100は、静的に安定でたとえば3つまたは4つの車輪上に支持され得る。その場合、起伏の多い地形を進むことなどによりロボットシステム100が不安定になると、バランスシステム130を依然として利用して、ロボットシステムを安定化することができる。
【0033】
この発明の実施例に従ったロボットシステム100は、ロボットシステム100と地面50との間の接触域が限られているまたは不規則な場合に動作可能であり得る。たとえば、ロボットシステム100は、危険な地雷地帯、取り壊されたまたは不安定な建物、ならびに最小限の接地およびセンサ、工具および検出器の正確な位置決めが必要な他の状況において有用であり得る。加えて、ロボットシステム100は、対象物を高速で平坦でない地形上で重力、求心力および水の波などの加速力の存在下で運送するための他の装置よりも、高い安定性を実現することができる。
【0034】
他の重要な用途には、工場自動化が含まれ得、この場合、プログラム可能な操作タスクは、限られた作業空間内での機械構成部品の輸送および組立を要求する。病院自動化において、ロボットシステム100は、患者の身体活動を監視し、可動性が制限されている人間に身体的支持および移動を提供することができる。
【0035】
そのような用途は、ロボットシステム100に必要な接地域が小さいことによって、ならびに以下に詳細に説明されるようにバランスシステム130によって提供されるバランシングおよび安定化が効果的であることによって可能となり得る。
【0036】
C.バランス部材
1つ以上のバランス部材135をロボットシステム100のバランスに寄与することも含めてさまざまな目的のために設けることができる。図1に示されるように、バランス部材135は、直列に関節アーム140に配列され得る。この構成は、空間効率がよく、バランス部材135における十分な自由度を提供して、バランス部材135の再位置決めか加速かのいずれかを通じてロボットシステム100のバランスを取ることを可能にし得る。
【0037】
本体110から1つ以上の関節アーム140が延在し得る。図1に示すように、ロボットシステム100の例示的な実施例は、2つの関節アーム140を有し得るが、これは、必要ではない。関節アーム140において、各バランス部材135を、作動されるジョイント150で隣接するバランス部材135に接続することができる。追加の作動されるジョイント150、肩部ジョイント155は、関節アーム140を本体110に取付け得る。ジョイント150は、各バランス部材135を隣接するバランス部材135に対して決められた位置に位置決めし得る。各ジョイント150は、隣接するバランス部材135に対して少なくとも1、最大6の自由度を提供し得る。加えて、各ジョイント150は、電動機または他のアクチュエータで制御可能であり得る。
【0038】
関節アーム140は、たとえばバランスをロボットシステム100に与えることおよびペイロードを支持することを含めて、さまざまな目的に役立ち得る。1つ以上の力センサ160をロボットシステム100にかかる力を検出するために設けることができる。そのような力センサ160を、関節アーム140のうち1つ以上の末端またはその近くに設けることができる。力センサ160は、ペイロードまたは他の環境要因によってロボットシステム100に加えられた力を検出することができる。したがって、ロボットシステム100は、その状態または構成を変化させて、バランスを取るまたは加えられた力に反作用することができる。ペイロード200の場合、検出された力を、ペイロード200のバランスをどのように取るかを決定する際に用いることができる。
【0039】
ペイロードは、人間、装置または他の対象物など、ロボットシステム100によって支持可能な多くの外部対象物であり得る。ロボットシステム100がペイロードを運ぶとき、ペイロードは、外力をロボットシステム100にかけ、ロボットシステム100の質量中心を変更し得る。したがって、ロボットシステム100のバランスシステム130は、バランス部材135を再位置決めすることによってなど、ロボットシステム100のバランスを回復する必要がある。
【0040】
2つの別個の関節アーム140としての配列に加えて、さまざまな代替的な配列をバランス部材135について実現することができる。ロボットシステム100の特定の作りのための配列を、ペイロードのバランスを取るようにまたは定常外力に耐えるように、技術者または他の使用者の仕様に従って選択することができる。
【0041】
図2には、ペイロード200を固定位置に支持するためのロボットシステム100が示されている。そのような実施例において、バランス部材135を、ロボットシステム100に作用する任意の外力およびロボットシステム100によって加えられる力とともにペイロード200のバランスを取るように配列することができる。バランス部材135は、ロボットシステム100が移動し、外力が加えられるにつれて、ペイロード200のバランスを取るように移動可能であり得る。
【0042】
図3には、ペイロード200およびバランス部材135が平行鎖310の構成要素であるロボットシステム100の実施例が示されている。第1の鎖310において、ペイロード支持部320は、ペイロード200を支持し得る。ペイロード支持部320は、駆動されるペイロードジョイント330によって本体110に取付けられ得、ペイロード200を本体110から離れるように延ばし得る。ペイロードジョイント330は、電動機などのさまざまな種類のアクチュエータで制御可能であり得る。第2の鎖310において、バランス部材135は、ペイロード200のロボットシステム100の残りの部分とのバランスを取り得る。そのようなバランシングは、バランス部材135の目標を定めた動きおよび再位置決めを含み得る。
【0043】
図4にはペイロード200を支持するロボットシステム100のさらに別の実施例が示されている。この実施例において、バランス部材135をペイロード200に平行な、関節アーム140などの複数の鎖310として配列することができる。加えて、ペイロード200を、示されるように、関節アーム140上に位置決めすることができる。図3のロボットシステム100と比較して、ロボットシステム100のこの実施例は、バランス構成の量の増加を実現することができる。
【0044】
さらにこれに代えて、図5Aから図5Bに示されるように、ペイロード200を、関節アーム140で支持することができる。示すように、ペイロード200を、関節アーム140の末端またはその近位に位置決めすることができる。これに代えて、図示しないが、ペイロード200を、関節アーム140の中間部分で支持することができる。
【0045】
加えて、図5Bに示されるように、バランス部材135は、閉鎖ループ510を形成し得る。閉鎖ループ510は、バランス部材135の位置決めまたは動きに冗長性をもたらし得る。その結果、バランス部材135の閉鎖ループ510の使用を通じてより多数の平衡状態が可能となり得る。
【0046】
組合せおよびペイロード200とバランス部材135とのさまざまな追加的な配列を実現することができる。
【0047】
D.バランスシステム
バランスシステム130は、ロボットシステム100のバランスを能動的に取り得る。例示的な実施例において、バランスシステム130は、ロボットシステム100が外力を吸収するまたは力をその環境に加える間でさえも、ロボットシステム100のバランスを取るのに効果的であり得る。例示的な実施例において、バランスシステム130は、ロボットシステム100がおおよそ一定の速度を表面50にわたって維持する間ロボットシステム100のバランスを取り得る。場合によっては、そのような一定の速度は、ゼロ速度であり得る。所望される速度および他の命令は、制御装置によってロボットシステム100に指示され得る。制御装置は、ロボットシステム100上に位置し得、または遠隔制御装置であり得る。遠隔制御装置が設けられる場合、そのような装置は、ロボットシステム100と有線または無線接続を介して通信し得る。
【0048】
図6には、バランスシステムが利用できるロボットシステム100のさまざまなハードウェア構成要素のブロック図が示されている。図6に示されるように、上述の構成要素に加えて、ロボットシステム100は、感知システム610と、少なくとも1つの記憶装置620と、少なくとも1つの処理装置630と、一組のコントローラ640と、一組のアクチュエータ650とをロボットシステム100のさまざまなジョイントを制御するために含み得る。
【0049】
感知システム610は、ロボットシステム100の姿勢の兆候を感知するための1つ以上の構成要素を含み得る。たとえば、例示的な実施例において、感知システム610は、ジャイロスコープ612と加速度計616とを含み得、これらのうちいずれかまたは両方は、基部115の中に収容され得る。ジャイロスコープ612は、基部115などのロボットシステム100の局所の角速度を感知することができる。より具体的には、ジャイロスコープ612は、ロボットシステム100の基部115または他の局所のロール(roll)、チルト(tilt)、およびヨー(yaw)における速度を感知することができる。加速度計616は、重力などの、基部115に作用する加速を感知することができる。重力の検出は、基部115のピッチ(pitch)を示し得る。感知システム610によって検出されたさまざまなデータを、少なくとも一時的に記憶装置620に格納することができる。
【0050】
処理装置630は、加速および角速度データを処理して、基部110のピッチおよびそのピッチが変化している速度を決定することができる。この情報を用いて、ロボットシステム100の質量中心を決定し、ロボットシステム100の基部110の今後の動きを予測することができる。加えて、この情報をロボットシステム100のバランスをどのように取るかを決定する際に用いることができる。たとえば、処理装置630は、ピッチ情報を用いて、1つ以上のコントローラ640にそのコントローラに対応するジョイント150を作動させるように命令することができる。ジョイント150の動きの結果、バランス部材135は、加速または再位置決めされて、ロボットシステム100のバランスを取ることができる。
【0051】
上記の構成要素を用いて、ロボットシステム100の実施例は、1つまたは複数のバランス技術を実現化することによって、以前のシステムおよび装置よりも効果的にバランスを達成することができる。各バランス技術は、バランスシステム130のサブシステムによって提供され得る。バランスシステム130のサブシステムには、再位置決めシステム170と、加速システム180と、駆動システム190とが含まれ得る。
【0052】
1.再位置決めシステム
再位置決めシステム170は、ロボットシステム100のさまざまな構成要素を再位置決めして重心を目標線または目標点まで移動させることによって、ロボットシステム100のバランスを取ることができる。そのような再位置決め構成要素には、たとえば、基部115と、胴部118と、本体110全体と、バランス部材135とが含まれ得る。ロボットシステム100が移動するにつれて、または外力がロボットシステム100に加わるにつれて、質量中心が安定した状態から不安定な状態に変化することがある。ロボットシステム100のさまざまな構成要素が質量中心の再安定化を担っている。再位置決めは、制御ループにおいて繰返し行なわれて、ロボットシステム100のバランスを保持することができる。
【0053】
ロボットシステム100のバランス部材135の各々は、決定可能な質量を有する剛性の、すなわち非可撓性の構成要素であり得る。場合によっては、バランス部材135は、予め定められた既知の質量を有するであろう。しかしながら他の場合においては、バランス部材135は、最初は未知の質量を有し得る。この場合、そのようなバランス部材135の質量は、バランス部材135がロボットシステム100にかける力に基づいて決定することができる。そのような力は、たとえば力センサ160で検出することができる。同様に、ロボットシステム100のさまざまな他の構成要素は、既知のまたは決定可能な質量を有し得る。ロボットシステム100のさまざまなジョイント150および119は既知の配向を有するので、バランス部材135および他の構成要素の基部115または予め定められた点に対する位置を決定することができる。加えて、基部115の姿勢を感知システム610から決定することができる。この、既知のおよび決定可能な情報の収集の結果、ロボットシステム100の質量中心を決定することができる。
【0054】
ロボットシステム100におよびによって加えられるさまざまな力を、ロボットシステム100の質量中心を計算する際に考慮することができる。たとえば、これに限定されないが、ロボットシステム100がペイロード200を支持する場合、ペイロード200は、少なくとも質量中心を計算するという目的のためには、ロボットシステム100の一部であると考えられる。
【0055】
加えて、再位置決めシステム170は、ロボットシステム100によって加えられるであろう力などの予期される力を考慮に入れ得る。たとえば、ロボットシステム100がテーブルを押すまたはドアを引くように命令される場合、そのような動作を予期することができる。力が加えられる場合、そのような力は、バランスシステム130で予期することができる。したがって、ロボットシステム100は、ロボットシステム100の1つ以上の構成要素を再位置決めして、予期される力に備えることによって、そのような力に対して準備することができる。さまざまな状況において、人間は、重い箱を引張る前にしゃがんで、大きな応力中心距離(lever arm)を作る空間を自身に与えるかもしれない。同様に、ロボットシステム100は、ロボットシステム100が予期される力を受けるまたは加える準備をすることができるように、さまざまな構成要素を再位置決めし得る。
【0056】
再位置決めシステム170は、ロボットシステム100の現在のまたは予期される質量中心を決定し得る。再位置決めシステム170は、質量中心が再位置決めされるべき目標線または点も決定し得る。次に再位置決めシステム170は、バランス部材135などの1つ以上の個別の構成要素をどのように再位置決めするかを決定して、質量中心を目標線または点に再配置することができる。
【0057】
再位置決めシステム170の単純な実施例の中には、さまざまな構成要素をどのように再位置決めするかを決定する力づく法(brute force method)を適用することができるものもある。力づく法において、バランス部材135の可能性のある再位置決めの部分または完全集合のサンプリングをシミュレーションすることができる。再位置決めの所与の集合のシミュレーション後、所与の再位置決めでの予想される質量中心位置を計算することができる。最もよい試験結果の再位置決めの集合を、ロボットシステム100に適用して、質量中心を再配置することができる。力づく法は、比較的大きなサンプリングサイズに適用されると効果的であり得るが、そのような方法は、不必要に時間がかかる。
【0058】
望ましい再位置決めを決定するより高度な方法は、ヤコビ行列を利用し得る。現在の質量中心位置と、目標線または目標点であり得る目標とから、再位置決めシステム170は、目標に向かっての質量中心の移動の速度ベクトルを決定することができる。ジョイント150操作をバランス部材135などのさまざまな構成要素の位置に関連付ける行列が存在する。そのような行列の導関数は、ジョイント150速度をさまざまな構成要素の速度に、したがって質量中心の速度に関連付けるヤコビ行列である。質量中心についての所望の速度ベクトルを決定して、質量中心を目標に向かって移動させることができる。ヤコビ行列の疑似逆元を用いて、そのような速度ベクトルをさまざまな構成要素の速度ベクトルの集合に写像することができる。したがって、各構成要素をそのような構成要素についての対応する個別の速度ベクトルに従って再位置決めすると、質量中心を目標に向かって移動させることができる。
【0059】
場合によっては、1つ以上の構成要素は、ロボットシステム100の他の構成要素よりも優先的に再位置決めされ得る。たとえば、バランス部材135の第1の集合と関連付けられるジョイント150および119は、固定されたままである必要があり得る。別の例では、バランス部材135の第2の集合の再位置決めは、必要な場合にのみ、バランス部材135の第3の集合の再位置決めがロボットシステム100のバランスを取るのに不十分なときに行われるよう、バランス部材135の第2の集合と関連付けられるジョイント150および119を非優先にすることができる。再位置決め優先順位のさまざまな組合せを、再位置決め構成要素の全体集合に適用することができる。
【0060】
そのような優先順位の実現化は、構成要素をどのように再位置決めするかを決定するために用いられるアルゴリズムによって異なり得る。上述の力づく法の場合、たとえば、選択された構成要素を固定することは、試験した集合の一覧から選択再位置決め集合を除くことによって行なうことができる。ヤコビ行列を利用するより高度な方法において、選択行列をヤコビ行列で乗算して、個別の再位置決め可能な構成要素を選択または選択解除することができる。その関連するジョイント150および119が固定されたままの構成要素の部分集合を、選択行列は識別することができる。これに代えて、重み付け集合をヤコビ行列で乗算して、各ジョイント150または119が質量中心に影響を及ぼすために用いられている程度または重みを決定することができる。
【0061】
図7Aから図7Bには、再位置決めシステム170の例示的な効果が示されている。図7Aには、平坦な表面50上に位置決めされたロボットシステム100の実施例の状態が描かれている。図7Bには、平坦でない地形によって傾けられたときの同じロボットシステム100が示されている。示されるように、ロボットシステム100の関節アーム140は、それ自体を再構成して、平坦でない地形上でロボットシステム100のバランスを取り戻す。
【0062】
図8には、再位置決めシステム170でロボットシステム100のバランスを取る方法800が示されている。図8に示されるように、810で、ロボットシステム100は、バランスシステム130を開始させ得る。820で、ロボットシステム100の処理装置630は、再位置決めシステム170を通じてロボットシステム100のバランスを取るための制御ループに入り得る。ループ内、830で、感知システム610は、ロボットシステム100の姿勢、力およびトルクに関連するさまざまなデータを検出し得る。840で、質量中心および目標を決定することができる。目標が目標線であり得る場合もあれば、目標が目標点であり得る場合もある。850で、再位置決めの集合をバランス部材135について計算することができる。860で、作動されるジョイント150は、計算されたとおりバランス部材135を再位置決めし得る。制御ループは、所望される限り繰返されて、再位置決めシステム170を通じてロボットシステム100のバランスを取ることができる。
【0063】
2.加速システム
加速システム180は、ロボットシステム100にトルクを生じることによってバランスをもたらすことができる。加速システム180の適用は、バランスを保持しようと腕を大きく動かす人の動作に類似する。加速システム180は、感知システム610およびさまざまな力センサ160からロボットシステム100にかかっている力に関するデータを受取り得る。加速システム180は、ロボットシステム100によって加えられるであろう力などの予期される力も考慮に入れ得る。たとえば、ロボットシステム100がテーブルを押すまたはドアを引くよう命令される場合、そのような動作を予期することができる。力が加えられようとする場合、そのような力は、バランスシステム130によって予期することができる。したがって、ロボットシステム100は、1つ以上のバランス部材135を加速させて、予期される力の印加に備えることによってそのような力に対して備えることができる。
【0064】
ロボットシステム100に影響する現在のおよび予期される力に応答して、加速システム180は、バランス部材135を加速させて、ロボットシステム100に目標トルクを生じさせて、ロボットシステム100のバランスを取ることができる。例示的な実施例において、目標トルクは、ロボットシステム100の本体110のバランスを維持または回復するように計算される。
【0065】
ジョイント150の平衡配位q0を考えると、トルクをそのようなジョイント150に以下の制御法則に従って加えることができる。
【0066】
【数1】
【0067】
式中、Θはジョイント150の角度を表わし、上付きのvは、導関数を表わし、初期値は、上付きの0によって表わされる。
【0068】
上記制御法則は、トルクに適用可能であり、直動ジョイント150に対する力に関して等価に書かれる。個別のジョイント150に対するゲインは、所望されるジョイント150運動、ロボットシステム100の構成および環境要素に基づいて選択され得る。ゲインの特定の値は、アクチュエータの種類、システムの質量および環境条件を含めてロボットシステム100において用いられる構成要素の詳細によって決定され得る。ゲインはまた、感知されたデータ、使用者がプログラム可能な仕様またはこれらの組合せに基づいてリアルタイムに選択されてもよい。
【0069】
加速システム180の背後にある直感は、ロボットシステム100に加えられる外力は、システムのどこかに反映されるであろうというものである。言い換えれば、外力に応答して、何かが加速されなくてはならない。しかしながら、作動されるジョイント150および119があるので、この加速するものはロボットシステム100の性能基準にとって重要である必要はない。たとえば、ペイロード200の位置などの重要な基準は、外力によって影響を受ける必要はない。加えて、ロボットシステム100の構成要素の構成は、構成要素がバランスを保持したまま互いに向かってまたは互いから離れるよう移動されて、おおよそゼロまたは他の目標値、正味トルクを達成することができるよう、いくらかの冗長性を提供し得る。
【0070】
図9には、ペイロード200がその位置を保持するよう、外力に応答して加速するバランス部材130が示されている。摩擦などの第2の外力と、内力を加える能力とが存在するとして、当初の外力は、1つ、複数、またはすべての制御可能なシステム構成要素を加速することによって相殺される。そのような構成要素には、基部115、胴部118、本体110全体、およびバランス部材135が含まれ得るが、これに限定されない。たとえば、図9に示されるように、地面との摩擦ffrictionが外力を供給すると仮定して、トルクτwを車輪125に加えることができ、バランス部材135がペイロード200に加えられた力f1に関して加速するよう、2つのジョイントトルクτ1およびτ2を追加的に加えることができる。これにより車輪125およびペイロード200は、外力f1をバランス部材135を加速することによって吸収しながら静止したままになり得る。
【0071】
数学的に、摩擦力ffrictionなど、接地アセンブリ120の並進を抑制する外力が存在すると仮定して、ロボットシステム100を以下のように表現することができる。
【0072】
【数2】
【0073】
上記の方程式において、小文字はベクトルを表わし、大文字は行列を表わす。ベクトルqは、ジョイント角度のベクトルである。ベクトルqvvは、ジョイント加速のベクトルである。行列Nは、現在のベクトルqに依存する行列であり、このベクトルは、カルマンフィルタまたは他の状態推定器で推定することができる。行列Cは、現在のベクトルqおよびqvに依存する行列であり、これらのベクトルは、ジョイント位置および速度を表わす。最後に、ベクトルtは、ジョイントトルクのベクトルである。
【0074】
役に立つ外力が加えられる点は、ロボットシステム100の中でジョイント150または119であると仮定することができる。たとえば、摩擦ffrictionの場合、加えられる力の点は、接地アセンブリ120が地面50に接触する点である。さらに、q0は、関連するジョイントの初期角度であり、q1は、車輪の角度であり、q2は、バランス部材135またはジョイント150もしくは119によって移動可能な他の構成要素の角度であると仮定することができる。
【0075】
上述の関連するジョイントの他に1つだけジョイントを有するロボットシステム100を考える。そのようなシステム100は、図9に描かれている。NABを行列NのA行目B列目にある要素として定義する。同様に、qAは、ベクトルqのA番目の要素として定義される。したがって、以下が当てはまり得る。
【0076】
【数3】
【0077】
0番目のジョイント(t0=0)の周りにはトルクが存在しないと仮定することができる。接地アセンブリ120の地面との接点の作動はないはずであるので、これは実際のところである。さらに、0番目のジョイント(q0vv=0)の周りでは加速がないはずである。そのような加速は、車輪125の横揺れ(rolling)を示すであろう。したがって、以下のとおりである。
【0078】
【数4】
【0079】
上記は、3つの方程式と2つの未知数とからなる系を説明する。よって、自由パラメータがこの方程式系の中に存在する。自由パラメータは、1つ以上のトルクt1およびt2が、ロボットシステム100のバランスを取るなど特定の目的を達成するように選択されることを可能にする。特に、t1を基部115を接地アセンブリ120に接続するジョイントが加速しない平衡条件を満たすように選択することができる。加えて、t2を、ロボットシステム100の選択された構成要素が加速することを許すように計算することができる。そのような選択は、方程式を並べ替え、解く上での事項である。
【0080】
ロボットシステム100が複数のジョイント150および119ならびに質量を含む状況において、冗長システムがもたらされる。上記の方程式に関して、この場合、t0=0であり、t1は、加えられた力f1への動的応答である。複数のジョイント150および119ならびに質量(すなわち可動構成要素)からなるそのようなシステムでは、より多くの垂直項(すなわち方程式)を用いることができる。結果として、t0およびt1が上記のように定義されている限り、我々はトルクをさまざまに選択することができる。加えるトルクを選択する方法は、再位置決めシステム170が構成要素をどのように再位置決めするかを決定するために利用する方法に似得る。ヤコビ行列およびその導関数、ハミルトン行列を用いて、ロボットシステム100のすべての構成要素の運動について全体最小値を決定することができる。加えて、我々は、再位置決めシステム100によって行なわれるのと同様に、構成要素に優先順位を付けることができる。たとえば、特定のジョイント150または119がその限界に近い場合、他のジョイント150および119の運動は、特定のジョイント150または119よりも優先させることができる。
【0081】
ロボットシステム100のさまざまな構成要素の加速を制御ループにおいて繰返し行なって、ロボットシステム100のバランスを保持することができる。
【0082】
3.駆動システム
駆動システム190は、他のバランスシステムおよび装置によって用いられるシステムに類似し得る。より具体的には、駆動システム190は、接地アセンブリ120を駆動して、質量中心を目標点にまたは目標点を垂直に貫通する目標線に位置決めすることができる。接地アセンブリ120をそのような目標に向かって駆動すると、ロボットシステム100のバランスを取ることができる。接地アセンブリ120の繰返される計算および動きは、制御ループにおいて提供されて、ロボットシステム100のバランスを保持することができる。
【0083】
適切に適用されると、状態推定器は、感知システム610から受取る雑音の多いデータを減らすことができる。そのような状態推定器は、カルマンフィルタであり得る。状態推定器を利用して、比較的平滑な、すなわち雑音が多くない本体110の動きの予測をもたらすことができる。その結果、接地アセンブリ120の前後の運動を、バランスシステム130の他のサブシステムが非アクティブにされているときでさえも、他のシステムおよび装置と比較して著しく低減することができる。
【0084】
図10には、駆動システム190でロボットシステム100のバランスを取る方法1000が示されている。図10で示されるように、1010で、ロボットシステム100は、バランスシステム130を開始させ得る。1020で、ロボットシステム100の処理装置630は、駆動システム190を通じてロボットシステム100のバランスを取るための制御ループに入り得る。ループ内、1030で、感知システム610は、ロボットシステム100の姿勢、力およびトルクに関連するさまざまなデータを検出し得る。1040で、状態推定器をそのようなデータに適用することができる。1050で、状態推定器の出力から、処理装置630は、ロボットシステム100に対する座標系における質量中心および目標を計算し得る。1060で、プロセッサは、接地アセンブリ120のコントローラに接地アセンブリを移動させて、目標をロボットシステム100の質量中心にまたはに向かって再配置するよう指示し得る。制御ループは、所望される限り繰返されて、駆動システム190を通じてロボットシステム100のバランスを取ることができる。
【0085】
バランスシステム130のサブシステム170、180および190は、相補的なものであり得、組合せて適用されて、性能を向上または専用化することができる。たとえば、バランス部材135位置、アクチュエータトルク限界、接地域、またはそれらの組合せに制限が存在する場合、サブシステム170、180および190の特定の組合せおよび重み付けを用いることができる。
【0086】
III.結論
したがって、この明細書中に説明されるように、ロボットシステム100の実施例は、平坦でない予測不可能なまたは雑然としたな地形でかつさまざまな力に晒されるまたは加えるとき、効果的に動作することができる。
【0087】
ロボットシステム100は例示的な形態で開示されたが、以下の特許請求の範囲に規定されるロボットシステム100、方法、およびその等価物の趣旨ならびに範囲から逸脱することなく多くの変形、追加および削除を行なってもよいことが当業者には、明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的に不安定な自己バランスロボットシステムであって、
1つ以上のバランス部材と、
前記ロボットシステムがおおよそ一定の速度を表面にわたって維持する間前記ロボットシステムに動的安定性を与えるためのバランスシステムとを備え、前記バランスシステムは、前記バランス部材のうち少なくとも1つを繰返し再位置決めして、前記ロボットシステムの質量中心を目標まで移動させ、前記目標は、前記ロボットシステムのバランスを取るように選択される、自己バランスロボットシステム。
【請求項2】
前記バランスシステムは、再位置決めのための前記バランス部材の部分集合を選択する、請求項1に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項3】
前記バランスシステムは、前記ロボットシステムのバランスを取るための目標トルクを計算する、請求項1または2に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項4】
前記バランスシステムは、前記バランス部材を加速させて、前記目標トルクを前記ロボットシステムに生じさせる、請求項3に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項5】
前記バランスシステムは、フィードバック線形化を利用して、前記バランス部材をどのように再位置決めするかを決定する、請求項1から4のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項6】
前記バランスシステムは、前記バランス部材をどのように位置決めするかをヤコビ行列の疑似逆元を利用して、前記ロボットシステムの前記質量中心の所望される速度ベクトルを前記バランス部材の目標部材速度ベクトルの集合に写像することによって計算する、請求項1から5のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項7】
前記バランスシステムは、前記バランス部材の部分集合の再位置決めを非アクティブにするように構成される、請求項1から6のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項8】
前記バランスシステムは、第1のバランス部材の再位置決めを第2のバランス部材の再位置決めよりも優先するように構成される、請求項1から7のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項9】
前記バランスシステムは、前記質量中心の再位置決めに対する各バランス部材の寄与に対応して前記バランス部材に重みの集合を適用する、請求項1から8のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項10】
前記バランスシステムは、選択バランス部材を予め定められた位置に保持するように構成される、請求項1から9のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項11】
静的に不安定な自己バランスロボットシステムであって、
1つ以上のバランス部材と、
前記ロボットシステムがおおよそ一定の速度を表面にわたって維持する間前記ロボットシステムに動的安定性を与えるためのバランスシステムとを備え、前記バランスシステムは、前記バランス部材のうち少なくとも1つを繰返し加速させて、目標トルクを前記ロボットシステムに生じさせ、前記目標トルクは、前記ロボットシステムのバランスを取るように計算されている、自己バランスロボットシステム。
【請求項12】
前記ロボットシステムを表面の上方で支持するための接地アセンブリをさらに備える、請求項1から11のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項13】
前記接地アセンブリは、1つ以上の車輪を含む、請求項12に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項14】
前記接地アセンブリは、2つ以下の車輪を含む、請求項13に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項15】
基部をさらに備え、前記バランスシステムは、前記接地アセンブリを駆動して、前記基部を前記ロボットシステムの前記質量中心の下に再位置決めする、請求項12から14のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項16】
前記バランスシステムは、カルマンフィルタを適用して、前記ロボットシステムの起こり得る動きを予測する、請求項1から15のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項17】
前記ロボットシステムの一部のピッチの兆候を感知するための感知システムをさらに備える、請求項1から16のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項18】
前記感知システムは、ジャイロスコープと加速度計とからなる群のうち少なくとも1つを含む、請求項17に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項19】
前記感知システムは、前記ロボットシステムに加えられる外力を感知するための力センサをさらに含む、請求項17または18に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項20】
前記バランスシステムは、前記外力と等しくかつ対向する力を生じて、前記ロボットのバランスを保持するようにさらに構成される、請求項19に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項21】
前記表面にわたる前記ロボットシステムの前記速度は、およそゼロの大きさを有する、請求項1から20のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項22】
前記ロボットシステムの前記速度は、制御可能である、請求項1から21のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項23】
前記ロボットシステムの前記速度は、遠隔制御装置によって制御可能である、請求項1から22のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項24】
前記バランス部材は、直列に配列され、アームジョイントによって繋ぎ合わされて、第1の関節アームを形成する、請求項1から23のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項25】
第2の関節アームをさらに備える、請求項24に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項26】
前記バランス部材は、2つ以上のアクチュエータによって制御可能である、請求項1から25のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項27】
前記アクチュエータのうち少なくとも1つは、電動機である、請求項26に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項28】
本体をさらに備え、前記バランス部材のうち少なくとも1つは、前記本体から延在する、請求項1から27のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項29】
前記本体は、
基部と、
前記基部に腰部ジョイントによって取付けられる胴部とを含む、請求項28に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項30】
前記腰部ジョイントは、腰部アクチュエータに結合されている、請求項28または29に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項31】
前記バランス部材のうち少なくとも1つは、前記胴部から延在する、請求項28から30のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項32】
一定速度を有する静的に不安定なロボットシステムであって、前記ロボットシステムは、
1つ以上のバランス部材と、
前記ロボットシステムの質量中心が安定である第1の状態と、
前記ロボットシステムの前記質量中心が不安定である第2の状態とを備え、前記質量中心を目標に移動させることによって前記質量中心に安定性が回復される、ロボットシステム。
【請求項33】
静的に不安定なロボットシステムのバランスを取る方法であって、前記方法は、
1つ以上のバランス部材を有する静的に不安定なロボットシステムを提供するステップと、
前記ロボットシステムの質量中心を計算するステップと、
目標を決定するステップとを備え、前記ロボットシステムは、前記質量中心が前記目標に位置決めされるとバランスが取れ、
前記ロボットシステムをおおよそ一定速度に表面にわたって維持しながら、前記バランス部材のうち少なくとも1つを繰返し位置決めして、前記ロボットシステムの前記質量中心を前記目標に再配置することによって、前記ロボットシステムのバランスを取るステップをさらに備える、方法。
【請求項34】
基部に適用されると前記基部のバランスを取る目標トルクを計算するステップをさらに備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記バランス部材を加速させて、前記目標トルクを前記基部に生じさせるステップをさらに備える、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
フィードバック線形化を利用して前記バランス部材をどのように再位置決めするかを決定するステップをさらに備える、請求項33から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
ヤコビ行列の疑似逆元を利用して前記ロボットシステムの前記質量中心の所望される速度ベクトルを前記バランス部材の目標部材速度ベクトルの集合に写像することによって、前記バランス部材をどのように再位置決めするかを計算するステップをさらに備える、請求項33から36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記バランス部材の部分集合の再位置決めを非アクティブにするステップをさらに備える、請求項33から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
静的に不安定なロボットシステムのバランスを取る方法であって、前記方法は、
1つ以上のバランス部材を有する静的に不安定なロボットシステムを提供するステップと、
前記ロボットシステムに作用する1つ以上の外力を決定するステップと、
前記ロボットシステムのバランスを取るための目標トルクを計算するステップと、
前記ロボットシステムをおおよそ一定の速度に表面にわたって維持しながら、前記バランス部材のうち少なくとも1つを繰返し加速させて、前記目標トルクを前記ロボットシステムに生じさせることによって、前記ロボットシステムのバランスを取るステップとを備える、方法。
【請求項40】
前記基部を前記ロボットシステムの前記中心の下に再位置決めするために前記基部を表面にわたって推進するステップをさらに備える、請求項33から39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記基部の起こり得る動きを予測するためにカルマンフィルタを適用するステップをさらに備える、請求項33から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記基部のピッチの兆候を感知するステップをさらに備える、請求項33から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記基部の前記ピッチの前記兆候を感知する前記ステップは、ジャイロスコープと加速度計とからなる群のうち少なくとも1つを利用するステップを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ロボットシステムに加えられる外力を感知するステップをさらに備える、請求項33から43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記外力と等しくかつ対向する力を加えて前記基部のバランスを保持するために前記バランス部材を調節するステップをさらに備える、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記外力と等しくかつ対向する力を加えて前記基部のバランスを保持するために前記基部を調節するステップをさらに備える、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記基部のおおよそゼロ速度を前記基部を支持する前記表面にわたって維持するステップをさらに備える、請求項33から46のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
静的に不安定な自己バランスロボットシステムであって、
1つ以上のバランス部材と、
前記ロボットシステムがおおよそ一定の速度を表面にわたって維持する間前記ロボットシステムに動的安定性を与えるためのバランスシステムとを備え、前記バランスシステムは、前記バランス部材のうち少なくとも1つを繰返し再位置決めして、前記ロボットシステムの質量中心を目標まで移動させ、前記目標は、前記ロボットシステムのバランスを取るように選択される、自己バランスロボットシステム。
【請求項2】
前記バランスシステムは、再位置決めのための前記バランス部材の部分集合を選択する、請求項1に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項3】
前記バランスシステムは、前記ロボットシステムのバランスを取るための目標トルクを計算する、請求項1または2に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項4】
前記バランスシステムは、前記バランス部材を加速させて、前記目標トルクを前記ロボットシステムに生じさせる、請求項3に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項5】
前記バランスシステムは、フィードバック線形化を利用して、前記バランス部材をどのように再位置決めするかを決定する、請求項1から4のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項6】
前記バランスシステムは、前記バランス部材をどのように位置決めするかをヤコビ行列の疑似逆元を利用して、前記ロボットシステムの前記質量中心の所望される速度ベクトルを前記バランス部材の目標部材速度ベクトルの集合に写像することによって計算する、請求項1から5のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項7】
前記バランスシステムは、前記バランス部材の部分集合の再位置決めを非アクティブにするように構成される、請求項1から6のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項8】
前記バランスシステムは、第1のバランス部材の再位置決めを第2のバランス部材の再位置決めよりも優先するように構成される、請求項1から7のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項9】
前記バランスシステムは、前記質量中心の再位置決めに対する各バランス部材の寄与に対応して前記バランス部材に重みの集合を適用する、請求項1から8のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項10】
前記バランスシステムは、選択バランス部材を予め定められた位置に保持するように構成される、請求項1から9のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項11】
静的に不安定な自己バランスロボットシステムであって、
1つ以上のバランス部材と、
前記ロボットシステムがおおよそ一定の速度を表面にわたって維持する間前記ロボットシステムに動的安定性を与えるためのバランスシステムとを備え、前記バランスシステムは、前記バランス部材のうち少なくとも1つを繰返し加速させて、目標トルクを前記ロボットシステムに生じさせ、前記目標トルクは、前記ロボットシステムのバランスを取るように計算されている、自己バランスロボットシステム。
【請求項12】
前記ロボットシステムを表面の上方で支持するための接地アセンブリをさらに備える、請求項1から11のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項13】
前記接地アセンブリは、1つ以上の車輪を含む、請求項12に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項14】
前記接地アセンブリは、2つ以下の車輪を含む、請求項13に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項15】
基部をさらに備え、前記バランスシステムは、前記接地アセンブリを駆動して、前記基部を前記ロボットシステムの前記質量中心の下に再位置決めする、請求項12から14のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項16】
前記バランスシステムは、カルマンフィルタを適用して、前記ロボットシステムの起こり得る動きを予測する、請求項1から15のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項17】
前記ロボットシステムの一部のピッチの兆候を感知するための感知システムをさらに備える、請求項1から16のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項18】
前記感知システムは、ジャイロスコープと加速度計とからなる群のうち少なくとも1つを含む、請求項17に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項19】
前記感知システムは、前記ロボットシステムに加えられる外力を感知するための力センサをさらに含む、請求項17または18に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項20】
前記バランスシステムは、前記外力と等しくかつ対向する力を生じて、前記ロボットのバランスを保持するようにさらに構成される、請求項19に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項21】
前記表面にわたる前記ロボットシステムの前記速度は、およそゼロの大きさを有する、請求項1から20のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項22】
前記ロボットシステムの前記速度は、制御可能である、請求項1から21のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項23】
前記ロボットシステムの前記速度は、遠隔制御装置によって制御可能である、請求項1から22のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項24】
前記バランス部材は、直列に配列され、アームジョイントによって繋ぎ合わされて、第1の関節アームを形成する、請求項1から23のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項25】
第2の関節アームをさらに備える、請求項24に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項26】
前記バランス部材は、2つ以上のアクチュエータによって制御可能である、請求項1から25のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項27】
前記アクチュエータのうち少なくとも1つは、電動機である、請求項26に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項28】
本体をさらに備え、前記バランス部材のうち少なくとも1つは、前記本体から延在する、請求項1から27のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項29】
前記本体は、
基部と、
前記基部に腰部ジョイントによって取付けられる胴部とを含む、請求項28に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項30】
前記腰部ジョイントは、腰部アクチュエータに結合されている、請求項28または29に記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項31】
前記バランス部材のうち少なくとも1つは、前記胴部から延在する、請求項28から30のいずれかに記載の自己バランスロボットシステム。
【請求項32】
一定速度を有する静的に不安定なロボットシステムであって、前記ロボットシステムは、
1つ以上のバランス部材と、
前記ロボットシステムの質量中心が安定である第1の状態と、
前記ロボットシステムの前記質量中心が不安定である第2の状態とを備え、前記質量中心を目標に移動させることによって前記質量中心に安定性が回復される、ロボットシステム。
【請求項33】
静的に不安定なロボットシステムのバランスを取る方法であって、前記方法は、
1つ以上のバランス部材を有する静的に不安定なロボットシステムを提供するステップと、
前記ロボットシステムの質量中心を計算するステップと、
目標を決定するステップとを備え、前記ロボットシステムは、前記質量中心が前記目標に位置決めされるとバランスが取れ、
前記ロボットシステムをおおよそ一定速度に表面にわたって維持しながら、前記バランス部材のうち少なくとも1つを繰返し位置決めして、前記ロボットシステムの前記質量中心を前記目標に再配置することによって、前記ロボットシステムのバランスを取るステップをさらに備える、方法。
【請求項34】
基部に適用されると前記基部のバランスを取る目標トルクを計算するステップをさらに備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記バランス部材を加速させて、前記目標トルクを前記基部に生じさせるステップをさらに備える、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
フィードバック線形化を利用して前記バランス部材をどのように再位置決めするかを決定するステップをさらに備える、請求項33から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
ヤコビ行列の疑似逆元を利用して前記ロボットシステムの前記質量中心の所望される速度ベクトルを前記バランス部材の目標部材速度ベクトルの集合に写像することによって、前記バランス部材をどのように再位置決めするかを計算するステップをさらに備える、請求項33から36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記バランス部材の部分集合の再位置決めを非アクティブにするステップをさらに備える、請求項33から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
静的に不安定なロボットシステムのバランスを取る方法であって、前記方法は、
1つ以上のバランス部材を有する静的に不安定なロボットシステムを提供するステップと、
前記ロボットシステムに作用する1つ以上の外力を決定するステップと、
前記ロボットシステムのバランスを取るための目標トルクを計算するステップと、
前記ロボットシステムをおおよそ一定の速度に表面にわたって維持しながら、前記バランス部材のうち少なくとも1つを繰返し加速させて、前記目標トルクを前記ロボットシステムに生じさせることによって、前記ロボットシステムのバランスを取るステップとを備える、方法。
【請求項40】
前記基部を前記ロボットシステムの前記中心の下に再位置決めするために前記基部を表面にわたって推進するステップをさらに備える、請求項33から39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記基部の起こり得る動きを予測するためにカルマンフィルタを適用するステップをさらに備える、請求項33から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記基部のピッチの兆候を感知するステップをさらに備える、請求項33から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記基部の前記ピッチの前記兆候を感知する前記ステップは、ジャイロスコープと加速度計とからなる群のうち少なくとも1つを利用するステップを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ロボットシステムに加えられる外力を感知するステップをさらに備える、請求項33から43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記外力と等しくかつ対向する力を加えて前記基部のバランスを保持するために前記バランス部材を調節するステップをさらに備える、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記外力と等しくかつ対向する力を加えて前記基部のバランスを保持するために前記基部を調節するステップをさらに備える、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記基部のおおよそゼロ速度を前記基部を支持する前記表面にわたって維持するステップをさらに備える、請求項33から46のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2011−523903(P2011−523903A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510711(P2011−510711)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/044902
【国際公開番号】WO2009/143377
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(500020357)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (39)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/044902
【国際公開番号】WO2009/143377
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(500020357)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (39)
【Fターム(参考)】
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