説明

力覚付与型多方向入力装置

【課題】電気配線を複雑化せずにスライド操作と押下操作とを行えると共に、非操作時に懸念される操作ノブやスライダのガタつきを防止した力覚付与型多方向入力装置の提供。
【解決手段】力覚付与型多方向入力装置50は、支持ベース11にスライド移動可能に支持されたスライダ3と、スライダ3に一体化された操作ノブ2とを備えており、スライド操作時にはスライダ3と力覚付与ユニット5の駆動体14〜16とが連動するため、スライド位置に基づく力覚が操作ノブ2に付与可能である。また、スライダ3はコイルばね24によって支持ベース11の収納空間11aの内底面へ向けて弾性付勢されており、押下操作時には操作ノブ2がコイルばね13の付勢力に抗して支持ベース11を押し下げるため、支持ベース11に一体化された縦動部材12がガイド部(凸状レール7dと凹溝12c)に沿って下動し、基台1(回路基板19)に設置されたプッシュスイッチ6が縦動部材12で押圧駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動操作される操作ノブに電気制御された力覚を付与する力覚付与型多方向入力装置に係り、特に、横方向へのスライド操作に加えて押下操作(プッシュ操作)が行える力覚付与型多方向入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エアコンやオーディオあるいはナビゲーション等の車載用制御機器の操作ノブを手動操作して機能調整等を行う際に、この操作ノブの操作量や操作方向に応じた抵抗力や推力等の外力(力覚)を付与することにより、操作フィーリングを良好にして所望の操作が確実に行えるようにしたフォースフィードバック機能付きの力覚付与型多方向入力装置が種々提案されている。一例として、レバー部やギヤ部を有する駆動部材と、レバー部に冠着されて駆動部材を傾倒させる揺動操作可能な操作ノブと、駆動軸が駆動部材のギヤ部と連動して回転する回転モータと、駆動部材の傾倒を検出可能な検出手段とを備え、検出手段の出力信号に基づいて回転モータの駆動軸を駆動制御することによって、この回転モータが駆動部材を介して操作ノブに力覚を付与するように構成された揺動操作方式の力覚付与型多方向入力装置が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、揺動操作だけでなく押下操作(プッシュ操作)も可能な力覚付与型多方向入力装置が開示されている。このものは、操作ノブと駆動部材のレバー部との間にプッシュスイッチが組み込まれており、ユーザが操作ノブを押し込んで下動させると、その下動によってプッシュスイッチがオン動作するようになっている。したがって、例えば操作ノブを揺動操作してメニュー選択を行った後、連続的に操作ノブの押下操作を行って選択内容を決定する等の使い方が可能となり、力覚付与型多方向入力装置の実用的価値を高めることができるようになっている。
【0004】
このほか、特許文献2には、操作ノブをスライダのステムに冠着させて一体化し、このスライダを横方向へスライド移動できるように基台のガイド壁にて支持すると共に、スライダのスライド移動によって駆動される駆動部材が伝達ギヤ等を介して回転モータの駆動軸と連動するようになし、この駆動部材の位置変化を検出手段にて検出するようにしたスライド操作方式の力覚付与型多方向入力装置が開示されている。このものは、入力装置が装着される化粧パネルの前面に沿って操作ノブをスライド操作することができるため、化粧パネルからの操作ノブの突出量を大幅に抑えることが可能となり、また、揺動操作方式のものに比べて操作ノブの操作方向や操作量をユーザが把握しやすくなる。それゆえ、この種のスライド操作方式の力覚付与型多方向入力装置に押下操作用のプッシュスイッチを付設すれば、実用的価値が大幅に高まるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−217359号公報
【特許文献2】特開2003−31074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された力覚付与型多方向入力装置ように、揺動可能な操作ノブと駆動部材のレバー部との間にプッシュスイッチが組み込まれていると、このプッシュスイッチの電気配線を操作ノブの揺動に追従できるように引き回さねばならないため、配線構造が複雑になってしまい、過大な操作力が作用した場合などに断線事故が起こりやすくなるという問題があった。また、操作ノブに対する揺動操作と押下操作を連続的に円滑に行うことは必ずしも容易でないため、操作性という点でも改善の余地がある。
【0007】
一方、特許文献2に開示された力覚付与型多方向入力装置では、スライダをスライド移動可能に支持する基台のガイド壁と該スライダとの間にクリアランスが不可欠であり、スライダによって駆動される駆動部材と該スライダとの間にもクリアランスが不可欠であり、これらクリアランスが非操作時にスライダや操作ノブのガタつき要因となりやすいため、車両走行中などに耳障りな異音(ラットルノイズ)を発生する虞がある。また、かかるスライド操作方式の力覚付与型多方向入力装置の場合も、操作ノブとスライダのステムとの間にプッシュスイッチを組み込んで押下操作を行えるようになすと、プッシュスイッチの電気配線がかなり複雑になってしまい断線事故が起こりやすくなる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、電気配線を複雑化せずにスライド操作と押下操作とを行えると共に、非操作時に懸念される操作ノブやスライダのガタつきを防止した力覚付与型多方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、収納空間を有するベース体と、前記収納空間の内底面に沿ってスライド移動可能に支持されたスライダと、このスライダに一体化されて前記ベース体の上側に露出する操作ノブと、前記スライダと係合する駆動力伝達手段を有すると共に、該スライダのスライド位置に基づく平面方向の力覚を前記操作ノブに付与可能な力覚付与ユニットと、この力覚付与ユニッが設置された基台と、前記操作ノブが下側に押下操作(プッシュ操作)されたことを検出するための押動検出手段とを備えた力覚付与型多方向入力装置において、前記ベース体は前記基台に対して上下方向へ移動可能に支持されていると共に、前記押動検出手段は前記基台に設置されており、かつ、前記ベース体を上側に弾性付勢する第1の付勢手段と、前記スライダを前記収納空間の内底面へ向けて弾性付勢する第2の付勢手段とを備え、前記操作ノブが押下操作されたとき、この押下操作に伴う前記スライダの押動によって前記ベース体が前記第1の付勢手段の付勢力に抗して下側へ移動すると共に、このベース体の下動によって前記押動検出手段の検出動作が行われるように構成した。
【0010】
このように構成された力覚付与型多方向入力装置では、スライダがベース体に形成された収納空間の内底面に沿ってスライド移動可能に支持されていると共に、このスライダに一体化された操作ノブに対する押下操作をベース体の下動に基づいて検出する押動検出手段が基台に設置してあるため、この押動検出手段の電気配線を複雑化しなくても、スライド操作と押下操作とを選択的に行うことができる。また、スライダが第2の付勢手段によって収納空間の内底面へ向けて弾性付勢されているため、収納空間の天井面側と内底面側でスライダに所要の摩擦力を生じさせ、非操作時に懸念されるスライダのガタつきを防止することができる。
【0011】
上記の構成において、力覚付与ユニットが平面方向に移動可能な係合ピンを有すると共に、スライダの下面に、この係合ピンが上下方向に摺動可能に挿入された係合溝と、この係合溝を挟んだ位置で下方へ突出する複数の突起部とが形成されており、かつ、ベース体が突起部と摺接する摺接平面を有し、この摺接平面の外側位置でベース体が複数のガイド部を介して基台に上下動可能に案内されていると、操作ノブからスライダに対して斜め方向から押圧操作力が作用した場合でも、スライダの摺接平面上での作用点は係合溝を挟んだ複数の突起部となるため、ベース体は摺接平面の外側に位置するガイド部に沿って傾くことなくスムーズに下動する。これにより、摺接平面に摺接するスライダも傾くことなく下動し、スライダの下動中に係合溝が力覚付与ユニットの係合ピンに引っ掛かることがないため、どのような条件下においてもスムーズな押圧操作を行うことができる。
【0012】
この場合において、基台がベース体の少なくとも一部を内包する四角筒状空間を有しており、ガイド部が、四角筒状空間の内壁面とベース体の外壁面のいずれか一方に設けられた凸状レールと、いずれか他方に設けられて凸状レールに係合する凹溝とからなると、ベース体を挟んで対向するガイド部どうしの幅が最大限に広がるため、基台に対してベース体を安定的に上下動させることができる。
【0013】
また、この場合において、基台が四角筒状空間の内部を上下方向に仕切る仕切壁を有しており、この仕切壁とベース体との間に第1の付勢手段が介設されていると共に、ベース体が仕切壁の下側へ延出する縦動部材を備えており、この縦動部材の外壁面にガイド部の凸状レールまたは凹溝が設けられていると、非操作時にベース体を上方位置に安定的に保持できると共に、押下操作時に縦動部材のガイド部を介してベース体を安定的に下動させることができる。
【0014】
また、上記の構成において、押動検出手段がプッシュスイッチであると、構造を簡素化できて信頼性も確保しやすいため好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の力覚付与型多方向入力装置は、操作ノブを有するスライダがベース体に形成された収納空間の内底面に沿ってスライド移動可能に支持されていると共に、操作ノブに対する押下操作(プッシュ操作)をベース体の下動に基づいて検出する押動検出手段が基台に設置してあるため、この押動検出手段の電気配線を複雑化しなくても、スライド操作と押下操作とを選択的に行える実用的価値の高い製品が実現できる。また、スライダが第2の付勢手段によって収納空間の内底面へ向けて弾性付勢されているため、収納空間の天井面側と内底面側でスライダに所要の摩擦力を生じさせることができ、それゆえ、非操作時にスライダや操作ノブがガタつかなくなってラットルノイズを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態例に係る力覚付与型多方向入力装置の外観斜視図である。
【図2】図1の入力装置から操作ノブと目隠し板を取り除いて示す平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図6】図2のD−D線に沿う断面図である。
【図7】図1に示す入力装置の横断面図である。
【図8】図1に示す入力装置の分解斜視図である。
【図9】図1に示す入力装置に備えられるスライダを裏面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態例を図面を参照しつつ説明すると、本実施形態例に係る力覚付与型多方向入力装置50は図1に示すような外観を呈しており、図8の分解斜視図に示すような各部材によって構成されている。
【0018】
すなわち、この力覚付与型多方向入力装置50は、基台1と、操作ノブ2と、スライダ3と、ベース体4と、力覚付与ユニット5と、プッシュスイッチ6とによって主に構成されており、操作ノブ2はベース体4に沿って任意方向へスライド操作可能であると共に、スライド方向と直交方向へ押下操作(プッシュ操作)可能となっている。
【0019】
まず、概略構成について説明すると、基台1は、装置の外殻をなす中空構造の筐体7と、筐体7の下部開放端を蓋閉する底板8と、筐体7の上面から突出する立壁7aに固定された第1の支持板9および第2の支持板10とからなる構造体であり、第1および第2の支持板9,10は所定間隔を存して平行に連結されている。操作ノブ2はスライダ3のステム3aに冠着されており、この操作ノブ2はベース体4の上方に露出している。ベース体4は、スライダ3をスライド移動可能に支持する支持ベース11と、支持ベース11に一体化されて下方へ延出する縦動部材12とからなり、第1の付勢手段である一対のコイルばね13によってベース体4は上側へ弾性付勢されている。力覚付与ユニット5は、スライダ3に係合する第1乃至第3の駆動体14,15,16と、一対の回転モータ17,18と、操作ノブ2に対するスライド操作を検出するための図示せぬスライド検出手段とを備えている。プッシュスイッチ6は、操作ノブ2に対する押下操作を検出するための押動検出手段であり、操作ノブ2の押下操作時に縦動部材12の下動によって駆動されるようになっている。
【0020】
この力覚付与型多方向入力装置50の各部の構成について詳しく説明すると、基台1の筐体7は立壁7aの内方に四角筒状空間を有しており、この四角筒状空間は立壁7aの内壁に形成された仕切壁7bによって上下に仕切られている。仕切壁7bには一対のボス7cが立設されており、これらボス7cに前述したコイルばね13の下端部が挿入されている。また、立壁7aの4辺の内壁中央部には凸状レール7dがそれぞれ形成されており、これら凸状レール7dは仕切壁7bを貫通して上下方向に延びている。
【0021】
基台1の第1の支持板9は矩形状の外形をなしており、その外縁部に複数の逃げ孔9aが形成されていると共に、3つのスリット9b,9c,9dが形成されている。後述するように、第1乃至第3の駆動体14,15,16にはそれぞれ係合ピン14b,15b,16bが設けられており、これら係合ピン14b,15b,16bは対応するスリット9b,9c,9dに個別に遊挿されている。この第1の支持板9は立壁7aの上端面に載置されており、基台1の第2の支持板10は第1の支持板9の下方位置で仕切壁7b上に載置されている。この第2の支持板10は板金を折り曲げ加工したものであり、その四隅に上方へ向かって逆L字状に折れ曲がる取付片10aが形成されると共に、各取付片10aの間に上方へ向かって突出する規制片10bが形成されている。また、第2の支持板10には、仕切壁7bに立設されたボス7cが挿通される切り欠きや、回転モータ17,18の駆動軸17a,18aが挿通される逃げ孔等が形成されている。そして、第2の支持板10の各規制片10bの先端を第1の支持板9に係止させた状態で、第1の支持板9の四隅と各取付片10aを立壁7aの四隅内壁にねじ止めすることにより、第1の支持板9と第2の支持板10との間に第1乃至第3の駆動体14,15,16を配置するためのスペースが確保されるようになっている。
【0022】
基台1の底板8には回路基板19がねじ止めされており、この回路基板19上にプッシュスイッチ6と外部接続用のコネクタ20が設置されている。また、回路基板19には回転モータ17,18の下端部を位置決めする円弧状孔19aが形成されており、回転モータ17,18の上端は仕切壁7bにねじ止めされている。すなわち、力覚付与ユニット5の回転モータ17,18は基台1に設置されている。
【0023】
ベース体4の支持ベース11は、外縁部に起立壁21aが立設された矩形状の下部ベース21と、起立壁21aの上方空間を覆う矩形状の上部ベース22とからなり、これら下部ベース21と上部ベース22はスナップ結合により一体化されている。下部ベース21の起立壁21aで囲まれた内底面は摺接平面21fとなっており、この摺接平面21fと部ベース22の下面は所定間隔の収納空間11aを介して平行に対向している。下部ベース21の摺接平面21fには第1の支持板9のスリット9b,9c,9dと同一形状のスリット21b,21c,21dが形成されており、第1乃至第3の駆動体14,15,16の係合ピン14b,15b,16bがスリット9b,9c,9dとスリット21b,21c,21dを個別に挿通して摺接平面21fの上方へ突出している。また、下部ベース21の下面には一対のばね受筒部21eが垂設されており、コイルばね13の両端部をばね受筒部21eとボス7cに挿入して位置決めした状態で、該コイルばね13を下部ベース21と仕切壁7bの間に介設することにより、下部ベース21は第1の付勢手段であるコイルばね13の弾発力によって上側へ付勢されている(図6参照)。一方、上部ベース22の中央部には矩形状の開口22aが開設されており、この開口22aは収納空間11aに連通している。
【0024】
ベース体4の縦動部材12は矩形状の外形をなしており、その上面に複数本のスナップ片12aが突出形成されている。この縦動部材12の4つの外壁面の中央部には延出片12bが形成されており、各延出片12bには上下方向に延びる凹溝12cが形成されている。縦動部材12は筐体7の下部開口から仕切壁7bの下方の四角筒状空間に組み込まれ、仕切壁7bから上方へ突出する各スナップ片12aの先端を下部ベース21の下面に係止することにより、下部ベース21(支持ベース11)と縦動部材12が一体化されてベース体4を構成している。その際、縦動部材12の各凹溝12cを筐体7の対応する凸状レール7dに摺動自在に凹凸嵌合することにより、ベース体4(支持ベース11と縦動部材12)は基台1の筐体7に対して上下方向へスライド可能に支持されている(図7参照)。なお、一対の凸状レール7dと凹溝12cによって1つのガイド部が構成されており、縦動部材12を支持ベース11の下部ベース21に一体化することによって、摺接平面21fよりも外側位置に4つのガイド部が90度の間隔を置いて形成されることになる。そして、前述したように、下部ベース21と仕切壁7bとの間に介設されたコイルばね13によって支持ベース11が上側へ弾性付勢されており、その付勢力によって縦動部材12の上面が仕切壁7bの下面に圧接されているため、ベース体4(支持ベース11と縦動部材12)は仕切壁7bによって上方への移動が規制されている。つまり、操作ノブ2が押下操作されていないときには、支持ベース11と縦動部材12を含むベース体4はコイルばね13の付勢力によって上昇位置に安定的に保持されており、この上昇位置でスライダ3は支持ベース11にスライド移動可能に支持されている。また、操作ノブ2が押下操作された場合は、この押下操作に伴うスライダ3の押動によって支持ベース11がコイルばね13の付勢力に抗して下降するため、支持ベース11に一体化された縦動部材12はガイド部(凸状レール7dと凹溝12c)に沿って筐体7の立壁7a内をスムーズに下降することができる。
【0025】
スライダ3は支持ベース11の収納空間11a内に収納されており、このスライダ3の天面中央部にステム3aが立設されている。スライダ3の天面にはステム3aを挟んだ2箇所に凹部3bが形成されており、これら凹部3b内にそれぞれ第2の付勢手段であるコイルばね24と駆動ピン25が組み込まれている(図5参照)。これにより、駆動ピン25の先端がコイルばね24の弾発力を受けて収納空間11aの天井面である上部ベース22の下面に圧接され、その反力によってスライダ3が収納空間11aの内底面である摺接平面21fに向けて弾性付勢されている。図9に示すように、スライダ3の裏面には3つの係合溝3c,3d,3eが形成されており、そのうち係合溝3eはステム3aの真下に位置し、残りの係合溝3cと係合溝3dは係合溝3eの両端部から逆方向に向かって互いに平行に延びている。そして、係合溝3cには第1の駆動体14の係合ピン14bが摺動自在に挿入され、係合溝3dには第2の駆動体15の係合ピン15bが摺動自在に挿入され、係合溝3eには第3の駆動体16の係合ピン16bが摺動自在に挿入される。さらに、スライダ3の裏面には複数の突起部3fが形成されており、これら突起部3fが第2の付勢手段であるコイルばね24の弾性付勢力を受けて摺接平面21fに圧接している。その際、少なくとも2つの突起部3fが必ず1つの係合溝3c,3d,3eを挟むような位置関係で、各突起部3fはスライダ3の裏面外縁部に点在している。すなわち、2つの突起部3fが係合溝3dを挟んだ位置に形成され、別の2つの突起部3fが係合溝3eを挟んだ位置に形成され、これら4つの突起部3fを含む計6つの突起部3fが係合溝3eを挟んだ位置に形成されている。
【0026】
操作ノブ2は上部ベース22の開口22aを覆う位置に配置されており、これら操作ノブ2と上部ベース22との間には矩形状の外形を有する目隠し板23が介設されている。スライダ3のステム3aは上部ベース22の開口22aを貫通して目隠し板23の係止孔23aに挿通されており、このステム3aの先端に操作ノブ2の裏面を圧入などで固着させることにより、操作ノブ2とスライダ3とは一体化されている。そして、目隠し板23の大きさが開口22aに比して十分に大きく設定されているため、操作ノブ2がどの方向へスライド操作されても、開口7aは目隠し板23から露出しないようになっている。なお、操作ノブ2の天面側には一対の凹部2aが形成されており、これら凹部2aにユーザが手指を置くことで操作を容易にしている。
【0027】
力覚付与ユニット5について説明すると、第1および第2の駆動体14,15はスライダ3と回転モータ17との間に介在する駆動力伝達手段であり、第3の駆動体16はスライダ3と回転モータ18との間に介在する駆動力伝達手段である。前述したように、これら第1乃至第3の駆動体14,15,16は第1の支持板9と第2の支持板10との間に画成されたスペース内に配置されている。第1の駆動体14には支軸14aと係合ピン14bとギヤ部14cとが設けられており、支軸14aは、第1の支持板9側に配置された上部軸受26と、第2の支持板10側に配置された下部軸受27とによって軸支されている。第1の駆動体14の係合ピン14bは、第1の支持板9のスリット9bと下部ベース21のスリット21bを貫通してスライダ3の係合溝3cに摺動自在に挿入されており、操作ノブ2のスライド操作時にスライダ3が係合溝3cの内壁を介して係合ピン14bを駆動する向きにスライド移動すると、係合ピン14bがスリット9b,21b内を平面方向に移動しながら第1の駆動体14が回転するようになっている。また、ギヤ部14cは回転モータ17の駆動軸17aと噛合しているため、第1の駆動体14がスライダ3によって回転駆動されると、第1の駆動体14に連動して駆動軸17aが回転し、それとは逆に、回転モータ17が駆動軸17aを回転駆動すると、第1の駆動体14が連動してスライダ3に外力を付与できるようになっている。
【0028】
第2の駆動体15には支軸15aと係合ピン15bとギヤ部15cとが設けられており、ギヤ部15cは第1の駆動体14のギヤ部14cと噛合している。支軸15aは、第1の支持板9側に配置された上部軸受26と、第2の支持板10側に配置された下部軸受27とによって軸支されており、支軸15aを中心とする係合ピン15bの回転半径は第1の駆動体14の係合ピン14bの回転半径と同等である。第2の駆動体15の係合ピン15bは、第1の支持板9のスリット9cと下部ベース21のスリット21cを貫通してスライダ3の係合溝3dに摺動自在に挿入されており、操作ノブ2のスライド操作時にスライダ3が係合溝3dの内壁を介して係合ピン15bを駆動する向きにスライド移動すると、係合ピン15bがスリット9c,21c内を平面方向に移動しながら第2の駆動体15が回転するようになっている。ただし、この第2の駆動体15は常に第1の駆動体14と同期して回転し、回転モータ17の駆動力は第1の駆動体14を介して第2の駆動体15に伝達される。
【0029】
第3の駆動体16には支軸16aと係合ピン16bとギヤ部16cとが設けられており、支軸16aは、第1の支持板9側に配置された上部軸受26と、第2の支持板10側に配置された下部軸受27とによって軸支されている。係合ピン16bは、第1の支持板9のスリット9dと下部ベース21のスリット21dを貫通してスライダ3の係合溝3eに摺動自在に挿入されており、操作ノブ2のスライド操作時にスライダ3が係合溝3eの内壁を介して係合ピン16bを駆動する向きにスライド移動すると、係合ピン16bがスリット9d,21d内を平面方向に移動しながら第3の駆動体16が回転するようになっている。また、図3と図5に示すように、第3の駆動体16のギヤ部16cは回転モータ18の駆動軸18aと噛合しているため、第3の駆動体16がスライダ3によって回転駆動されると、第3の駆動体16に連動して駆動軸18aが回転し、それとは逆に、回転モータ18が駆動軸18aを回転駆動すると、第3の駆動体16が連動してスライダ3に外力を付与できるようになっている。
【0030】
なお、力覚付与ユニット5の図示せぬスライド検出手段は、例えば駆動軸17a,18aの回転方向と回転角度を個別に検出するロータリエンコーダなどからなり、このスライド検出手段は押動検出手段であるプッシュスイッチ6と共にコネクタ20を介して外部の図示せぬ制御部に接続されている。
【0031】
次に、このように構成された力覚付与型多方向入力装置50の動作について説明する。
【0032】
力覚付与型多方向入力装置50のシステムを起動(電源オン)させると、前述した制御部(図示せず)が回転モータ17や回転モータ18を制御してスライダ3を中立位置に自動復帰させるため、スライダ3および操作ノブ2は図1や図2に示す原点位置に配置される。この状態でユーザが操作ノブ2を任意方向へスライド操作すると、操作ノブ2と一体的にスライド移動するスライダ3の各突起部3fが下部ベース21の摺接平面21f上を摺動し、それに伴ってスライダ3が係合ピン14b,15bや係合ピン16bを駆動して第1および第2の駆動体14,15や第3の駆動体16を回転させるため、回転モータ17の駆動軸17aや回転モータ18の駆動軸18aが連動して回転する。その結果、力覚付与ユニット5の前記スライド検出手段がスライダ3のスライド移動を検出し、その検出信号を前記制御部に出力するため、該制御部が操作ノブ2(スライダ3)のスライド移動方向とスライド移動量を演算して、その演算結果に基づく制御信号を回転モータ17や回転モータ18に出力する。すなわち、操作ノブ2が所定方向へ所定量だけスライド操作されたときに、回転モータ17や回転モータ18が駆動制御され、スライド操作を阻害する抵抗力やスライド操作を助長する推力あるいは振動等の外力が第1乃至第3の駆動体14,15,16を介してスライダ3に付与されるようになっている。したがって、操作ノブ2をスライド操作しているユーザの手指に、抵抗力や推力あるいは振動等の外力(力覚)が適宜選択されてフィードバックされる。
【0033】
また、操作ノブ2をスライド操作した状態で、ユーザが操作ノブ2を所定ストローク押し込むという押下操作を行うと、この押下操作に伴うスライダ3の押動によって支持ベース11(下部ベース21と上部ベース22)がコイルばね13の付勢力に抗して押し下げられるため、支持ベース11に一体化された縦動部材12がガイド部(凸状レール7dと凹溝12c)に沿って下降し、この縦動部材12の下面がプッシュスイッチ6を押圧駆動する。その結果、プッシュスイッチ6から前記制御部に押動検出信号が出力されて、操作ノブ2に対する押下操作が検出されるため、例えば、操作ノブ2に対するスライド操作でメニュー選択等を行った後に、操作ノブ2に対する押下操作で選択内容を決定するという使い方が可能である。
【0034】
なお、かかる操作ノブ2の押下操作時にプッシュスイッチ6がクリック感を生起するため、このクリック感によってユーザは押下操作が確実に行われたことを手指で感得することができる。また、ユーザが操作ノブ2に対する押下操作力を取り除くと、コイルばね20がアクチュエータ19を元の高さ位置まで押し上げると共に、ベース体4(支持ベース11と縦動部材12)がコイルばね13の弾性付勢力によって初期位置に持ち上げられるため、スライダ3および操作ノブ2は押下操作前の状態に自動復帰する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態例に係る力覚付与型多方向入力装置50では、スライダ3がベース体4の支持ベース11に形成された収納空間11aの内底面に沿ってスライド移動可能に支持されていると共に、このスライダ3に一体化された操作ノブ2に対する押下操作を、プッシュスイッチ6がスライダ3の押動に伴うベース体4(支持ベース11と縦動部材12)の下動によって検出するようにし、このプッシュスイッチ6が基台1の底板8に取り付けられた回路基板19上に設置してあるため、プッシュスイッチ6の電気配線を複雑化しなくても、操作ノブ2のスライド操作と押下操作とを選択的に行えるようにして製品の実用的価値を高めることができる。また、この力覚付与型多方向入力装置50では、ベース体4の支持ベース11がコイルばね13(第1の付勢手段)の弾発力によって縦動部材12を基台1の仕切壁7bの下面に圧接することで上昇位置に保持されていると共に、スライダ3がコイルばね24(第2の付勢手段)の弾発力によって支持ベース11の収納空間11aの内底面へ向けて付勢されているため、収納空間11aの天井面側と内底面側でスライダ3に所要の摩擦力を生じさせることができる。それゆえ、非操作時にスライダ3や操作ノブ2がガタつかなくなり、耳障りな異音(ラットルノイズ)を防止できる。また、本実施形態例では、操作ノブ2に対する押下操作を検出する押動検出手段としてプッシュスイッチを使用しているため、スライド操作に加えて押下操作を検出できるようにしてあるにも拘らず構造が簡素で信頼性も高い。ただし、押動検出手段としてプッシュスイッチ以外の適宜手段、例えばフォトインタラプタなどを使用することも可能である。
【0036】
また、本実施形態例に係る力覚付与型多方向入力装置50では、スライダ3のスライド位置に基づく平面方向の力覚を操作ノブ2に付与可能な力覚付与ユニット5が第1乃至第3の駆動体14,15,16を備えており、これら第1乃至第3の駆動体14,15,16が平面方向に移動可能な係合ピン14b,15b,16bを有すると共に、スライダ3の下面に、各係合ピン14b,15b,16bが上下方向に摺動可能に挿入された係合溝3c,3d,3eと、各係合溝3c,3d,3eを挟んだ位置で下方へ突出する複数の突起部3fとが形成されている。そして、支持ベース11に形成された収納空間11aの内底面が各突起部3fに摺接する摺接平面21fとなっており、この摺接平面21fの外側位置に設けられた複数のガイド部(凸状レール7dと凹溝12c)によってベース体4が基台1に対して上下動可能に案内されるようになっているため、操作ノブ2からスライダ3に対して斜め方向から押圧操作力が作用した場合でも、スライダ3の摺接平面21f上での作用点は必ず係合溝3c,3d,3eを挟んだ複数の突起部3fとなり、ベース体4を各ガイド部に沿って真っ直ぐに下動させることができる。これにより、摺接平面21fに摺接するスライダ3も傾くことなく下動し、スライダ3の下動中に係合溝3c,3d,3eが第1乃至第3の駆動体14,15,16の係合ピン14b,15b,16bに引っ掛かることがないため、どのような条件下においてもスムーズな押圧操作を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態例に係る力覚付与型多方向入力装置50では、基台1の筐体7に設けられた立壁7aの内方にベース体4の縦動部材12を包囲する四角筒状空間が画成されていると共に、ベース体4を基台1に対して上下方向へ案内するガイド部が、縦動部材12の4つの外壁面に形成された凹溝12cと、立壁7aの4つの内壁面に形成された凸状レール7dとの凹凸嵌合からなるため、縦動部材12を挟んで対向する2つのガイド部の幅が最大限に広がり、基台1に対してベース体4を安定的に上下動させることができる。しかも、本実施形態例では、筐体7の立壁7aに四角筒状空間の内部を上下方向に仕切る仕切壁7bが形成されており、この仕切壁7bと支持ベース11の下部ベース21との間に第1の付勢手段であるコイルばね13が介設されていると共に、このコイルばね13の弾発力を受けて仕切壁7bの下面に圧接された縦動部材12の外壁面にガイド部(凹溝12c)が形成されているので、非操作時にベース体4を上方位置に安定的に保持できると共に、押下操作時に縦動部材12のガイド部に沿ってベース体4を安定的に下動させることができる。
【0038】
なお、上記の実施形態例では、ベース体4を基台1に対して上下方向へ案内するガイド部として、筐体7の立壁7aの各内壁面に形成した凸状レール7dと、縦動部材12の各外壁面に形成した凹溝12cとを摺動自在に凹凸嵌合させているが、これとは逆に、立壁7aの各内壁面に形成した凹溝と縦動部材12の各外壁面に形成した凸状レールとを凹凸嵌合するようにしてもよく、あるいは、立壁7aの各内壁面に凹溝と凸状レールを形成すると共に、立壁7aの各内壁面にも凹溝と凸状レールを形成し、両者の凹溝と凸状レールを凹凸嵌合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 基台
2 操作ノブ
3 スライダ
3a ステム
3b 凹部
3c,3d,3e 係合溝
3f 突起部
4 ベース体
5 力覚付与ユニット
6 プッシュスイッチ(押動検出手段)
7 筐体
7a 立壁
7b 仕切壁
7c ボス
7d 凸状レール(ガイド部)
8 底板
9 第1の支持板
9b,9c,9d スリット
10 第2の支持板
11 支持ベース
11a 収納空間
12 縦動部材
12a スナップ片
12b 延出片
12c 凹溝(ガイド部)
13 コイルばね(第1の付勢手段)
14,15,16 駆動体(駆動力伝達手段)
14b,15b,16b 係合ピン
17,18 回転モータ
17a,18a 駆動軸
19 回路基板
21 下部ベース
21a 起立壁
21b,21c,21d スリット
21e ばね受筒部
21f 摺接平面
22 上部ベース
22a 開口
23 目隠し板
24 コイルばね(第2の付勢手段)
25 駆動ピン
50 力覚付与型多方向入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納空間を有するベース体と、前記収納空間の内底面に沿ってスライド移動可能に支持されたスライダと、このスライダに一体化されて前記ベース体の上側に露出する操作ノブと、前記スライダと係合する駆動力伝達手段を有すると共に、該スライダのスライド位置に基づく平面方向の力覚を前記操作ノブに付与可能な力覚付与ユニットと、この力覚付与ユニッが設置された基台と、前記操作ノブが下側に押下操作されたことを検出するための押動検出手段とを備えた力覚付与型多方向入力装置であって、
前記ベース体は前記基台に対して上下方向へ移動可能に支持されていると共に、前記押動検出手段は前記基台に設置されており、かつ、前記ベース体を上側に弾性付勢する第1の付勢手段と、前記スライダを前記収納空間の内底面へ向けて弾性付勢する第2の付勢手段とを備え、
前記操作ノブが押下操作されたとき、この押下操作に伴う前記スライダの押動によって前記ベース体が前記第1の付勢手段の付勢力に抗して下側へ移動すると共に、このベース体の下動によって前記押動検出手段の検出動作が行われるように構成したことを特徴とする力覚付与型多方向入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記力覚付与ユニットが平面方向に移動可能な係合ピンを有すると共に、前記スライダの下面に、前記係合ピンが上下方向に摺動可能に挿入された係合溝と、この係合溝を挟んだ位置で下方へ突出する複数の突起部とが形成されており、かつ、前記ベース体が前記突起部と摺接する摺接平面を有し、この摺接平面の外側位置で前記ベース体が複数のガイド部を介して前記基台に上下動可能に案内されていることを特徴とする力覚付与型多方向入力装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記基台が前記ベース体の少なくとも一部を内包する四角筒状空間を有しており、前記ガイド部が、前記四角筒状空間の内壁面と前記ベース体の外壁面のいずれか一方に設けられた凸状レールと、いずれか他方に設けられて前記凸状レールに係合する凹溝とからなることを特徴とする力覚付与型多方向入力装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記基台が前記四角筒状空間の内部を上下方向に仕切る仕切壁を有しており、この仕切壁と前記ベース体との間に前記第1の付勢手段が介設されていると共に、前記ベース体が前記仕切壁の下側へ延出する縦動部材を備えており、この縦動部材の外壁面に前記凸状レールまたは前記凹溝が設けられていることを特徴とする力覚付与型多方向入力装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記押動検出手段がプッシュスイッチであることを特徴とする力覚付与型多方向入力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−79620(P2012−79620A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225631(P2010−225631)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】