説明

加圧式定量噴霧吸入器用の薬学的溶液製剤

本発明は、重篤な気管支肺疾患を予防または治療するための薬剤の製造を目的とした、治療用量の2種以上の活性薬物成分を肺に供給できる加圧式定量噴霧吸入器用の溶液製剤の使用に関し、ここですべての活性薬物成分は製剤中に完全に溶解され、2種以上の活性薬物成分は、実質的に同じ粒度分布で送達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、重篤な気管支肺疾患を予防または治療するための薬剤の製造を目的とした、治療用量の2種以上の活性薬物成分を肺に供給できる加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)用の溶液製剤の使用であって、前記吸入器の作動時に放出される液体粒子の実質的にすべてが、前記薬剤における2種以上の前記活性薬物成分の前記所定比と実質的に同じ比で2種以上の活性薬物成分を含有し、しかも2種以上の該活性薬物成分は実質的に同じ粒度分布で送達される使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
喘息およびCOPDのような気管支肺疾患の吸入エアロゾル薬を用いる治療は、肺への直接的なターゲッティングのため、発現の迅速化および副作用の低下を含む全身的治療にまさる利点を提供する。
【0003】
加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)は、吸入により気道に医薬品を投与するための周知のデバイスである。MDIは、医薬品を含む液滴を気道にエアロゾルとして噴霧するために噴射剤を使用する。MDIを介するエアロゾル投与のための製剤は、溶液または懸濁液でありうる。溶液製剤は、噴射剤媒体または適した共溶媒(例えば、エタノール)とのその混合物中に完全に溶解された活性成分および賦形剤を有して均一であるという利点を提供する。溶液製剤はまた、懸濁製剤に関連した物理的安定性の問題も取り除くので、より一貫した一定の投薬を保証する。
【0004】
気管支肺疾患を治療するために吸入により送達される一般的な薬物として、ヒドロフルオロアルカン噴射剤(HFA)中の短時間作用型および長時間作用型β2アゴニスト、抗コリン薬/抗ムスカリン薬およびコルチコステロイドが挙げられる。
【0005】
特に、長時間作用型β2アゴニスト(LABA)(例えば、ホルモテロールおよびサルメテロール)ならびに抗ムスカリン薬(例えば、選択的ムスカリン受容体3Mアンタゴニスト)は、吸入コルチコステロイド(ICS)との組合せでこれら疾患を予防および/または治療するために提案されている。
【0006】
しかしながら、現代の維持療法にもかかわらず、特に気管支肺疾患が重篤な様態にある場合、一部の患者は依然として治療を受けている。
【0007】
したがって、重篤な様態の気管支肺疾患、特に重篤な様態の喘息およびCOPDを予防または治療するためのより有効な薬剤についての依然として満たされていない要求がある。以下に詳細に例示されるように、より有効な薬剤は、2種以上の薬物成分の加圧溶液製剤を提供することにより得られ、吸入器の作動により、薬剤中の活性薬物成分の所定比と実質的に同じ比で活性薬物成分を送達し、この活性薬物成分は実質的に同じ粒度分布で送達される。
【0008】
このような方法で、肺内において組合せ活性薬物成分の共沈着(co-deposition)が得られ、個別に投与される薬物の応答の合計を超える肺機能の臨床応答を生じる。
【0009】
(発明の概要)
本発明の1つの目的は、重篤な気管支肺疾患を予防および/または治療するための薬剤の製造を目的とした、HFA噴射剤および共溶媒としてのエタノール中に溶解した所定比の2種以上の活性薬物成分を含有する、定量噴霧吸入器用の加圧溶液製剤の使用であって、前記吸入器の作動時に放出される液体粒子の実質的にすべてが、前記薬剤における2種以上の前記活性薬物成分の前記所定比と実質的に同じ比で2種以上の活性薬物成分を含有し、前記吸入器の作動時に放出される液体粒子の実質的にすべてが、前記薬剤における2種以上の前記活性薬物成分の前記所定比と実質的に同じ比で2種以上の活性薬物成分を含有し、しかも2種以上の該活性薬物成分は実質的に同じ粒度分布で送達される使用を提供することである。
【0010】
本発明はまた、重篤な気管支肺疾患を予防または治療する方法を対象としており、この方法は、HFA噴射剤および共溶媒としてのエタノール中に溶解した所定比の2種以上の活性薬物成分を含有する、加圧式単回定量噴霧吸入器の作動により前記患者の肺領域の気管に2種以上の活性薬物成分の組合せを投与することを含み、前記吸入器の作動時に放出される液体粒子の実質的にすべてが、前記薬剤における2種以上の前記活性薬物成分の前記所定比と実質的に同じ比で2種以上の活性薬物成分を含有し、しかも2種以上の該活性薬物成分は実質的に同じ粒度分布で送達される。
【0011】
本発明はさらにHFA噴射剤および共溶媒としての20%w/w未満のエタノール中に溶解した所定比の2種以上の活性薬物成分を含有する、定量噴霧吸入器用の加圧溶液製剤の使用を対象とし、前記吸入器の作動時に放出される液体粒子の実質的にすべてが、前記薬剤における2種以上の前記活性薬物成分の前記所定比と実質的に同じ比で2種以上の活性薬物成分を含有し、しかも2種以上の該活性薬物成分は、実質的に同じ粒度で送達される使用であって、患者の肺気管内における前記薬物の共沈着を改善し、したがって相乗的相互作用を改善することを目的とした使用を対象とする。
【0012】
好ましくは、この活性薬物成分は気管支拡張および/または抗炎症化合物、より好ましくは長時間作用型β2アゴニストおよび吸入コルチコステロイドを含む。
【0013】
(定義)
本明細書中で使用される場合、「前記吸入器の作動時に放出される液体粒子の実質的にすべてが、前記薬剤における2種以上の前記活性薬物成分の前記所定比と実質的に同じ比で2種以上の活性薬物成分を含有し」という表現は、アンダーセンカスケードインパクター(ACI)の各ステージに沿って測定された薬物量の割合の相対標準偏差(RSD)が、活性成分の少なくとも一つが4と16μgの間を含む用量で送達される場合5.0%未満、好ましくは3.5%、より好ましくは2.0%未満であり、活性成分の少なくとも一つが0.5μgを超えるが4μg未満の用量で送達される場合、15%未満、好ましくは12%未満であることを意味する。
【0014】
相対標準偏差(RSD)は、式:(SD/平均値)*100で計算される。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「2種以上の活性薬物成分が実質的に同じ粒度で送達される」という表現は、アンダーセンカスケードインパクター(ACI)の各ステージに沿って測定された薬物の粒度分布が統計学的に有意な差(p<0.05)ではないことを意味する。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「用量」は吸入器の1回の作動により送達される活性成分の量を意味する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「%w/w」という表現は組成物の総重量に対する成分の重量比率(%)を意味する。
【0018】
喘息管理に関する国際指針(GINA)によると、重篤な持続型の喘息は、日中の症状、頻発する増悪、頻発する夜間喘息症状、身体活動の制限、予測値の60%以下で変動率が30%を超える1秒間努力呼気容量(FEV1)により特徴付けられる様態と定義される。
【0019】
慢性閉塞性肺疾患に対するグローバルイニシアチブ(GOLD)ガイドラインによると、重篤なCOPDは、FEV1と努力性肺活量(FVC)の間の比率が0.7未満であり、予測値の30%と50%の間のFEV1により特徴付けられる様態である。非常に重篤な様態は、さらに慢性呼吸不全により特徴付けられる。
【0020】
pMDI製剤の粒度分布(PSD)データは、ヨーロッパ薬局方第5版2007年、2.9.18、3109頁に従って、特に実施例1に詳細に記載される手順に従い、アンダーセンカスケードインパクター(ACI)を使用して得られた。
【0021】
共沈着のレベルは、種々の肺領域(すなわち中枢から末梢の気道)に沿う活性成分の堆積を評価することが可能なシンチグラフ検査によりモニターされうる。
【0022】
加圧式定量噴霧吸入器の作動による、噴射剤混合物の蒸発において2種の活性成分の平均粒度が1.1マイクロメータ以下であることを特徴とする製剤はまた、超微粒子として明細書により言及される。
【0023】
(図面の簡単な説明)
図1は、実施例1で測定されたサンプルについて篩いを通過したBDPおよびFF累積質量堆積(%)を示す図である。
【0024】
図2は、実施例2で測定されたACIステージごとのLABAおよびICSの堆積の(計量用量の)比率(%)(バーは平均値±SD;(n=6))を示す図である。
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明の薬剤は、2種以上の薬物成分の溶液製剤を提供することにより得られ、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)を用いて使用され、吸入器の作動により薬剤中のこの活性薬物成分の所定比と実質的に同じ比で活性薬物成分を送達し、この活性薬物成分は、ステージに実質的に同じ粒度分布で送達される。実際にこれは組合せ活性薬物成分の肺内における共沈着の達成を可能にし、個別に投与される薬物の応答の合計を超える肺機能の臨床応答を生じる。同じ肺領域における共沈着は確かに患者の肺機能における大きな改善を伴う相乗効果を最大にする。
【0026】
本発明のpMDIsを用いて使用される溶液製剤(以下加圧溶液製剤)は、2種以上の活性薬物成分の組合せを含むエアロゾル投与のための溶液製剤をベースとしたエタノール/HFA噴射剤を含み、ここでこの活性薬物成分は完全に製剤中に溶解され、MDIの噴霧過程中に生成される各液体粒子は、製品の溶液製剤の液体特性と一致する薬物濃度を含む。この濃度は、賦形剤の蒸発の後の残留粒子として維持される。
【0027】
さらに異なる活性薬物成分の溶液を含む吸入器の作動時に放出されるエアロゾルクラウドの各液滴は、乾燥し、的確な比で同一の粒度分布を有する活性物質の粒子を生じることが見出された。
【0028】
この特性は、吸入器デバイスの有効期間の間維持される。
【0029】
驚くことに現在、上記の製剤は特に重篤な気管支肺疾患、特に重篤な持続型喘息および重篤なCOPDの予防および/または治療に有用であることが見出されている。
【0030】
この溶液製剤は、1回または2回の作動で治療的1日用量の活性成分を送達するのに適していることが好ましい。
【0031】
有利には、この溶液製剤は活性成分の少なくとも一つを20μg未満の用量で送達するのに適している。特に、ある実施形態において、送達される活性成分の少なくとも一つの用量は、4と16μgの間、好ましくは6または12μg、より好ましくは6μgを含む。他の実施形態において、活性成分の少なくとも一方の用量は0.5μgを超えるが、4μg未満、好ましくは1または2μg、より好ましくは1μg未満であるものとする。
【0032】
本発明のエアロゾル製剤に使用されうる活性成分は、短時間および長時間作用型β2アドレナリン性アゴニスト、好ましくは長時間作用型β2アドレナリン性アゴニスト(例えば、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、カルモテロールおよびそれらの塩)ならびに他の活性成分とこれらとの組合せ、好ましくは吸入コルチコステロイド(ICS)または抗コリン性アトロピン様の誘導体、抗ムスカリン性のM3阻害剤またはホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の群から選択される活性成分とこれらとの組合せである。
【0033】
好ましいICSは、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニドおよびその22Rエピマー、ロフレポニド、シクレソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾンまたはトリアムシノロンおよびそのエステル(例えば、トリアムシノロンアセトニド)である。好ましい実施形態において、ICSはブデソニドまたはそのエピマーである。別の実施形態においてICSはジプロピオン酸ベクロメタゾンである。
【0034】
好ましい抗コリン性アトロピン様の誘導体は、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウムまたは臭化グリコピロニウムである。
【0035】
好ましい長時間作用型β2アゴニストは、ホルモテロール、カルモテロールならびにサルメテロールおよびその塩である。
【0036】
より好ましくは、第1の活性成分は以下に記載された式
【0037】
【化1】

【0038】
に属する長時間作用型β2アゴニストであり、ここでRは1−ホルミルアミノ−2−ヒドロキシ−フェン−5−イル(ホルモテロール)もしくは8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル(TA2005)またはそれらの塩、溶媒和物、塩の溶媒和物もしくは立体異性体のうちの1つである。
【0039】
特定の実施形態において、この溶液製剤は6または12μg/用量のフマル酸ホルモテロール、より好ましくは6μg、単独または組合せのいずれかで送達するのに適している。別の実施形態において、この溶液製剤は、有利には、0.5〜4μg/用量、好ましくは0.5〜2μg/用量、より好ましくは1μg/用量のカルモテロール塩酸塩(TA2005)を単独または組合せのいずれかで送達するのに適している。
【0040】
溶液製剤で使用されうるβ2アゴニストと他の活性薬物成分の比は変えることができる。活性薬物成分の選択に依存して、本発明の範囲内で使用されうる重量比は、異なる分子量の種々の物質およびそれらの異なる有効性に基づいて変動する。
【0041】
有利には、本発明に従う加圧溶液は、1:2〜1:3200の範囲にある重量比でβ2アゴニストと他の活性薬物成分を含みうる。
【0042】
他の活性成分がICSである特定の実施形態において、β2アゴニストが4と16μgの間で含まれる用量で送達される場合、この比は1:3と1:100の間、好ましくは1:8と1:40の間の範囲であるものとする。
【0043】
他の実施形態において、β2アゴニストが0.5μgを超えるが4μg未満の用量で送達される場合、この重量比は1:12.5と1:800の間、好ましくは1:25および1:400の間の範囲であるものとする。
【0044】
溶液製剤に存在する他の活性薬物成分がブデソニドである場合、この製剤は50〜400μg/用量、好ましくは100〜200μg/用量、より好ましくは100または200μ/用量のこの薬物成分を送達するのに適している。
【0045】
他の活性薬物成分がジプロピオン酸ベクロメタゾンである場合、この製剤は50〜200μg/用量、好ましくは100または200μg/用量を送達するのに適している。
【0046】
ヒドロフルオロカーボン噴射剤は、好ましくはHFA 134a、HFA 227およびそれらの混合物の群から選択される。
【0047】
有利には、溶液製剤中のエタノールの量は、5%と20%w/wの間、より有利には6%と18%w/wの間で含まれ、好ましくは8%と16%w/wの間で含まれ、より好ましくはエタノールの量は12%または15%である。
【0048】
本発明の溶液製剤はさらに見かけのpHを2.5と5.0の間に調整するために少量の鉱酸を含み、ここで見かけとは欧州特許第1157689号に定義される。
【0049】
好ましくは本発明の溶液製剤は吸入器の作動により送達することができ、活性成分の粒子の平均分画は、1.1ミクロン以下であり、薬物が薬理学的効果を示す小末梢気道領域に到達することを可能とする。これら特性を特徴とする製剤は本明細書中に超微粒子として定義される。
【0050】
本発明の溶液製剤は、内部金属表面の一部またはすべてが陽極処理アルミニウム、ステンレス鋼で作られるかまたは不活性有機コーティングで裏打ちされた加圧噴霧式MDIに含まれうる。好ましいコーティングの例は、エポキシ−フェノール樹脂、ペルフルオロアルコキシアルカン、ペルフルオロアルコキシアルキレン、ペルフルオロアルキレン類(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化−エチレン−プロピレン、ポリエーテルスルホンおよびフッ素化−エチレン−プロピレンおよびポリエーテルスルホンの混合物)である。他の適したコーティングは、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィドまたはそれらの組合せである。
【0051】
特定の実施形態によれば、本発明は、噴射剤としてのHFA 134a中、ジプロピオン酸ベクロメタゾンと組み合わせたフマル酸ホルモテロールの超微粒子溶液からなり、共溶媒として12%w/wエタノールも含む製剤で満たされたアルミニウム容器からなる加圧噴霧式MDIを提供し、この溶液の見かけのpHは適した量の塩酸の添加により3.0と5.0の間に調整した。
【0052】
さらに特定の実施形態による本発明は、噴射剤としてのHFA 134a中、ブデソニドと組み合わせた8−ヒドロキシ−5−[(1R)−1−ヒドロキシ−2−[[(1R)−2−(4−メトキシ−フェニル)−1−メチルエチル]アミノ]エチル]−2(1H)−キノリノン塩酸塩(TA2005)の超微粒子溶液からなり、共溶媒として15%w/wエタノールも含む製剤で満たされたコーティングされた容器からなる加圧噴霧式MDIを提供し、この溶液の見かけのpHは適した量のリン酸の添加により3.0と5.0の間に調整される。
【0053】
有利には、本発明のすべての加圧溶液製剤は、デバイス中(例えばエアロゾル吸入器)に以下の工程を含む方法により充填される:
(a)1つまたは複数の共溶媒中の1つまたは複数の活性成分の溶液を調製する工程;
(b)デバイスをこの溶液で満たす工程;
(c)場合によって所定の量の強力な鉱酸を添加する工程;
(d)ヒドロフルオロアルカン(HFA)を含む噴射剤を添加する工程;および
(e)バルブをクリンピングし、ガス処理する工程。
【0054】
本製剤は、50:1と100:1の間の容量で送達することのできる定量式バルブにより作動される。
【0055】
クロロプレン系ゴム製のガスケットを備えた定量式バルブは、既述のように、好ましくは、保存中に薬物の安定性に悪影響を及ぼしうる湿気侵入を減らすために使用されうる。場合によっては、さらなる防御が密閉アルミニウムパウチ中に製品をパッケージ化することにより達成されうる。
【0056】
本発明に記載される特徴を有する加圧溶液製剤、特に長時間作用型β2アゴニスト(LABA)気管支拡張薬および吸入コルチコステロイド(ICS)を含む加圧溶液製剤は、重篤な気管支肺疾患、特に重篤な持続型喘息ならびに重篤および非常に重篤な慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防および/または治療に有用である。
【0057】
本発明の他の特徴は、本発明の例証を与える以下の例示的実施形態の説明の過程で明らかとなり、それらを限定するものではない。
【0058】
(実施例)
実施例1.アンダーセンカスケードインパクター(ACI)によるエタノールベースの溶液HFA pMDI内のフマル酸ホルモテロールおよびジプロピオン酸ベクロメタゾンの粒度分布
溶液製剤は、共溶媒として12%w/wエタノールおよび安定剤として0.024%w/w塩酸(1M)を有するHFA 134a噴射剤媒体50μl中にBDP(100μg/用量)およびFF(6μg/用量)を含んでいた。本製剤を50μlバルブを備えたカンにパッケージし、0.30mmアクチュエータを使用して噴霧した。空気動力学的粒度の評価は、2バッチ各々からカンの使用有効期間の始めと終わりでUSPインダクションポートを備えるアンダーセンカスケードインパクターを使用して実施した。各々の測定を28.3l/分のサンプリング流速で15回の連続した用量をサンプリングして得た。試験された各々のカンについて、送達される用量を、カンの使用有効期間の始め、中間および終わりでDUSA法(用量単位スプレー装置(Dose Unit Spray Apparatus))を使用して測定した。試験サンプル中のBDPおよびFFの定量は、HPLC法により実施した。各々のインパクター測定に関して計量用量、送達用量、微粒子量、微粒子分画、空気動力学的中央粒子径(MMAD)および幾何学的標準偏差(GSD)を計算した。
【0059】
インパクター測定から算出されるエアロゾルの性能を表1にまとめる。BDPおよびFFそれぞれに関して、インパクター測定から得られる平均送達用量値は、DUSA法を使用して得られた平均値の95〜100%内および91〜101%内であった。BDPおよびFFに関して微粒子分画(≦5μmおよび≦1μmの両方)、MMADおよびGSDの一致は、図1に示されるように2種の薬物の同様な粒度分布の結果である(統計学的に有意な差はない)。
【0060】
【表1】

【0061】
表2は、計量用量の>5%を含むサンプルに関しての平均薬物堆積を示し、合計は、総計量薬物量の94.5±5.4%を示す。表2に示されるFFに対するBDPの割合は、平均値および標準偏差で示され、17.6±0.3であり、これは計量されたBDPとFFの比に一致する(17.6±0.6)。各粒度分画にわたって一致する薬物量の比は、噴霧過程中に生じる各粒子が、製品の溶液製剤の液体特性と一致する薬物濃度を含むことを意味し、この一致は賦形剤の蒸発の後の残留粒子として維持され、両残留薬物の計量された粒度分布は同一である。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例2.LABAとしてカルモテロール塩酸塩(TA2005)およびICSとしてブデソニド(BUD)を含む組合せ溶液
LABA TA2005は、組合せ中に1回作動あたり強度1μg/用量で存在する一方、ブデソニドは、HFA 134aを用いて加圧噴霧される酸性エタノール溶液内に1回作動あたり100μg/用量で存在する。微粒子の空気動力学的評価は、各pMDIからACIへの10回連続投与をサンプリングすることにより実施した。このインパクターはUSPインダクションポートを備え、28.3l/分のサンプリング流速で実施した。3つのpMDIを試験し(バッチの始めから、中間、および終わり)、有効期間の始めおよび終わりで試験した。インパクター内の薬物堆積は、HPLCアッセイを使用して定量した。微粒子量(FPD)は、S3とフィルターの間のACIステージで採取された薬物の合計により決定した。
【0064】
表3にACIの個々のステージにおけるTA2005およびブデソニドの堆積をまとめる一方、表4にエアロゾルの性能をまとめる。
【0065】
組合せpMDIの名目用量は、1μgTA2005:100μgブデソニドであった。図2にこれらの結果をまとめ、計測された用量を%として表した。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
この結果は、実施例の組合せ溶液が、エアロゾルクラウド中の2種の活性薬物の濃度に有意な差があるにもかかわらず、統計学的に有意な差(p<0.05)がない2種の成分の微粒子分画を提供することを証明する。この2種の活性薬物間の比は、すべてのACIステージで維持され、それらの肺での共沈着を可能にし、任意の相乗的相互作用が起こる機会を増加させうる。
【0069】
明らかに、上の教示に照らして本発明の多くの改変および変更が可能である。したがって、添付した特許請求の範囲において、本発明は具体的に本明細書に記載したのとは別に実施されうると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1で測定されたサンプルについて篩いを通過したBDPおよびFF累積質量堆積(%)を示す図である。
【図2】実施例2で測定されたACIステージごとのLABAおよびICSの堆積の(計量用量の)比率(%)(バーは平均値±SD;(n=6))を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重篤な気管支肺疾患を予防および/または治療するための薬剤の製造を目的とした、HFA噴射剤および共溶媒中に溶解した所定比の2種以上の活性薬物成分を含有する、定量噴霧吸入器用の加圧溶液製剤の使用であって、前記吸入器の作動時に放出される液体粒子の実質的にすべてが、前記薬剤における2種以上の前記活性薬物成分の前記所定比と実質的に同じ比で2種以上の前記活性薬物成分を含有し、2種以上の該活性薬物成分は実質的に同じ粒度分布で送達される使用。
【請求項2】
前記活性薬物成分のうちの1つがβ2アゴニストである請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記β2アゴニストがホルモテロール、カルモテロール、インダカテロール、サルメテロール、立体異性体、それらの塩、それらの溶媒和物、それらの塩の溶媒和物およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記β2アゴニストがフマル酸ホルモテロールである請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記β2アゴニストがカルモテロール塩酸塩である請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記薬剤がまた吸入コルチコステロイドを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記コルチコステロイドがジプロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、ブデソニドの22Rエピマー、ロフレポニド、シクレソニド、フランカルボン酸モメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンのエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記コルチコステロイドがジプロピオン酸ベクロメタゾンまたはブデソニドである請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記薬剤がまた抗コリン性アトロピン様の誘導体または抗ムスカリン性M3阻害剤を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記抗コリン性アトロピン様の誘導体が臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム、臭化グリコピロニウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記共溶媒がエタノールであり、その量が5%と20%w/wの間を有する請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記気管支肺疾患が重篤な持続型喘息である請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記気管支肺疾患が重篤または非常に重篤な慢性閉塞性肺疾患(COPD)である請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
HFA噴射剤および共溶媒としての20%w/w未満のエタノール中に溶解した所定比の2種以上の活性薬物成分を含有する、定量噴霧吸入器用の加圧溶液製剤の使用であって、前記吸入器の作動時に放出される液体粒子の実質的にすべてが、前記2種以上の活性薬物成分の前記所定比と実質的に同じ比で2種以上の活性薬物成分を含有し、2種以上の活性薬物成分は実質的に同じ粒度で送達される、患者の肺気管内における該薬物の共沈着を改善するための使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−534333(P2009−534333A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505773(P2009−505773)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003420
【国際公開番号】WO2007/121913
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(304037234)シエシー ファルマセウティチィ ソシエタ ペル アチオニ (24)
【Fターム(参考)】