説明

加工物品の工程管理システムおよび方法

【課題】RFIDタグを用いて加工設備の出入り口での加工対象ワークのシリアル番号や作業完了フラグ等の確認作業を確実に行うことで工程飛ばしや、2度加工の問題を解消できる加工物品の工程管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ワークWに装着されたRFIDタグ7と、加工設備OP10、OP20、…の入口側のRFIDタグリーダ5によって読み取った少なくともワークWのシリアルNo.前工程の作業完了フラグ、および当該工程の作業完了フラグの情報を基に、当該加工設備の起動可能を判定する手段15と、出口側(入口側と兼用)のRFIDタグリーダ/ライタ5によって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアルNO.を基に当該加工設備での加工作業の完了を判定する手段17と、加工作業の完了を判定したときに完了フラグをRFIDタグに書き込む手段19と、を備え、完了フラグをRFIDタグ7に書き込みを完了してから次の工程に進むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダヘッドやシリンダブロックの機械加工を行う加工設備が複数並んで構成される加工ラインにおいて、加工物品を自動搬送ではなく手動(手扱い)で各加工設備に搬送し、手動で加工設備に設置する加工物品の工程管理システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の工程を経て加工対象である部品を加工する加工ラインにおいて、加工中の物品を管理するために、しばしば、RFID(Radio Frequency Identification)タグが用いられている。このRFIDタグは、ICチップを搭載し、記録した情報の読み取りや書き込みを電波や電磁波等により非接触で行うことを可能とするものであり、搬送を伴う生産ラインにおけるデータの授受に好適である。
例えば、特開2006−139410号公報(特許文献1)には、加工物品にRFIDタグを付し、加工工程への入出力時刻等の情報を取得することにより、工程内における加工物品の状況を管理する工程管理システムの例が示されている。
【0003】
また、特開2009−75941号公報(特許文献2)には、搬送作業者に負担を掛けることなく、搬送中の物品の所在やその状態を管理するために、加工工程での加工が終了したとき、その加工が終了した加工物品のRFIDタグから物品ID読み出し、加工済物品置き場に仮置きされる加工物品の物品IDを知る。これによって、加工物品が載置された台車IDに対して、仮置きされた加工物品の物品IDを紐付けでき、工程間を搬送中の加工物品の状態を管理することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−139410号公報
【特許文献2】特開2009−75941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1のように、加工物品が自動搬送されるものにあっては、自動搬送にてRFIDを読み取ることで、自動的に加工履歴データと加工物品との紐付けが確実になされるため工程管理を行い易い、また、特許文献2のように、台車IDと加工済の物品IDとを紐付けすることで、台車で搬送する搬送中まで含めた加工履歴データを取得することで、加工物品との紐付けが確実に行われる。
【0006】
このように、前記特許文献1および特許文献2に示されるような工程管理手法は、自動搬送されて搬送物品の順序及び加工順序に一定の規則性があることが前提とされている。
しかし、自動搬送されないシステム、すなわち、加工設備間の加工物品の搬送や加工設備への加工物品の装着を、作業者の手動扱いによる場合においては、加工物品の搬送順序や装着順序に物理的強制がないため、つまり搬送工程や装着に作業者が介在するため、搬送順序や加工順序に柔軟性が生じ易くなり、加工物品と加工履歴データとの結びつきが不確実になり、加工物品の確実な加工履歴追跡(トレーサビリティ)が行い難い問題がある。
【0007】
特に、機械加工を施す加工ラインにおいては、前工程がなされていない物品を当該工程の加工を施してしまう所謂工程飛ばしの問題や、さらに、当該加工工程を実施したにも関わらず、再び当該加工工程を実施してしまう所謂2度加工の問題を生じ易い。
【0008】
そこで、かかる問題に鑑みて、自動搬送システムを備えない、加工物品の搬送や加工設備への装着を作業者による手動扱いによる加工ラインにおいて、RFIDタグを用いて加工設備の出入り口での加工対象ワークのシリアル番号や作業完了フラグ等の確認作業を確実に行うことで工程飛ばしや、2度加工の問題を解消できる加工物品の工程管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、第1発明は、加工物品の搬送や加工設備への装着を作業者の手動扱いによる加工ラインにおける加工物品の工程管理システムにおいて、
加工対象ワークに装着されたRFIDタグと、加工設備の入口および出口に設けられRFIDタグに書き込まれている情報を読み取るRFIDタグリーダと、入口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号、前工程の作業完了フラグ、および当該工程の作業完了フラグの情報を基に、当該加工設備の起動可能を判定する手段と、出口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号を基に当該加工設備での加工作業の完了を判定する手段と、前記加工作業の完了を判定したときに完了フラグをRFIDタグに書き込む手段と、を備え、前記完了フラグをRFIDタグに書き込みを完了してから次の工程に進むことを特徴とする。
【0010】
かかる第1発明によれば、加工設備の入口に設けられたRFIDタグリーダによって、RFIDタグに書き込まれているデータのうち少なくとも加工対象ワークのシリアル番号、前工程の作業完了フラグ、および当該工程の作業完了フラグの情報を基に、当該加工設備の起動可能を判定するので、つまり、具体的には、前記前工程の作業完了フラグが立っていて、且つ当該工程の作業完了フラグが立っていないときに、当該加工設備の起動が可能であると判定する。
【0011】
前工程の作業完了フラグが立っていない場合には、前工程の作業が終了していないことを示しているため、所謂工程飛ばしの可能性がある。
また、当該工程の作業完了フラグが立っていない場合には、当該加工設備での加工が終了していないことを示しているため、所謂2度加工の可能性がある。
従って、前工程の作業完了フラグが立っていて、且つ当該工程の作業完了フラグが立っていないときに、当該加工設備の起動が可能であると判定して当該加工整備による加工を開始することで、前記工程飛ばしや2度加工の発生を防止できる。
【0012】
また、第1発明によれば、出口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号を基に当該加工設備での加工作業の完了を判定するので、つまり、具体的には、出口側のRFIDタグリーダによって読み取った加工対象ワークのシリアル番号が、入口側のRFIDタグリーダによって読み取ったシリアル番号と一致したときに、当該加工設備での加工作業が完了したと判定する。
【0013】
このように、加工が終了した時点で、シリアル番号が入口側で読み取ったシリアル番号と一致するか否かを判定することで加工物品に誤りがないかを確認でき、加工作業の完了を確実に判定できる。
【0014】
また、第1発明において好ましくは、前記起動可能を判定する手段、および加工作業の完了を判定する手段は、それぞれの加工設備毎に備えられ、加工設備毎に起動の可能および加工作業の完了が判断され、完了フラグが工程を通過する毎にRFIDタグに書き込まれるとよい。
【0015】
このように、加工設備毎に、起動可能および加工作業の完了を判定するので、加工設備毎に判定に必要な記憶手段や判定手段を設置することで、加工設備の追加や削減等の設備変更に対応しやすいシステムを構築できるとともに、加工設備毎の判定基準の変更への対応も容易である。
【0016】
また、第1発明において好ましくは、前記RFIDタグには加工対象ワークのシリアル番号、工程ごとの完了フラグを書く領域が割り付けられており、これらRFIDタグに書き込まれている工程ごとの完了フラグを含むデータがネットワークを介して工程管理サーバに送信されて記憶される手段を備えるとよい。
【0017】
このように、RFIDタグには加工対象ワークのシリアル番号、工程ごとの加工作業の完了フラグを書く領域が割り付けられているため、各加工設備における加工が完了した履歴情報が蓄積されていくので、RFIDタグを読み込むことで、加工履歴を容易に確認できる。その結果、加工物品の確実な加工履歴追跡(トレーサビリティ)を行うことができる。
【0018】
また、RFIDタグに書き込まれている工程ごとの完了フラグを含むデータがネットワークを介して工程管理サーバに送信されて記憶されるので、端末から工程管理サーバへアクセスすることで、加工物品の加工履歴を容易に作業者および管理者等のデータ利用者に提供できるようになる。
【0019】
また、第2発明は、加工物品の工程管理方法に関する発明であり、加工物品の搬送や加工設備への装着を作業者の手動扱いによる加工ラインにおける加工物品の工程管理方法において、
加工設備の入口および出口に設けられRFIDタグリーダによって、加工対象ワークに装着されたRFIDタグに書き込まれた情報を読み取り、入口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号、前工程の作業完了フラグ、および当該工程の作業完了フラグの情報を基に、当該加工設備の起動可能を判定し、出口側のRFIDタグリーダによって読み取ったRFIDタグに書き込まれた少なくとも加工対象ワークのシリアル番号を基に当該加工設備での加工作業の完了を判定し、該完了を判定したときに完了フラグをRFIDタグに書き込み、次工程への搬送を可能とすることを特徴とする。
【0020】
第2発明において好ましくは、前記前工程の作業完了フラグが立っていて、且つ当該工程の作業完了フラグが立っていないときに、当該加工設備の起動が可能であると判定して加工を開始するとよく、さらに、出口側のRFIDタグリーダによって読み取った加工対象ワークのシリアル番号が、入口側のRFIDタグリーダによって読み取ったシリアル番号と一致したときに、当該加工設備での加工作業が完了したと判定するとよい。
【0021】
このように、加工物品の工程管理方法にかかる第2発明によれば、前記加工物品の工程管理装置にかかる第1発明と同様に、前工程の作業完了フラグが立っていないときには、工程飛ばしの可能性があるため、加工設備による起動を開始しないようにし、さらに、当該工程の作業完了フラグが立っているときには、2度加工の可能性があるため、加工設備による起動を開始しないようにして、工程飛ばしや、2度加工の発生を防止できる。
【0022】
さらに、出口側のRFIDタグリーダによって読み取った加工対象ワークのシリアル番号が、入口側のRFIDタグリーダによって読み取ったシリアル番号と一致したときに、当該加工設備での加工作業が完了したと判定して完了フラグをRFIDタグに書き込み、次工程への搬送を可能とするので、加工物品に誤りがないかを確認でき、加工作業の完了を確実に判定できる。
【発明の効果】
【0023】
加工設備間の加工物品の搬送や加工設備への装着を作業者による手動扱いによる場合には、加工物品の搬送に物理的強制がないため、搬送に作業者が介在して搬送順序等に柔軟性が生じ易く、加工物品と加工履歴データとの結びつきが不確実になり、加工物品の確実な加工履歴追跡(トレーサビリティ)が行い難く、加工忘れによる加工工程飛ばしや2度加工の発生を生じやすい。
【0024】
しかし、第1発明の加工物品の工程管理装置によれば、入口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号、前工程の作業完了フラグ、および当該工程の作業完了フラグの情報を基に、当該加工設備の起動可能を判定する手段と、出口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号を基に当該加工設備での加工作業の完了を判定する手段と、前記加工作業の完了を判定したときに完了フラグをRFIDタグに書き込む手段と、を備え、前記完了フラグがRFIDタグに書き込まれると次の工程に進むことが可能となるので、加工工程飛ばしや、2度加工の発生を防止できる。
また、第2発明の加工物品の工程管理方法においても、同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態にかかる工程管理システムの全体構成図である。
【図2−1】実施形態の工程管理システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
【図2−2】図2−1の続きのフローチャートである。
【図3】実施形態のRFIDタグに書き込まれているデータの例を示す説明図である。
【図4】工程管理サーバに記憶、蓄積された加工履歴データの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態を示し、工程管理システムのシステム全体構成図である。
各加工設備OP10、OP20、OP30、…が直列的に並んで設置されていて、加工対象物品であるワークWが加工設備OP10、次にOP20、次にOP30と搬送される例を示している。
なお、本実施形態においては、ワークWは、エンジンのシリンダヘッド、またはシリンダブロック等のエンジン部品である。そして、加工設備は、マシニングセンタによって構成されており、マシニングセンタに装着されたワークWは必要な機械加工(穴あけ、切削、研削等)が施される。各加工設備OP10、OP20、OP30に沿って順次送られて一連の機械加工が施されるようになっている。
【0028】
加工設備OP10、OP20、OP30の間は、搬送手段としてコンベア、台車、キャリア等によってワークWを、加工設備間を移動させ、加工前のワーク置場にワークWが仮置きされる。そして作業者が加工設備、例えば加工設備OP10にワークを装着する際に、加工前ワーク在席センサ3によって、加工前のワークWの存在を確認する。
【0029】
さらに、設備前ワーク在席センサ3によって、加工前のワークWの存在を確認すると同時に、RFIDタグリーダ/ライタ5によって、RFIDタグに書き込まれた情報を取得する。
すなわち、ワークWには、RFIDタグを埋め込んだボルトであるボルトタグ(RFIDタグ)7が取り付けられて、そのボルトタグ7に書き込まれた情報を取得する。
RFIDタグリーダ/ライタ5は、設備前ワーク在席センサ3によって、加工前のワークWの存在を確認する際に、ボルトタグ7に対向若しくは近傍に設置されるようになっている。
【0030】
また、加工後のワークWも設備前ワーク在席センサ3によりワークWの存在を確認するとともに、RFIDタグリーダ/ライタ5によってボルトタグ7に書き込まれている情報の読取り/書込みを行う。本実施形態においては、RFIDタグリーダ/ライタ5が入口側のRFIDタグリーダと出口側のRFIDタグリーダとを兼ねている。
【0031】
ボルトタグ7は、内部にICチップが埋めこまれており、ワークWであるシリンダヘッド、またはシリンダブロックに、加工の際にじゃまにならない位置、または他の部品と干渉しない位置に取り付けられ、ワークWとともに各加工設備OP10、OP20、…を流れ、各加工設備における加工情報が書き込まれるようになっている。
また、このボルトタグ7、タグの内部のICチップが切削加工の際に使用される切削油等の影響を受けないような材料で形成されている。
【0032】
なお、このRFID(Radio Frequency Identification)タグとは、ID情報を埋め込んだRFIDタグから、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm〜数m)の無線通信によって情報をやりとりするものであり、記録した情報の読み取りや書き込みを電波や電磁波等により非接触で行うことを可能とするため、データの授受に適している。
【0033】
加工設備OP10、OP20、OP30、…にはそれぞれ、加工設備を制御する設備制御装置13が設けられている。
設備制御装置13には、設備前面側に設置されたRFIDタグリーダ/ライタ5からの信号、設備前ワーク在席センサ3からの信号がそれぞれ入力される。
また、設備制御装置13には、設備前面側に設置されたRFIDタグリーダ/ライタ5からの信号によって、ボルトタグ7に書き込まれたワークWのシリアル番号、前工程すなわち図示しないOP10の前の加工設備の作業完了フラグ、および当該工程、すなわち加工設備OP10の作業完了フラグの情報を基に、当該加工設備OP10の起動可能を判定する起動判定手段15が設けられている。
【0034】
さらに、設備制御装置13には、設備前面側のRFIDタグリーダ/ライタ5によって読み取ったワークWのシリアル番号を基に当該加工設備OP10での加工作業の完了を判定する加工完了判定手段17、および、加工完了判定手段17によって作業の完了を判定したときに完了フラグをボルトタグ7にRFIDタグリーダ/ライタ5によって書き込む書込み手段19を備え、完了フラグがボルトタグ7に書き込まれると次の工程に進むことができるようになっている。
【0035】
また、図1に示すように、各加工設備OP10、OP20、OP30の設備制御装置13は、ネットワーク21を介して工程管理サーバ23と接続されている。そして工程管理サーバ23はネットワーク25を介して利用者の端末27に接続されている。
工程管理サーバ23には、各加工設備から送られるワークWの加工履歴が記憶され、データ整理されて、利用者に提供される。
【0036】
なお、加工設備から工程管理サーバ23への加工履歴データは、ボルトタグ7に書き込まれて蓄積されている。
このため、加工設備毎の加工完了とともに加工履歴データを工程管理サーバ23に送信して工程管理サーバ23側の記憶手段に記憶することをせずに、最終加工を行った加工設備の設備制御装置13を介してボルトタグ7に記憶されている加工履歴データを全て工程管理サーバ23に送信して工程管理サーバ23側の記憶手段に記憶するようにしてもよい。
【0037】
次に、設備制御装置13の処理手順を、図2−1、図2−2のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS1では、加工前ワーク在席センサ3によって、在席があるか否かを判定し加工前のワークWの存在を確認する。在席を確認するとステップS2で、ボルトタグ7に書き込まれているデータを、設備前面側に設置されたRFIDタグリーダ/ライタ5によって取得する。
【0038】
取得するデータは、少なくとも加工対象のワークWのシリアル番号、前工程の作業完了フラグ、および当該工程の作業完了フラグの情報である。
図3には、ボルトタグ7に記憶されるデータの一例を示す。図3のように、「データ名」、「投入時間」、「ラインコード」、「シリアルNo.」、「機種コード」、「設備No.」、「作業フラグ」等の情報が書き込まれている。
加工設備OP10、OP20、OP30、…毎に作業フラグが書き込まれるようになっている。
【0039】
次に、ステップS3で、既に当該加工設備の作業完了フラグが立っているか否かを判定する。例えば当該加工設備が加工設備OP10の場合には、ボルトタグ7から読み取った情報の中に、加工設備OP10の作業完了フラグが立っているか否かを判定する。
作業完了フラグが立っている場合には、既に加工設備OP10の作業が完了しているため、2度加工の恐れがあるので、ステップS5に進んで、ボルトタグ7に記憶されているシリアルNo.のデータを設備制御装置13の記憶部31には記憶せずに、ステップS6に進んで、ワークWを設備前ワーク座席センサ3による検出位置から外して、次工程に移動して正常工程に戻す。
【0040】
また、ステップS3で当該加工設備の作業完了フラグが立っていない場合には、ステップS4に進んで、次に、前工程の作業完了フラグが立っているか否かを判定する。
作業完了フラグが立っていない場合には、加工飛ばしの恐れがあるため、ステップS5に進んで、ボルトタグ7に記憶されているシリアルNo.のデータを設備制御装置13の記憶部31には記憶せずに、ステップS6に進んで、ワークWを設備前ワーク座席センサ3による検出位置から外して、前工程に移動して正常工程に戻すように報知する。
【0041】
次に、ステップS4で前工程の作業完了フラグが立っている場合には、ステップS7に進んで、ボルトタグ7に記憶されているシリアルNo.を設備制御装置13の記憶部31に記憶する。
次に、ステップS8では、加工設備、例えば加工設備OP10に、作業者がワークWを装着して、機械加工の自動運転を開始する。
【0042】
そして、加工が済んだらステップS9で、加工済みワークWを取り出して、設備前にワークWを仮置きして、再度ボルトタグ7に記憶されているデータを、RFIDタグリーダ/ライタ5によって取得する。
そして、ステップS10において、加工前にステップS7で記憶したワークWのシリアルNo.と、今回加工が終了したワークWに取り付けられているボルトタグ7から読み取ったシリアルNo.とを照合して、一致しているか否かを判定する。
【0043】
ステップS10で一致していないと判定した場合には、ステップS11に進んで、加工したワークWに誤りがあったことを報知する。
一方、一致している場合には、当該加工設備において加工作業が完了したことを確認できたためその結果として、ステップS12において、ボルトタグ7内の記憶部に作業完了フラグをボルトタグ7にRFIDタグリーダ/ライタ5によって書き込む。
【0044】
次に、ステップS13に進んで、設備制御装置13の記憶部31に記憶されている、加工処理したワークWに関する、「シリアルNo.」、「設備No.」、「加工日時」等のデータを工程管理サーバ23に送信して、該サーバ23に記憶する。
【0045】
そして、ステップS14では、工程管理サーバ23に送信した段階で、設備制御装置13の記憶部31に記憶されているデータをリセットして、次に搬入される新たなワークWに対するデータを記憶するように初期化する。そして終了する。
【0046】
なお、ステップS14において、各設備制御装置13の記憶部31に記憶されているデータを工程管理サーバ23に送信して工程管理サーバ23内の記憶部に記憶することによって、設備制御装置13の記憶部31に記憶されているデータをリセットすることを説明したが、前述したように、ボルトタグ7内においても加工履歴が書き込まれているため、最終の加工設備による加工作業が終了した段階で、ボルトタグ7に書き込まれている過去分の履歴データをまとめて設備制御装置13を介して工程管理サーバ23に送信するようにしてもよい。
【0047】
このように、最終加工を行った加工設備の設備制御装置13を介してボルトタグ7に記憶されている加工履歴データを全て工程管理サーバ23に送信するようにすると、各加工設備OP10、OP20、OP30、…でのデータ送信制御装置や工程管理サーバ23側の受信制御装置を簡素化でき、システム構成を簡単化することができる。
ステップS1〜S14までの手順の後に、次の加工設備に搬送されて、また同様の処理手順を繰り返す。
【0048】
また、工程管理サーバ23に送信された、加工履歴データは、記憶、整理されて、例えば図4に示すような構成で記憶される。
図4において、「ラインコード」は、加工ラインの番号であり、「機種」は、加工対象物品のシリンダヘッド、またはシリンダブロックが適用される機種を識別するコード番号であり、「シリアルNo.」は、ワークWを識別するための番号であり、「設」は設備コード、「作」は作業フラグ、例えば作業完了等のフラグ情報が記載される。また、「異」は異常コードを示し、加工工程中に異常が発生したか否かのフラグ情報が設定される。
【0049】
以上の処理手順のように、ワークWの加工設備OP10、OP20、…への投入の際に、設備前面側のRFIDタグリーダ/ライタ5による読取り情報を基にステップS3の判定によって、加工作業が完了したことを忘れて、同じ加工工程を流してしまう2度加工を確実に防止でき、さらに、ステップS4の判定によって、加工していないのに加工したと勘違いして加工工程を飛ばしてしまう加工飛ばしを確実に防止できる。
【0050】
さらに、ステップS10の判定によって、設備前面側のRFIDタグリーダ/ライタ5によって読み取った加工対象ワークのシリアルNo.が、加工前に読み取ったシリアルNo.と一致したときに、当該加工設備での加工作業が完了したと判定して完了フラグをボルトタグ7に書き込み、次工程への搬送を可能とするので、加工物品に誤りがないかを確認でき、加工作業の完了を確実に判定できる。
【0051】
また、以上のように、加工飛ばしや、2度加工のワークWが防止されるため、加工ラインを流れるワークと加工履歴データとの結びつきが確実になり、ワークWの確実な加工履歴追跡(トレーサビリティ)が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、RFIDタグを用いて加工設備の出入り口での加工対象ワークのシリアル番号や作業完了フラグ等の確認作業を確実に行うことで工程飛ばしや、2度加工の問題を解消できるので、自動搬送システムを備えない、加工物品の搬送や加工設備への装着を作業者による手動扱いによる加工ラインにおける加工物品の工程管理システムおよび工程管理方法に適している。
【符号の説明】
【0053】
3 加工前ワーク在席センサ
5 RFIDタグリーダ/ライタ
7 ボルトタグ(RFIDタグ)
13 設備制御装置
15 起動判定手段
17 加工完了判定手段
19 書込み手段
21、25 ネットワーク
23 工程管理サーバ
27 端末
31 設備制御装置の記憶部
OP10、OP20、OP30 加工設備
W ワーク(加工対象ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物品を作業者の手扱いで加工設備間を搬送する加工ラインにおける加工物品の工程管理システムにおいて、
加工対象ワークに装着されたRFIDタグと、
加工設備の入口および出口に設けられRFIDタグに書き込まれている情報を読み取るRFIDタグリーダと、
入口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号、前工程の作業完了フラグ、および当該工程の作業完了フラグの情報を基に、当該加工設備の起動可能を判定する手段と、
出口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号を基に当該加工設備での加工作業の完了を判定する手段と、
前記加工作業の完了を判定したときに完了フラグをRFIDタグに書き込む手段と、
を備え、前記完了フラグをRFIDタグに書き込みを完了してから次の工程に進むことを特徴とする加工物品の工程管理システム。
【請求項2】
前記前工程の作業完了フラグが立っていて、且つ当該工程の作業完了フラグが立っていないときに、当該加工設備の起動が可能であると判定することを特徴とする請求項1記載の加工物品の工程管理システム。
【請求項3】
出口側のRFIDタグリーダによって読み取った加工対象ワークのシリアル番号が、入口側のRFIDタグリーダによって読み取ったシリアル番号と一致したときに、当該加工設備での加工作業が完了したと判定することを特徴とする請求項1記載の加工物品の工程管理システム。
【請求項4】
前記起動可能を判定する手段、および加工作業の完了を判定する手段は、それぞれの加工設備毎に備えられ、加工設備毎に起動の可能および加工作業の完了が判断され、完了フラグが工程を通過する毎にRFIDタグに書き込まれることを特徴とする請求項1記載の加工物品の工程管理システム。
【請求項5】
前記RFIDタグには加工対象ワークのシリアル番号、工程ごとの完了フラグを書く領域が割り付けられており、これらデータがネットワークを介して工程管理装置に送信されて記憶される手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加工物品の工程管理システム。
【請求項6】
加工物品を作業者の手扱いで加工設備間を搬送する加工ラインにおける加工物品の工程管理方法において、
加工設備の入口および出口に設けられRFIDタグリーダによって、加工対象ワークに装着されたRFIDタグに書き込まれた情報を読み取り、
入口側のRFIDタグリーダによって読み取った少なくとも加工対象ワークのシリアル番号、前工程の作業完了フラグ、および当該工程の作業完了フラグの情報を基に、当該加工設備の起動可能を判定し、
出口側のRFIDタグリーダによって読み取ったRFIDタグに書き込まれた少なくとも加工対象ワークのシリアル番号を基に当該加工設備での加工作業の完了を判定し、
該完了を判定したときに完了フラグをRFIDタグに書き込み、次工程へ搬送されることを特徴とする加工物品の工程管理方法。
【請求項7】
前記前工程の作業完了フラグが立っていて、且つ当該工程の作業完了フラグが立っていないときに、当該加工設備の起動が可能であると判定して加工を開始することを特徴とする請求項6記載の加工物品の工程管理方法。
【請求項8】
出口側のRFIDタグリーダによって読み取った加工対象ワークのシリアル番号が、入口側のRFIDタグリーダによって読み取ったシリアル番号と一致したときに、当該加工設備での加工作業が完了したと判定することを特徴とする請求項6記載の加工物品の工程管理方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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