説明

加水分解性ケイ素化合物、加水分解性ケイ素化合物の製造方法、加水分解性ケイ素化合物の縮合物、樹脂添加剤、無機表面改質剤、膜形成剤、及び、樹脂組成物

【課題】有機媒体への分散性や、無機材料との親和性、無機材料を表面処理した際の特性付与等を優れたものとし、種々の用途に好適に用いることができ、これを用いて形成した部材を透明性、屈折率等に優れたものとすることができる加水分解性ケイ素化合物、該加水分解性ケイ素化合物の縮合物、及び、上記加水分解性ケイ素化合物の製造方法を提供する。また、その用途として、該加水分解性ケイ素化合物及び/又は加水分解性ケイ素化合物の縮合物を必須とする樹脂添加剤、無機表面改質剤、膜形成剤、及び、樹脂組成物を提供する。
【解決手段】炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格及び3個以上の原子が連なった構造を必須とする加水分解性ケイ素化合物、該加水分解性ケイ素化合物の縮合物、及び、上記加水分解性ケイ素化合物の製造方法である。また、その用途として、上記加水分解性ケイ素化合物及び/又は加水分解性ケイ素化合物の縮合物を必須とする樹脂添加剤、無機表面改質剤、膜形成剤、並びに、加水分解性ケイ素化合物及び/又はその縮合物と、樹脂成分とを必須とする樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性ケイ素化合物、加水分解性ケイ素化合物の製造方法、加水分解性ケイ素化合物の縮合物、樹脂添加剤、無機表面改質剤、膜形成剤、及び、樹脂組成物に関する。より詳しくは、光学部材等の種々の用途に好適に用いることができる加水分解性ケイ素化合物、その製造方法、加水分解性ケイ素化合物の縮合物、並びに、該加水分解性ケイ素化合物及び/又は加水分解性ケイ素化合物の縮合物を必須とする樹脂添加剤、無機表面改質剤、膜形成剤、及び、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性ケイ素化合物は、シランカップリング剤等として幅広い分野において用いられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、アセトキシ基等の加水分解性基と、アミノ基、メタクリロキシ基、エポキシ基等の有機官能性基を有するものがある。このような官能基をもつシランカップリング剤は、ガラス、金属又は鉱物等の無機材料と、プラスチック、塗料、接着剤等の有機材料との界面で、両者に反応し、異なる物質の間での結合やカップリング層を形成するという機能を有する有用な化合物である。無機材料と有機材料とを結びつけることによって、材料の物理強度や耐水性、接着性の向上を図ることができる。
【0003】
このように、シランカップリング剤に代表される加水分解性ケイ素化合物は、無機材料と有機材料とを結びつけることができるという機能を有するため、近年では、プリント基板用の積層板、人工大理石、プラスチック磁石等といった無機有機ハイブリッド材料の製造にも利用されている。これら種々の技術分野において、例えば、シランカップリング剤等を樹脂組成物等に添加して用いることになるが、シランカップリング剤等が本来有する作用を充分に発揮するとともに、樹脂組成物等から形成される材料や製品がもつ特性に悪影響を与えないようにすることが求められるところである。この点で、従来のシランカップリング剤等を用いた場合は、屈折率や透明性の低下等を招くことになることから、これらの特性が要求される光学部材等の分野においても好適に適用することができ、優れた特性を得ることができるようにするための工夫の余地があった。
【0004】
ところで、加水分解性のケイ素化合物の一つに珪素とベンゼン環を含むものがあり、これに関して、ベンジルアルコールやフェノールをシランカップリング剤と反応させて生成された芳香族骨格とウレタン結合とを有する化合物が開示されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。この化合物は発光材料を形成するための化合物や、電子材料用のポリマーシリカとして用いられるものである。しかしながら、加水分解性ケイ素化合物が工業的に用いられるのは、樹脂添加剤等の樹脂組成物を構成する材料である場合が多く、これらの実用的な用途において、樹脂等への分散性、相溶性等について検討されたものではなかった。
【特許文献1】韓国特許公開公報第2006−112966号
【非特許文献1】ビン・ヤン(Bing Yan)、ドン−ジー・マ(Dong−Jie Ma)、「ジャーナル オブ ソリッドステート ケミストリー(Journal of SOLID STATE CHEMISTRY)」、2006年、第179巻、第7号、pp2059−2066
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、シランカップリング剤は無機材料と有機材料とを結びつけるために用いられているが、従来のシランカップリング剤では種々の用途に用いるために充分な特性を有するものではなかった。例えば、高分子フィルム、ポリカーボネートのハードコート剤としてシリコンアルコキシド等の金属アルコキシドをモノマーや加水分解縮合物を塗布液として塗布し、湿気硬化と加熱によりシリカ等の薄膜を形成する。このような場合、金属アルコキシドとしてシリコンアルコキシドを用いることが挙げられるが、従来のシリコンアルコキシドを用いて膜を形成した場合、収縮によるクラックの発生等が生じ、薄い膜しか形成できない等の課題があった。
また、樹脂添加剤や膜形成剤として用いる場合や、樹脂組成物の材料として用いる場合等には、加水分解性ケイ素化合物の分散性が充分ではなく、透明性、膜の均一性の点等で課題を有していた。
更に、無機表面改質剤(無機材料の表面処理剤)として用いる場合、屈折率や透明性の低下を招くこととなり、特に光学部材等に用いる際には充分な特性を有するものとできなかった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、有機媒体への分散性や、無機材料との親和性、無機材料を表面処理した際の特性付与等を優れたものとし、種々の用途に好適に用いることができ、これを用いて形成した部材を透明性、屈折率等に優れたものとすることができる加水分解性ケイ素化合物、該加水分解性ケイ素化合物の縮合物、及び、上記加水分解性ケイ素化合物の製造方法を提供することを目的とするものである。また、その用途として、該加水分解性ケイ素化合物及び/又は加水分解性ケイ素化合物の縮合物を必須とする樹脂添加剤、無機表面改質剤、膜形成剤、及び、樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々の用途、特に光学部材等の製造に用いられるのに好適な加水分解性ケイ素化合物について鋭意検討したところ、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格及び3個以上の原子が連なった構造を必須とする加水分解性ケイ素化合物であることによって、有機媒体への分散性、相溶性の向上や、無機材料の表面処理により、疎水化、耐水化、屈折率制御等の効果を充分なものとして、種々の用途に好適に用いることができることを見いだした。そして、このような化合物であることにより、膜形成剤、樹脂添加剤、樹脂組成物を構成する材料、無機表面改質剤等として好適に使用することができ、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格及び3個以上の原子が連なった構造を必須とする加水分解性ケイ素化合物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の加水分解性ケイ素化合物は、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格及び3個以上の原子が連なった構造を必須とするものである。このような加水分解性ケイ素化合物は、以下に示すような用途等において優れた特性を発揮することができる。例えば、有機媒体への優れた分散性を有するものとなることから、本発明の加水分解性ケイ素化合物を樹脂組成物を構成する材料や樹脂添加剤として用いる場合等に、優れた透明性を有するものとすることができる。更に、共役系芳香族骨格に起因して高い屈折率を有するものとすることができる。
また、無機膜、無機微粒子等の無機材料に用いる表面処理剤(無機表面改質剤)として用いる場合には、透明性、屈折率等の光学特性を損なうことなく、疎水化や耐水化、更には屈折率の制御等を行うことができる。無機微粒子等を樹脂に分散させるような場合には、その分散安定性を高めることができ、該樹脂の透明性を向上させることができる。
膜形成剤としても好適に用いることができる。例えば、無機材料と有機材料とのハイブリッド膜等を形成するために、本発明の加水分解性ケイ素化合物と無機材料とを併用した場合、3個以上の原子が連なった構造を有することによってより優れた靱性を付与することができ、収縮によるクラックの発生を抑制することができる。これにより、厚膜化が可能となり、ハードコート特性等も向上する。更には、優れた透明性、高い屈折率を付与することもでき、形成された膜は光学部材等として好適に用いることができる。
以下では、「炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格」を「共役系芳香族骨格」ともいう。
そして、本発明の「炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格及び3個以上の原子が連なった構造を必須とする加水分解性ケイ素化合物」を「ケイ素化合物(A)」ともいい、該「ケイ素化合物(A)」に由来する縮合単位を含む縮合物を「縮合物(A)」ともいう。すなわち、縮合物(A)とは、ケイ素化合物(A)を縮合原料の一つとして必須的に含んでなる縮合物を意味し、また、ケイ素化合物(A)に由来する縮合単位を必須的に含む縮合物を意味する。
【0010】
上記共役系芳香族骨格は、1つの共役単位で炭素数が7個以上である共役構造を含む芳香族骨格を意味する。言い換えると、1つの共役単位を構成することになる原子団に属する炭素数が7個以上であり、そのような共役構造を少なくとも1つ持つ芳香族骨格である。上記共役単位としては、共役二重結合を有するものであることが好ましい。
なお、共役単位は、共役二重結合を例に取れば、少なくとも2個の二重結合と1個の単結合を含むことになるが、本発明においては、共役し得る二重結合と単結合のすべてを含んだ構造単位を1つの共役単位として炭素数を数えることになり、当該単位を含む結合構造を示した場合に、共鳴に関わる部分の一まとまりを一つの共役単位という。共役単位の好ましい形態は後述する。
なお、芳香族骨格とは、芳香環を含む有機骨格のことであり、共役系芳香族骨格はその共役構造を構成する原子団に属する原子で構成された芳香族骨格であればその形態等は特に限定されるものではない。
【0011】
上記共役系芳香族骨格としては、下記化学式(a−1)〜(a−8);
【0012】
【化1】

【0013】
で表される構造のいずれかを有することが好ましい。すなわち、上記化学式(a−1)で表されるフルオレン骨格(13個の炭素原子によって構成された共役構造)、上記化学式(a−2)で表されるアントラセン環(14個の炭素原子によって構成された共役構造)、上記化学式(a−3)で表されるジベンゾチオフェン環(12個の炭素原子によって構成された共役構造)、上記化学式(a−4)で表されるカルバゾール骨格(12個の炭素原子によって構成された共役構造)、上記化学式(a−5−1)及び(a−5−2)で表されるスチルベン骨格(14個の炭素原子によって構成された共役構造)、上記化学式(a−6)で表されるビフェニル骨格(12個の炭素原子によって構成された共役構造)、上記化学式(a−7)で表されるナフタレン環(10個の炭素原子によって構成された共役構造)からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造を有することが好ましい。
【0014】
光学部材用の材料として、若しくは、光学部材用の材料を改質するための改質剤として上記ケイ素化合物(A)を用いる場合、該光学部材の高屈折率化を図ることができる点から、上記共役系芳香族骨格は、フルオレン骨格、アントラセン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール骨格、スチルベン骨格、ビフェニル骨格及びナフタレン環からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造を必須とすることが好ましい。これらの中でも、更に好ましくは、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、及び、ナフタレン環からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造を必須とするものである。
上記共役系芳香族骨格としては、上述した骨格や環構造を有するものであればいずれも好適に用いることができる。また、上記式(a−8)で表されるように、フルオレン骨格にビスフェノールが結合した構造(25個の炭素原子によって構成された共役構造)等がより好ましい形態として挙げられる。
【0015】
上記共役系芳香族骨格としては、ケイ素化合物(A)を用いて製造した部材への着色を抑制する観点から、ビフェニル骨格を含むものであることが好ましい。例えば、フルオレン骨格やナフタレン環を含む骨格であると着色するおそれがあるが、ビフェニル骨格である共役系芳香族骨格を用いることで、上記部材の着色を抑制することができる。また、フルオレン骨格や、カルバゾール骨格を有する化合物は高価であり、材料費が高くなるおそれがあるが、ビフェニル骨格を含む化合物は比較的安価であり、生産コストを低く抑えることができる。
【0016】
なお、上記した化合物等の共役単位を構成する炭素数の数え方の具体例については下記の通りである。
例えば、下記式(b)で表されるフルオレン構造は太線部でも6員環同士が結ばれている。その結果、芳香環に挟まれた真ん中の5員環も共鳴構造になっているので、点線の丸印で囲んだ炭素も共役構造の一部となり、一つの共役構造を構成する炭素数は13個となる。更に、下記式(c)で表される構造のように、フルオレン構造とベンゼン環が直接結合すると、共役構造が更に拡張することになり、一つの共役構造を構成する炭素数は25個となる。
それに対し、下記式(d)で表されるビスフェノールAのような構造を有する化合物である場合には、フルオレン構造のように中心の炭素が芳香環に結合してはいるが、中心の炭素自身は環構造の一部ではなく共役構造をとっていないので、この場合の一つの共役構造を構成する炭素数は6個となる。
【0017】
【化2】

【0018】
なお、直鎖状の化合物の場合には、下記式(e)及び(f)に示す構造である場合ともに一つの共役構造を構成する炭素数は7個と数える。
【0019】
【化3】

【0020】
上記3個以上の原子が連なった構造は、共役系芳香族骨格と結合していればよく、その構造は特に限定されるものではない。3個以上の原子が連なった構造としては、3〜20個の原子が連なったものであることが好ましく、より好ましくは、3〜10個の原子が連なったものであり、更に好ましくは、3〜8個の原子が連なったものである。連なった原子の数が20個を超える場合には、屈折率を低下させるおそれがある。3個未満の場合には、樹脂組成物等の有機媒体への分散性が低くなるおそれがある。
【0021】
上記3個以上の原子が連なった構造の形態としては、例えば、3個以上の炭素原子が連なったアルキレン基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。また、好ましい形態としては、3個以上の原子が連なった構造の末端の原子が酸素原子である形態が挙げられる。例えば、共役系芳香族骨格を有する化合物と3個以上の原子が連なった構造の少なくとも一部を含む化合物とを反応させて本発明の加水分解性ケイ素化合物を形成する場合、水酸基が結合した共役系芳香族骨格を含む化合物と、3個以上の原子が連なった構造の少なくとも一部を含む化合物とを反応させることによって、簡易に共役系芳香族骨格に3個以上の原子が連なった構造が結合した化合物を形成することができる。
上記3個以上の原子が連なった構造は、置換基を有していてもよい。例えば、3個以上の炭素原子が連なったアルキレン基の側鎖として、水酸基、アミノ基、カルボニル基等の極性基が結合した形態であってもよい。水酸基、アミノ基、カルボニル基等の活性水素を有する基を含む構造であることにより、有機媒体への分散性がより高まることとなる。すなわち、分散性を向上させる観点からは、3個以上の原子が連なった構造は、水素基を有するものであることが好ましい。
【0022】
上記3個以上の原子が連なった構造としては、ケイ素原子を含むものであってもよいし、ケイ素原子を含まない形態であってもよい。例えば、上記3個以上の原子が連なった構造と、共役系芳香族骨格とが結合した形態としては、下記式(g−1)〜(g−4);
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アリール基、又は、アラルキル基である。L、L、Lは、2価の有機基を表す。なお、Rは、同一又は異なって、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。式中、R以外の部分が、3個以上の原子が連なった構造を示す。)で表されるケイ素原子を含む構造を3個以上の原子が連なった構造としてもよい。また、上記式(g−1)〜(g−4)で表される構造においてケイ素原子を含まない部分を3個以上の原子が連なった構造としてもよく、3個以上の原子が連なった構造であれば限定されるものではない。
より好ましい形態としては、3個以上の原子が連なった構造によって共役系芳香族骨格とケイ素原子とが繋がっている形態である。すなわち、ケイ素原子を含んでいない3個以上の原子が連なった構造が、共役系芳香族骨格とケイ素原子とを繋げている形態である。
3個以上の原子が連なった構造のより好ましい形態としては後述する。
【0025】
上記加水分解性ケイ素化合物は、下記一般式(1);
(R−L−)Si(R)X (1)
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。Lは、同一又は異なって、3個以上の原子が連なった構造を表す。Rは、1価の基を表す。Xは、同一又は異なって、RO基、水素原子、ハロゲン原子又は水酸基である。Rは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を表す。aは、1〜3の整数であり、bは、0〜2の整数であり、cは、1〜3の整数であり、c=4−a−bである。)で表されるもの(以下、「ケイ素化合物(1)」ともいう。)であることが好ましい。
【0026】
上記一般式(1)では、1個のケイ素原子に対して、共役系芳香族骨格及び3個以上の原子が連なった構造を、2以上有することができるため、有機媒体への分散性をより優れたものとすることができる。これにより、上記ケイ素化合物(1)を用いて形成されたものを透明性に優れたものとすることができる。また、共役系芳香族骨格の数を増加させることができるため、屈折率の向上等を図ることができる。上記観点から、ケイ素化合物(1)は、樹脂添加剤、樹脂組成物、膜形成剤として好ましく用いることができる。分散性並びに屈折率をより優れたものとする観点からは、上記式(1)中のaは、2又は3であることが好ましい。より好ましくは、3である。
また、無機表面改質剤として用いる場合には、aは1であることが好ましい。これによれば、表面改質を行う無機材料に多くのケイ素化合物を結合させることができる。例えば、ケイ素化合物(1)で処理された無機系微粒子を樹脂組成物等に用いる場合、該無機系微粒子の分散性を高めることができる点で有用である。
【0027】
上記加水分解性ケイ素化合物は、下記一般式(2);
R{−L−Si(R)X (2)
(式中、Rは、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。Lは、同一又は異なって、3個以上の原子が連なった構造を表す。Rは、1価の基を表す。Xは、同一又は異なって、RO基、水素原子、ハロゲン原子又は水酸基である。Rは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を表す。bは、0〜2の整数であり、eは、1〜3の整数であり、e=3−bである。dは、1以上の整数である。)で表されるもの(以下、「ケイ素化合物(2)」ともいう。)であることが好ましい。
【0028】
上記一般式(2)では、1個の共役系芳香族骨格に対して、2以上の{−L−Si(R)X}の構造を結合させることができるため、加水分解性ケイ素化合物の架橋性能が向上する。これによれば、分子量の高い縮合物を容易に形成することができるため、例えば、この縮合物を膜形成剤として用いた場合に、膜の靱性をより高めることができ、機械的強度に優れたものとすることができ、厚膜化したとしてもクラックが生じにくく、割れにくい膜とすることができる。上記一般式(2)中のdとしては、特に限定されるものではないが、例えば、加水分解縮合時のゲル化を防ぐ観点からは、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0029】
以下に、本発明の加水分解性ケイ素化合物の好適な形態と、それを生成するための方法について説明する。
本発明の加水分解性ケイ素化合物としては、下記式(h);
【0030】
【化5】

【0031】
(式中、Rは、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。jは、1以上の整数を表す。)で表される反応、下記式(i);
【0032】
【化6】

【0033】
(式中、Rは、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。jは、1以上の整数を表す。)で表される反応、下記式(j);
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、Rは、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。jは、1以上の整数を表す。)で表される反応、下記式(k);
【0036】
【化8】

【0037】
(式中、Rは、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。jは、1以上の整数を表す。)で表される反応により生成されるものであることが好ましい。上記式(h)〜(k)中のR−(OH)としては、下記式;
【0038】
【化9】

【0039】
で表される共役系芳香族骨格と水酸基を有する化合物であることが好ましい。上記式(h)〜(k)で表されるような反応は簡便であり、容易に本発明の加水分解性ケイ素化合物を生成することができる。
特に、3個以上の原子が連なった構造としては、上記式(h)で表されるようなイソシアネート基を有する化合物に由来する構造、又は、上記式(i)で表されるようなグリシジル基を有する化合物に由来する構造であることが好ましい。すなわち、本発明の加水分解性ケイ素化合物としては、以下に示す3個以上の原子が連なった構造を有するものであることがより好ましい。
【0040】
上記3個以上の原子が連なった構造は、下記一般式(3);
【0041】
【化10】

【0042】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基である。Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)、及び/又は、下記一般式(4);
【0043】
【化11】

【0044】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基である。Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)で表されるものであることが好ましい。
靱性等を付与して加水分解性ケイ素化合物を用いた部材の機械的強度を優れたものとする観点からは、上記一般式(3)で表されるウレタン結合を含む構造を有する加水分解性ケイ素化合物が好ましい。耐熱性を向上させる観点からは、一般式(4)で表される構造を有する加水分解性ケイ素化合物が好ましい。
また、上記一般式(3)及び(4)で表される3個以上の原子が連なった構造は、式中の末端の酸素原子が共役系芳香族骨格に結合していることが好ましい形態である。すなわち、上記一般式(3)及び(4)では、末端の−O−が共役系芳香族骨格に結合していることが好ましい。このような構造は、水酸基を有する共役系芳香族骨格を、3個以上の原子が連なった構造の少なくとも一部を有する化合物と反応させることで簡易に形成することができる。
以下、一般式(3)で表される構造を有する化合物をケイ素化合物(3)ともいい、一般式(4)で表される構造を有する化合物をケイ素化合物(4)ともいう。
【0045】
上記ケイ素化合物(3)及び(4)は、以下の方法で製造することができる。
すなわち、本発明は、上記加水分解性ケイ素化合物を製造する方法であって、
該製造方法は、下記式(5);
R−(OH) (5)
(式中、Rは、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。jは、1以上の整数を表す。)で表される化合物と、下記式(6);
【0046】
【化12】

【0047】
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。Xは、同一又は異なって、RO基、水素原子、ハロゲン原子又は水酸基である。Rは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を表す。rは、1〜3の整数である。)で表される原料化合物、及び/又は、下記式(7);
【0048】
【化13】

【0049】
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。Xは、同一又は異なって、RO基、水素原子、ハロゲン原子又は水酸基である。Rは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を表す。rは、1〜3の整数である。)で表される原料化合物とを反応させる工程を含む加水分解性ケイ素化合物の製造方法でもある。これによれば、簡易にケイ素化合物(3)及び(4)を生成することができる。
【0050】
上記式(6)で表される化合物より得られる好ましいケイ素化合物(3)の具体例としては、下記式;
【0051】
【化14】

【0052】
で示される反応により得られるケイ素化合物が好ましい。上記式(7)で表される化合物で得られる好ましいケイ素化合物(4)の具体例としては、下記式;
【0053】
【化15】

【0054】
で示される反応により得られるケイ素化合物が好ましい。すなわち、ビフェニル骨格及び水酸基を有する化合物と、イソシアネート基を有するシラン化合物又はグリシジル基を有するシラン化合物とを反応させて得られるケイ素化合物であることが好ましい形態の一つである。
【0055】
本発明はまた、上記加水分解性ケイ素化合物に由来する縮合単位を含む縮合物(縮合物(A))でもある。上記縮合物(A)においても、上述のケイ素化合物(A)と同様の効果を得ることができる。例えば、樹脂添加剤、膜形成剤、樹脂組成物等に用いられる場合、有機媒体への分散性が高く、且つ共役系芳香族骨格に起因して屈折率が高いものとすることができ、光学部材等として好適に用いることができる。
縮合物である場合には、架橋構造が形成されているため、靱性を付与する効果がより顕著に発揮されることとなり、膜形成剤として特に好適である。縮合物(A)の形態としては、ケイ素化合物(A)同士で加水分解縮合した形態、ケイ素化合物(A)とシリコンアルコキシドとの共加水分解縮合で調製された形態、ケイ素化合物(A)と他の金属アルコキシドとの共加水分解縮合で調製された形態等が挙げられる。縮合速度の観点からは、他の金属アルコキシドとの共加水分解縮合で形成された縮合物が好ましい形態である。また、他の金属アルコキシドのモノマーあるいはオリゴマーと、これより縮合度の高いケイ素化合物(A)を含む縮合物(オリゴマー、ポリマー)を組み合わせることは好適な形態である。
なお、本明細書中で、ケイ素化合物(A)及びその縮合物(A)等において、単に「ケイ素化合物(A)の縮合物(A)」と記載した場合、ケイ素化合物(A)の単独縮合物に限定されず、他の原料(シリコンアルコキシドや他の金属アルコキシド等)との共(加水分解)縮合物も意味する。また、ケイ素化合物(1)〜(4)の各縮合物についても同様である。
【0056】
上記縮合物(A)は、重量平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。1000未満であると、例えば、膜形成剤として用いた場合に、充分な靱性が発揮されないおそれがある。また、1000000を超えると、膜形成時のレベリング性が悪くなるおそれがある。重量平均分子量としてより好ましくは、1500〜500000であり、更に好ましくは、2000〜300000である。
縮合物(A)を生成する場合、架橋性能が高く分子量の制御を容易に行うことができる観点から、上記一般式(2)で表されるケイ素化合物(2)を用いて縮合物を生成することが好ましい。
【0057】
本発明はまた、上記加水分解性ケイ素化合物及び/又は上記加水分解性ケイ素化合物の縮合物を必須とする膜形成剤でもある。これによれば、形成される膜の靱性、耐熱性を優れたものとすることができる。膜形成剤とは、膜を構成する材料となるものであり、例えば、ケイ素化合物(A)単独若しくは縮合物(A)単独で膜を形成してもよいし、ケイ素化合物(A)と縮合物(A)とを併用して膜を形成してもよい。ケイ素化合物(A)や縮合物(A)は無機材料と分子レベルでの親和性が高いため、無機材料と併用したハイブリッド膜の膜形成剤であることが好ましい。
無機材料のみを使用した無機膜であると、収縮によるクラックの発生が生じやすいものであるが、上記ケイ素化合物(A)や縮合物(A)を膜形成剤として用いることによって、靱性に優れたものとなり、割れにくい膜とすることができる。そのため、ハードコート特性等も向上するし、厚膜化も可能となる。しかも、上記ケイ素化合物(A)及び縮合物(A)は屈折率が高いため、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)を単独で使用した場合の膜と近い屈折率を有する膜とすることができる。これにより、反射によるぎらつきや、にじみの少ない光学膜製品を製造することができる。
中でも、上記ケイ素化合物(3)のようなウレタン結合を有するケイ素化合物(A)又はその縮合物(A)を用いる場合には、シリコンアルコキシド等の金属アルコキシド(モノマーや加水分解縮合物)との相溶性により優れるものであるため、強靱な膜となり、上記の効果がいっそう顕著なものとなる。
【0058】
上記膜形成剤は、高屈折率膜を形成するのに特に有用である。高屈折率膜を形成するために、従来ではチタンアルコキシドやジルコニウムアルコキシドモノマーや加水分解性化合物の縮合物を塗布液として塗布し、湿気硬化と加熱により酸化チタンや酸化ジルコニウムの薄膜を形成する試みがされていた。しかしながら、例えば、酸化物化する際等に、収縮によってクラックが発生したり、また、PET等の高分子フィルム上に成膜した場合は、折り曲げると割れてしまう等の課題があった。
これを改善するために、RSi(OR4−nのような有機基を含有するシリコンアルコキシドを併用する技術もある(Rは、芳香族骨格を有しない一価の有機基。Rは加水分解性基である。nは、1〜3の整数である。)。しかしながら、有機基の屈折率が低いために、膜の屈折率を低下させてしまう課題があった。また、Rの代わりに、R(フェニル基)を用いる場合においても、形成される膜の屈折率が低下する課題は充分には解消されなかった。更に、収縮によるクラックの発生を抑制する効果、靱性の付与効果も充分ではなかった。
本発明の加水分解性ケイ素化合物(A)を用いた場合には、共役系芳香族骨格と、3個以上の原子が連なった構造とを有することによって、屈折率の低下を抑制し、且つ収縮によるクラックの発生を抑制する効果、靱性の付与効果に優れるものとすることができる。
【0059】
上記膜形成剤としては、本発明の加水分解性ケイ素化合物(A)であればいずれも好適に使用することができ、その形態については特に限定されるものではない。膜形成剤としてより好ましい形態としては、上記ケイ素化合物(3)及び(4)、並びに、それらの縮合物の形態である。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、併用して用いてもよい。例えば、ケイ素化合物(3)と、ケイ素化合物(4)の縮合物とを併用して用いてもよいし、それぞれの縮合物同士で用いてもよい。
上記ケイ素化合物(3)又はその縮合物と、ケイ素化合物(4)又はその縮合物とを併用することによって、膜の機械的強度(例えば、靱性)や耐熱性を制御することもできる。ケイ素化合物(3)/ケイ素化合物(4)を大きくする(ケイ素化合物(3)の比率を大きくする)場合には、靱性等に優れ、機械的強度に優れるものとなる。また、ケイ素化合物(3)/ケイ素化合物(4)を小さくする(ケイ素化合物(3)の比率を小さくする)場合には、耐熱性に優れるものとなる。
また、本発明の加水分解性ケイ素化合物(ケイ素化合物(A))を他のアルコキシド(他のシリコンアルコキシド、他金属のアルコキシド等)と併用する際には、膜形成剤として、ケイ素化合物(A)がモノマーである場合、縮合物である場合、他のアルコキシドがモノマーである場合、縮合物である場合等が挙げられる。また、上記加水分解性ケイ素化合物を他のアルコキシドとの共加水分解縮合で調製したものを膜形成剤とする形態や、通常、他金属のアルコキシドの方が加水分解縮合速度が高いことを踏まえて、他金属アルコキシドのモノマーあるいはオリゴマーと、これより縮合度の高いケイ素化合物(オリゴマー、ポリマー)を組み合わせることは好適な形態である。
【0060】
本発明は更に、上記加水分解性ケイ素化合物(A)及び/又は上記加水分解性ケイ素化合物(A)に由来する縮合単位を必須的に含む縮合物を必須とする樹脂添加剤でもある。このような樹脂添加剤は、有機媒体への分散性が高いため、樹脂中で均一に分散し、高品質の樹脂組成物とすることができる。また、添加量が多い場合にも、凝集等が生じず、高い透明性を有する樹脂組成物とすることができる。更には、共役系芳香族骨格を有するため、屈折率を損なうことがなく、屈折率の制御や離型性の向上を図ることができる。更に、本発明の樹脂添加剤はケイ素化合物であるため、シリコーン樹脂を用いる場合に特にその効果が顕著である。また、シロキサン骨格(特にポリシロキサン骨格)に基づく機械的特性、耐熱性の向上を図ることができる。
樹脂添加剤として用いる場合には、上記ケイ素化合物(1)又はその縮合物であることが好ましい。これによれば、共役系芳香族骨格を一つ以上有する形態とすることができるため、分散性をより優れたものとすることができる。上記樹脂添加剤を分散剤として用いる場合には、上記ケイ素化合物(3)又はその縮合物を用いることが好ましい。ウレタン結合を有する構造が含まれることによって、有機媒体中で凝集による相分離や沈殿が生じない、分散安定性に優れたものとなる。
樹脂添加剤として用いる場合、その樹脂としては、後述する本発明の樹脂組成物に用いられる樹脂成分を用いる場合にも好適に用いることができる。特に樹脂成分が芳香族化合物(C)を含む形態であると、分散性がより向上することとなるためより好ましい。
【0061】
本発明は更に、上記加水分解性ケイ素化合物(ケイ素化合物(A))及び/又は上記加水分解性ケイ素化合物の縮合物(縮合物(A))と、樹脂成分とを必須とする樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(A)」ともいう。)でもある。これによれば、樹脂組成物(A)は高い屈折率及び透明性を有するものとなり、樹脂組成物(A)によって形成された成型物が、透明性、屈折率等の光学特性や、耐熱性、靱性等に優れるものとなる。
【0062】
上記樹脂組成物(A)におけるケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の含有量は、樹脂組成物(A)100質量%中、0.1〜99質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、得られる樹脂組成物(A)の屈折率や、耐熱性、靱性が充分には高くならないおそれがある。99質量%を超えると、硬化物が硬もろくなるおそれがある。ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の含有量としては、1質量%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、10質量%以上であり、特に好ましくは、30質量%以上である。
【0063】
上記樹脂組成物(A)における樹脂成分の含有量としては、樹脂組成物(A)100質量%中、99.9〜1質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、得られる硬化物が硬もろくなるおそれがあり、99.9質量%を超えると、屈折率が充分に高くならないおそれがある。樹脂成分の含有量としては、99質量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは、90質量%以下であり、特に好ましくは、70質量%以下である。また、樹脂成分の含有量の下限としては、5質量%以上であることが好ましい。
【0064】
上記樹脂成分は、7個以上の炭素原子から構成される共役構造を有する芳香族化合物(C)を必須とするものであることが好ましい。これによれば、高い屈折率を有する樹脂組成物とすることができ、高い屈折率であることが好適な、レンズや、LED用封止材料、有機ELに使用される光取り出し層等の光学部材として特に有用である。
また、ケイ素化合物(A)が共役系芳香族骨格を有するものであるため、ケイ素化合物(A)の分散性が更に向上し、樹脂組成物(A)の透明性を向上させることができ、樹脂組成物(A)の均一性が向上するため、より高品質なものとなる。これは、芳香族化合物(C)が有する共役系芳香族骨格と、ケイ素化合物(A)が有する共役系芳香族骨格とがπ−πスタッキング構造を取りやすくなるためと考えられる。
【0065】
上記芳香族化合物(C)は、上記式(a−1)〜(a−7)で示される共役系芳香族骨格を含むものであることが好ましい。高屈折率化を行う場合には、共役系芳香族骨格は、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、カルバゾール骨格、スチルベン骨格、ナフタレン環、アントラセン環及びジベンゾチオフェン環からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造を必須とするものであることが好ましい。更に好ましくは、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、及び、ナフタレン環からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造を必須とするものである。上記共役系芳香族化合物としては、上述した骨格や環構造を有するものであればいずれも好適に用いることができる。また、上記式(a−8)で表されるように、フルオレン骨格にビスフェノールが結合した構造(25個の炭素原子によって構成された共役構造)がより好ましい形態として挙げられる。
【0066】
上記樹脂組成物(A)は、芳香族化合物(C)が(メタ)アクリレート系化合物であり、熱及び/又は光硬化性であることが好ましい。(メタ)アクリレート系化合物を用いることによって、上記樹脂組成物(A)の硬化速度を優れたものとすることができ、生産性を向上させることができる。また、熱及び/又は光硬化性であることによって、樹脂組成物(A)の硬化を速く、かつ簡易に行うことができる。
【0067】
上記(メタ)アクリレート系化合物は、フルオレン骨格を必須とするものであることが特に好ましい。共役構造がフルオレン骨格を含む化合物を用いると、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を屈折率が1.64以上、又は、それ以上のものとすることができる。また、上記共役構造がフルオレン骨格を含む化合物は、屈折率が高いだけでなく、耐熱性、可視光領域で高い透明性を有する等の種々の優れた性質を示す。これにより、高屈折率レンズ等の光学用途をはじめ、種々の用途に好適に用いることができる。上記樹脂組成物(A)がフルオレン骨格を必須とする(メタ)アクリレート系化合物を含有する場合、樹脂組成物(A)中のフルオレン骨格を必須とする(メタ)アクリレート系化合物の含有量としては、樹脂成分100質量%に対し、20質量%(重量%)以上であることが好ましい。より好ましくは、25質量%以上であり、更に好ましくは、30質量%以上である。
【0068】
上記フルオレン骨格を必須とする(メタ)アクリレート系化合物としては、下記一般式(8);
【0069】
【化16】

【0070】
(式中、R10は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表し、R11は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はハロゲン原子を表す。qは、同一又は異なって、0〜10の整数である。)で表される化合物が好適である。より好ましくは、下記化学式(9);
【0071】
【化17】

【0072】
で表されるオグソールEA−0200(大阪ガスケミカル社製、フルオレンアクリレート樹脂)である。オグソールEA−0200のようなオグソールアクリレートは、ビスアリールフルオレンを基本構造とし、高屈折率、低硬化収縮、高透明性を有する点で有利である。
【0073】
上記(メタ)アクリレート系化合物は、ビフェニル骨格を必須とするものであることも好ましい。共役構造がビフェニル骨格構造を含む化合物は、高い屈折率を有し、耐熱性に優れ、可視光領域での透明性が高いだけでなく、低コストで利用できるという利点がある。
【0074】
上記樹脂組成物(A)がビフェニル骨格を必須とする(メタ)アクリレート系化合物を含有する場合、樹脂組成物(A)中のビフェニル骨格を必須とする(メタ)アクリレート系化合物の含有量としては、樹脂成分100質量%に対し、20質量%(重量%)以上であることが好ましい。より好ましくは、25質量%以上であり、更に好ましくは、30質量%以上である。また、上記共役構造を有する(メタ)アクリレートは、1分子中にアクリル基を2個以上有することが好ましい。2個以上有することにより、硬化物の機械強度を向上できる利点がある。より好ましくは、2〜3個であり、更に好ましくは、2個である。
【0075】
上記ビフェニル化合物としては、下記一般式(10);
【0076】
【化18】

【0077】
(式中、R12は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。sは、同一又は異なって、0〜10の整数である。R’は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。)で表される化合物が好適である。より好ましくは、下記化学式(11);
【0078】
【化19】

【0079】
で表されるものである。
【0080】
上記樹脂組成物(A)は、芳香族化合物(C)がエポキシ化合物であり、熱及び/又は光硬化性であることが好ましい。エポキシ系化合物を用いることによって、上記樹脂組成物(A)の硬化速度を優れたものとすることができ、生産性を向上させることができる。また、熱及び/又は光硬化性であることによって、樹脂組成物(A)の硬化を速く、かつ簡易に行うことができる。
【0081】
上記エポキシ系化合物は、フルオレン骨格を必須とするものであることが特に好ましい。フルオレン骨格を必須とするエポキシ系化合物を用いると、上記樹脂組成物(A)を硬化させて得られる硬化物を屈折率が1.64以上、又は、それ以上のものとすることができる。また、上記フルオレン骨格を必須とするエポキシ系化合物は、屈折率が高いだけでなく、耐熱性、可視光領域で高い透明性を有する等の種々の優れた性質を示し、また、樹脂組成物(A)中に均一に分散させることができることから、高屈折率レンズ等の光学用途をはじめ、種々の用途に用いることができる。上記樹脂組成物(A)がフルオレン骨格を必須とするエポキシ系化合物を含有する場合、樹脂組成物(A)中のフルオレン骨格を必須とするエポキシ系化合物の含有量としては、樹脂成分100質量%に対し、20質量%(重量%)以上であることが好ましい。より好ましくは、25質量%以上であり、更に好ましくは、30質量%以上である。
【0082】
上記フルオレン化合物としては、下記一般式(12−1)及び(12−2);
【0083】
【化20】

【0084】
(式中、R12は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表し、R13は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はハロゲン原子を表す。uは、同一又は異なって、1〜5の整数であり、tは、同一又は異なって、0〜10の整数である。)で表される化合物が好適である。具体的には、下記化学式(13);
【0085】
【化21】

【0086】
で表されるオグソールEG−210(大阪瓦欺社製、フルオレンエポキシ樹脂)が好適である。
【0087】
上記共役系芳香族骨格は、ビフェニル骨格を必須とするエポキシ化合物であることが好ましい。ビフェニル骨格を必須とするエポキシ系化合物を用いると、高い屈折率を有し、耐熱性に優れ、可視光領域での透明性が高いだけでなく、低コストで利用できるという利点がある。上記ビフェニル化合物としては、下記一般式(14);
【0088】
【化22】

【0089】
(式中、R14は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。vは、同一又は異なって、0〜10の整数である。R’は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基である。)で表される化合物が好適である。具体的には、下記化学式(15);
【0090】
【化23】

【0091】
で表されるJER YX4000(ジャパンエポキシレジン社製、ビフェニルエポキシ樹脂)が、低コスト化を行う場合に好適である。また、ビフェニル骨格を必須とするエポキシ系化合物としては、ビスヒドロキシメチルビフェニル等を縮合反応させて得られる多価フェノール類を、更にエピハロヒドリンと縮合反応することにより得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等も好ましい化合物として例示される。
【0092】
上記芳香族化合物(C)は、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、水酸基を2個以上有する炭素数が7個以上の共役構造を有する芳香族化合物と、カルボン酸(無水物)との縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0093】
上記樹脂組成物(A)は、上記ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)と、樹脂成分とを必須として含むものであれば特に限定されないが、更に、重合開始剤を含むことが好適である。樹脂組成物(A)を構成する樹脂成分がエポキシ化合物等のカチオン重合性の化合物の場合には、カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。カチオン重合開始剤は、硬化性樹脂組成物にカチオン重合を開始させることができるものであれば、特に限定されないが、光潜在性カチオン発生剤、熱潜在性カチオン発生剤が好適である。
熱潜在性カチオン発生剤とは、熱潜在性硬化触媒、熱潜在性硬化剤とも呼ばれ、樹脂組成物において硬化温度になれば、硬化剤としての実質的な機能を発揮するものである。熱潜在性カチオン発生剤は後述する硬化剤と異なり、硬化性樹脂組成物に含まれていても、硬化性樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことがなく、また、熱潜在性カチオン発生剤の作用として、優れた硬化反応促進効果を発揮することができるため、ハンドリング性に優れた一液性樹脂組成物(一液性光学材料)を提供することができる。特に、硬化性樹脂組成物を光学材料として用いる場合には、熱潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0094】
上記熱潜在性カチオン発生剤を使用すると、得られる樹脂組成物(A)の耐湿性が劇的に改善され、過酷な使用環境においても硬化性樹脂組成物が有する優れた光学特性を保持し、種々の用途に好適に用いることができるものとなる。通常、硬化性樹脂組成物やその硬化物に屈折率が高い水分が含まれると、濁りの原因になるが、熱潜在性カチオン発生剤を使用すると、得られる硬化性樹脂組成物が優れた耐湿性を発揮できることから、このような濁りが抑制され、レンズ等の光学用途に好適に用いることができるものとなる。特に車載用カメラや宅配業者向けバーコード読取機等の用途では、長時間の紫外線照射や夏季の高温暴露により、レンズの黄変や強度劣化が懸念される。これらの現象は、空気や水分と紫外線照射又は熱線暴露との相乗効果により酸素ラジカルが発生することが原因と考えられるが、耐湿性が向上することで、硬化性樹脂組成物中への吸湿が抑制され、また、紫外線照射又は熱線暴露との相乗効果による酸素ラジカル発生も抑えられるため、硬化性樹脂組成物の黄変や強度低下を引き起こすことなく長時間にわたり優れた耐熱性を発揮することができる。
【0095】
上記熱潜在性カチオン発生剤としては、下記平均組成式(16)
(R15161718Z)+w1(AYn−w1 (16)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R15、R16、R17及びR18は、同一又は異なって、有機基を表す。g、h、i及びkは、0又は正の数であり、g、h、i及びkの合計はZの価数に等しい。カチオン(R15161718Z)+w1はオニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Yは、ハロゲン元素を表す。wは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表されるものであることが好ましい。
【0096】
上記熱潜在性カチオン発生剤としては、上述の構造を有するものであればよいが、これらは、一般に、硬化温度でカチオンが発生することになる。硬化温度としては、25〜250℃であることが好ましい。より好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜180℃である。
また硬化条件としては硬化温度を段階的に変化させてもよい。例えば、硬化性樹脂組成物から硬化物を製造する上での生産性を向上する目的で型内に所定の温度・時間で保持した後、型から取り出して空気又は不活性ガス雰囲気内に静置して熱処理することも可能である。この場合の硬化温度としては型内保持温度を25℃〜250℃、より好ましくは60℃〜200℃、更に好ましくは80〜180℃であり、保持時間は10秒〜5分、より好ましくは30秒〜5分である。
【0097】
上記一般式(16)の陰イオン(AYn−w1の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4−)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6−)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6−)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6−)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6−)等が挙げられる。
更に一般式AYn(OH)で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO)、フルオロスルホン酸イオン(FSO)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0098】
上記熱潜在性カチオン発生剤の具体的な商品としては、
ジアゾニウム塩タイプ:AMERICUREシリーズ(アメリカン・キャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)
ヨードニウム塩タイプ:UVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、Photoinitiator 2074(ローヌプーラン社製)、WPIシリーズ(和光純薬社製)
スルホニウム塩タイプ:CYRACUREシリーズ(ユニオン・カーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サトーマー社製)、オプトマーSPシリーズ・オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)
等が挙げられる。これらの中でも、サンエイドSIシリーズが好ましく、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(三新化学工業社製)等を好適に用いることができる。
【0099】
上記光潜在性カチオン発生剤(光潜在性硬化触媒又は光カチオン重合開始剤とも言う)としては、例えば米国特許第3379653号に記載されたような金属フルオロホウ素錯塩及び三フッ素化ホウ素錯化合物;米国特許第3586616号に記載されているようなビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メタン金属塩;米国特許第3708296号に記載されているようなアリールジアゾニウム化合物;米国特許第4058400号に記載されているようなVIa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4069055号に記載されているようなVa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4068091号に記載されているようなIIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート;米国特許第4139655号に記載されているようなチオピリリウム塩;米国特許第4161478号に記載されているようなMF陰イオン(ここでMは、リン、アンチモン及びヒ素から選択される)の形のVIb元素;米国特許第4231951号に記載されているようなアリールスルホニウム塩;米国特許第4256828号に記載されているような芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩;W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス(Journal of Polymer Science)、ポリマーケミストリー(Polymer Chemistry)版」、第22巻、1789項(1984年)に記載されているようなビス[4−(ジフェリルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば、リン酸塩、ヒ酸塩、アンチモン酸塩等);鉄化合物の混合配位子金属塩;シラノール−アルミニウム錯体;等が挙げられる。これらの化合物は、紫外線重合開始剤ともいう。これらの紫外線重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0100】
上記紫外線重合開始剤のうち、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族ヨードニウム錯塩又は芳香族スルホニウム錯塩、II族、V族及びVI族元素の芳香族オニウム塩が好適である。これらのいくつかは、例えばUVI−6992(ダウ・ケミカル社製)、FX−512(3M社製)、UVR−6990、UVR−6974(ユニオン・カーバイド社製)、KI−85(デグッサ社製)、SP−150、SP−170(旭電化社製)等の市販品を入手することができる。
【0101】
上記樹脂組成物(A)を構成する樹脂成分がラジカル重合性の化合物の場合には、ラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましい。
上記ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生して上記樹脂組成物(A)の重合を開始させる化合物であれば特に限定されない。具体的には、2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2′アゾビス−2−メチルバレロニトリル、1,1′−アゾビス−1−シクロヘプタンニトリル、1,1′−アゾビス−1−フェニルエタン、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ系開始剤類;過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ラウロイル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物系開始剤類;等が挙げられる。これらのうち、過酸化物系開始剤類が特に好ましい。具体的には、t−ブチルパーオキシベンゾエート等を用いることが好ましい。
【0102】
上記ラジカル重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤であることも好ましい形態である。光ラジカル重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類。これらの中でも、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類が好ましい。より好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オンである。
【0103】
上記樹脂組成物(A)に含まれる樹脂成分としては、上述した7個以上の炭素原子から構成される共役構造を有する芳香族化合物(C)以外にも他の樹脂成分を含んでいてもよい。また、樹脂成分以外の有機成分を含んでいてもよい。以下に、他の樹脂成分や、樹脂成分以外の有機成分について述べる。このような「他の樹脂成分」、「樹脂成分以外の有機成分」をまとめて、その他の有機成分として説明する。その他の有機成分の含有量は、樹脂組成物(A)100質量%に対して0〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、0〜30質量%である。
以下、その他の有機成分について説明する。
【0104】
上記他の樹脂成分としては、例えば、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂や、多価フェノール化合物、重合性不飽和結合を有する化合物、及び、後述するエポキシ基を少なくとも1つ有する化合物、後述する(メタ)アクリル基を少なくとも1つ有する化合物等の硬化性化合物が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンからなるABS樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリエステル、ポリイミド等を挙げることができる。
【0105】
上記他の樹脂成分としては、硬化速度の観点からエポキシ基含有化合物、又は、(メタ)アクリル基含有化合物、すなわち、上述したエポキシ系化合物及び(メタ)アクリル系化合物以外のエポキシ基又は(メタ)アクリル基を少なくとも一つ有する化合物が好ましい。エポキシ基又は(メタ)アクリル基を少なくとも一つ有することにより、硬化速度を充分なものとする効果とともに、従来の熱硬化性プラスチック材料と同等の作業性を有しながら、無機ガラスに匹敵する耐熱性を示し、成形、加工性に優れるといった優れた特性を発揮することができる。以下、本発明の樹脂成分として好適に用いることができるエポキシ基を少なくとも一つ有する化合物について説明する。
【0106】
上記エポキシ基を少なくとも1つ有する化合物としては、以下のような化合物等が好適である。ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、及び、これらを上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒド、アセトアルテヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジシクロペンタジエン、テルペン、クマリン、パラキシリレングリコールジメチルエーテル、ジクロロパラキシリレン等を縮合反応させて得られる多価フェノール類を更にエピハロヒドリンと縮合反応することにより得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂、及び、更に上記ビスフェノール類やテトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン等を付加反応させることにより得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂の高分子量体;上記ビスフェノール類やテトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等の芳香族骨格を水素化した脂環式グリコール類やエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PEG600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、PPG、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ化合物);(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル3′,4′−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等のエポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ樹脂(エポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ化合物);テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸、メラミン、ベンゾグアナミンとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる室温で固形の3級アミン含有グリシジルエーテル型エポキシ樹脂。中でも、上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂やエポキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂が光照射時の外観劣化抑制を目的とした場合はより好適に用いられる。
【0107】
上記エポキシ基を少なくとも1つ有する化合物としては、エポキシ(メタ)アクリレートも好適に用いることができる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとは、1官能以上のエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートであり、エポキシドとしては、例えば、(メチル)エピクロルヒドリンと、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールS、水添ビスフェノールF、それらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド変性物等から合成されるエピクロルヒドリン変性水添ビスフェノール型エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等の脂環式エポキシド;(メチル)エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、それらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド変性物等から合成されるエピクロルヒドリン変性ビスフェノール型のエポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンと各種フェノール類と反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物;フェニルグリシジルエーテル等の芳香族エポキシド;(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)ブチレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類の(ポリ)グリシジルエーテル;グリコール類のアルキレンオキシド変性物の(ポリ)グリシジルエーテル;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールの(ポリ)グリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキシド変性物の(ポリ)グリシジルエーテル等のアルキレン型エポキシド;アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸のグリシジルエステル、多価アルコールと多価カルボン酸とのポリエステルポリオールのグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体;高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化ポリブタジエン等の脂肪族エポキシ樹脂等が好適である。
【0108】
上記エポキシ基含有化合物としては、屈折率を向上させるためには、芳香族環を有するものであることが好ましい。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノールF)、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ樹脂等が好適であり、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、JER828EL(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールAエポキシ樹脂)が好適である。
【0109】
他の有機成分としては、他の(メタ)アクリル系化合物であってもよい。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートボロニル、(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0110】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−プロピオネートのジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、2,2′−ジ(ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、2,2′−ジ(ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールのジ(メタ)アクリレート、2,2′−ジ(グリシジルオキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリル酸付加物等の2官能(メタ)アクリレート、さらに、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメリット酸のトリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレートトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0111】
上記(メタ)アクリレート系化合物としては、1つ以上のアリール基を有する(メタ)アクリレートであってもよい。1つ以上のアリール基を有する(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイロキシエチルフタレート、クレゾール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等、及びこれらのエチレンオキシド付加(EO変性)物、プロピレンオキシド付加(PO変性)物、エチルシクロヘキサン付加(ECH変性)物、などが挙げられる。
【0112】
上記(メタ)アクリレート系化合物としては、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーであってもよい。芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、ダイセルサイテック社製の商品名「Ebecry1210」、「Ebecry220」、野村事務所社製の商品名「Uvithanc782」、「Uvithanc783」、BASF社製の商品名「LaromerLR8983」、及び、これらをトリプロピレングリコールジアクリレート等の(メタ)アクリレートで希釈したもの(ダイセルサイテック社製の商品名「Ebecry1205」等)が挙げられる。
【0113】
上記その他の有機成分としては、溶媒を含んでいてもよい。有機成分に含まれる溶媒量としては、有機成分100質量%に対して、20質量%以下であることが好ましい。20質量%を超えると、有機樹脂成分(樹脂である有機成分)を含む場合に、成形体に気泡が生じるおそれがある。溶媒量としてより好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下であり、特に好ましくは、3質量%以下であり、最も好ましくは、1質量%以下である。
【0114】
上記樹脂組成物(A)は、上記加水分解性ケイ素化合物及び樹脂成分の他に、上述した重合開始剤(硬化触媒)、離型剤、硬化剤、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合をもたない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、重合禁止剤、無機充填剤や有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等を含有してもよい。
【0115】
本発明は更に、上記樹脂組成物(A)を成型及び/又は硬化してなる硬化物でもある。上記ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)を含む樹脂組成物(A)を硬化させた硬化物は、透明性が向上したものとなり、更に、芳香族骨格を有することに起因して、高い屈折率を有するものとなる。また、耐熱性及び靱性に優れたものとなり、種々の用途に好適に用いることができる。
靱性に優れることから加工性に優れ、微細な加工を行うことができる。更に、高い屈折率と透明性を有することから、光学部材等に特に好適に用いることができる。このような硬化物は、光学部材として、特に高屈折率、低アッベ数のレンズ等として好適に使用することができる。
硬化物の濁度(ヘイズ)としては、20%以下であることが好ましい。硬化物の濁度としてより好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下であり、特に好ましくは1%以下である。また、硬化物の透明性としては、可視光領域(波長が360〜780nmの領域)の光透過率が75%以上であることが好ましい。硬化物の光線透過率はより好ましくは80%以上であり、更に好ましくは85%以上であり、特に好ましくは、87%以上である。
上記硬化物において、硬化物の屈折率・アッベ数は適用される光学系の光学設計に応じて幅広い数値が求められる。なお、硬化物の光線透過率はJIS K7361−1に、濁度はJIS K7136に、屈折率・アッベ数はJIS K7142にそれぞれ準拠した方法で測定することができる。
上記硬化物のPCT吸湿率は硬化条件により変化するが、硬化条件を最適化することにより、2%以下にすることが好ましく、1%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.2%以下である。
【0116】
上記硬化物は、波長589nmにおける屈折率が1.50以上であることが好ましい。上記硬化物を高屈折率のものとすることによって、様々な用途に好適に用いることができる。特に、光学用途に用いる場合に有用なものとなる。硬化物の屈折率としてより好ましくは、1.55以上であり、更に好ましくは、1.60以上であり、特に好ましくは、1.65以上である。
【0117】
上記硬化物は、耐熱性が高いもの、すなわち、高温下でも、クラック発生等の外観の変化がなく、360〜780nmの波長範囲における光線透過率・濁度の変化率が低いものであることが好ましい。具体的には、硬化物を260℃に加熱した場合に、クラック発生等の外観の変化が全くなく、360〜780nmの波長範囲における、260℃加熱前に対する加熱後の光線透過率・濁度の変化率が20%以下であることが好ましい。より好ましくは全光線透過率・濁度の変化率が15%以下であり、更に好ましくは10%以下である。また、85℃、湿度85%下で500時間放置後の360〜780nmの波長範囲における光線透過率、濁度の変化が20%以下であることが好ましい。より好ましくは、15%以下である。
特に車載用カメラや宅配業者向けバーコード読み取り機などの用途では、長時間の紫外線照射や夏季の高温暴露により黄変や強度劣化が懸念されるが、これらの現象は空気や水分と紫外線照射又は熱線暴露との相乗効果により酸素ラジカルが発生することが原因と考えられる。耐湿性が向上することで、樹脂組成物(A)中への吸湿が抑制され、紫外線照射又は熱線暴露との相乗効果による酸素ラジカル発生も抑えられるため、樹脂組成物(A)の黄変や強度低下を引き起こすことなく長時間にわたり優れた耐熱性を発揮することができる。
【0118】
本発明はまた、上記樹脂組成物(A)を硬化させてなる硬化物を必須とする光学用部材でもある。上記樹脂組成物(A)は、上述のように優れた透明性・光学特性を発揮し、該樹脂組成物(A)を硬化させた硬化物もまた、同様の特性を発揮することから、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途等の種々の用途に好適に用いることができる。具体的には、レンズ、LED用封止剤等の高い屈折率が要求される光学用部材としてより好適に用いることができる。
本発明の光学用部材としては、上記樹脂組成物(A)を熱や光によって硬化させて得られる硬化物を含んで構成されるものであることが好ましい。なお、光学用部材の用途に応じて適宜樹脂組成物(A)にその他の成分が含まれていてもよい。具体的には、UV吸収剤、IRカット剤、反応性希釈剤、顔料、洗料、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、嫌気重合開始剤、光安定剤、重合禁止剤、消泡剤等が好適である。
【0119】
上記光学用部材の形態としては、波長400nmにおける透過率が60%以上であることが好ましい。透過率がこのような範囲であることにより、高い透明性を有する光学特性に優れた光学材料となる。光学材料の透過率としてより好ましくは、80%以上であり、更に好ましくは、85%以上である。波長400nmにおける透過率が60%未満であると、レンズ用途としては透過率が不充分となる。
【0120】
上記光学用部材の用途として具体的には、車載カメラ、PC用カメラ、デジタルカメラ、携帯電話、デジタルビデオ、監視カメラ、PDA、PC内蔵カメラ等の撮像用レンズとして用いられることが好ましい。このように、本発明の光学用部材を用いてなるレンズもまた、本発明の好ましい形態の一つである。また、眼鏡レンズ、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、光ビーム集光レンズや光拡散用レンズ、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波管、合波器、分波器、断路器、光分割器、光ファイバー接着剤等のオプトデバイス用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルムの高屈折率層、防曇フィルム等の表示デバイス用途等の光学部材としても好適に用いることができる。
【0121】
以下に、上記ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)と樹脂成分とを含んでなる樹脂組成物(A)の好適な製造方法について説明する。
上記樹脂組成物(A)は、本発明の作用効果を発揮できる限り、製造方法は特に限定されないが、例えば、上記樹脂組成物(A)を構成する成分を均一混合することが困難な場合には、(1)樹脂組成物(A)を構成するケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)と、樹脂成分と、溶媒とを含む混合物を調製する工程と、(2)上記混合物から溶媒を脱気する脱気工程とを含むものであることが好ましい。
【0122】
上記(1)の調製工程としては、上記混合物が調製できれば特に限定されず、樹脂組成物(A)を構成する成分が均一に混合されていればよく、任意の添加(配合)順序、混合方法を用いることができる。更に、上記混合物にはその他の成分が含まれていてもよい。
調製工程としては、減圧度を調整して、100℃以下で調製を行うことが好ましい。調製工程において、樹脂成分と溶媒との割合としては、(ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)+樹脂成分)/(ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)+樹脂成分+溶媒)=10〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは、15〜60質量%である。上記溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、クロロホルム、トルエン、キシレン等が好ましい。より好ましくは、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエンである。
【0123】
上記(2)の脱気工程としては、高沸点成分共存下で行われるものであることが好ましい。高沸点成分共存下で脱気することにより、混合物の増粘を効果的に抑えることができ、連続生産が可能となる。なお、「高沸点成分共存下」とは、脱気工程において、高沸点成分が共存する期間があればよく、該共存期間は、脱気工程の全期間であっても一部の期間であってもよいが、増粘防止のため、全期間であることが好ましい。
上記高沸点成分の添加方法としては、本発明の作用効果を発揮する限り特に限定されず、一括で添加してもよく、滴下して添加してもよく、分割添加等であってもよい。中でも、一括添加が好適である。また、高沸点成分の添加時期(又は添加開始時期)としては特に限定されず、例えば、(1)調製工程の終了後であって、脱気工程の開始前であってもよく、(2)調製工程の中であってもよく、(3)脱気工程の中であってもよい。これらの中でも、増粘防止のため、(1)であることが好ましい。このように、樹脂組成物(A)を構成する成分を混合した後の溶媒を脱気する前に高沸点成分を添加する製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0124】
上記高沸点成分の添加量としては、樹脂成分、ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)、脱気前の溶媒及び高沸点成分、並びに、必要に応じてその他の成分の混合物100質量%に対し、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%であり、更に好ましくは、0.5〜3質量%である。
なお、高沸点成分は、脱気工程終了時に組成物中に残存することとなる。その割合としては、脱気工程終了時の混合物100質量%中、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5質量%であり、更に好ましくは、0.5〜3質量%である。
上記高沸点成分の残存量は、ガスクロマトグラフィー(GC)で測定することができる。測定条件としては、下記のとおりである。
(GCの測定条件)
カラム:GLサイエンス社製「DB−17」
キャリアーガス:ヘリウム
流速:1.44mL/分
【0125】
上記脱気工程においては、溶媒を脱気できる条件であれば特に限定されないが、樹脂成分の分解や硬化反応、ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の凝集が過度に生じることを抑制する条件であることが好ましい。具体的には、脱気温度は200℃以下であることが好ましい。より好ましくは、100℃以下であり、更に好ましくは、80℃以下である。脱気時間としては、72時間以下であることが好ましい。より好ましくは、24時間以下であり、更に好ましくは、2時間以下である。脱気工程における圧力としては、常圧であってもよいが、200torr以下であることが好ましく、100torr以下であることがより好ましい。
上記脱気工程において、脱気工程終了とは、その時点の混合物100質量%に対して、溶媒の含有量が5質量%以下となる場合である。脱気工程終了時の溶媒の含有量としてより好ましくは、3質量%以下であり、更に好ましくは、1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0126】
上記高沸点成分としては、2−エチル−1−ヘキサノール、ドデカノール、ブタノール等の沸点が100℃以上のアルコール等が好ましい。より好ましくは、沸点が120℃以上のアルコール(具体的には、2−エチル−1−ヘキサノール、ドデカノール)であり、更に好ましくは、沸点が150℃以上のアルコールである。このように、高沸点成分がアルコールである組成物が好ましい。沸点が120℃以上のアルコールとしては、上記の中でも2−エチル−1−ヘキサノール、ドデカノールがより好ましく、2−エチル−1−ヘキサノールが更に好ましい。なお、沸点が100℃未満のアルコールでは、混合物の増粘が充分には防げられないおそれがあることから、沸点が100℃以上のアルコールであることが好ましい。上記高沸点成分は、沸点が100℃以上のアルコールである樹脂組成物(A)の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。なお、沸点120℃以上のアルコールの中でも、沸点150℃以上のアルコールがより好ましく、沸点190℃以上のアルコールが更に好ましい。
【0127】
上記樹脂組成物(A)としては、上述の方法で製造されることが好適である。すなわち、上記樹脂組成物(A)は、ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)と、樹脂成分と、溶媒とを含む混合物を調製する工程と、該混合物から溶媒を脱気する脱気工程とを含み、該脱気工程が、高沸点成分共存下で行われる樹脂組成物(A)の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0128】
上記樹脂組成物(A)にケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)を配合する方法としては、外部添加法、内部析出法を用いることができる。上記樹脂組成物(A)を光学用途に用いる際には、上記ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)を内部析出法により生成した場合、用いた触媒による樹脂組成物(A)の安定性の低下、上記ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の構造・組成の制御が困難、樹脂成分との反応等による硬化前の変質、残存触媒、除去し難い水の残留等が生じるおそれがある。したがって、光学用部材に用いる場合は外部添加法が好ましい。上記ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の外部添加法、具体的には、ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の樹脂組成物(A)への添加形態、分散体について説明する。上記ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の形態としては、粉末状又は液状の媒体に溶解した形態で、樹脂成分と混合することが好ましい。すなわち、ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)が媒体に溶解した溶液の形態であることが好ましい。
【0129】
上記媒体としては、溶媒、可塑剤、モノマー、液状樹脂等を例示することができる。溶媒としては、水、有機溶媒、鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等が好適に使用できるが、樹脂成分として使用するカチオン重合性化合物、及び/又は、ラジカル重合性化合物が簡易に溶解する溶媒が好ましい。
上記溶媒と、ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)とを含む溶液としては、例えば、溶媒分散体の形態が挙げられる。溶媒分散体におけるケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の含有量については、特に限定はないが、好ましくは溶媒分散体全体の10〜70重量%、さらに好ましくは20〜50重量%であり、溶媒分散体は、この程度の含有量において取扱いやすい。溶媒分散体における溶媒の含有量については、特に限定はないが、好ましくは溶媒分散体全体の90〜30重量%、さらに好ましくは80〜50重量%である。
【0130】
上記溶媒としては、アルコール類、ケトン類、脂肪族及び芳香族のカルボン酸エステル類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族及び芳香族の炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類のほか、鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油等を挙げることができる。これらの中でも、カチオン重合性化合物が簡易に溶解する溶媒が好ましく、具体的には、ケトン類、脂肪族及び芳香族のカルボン酸エステル類、エーテル類、脂肪族及び芳香族の炭化水素類が好ましい。
上記のように調製された樹脂組成物(A)に、樹脂成分として硬化性樹脂を用いている場合は、上記重合開始剤あるいは後述する硬化剤を添加混合することにより、硬化性樹脂組成物を調製することができる。重合開始剤、硬化剤は、樹脂成分の種類、硬化機構に準じて選択すればよい。
【0131】
上記樹脂組成物(A)の硬化方法としては、熱硬化や光硬化等のラジカル重合、熱硬化や光硬化等のカチオン重合のように種々の方法を好適に用いることができるが、樹脂組成物(A)に重合開始剤や必要に応じてその他の材料を混合して1液とし、硬化物の形状に合わせた金型に該混合液を塗出して硬化させ、その後硬化物を金型から取り出す方法が好適に用いられる。このような方法においては、硬化触媒等を混合した樹脂組成物(A)の粘度は、取り扱いが簡易であることから、著しく上昇しない方が好ましい。熱硬化で硬化を行う場合、上記硬化温度としては、硬化させる樹脂組成物(A)等に応じて適宜設定することができるが、80〜200℃であることが好ましい。より好ましくは、100〜180℃であり、更に好ましくは、110〜150℃である。
【0132】
上記硬化方法としては、また、上記樹脂組成物(A)を5分以内で硬化させて硬化物を製造する方法であることが好ましい。具体的には、上記樹脂組成物(A)に必要に応じてその他の材料を混合して1液とし、硬化物の形状に合わせた金型に該混合液を塗出して、5分以内で硬化させることが好ましい。金型を用いた硬化を短時間で行うことにより、経済性に優れた方法とすることができる。このように、上記樹脂組成物(A)を硬化して硬化物を製造する方法であって、該製造方法は、樹脂組成物(A)を5分以内で硬化させて硬化物を製造する樹脂組成物(A)の硬化方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。上記硬化時間(金型を用いた硬化時間)が5分を超えると、生産性が悪くなる。より好ましくは、3分以内である。
【0133】
本発明の樹脂組成物(A)の硬化方法においては、上述したように金型を用いて硬化させた後、硬化物を金型から取り出し、ポストキュア(ベーク)を行うことか好ましい。ポストキュアを行うことにより、硬化物が充分な硬度をもち、種々の用途に好適に用いることができる。また、ポストキュアにおいては、ある程度の硬度を持つ硬化物を更に硬化させる点から、取り扱い性に優れている。そのため、金型を用いないでよいことから、小さな面積で大量の製品をポストキュアできる利点がある。
上記ポストキュアにおいて、硬化温度及び硬化時間としては、硬化させる樹脂組成物(A)等に応じて適宜設定することができる。例えば、硬化温度としては、80〜200℃であることが好ましい。より好ましくは、100〜180℃であり、更に好ましくは、110〜150℃である。ポストキュアの硬化時間としては、硬化温度にも依存するが、1〜48時間であることが好ましい。より好ましくは、1〜10時間であり、更に好ましくは、2〜5時間である。
【0134】
以下、上記樹脂組成物(A)の硬化方法について更に説明する。上記樹脂組成物(A)の硬化には、使用する樹脂成分の性質に応じて、種々の方法を採用することができる。
上記樹脂組成物(A)がケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)と、カチオン重合性、ラジカル重合性等の硬化性樹脂を必須として含む樹脂成分とを含有する場合には、重合開始剤を用いて熱硬化することにより、硬化物とすることができる。重合開始剤としては、カチオン重合性基を有する化合物等である樹脂成分を用いる場合には、上述した熱潜在性カチオン発生剤を用いることが好ましい。なお、上記樹脂組成物(A)の硬化方法としては、熱潜在性カチオン発生剤等の重合開始剤を用いた硬化方法以外の硬化方法も採用し得る。例えば、硬化剤を使用することができる。このような硬化剤としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物類;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂等の種々のフェノール樹脂類;種々のフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂類;BF錯体、スルホニウム塩類、イミダゾール類等の1種又は2種以上を用いることができる。また、多価フェノール化合物で硬化することも好ましい態様である。
【0135】
上記樹脂組成物(A)の硬化においては、更に必要に応じて硬化促進剤を用いることができ、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルヘキサデシルホスフォニウムブロマイド、トリブチルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物等の1種又は2種以上が好適である。上記硬化温度としては、70〜200℃が好ましい。より好ましくは、80〜150℃である。
なお、上述した硬化剤及び硬化促進剤は、樹脂組成物(A)の硬化反応を促進し、ハンドリングが簡易になる等の利点があるが、このような酸無水物・アミノ化合物などの従来公知の硬化剤等は、酸無水物硬化に通常使用する脂環式酸無水物の屈折率が低いこと、アミノ化合物は黄変しやすいことが知られている。したがって、高屈折率光学用部材に用いる場合は、硬化剤及び硬化促進剤を添加することが必要不可欠である場合以外は、積極的には使用しないほうがよい。
【0136】
本発明はそして、上記加水分解性ケイ素化合物(ケイ素化合物(A))及び/又は上記加水分解性ケイ素化合物の縮合物(縮合物(A))を必須とする無機表面改質剤でもある。これによれば、無機材料の表面にケイ素化合物(A)や縮合物(A)が表面に導入される。若しくは、それらの一部分が導入される。これにより、屈折率及び透明性を低下させることなく表面処理を行うことができ、疎水化、耐水化、屈折率制御等を行うことができる。
また、無機材料が樹脂や溶液等との親和性が高いものとなり、例えば、無機系微粒子の表面を本発明の無機表面改質剤で処理することにより、該無機系微粒子の分散性を著しく向上させることができる。無機系微粒子を樹脂等に分散させた樹脂組成物を用いて光学部材を製造する場合、分散性に優れることから透明性が向上したものとなり、更に上記共役系芳香族骨格に起因して高い屈折率を有するものとすることができる。
このような場合、上記ケイ素化合物(A)(若しくはその一部)を表面に有する無機材料となる。
【0137】
上記「表面に有する」形態としては、その表面に付着及び/又は結合している形態が挙げられる。例えば、共役系芳香族骨格と3個以上の原子が連なった構造とが結合した構造を表面に有する無機材料を、該共役系芳香族骨格を溶解し得る有機溶媒(例えば、ヘキサン、メタノール等)で洗浄しても離脱しない形態であることが好ましい。例としては、無機材料の表面に共役系芳香族骨格と3個以上の原子が連なった構造とを含む化合物が付着している(無機材料の表面を構成する原子と化学結合はしていなくてもよい)形態、無機材料の表面を構成する元素と、共役系芳香族骨格に結合した3個以上の原子が連なった構造とが化学結合(共有結合)している形態等が好適である。化学結合している形態では、通常、加水分解性基が反応して結合することとなるため、ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)の一部が無機材料の表面に結合している形態となる。例えば、無機系微粒子の表面処理により複合粒子とし、該複合粒子を樹脂組成物等に分散させる場合、より優れた分散性を付与する観点から、上記ケイ素化合物(A)及び/又はその縮合物(A)を必須とする無機表面改質剤を用いることがより好適である。また、表面処理を行った無機材料の用途等により、適切な形態を選択することができる。例えば、有機媒体への再分散性(表面処理粒子を乾燥した後に溶媒に分散させる場合)、有機媒体中での分散安定性(凝集による相分離や沈殿がない)ようにする観点からは、上記ケイ素化合物(3)を用いることが特に好ましい。
【0138】
上記無機表面改質剤は、ラジカル重合性基を有する加水分解性ケイ素化合物(以下、「ケイ素化合物(B)」ともいう。)を併用して表面処理を行うことも好ましい形態である。加水分解性珪素化合物(B)としては、下記一般式(17);
19SiX4−a (17)
(式中、R19はラジカル重合性基を有する有機基を表し、aは1〜3の整数を表す。Xは、加水分解性基を表す。)で表されるものであることが好ましい。上記R19は、メタクリル基、アクリル基、及び、ビニル基からなる群より選択される少なくとも一つを含む有機基であることが好ましい。特に好ましくは、メタクリル基及び/又はアクリル基の形態である。
【0139】
上記ケイ素化合物(B)により行う表面処理は、ケイ素化合物(A)により行う表面処理と同時に行ってもよいし、ケイ素化合物(A)により行う表面処理を行った後、ケイ素化合物(B)を用いて表面処理を行ってもよい。また、ケイ素化合物(A)が、ラジカル重合性基と、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格と、3個以上の原子が連なった構造と、加水分解性基とを有するケイ素化合物を用いて、上記ケイ素化合物(A)とケイ素化合物(B)とを併用して行う表面処理を、一回の表面処理で一括して行うことも可能である。上記表面処理の好適な方法としては、ケイ素化合物(A)により行う表面処理とケイ素化合物(B)により行う表面処理とを同時に行う方法、又は、ケイ素化合物(A)により行う表面処理を行った後、加水分解性珪素化合物(B)を用いて表面処理を行う方法である。
【0140】
上記無機表面改質剤は、無機系微粒子、無機膜等の無機材料の表面処理に用いられ、該無機材料の表面には共役系芳香族骨格と3個以上の原子が連なった構造が備えられるものとなる。
【0141】
無機材料を構成する好ましい金属元素Mとしては、特に限定されるものではなく、表面処理により無機材料の表面に結合することができる金属元素であればよい。また、表面処理を行った無機系微粒子や無機膜を光学部材として使用するような場合には、チタン、ジルコニウム、亜鉛、ランタン、イットリウム、インジウム、錫、ニオブ及びセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であることが好ましい。これらの金属元素を含む金属酸化物等は、高い屈折率を有するものとすることができることから光学部材として好適に用いることができる。例えば、高屈折率を要求される機器に用いられる、カメラ用のレンズ、反射防止フィルム等の光学部材として使用される場合に特に好ましい。
【0142】
上記無機膜、無機系微粒子等の無機材料としては、金属酸化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物、金属酸硫化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属テルル化物、金属セレン化物、金属等が挙げられる。これらの中でも、表面に金属水酸基を多く有することができるものが好ましく、具体的には、金属酸化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物、金属酸硫化物及び金属からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。より好ましくは、金属酸化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物及び金属酸硫化物からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。更に好ましくは、金属酸化物である。
【0143】
上記金属酸化物としては、単一酸化物(一種の金属元素と酸素とからなる酸化物)であってもよいし、固溶体の形態であってもよいし、複合酸化物の形態であってもよい。上記複合酸化物の形態としては、二種以上の金属元素と酸素とを含む酸化物の形態である。より好ましくは、一種の金属元素と酸素とを含む金属酸化物である。
上記Rとしては、共役系芳香族骨格に置換基が結合していない有機基の形態であってもよいし、共役系芳香族骨格に置換基が結合した形態であってもよい。より好ましいM−O―Si―L−Rの結合形態としては、3個以上の原子が連なった構造を構成する原子の中で酸素に結合している原子(Rと結合していない側のLの末端原子)が炭素又は珪素である形態である。なお、ここでは結合の形態について述べたが、上述したように、共役系芳香族骨格は、無機材料の表面に付着している形態であってもよく、化学結合しているものに限られるものではない。
【0144】
上記3個以上の原子が連なった構造は、シロキシ結合又はシロキサン結合を介して無機材料表面に結合していることが好ましい。例えば、共役系芳香族骨格と無機材料表面を構成する元素との間にシロキシ結合がある場合には、珪素原子及び酸素原子からなるシロキシ結合と共役系芳香族骨格との間に、3個以上の原子が連なった構造があることが好ましい。このように、シロキシ結合又はシロキサン結合を介して結合することで、無機材料表面に上記共役系芳香族骨格及び3個以上の原子が連なった構造構造を含む有機成分(以下、有機成分(A)ともいう。)が安定して存在することができ、また、シロキシ結合又はシロキサン結合を介して結合することで、複合粒子がより安定した形態となり、機械的強度、耐熱性を向上させることができる。上記シロキシ結合又はシロキサン結合を介して結合する形態としては、例えば、M−O−(Si−O)−L−R、M−(O−Si)−L−R等の形態が挙げられる。なお、式中、Mは、無機材料表面を構成する金属元素である。Lは、3個以上の原子が連なった構造を表す。Rは、共役系芳香族骨格を有する有機基を表す。n及びnは、同一又は異なって、構成単位の繰り返し数を表す1以上の数である。このように、無機材料表面の金属元素に結合したシロキシ結合及び/又はシロキサン結合がある場合には、無機材料表面の金属元素Mに結合したシロキシ結合及び/又はシロキサン結合の繰り返し単位とは別に、3個以上の原子が連なった構造が結合している形態が好ましい形態の一つである。これによれば、無機材料表面の金属元素と共役系芳香族骨格との間隔を、より充分なものとすることができるため、例えば、後述する複合粒子を樹脂組成物中に分散させるような場合に、その分散性を向上させることができる。
上記シロキシ結合又はシロキサン結合を介して結合する形態としては、一つの金属元素に複数の共役系芳香族骨格が繋がっている形態であってもよい。例えば、下記式;
【0145】
【化24】

【0146】
(式中、Mは、無機材料表面を構成する金属元素である。Lは、3個以上の原子が連なった構造を表す。Rは、共役系芳香族骨格を有する有機基を表す。)で表されるように、一つの金属元素Mに共役系芳香族骨格Rと3個以上の原子が連なった構造Lとが2つずつ結合している形態であってもよく、その形態は特に限定されない。
以下に、上記無機表面改質剤を用いて無機微粒子を表面処理した場合について詳述する。
【0147】
上記無機表面改質剤を用いて無機系微粒子の表面処理を行うことにより、無機系微粒子表面に共役系芳香族骨格と、3個以上の原子が連なった構造とを有する構造が導入される。当該構造を表面に有する無機系微粒子を以下では複合粒子という。
上記複合粒子は、無機系微粒子と該無機系微粒子表面に導入された有機成分(A)とを有するものである限り特に限定されるものではなく、他の構成要素を含んでいてもよい。例えば、有機成分(A)以外に、他の有機物や、無機材料等の他の成分が無機系微粒子表面に付着又は結合している形態であってもよい。
【0148】
上記複合粒子は、単一の無機系微粒子からなることが好ましい。すなわち、凝集等により複数の1次粒子が集合した状態ではないことが好ましい。例えば、透過型電子顕微鏡で複合粒子を観察したときには、無機系微粒子からなる像が観察されるが、該無機系微粒子が凝集せずに分散していることが好ましい。複合粒子の粒子径は、該無機系微粒子からなる像の大きさで定義され、該粒子径の数平均粒子径が、好ましくは、1μm以下であり、より好ましくは、100nm以下であり、更に好ましくは、20nm以下であり、特に好ましくは、15nm以下である。
上記複合粒子は、屈折率が1.6以上であることが好ましい。例えば、上記複合粒子と樹脂成分とを含む樹脂組成物とした場合、通常、樹脂の屈折率は1.4〜1.6であり、樹脂成分のみでは屈折率が1.6以上の樹脂組成物を形成することは困難である。そこで、複合粒子の屈折率を1.6以上とすることにより、該複合粒子を含む樹脂組成物及びその硬化物の屈折率を、樹脂成分だけでは得ることが困難な屈折率を有するものとすることができる。複合粒子の屈折率としては、1.8以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましい。また、屈折率が高い複合粒子を用いることにより、該複合粒子の樹脂組成物中における含有量を低減することができるため、更に透明性を向上させることもできる。
【0149】
上記無機系微粒子としては、一次粒子の平均粒子径が1μm以下のものであることが好ましい。平均粒子径が1μmを超える場合には、充分な透明性を得ることができないおそれがある。より好ましくは、100nm以下であり、更に好ましくは、20nm以下であり、特に好ましくは、15nm以下である。
【0150】
上記無機系微粒子の一次粒子径は、TEM像(透過型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径;B.E.T.法により得られる比表面積径;粉末X線回折測定法により得られる結晶子径;X線小角散乱法等により得られる慣性半径とその散乱強度から求められる平均粒子径等を用いることができる。中でも、TEM像より得られる数平均粒子径が好ましい。
上記無機系微粒子の形状は、球状に限られず、例えば、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状(例えば、六角板状)等の薄片状、紐状等が好適である。
上記無機系微粒子としては、屈折率が2以上であることが好ましい。無機系微粒子の屈折率が2以上である場合には、該無機系微粒子を含む樹脂組成物及びその硬化物の屈折率をより向上させることができる。また、無機系微粒子の樹脂組成物中への含有量を低減することができるため、更に透明性を向上させることもできる。
【0151】
上記無機系微粒子を表面処理することによって、ケイ素化合物(A)又は縮合物(A)に由来する構造を有する有機基を結合させたものとする方法としては、例えば、ケイ素化合物(A)又は縮合物(A)を含む溶液と無機系微粒子とを混合し、攪拌することによって表面処理する方法が挙げられる。無機系微粒子は表面処理されることで、樹脂等との親和性が高まり、分散性が向上することとなる。
【0152】
上記複合粒子は、樹脂組成物を構成する材料として樹脂成分とともに用いられることが好適な形態である。すなわち、上記複合粒子と樹脂成分とを必須とする樹脂組成物も本発明の一つである。上記複合粒子は、上述するように有機媒体への分散性に優れるものとなり、優れた透明性を有する樹脂組成物とすることができる。また、共役系芳香族骨格及び無機系微粒子に起因して高い屈折率を有する樹脂組成物とすることができる。
複合粒子とともに用いる樹脂成分としては、上記樹脂組成物(A)において述べた樹脂成分を好適に用いることができる。特に、芳香族化合物(C)を含む樹脂成分をより好適に使用することができる。これによれば、複合粒子の分散性がより向上し、複合粒子を含む樹脂組成物の透明性を向上させることができる。また、屈折率を高いものとすることができる。
【0153】
上記複合粒子を含む樹脂組成物は、分散剤を含むことが好適である。樹脂組成物中に含まれる分散剤としては、特に限定されるものではないが以下に示す分散剤(D)を含むことが好適である。上記複合粒子を含む樹脂組成物は、分散剤(D)を含み、該分散剤(D)は、下記一般式(I);
−R−O−(CO−R−O)−CO−R−COOH (I)
(但し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基及び(メタ)アクリロイル基から選ばれる少なくとも1種の基である。Rは、アルキレン基、又は、アリール基である。Rは、アルキレン基である。Rは、アルキレン基、アリール基、及び、アルキン基から選ばれる少なくとも1種の基である。pは、1以上の整数である。)で示される化合物(1)、下記一般式(II);
−[CO−(O−R−CO)−OH] (II)
(但し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基及び置換基を有していてもよいビニル基から選ばれる少なくとも1種である。Rは、アルキレン基である。nは、1以上の数であり、mは1〜4の数である。)で示される化合物(2)、及び/又は、下記一般式(III);
−R−O−(CO−R−O)−H (III)
(但し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基及び(メタ)アクリロイル基から選ばれる少なくとも1種の基である。Rは、アルキレン基、又は、アリール基を表す。Rは、アルキレン基を表す。rは、1以上の数である。)で示される化合物(3)を含むものであることが好ましい。分散剤としては、上記一般式(I)、(II)、(III)で示される化合物から1種又は2種以上を用いることが好適である。また、分散剤としては、各一般式で表される化合物の一種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、特に限定されるものではない。
【0154】
上記一般式(I)で示される化合物(1)において、Rがアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基であることが好ましく、アリール基である場合、例えば、フェニル基であることが好ましい。Rとして好ましくは、その構造が環状よりも直鎖状であり、更に好ましくは、その炭素数が3〜20であることである。Rとして好ましくは、アルキレン基であることであり、更に好ましくは、環状よりも直鎖状のアルキレン基であり、特に好ましくは、炭素数が2〜6のアルキレン基である。pとしては、50以下の整数であることが好ましく、20以下の整数であることが更に好ましい。また、上記化合物(1)としては、少なくとも一つの芳香環が含まれるものであることが好ましい形態の一つである。
【0155】
また、上記一般式(III)で表される化合物(3)としてより好ましいものとしては、下記式;
【0156】
【化25】

【0157】
で表されるプラクセルFM−1(ダイセル化学工業社製)が挙げられる。更に、上記一般式(II)で表される化合物(2)としてより好ましいものとして、下記式;
【0158】
【化26】

【0159】
で示される反応によって得ることができるFM−1−Phは分散剤(D)としてより好ましい形態である。このように、芳香環と酸無水物構造とを同一分子内に含有する化合物に、プラクセルFM−1とを合成することによってFM−1−Phは製造することができる。すなわち、芳香環とラクトン構造とを同一分子内に含有する化合物と、プラクセルFM−1とを反応させて得られる化合物が、分散剤(D)として好ましい形態である。
【0160】
このような分散剤(D)を用いることによって、樹脂組成物中での複合粒子の分散性が向上し、より透明性の高い樹脂組成物とすることができる。上記分散剤(D)の含有量としては、(分散剤(D)/複合粒子)×100=0.1〜20(wt%)であることが好ましい。このような含有量の範囲とすることによって、複合粒子の分散性をより向上させることができる。含有量の範囲としてより好ましくは、(分散剤(D)/複合粒子)×100=0.1〜10(wt%)である。
【0161】
また、上記樹脂組成物が分散剤を含む場合、その配合方法は特に限定されず、種々の方法を用いることができる。例えば、分散剤と樹脂成分との混合物に粒子添加、樹脂成分と粒子との混合物に後添加する等の方法が挙げられる。また、分散剤は、溶媒に溶解してから混合することが好ましい形態の一つである。上記分散剤が、上述した分散剤(D)である場合にもその配合方法としては同様であり、分散剤(D)である場合には特に溶媒に溶解してから混合することが好ましい。
【0162】
上記複合粒子と樹脂成分とを含んでなる樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されない。好適な製造方法としては、上述した樹脂組成物(A)と同様の方法を用いることができる。すなわち、樹脂組成物(A)の製造方法において「ケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)」の代わりに「複合粒子」を用いることで、複合粒子と樹脂成分とを含んでなる樹脂組成物の好適な製造方法とすることができる。硬化方法等についても同様である。
【0163】
上記複合粒子を含有する樹脂組成物は、上述したケイ素化合物(A)及び/又は縮合物(A)と、樹脂成分とを必須とする樹脂組成物と同様に、種々の用途に用いることができ、特に光学部材として好適に用いられる。また、上記複合粒子を含有する樹脂組成物を反射防止フィルムの高屈折率層に用いる場合、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを樹脂成分として用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0164】
本発明の加水分解性ケイ素化合物は、共役系芳香族骨格と、3個以上の原子が連なった構造を有することによって、膜形成剤、樹脂添加剤、樹脂組成物、無機表面改質剤等の種々の用途に好適に用いることができる。分散性が高い、若しくは、表面処理により分散性の高い複合粒子を形成することができるため、用いられた部材の透明性を優れたものとすることができ、また、共役系芳香族骨格に起因して屈折率が高いものとすることができる。このようなことから、レンズユニット等の光学用途、オプトデバイス用途に特に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0165】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0166】
実施例1:BiPh−U−Si(OEt)の合成方法
トルエン80.16gにパラフェニルフェノール(para−Phenylphenol)13.98g(82.2mmol)に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE−9007、信越化学工業社製)20.34g(82.2mmol)、ジブチルチンジラウレート(DBTDL)0.017gを加え、90℃まで昇温し5時間加熱した。これにより、下記式(A−1)で表されているBiPh−U−Si(OEt)を得た。
【0167】
BiPh−U−Si(OEt)の同定
上記反応で得られた反応溶液より、溶媒を留去し、無色透明粘稠液体を得た。この化合物について、H−NMR(400MHz、CDCl)を測定したところ、以下の結果が得られた。
δ7.60−7.50(m,6H)、7.27−7.23(m,1H)、7.23−7.16(m,2H)、5.45−5.34(br,1H)、3.90−3.76(q,6H)、3.35−3.24(q,2H)、1.78−1.66(m,2H)、1.28−1.18(t,9H)、0.74−0.66(m,2H)
【0168】
比較例1:Ph−U−Si(OEt)の合成方法
トルエン64.40gにフェノール7.60g(80.8mmol)に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE−9007、信越化学工業社製)20.00g(80.8mmol)、ジブチルチンジラウレート(DBTDL)0.014gを加え、90℃まで昇温し5時間加熱した。これにより、Ph−U−Si(OEt)トルエン溶液を得た。
【0169】
実施例2:BiPh−U−Si(OEt)の縮合物の合成方法
実施例1で得られたBiPh−U−Si(OEt)トルエン溶液60g、ジグライム20g、脱イオン水6.98g、オクチル酸亜鉛0.005gを還流管のついたフラスコに入れ、還流するまで昇温(83℃)を行い、還流下3時間攪拌を行った。更にディーンスターク管を接続し、反応溶液温度が138℃になるまで脱溶剤を行い、138℃に到達後3時間攪拌を行った。反応溶液をヘキサンに投入することで再沈殿を行い、10.5gの白色固体を得た。この白色固体の分子量は4000であった。
【0170】
次に、実施例1で得られたBiPh−U−Si(OEt)を用いて酸化ジルコニウムナノ粒子(無機系微粒子)の表面処理を行った例について示す。
まず、表面処理を行う無機系微粒子の合成について述べ、その後、無機系微粒子の表面処理について述べる。
合成例1:酸化ジルコニウムナノ粒子の合成
40℃の純水700gに水酸化ナトリウム100g(キシダ化学株式会社製、特級)を攪拌下、添加して溶解させた。次いで、ネオデカン酸495g(ジャパンエポキシレジン株式会社製)を攪拌下、添加し、ネオデカン酸ナトリウム水溶液を調製した。該溶液を80℃とし、740gのジルコゾールZC−20(第一希元素化学工業株式会社製)を攪拌下、20分かけて投入し、80℃で1時間半攪拌を続けたところ、白色で高粘度なネオデカン酸ジルコニウムが生成した。次にテトラデカンを1270g添加して攪拌すると、ネオデカン酸ジルコニウムとテトラデカンからなる油相と水相の二相からなる溶液が得られた。水相を分離除去して油相部分を回収した。このようにして得られた油相部を純水で3回洗浄した。次いで油相1000gと純水500gを攪拌機付きオートクレーブ内に仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにより置換した。その後、175℃まで加熱し、3時間反応させた。175℃反応中の容器中圧力は、0.9MPaであった。反応後の溶液を取出し、底部にたまった沈殿物をろ過により回収した。該沈殿物をアセトンで洗浄し、乾燥させた後、トルエンに分散させたところ、白濁溶液となった。次に、精製工程として定量濾紙(アドバンテック東洋社製 No.5C)にて再度ろ過を行い、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。更に、ろ液中のトルエンを減圧除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子を回収した。
【0171】
上記酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造をX線回折装置にて確認したところ、正方晶および単斜晶系結晶構造に帰属される回折線が検出された。回折線の強度から、結晶構造は、主として正方晶からなり、わずかに単斜晶を含むものであることが確認された。また、該粒子の粒子径をFE−SEMで測定したところ、平均粒子径は5nmであった。さらに赤外吸収スペクトル(FT−IR)により分析したところ、C−H由来の吸収およびCOOH由来の吸収が認められた。当該吸収は、酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆しているネオデカン酸に由来するものと考えられる。TG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下、10℃/分の速度で800℃まで昇温し、酸化ジルコニウムナノ粒子の質量減少率を測定したところ、19質量%の減少率となった。
【0172】
合成例2:BiPh−U−Si(OEt)処理酸化ジルコニウムナノ粒子の合成
合成例1にて得られた酸化ジルコニウムナノ粒子12.3gをトルエン87.7gに分散させて溶液を調製し、該溶液にBiPh−U−Si(OEt)溶液28.0g(固形分8.4g)、及び、超純水4gを添加し、90℃で1時間攪拌下、還流した。
還流処理後の溶液を放冷した後、n−ヘキサンを添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させた。次いで、白濁溶液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で真空乾燥し、BiPh−U−Si(OEt)で処理された酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。
処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造をX線回折装置にて確認したところ、正方晶および単斜晶系結晶構造に帰属される回折線が検出された。回折線の強度から、結晶構造は、主として正方晶からなり、わずかに単斜晶を含むものであることが確認された。また、該粒子の粒子径をFE−SEMで測定したところ、平均粒子径は5nmであった。さらに、赤外吸収スペクトル(FT−IR)により分析したところ、アルキル鎖及び芳香族骨格のC−H由来の吸収およびCOOH由来の吸収、さらにSi−O−C由来の吸収が確認でき、更にH−NMRにより、芳香族骨格由来のピークが確認されたことから、処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子は、ネオデカン酸、BiPh−U−Si(OEt)の2種の被覆剤により被覆されていることが確かめられた。TG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下、800℃まで昇温した時の、該粒子の質量減少率を測定したところ、20質量%の減少率となった。また、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子を、下記の条件で洗浄を行ったが、洗浄前と洗浄後においてFT−IRの測定結果、TG−DTA測定における重量減少分は同等であり、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子が、無機系微粒子表面に芳香族骨格と芳香族骨格への結合構造を有している複合粒子となっていることを確認した。洗浄は、ヘキサン100質量部に対して、酸化ジルコニウムナノ粒子(複合粒子)1部を加え、温度50℃、攪拌速度100rpmで12時間攪拌することによって行った。
また、得られたジルコニウムナノ粒子(複合粒子)100質量%としたときの、共役系芳香族骨格の含有量及び3個以上の原子が連なった構造の含有量を以下の方法により求めた。
(1)まず、H−NMRにより得られたジルコニウムナノ粒子上の下記式(A−1)で表されるBiPh−U−Si(OEt)に起因する有機成分と、下記式(B−1)で表されるネオデカン酸に起因する成分の量の比(モル比)を求める。
【0173】
【化27】

【0174】
(2)BiPh−U−Si(OEt)は下記式(A−2)のように、ネオデカン酸は下記式(B−2)のようにジルコニアに結合していることから、その有機のユニットはそれぞれ下記式(A−3)及び(B−3)であり、それぞれの分子量と(1)で求めたモル比から重量比を算出する。
【0175】
【化28】

【0176】
(3)その後、(2)で求めた(A−3)の重量比を用いて、(A−3)式に相当する有機成分と(B−3)式に相当する有機成分との合計(全有機成分)に対する、(A−3)式に含有される共役系芳香族骨格含有量(この場合は、C12)を求める。
(4)そして、TG−DTAで測定した質量減少率がジルコニウムナノ粒子上の有機(全有機成分)含有量であるので、この質量減少率と(3)で求めた芳香族含有量を掛け合わせた数値がジルコニウムナノ粒子の共役系芳香族骨格含有量となる。また、同様にして、共役系芳香族骨格への結合構造の含有量についても求めた。このとき、芳香族骨格への結合構造は、(A−3)式で表されるユニットから共役系芳香族骨格(C12)の部分を除いたものとなる。
【0177】
合成例3:BiPh−U−Si(OEt)及びKBM−503処理酸化ジルコニウムナノ粒子の合成)
合成例1にて得られた酸化ジルコニウムナノ粒子12.3gをトルエン87.7gに分散させて溶液を調製し、該溶液にBiPh−U−Si(OEt)溶液28.0g(固形分8.4g)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−503)0.95gおよび超純水5gを添加し、90℃で1時間攪拌下、還流した。
還流処理後の溶液を放冷した後、n−ヘキサンを添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させた。次いで、白濁溶液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で真空乾燥し、BiPh−U−Si(OEt)、及び、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで処理された酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。
処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造をX線回折装置にて確認したところ、正方晶および単斜晶系結晶構造に帰属される回折線が検出された。回折線の強度から、結晶構造は、主として正方晶からなり、わずかに単斜晶を含むものであることが確認された。また、該粒子の粒子径をFE−SEMで測定したところ、平均粒子径は5nmであった。さらに、赤外吸収スペクトル(FT−IR)により分析したところ、アルキル鎖及び芳香族骨格のC−H由来の吸収およびCOOH由来の吸収、さらにSi−O−C由来の吸収が確認でき、更にH−NMRにより、芳香族骨格由来のピーク及びメタクリル基の二重結合由来のピークが確認されたことから、処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子は、ネオデカン酸、BiPh−U−Si(OEt)、及び、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの3種の被覆剤により被覆されていることが確かめられた。TG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下、800℃まで昇温した時の、該粒子の質量減少率を測定したところ、20質量%の減少率となった。また、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子を、合成例2で示した条件で洗浄を行ったが、洗浄前と洗浄後においてFT−IRの測定結果、TG−DTA測定における重量減少分は同等であり、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子が、無機系微粒子表面に芳香族骨格と芳香族骨格への結合構造を有している複合粒子となっていることを確認した。
また、得られたジルコニウムナノ粒子に対して、合成例2と同様の方法で、芳香族骨格の含有量及び芳香族骨格への結合構造の含有量を求めた。
【0178】
合成例4:Ph−U−Si(OEt)及びKBM−503処理酸化ジルコニウムナノ粒子の合成
合成例1にて得られた酸化ジルコニウムナノ粒子12.3gをトルエン87.7gに分散させて溶液を調製し、該溶液にPh−U−Si(OEt)溶液23.1g(固形分6.9g)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−503)0.95g、及び、超純水5gを添加し、90℃で1時間攪拌下、還流した。
還流処理後の溶液を放冷した後、n−ヘキサンを添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させた。次いで、白濁溶液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で真空乾燥し、Ph−U−Si(OEt)、及び、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで処理された酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。
処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造をX線回折装置にて確認したところ、正方晶および単斜晶系結晶構造に帰属される回折線が検出された。回折線の強度から、結晶構造は、主として正方晶からなり、わずかに単斜晶を含むものであることが確認された。また、該粒子の粒子径をFE−SEMで測定したところ、平均粒子径は5nmであった。さらに、赤外吸収スペクトル(FT−IR)により分析したところ、アルキル鎖及び芳香族骨格のC−H由来の吸収およびCOOH由来の吸収、さらにSi−O−C由来の吸収が確認でき、更にH−NMRにより、芳香族骨格由来のピーク及びメタクリル基の二重結合由来のピークが確認されたことから、処理後の酸化ジルコニウムナノ粒子は、ネオデカン酸、BiPh−U−Si(OEt)、及び、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの3種の被覆剤により被覆されていることが確かめられた。TG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下、800℃まで昇温した時の、該粒子の質量減少率を測定したところ、19質量%の減少率となった。また、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子を、合成例2で示した条件で洗浄を行ったが、洗浄前と洗浄後においてFT−IRの測定結果、TG−DTA測定における重量減少分は同等であり、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子が、無機系微粒子表面に芳香族骨格と芳香族骨格への結合構造を有している複合粒子となっていることを確認した。
また、得られたジルコニウムナノ粒子に対して、合成例2と同様の方法で、芳香族骨格の含有量及び芳香族骨格への結合構造の含有量を求めた。TG−DTA測定において求めた質量減少率及び芳香族骨格と芳香族骨格への結合構造の含有量を測定した結果を下記表3に示す。
上記合成例2、3及び4によって得られたジルコニアナノ粒子の処理剤、TG−DTA測定において求めた質量減少率及び共役系芳香族骨格と3個以上の原子が連なった構造の含有量を測定した結果を下記表1に示す。
【0179】
【表1】

【0180】
(樹脂組成物の作成方法)
実施例3用樹脂組成物
合成例2で得られた酸化ジルコニウム粒子2.5g及びオグソールEA−200(大阪ガスケミカル社製)2.5g、パーブチルZ(日油社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)0.1gをトルエン20.0gに溶解させた後、エバポレーターにてトルエンを脱揮し、実施例3用樹脂組成物を得た。
【0181】
実施例4用樹脂組成物
合成例3で得られた酸化ジルコニウム粒子2.5g及びオグソールEA−200(大阪ガスケミカル社製)2.5g、パーブチルZ(日油社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)0.1gをトルエン20.0gに溶解させた後、エバポレーターにてトルエンを脱揮し、実施例4用樹脂組成物を得た。
【0182】
実施例5用樹脂組成物
合成例3で得られた酸化ジルコニウム粒子2.5g及びオグソールEA−200(大阪ガスケミカル社製)2.5g、分散剤としてFM−1を0.05g、パーブチルZ(日油社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)0.1gをトルエン20.0gに溶解させた後、エバポレーターにてトルエンを脱揮し、実施例5用樹脂組成物を得た。
【0183】
実施例6用樹脂組成物
合成例3で得られた酸化ジルコニウム粒子2.5g及びオグソールEA−200(大阪ガスケミカル社製)2.5g、分散剤としてFM−1−Ph溶液0.071g(固形分量0.05g)、パーブチルZ(日油社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)0.1gをトルエン20.0gに溶解させた後、エバポレーターにてトルエンを脱揮し、実施例6用樹脂組成物を得た。
【0184】
比較例2用樹脂組成物
合成例4で得られた酸化ジルコニウム粒子2.5g及びオグソールEA−200(大阪ガスケミカル社製)2.5g、パーブチルZ(日油社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)0.1gをトルエン20.0gに溶解させた後、エバポレーターにてトルエンを脱揮し、比較例2用樹脂組成物を得た。
【0185】
実施例3〜6及び比較例2
上記実施例3〜6及び比較例2用樹脂組成物をガラス板(150mm×70mm×2mm)上に5milアプリケーターを用いて膜厚が125μmになるように塗工を行った。その後、窒素雰囲気下150℃にて30分加熱を行うことにより、硬化塗膜を得た。そして、波長400nmにおける硬化塗膜の透過率を測定した。
【0186】
何も塗工されていないガラス板(150mm×70mm×2mm)の厚み方向の光透過率(光波長:400nm)を、吸光光度計(島津製作所社製分光光度計「UV−3100」)を用いて測定し、その透過率をT%とした。次に、上記方法で作製した硬化塗膜が形成されたガラス板の厚み方向の光透過率(光波長:400nm)を、吸光光度計「UV−3100」を用いて測定し、その透過率をT%とした。これらの値から透過率Tを下記式により算出した。
T=100−T+T
【0187】
<屈折率・アッベ数の測定方法>
得られた樹脂組成物を500μmの厚みに調整された型枠に流し込んだ後に、上からガラス板にて蓋をし、150℃にて30分加熱することにより、硬化物を得た。屈折率計(アタゴ社製、DR−M2)を用いて得られた硬化物の20℃における589nmの屈折率を測定した。測定結果を下記表2に示す。
【0188】
【表2】

【0189】
本発明のケイ素化合物(A)を用いて表面処理した複合粒子を含有する樹脂組成物は、無色透明であり、かつ屈折率が1.65以上の硬化物が得られた。また、透過率は70%以上であり、実施例4〜6においては、90%以上の透過率を示した。比較例2では、6個の炭素原子からなる共役構造を有する(ベンゼン環を含む)無機表面改質剤を用いて表面処理を行っているが、複合粒子の分散性が充分ではなく、透過率が61%と低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格及び3個以上の原子が連なった構造を必須とすることを特徴とする加水分解性ケイ素化合物。
【請求項2】
前記加水分解性ケイ素化合物は、下記一般式(1);
(R−L−)Si(R)X (1)
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。Lは、同一又は異なって、3個以上の原子が連なった構造を表す。Rは、1価の基を表す。Xは、同一又は異なって、RO基、水素原子、ハロゲン原子又は水酸基である。Rは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を表す。aは、1〜3の整数であり、bは、0〜2の整数であり、cは、1〜3の整数であり、c=4−a−bである。)で表されることを特徴とする請求項1記載の加水分解性ケイ素化合物。
【請求項3】
前記加水分解性ケイ素化合物は、下記一般式(2);
R{−L−Si(R)X (2)
(式中、Rは、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。Lは、同一又は異なって、3個以上の原子が連なった構造を表す。Rは、1価の基を表す。Xは、同一又は異なって、RO基、水素原子、ハロゲン原子又は水酸基である。Rは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を表す。bは、0〜2の整数であり、eは、1〜3の整数であり、e=3−bである。dは、2以上の整数である。)で表されることを特徴とする請求項1記載の加水分解性ケイ素化合物。
【請求項4】
前記3個以上の原子が連なった構造は、下記一般式(3);
【化1】

(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基である。Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)、及び/又は、下記一般式(4);
【化2】

(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基である。Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)で表されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加水分解性ケイ素化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の加水分解性ケイ素化合物の縮合物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の加水分解性ケイ素化合物及び/又は請求項5記載の加水分解性ケイ素化合物の縮合物を必須とすることを特徴とする樹脂添加剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の加水分解性ケイ素化合物及び/又は請求項5記載の加水分解性ケイ素化合物の縮合物を必須とすることを特徴とする無機表面改質剤。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の加水分解性ケイ素化合物及び/又は請求項5記載の加水分解性ケイ素化合物の縮合物を必須とすることを特徴とする膜形成剤。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の加水分解性ケイ素化合物及び/又は請求項5記載の加水分解性ケイ素化合物の縮合物と、樹脂成分とを必須とすることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の加水分解性ケイ素化合物を製造する方法であって、
該製造方法は、下記式(5);
R−(OH) (5)
(式中、Rは、炭素数が7個以上の共役系芳香族骨格を有する基を表す。jは、1以上の整数を表す。)で表される化合物と、下記式(6);
【化3】

(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。Xは、同一又は異なって、RO基、水素原子、ハロゲン原子又は水酸基である。Rは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を表す。rは、1〜3の整数である。)で表される原料化合物、及び/又は、下記式(7);
【化4】

(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。Xは、同一又は異なって、RO基、水素原子、ハロゲン原子又は水酸基である。Rは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を表す。rは、1〜3の整数である。)で表される原料化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする加水分解性ケイ素化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−70640(P2010−70640A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239385(P2008−239385)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】