説明

加熱ローラ及び加熱定着装置

【課題】小径の加熱ローラを用いた場合でも、薄肉で立上り時間の短縮を図れ、定着ベルトの安定した走行を確保し、さらに、芯金内部に2本のハロゲンヒータを保持可能な内径寸法を確保できる加熱ローラ芯金を提供する。
【解決手段】定着ベルトの内周面の幅方向両端に設けられた寄り止め部の間に圧接して定着ベルトを加熱する加熱ローラに関する。加熱ローラ4の胴部の端部と加熱ローラ4の端部のジャーナル部4fとの間の円周上に形成された凹部9を備え、凹部9は、加熱ローラ4の胴部の端部に隣接して配置され、胴部外径を高位置とし、且つ寄り止め部より下方を低位置とする段差と、該段差の低位置から軸方向に連続する細径部と、該細径部から寄り止め部の外端面を囲むように立ち上がる立ち上がり部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、転写紙等に形成されたトナー像を加熱および加圧して定着させる熱定着方式の定着装置及び加熱ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、転写材上に形成されたトナー画像を定着する方法として、一般に熱と圧力による熱定着方式が用いられている。具体的には、転写材としての記録紙上に形成されたトナー像を記録紙とともに、内部に加熱源を持った定着ローラと相対する加圧ローラとの間を通過させ、その間でトナーに熱を与え、溶融を起こさせ、同時に両ローラ間の圧力によってトナー像を記録紙上に定着させるものである。
【0003】
近年、この画像形成装置のカラー化および立上り時間の短縮化がさらに進んできている。まず、カラー化により、定着すべきトナーの量が増えるため、定着ローラと加圧ローラとの間(ニップ部)を通過した段階で溶融したトナーの定着ローラへの付着が問題となってきた。この付着は記録紙の巻きつきの要因となっている。
【0004】
その対策として、定着ローラを直接加熱するのではなく、間接的に、加熱された定着ベルトを介することで、ニップ部を通過した直後の溶融トナーの冷却が早くなり、トナーの粘性が低下する結果、定着ローラにトナーが付着するのを防止できるようになる。
【0005】
この定着ベルトを用いる定着装置において、定着ベルトを加熱する手段として、多くの場合、内部に加熱源、例えばハロゲンヒータを設置したローラ、すなわち、加熱ローラが用いられる。
【0006】
そして、立上り時間を短縮化するためには、定着ベルトを用いた定着装置で、より早く定着ベルトを所定の温度まで加熱する必要がある。その手段として、加熱ローラの肉厚を薄くしたり、加熱ローラと定着ベルトとの巻きつき量を増やしたり、加熱ローラの外径を小径化して内部のハロゲンヒータとの距離を近づけるなどの方法が考えられる。
【0007】
また、肉厚を薄くした定着ローラとして、特許文献1に開示された技術が知られている。この定着ローラでは、絞り加工したジャーナル部にU字状の溝を形成し、剛性を向上させている。
【特許文献1】特開2003−280430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、定着ベルトを用いた定着装置における、加熱ローラの形状について説明を加える。図12に示すように、定着装置は、加熱ローラ4の胴部に定着ベルト2が配置され、ジャーナル部に軸受11が取り付けられている。加熱ローラ4は軸受11を介して回転自在に保持されており、定着ベルト2の移動に伴って連れ回る構成になっている。
【0009】
また、定着ベルト2の内面には、定着ベルト2の寄りを防止する手段として、寄り止め部材10が取付けられている。この寄り止め部材10は、その効果を得るため、厚さ2mm程度が設定されており、定着ベルト2の内面から見ると、高さ2mmの凸状になっていることがわかる。
【0010】
この寄り止め部材10は定着ベルト2と一体的に動くが、定着ベルト2の走行に悪影響を与えないためには、加熱ローラ4から離れている必要がある。よって、加熱ローラ4の胴部端近傍での定着ベルト2との位置関係をみると、図13に示すように、寄り止め部材10と相対するジャーナル側の外径寸法、即ち寄り止め逃げ部外周面4dの外径D3は、胴部外径D1よりも片側2mm、径でφ4mmの小径になっていなければならない。
【0011】
さらに、加熱ローラ4は、肉厚を薄くするため、パイプ状であり、かつ、図11に示すように、内部にはハロゲンヒータ5等の加熱源を保持させなければならない。加熱源である、ハロゲンヒータ5は、加熱ローラ4の軸方向温度分布を保つために2本を保持する場合もある。この場合に、ハロゲンヒータ5の出し入れおよび保持状態で加熱ローラ4の芯金4aと接触しないだけの内径を加熱ローラ4の芯金4aに確保しなければならない。
【0012】
また、上記特許文献1に記載された技術においても、寄り止め用の必要な段差を確保した上で、ローラの小径化とローラの内径の大径化とを達成することができないので、2本のハロゲンヒータを内部に保持することができなかった。
【0013】
そこで、本発明は、小径の加熱ローラを用いた場合でも、薄肉で立上り時間の短縮を図れ、定着ベルトの安定した走行を確保し、さらに、芯金内部に2本のハロゲンヒータを保持可能な内径寸法を確保できる加熱ローラ芯金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、無端ベルトの内周面の幅方向両端に設けられた寄り止め部の間に圧接して前記無端ベルトを加熱する加熱ローラにおいて、前記加熱ローラの胴部の端部と前記加熱ローラの端部のジャーナル部との間の円周上に形成された凹部を備え、該凹部は、前記胴部の端部に隣接して配置され、胴部外径を高位置とし、且つ寄り止め部より下方を低位置とする段差と、該段差の低位置から軸方向に連続する細径部と、該細径部から寄り止め部の外端面を囲むように立ち上がる立ち上がり部とを備えていることを特徴とする加熱ローラである。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記加熱ローラの内周面のうち、凹部に対応する内周面より外側を無塗装面としたことを特徴とする請求項1に記載の加熱ローラである。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記加熱ローラの芯金が一部材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱ローラである。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記芯金が絞り加工により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の加熱ローラである。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記ジャーナル部外径が胴部外径より太径であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の加熱ローラである。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の加熱ローラの内部に配光特性の異なる複数本の加熱手段が配置され、該複数本の加熱手段により前記無端ベルトを介して定着部に伝熱していることを特徴とする加熱定着装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、小径の加熱ローラを用いた場合でも、薄肉で立上り時間の短縮を図れ、定着ベルトの安定した走行を確保し、さらに、芯金内部に2本のハロゲンヒータを保持可能な内径寸法を確保できる加熱ローラ芯金を提供することができる。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、加熱ローラ胴部内面および凹み部内径部のみを黒色塗装すればよく、端部まで塗装する必要がないので、工程管理が容易になり、また、端部まで塗装を行う場合には、塗料のはみ出しが起こりやすいが、その発生も防止できる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、子部品を組み合わせて芯金を製作する必要がなく、1つの素材から形成できるので、製作工程が簡略化でき、組み合わせによる外れが発生することもなく、信頼性の高い加熱ローラを提供できる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、複雑な型を製作する必要がなく、容易に絞り加工で行えることから、従来の絞り加工したローラと同等の加工時間で量産加工が可能で、かつ、特別な設備を追加することなく、同一設備を用いての量産展開が図れる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、ジャーナル部外径が胴部外径より太径であるので、汎用性の高い大径の軸受を小径の加熱ローラと組み合わせることができる。また、より胴部径が小径の加熱ローラも提供できる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、請求項1〜5の何れかの効果を有するとともに、定着むらを防止できる定着装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図11は本発明の加熱ローラを用いることができる定着装置の基本的な構成を示す図である。定着装置の基本的な構成としては、定着ローラ1と加熱ローラ4との間に無端状の定着ベルト2が渡され支持されており、定着ローラ1の相対する位置に加圧ローラ3が支持されている。
【0027】
加熱ローラ4の内部には、加熱源であるハロゲンヒータ5が加熱ローラ4に接触しない状態で保持されている。この装置において、記録紙7上のトナー像を定着ローラ1と加圧ローラ3との間に挿入し通過させることで、トナー像を記録紙7に定着させる。
【0028】
図1は本発明に係る一実施形態の加熱ローラの基本的な構成を示す断面図である。この加熱ローラ4の構成は、芯金4aおよび芯金4a上に形成されている離型層8からなっている。芯金4aは、アルミニウム合金のパイプ材で外径φ25mm、加熱ローラとして立上り時間も重要なため、胴部外周面4bと胴部内周面4cとの間の肉厚を薄肉化しており、胴部肉厚0.4mmとする。両端のジャーナル部4fも外径φ25mmで、強度確保のため肉厚1mm以上とする。芯金4aの凹部9の内周面4h間には、熱の吸収を高めるため、黒色塗装15を行い、芯金4aの胴部外周面4bには、組み合わされる定着ベルト2との接触による磨耗防止のため、アルマイト処理やテフロン(登録商標)塗装を行って離型層8を形成する。芯金4aの胴部とジャーナル部4fとの間に位置する円周状の凹部9の底部の外径D3は、φ21mmとし、その内径D6はφ19mmとしている。
【0029】
凹部9の底部の外径D3を寄り止め部材10の内径よりも小径とすることにより、加熱ローラ4の胴部外径D1とジャーナル部外径D5が類似径の加熱ローラ4でも、組み合わされる定着ベルト2の寄り止め部材10がジャーナル部の寄り止め逃げ部外周面4dの外径D3と接触することがないので、定着ベルト2の走行が不安定にならず、安定した駆動が可能となる。
【0030】
凹部9は、加熱ローラ4の胴部の端部に隣接して配置されている。そして、凹部9は、胴部外径D1を高位置とし、且つ寄り止め部材10より下方を低位置とする段差部4gと、段差部4gの低位置から軸方向に連続する細径部である底部外周面4jと、底部外周面4j部から寄り止め部材10の外端面を囲むように立ち上がる立ち上がり部4kとを備えている。
【0031】
この芯金4aは、特開2002−126904号や特開2002−126824号に開示されているように、絞りローラによる絞り加工によって縮径し、両端部のジャーナル部4fおよび凹部9を形成している。絞りローラによるこれらの形成は、加工油や洗浄剤の不要な乾式で行え、かつ、胴部保持で加工が行われるため、芯金4aの同軸度を確保できる工法である。一般には、ジャーナル部4fの縮径加工はスウェージ加工が用いられるが、型の関係から、本実施形態のように、端部のジャーナル部4fより小径の部分が胴部近くにある場合には、同様の加工は難しい。
【0032】
ここで、図12と図13を参照して、従来の加熱ローラ4、定着ベルト2および軸受11の位置関係について説明を加え、次に図13と図2を参照して、本発明に係る一実施形態の位置関係について説明する。
【0033】
図12は、従来の加熱ローラ4と定着ベルト2および軸受11との位置関係を示しており、図13はジャーナル部の芯金断面図を示している。図13に示すように、芯金4aの胴部外径D1がφ30mmで、ジャーナル部4fの軸受取付け部のジャーナル部外径D5がφ25mmの場合で説明する。胴部肉厚が0.8mmの場合、胴部内径D2は、φ30−0.8×2=28.4mmとなる。胴部外径D1とジャーナル部外径D5の差は、φ30−φ25=φ5mmで、段差量としては片側2.5mmとなる。
【0034】
このとき、図12に示すように、定着ベルト2の内面に取付けられる寄り止め部材10の半径方向の高さは2mm程度であるため、図13に示すように、ジャーナル部4fの根元径である底部の外径D3をφ25.5mmに設定しても、D1−D3=φ30−φ25.5=φ4.5mm、片側2.3mmとなる。したがって、芯金4aのジャーナル部4fと定着ベルト2とが接触することはなく、常に安定した定着ベルトの走行が可能となる。ジャーナル部内径D4に関しては、強度とハロゲンヒータ5の外径との関係から、任意に設定する。肉厚1mmで、D4はφ23となる。このときのジャーナル加工は、スウェージ加工でも問題なく加工できる。
【0035】
上記の従来の加熱ローラに比べて、本発明に係る一実施形態の加熱ローラについて図5と図2を参照して説明する。図5に示すように、定着ベルト2との接触面積を増やし、加熱源であるハロゲンヒータ5との距離を縮める手段として、小径の加熱ローラ4が望まれることから、芯金4aの胴部外径D1がφ25mmで、ジャーナル部4fの軸受取付け部のジャーナル部外径D5がφ25mm、かつ、芯金自体の熱容量を低減させるために芯金4aの胴部肉厚を0.4mmにする場合で、説明する。
【0036】
胴部内径D2は、φ25−0.4×2=24.2mmとなる。胴部外径D1とジャーナル部外径D5との差は、φ25−φ25=0mmのため、定着ベルト2を支持することができなくなる。その対策として、本発明に係る一実施形態の加熱ローラ4の凹部9を胴部とジャーナル部4fとの間に設置し、定着ベルト2の支持を可能にする。定着ベルト2の内面に取付けられる寄り止め部材10の半径方向の高さは2mm程度であるため、ジャーナル部根元径である底部の外径D3をφ21mm以下に設定することにより、芯金4aのジャーナル部4fと定着ベルト2とが接触することがなく、常に安定した定着ベルト2の走行が可能となる。このとき、凹部9の内径側の径である内径D6について見ると、肉厚1mmを確保するためには、D6=D3−1×2=φ21−1×2=φ19mmとなり、十分にハロゲンヒータ5を支持および出し入れできる径を確保できる。したがって、図4に示すように、第1のヒータ5aと第2のヒータ5bとの複数本、本実施形態では2本のハロゲンヒータ5を芯金4aの内部に配置することができる。このハロゲンヒータ5は、本実施形態では、端部側を加熱する第1のヒータ5aと、この第1のヒータ5aとは異なる配光特性を有し、中央部側を加熱する第2のヒータ5bとから構成されている。
【0037】
加熱ローラ4を小径にする場合、この内径D6の寸法が重要となり、挿入されるハロゲンヒータ5やジャーナル部4fの芯金強度の関係から、決定されるため、組み合わせる部品の構成に応じて適宜設定することができる。
【0038】
また、凹部9を形成することで、凹部9の内径D6がジャーナル部内径D4に比べ小さくなり、芯金4aを軸方向で見ると、胴部を両側の内径D6で狭めていることで、この隙間から出入りする空気の流れを低減できる。その結果、芯金4aの内部にハロゲンヒータ5を組み入れた状態では、隙間がさらにせまくなり、熱の逃げが減ることから、加熱ローラ4としての温度上昇を早めることができる。
【0039】
さらに、図4に示すように、封止部14と内径D6との隙間を狭めるように、ハロゲンヒータ5の封止部14を凹部9の内径D6に近づけるレイアウトを設定することによって、より熱の逃げを低減できる。
【0040】
上記のように、本発明に係る一実施形態の加熱ローラ用の芯金4aは、1つの素管から形成されており、接合等の加工は行っていないことから、芯金強度が得やすく、部品が外れたりする可能性はない。
【0041】
加熱ローラ4の芯金4aの内面全域(胴部内周面4c及び凹部9の内周面4h)に行われる黒色塗装15の目的は、芯金4aの熱吸収を高めることの他に、ハロゲンヒータ5からの熱が芯金内面に反射しハロゲンヒータ5の封止部14を破損させる恐れがあるため、この防止策としての役割も持っている。
【0042】
図4のレイアウトとすることで、ジャーナル部内径D4に対応するジャーナル部内周面4eに対して、黒色塗装15が不要にできる。すなわち、芯金4aの端部内面の黒色塗装15が省略できることで、量産工程内での塗装範囲の管理が容易になること、芯金4aの端部まで塗装する時、最悪の場合、芯金4aの外周面にまで塗料が付着する可能性があったが、その可能性を極力低減できること、などのメリットが得られる。
【0043】
図3のように、ジャーナル部4fの元の肉厚を増やし、定着ベルト2の寄り止め部材10を逃がす凹部9を削りだし部16aとして削りだすことは可能であるが、実際に量産加工を考えると、肉厚の厚い素管を使用する必要があること、芯金4aの熱容量を低減させるためには、凹部9やジャーナル部内径D4(図3の削り出し部16b)の他、胴部肉厚も薄くするため、素管のほとんどを切屑とすることから、加工タクトが延び、削りだすメリットは少ないと言える。芯金4aの形状としては、特開2002−126904号や特開2002−126824号で示したようなリブ付でもいいし、もちろん、リブなしでも問題ない。
【0044】
図6は本発明に係る第2の実施形態の加熱ローラの断面図である。図6に示すように、第2の実施形態の加熱ローラの構成は、第1の実施形態の加熱ローラと比べて、干渉部材17を設けた点が大きく異なっている。
【0045】
芯金4aは、アルミニウム合金のパイプ材で胴部外径D1:φ25mm、加熱ローラ4として立上り時間も重要なため、胴部を薄肉化しており、胴部肉厚0.4mmとする。両端のジャーナル部は、干渉部材17の肉厚分を1mm確保とすると、ジャーナル部外径D5:φ23mmで、強度確保のため肉厚1mm以上とするジャーナル部内径D4:φ21。芯金4aの内面には、熱の吸収を高めるため、黒色塗装15を行い、芯金4aの外周面には、組み合わされる定着ベルト2との接触による磨耗防止のため、アルマイト処理やテフロン(登録商標)塗装を行って離型層8を形成する。芯金4aの胴部とジャーナル部4fとの間に位置する円周状の凹部9の底部の外径D3は、φ21mmとし、その内径D6はφ19mmとしている。
【0046】
組み合わす干渉部材17は、図8(a),(b)に示すように、外径φ25mm内径φ23mmで、軸方向への脱落を防ぐための肩部17aが設けられている。材質としては、加熱温度に耐えられるようにPPS(ポリフェニレンサルファイト゛)などで作られる。
【0047】
この芯金4aは、特開2002−126904や特開2002−126824で示したような、絞りローラによる絞り加工によって縮径し、両端部のジャーナル部4fおよび凹部9を成形している。絞りローラによるこれらの成形は、加工油や洗浄剤の不要な乾式で行え、かつ、胴部保持で加工が行われるため、芯金の同軸度を確保できる工法である。一般には、ジャーナル部の縮径加工はスウェージ加工が用いられるが、型の関係から、本発明のように、ジャーナル端部より小径の部分が胴部近くにある場合には、同様の加工は難しい。
【0048】
この芯金のジャーナル部4fに干渉部材17を組み合わせることで、加熱ローラ4の芯金4aから、軸受11への熱の伝達を妨げることが可能となり、加熱ローラ4の軸方向での温度分布を均一にできる。
【0049】
定着装置において、加熱ローラ4に働く定着ベルト2による張力は、10N〜20N程度が設定されている。この張力下において、加熱ローラ4を定着装置に組み付け、本実施形態の干渉部材17を用いたものと、用いないものを比較評価した。加熱ローラには、外径φ30mm、肉厚0.3mmのアルミ芯金を用い、定着装置上で100時間以上の空回しを実施している。
【0050】
この結果、干渉部材17を用いない場合は、曲がりの増加量(振れの増加量と同じ意味である)として0.3mm、曲がりが増加した。これに対し、干渉部材17を用いた場合には、曲がりの増加は0.01mm以下であり、曲がりは発生しない。
【0051】
すなわち、図10(a)に示すように、干渉部材17を用いない場合では、加熱ローラの芯金を曲げた状態で、回転をさせたことによるストレスが蓄積され、芯金が塑性変形を起こしたものと考えられる。それに対し、図10(b)に示すように、干渉部材17を用いることで、芯金4aにかかるストレス自体を低減でき、その状態での回転では、ストレスの蓄積がわずかであったため、曲がらなかったと予想できる。
【0052】
図8は図6の加熱ローラに備える干渉部材を示す図であり、(a)は干渉部材の正面図、(b)は干渉部材の側面図、(c)は変形例の干渉部材の正面図、(d)は変形例の干渉部材の側面図である。
【0053】
さらに、図8(c),(d)に示すように、干渉部材17の内周面を傾斜角17bで軸方向に傾斜させることで、図10(b)のように、定着装置内での加熱ローラ4の姿勢を曲げた状態ではあるが、過度に芯金4aにストレスを与えない状態で支持することが可能となる。その結果、経時で芯金4aに蓄積されるストレスを低減できるため、芯金寿命の低下を防ぐことができる。
【0054】
加熱ローラを曲げた状態で使用するために、この状態でも定着ベルト2との接触を確実にする手段として、加熱ローラ4の中央部を太らせることで、十分に対応は可能であり、問題にはならない。
【0055】
上記目的を達成するために、本発明に係る実施形態の定着装置では、加熱ローラ4の芯金4aの胴部外径D1と軸受11が支持されるジャーナル部外径D5との間に、円周状の凹部9を設けている。このとき、芯金4aの胴部外径D1とジャーナル部外径D5とは類似径となっている。
【0056】
最後に、上記説明では、芯金4aの胴部外径D1とジャーナル部外径D5とがほぼ同径の場合で説明しているが、逆に胴部外径D1の方がジャーナル部外径D5より小さい組み合わせでも、問題なく適用できる。このときのメリットとしては、芯金4aの胴部がより小径の加熱ローラ4でも、大径の軸受11を使用することができるので、特別な小径の軸受を製作しなくても小径の加熱ローラ4を使用可能にできるなどがある。なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の加熱ローラの断面図である。
【図2】図1の加熱ローラのジャーナル部周辺の拡大断面図である。
【図3】図2の加熱ローラの変形例を示す拡大断面図である。
【図4】図2の加熱ローラにハロゲンヒータを組み付けた状態を示す拡大断面図である。
【図5】図1の加熱ローラに定着ベルトを装着した状態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る第2の実施形態の加熱ローラの断面図である。
【図7】図6の加熱ローラのジャーナル部周辺の拡大断面図である。
【図8】図6の加熱ローラに備える干渉部材を示す図であり、(a)は干渉部材の正面図、(b)は干渉部材の側面図、(c)は変形例の干渉部材の正面図、(d)は変形例の干渉部材の側面図である。
【図9】図6の加熱ローラに定着ベルトを装着した状態を示す断面図である。
【図10】図1の加熱ローラと図6の加熱ローラとを使用状態で比較した図であり、(a)は図1の加熱ローラ、(b)は図6の加熱ローラである。
【図11】定着装置の基本構成を示す図である。
【図12】従来の加熱ローラの構成を示す断面図である。
【図13】従来の加熱ローラのジャーナル部周辺の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 定着ローラ
2 定着ベルト
3 加圧ローラ
4 加熱ローラ
4a 芯金
4b 胴部外周面
4c 胴部内周面
4d 寄り止め逃げ部外周面
4e ジャーナル部内周面
4f ジャーナル部
4g 段差部
4h 内周面
4i 抜け止め
4j 底部外周面
4k 立ち上がり部
5 ハロゲンヒータ
5a 第1のヒータ
5b 第2のヒータ
6 トナー像
7 記録紙
8 離型層
9 凹部
10 寄り止め部材
11 軸受
14 封止部
15 黒色塗装
16a 削りだし部
16b 削りだし部
17 干渉部材
17a 肩部
17b 傾斜角
D1 胴部外径
D2 胴部内径
D3 外径
D4 ジャーナル部内径
D5 ジャーナル部外径
D6 凹部の内径
F テンション力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトの内周面の幅方向両端に設けられた寄り止め部の間に圧接して前記無端ベルトを加熱する加熱ローラにおいて、
前記加熱ローラの胴部の端部と前記加熱ローラの端部のジャーナル部との間の円周上に形成された凹部を備え、該凹部は、前記胴部の端部に隣接して配置され、胴部外径を高位置とし、且つ寄り止め部より下方を低位置とする段差と、該段差の低位置から軸方向に連続する細径部と、該細径部から寄り止め部の外端面を囲むように立ち上がる立ち上がり部とを備えていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項2】
前記加熱ローラの内周面のうち、凹部に対応する内周面より外側を無塗装面としたことを特徴とする請求項1に記載の加熱ローラ。
【請求項3】
前記加熱ローラの芯金が一部材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱ローラ。
【請求項4】
前記芯金が絞り加工により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の加熱ローラ。
【請求項5】
前記ジャーナル部外径が胴部外径より太径であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の加熱ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の加熱ローラの内部に配光特性の異なる複数本の加熱手段が配置され、該複数本の加熱手段により前記無端ベルトを介して定着部に伝熱していることを特徴とする加熱定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−9954(P2006−9954A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188193(P2004−188193)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】