説明

加熱伝導体とこれを有する定着装置および画像形成装置

【課題】加熱源の発熱分布の制約を受けることなく任意の発熱分布を熱伝導体の形状により得る。
【解決手段】軸方向(長手方向)の断面で熱伝導体2の外形形状を複数設ける。この定着ベルト1内径と熱伝導体2外径で差の異なる部位を任意の箇所に設けて、定着ベルト1の発熱配分を任意に変更する。例えば、定着ベルト1の端部側で熱伝導体2との径差を大きく、中央部側の径差を大径部12bにより小さくして、端部の温度上昇を抑制する(図1(c))。また、逆に中央部の温度上昇を抑制する図1(d)のようにして、任意の温度配分を熱伝導体2の形状により得ることができる。また、軸方向全体的に熱伝導をさせる場合、熱伝導体2の軸方向に、ほぼ等間隔のリブ形状12aを設ける(図1(b))。これにより、摩擦抵抗を上げることなく定着ベルト1の温度を上げることができる。加熱ヒータ3の温度配分を変更せず熱伝導体2,定着ベルト1の発熱分布を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式等を利用したファクシミリ、プリンタ、複写機等、画像形成装置に適用される定着に係る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した画像形成装置は広く知られている。その画像形成プロセスは、像担持体である感光体ドラムの表面に静電潜像を形成し、感光体ドラム上の静電潜像を現像剤であるトナーによって現像して可視像化し、現像された画像を転写装置により記録媒体に転写してトナー像を担持させる。その後、記録媒体上の未定着のトナー像を定着装置によって加圧/加熱し、記録媒体上のトナー像を定着するものである。
【0003】
定着装置には、対向するローラまたはベルトあるいはそれらの組み合わせにより構成された定着回転体が設けられており、記録媒体である記録紙をニップ部にて挟み込み、加圧/加熱して、トナー像を記録紙上に定着する。そして、この種の定着装置には、従来各種方式のものが提案さている。
【0004】
図6は従来のベルト定着方式の定着装置を示す概略構成図であって、ベルト定着方式の定着装置は、加熱ヒータ103を有する加熱ローラ102と、表層にゴム層が設けられた定着ローラ104と、加熱ローラ102と定着ローラ104とに架設された定着ベルト101と、定着ベルト101を介して定着ローラ104に圧接して定着ニップNを形成する加圧ローラ109とを具備するものである。
【0005】
そして、トナー像が転写された記録媒体の記録紙Pが、定着ベルト101と加圧ローラ109間の定着ニップNに搬送されると、記録紙Pが定着ニップNを通過する過程において記録紙P上のトナー像が加熱および加圧されて、記録紙Pに定着される。
【0006】
また、図7は従来のフィルム加熱方式の定着装置を示す概略構成図であって、フィルム加熱方式の定着装置は、特許文献1に記載されているように、一般的に、加熱ヒータ(セラミックヒータ)113と加圧ローラ119との間に、耐熱性フィルム(定着ベルト111)を挟むようにして定着ニップNを形成する構成のものである。
【0007】
そして、定着ニップNの耐熱性フィルム(定着ベルト111)と加圧ローラ119との間に記録紙を導入して、記録紙を挟持して耐熱性フィルム(定着ベルト111)と共に搬送させる。このとき定着ニップNにおいて、記録紙に対して加熱ヒータ(セラミックヒータ)113からの熱が耐熱性フィルム(定着ベルト111)を介して加えられると共に加圧されて、記録紙上のトナー像が定着される。
【0008】
前記フィルム加熱方式の定着装置は、セラミックヒータと、フィルムからなる低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができると共に、画像形成装置の画像形成実行時のみ、セラミックヒータに通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよく、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く、かつスタンバイ時の消費電力も大幅に小さいなどの利点がある。
【0009】
また、特許文献2に記載されているような加圧ベルト方式の定着装置では、表面が弾性変形する回転可能な加熱定着ロールと、加熱定着ロールに接触したまま走行可能なエンドレスベルトと、エンドレスベルトの内側に非回転状態で配置され、エンドレスベルトを加熱定着ロールに圧接させてエンドレスベルトと加熱定着ロールとの間に記録紙が通過するベルトニップを設ける加圧パッドとを備えている。
【0010】
前記加圧ベルト方式の定着装置によれば、加圧パッドの押圧により加熱定着ロールの表面を弾性変形させ、記録紙と加熱定着ロールとの接触面積を広げることにより、熱伝導効率を大幅に向上させ、エネルギー消費を抑制すると同時に小型化を実現することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前記従来技術において、特許文献1に記載されているフィルム加熱方式の定着装置では、定着ベルト(耐熱性フィルム)における耐久性と温度の安定性とに問題があった。
【0012】
すなわち、セラミックヒータと、定着ベルト(耐熱性フィルム)との摺動面の耐磨耗性が不十分であり、長時間運転すると連続摩擦を繰り返す面が荒れて摩擦抵抗が増大し、定着ベルトの走行が不安定になるか、もしくは、定着装置の駆動トルクが増大するなどの現象が生じる(課題1)。
【0013】
その結果、画像を形成する記録紙のスリップが生じて形成画像のずれが生じる。あるいは、駆動ギヤに加わる応力が増大し、ギヤの破損を引き起こすという不具合が発生する。
【0014】
また、フィルム加熱方式の定着装置では、定着ベルトを定着ニップにおいて局所的に加熱しているため、回転する定着ベルトが定着ニップの入口に戻ってくる際に、ベルト温度は最も冷えた状態になり、特に、高速回転を行う場合、定着不良が生じやすいという問題がある(課題2)。
【0015】
前記のような定着ベルトとセラミックヒータなどの固定部材との摺動性の問題を改善する手段として、特許文献2には、圧力パッドの表層に低摩擦シート(シート状摺動材)としてPTFE(Polytetrafluoroethylene)を含浸させたガラス繊維シート(PTFE含浸ガラスクロス)を用いる方法が記載されている。
【0016】
しかし、特許文献2および特許文献3に記載の加圧ベルト方式の定着装置では、定着ローラの熱容量が大きく昇温が遅いため、ウォームアップにかかる時間が長いという問題がある(課題3)。
【0017】
そこで、課題1〜3を同時に解決する手段として、特許文献4に記載の技術が公開されている。
【0018】
特許文献4では、図8示すような定着部の構成において、定着ベルト側の熱容量を増加させることなくウォームアップを短縮することができる構成を提案している。しかしながら、パイプ状の熱伝導体2の熱容量が小さいために加熱ヒータ(ハロゲンヒータ)3の配熱分布の影響を直接受けて温度斑が発生しやすかったり、定着ベルト1とパイプ状の熱伝導体2の接触により定着ベルト1の温度が変化してしまったりする不具合があった。
【0019】
このような定着装置においては、定着ベルト1の表面温度分布は加熱ヒータ3(ハロゲンヒータ、IHコイル等)側の配熱分布、およびパイプ状の熱伝導体2と定着ベルト1の接触面によって影響されて、温度均一性を安定させることが困難であった。
【0020】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するものであり、加熱ヒータ等の熱源の構成によらず熱伝導体と定着ベルト(無端ベルト)の接触面積(接触部)を制御して熱伝導差によって温度配分を決定することにより、加熱源の発熱分布の制約を受けることなく任意の発熱分布を熱伝導体の形状により得る構成とした加熱伝導体とこれを有する定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載した加熱伝導体は、可撓性の無端ベルトと、無端ベルトの内部に近接して無端ベルトと断面が略相似形となる熱伝導体と、熱伝導体を加熱する加熱源と、無端ベルトの内部で加圧ローラと対向してニップ部を形成するニップ形成部材と、ニップ形成部材を支持する加圧部材とを具備し、加熱源により熱伝導体を介して無端ベルトを加熱し、加圧ローラの回転力により無端ベルトを連れ回りさせる加熱伝導体において、熱伝導体の長手方向と直交する断面形状が、長手方向の任意の位置において、少なくとも2種類以上の異なる断面形状を有することを特徴とする。
【0022】
この構成によって、熱伝導体と無端ベルトの接触面積を任意に変えることにより加熱源の発熱分布を変えずに、無端ベルトの発熱分布を任意に制御でき、狭い範囲の任意の箇所で定着ベルトを支持して定着ベルト駆動のトルクアップを防止できる。
【0023】
また、請求項2に記載した発明は、請求項1の加熱伝導体において、熱伝導体の断面形状が、熱伝導体の記録紙搬送中央部を基準として、記録紙搬送中央部を対称に漸次的に異なることを特徴とする。
【0024】
この構成によって、鼓形状に形成した熱伝導体により無端ベルトの走行性を安定させ、さらに無端ベルト端部と熱伝導体の端部を密着させて経時における端部からのグリス流出を防止できる。
【0025】
また、請求項3に記載した発明は、請求項1の加熱伝導体において、熱伝導体の断面形状が、搬送される記録紙サイズに応じて適宜変位する構成としたことを特徴とする。
【0026】
この構成によって、搬送される記録紙サイズに応じ、適宜熱伝導体の変形量を制御して、無端ベルトとの接触面積を変化させ伝熱量を制御して、小サイズの記録紙の連続通紙時に発生する無端ベルト端部の温度上昇を防止できる。
【0027】
また、請求項4に記載した発明は、請求項1の加熱伝導体において、熱伝導体の断面形状が、温度検知手段の検知した情報に基づき、熱伝導体の長手方向の一端と他端とのそれぞれが個々に変位する構成としたことを特徴とする。
【0028】
この構成によって、熱伝導体の長手方向に温度勾配が発生したとき、検知温度に応じ熱伝導体と無端ベルトとの接触面積を変更して温度勾配を補正できる。
【0029】
また、請求項5に記載した発明は、請求項1〜4の加熱伝導体において、熱伝導体を加熱する加熱源として、電磁誘導の誘導電流によって発熱する電磁誘導装置を備えたことを特徴とする。
【0030】
この構成によって、熱変換効率の高い電磁誘導の加熱源を用いることによる、発熱分布を変更するために磁束密度を制御する複雑な構成を必要とせずに、簡単な構成で同様の効果を得られる。
【0031】
また、請求項6に記載した定着装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱伝導体を有することにより、簡単な構成で発熱分布を任意に制御することができる。
【0032】
また、請求項7に記載した画像形成装置は、請求項6記載の定着装置を搭載したことにより、簡単な構成で発熱分布を任意に制御することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、熱伝導体と定着ベルト(無端ベルト)の接触面積を任意に変えることができるので発熱源(ハロゲンヒータ、IHコイル磁束分布等)の発熱分布を変えることなく、熱伝導体の形状制御によって無端ベルトの発熱分布を任意に制御でき、また狭い範囲の任意の箇所で定着ベルト(無端ベルト)を支持する構成とでき定着ベルト駆動のトルクアップを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態1の実施例1における(a)は定着部、(c)〜(d)は定着部に用いる熱伝導体の形状を示す概略図
【図2】本実施形態1の定着装置を用いる画像形成装置を示す概略図
【図3】本実施形態1の実施例2における熱伝導体の形状を示す概略図
【図4】本実施形態1の実施例3における熱伝導体の概略構成を示す(a)は断面図、(b)は正面図
【図5】本発明の実施形態2における定着部の概略構成を示す図
【図6】従来のベルト定着方式の定着装置を示す概略構成図
【図7】従来のフィルム加熱方式の定着装置を示す概略構成図
【図8】従来のウォームアップを短縮した定着装置を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
ここで、本発明が実施される定着装置の例として、前述の図8に示す定着部21のように、加圧回転体の加圧ローラ9と定着ベルト1とベルトの内周面に近接させたパイプ状金属体(熱伝導体2)を有し、熱源となる加熱ヒータ(ハロゲンヒータ)3により、この熱伝導体2が加熱される構成がある。
【0037】
この定着ベルト1内には、熱伝導体2に保持されたニップ形成部材4があり、定着ベルト1内面と直接(もしくは、摺動シートを介して間接的に)摺動するようになっている。
【0038】
図8では定着ニップNの部分が凹形状であるが、平坦形状やその他の形状であってもよい(定着ニップNの形状が凹形状の方が、記録紙先端の排出方向が加圧ローラ9寄りになり、分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される)。
【0039】
加圧ローラ9は中空の金属ローラにシリコーンゴム層があり、離型性を得るために表面に離型層(PFAまたはPTFE層)が設けてある。
【0040】
加圧ローラ9は画像形成装置に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。また、加圧ローラ9はスプリングなどにより定着ベルト1側に押し付けられており、ゴム層が押しつぶされて変形することにより、所定のニップ幅を有している。加圧ローラ9は中実のローラであってもよいが、中空の方が熱容量は少なくてよい。また、加圧ローラ9にハロゲンヒータなどの加熱源を有していてもよい。
【0041】
シリコーンゴム層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ9内部にヒータがない場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0042】
定着ベルト1はニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を用いた無端ベルト(もしくはフィルム)とする。ベルトの表層はPFAまたはPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性をもたせている。
【0043】
定着ベルト1の基材とPFAまたはPTFE層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があってもよい。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押しつぶして定着するときにベルト表面の微妙な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の跡が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微妙な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0044】
中空の熱伝導体2はアルミ、または鉄、ステンレスなどの金属を用いる。図示した金属体はベルト直径より1mm直径の小さい円形としているが、角型であっても、その他の断面形状であってもよい。
【0045】
熱伝導体2の内部にはニップ形成部材4、断熱材4aを支持するための加圧部材5を設けている。このとき、ハロゲンヒータなどの輻射熱などにより支持体が加熱されてしまう場合は、加圧部材5表面に断熱もしくは鏡面処理を行い、加熱されることを防止することで、無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
【0046】
熱伝導体2を昇温させる熱源は、図示したハロゲンヒータ(加熱ヒータ3)でもよいが、IH(誘導加熱)方式であってもよいし、また、抵抗発熱体、カーボンヒータ等であってもよい。
【0047】
定着ベルト1は加圧ローラ9により連れ回り回転する。図8の場合は加圧ローラ9が図示しない駆動源により回転し、定着ニップNの部分で定着ベルト1に駆動力が伝達されることにより定着ベルト1が回転する。定着ベルト1は定着ニップNの部分で挟み込まれて回転するが、定着ニップN以外では熱伝導体2にガイドされており、一定の距離以上に定着ベルト1の位置が熱伝導体2から離れてしまわないよう案内されている。
【0048】
定着ベルト1と熱電導体2の界面はシリコーンオイルやフッ素グリス等の潤滑剤を有する。そして、熱伝導体2表面の表面粗さは潤滑剤の粒径以上とし、潤滑剤を保持しやすくしている。表面を粗らす方法としては、サンドブラストのように物理的に粗らす方法や、エッチングのように化学的に粗らす方法、小径ビーズを混ぜた塗料を塗布する方法などあるが、いずれの方法でもよい。
【0049】
図1(a)〜(d)は本発明の実施形態1における実施例1の定着部に用いる熱伝導体の形状を示す図である。また、前述の従来例を示す図8において説明した構成部材に対応し同等の機能を有するものには同一の符号を付して示す。
【0050】
本実施例1では図1(a)に示すように、熱伝導体2は平板を円弧形状に曲げて定着ベルト1とほぼ近似する円弧形状部とニップ形成部材4を保持する凹形状部4bを有している。金属材料の肉厚は0.1〜0.3mm程度の薄肉で低熱容量化によりウォームアップタイムを短縮している反面、薄肉であるために剛性は低く弾性を保持しながら定着ベルト1を支持している。
【0051】
ニップ形成部材4はシリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体から構成されている。その加圧ローラ9側は加圧ローラ9の外径曲率に近似した湾曲面を有し、断熱材(図示せず)を介して熱伝導体2に支持されている。ニップを形成する際には図示しないスプリング等の付勢手段により加圧ローラ9がニップ形成部材4に押し当てられてニップを形成している。
【0052】
記録紙を搬送する際は、加圧ローラ9からの回転駆動(図示しないモータ等の駆動源)によって、定着ベルト1は表面の摩擦抵抗により連れ回る構成となっている。定着ベルト1の内径と熱伝導体2の外径の関係は径差で0.5〜1mm程度であり定着ベルト1側が大きくなっている。この径差が少なすぎると定着ベルト1と熱伝導体2間の抵抗が大きく、駆動トルクが大きくなってしまう。このため潤滑剤として耐熱性グリス等の付与する必要があり、グリスによって摺動抵抗を低下させているが長期使用に際してはグリス劣化等により安定して低トルクを得ることが難しい。逆にこの径差が大きいと定着ベルト1と熱伝導体2間の摺動抵抗は小さくなるが、熱伝導体2と定着ベルト1間に空気層が生じて伝熱を低下させ、定着ベルト表面温度を所望温度にするのに時間がかかったり、定着ベルト表面温度が斑になったりする原因となっている。
【0053】
また、定着ベルト1の駆動時にはニップ形成部材4により定着ベルト1が図1(a)の矢印方向に回転する。しかし、ニップ形成部材4の上流側は定着ベルト1に密着しやすい反面、ニップ形成部材4の下流側は定着ベルト1の剛性、およびニップ形成部材4のニップ方向により密着性が低い。これにより特にニップ形成部材4の下流側で定着ベルト1と熱伝導体2の密着性が不安定な状態になりやすい。このように定着ベルト1と熱伝導体2の密着性、および接触面積が表面温度を制御する要因となっている。
【0054】
熱伝導体2の内部について説明すると、本実施1では内部にハロゲンヒータ等の加熱装置(加熱ヒータ3)を有しておりその輻射熱によって熱伝導体2の内面を温めて定着ベルト1へ伝熱し、定着ベルト1表面温度を温度検知素子(図示せず)によって検知して温度制御している。また熱伝導体2の内面には熱吸収効率を高めるために黒体塗装を施して効率を上げている。このとき、加熱装置はIH誘導加熱装置であってもよい。
【0055】
前述のように定着ベルト1の内径と熱伝導体2の外径の関係は定着ベルト1の温度に影響しているが、本実施例1では軸方向(長手方向)の断面で熱伝導体2の外形形状を複数設けており、つまり定着ベルト1内径と熱伝導体2外径で差の異なる部位を任意の箇所に設けることにより発熱配分を任意に変更可能としている。例えば、図1(c)に示すように定着ベルト1の端部側で熱伝導体2との径差を大きく、中央部側の径差を大径部12bにより小さくして、端部の温度上昇を抑制した構成、逆にした図1(d)の場合には、中央部の温度上昇を抑制した構成というように、任意の温度配分を熱伝導体2の形状によって得る構成となっている。
【0056】
また、軸方向全体的に熱伝導をさせたい場合には、図1(b)に示す、ほぼ等間隔のリブ形状12aを設けることにより前述の摩擦抵抗を上げることなく定着ベルト1の温度を効率よく上げることができる。
【0057】
図2は本実施形態1の定着装置を用いる画像形成装置であるカラープリンタの概略構成を示す図であり、30は、ブラック用感光体ドラム31,マゼンタ用感光体ドラム32,シアン用感光体ドラム33,イエロー用感光体ドラム34、および各感光体ドラム31〜34にそれぞれ対応して設置された公知のトナー現像部、転写部などが設置されている電子写真方式の画像形成部である。本例では、外部から入力された画像データに基づいて、光学系ユニット35にて各色に対応してそれぞれの感光体ドラム31〜34を露光して潜像を形成し、それぞれトナー現像部で顕像化して、各トナー像を中間転写ベルト36に転写することでカラートナー画像とし、さらに転写部37で搬送されてくる記録媒体としての記録紙に転写する。
【0058】
記録紙は、給紙カセット38から給紙ローラ39にて給紙され、レジストローラ40においてタイミングが計られてから、転写部37においてカラートナー画像が転写され、定着部21に送られる。定着部21で転写後の記録紙は加熱加圧してトナー像の定着処理を受ける。定着後の記録紙は、排紙ローラ22にて装置外部の排紙トレイ23へ排出される。
【0059】
このカラープリンタでは、定着部21において、前述の実施例1にて説明した定着ベルト(無端ベルト)1,熱伝導体2,熱源の加熱ヒータ3,加圧ローラ4などからなる構成の定着装置を用いており、従って、安定した定着ができるため、高品位の画像形成が行われる。
【0060】
図3は本実施形態1の実施例2における熱伝導体の形状を示す図である。前述した図1(b)〜(d)と同様に、熱伝導体2の外径と定着ベルト1の内径との隙間を変更するものであり、熱伝導体2の外径部を漸次的に中央部から端部に向けて大径化する。
【0061】
このように構成することで、定着ベルト1と熱伝導体2間の摺動グリス12cが端部から外部に漏れ難くなる、また熱伝導体2に鼓形状が形成されるので定着ベルト1の走行性が安定する等の利点が上げられる。
【0062】
定着ベルト1は前述したように加圧ローラ(図示せず)の回転により従動回転するが、熱伝導体2の鼓形状により記録紙搬送時に両端のいずれか片側へ定着ベルト1が移動して片寄ることを防止している。その他の構成や動作は前述した実施例1と同じである。
【0063】
図4(a),(b)は、本実施形態1の実施例3における熱伝導体の構成を示す図である。本実施例3の特徴は、熱伝導体2を外部より加圧変形させる部材(カム15)を設けて構成していることである。
【0064】
熱伝導体2を支持する両端部(通紙範囲外)に、熱伝達体2を押圧する押圧部材(カム15)を設けたものである。この押圧部材は回動式であってもよいし、一方向に遥動する機構であってもよく、通紙する記録紙サイズの情報に基づきその位置を制御させており、熱伝導体2の両端部はカム15の外部からの力(駆動ギヤの回転により軸16を介してカム15に伝達される)により変形する。
【0065】
この際、熱伝導体2の両端部は、図4(a)のように水平方向に扁平し定着ベルト1との接触面積が低減する。一方で図4(b)に示すように中央部分については、端部の押圧の影響を受け難い(中央部程剛性が高い)ために円筒形状が崩れることなく熱伝導に影響をあたえることが少ない。
【0066】
例えば、小サイズの記録紙を連続して通紙するような場合に、記録紙との熱授受の関係によって定着ベルト1の軸方向に温度勾配が発生してしまうことは周知であるが、前述したような構成とすることによって、端部の押圧による熱伝導体2の変形により端部の熱伝達が低下して、定着ベルト1表面の温度上昇を防止することができ、小サイズの記録紙の生産性低下を防止することができる。
【0067】
また、押圧部材(カム15)を夫々独立して制御可能とすることによって、熱伝導体2を温度検知センサにより検知した温度の情報を元にフィードバックし制御するようにしてもよい。さらに、図4(a),(b)では、押圧部材(カム15)を熱伝導体2の下部に配置した構成としているが、上部であってもよく、あるいは構造的に可能であれば上下の2箇所に配置してもよい。
【0068】
図5は本発明の実施形態2における定着部の構成を示す図である。本実施形態2の定着部は、電磁誘導装置(IHコイル:加熱ヒータ13)を加熱源として用いている。被加熱部材を熱伝導体2とした場合は前述の実施形態1と同様であるが、被加熱部材を定着ベルト1として加熱源を設けた構成においては、前述した構成とは逆に、熱伝導体2との接触により熱を奪われるため温度が低下することになる。このため前述の実施形態1の説明とは逆に、定着ベルト1と熱伝導体2を非接触状態とすることで、同様の効果を得る構成となっている。
【0069】
このように構成された本実施形態によれば、熱伝導体2と定着ベルト1の接触面積を任意に変えることにより、加熱ヒータ3の発熱分布を変えることなく、熱伝導体2の形状制御によって定着ベルト1の発熱分布を任意に制御でき、また狭い範囲の任意の箇所で定着ベルト1を支持することができ定着ベルト1を駆動するためのトルクアップを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、熱伝導体と定着ベルトの接触面積を任意に変えることにより、発熱源の発熱分布を変えることなく、熱伝導体の形状制御により定着ベルトの発熱分布を任意に制御でき、画像形成装置や定着装置の加熱伝導体として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1,101,111 定着ベルト
2,2a,2b,2c 熱伝導体
3,13,103,113 加熱ヒータ
4 ニップ形成部材
4a 断熱材
4b 凹形状部
5 加圧部材
9,109,119 加圧ローラ
11 サーミスタ
12a リブ形状
12b 大径部
12c 摺動グリス
15 カム
16 軸
21 定着部
102 加熱ローラ
104 定着ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開平4−44075号公報
【特許文献2】特開平8−262903号公報
【特許文献3】特開平10−213984号公報
【特許文献4】特開2007−334205号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の無端ベルトと、前記無端ベルトの内部に近接して前記無端ベルトと断面が略相似形となる熱伝導体と、前記熱伝導体を加熱する加熱源と、前記無端ベルトの内部で加圧ローラと対向してニップ部を形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する加圧部材とを具備し、前記加熱源により熱伝導体を介して無端ベルトを加熱し、前記加圧ローラの回転力により前記無端ベルトを連れ回りさせる加熱伝導体において、
前記熱伝導体の長手方向と直交する断面形状が、前記長手方向の任意の位置において、少なくとも2種類以上の異なる断面形状を有することを特徴とする加熱伝導体。
【請求項2】
前記熱伝導体の断面形状が、前記熱伝導体の記録紙搬送中央部を基準として、前記記録紙搬送中央部を対称に漸次的に異なることを特徴とする請求項1記載の加熱伝導体。
【請求項3】
前記熱伝導体の断面形状が、搬送される記録紙サイズに応じて適宜変位する構成としたことを特徴とする請求項1記載の加熱伝導体。
【請求項4】
前記熱伝導体の断面形状が、温度検知手段の検知した情報に基づき、前記熱伝導体の長手方向の一端と他端とのそれぞれが個々に変位する構成としたことを特徴とする請求項1記載の加熱伝導体。
【請求項5】
前記熱伝導体を加熱する加熱源として、電磁誘導の誘導電流によって発熱する電磁誘導装置を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱伝導体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱伝導体を有することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項6記載の定着装置を搭載したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−154188(P2011−154188A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15541(P2010−15541)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】