説明

加熱冷却装置

【課題】一つの容器に電磁誘導発熱機構と冷却機構を付設した加熱冷却装置において、冷却機構による冷却能力を高めるようにし、バイオエタノールの製造プロセスに適用できるようにすること。
【解決手段】内部に被処理物9を挿入する容器本体1の外周面を囲むようにジャケット室2を、容器本体1の内周面に沿って冷却媒体を通流する冷却パイプ8を設置し、被処理物9を加熱する際には、ジャケット室2の内部に電磁誘導発熱機構5の発熱により液溜め部4内の液相の熱媒体3を気化させた気相の熱媒体3aを充満させ、その凝縮潜熱の放出によって容器本体1を加熱して被処理物9を加熱し、被処理物9を冷却する際には、冷却パイプ8に冷却媒体を通流して被処理物9を直接に冷却する。これにより一つの加熱冷却装置によって加熱、冷却、発酵温度保持、加熱の工程を必要とするバイオエタノールの製造プロセスに適用可となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に挿入した被処理物を所定の温度に加熱および冷却する加熱冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内に挿入した被処理物を所定の温度に加熱および冷却する加熱冷却装置として、電磁誘導発熱機構と冷却機構を付設したものは既によく知られている。この装置においては、被処理物を挿入する容器本体の周囲に、内部に気液二相の熱媒体を密封したジャケット室を設置し、その熱媒体を電磁誘導発熱機構によって加熱、蒸発させ、蒸発した熱媒体が容器本体に触れることによって凝縮するときに発生する潜熱によって、容器本体を介してその内部にある被処理物を加熱し、また、冷却機構を駆動し、前記ジャケット室内の蒸発した熱媒体を冷却、液化させ、冷却液化した熱媒体が高温の容器本体に触れることによって再び蒸発して、その際の潜熱により容器本体を冷却し、これにより容器本体の内部にある加熱された被処理物あるいは被処理物から発生する熱を除去しながら一定温度に維持したり、または一定温度まで冷却するようにしている。
【特許文献1】特公平4−77225号公報
【特許文献2】特公平7−61401号公報
【特許文献3】実公平7−14782号公報
【特許文献4】特開2000−227269号公報
【0003】
しかし、このように容器本体の周囲に、内部に気液二相の熱媒体を密封したジャケット室を設置し、そのジャケット室内の熱媒体の気化による潜熱の授受で冷却するものでは、凝縮、蒸発による冷却が進行していく過程で電磁誘導発熱機構による熱媒体の温度が低下し、蒸気圧も低下していくため、ジャケット室内の気相の熱媒体の量が次第に減少していき、冷却機構により冷却されて凝縮する熱媒体の量が少なくなる。その結果熱媒体の蒸発による容器本体に対する冷却能力は次第に減退していき、たとえば常温付近までの冷却が困難となり、また常温付近での温度の維持が困難となることがある。
【0004】
ところで、最近、環境問題や原油依存脱却の点から、甜菜、小麦、砂糖キビやトウモロコシ、廃木材などを原料とするバイオエタノールの利用が進められている。バイオエタノールの作成は、砂糖キビや甜菜を原料とする場合には、その原料を搾って糖蜜を作り、その糖蜜を所定の温度(たとえば約30℃)で発酵させ、そのあと遠心分離機で酵母を取り出し、その残りを100℃以上に加熱蒸留してエタノールを作成する。また、木の先端部、枝、根っ子や廃木材を原料とする場合には、その原料を細分し、細分した原料に酵素を加えて所定の温度(たとえば約45℃)に加熱して糖化し、所定の温度(たとえば約30℃)に冷却して酵母を加えその温度に保持して発酵させる。その後、100℃以上に加熱蒸留してエタノールが作成される。小麦やコーンなどの場合には、所定の温度に加熱して澱粉化し、所定の温度(たとえば約30℃)に冷却して酵母を加えその温度に保持して発酵させる。その後、100℃以上に加熱蒸留してエタノールが作成される。いずれの場合においても加熱、冷却、発酵温度保持、加熱の工程を必要とし、バイオエタノールの製造プロセスにおける設備は複雑で多岐となっている。
【0005】
また、バイオエタノールの製造プロセスにおける加熱では化石燃料である重油や、たとえば砂糖キビの場合は、搾りカスを燃やしてボイラーの熱源として用いられており、熱源が重油の場合ではクリーンでなく、また、砂糖キビの搾りカスの場合は原料の無駄使い(砂糖キビの搾りカスもバイオエタノールの原料とすることができる。)となっている。
【0006】
このようなバイオエタノールの製造プロセスに前記のような加熱冷却装置の使用が考えられる。この場合、一つの加熱冷却容器で加熱、冷却、発酵温度保持および加熱を行うことができ、バイオエタノールの製造プロセスにおける設備を簡素にすることができる。また、電気エネルギーを熱源とすることからクリーンであるとともに、砂糖キビの搾りカスの場合のように原料の無駄使いを防止することもできる。しかし、前記従来の加熱冷却装置では冷却能力が劣り、加熱後の冷却および発酵保持温度の維持が困難であるといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、一つの容器に電磁誘導発熱機構と冷却機構を付設した加熱冷却装置において、冷却機構による冷却能力を高めるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部に被処理物を挿入する容器本体と、前記容器本体の肉厚内または外周面に形成されたジャケット室と、前記ジャケット室の内部に連通し内部に気液二相の熱媒体が溜められる液溜め部と、前記液溜め部の内部の液相の熱媒体を加熱して蒸発させる電磁誘導発熱機構と、前記容器本体の内壁に沿って配置された冷却パイプとを備え、前記容器本体内に挿入した被処理物を加熱する際には、前記電磁誘導発熱機構の駆動により前記液溜め部の液相の熱媒体を加熱して蒸発させ、その蒸発による気相熱媒体が前記ジャケット室の内部において凝縮する際の凝縮潜熱の放出によって前記容器本体を加熱し、前記被処理物を冷却する際には、前記冷却パイプに冷却媒体を通流して前記被処理物を冷却してなることを主な特長とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器本体内の被処理物を電磁誘導発熱機構により加熱するので、クリーンかつ省エネルギーが図れる。また、容器本体内の被処理物を容器本体内に設置した冷却パイプに冷媒を通流して冷却をするので、冷却能力が高められ、特に低温状態での温度の維持が可能となる。これにより一つの加熱冷却容器で被処理物を加熱して高温に維持し、またその高温から大幅に冷却して低温へ移行し、さらにはその低温を保持することができ、特にこれらの条件を必要とするバイオエタノールの製造プロセスなどに適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一つの容器に電磁誘導発熱機構と冷却機構を付設した加熱冷却装置において、冷却機構による冷却能力を高めるようにする目的を、内部に被処理物を挿入する容器本体の肉厚内または外周面に、電磁誘導発熱機構により加熱気化された熱媒体を充満させるジャケット室を設けるとともに、前記容器本体内に冷却媒体を通流する冷却パイプを設置することにより実現した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明に係る実施例について図1を参照して説明する。図1は実施例に係る加熱冷却装置の断面図である。図1において、1は熱伝導性の金属(たとえばステンレス、鋳鉄など)からなる容器本体、2は容器本体の外周面を取り囲むように形成されたジャケット室、3は気液二相の熱媒体、4は熱媒体3の液溜め部、5は液溜め部4内の熱媒体3を加熱するための電磁誘導発熱機構で、鉄心6と、これに巻回されてある誘導コイル7とによって主として構成されている。8は冷却パイプで容器本体1の内周面に沿って螺旋状に配置されている。9は容器本体1内に挿入された被処理物、10は被処理物9を攪拌する攪拌機、11は排出バルブである。
【0012】
ジャケット室2の下部は液溜め部4内と連通しており、液溜め部4内の液状の熱媒体3を気化した熱媒体3aをジャケット室2内に充満させる。すなわち、被処理物9を所定の温度に加熱する際には、誘導コイル7に交流電流を流し、電磁誘導発熱機構5をジュール発熱させ、その熱で液状の熱媒体3を加熱して気化させる。気化した熱媒体3aはジャケット室2内に入り、その内面に触れて凝縮液化して液溜め部4内に戻り、再び加熱気化されてジャケット室2内へ移動する。容器本体1はジャケット室2内の気化した熱媒体3aが凝縮液化するとき放出する潜熱により加熱され、この熱を被処理物9に伝達して加熱する。
【0013】
被処理物9を所定の温度に下げるとき、または、被処理物9を所定の低温たとえば約30℃に保持するときは、電磁誘導発熱機構5の発熱を停止又はコントロールし、冷却パイプ8に冷媒(例えば冷却水)を通流し、被処理物9を冷却、または奪熱する。なお、図の例では、冷却パイプ8にフィンを取り付けていないが、熱伝達効果を高めるためフィンを取り付けるようにしてもよい。また、図の例では、冷却パイプ8を円筒状にしているが、冷却パイプは円筒状を半割りとしたパイプにより構成し、容器本体1の内周面にパイプの平坦面を当接するようにしてもよい。この場合、容器本体1の内周面がフィンとして機能する。当然加熱に際してはパイプの外面も加熱され、熱の放出面積を増加することができる。
【0014】
以上のように構成した加熱冷却装置は、一つの加熱冷却装置によって加熱、冷却、発酵温度保持、加熱の工程を必要とするバイオエタノールの製造プロセスに適用することが可能となり、バイオエタノールの製造プロセスにおける設備を簡素にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る加熱冷却装置の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 容器本体
2 ジャケット室
3 気液二相の熱媒体
4 液溜め部
5 電磁誘導発熱機構
6 鉄心
7 誘導コイル
8 冷却パイプ
9 被処理物
10 攪拌機
11 排出バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被処理物を挿入する容器本体と、前記容器本体の肉厚内または外周面に形成されたジャケット室と、前記ジャケット室の内部に連通し内部に気液二相の熱媒体が溜められる液溜め部と、前記液溜め部の内部の液相の熱媒体を加熱して蒸発させる電磁誘導発熱機構と、前記容器本体の内壁に沿って配置された冷却パイプとを備え、前記容器本体内に挿入した被処理物を加熱する際には、前記電磁誘導発熱機構の駆動により前記液溜め部の液相の熱媒体を加熱して蒸発させ、その蒸発による気相熱媒体が前記ジャケット室の内部において凝縮する際の凝縮潜熱の放出によって前記容器本体を加熱し、前記被処理物を冷却する際には、前記冷却パイプに冷却媒体を通流して前記被処理物を冷却してなることを特長とする加熱冷却装置。
【請求項2】
バイオエタノールの製造プロセスに用いることを特徴とする請求項1に記載の加熱冷却装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−47347(P2009−47347A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213281(P2007−213281)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】