説明

加熱用プレート及び加熱用プレートの製造方法

【課題】
錆の発生を防ぎ、寿命を飛躍的に伸ばすと共にリサイクルの容易な構造にした加熱用プレート及びこれの製造方法を提供する。
【解決手段】
加熱用プレート11は、鉄基材2と、鉄基材2の表面2a側に形成された鉄−アルミニウム合金層3と、鉄−アルミニウム合金層3の表面3a側に形成されたアルミニウムメッキ層4と、アルミニウムメッキ層4の表面4aに形成された溶射層5と、溶射層5の表面5aに形成された封口処理層6と、封口処理層6の表面6aに塗布されたプライマー層7と、プライマー層7の表面7aに形成されたフッ素樹脂層8とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、食材等を加熱して調理する、表面がフッ素樹脂加工された加熱プレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面がフッ素樹脂加工された加熱用プレートが存在する。当該加熱用プレートは、鉄基材と、鉄基材の表面に溶射された粉末溶射層と、粉末溶射層の表面に塗装されたプライマー層と、プライマー層の表面に塗布されたフッ素樹脂層とからなる(例えば、特許文献1)。また、従来の加熱用プレートの製造方法は、鉄基材の表面をブラスト加工し、鉄基材のブラスト加工した表面に溶射材を溶射して溶射層を形成し、溶射層の表面にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、プライマー層の表面にフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層を形成することによって加熱用プレートを製造する。
【特許文献1】特開平5−245049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の加熱用プレートおよび従来の製造方法によって製造された加熱用プレートは、粉末溶射層が金属、合金、サーメット又はセラミックス等の溶射粉末で構成され、この粉末溶射層の粉末間が互いに溶着せずに隙間が形成されている。そのため、上記従来の加熱用プレートは、通常、フッ素樹脂層により、水分、油分をはじいているが、長期間使用していると、フッ素樹脂層がひび割れたり、欠けたりすることになり、その欠損部から水分が粉末溶射層に入ることになる。水分は、粉末溶射層の粉末間の隙間に浸入し、鉄基材を錆び付かせる。従って、従来の加熱用プレートは、寿命が短いという問題点があった。
【0004】
上記従来の加熱用プレートは、フッ素樹脂層がひび割れたり、欠けたりした場合、再度ブラスト加工によりフッ素樹脂層及び粉末溶射層を除去し、上記製造工程によりリサイクルすることが可能である。しかし、鉄基材が錆びている場合が多く、ブラスト加工によりその錆を落とすと、その落とされた錆がサンドに混入し、錆の混入したサンドを吹き付けて、鉄基材全体に錆を付着させることになるので、加熱用プレートのリサイクルは困難であった。従って、加熱用プレートの交換サイクルは、約1年であり、再利用し難いことから、廃棄処分に苦労するという問題点があった。
【0005】
また、従来の加熱用プレートは、表面にアルミニウムメッキ層が被覆されているものがあるが、上記したように、ブラスト加工するとアルミニウムメッキ層を剥がしてしまうことがあるので、リサイクルが難しいという問題点があった。
【0006】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、錆の発生を防ぎ、寿命を飛躍的に伸ばすと共にリサイクルの容易な構造にした加熱用プレート及びこれの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に係る加熱用プレートは、上記目的を達成するため、鉄基材と、鉄基材の表面側に形成された鉄−アルミニウム合金層と、鉄−アルミニウム合金層の表面側に形成されたアルミニウム溶射層と、アルミニウム溶射層の表面に形成された封口処理層と、封口処理層の表面に塗布されたプライマー層と、プライマー層の表面に形成されたフッ素樹脂層とからなる。
【0008】
本願請求項2に係る加熱用プレートは、上記目的を達成するため、鉄基材と、鉄基材の表面側に形成された鉄−アルミニウム合金層と、鉄−アルミニウム合金層の表面側に形成されたアルミニウムメッキ層と、アルミニウムメッキ層の表面に形成された溶射層と、溶射層の表面に形成された封口処理層と、封口処理層の表面に塗布されたプライマー層と、プライマー層の表面に形成されたフッ素樹脂層とからなる。
【0009】
本願請求項3に係る加熱用プレートの製造方法は、上記目的を達成するため、鉄基材の表面をブラスト加工して粗面化し、鉄基材のブラスト加工して粗面化した表面にアルミニウム粉末の溶射材を溶射してアルミニウム溶射層を形成し、アルミニウム溶射層が形成された鉄基材を500℃〜600℃の範囲で加熱処理して鉄基材とアルミニウム溶射層の間に鉄−アルミニウム合金層を形成し、アルミニウム溶射層の表面に封口処理材を塗布して封口処理層を形成し、封口処理層の表面にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、プライマー層の表面にフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層を形成して加熱用プレートを製造する。
【0010】
本願請求項4に係る加熱用プレートの製造方法は、上記目的を達成するため、アルミニウムメッキ層が形成された鉄基材のアルミニウムメッキ層表面をブラスト加工して粗面化し、ブラスト加工して粗面化したアルミニウムメッキ層表面に溶射材を溶射して溶射層を形成し、溶射層が形成された鉄基材を500℃〜600℃の範囲で加熱処理して鉄基材とアルミニウムメッキ層の間に鉄−アルミニウム合金層を形成し、溶射層の表面に封口処理材を塗布して封口処理層を形成し、封口処理層の表面にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、プライマー層の表面にフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層を形成して加熱用プレートを製造する。
【発明の効果】
【0011】
本願発明に係る加熱用プレートは、鉄基材と、鉄基材の表面側に形成された鉄−アルミニウム合金層と、鉄−アルミニウム合金層の表面側に形成されたアルミニウム溶射層と、アルミニウム溶射層の表面に形成された封口処理層と、封口処理層の表面に塗布されたプライマー層と、プライマー層の表面に形成されたフッ素樹脂層とからなり、アルミニウム溶射層の粉末間の隙間が封口処理層の封口処理材によって完全に塞がれているため、フッ素樹脂層がひび割れたり、欠けたりして、その欠損部から水分がアルミニウム溶射層に入っても、封口処理層で水分、油分を確実にはじき、鉄基材の錆びを防ぐことができるという効果がある。そのため、加熱用プレートの寿命を従来の加熱用プレートと較べて大幅に伸ばすことができるという効果がある。また、鉄基材に錆が発生しないので、鉄基材を何度でも再加工して再表面処理することができ、そのため鉄基材を廃棄処分する手間を省き、コストの削減を図ることができるという効果がある。再利用するため再表面処理する際、鉄基材に錆が発生していないので、ブラスト加工のサンドに錆が混入することがなく、鉄基材の劣化を防ぎ、加熱用プレートの寿命を大幅に向上することができるという効果がある。また、鉄基材の表面側には鉄−アルミニウム合金層が形成されているため、前記封口処理層と相俟って、より一層水分、油分の浸入を防ぎ、鉄基材の錆発生を抑えることができるという効果がある。
【0012】
本願発明に係る加熱用プレートは、鉄基材と、鉄基材の表面側に形成された鉄−アルミニウム合金層と、鉄−アルミニウム合金層の表面側に形成されたアルミニウムメッキ層と、アルミニウムメッキ層の表面に形成された溶射層と、溶射層の表面に形成された封口処理層と、封口処理層の表面に塗布されたプライマー層と、プライマー層の表面に形成されたフッ素樹脂層とからなり、溶射層の粉末間の隙間が封口処理層の封口処理材によって完全に塞がれているため、フッ素樹脂層がひび割れたり、欠けたりして、その欠損部から水分が溶射層に入っても、封口処理層で水分、油分を確実にはじき、鉄基材の錆びを防ぐことができるという効果がある。そのため、加熱用プレートの寿命を従来の加熱用プレートと較べて大幅に伸ばすことができるという効果がある。また、鉄基材に錆が発生しないので、鉄基材を何度でも再加工して再表面処理することができ、そのため鉄基材を廃棄処分する手間を省き、コストの削減を図ることができるという効果がある。再利用するため再表面処理する際、鉄基材に錆が発生していないので、ブラスト加工のサンドに錆が混入することがなく、鉄基材の劣化を防ぎ、加熱用プレートの寿命を大幅に向上することができるという効果がある。また、鉄基材の表面側には鉄−アルミニウム合金層が形成されているため、前記封口処理層と相俟って、より一層水分、油分の浸入を防ぎ、鉄基材の錆発生を抑えることができるという効果がある。さらに、アルミニウムメッキ層は、鉄基材に対して、鉄−アルミニウム合金層によって強固に接合されているため、再表面化処理の際に行われるブラスト加工で剥がれることが極めて少ない。そのため、本願発明に係る加熱用プレートは、ブラスト加工してもアルミニウムメッキ層を剥がすことがないので、安心してリサイクルを行うことができるという効果がある。
【0013】
本願発明に係る加熱用プレートの製造方法は、鉄基材の表面をブラスト加工して粗面化し、鉄基材のブラスト加工して粗面化した表面にアルミニウム粉末の溶射材を溶射してアルミニウム溶射層を形成し、アルミニウム溶射層が形成された鉄基材を500℃〜600℃の範囲で加熱処理して鉄基材とアルミニウム溶射層の間に鉄−アルミニウム合金層を形成し、アルミニウム溶射層の表面に封口処理材を塗布して封口処理層を形成し、封口処理層の表面にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、プライマー層の表面にフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層を形成するので、上記効果を有する加熱用プレートを製造することができるという効果がある。
【0014】
本願発明に係る加熱用プレートの製造方法は、アルミニウムメッキ層が形成された鉄基材のアルミニウムメッキ層表面をブラスト加工して粗面化し、ブラスト加工して粗面化したアルミニウムメッキ層表面に溶射材を溶射して溶射層を形成し、溶射層が形成された鉄基材を500℃〜600℃の範囲で加熱処理して鉄基材とアルミニウムメッキ層の間に鉄−アルミニウム合金層を形成し、溶射層の表面に封口処理材を塗布して封口処理層を形成し、封口処理層の表面にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、プライマー層の表面にフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層を形成するので、上記効果を有する加熱用プレートを製造することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本願発明の実施の形態を図1乃至図2に基づいて説明する。図1は、本願発明に係る加熱用プレートの一つの実施の形態を示す断面図である。図2は、本願発明に係る加熱用プレートの他の実施の形態を示す断面図である。
【0016】
加熱用プレート1は、図1に示すように、鉄基材2と、鉄基材2の表面2a側に形成された鉄−アルミニウム合金層3と、鉄−アルミニウム合金層3の表面3a側に形成されたアルミニウム溶射層5と、アルミニウム溶射層5の表面5aに形成された封口処理層6と、封口処理層6の表面6aに塗布されたプライマー層7と、プライマー層7の表面7aに形成されたフッ素樹脂層8とからなる。
【0017】
加熱用プレート1の製造方法は、鉄基材2の表面2aをブラスト加工して粗面化する。鉄基材2のブラスト加工して粗面化した表面2aにアルミニウム粉末の溶射材を溶射してアルミニウム溶射層5を形成する。アルミニウム溶射層5が形成された鉄基材2を500℃〜600℃の範囲で加熱処理すると、鉄基材2とアルミニウム溶射層5の間に鉄−アルミニウム合金層3が形成される。アルミニウム溶射層5の表面5aに封口処理材を塗布して封口処理層6を形成する。封口処理層6の表面6aにプライマーを塗布してプライマー層7を形成する。プライマー層7の表面7aにフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層8を形成する。
【0018】
加熱用プレート1は、アルミニウム溶射層5の粉末間の隙間が封口処理層6の封口処理材によって完全に塞がれているため、フッ素樹脂層8がひび割れたり、欠けたりして、その欠損部から水分がアルミニウム溶射層5に入っても、封口処理層6で水分、油分を確実にはじき、鉄基材2の錆びを防ぐことができる。そのため、加熱用プレート1の寿命を従来の加熱用プレートと較べて大幅に伸ばすことができる。また、加熱用プレート1は、鉄基材2に錆が発生しないので、鉄基材2を何度でも再加工して再表面処理することができ、そのため鉄基材2を廃棄処分する手間を省き、コストの削減を図ることができる。再利用するため再表面処理する際、鉄基材2に錆が発生していないので、ブラスト加工のサンドに錆が混入することがなく、鉄基材2の劣化を防ぎ、加熱用プレート1の寿命を大幅に向上することができる。また、加熱用プレート1は、鉄基材2の表面2a側には鉄−アルミニウム合金層3が形成されているため、前記封口処理層6と相俟って、より一層水分、油分の浸入を防ぎ、鉄基材2の錆発生を抑えることができる。
【0019】
加熱用プレート11は、図2に示すように、鉄基材2と、鉄基材2の表面2a側に形成された鉄−アルミニウム合金層3と、鉄−アルミニウム合金層3の表面3a側に形成されたアルミニウムメッキ層4と、アルミニウムメッキ層4の表面4aに形成された溶射層5と、溶射層5の表面5aに形成された封口処理層6と、封口処理層6の表面6aに塗布されたプライマー層7と、プライマー層7の表面7aに形成されたフッ素樹脂層8とからなる。
【0020】
加熱用プレート11の製造方法は、アルミニウムメッキ層4が形成された鉄基材2のアルミニウムメッキ層4表面4aをブラスト加工して粗面化する。ブラスト加工して粗面化したアルミニウムメッキ層4表面4aに溶射材を溶射して溶射層5を形成する。溶射層5が形成された鉄基材2を500℃〜600℃の範囲で加熱処理すると、鉄基材2とアルミニウムメッキ層4の間に鉄−アルミニウム合金層3が形成される。溶射層5の表面5aに封口処理材を塗布して封口処理層6を形成する。封口処理層6の表面6aにプライマーを塗布してプライマー層7を形成する。プライマー層7の表面7aにフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層8を形成する。
【0021】
加熱用プレート11は、溶射層5の粉末間の隙間が封口処理層6の封口処理材によって完全に塞がれているため、フッ素樹脂層8がひび割れたり、欠けたりして、その欠損部から水分が溶射層5に入っても、封口処理層6で水分、油分を確実にはじき、鉄基材2の錆びを防ぐことができる。そのため、加熱用プレート11の寿命を従来の加熱用プレートと較べて大幅に伸ばすことができる。また、鉄基材2に錆が発生しないので、鉄基材2を何度でも再加工して再表面処理することができ、そのため鉄基材2を廃棄処分する手間を省き、コストの削減を図ることができる。また、鉄基材2の表面2a側には鉄−アルミニウム合金層3が形成されているため、前記封口処理層6と相俟って、より一層水分、油分の浸入を防ぎ、鉄基材2の錆発生を抑えることができる。さらに、アルミニウムメッキ層4は、鉄−アルミニウム合金層3によって密着度が高まり、鉄基材2に強固に接合されているため、耐久性が向上すると共に、再表面化処理の際に行われるブラスト加工で剥がれることが極めて少ない。そのため、加熱用プレート11は、ブラスト加工してもアルミニウムメッキ層4を剥がすことがないので、安心してリサイクルを行うことができる。
【0022】
さらに加熱用プレートについて詳細に説明する。図1に示すように、加熱用プレート1は、鉄基材2と、鉄基材2の表面2a側に形成された鉄−アルミニウム合金層3と、鉄−アルミニウム合金層3の表面3a側に溶射されたアルミニウム粉末溶射層5と、アルミニウム粉末溶射層5の粉末間を封口する封口処理層6と、封口処理層6の表面6aに積層されたプライマー層7と、プライマー層7の表面7aに積層されたフッ素樹脂層8と、鉄基材2の裏面2bに積層された保護層9とからなる。
【0023】
鉄基材2は、厚みが約0.6〜1.5mmであり、表面2a側には約5μmの厚みの鉄−アルミニウム合金層3が形成されている。鉄−アルミニウム合金層3の表面3aには、プラズマ,アーク,ガス等の溶射法により、アルミニウムを溶射粉末とするアルミニウム粉末溶射層5が被覆されている。アルミニウム粉末溶射層5は、約25〜30μmの厚みである。
【0024】
アルミニウム粉末溶射層5の表面5aには、封口処理層6が積層されている。封口処理層6は、約5〜10μmの厚みである。封口処理層6を形成する封口処理材は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、シリコーン樹脂等の耐熱性のある樹脂である。
【0025】
アルミニウム粉末溶射層5は、微細な粉末が重なり合った積層構造であり、空隙を有する多孔質層となっているが、前記封口処理材が溶射層5の表面5aに塗布されるため、空隙が封口処理材によって完全に塞がれる。封口処理材が塗布された鉄基材2を気密室に入れて真空状態にすると、封口処理層6内の気泡と、アルミニウム粉末溶射層5の粉末間にある気体が抜けて脱気することができ、封口処理材がアルミニウム粉末溶射層5の粉末間に浸入して、確実に粉末間の隙間を埋めることができる。
【0026】
封口処理層6の表面6aに、プライマーを塗布してプライマー層7を形成する。プライマー層7は、約10〜15μmの厚みである。このプライマー層7にフッ素樹脂を塗布し、焼き付けて厚みが約30〜50μmのフッ素樹脂層8を形成する。フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等である。鉄基材2の裏面2bには、シリコーン樹脂、金属粉、セラミック粉を有する変性型シリコンの塗料が塗布され、厚みが約20〜30μmの保護層9が形成さている。
【0027】
加熱用プレート1は、以下のようにして製造される。鉄基材2の表面2aをブラスト加工して、表面2aを粗面化する。粗面化した鉄基材2の表面2aにアルミニウムの溶射粉末で構成される溶射材を、プラズマ,アーク,ガス等の溶射方法により溶射してアルミニウム粉末溶射層5を形成する。アルミニウム粉末溶射層5の厚みは、約30〜35μmである。アルミニウム粉末溶射層5が形成された鉄基材2を約20分程度加熱処理する。この加熱処理する温度は、500℃〜600℃の範囲が望ましい。アルミニウムは、溶融温度が700℃であり、この温度まで加熱すると、溶け出すのでアルミニウム粉末溶射層5の表面5aが平滑となる。アルミニウム粉末溶射層5の表面5aが平滑となると、プライマー層7が載せ難くなるので、アルミニウム粉末溶射層5の表面5aの粗面化が必要となる。従って、鉄基材2は、500℃〜600℃の範囲で加熱処理を行う。
【0028】
鉄基材2を約20分間、500℃〜600℃の範囲で加熱処理すると、鉄基材2の表面2aとアルミニウム粉末溶射層5の裏面5bが溶融して鉄−アルミニウム合金層3が形成される。鉄−アルミニウム合金層3の厚みは、約5μmである。従って、アルミニウム粉末溶射層5の厚みが、約30〜35μmから約25〜30μmとなる。アルミニウム粉末溶射層5は、この鉄−アルミニウム合金層3により鉄基材2に強固に接合される。
【0029】
次に、アルミニウム粉末溶射層5の表面5aに前記封口処理材を塗布して封口処理層6を形成する。封口処理層6を形成した後、鉄基材2を気密室に入れて真空状態にし、アルミニウム粉末溶射層5内の粉末間にある気体、封口処理層6に含まれる気泡を抜いて、脱気させる。脱気時間は、約10分程度であるが、アルミニウム粉末溶射層5、封口処理層6の厚み、真空圧等の種々の状況に応じて変えられるのは勿論である。封口処理材が塗布された鉄基材2を気密室に入れて真空状態にすると、封口処理層6内の気泡と、溶射層5の粉末間にある気体が抜けて脱気することができ、封口処理材がアルミニウム粉末溶射層5の粉末間に浸入して、確実に粉末間の隙間を埋めることができる。
【0030】
封口処理層6の表面6aにプライマーを塗布してプライマー層7を形成する。プライマー層7の表面7aに前記フッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層8を形成する。鉄基材2の裏面2bに、シリコーン樹脂、金属粉、セラミック粉を有する塗料を塗布して保護層9を形成する。このようにして、加熱用プレート1が製造される。
【0031】
上記した加熱用プレート1は、両面が加工されるので、従来のように、両面がアルミメッキされた鋼板を使用する必要がなく、安価な鋼板を使用することができる。また、アルミニウム粉末溶射層5の粉末間の隙間が封口処理材で埋められているため、フッ素樹脂層8がひび割れたり、欠けたりして、その欠損部から水分がアルミニウム粉末溶射層5に入っても、そのアルミニウム粉末溶射層5及び鉄−アルミニウム合金層3で水分、油分を確実にはじき、鉄基材2の錆び防ぐことがきる。このように、加熱プレート1は、鉄基材2の劣化が防がれているので、寿命を大幅に向上することができる。
【0032】
加熱用プレート1は、再表面加工する際、メッキがないので、メッキのことを考慮せずに、ブラスト加工することができる。鉄基材2の表面2aは、錆の発生が阻止されているので、ブラスト加工してもサンドに錆が混入することがなく、そのため、鉄基材2の表面2aまでブラスト加工することができ、リサイクルが可能である。
【0033】
図2に示すように、加熱用プレート11は、鉄基材2と、鉄基材2の表面2a側に形成された鉄−アルミニウム合金層3と、鉄−アルミニウム合金層3の表面3a側に形成されたアルミニウムメッキ層4と、アルミニウムメッキ層4の表面4aに溶射された溶射層5と、溶射層5の粉末間を封口する封口処理層6と、封口処理層6の表面6aに積層されたプライマー層7と、プライマー層7の表面7aに積層されたフッ素樹脂層8と、鉄基材2の裏面2b側に形成された鉄−アルミニウム合金層12と、鉄−アルミニウム合金層12の裏面12b側に形成されたアルミニウムメッキ層13とからなる。
【0034】
鉄基材2は、厚みが約0.6〜1.5mmであり、表面2a側には約5μmの厚みの鉄−アルミニウム合金層3が形成され、裏面2b側には約5μmの厚みの鉄−アルミニウム合金層12が形成されている。アルミニウムメッキ層4,13は、約5μmの厚みである。アルミニウムメッキ層4の表面4aには、プラズマ,アーク,ガス等の溶射法により、溶射層5が被覆されている。溶射層5は、約30μmの厚みである。
【0035】
この溶射層5を形成する溶射粉末は、金属/合金、サーメット又はセラミックス等である。金属/合金の代表的なものは、アルミニウム、銅、モリブデン、ニッケル、タングステン、銅合金、ニッケル合金、コバルト合金、Ni自溶合金、Co自溶合金、炭素鋼、ステンレス鋼、ハステロイ、その他がある。サーメットの代表的なものは、炭化物係サーメット、酸化物系サーメット、アブレイダブル、その他がある。セラミックスの代表的なものは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、クロミア、アルミナ・チタニア、安定化ジルコニア、ジルコン、スピネル、ムライト、その他がある。本実施の形態で使用する溶射粉末は、アルミニウムである。
【0036】
溶射層5の表面5aには、封口処理層6が積層されている。封口処理層6は、約5〜10μmの厚みである。封口処理層6を形成する封口処理材は、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、シリコーン樹脂等の耐熱性のある樹脂である。溶射層5は、微細な粉末が重なり合った積層構造であり、空隙を有する多孔質層となっているが、前記封口処理材が溶射層5の表面5aに塗布されるため、空隙が封口処理材によって完全に塞がれる。
【0037】
封口処理材が塗布された鉄基材2を気密室に入れて真空状態にすると、封口処理層6内の気泡と、溶射層5の粉末間にある気体が抜けて脱気することができ、封口処理材が溶射層5の粉末間に浸入して、確実に粉末間の隙間を埋めることができる。
【0038】
封口処理層6の表面6aに、プライマーを塗布してプライマー層7を形成する。プライマー層7は、約10〜15μmの厚みである。このプライマー層7にフッ素樹脂を塗布し、焼き付けて厚みが約30〜50μmのフッ素樹脂層8を形成する。フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等である。
【0039】
加熱用プレート11は、以下のようにして製造される。鉄基材2の表面2a及び裏面2bにアルミニウムのメッキを行いアルミニウムメッキ層4,13を形成する。最初から両面2a,2bにアルミニウムメッキ層4,13が形成された鉄基材2を使用しても構わない。この時のアルミニウムメッキ層4,13の厚みは、約10μmである。アルミニウムメッキ層4の表面4aをブラスト加工して、表面4aを粗面化する。粗面化したアルミニウムメッキ層4の表面4aにアルミニウムの溶射粉末で構成される溶射材を、プラズマ,アーク,ガス等の溶射方法により溶射して溶射層5を形成する。アルミニウム粉末溶射層5の厚みは、約30μmである。
【0040】
アルミニウム粉末溶射層5が形成された鉄基材2を500℃〜600℃の範囲で約20分程度加熱処理するのが望ましい。アルミニウムは、溶融温度が700℃であり、この温度まで加熱すると、溶け出すのでアルミニウム粉末溶射層5の表面5aが平滑となる。アルミニウム粉末溶射層5の表面5aが平滑となると、プライマー層7が載せ難くなるので、アルミニウム粉末溶射層5の表面5aの粗面化が必要となる。従って、鉄基材2は、500℃〜600℃の範囲で加熱処理を行う。鉄基材2を約20分間、500℃〜600℃の範囲で加熱処理すると、鉄基材2の表面2aとアルミニウムメッキ層4の裏面4bが溶融して鉄−アルミニウム合金層3が形成され、同様に鉄基材2の裏面2bとアルミニウムメッキ層13の表面13aが溶融して鉄−アルミニウム合金層12が形成される。鉄−アルミニウム合金層3,12の厚みは、約5μmである。従って、アルミニウムメッキ層4,13の厚みが、約10μmから約5μmとなる。アルミニウムメッキ層4,13は、この鉄−アルミニウム合金層3,12により密着度が高まって、鉄基材2に強固に接合され、鉄基材2から剥がれ難くなり、耐久性が向上すると共に、水分、油分のブロック効果を高めている。
【0041】
次に、アルミニウム粉末溶射層5の表面5aに前記封口処理材を塗布して封口処理層6を形成する。封口処理層6を形成した後、鉄基材2を気密室に入れて真空状態にし、アルミニウム粉末溶射層5内の粉末間にある気体、封口処理層6に含まれる気泡を抜いて、脱気させる。脱気時間は、約10分程度であるが、アルミニウム粉末溶射層5、封口処理層6の厚み、真空圧等の種々の状況に応じて変えられるのは勿論である。封口処理材が塗布された鉄基材2を気密室に入れて真空状態にすると、封口処理層6内の気泡と、溶射層5の粉末間にある気体が抜けて脱気することができ、封口処理材がアルミニウム粉末溶射層5の粉末間に浸入して、確実に粉末間の隙間を埋めることができる。封口処理層6の表面6aにプライマーを塗布してプライマー層7を形成する。プライマー層7の表面7aに前記フッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層8を形成する。このようにして、加熱用プレート11が製造される。
【0042】
加熱用プレート11は、耐久性に優れ、リコートし易く廃棄する必要がないので経済的であり、且つ環境に優しい。また、加熱用プレート11は、リコートする場合、サンドブラスター(ブラスト加工)でフッ素樹脂層8、プライマー層7を削り取っても、アルミニウムメッキ層4、鉄−アルミニウム合金層3があるので、鉄基材2が保護されており、鉄基材2が露出することがなく、傷つかないので、再度表面処理して何度でも使用することができる。 同様に、加熱用プレート11は、リコートする場合、高温処理でフッ素樹脂層8、プライマー層7を焼き払って削り取っても、アルミニウムメッキ層4、鉄−アルミニウム合金層3があるので、鉄基材2が保護されており、鉄基材2が傷つかないので、再度表面処理して何度でも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明に係る加熱用プレートは、パンの焼き型、肉野菜を加熱調理するホットプレート等、食材を加熱して調理する調理器具に利用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本願発明に係る加熱用プレートの一つの実施の形態を示す断面図である。
【図2】本願発明に係る加熱用プレートの他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱用プレート
2 鉄基材
2a 表面
2b 裏面
3 鉄−アルミニウム合金層
3a 表面
3b 裏面
4 アルミニウムメッキ層
4a 表面
4b 裏面
5 アルミニウム粉末溶射層(溶射層)
5a 表面
5b 裏面
6 封口処理層
6a 表面
7 プライマー層
7a 表面
8 フッ素樹脂層
8a 表面
9 保護層
11 加熱用プレート
12 鉄−アルミニウム合金層
12a 表面
12b 裏面
13 アルミニウムメッキ層
13a 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄基材と、
鉄基材の表面側に形成された鉄−アルミニウム合金層と、
鉄−アルミニウム合金層の表面側に形成されたアルミニウム溶射層と、
アルミニウム溶射層の表面に形成された封口処理層と、
封口処理層の表面に塗布されたプライマー層と、
プライマー層の表面に形成されたフッ素樹脂層とからなることを特徴とする加熱用プレート。
【請求項2】
鉄基材と、
鉄基材の表面側に形成された鉄−アルミニウム合金層と、
鉄−アルミニウム合金層の表面側に形成されたアルミニウムメッキ層と、
アルミニウムメッキ層の表面に形成された溶射層と、
溶射層の表面に形成された封口処理層と、
封口処理層の表面に塗布されたプライマー層と、
プライマー層の表面に形成されたフッ素樹脂層とからなることを特徴とする加熱用プレート。
【請求項3】
鉄基材の表面をブラスト加工して粗面化し、
鉄基材のブラスト加工して粗面化した表面にアルミニウム粉末の溶射材を溶射してアルミニウム溶射層を形成し、
アルミニウム溶射層が形成された鉄基材を500℃〜600℃の範囲で加熱処理して鉄基材とアルミニウム溶射層の間に鉄−アルミニウム合金層を形成し、
アルミニウム溶射層の表面に封口処理材を塗布して封口処理層を形成し、
封口処理層の表面にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、
プライマー層の表面にフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層を形成して加熱用プレートを製造することを特徴とする加熱用プレートの製造方法。
【請求項4】
アルミニウムメッキ層が形成された鉄基材のアルミニウムメッキ層表面をブラスト加工して粗面化し、
ブラスト加工して粗面化したアルミニウムメッキ層表面に溶射材を溶射して溶射層を形成し、
溶射層が形成された鉄基材を500℃〜600℃の範囲で加熱処理して鉄基材とアルミニウムメッキ層の間に鉄−アルミニウム合金層を形成し、
溶射層の表面に封口処理材を塗布して封口処理層を形成し、
封口処理層の表面にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、
プライマー層の表面にフッ素樹脂を焼き付けてフッ素樹脂層を形成して加熱用プレートを製造することを特徴とする加熱用プレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−115431(P2008−115431A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300328(P2006−300328)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(505386096)小野工芸株式会社 (9)
【Fターム(参考)】