説明

加熱装置およびそれを用いたSPシートシール装置

【課題】本発明は、フィルム接触面の温度変化が小さく、フィルムを均一に予熱することが可能であるとともに、装置構成を簡易化することができる加熱装置およびそれを用いたSPシートシール装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の加熱装置は、内周面側に略円柱状のヒータ収容空間を有する外筒32と、装置本体に固定されるとともにヒータ収容空間に収容された棒状のヒータ31と、外筒32の両端部の内側にそれぞれ設けられ、ヒータが嵌挿された一対の軸受け36、36とを有し、外筒32の外周面に沿って走行するフィルムを加熱するとともに、該フィルムの走行に追従して、外筒32がヒータ31の周回方向に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばSP包装(Strip Package)工程で2枚のフィルムを熱シールする前に予熱するための加熱装置およびそれを用いたSPシートシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤等を包装する包装形態として、SP包装が知られている。
SP包装は、アルミ箔あるいはセロファンに低密度ポリエチレンなどの熱可塑性高分子フィルムを重ねたラミネートフィルムの上面に、薬剤等の被包装物を配置した後、同様のラミネートフィルムを重ね、被包装物の周囲でフィルム同士を互いに熱接着した包装形態である。
【0003】
前述のSP包装によって、例えば錠剤を個別包装する場合、2枚のフィルムをそれぞれ搬送する走行系と、錠剤供給部と、周面に複数の収容凹部が設けられた一対の加熱ロールを有するSPシートシール装置を用いて行われる。
このSPシートシール装置では、2枚の長尺状のフィルムを、それぞれ別々に一対の加熱ロールに向けて搬送する。このうち、一方のフィルムの上面には、一対の加熱ロールの手前に設けられた錠剤供給部によって、複数の錠剤を、各加熱ロールの各収容凹部に対応するようにプッシャーで供給する。そして、各フィルムを、錠剤が供給されたラミネートフィルムの上面に他方のフィルムが重なるように合流させ、対になる加熱ロール間を通過させる。この際、各フィルムは、各加熱ロールの各収容凹部に対応する領域に錠剤が配置されるとともに、各収容凹部に対応する領域以外(錠剤の周囲)が互いに熱接着される。これにより、2枚のラミネートフィルムの間に、複数の錠剤が個別に包装されたSPフィルム包装体が得られる。
【0004】
しかし、このようなSPシートシール装置では、一対の加熱ロールによって各フィルム同士を熱接着する際、接着不良(シール浮き)を生じる場合があり、SPフィルム包装体の品質不良を生じることがある。この品質不良の発生原因について本発明者が研究したところ、以下の原因によるものであるとの知見を得た。
即ち、2枚のフィルムを加熱シールする場合、各フィルムを加熱ロールに巻き掛けつつそれらのフィルム間に錠剤を供給してから熱シールするのであるが、加熱ロールは上下に対向するように配置されるので、一方のフィルムは一方の加熱ロールに対して十分な巻き付け長さを確保できる巻き付け角度を確保できるが、他方のフィルムは錠剤の投入装置との干渉を避けるような角度から加熱ロールに巻き付け供給するため、投入装置側のフィルムの巻き付け長さが相対的に短くなり、フィルムに応じて加熱ロールに巻き付ける長さが異なることになる。
この結果、一方のフィルムは加熱ロールとの接触時間が長く、他方のフィルムは加熱ロールとの接触時間が短くなり、加熱ロールとの接触時間が短い側のフィルムにあっては、接着適正温度(例えば、100〜120℃)に到らない箇所が生じてしまうことがある。このため、この箇所においてフィルム同士の接着が不完全となり、シール浮きなどの不良を生じる原因になっていると考えられる。
【0005】
一方、このようなフィルムの加熱不足は、被包装物の形状に合わせて成形された容器シートに被覆材を接着することで構成された、いわゆるブリスターパックについても見られており、ブリスター包装機については、加熱工程での不具合を改善するための様々な検討がなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0006】
まず、特許文献1には、成形前の容器シートを加熱する加熱装置として、水平に対して傾斜した走行路、もしくは略垂直な走行路で移送される容器シートの両面に、それぞれ対向して配置された一対の加熱盤を有し、各加熱盤によって容器シートを成形温度まで加熱するように構成されたものが開示されている。
【0007】
特許文献2には、容器シートを成形温度に加熱する加熱ロールの上流側に予熱ロールを設け、容器シートを予熱ロールによって成形温度より低い温度に加熱した後、加熱ロールによって成形温度まで加熱するように構成されたブリスター包装機が開示されている。
特許文献3には、容器シートと被覆材とを熱接着する熱接着装置の上流側に、予熱板を設け、予熱板によって被覆材を接着面側から予熱した後、熱接着装置によって容器シートと被覆材とを熱接着するようにしたブリスター包装機が開示されている。
【0008】
これらの特許文献では、予熱ロールや予熱板によってフィルム(容器シート、被覆材)を予め加熱することにより、次に行われる加熱工程で、該フィルムを容易に目標温度とすることができると記載されている。
そこで、SPシートシール装置においても、このような予熱ロールや予熱板を一対の加熱ロールの手前に設ければ、熱接着に際する加熱不足が解消されるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−289378号公報
【特許文献2】特開昭59−51008号公報
【特許文献3】特開昭62−94524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これまで用いられている予熱ロールや予熱板(加熱装置)は、以下の理由からフィルム接触面における温度変異(経時的な温度変動)が大きく、フィルムを均一に予熱するのが難しいという問題がある。
【0011】
すなわち、このような加熱装置の温度制御は、一般に、内蔵されたヒータへの電流供給のON/OFFを切り替えることによって行われる。具体的には、加熱装置の温度が設定下限値未満である場合には、ヒータへの電流供給をONとし、加熱装置の温度が設定上限値を超えた場合には、ヒータへの電流供給をOFFとすることによって、加熱装置が設定された温度範囲となるように制御する。ここで、加熱装置は、一般に、ヒータで発生した熱をフィルム接触面に効率よく伝達する観点から、熱伝導率の高い材料を主体として構成されている。このため、ヒータへの電流供給がONの間は、ヒータで発生した熱がフィルム接触面に速やかに伝わり、フィルム接触面の温度が急速に上昇する。一方、ヒータへの電流供給がOFFの間は、放熱が速やかに行われることによってフィルム接触面の温度が急速に下降する。このため、従来の加熱装置では、ヒータへの電流供給のON/OFFに同期して、フィルム接触面の温度が比較的大きく変動し、フィルムを均一に加熱するのが難しい。その結果、予熱後に行われる加熱シール工程では、やはりフィルムが目標温度に至らない低温箇所が生じ、これが原因となってシール不良を生じてしまうものと考えられる。
【0012】
このような加熱不良は、これらの加熱装置を、SPシートシール装置の予熱手段として適用した場合にも同様に生じるものと考えられ、熱接着工程での接着不良を確実に防止するには、さらなる改善が必要である。
本発明は、フィルム接触面の温度変化が小さく、フィルムを均一に加熱(予熱)することが可能であるとともに、装置構成を簡易化することができる加熱装置およびそれを用いたSPシートシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
本発明は、内部にヒータ収容空間を有する外筒と、前記ヒータ収容空間に収容された棒状の固定ヒータと、前記外筒の両端部の内側にそれぞれ設けられ、前記固定ヒータが嵌挿された一対の軸受けとを有し、前記外筒の外周面に沿って走行移動するフィルムを加熱するとともに、該フィルムの走行に追従して、前記外筒が前記固定ヒータの周回方向に回転自在とされてなり、前記外筒の内周面と前記固定ヒータの外周面との間に熱伝達用の隙間が形成されてなることを特徴とする。
【0014】
本発明において前記隙間の幅は、0.5〜1.0mmであることを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記軸受けが設けられた外筒の両端部よりも内側の領域にフィルム接触領域が設けられたことを特徴とする。
本発明において、前記外筒周面の前記フィルムに対する接触部分の外側に熱放射層が形成され、この熱放射層の温度を計測する計測手段が付設されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の、SPシートシール装置は、対になる加熱ロールと、これら加熱ロールの間に2枚のフィルムを供給する供給系と、これら2枚のフィルムの間に内容物を供給する内容物供給部と、前記対になる加熱ロールの手前側に配置され前記2枚のフィルムを予熱するための先のいずれかに記載の加熱装置とを具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る加熱装置によれば、ヒータの外方に外筒を回転自在に設けた構成であり、外筒とヒータとの間に熱伝達用の隙間が空いているため、ヒータで発生した熱を隙間の空気層を介し外筒に伝達することができる。このため、この空気層がヒータでの温度変化を緩和する熱の緩衝空間として機能し、ヒータのON/OFFが小刻みに切り替わってヒータの外面が温度変動しても、空気層を介してなされる外筒の温度変動幅が小さくなることにより、外筒の外周面に沿って走行移動するフィルムを均一な温度に加熱できる。
【0018】
また、本発明の加熱装置では、ヒータ自体を固定ヒータとすることができるので、外筒は回転するがヒータは回転しない。
このため、固定ヒータから引き出された配線と電源からの電極とは、ブラシ接点のような複雑な電極を用いることなく、配線を電極に直接固着することによって接続することができる。このため、装置構成を簡易なものとすることができる。
また、外筒の内周面とヒータの外周面との隙間の幅を、0.5〜1.0mmとする場合に、空気層の緩衝空間としての機能を確実に得ることができるとともに、固定ヒータからの熱を効率良く外筒に伝達することができるため、フィルムを均一加熱できる。
【0019】
本発明のSPシートシール装置によれば、前述のような加熱装置を、2枚のフィルムを互いに熱接着する前に予熱する予熱手段として用いるため、熱接着工程の前に、2枚のフィルムを均一かつ所定の温度に予備加熱することができ、熱シール工程では、各フィルムを均一に接着適正温度まで加熱することができる。その結果、各フィルム同士を被包装物の周囲で確実に熱接着することができ、シール浮きを無くした品質の高いSPシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のSPシートシール装置の第1実施形態を示す模式図である。
【図2】図1に示すSPシートシール装置に備えられる第1プレヒータおよび第2プレヒータを示す側面図である。
【図3】図1に示すSPシートシール装置が備える第1プレヒータおよび第2プレヒータを示す縦断面図である。
【図4】図2に示す外筒を示す縦断面図である。
【図5】図2に示すヒータを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の加熱装置を適用したSPシートシール装置について説明する。
図1は、本発明のSPシートシール装置の第1実施形態を示す模式図、図2は、図1に示すSPシートシール装置が備える第1プレヒータおよび第2プレヒータを示す側面図、図3は、図1に示すSPシートシール装置が備える第1プレヒータおよび第2プレヒータを示す縦断面図、図4は、図3に示す第1プレヒータおよび第2プレヒータが備える外筒を示す縦断面図、図5は、図4に示す第1プレヒータおよび第2プレヒータが備えるヒータを示す側面図である。
【0022】
図1に示すSPシートシール装置1は、2枚のフィルム20、21を走行させつつ、各フィルム20、21同士の間に、複数の錠剤(被包装物)22を個別に包装するように構成されている。このSPシートシール装置1は、第1フィルム走行系2と、第1フィルム走行系2の途中に設けられた第1プレヒータ(加熱装置)3および錠剤供給装置4と、第2フィルム走行系5と、第2フィルム走行系5の途中に設けられた第2プレヒータ(加熱装置)6と、各フィルム走行系2、5の下流側に配された一対の加熱ロール7、8および冷却ロール9と、図示略の電源とを有している。
第1フィルム走行系2は、シール前の第1フィルム20を、一対の加熱ロール7、8に向けて第2フィルム21と別経路で搬送するものであり、第1フィルム供給リール11と2本のテンションロール12、13とを有している。
【0023】
第1フィルム供給リール11には、第1フィルム20が巻回されており、この第1フィルム20を第1フィルム走行系2に順次送り出すことができるようになっている。また、2本のテンションロール12、13は、第1フィルム走行系2を走行する第1フィルム20のテンションを調整する。これにより、第1フィルム20は、そのテンションが適正なものとなり、第1プレヒータ3の外周面に所定の接触角で確実に接触することができる。
【0024】
第1フィルム走行系2の下流側のテンションロール13と一対の加熱ロール7、8との間には、第1フィルム20の走行系における上流側から順に第1プレヒータ3と錠剤供給部4とが設けられている。
【0025】
第1プレヒータ3は、第1フィルム20を熱シールするための適正温度より若干低い温度(例えば70〜80℃)に加熱する。これにより、第1フィルム20が、一対の加熱ロール7、8に搬送される前に適正温度に予熱され、一対の加熱ロール7、8の間で、第1フィルム20と第2フィルム21とを重ね合わせて熱接着する際、第1フィルム20の温度を確実に接着適正温度とすることができる。本発明では、この第1プレヒータ3の構成に特徴がある。これについては、後に詳述する。
【0026】
錠剤供給部4は、走行している第1フィルム20の上面に、所定錠数の錠剤22を、第1フィルム20の幅方向に並べて、一定の時間毎に供給する。これにより、第1フィルム20の上面に、複数の錠剤が幅方向および長手方向に並んで配置される。ここで、錠剤供給部4が供給する錠剤22の位置は、第1フィルム20が一対の加熱ロール7、8間に搬送されたとき、各錠剤が各加熱ロール7、8に設けられた後述する各収容凹部に対応する位置となるように設定されている。
第2フィルム走行系5は、熱シール前の第2フィルム21を、一対の加熱ロール7、8に向けて第1フィルム20と別経路で搬送するものであり、第2フィルム供給リール14と2本のテンションロール15、16とを有している。
【0027】
第2フィルム供給リール14は、第2フィルム21が巻回されており、この第2フィルム21を第2フィルム走行系5に順次送り出す。また、2本のテンションロール15、16は、第2フィルム走行系5を走行する第2フィルム21のテンションを調整する。これにより、第2フィルム21は、そのテンションが適正なものとなり、第2プレヒータ6の外周面に所定の接触角で確実に接触することができる。
【0028】
第2フィルム走行系5の下流側のテンションロール16と一対の加熱ロール7、8との間には、第2プレヒータ6が設けられている。
第2プレヒータ6は、第2フィルム21を熱シールするための接着適正温度より若干低い温度(例えば70〜80℃)加熱する。これにより、第2フィルム21が、一対の加熱ロール7、8に搬送される前に適正温度に予熱され、一対の加熱ロール7,8の間で、第1フィルム20と第2フィルム21とを重ね合わせて熱接着する際、第2フィルム21の温度を確実に接着適正温度とすることができる。第2プレヒータ6は、先の第1プレヒータ3と同様のものであり、本発明ではこの構成に特徴がある。これについては、後に詳述する。
【0029】
一対の加熱ロール7、8は、第1フィルム走行系2および第2フィルム走行系5の下流側に配設されている。
各加熱ロール7、8は、円筒状をなし、その軸線まわりに回転可能に水平に設けられている。また、各加熱ロール7、8は、軸線同士が互いに平行となるように配され、一方の加熱ロール8が他方の加熱ロール7の直上の位置にあって加熱ロール7に圧接するように設けられている。なお、以下の説明では、下方の加熱ロール(他方の加熱ロール7)を「第1加熱ロール7」、上方の加熱ロール(一方の加熱ロール8)を「第2加熱ロール8」と称する場合がある。
【0030】
各加熱ロール7、8の内部には、加熱手段が内蔵されており、これにより各加熱ロール7、8の周面が加熱される。
また、各加熱ロール7、8の周面には、平面視楕円状の複数の収容凹部が、幅方向および周方向に所定のピッチで配列形成されている。また、各収容凹部は、第1加熱ロール7と第2加熱ロール8とで、その形状、寸法が略同一とされ、各収容凹部同士の間隔が幅方向および周方向でそれぞれ略一定とされている。そして、一方の加熱ロール7、8に設けられた各収容凹部が、それぞれ、他方の加熱ロール7、8と接触する部分(以下、「ニップ部N」と言う。)で、他方の加熱ロール7、8に設けられた各収容凹部と開口部同士が重なるような位置関係とされている。これにより、ニップ部Nでは、開口部同士が重なった2つの収容凹部によって、各フィルム7、8同士の間に複数の錠剤収容空間が画成される。
【0031】
この一対の加熱ロール7、8では、ニップ部N付近に搬送されてきた第1フィルム20と第2フィルム21とが、錠剤22が供給された第1フィルム20の上面に第2フィルム21が重なるように合流し、ニップN部を通過する。この際、各フィルム20、21は、一対の加熱ロール7、8の各収容凹部に対応する領域に錠剤22が配置されるとともに、各収容凹部に対応する領域以外(錠剤の周囲)が互いに熱接着される。これにより、2枚のフィルム20、21の間に、複数の錠剤が個別に包装されたフィルム積層体が得られる。
【0032】
冷却ロール9は、一対の加熱ロール7、8のニップ部Nより下流側に、第1加熱ロール7に圧接して設けられている。
冷却ロール9は、円筒状をなし、その軸線まわりに回転可能に設けられている。この冷却ロール9の内部には、冷却手段が内蔵されており、これにより該冷却ロール9の周面が冷却される。
一対の加熱ロール7、8によって熱シールされたフィルム積層体は、第1加熱ロール7の周面に沿って搬送された後、冷却ロール9と第1加熱ロール7との間を通過する。これにより、フィルム積層体は、冷却ロール9によって直ちに冷却される。冷却ロール9によって冷却されたフィルム積層体(SPシート23)は、次工程に送られるようになっている。
【0033】
なお、本実施形態のSPシートシール装置1においては、第2フィルム21を加熱ロール8の頂上部分から巻き掛けることができるように第2プレヒータ6を加熱ロール8の手前側の必要高さに配置するとともに、第1フィルム20を投入部4の下方側から加熱ロール7のニップ部Nに近い部分に巻き掛けることができるように第1プレヒータ3を投入部4の下方に設置している。このように第1プレヒータ3と第2プレヒータ6を設置した上で、第2プレヒータ6と加熱ロール8との間の距離よりも第1プレヒータ3と加熱ロール7との間の距離の方が小さくなるように各ヒータ3、6が設置されている。
【0034】
次に、第1プレヒータ3および第2プレヒータ6について説明する。第1プレヒータ3は第1フィルム走行系2の錠剤供給部4の手前側に配設され、第2プレヒータ6は第2フィルム走行系5の一対の熱接着ロール7、8の手前側に配設されている。なお、第2プレヒータ6は第1プレヒータ3と同様の構成であるため、ここでは第1プレヒータ3を代表に説明する。
【0035】
図2、3に示すように、第1プレヒータ3は、棒状のヒータ(固定ヒータ)31と、ヒータ31を収容する金属製の外筒32と、外筒32の表面温度を検知する表面温度センサ33と、表面温度センサ33で検知された温度データに基づいてヒータ31のON/OFFを切り替える図示しない制御機構を有している。
【0036】
ヒータ31は、SPヒートシール装置本体に設けられた側壁などの壁部10に固定されている。棒状のヒータ31としては、特に限定されないが、例えば、ニクロム線などの発熱線をコイル加工してステンレス鋼製の筒体の内部に挿入してリード線を引き出した構成のカートリッジヒータなどを使用できる。この棒状のヒータ31の基端部からは、該ヒータ31と電源とを電気的に接続するためのリード用の配線39が引き出されている。このヒータ31はその基端部に設けられている鍔部を介して装置本体の壁部10にネジ止めなどの固定手段により壁部10に直角に取り付けられている。
【0037】
外筒32は、熱伝導率の低い金属を主体として構成されている。金属としては、特に限定されないが、耐熱性と耐食性に優れることから、ステンレス鋼が好適である。
図4に示すように、外筒32は、中空円筒状をなしており、その内部にヒータ31の外径よりも若干径の大きな円柱状のヒータ収容空間32aを有している。図3に示すように、このヒータ収容空間32aには前記棒状のヒータ31が収容され、ヒータ収容空間32aがヒータ31の外径よりも若干大径であることにより、外筒32の内周面とヒータ31の外周面との間には隙間32bが空いている。このため、ヒータ31で発生した熱は、この隙間32bに存在する空気層を介して外筒32に伝達され、外筒32が加熱されるようになっている。
【0038】
外筒32の両端部(後述するフィルム非接触領域35)の内側には、それぞれ、軸受け36、36が設けられ、各軸受け36、36にヒータ31が嵌挿されている。これにより、外筒32は、ヒータ31と各軸受け36、36とにより支持された状態でヒータ31の周回りに回転可能に支持されている。
この第1プレヒータ3では、第1フィルム20が、その裏面を外筒32の外周面に所定の接触角度で接触させつつ走行する。この際、外筒32は、第1フィルム20の走行に追従して、ヒータ31の周回方向に回転する。それとともに、外筒32の熱が第1フィルム20に伝わり、第1フィルム20を加熱(予熱)することができる。
【0039】
なお、外筒32の外周面は、第1フィルム20よりも幅が大とされており、その幅方向での中央領域にのみ第1フィルム20が接触する。すなわち、この第1プレヒータ3では、外筒32の外周面のうち中央領域がフィルム接触領域(フィルム接触面)34を構成し、両端部の領域がそれぞれフィルム非接触領域35を構成する。
【0040】
外筒32の一方のフィルム非接触領域35には、帯状の赤外線放射部(黒色部)38が設けられている。赤外線放射部38は、例えば、ポリ4フッ化エチレン(登録商標:テフロン:黒色)のような耐熱性黒色塗料を塗布することによって形成することができる。
表面温度センサ33は、その受光部33aを外筒32の赤外線放射部38に向けて、該赤外線放射部38に近接して設けられている。表面温度センサ33は、赤外線放射部38から放射される赤外線を受光し、その放射量に基づいて外筒32の表面温度を非接触で検知する。この表面温度センサ33で検知された温度データは、温度管理装置などの制御機構に入力される。
制御機構は、表面温度センサ33から入力された温度データに基づいて、ヒータ31への電流供給のON/OFFを切り替え、外筒32の表面温度が所定範囲となるように制御する。具体的には、制御機構は、温度データが設定下限値未満である場合には、ヒータ31への電流供給をONとし、温度データが設定上限値を超えた場合には、ヒータ31への電流供給をOFFとすることにより、外筒32の表面温度を制御する。
【0041】
ここで、第1フィルム20を予備加熱する際の外筒32の表面温度は、例えば70〜80℃であることが好ましい。これにより、第1フィルム20を第1プレヒータ3によって十分に予熱することができ、一対の加熱ロール7、8の間で、第1フィルム20と第2フィルム21とを重ね合わせて熱接着する際、第1フィルム20の温度を確実に接着適正温度とすることができる。
【0042】
以上のように構成された第1プレヒータ3では、次のような効果を得ることができる。
まず、この第1プレヒータ3では、外筒32内のヒータ収容空間32aが、ヒータ31の外径よりも若干大径とされており、外筒32の内周面とヒータ31の外周面との間に隙間32bが空いている。このため、ヒータ31で発生した熱は、隙間32bに存する空気層を介して外筒32に伝達される。
この場合、この空気層(隙間32b)がヒータ31での温度変化を緩和する熱の緩衝空間として機能する。すなわち、ヒータへの電流供給がONの間に発生した熱は、空気層を徐々に伝わるため、外筒32の温度は緩やかに上昇する。また、ヒータ31への電流供給がOFFの間は、空気層が徐々に放熱するため、外筒32の温度は緩やかに下降する。このため、外筒32のフィルム接触領域34では、ヒータ31のON/0FFに伴う温度変化が小さく抑えられ、その表面を接触して走行する第1フィルム20を均一な設定温度範囲に加熱することができる。
【0043】
ここで、外筒32の内周面とヒータ31の外周面との隙間32bの幅は、0.5〜1.0mmであることが好ましい。隙間32bの幅が0.5mmより小さい場合には、空気層の緩衝空間としての機能が十分に得られない可能性がある。また、隙間32bの幅が1.0mmより大きい場合には、ヒータ31の熱が外筒32に伝わり難くなるため予備加熱が十分になされなくなるおそれがある。
【0044】
なお、本実施形態のSPシートシール装置1では、第2プレヒータ6から加熱ロール8に至る部分に存在するフィルム21の長さよりも、第1プレヒータ3から加熱ロール7に至る部分に存在するフィルム20の長さが短くなるように構成されている。
このような関係としておくことで、図1に示す如くフィルム20、21を走行させて加熱ロール7、8で熱シールする場合、加熱ロール8側のフィルム巻き付け長さが加熱ロール7側の巻き付け長さより長く、フィルム21の方がフィルム20より加熱されやすいので、加熱ロール8から第2プレヒータ6までの距離を長くしてフィルム21の方が加熱ロール8に到達する間に少し温度降下するようにしている。
【0045】
なお、本実施形態の外筒32は、その両端部にそれぞれ軸受け36、36が設けられており、両端部では、ヒータ31の熱が軸受け36、36を介して外筒32に伝達されてしまう。このため、軸受け36、36の熱伝導率によっては、外筒32の両端部が、ヒータ31のON/OFF切り替えによって温度変動幅が大きくなるおそれがある。
しかし、この第1プレヒータ3では、外筒32の両端部がフィルム非接触領域35であるため、仮にこの部分の温度変動幅が大きくなったとしても、フィルムの加熱に対する影響を少なくすることができるので、不都合は生じない。このような点から、軸受け36、36は、本実施形態のように、外筒32の各フィルム非接触領域35の外側にのみ設け、フィルム接触領域34の内側には設けないことが好ましい。
また、この第1プレヒータ3は、ヒータ31が固定ヒータ(装置本体の壁部10に固定されたヒータ)とされており、外筒32は、ヒータ31を固定軸として該ヒータ31の周回方向に回転する。
【0046】
ここで仮に、フィルムの走行に追従して、外周部分とヒータとが同時に回転する構成であると、ヒータから引き出された配線と電源電極とを接続するためにブラシ接点が必要となる。このため、第1プレヒータ3の構成が複雑化してしまう。
これに対して、ヒータ31が装置本体の壁部10に固定され、外筒32のみが回転する構成では、ヒータ31から引き出された配線39と電源からの電極とを、配線39を電極に直接固着することで接続することができる。このため、第1プレヒータ3の構成を簡易なものとすることができる。
【0047】
次に、このSPシートシール装置の動作について説明する。
まず、第1フィルム20および第2フィルム21を用意する。各フィルム20、21としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔にポリエチレンなどの熱可塑性高分子フィルムを重ねたラミネートフィルム等が用いられる。
そして、第1フィルム20および第2フィルム21が巻回されたリール11、14を回転軸に取り付け、各フィルム20、21を、SPシートシール装置1の所定の箇所に掛け渡す。
【0048】
次に、第1フィルム供給リール11から第1フィルム20を送り出し、第2フィルム供給リール14から第2フィルム21を送り出す。また、走行経路の下流側では、第1フィルム20と第2フィルム21との積層体が加熱ロール7、8に巻き取られる。これにより、第1フィルム20および第2フィルム21は、それぞれの走行経路を走行する。
第1フィルム供給リール11から送り出された第1フィルム20は、第1プレヒータ3に搬送される。
第1プレヒータ3では、外筒32の表面温度が表面温度センサ33によって経時的に検知され、検知された温度データが制御機構に入力される。制御機構は、温度データが設定下限値未満である場合には、ヒータ31への電流供給をONとし、温度データが設定上限値を超えた場合には、ヒータ31への電流供給をOFFとする。これにより、外筒32の表面温度が設定範囲内となるように制御される。
このとき、第1プレヒータ3では、ヒータ31で発生した熱が空気層を介して外筒32に伝達されるため、そのON/OFFに伴ってヒータ31の温度が小刻みに変動しても、その温度変化が空気層によって緩和され、外筒32の外周面における温度変動幅が小さく抑えられる。
【0049】
第1プレヒータ3に搬送された第1フィルム20は、その裏面を、外筒32の外周面に所定の接触角度で接触させつつ、この外周面に沿って走行する。これにより、第1フィルム20が加熱(予熱)される。このとき、この第1プレヒータ3では、外筒32の外周面の温度変動幅が小さく抑えられていることにより、第1フィルム20は、均一に所定温度に予備加熱される。
一方、第2フィルム供給リール14から送り出された第2フィルム21は、第2プレヒータ6に搬送される。
第2プレヒータ6においても第1プレヒータ3と同様に外筒62の表面温度が設定範囲内となるように制御される。このとき、第2プレヒータ6でも、ヒータで発生した熱が空気層を介して外筒62に伝達されるため、そのON/OFFに伴ってヒータの温度が小刻みに変動しても、その温度変化が空気層によって緩和され、外筒62の外周面での温度変動幅が小さく抑えられる。
【0050】
次に、第1フィルム20と第2フィルム21は、一対の加熱ロール7、8のニップ部N近傍で合流し、ニップ部Nを通過する。この際、各フィルム20、21は、一対の加熱ロール7、8の各収容凹部に対応する領域に錠剤22が配置されるとともに、各収容凹部に対応する領域以外(錠剤の周囲)が互いに熱接着される。これにより、2枚のフィルム20、21の間に、複数の錠剤22が個別に包装されたフィルム積層体(SPシート23)が得られる。
【0051】
このとき、第1プレヒータ3および第2プレヒータ6によって、第1フィルム20と第2フィルム21とが均一に予熱されていることにより、第1フィルム20および第2フィルム21は、ニップ部Nを通過する際、接着適性温度になるように均一に加熱され、各収容凹部に対応する領域以外が確実に熱シールされる。
【0052】
次に、熱接着されたフィルム積層体は、第1加熱ロール7の周面に沿って搬送され、第1加熱ロール7と冷却ロール9との間を通過する。これにより、フィルム積層体が直ちに冷却され、その熱変形が防止される。そして、冷却されたフィルム積層体(SPシート23)は、次工程に送られる。
このように、このSPシートシール装置1では、第1フィルム20および第2フィルム21を、一対の加熱ロール7、8に搬送する前に、均一に予熱することができるため、一対の加熱ロール7、8で、各フィルム20、21を均一に接着適正温度まで加熱することができる。その結果、各フィルム同士を確実に熱シールすることができ、シール浮きを無くした品質の高いSPシート23を得ることができる。
以上、本発明の加熱装置およびSPシートシール装置の実施形態について説明したが、前記実施形態において、加熱装置およびSPシートシール装置を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…SPシートシール装置、2…第1フィルム走行系、3…第1プレヒータ(加熱装置)、4…錠剤供給部、5…第2フィルム走行系、6…第2プレヒータ(加熱装置)、7…第1加熱ロール、8…第2加熱ロール、9…冷却ロール、10…壁部、11…第1フィルム供給リール、14…第2フィルム供給リール、20…第1フィルム、21…第2フィルム、22…錠剤、23…SPシート、31…ヒータ、32…外筒、32a…ヒータ収容空間、32b…隙間、33…表面温度センサ、34…フィルム接触領域、35…フィルム非接触領域、36…軸受け、38…赤外線放射部、39…配線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にヒータ収容空間を有する外筒と、前記ヒータ収容空間に収容された棒状の固定ヒータと、前記外筒の両端部の内側にそれぞれ設けられ、前記固定ヒータが嵌挿された一対の軸受けとを有し、前記外筒の外周面に沿って走行移動するフィルムを加熱するとともに、該フィルムの走行に追従して、前記外筒が前記固定ヒータの周回方向に回転自在とされてなり、前記外筒の内周面と前記固定ヒータの外周面との間に熱伝達用の隙間が形成されてなることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記隙間の幅は0.5〜1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記軸受けが設けられた外筒の両端部よりも内側の領域にフィルム接触領域が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記外筒周面の前記フィルムに対する接触部分の外側に熱放射層が形成され、この熱放射層の温度を計測する計測手段が付設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
対になる加熱ロールと、これら加熱ロールの間に2枚のフィルムを供給する供給系と、これら2枚のフィルムの間に内容物を供給する内容物供給部と、前記対になる加熱ロールの手前側に配置され前記2枚のフィルムを予熱するための請求項1〜請求項4のいずれかに記載の加熱装置とを具備してなることを特徴とするSPシートシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−254307(P2010−254307A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103003(P2009−103003)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】