説明

加熱装置

【課題】 フランジの熱変形による垂れを防止することが可能な加熱装置を提供すること。
【解決手段】筒状のシェル50と、このシェル50の内周に吊り下げ支持されると共に基板を加熱するヒーターと、このヒーターをシェル50に支持する支持金具と、支持金具にヒーターを取り付ける碍子とを備える。この支持金具は固定部34xを介してこのシェル50の内周側にフランジ34fを突出させるように固定される。フランジ34fは、各支持金具間及び各碍子取付部34b間にスリット34a,34wを有しているので熱膨張長は吸収される。また、各碍子取付部34bに固定部34xを有しているので、過熱による熱変形は抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、特に、半導体製造における被処理基板を処理室に収容して発熱体により加熱した状態で処理を施す熱処理用の加熱装置に関する。さらに詳しくは、筒状のシェルと、このシェルの内周に吊り下げ支持されると共に基板を加熱するヒーターと、このヒーターをシェルに支持する支持金具と、支持金具にヒーターを取り付ける碍子とを備え、この支持金具は固定部を介してこのシェルの内周側にフランジを突出させるように固定される加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱体をインナシェルに支持させる支持金具として、例えば特許文献1に記載の如きものが知られている。特許文献1に係る加熱装置の発熱体20’は、図10〜12に示すように、上,下金具33’,34’及び上,下碍子31’,32’によりインナシェル50’の内周に吊り下げて支持されている。下金具34’は、フランジ34f’とフランジ34f’の後辺34s’から垂直に伸びる二つの固定部34x’とから構成され、全体としてL字形状を呈する。下金具34’は、上,下碍子31’,32’を介してこのインナシェル50’の内周側にフランジ34f’を突出させるように固定されている。
【0003】
発熱体20’を発熱させることで、フランジ34f’が熱膨張と重力により熱変形し、図12のP1に示すように垂れ下がる。よって、上下に配置された発熱体20’の間隔が乱れ、P1に示す位置で上例の発熱体20s’の下端が上金具33’に乗り上げたり、P2に示すように、発熱体20t’が下例の発熱体20u’の上部と接触する点が懸念される。
【0004】
また、下金具34’をインナシェル50’に取り付けると、下金具34’はフランジ34f’の後辺34s’と固定部34x’とでインナシェル50’に直接接触する。よって、水冷によって温度を下げる働きをするインナシェル50’と平面的に接続されるため、下金具34’は過度に吸熱されて発熱体20’の上端の温度低下による均熱悪化が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−33117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、フランジの熱変形による垂れを防止することが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る加熱装置の特徴は、筒状のシェルと、このシェルの内周に吊り下げ支持されると共に基板を加熱するヒーターと、このヒーターをシェルに支持する支持金具と、支持金具にヒーターを取り付ける碍子とを備え、この支持金具は固定部を介してこのシェルの内周側にフランジを突出させるように固定される構成において、前記フランジは、各支持金具間及び各碍子取付部間にスリットを有し、各碍子取付部に前記固定部を有していることにある。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明に係る加熱装置の特徴によれば、フランジが熱膨張しても、その膨張長はスリットに吸収され、変形が抑制される。しかも、各碍子取付部に固定部を有しているので、ヒーターで最も加熱される各碍子取付部は固定部によりシェルに接続され、過熱による熱変形は抑制される。
【0009】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における加熱装置の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1の天井部近傍における横断面図である。
【図3】図1におけるA部拡大図である。
【図4】図2におけるB部拡大図である。
【図5】図1におけるC部拡大図である。
【図6】上金具を外した状態における図4相当図である。
【図7】下金具を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は固定部の側面図である。
【図8】吊り碍子の上碍子を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図9】吊り碍子の下碍子を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図10】従来技術に係る下金具の斜視図である。
【図11】従来技術に係る図4相当図である。
【図12】従来技術に係るL字型金具が変形した場合の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明を実施する為の最良の形態としての第一の実施形態を説明する。
【0012】
図1〜6に示すように、基板処理装置1は、大略、処理室308を形成する反応容器309と、この反応容器の外周に配置された加熱装置3と、主制御装置4とを備えている。
【0013】
加熱装置3は、大略、天井部10、円筒状の中間部11、下部12及び端子ケース13を有し、中間部11には発熱体20が支持されている。天井部10には下面と側面に開口するエルボ状の排気導路81が形成され、さらにその下部に反射装置90を有している。中間部11は、発熱体20を支持するインナシェル50を絶縁状態でアウタシェル60により包囲し、さらに外周を化粧パネル70で包囲している。インナシェル50とアウタシェル60とは導電性の材料から構成されており、例えば、ステンレス材等の金属材から構成されている。
【0014】
中間部11の上部と吸気アタッチメント7xとの間には冷却ガス導入ダクト7yが取り付けられる。吸気アタッチメント7xの開口には開閉バルブ7aとして例えばバタフライバルブが装着され、流路が開閉できるようになっている。吸気アタッチメント7xは冷却ガス供給ライン7に接続される。インナシェル50及びアウタシェル60の間に円筒状の冷却媒体流通通路としての気道14が形成される。冷却ガス導入ダクト7yは環状に略均等に配置された複数のパイプ61により気道14と連通している。一方、排気導路81には強制排気を行う排気ブロア8aを備えた強制排気ライン8が接続され、加熱装置3の内部空間である加熱空間の強制排気が行われる。そして、冷却ガス供給ライン7から導入された空気若しくは不活性ガス等のガスは気道14及び後述の複数の碍子孔から加熱空間18に冷却ガスとして供給され、強制排気ライン8から排気される。
【0015】
反応容器309は、加熱空間18に順次同心に配置される均熱管315及び反応管310を備え、この反応管310内に処理室308が形成される。この処理室308にはウェーハ305を水平多段に保持するボート300が収納される。このボート300は図示しないボートエレベータにより、処理室内308へ装入、引出し可能である。
【0016】
反応管310内には反応ガス導入管5x及び排気管6xが連通される。反応ガス導入管5xには流量制御器5aが設けられ、排気管6xには圧力制御器6aが設けられる。反応ガスが所定流量で導入されると共に前記反応管310内が所定圧力に維持される様に、排出口6yから内部ガスが排気され、排気管6xを通じて処理室外に排出される。
【0017】
他の冷却ガス供給ライン5yは、均熱管315と反応管310との間に形成される均熱管内空間317に連通される。前記冷却ガス供給ライン5yには流量制御器5bが設けられる。また、吸気アタッチメント7xには開閉バルブ7aが設けられる。強制排気ライン8には排気装置としての排気ブロア8aが設けられる。すなわち、均熱管内空間317と加熱空間18の双方に対して冷却ガスを適宜導入・調整することが可能である。
【0018】
発熱体20は中間部11の円筒の軸心方向に対し、所要のゾーンZ1〜Z5に複数段に区分けされ、ゾーン制御が可能となっている。各ゾーンには各ゾーンの加熱温度を検出する温度検出器が設けられている。なお、発熱体20は各ゾーンそれぞれの成形パターンを同じにすることにより、発熱量を各ゾーンとも均一にする様にしてもよい。
【0019】
基板処理装置1の各部は主制御装置4によって制御され、例えば、反応管310内で処理されるウェーハ305の処理状態は、主制御装置4によって制御される。この主制御装置4は、温度モニタ部4a、加熱制御部(加熱制御装置)4b、反射制御部4c、第一流量制御部4d、反応管310内の圧力を制御する圧力制御部4e、第二流量制御部4f、排気制御部4g及び前記ボートエレベータ等の機構部を制御する駆動制御部4hを備えている。
【0020】
温度モニタ部4aは第一〜第三温度検出器TC1〜TC3の温度を検出する。ここで、第一温度検出器TC1は発熱体20近傍で各ゾーンZ1〜Z5毎に設けられる。第二温度検出器TC2は反応管310内の周部における前記各ゾーンZ1〜Z5毎に設けられる。さらに、第3温度検出器TC3は反応管310より上方若しくは反応管310の上部中央を含む範囲に設けられている。
【0021】
加熱制御部4bは、温度モニタ部4aの検出結果に基づき各ゾーンZ1〜Z5の発熱体20の発熱量を制御する。また、反射制御部4cは、温度モニタ部4aの検出結果に基づき反射装置90の駆動装置としてのアクチュエータ99を制御する。そして、下面が鏡面仕上げされた反射体(リフレクタ)91を適宜傾斜させて発熱体20から反応管310の上部中央に対する集光度を変更し、同部分の温度制御を行う。
【0022】
第一流量制御部4dは流量制御器5aを制御し、圧力制御部4eは圧力制御器6aを制御し、反応ガスの導入と圧力を制御する。また、第二流量制御部4fは流量制御器5bを制御し、排気制御部4gは開閉バルブ7a及び排気ブロア8aを制御し、冷却ガスの導入と排出とを制御する。
【0023】
図3に図1中のA部の拡大図を示す。発熱体(ヒータ素線)20は、アルミナ等の絶縁素材としての吊り碍子30によりインナシェル50に固定されている。前記発熱体20には急速加熱が可能である発熱材料、例えばFe−Al−Cr合金が用いられ、発熱表面積が大きくなる様に、断面は平板形状等の形状が採用され、面状発熱体として構成されている。発熱体20は上下に蛇行状の折返部21,22を有しており、中間部は上折返部21と下折返部22とをそれぞれ半ピッチずらして接続する素線部23と、各素線部23間に位置する隙間24から構成されている。また、発熱体20の上部は吊り碍子30に保持される折曲部20aとして折り曲げ加工がなされている。インナシェル50内面は鏡面仕上げされており、発熱体の素線部23裏面から輻射される熱線を前記内面で反射させ、隙間24から加熱空間18に向かって放射する。
【0024】
絶縁材料としての吊り碍子30は、アルミナ等の耐熱絶縁材料よりなる上碍子31及び下碍子32からなる。各碍子31,32は、発熱体20の上部の折曲部20aを挟むと共に、上金具33及び下金具34間に溶着固定されたピン35を貫通させて取り付け固定してある。下金具34は、後述の各固定部34xの取付孔34yにおいてボルト36によりインナシェル50に取り付けられる。
【0025】
インナシェル50には中央に貫通孔40aを有し気道14内の冷却ガスをインナシェル50内部に供給する複数の急冷パイプ40がインナシェル50の内壁から加熱空間18側に向かって突出するように設けられている。急冷パイプ40はアルミナ等の絶縁耐熱材料により形成されている。この急冷パイプ40は、隙間24において発熱体20を貫通する貫通部40dと、この貫通部40dが発熱体20を貫通する貫通方向Vに交差する方向にこの貫通部40dよりも突出する突出部としての略円形の鍔40b、40cにより発熱体20の中腹の動きを制限する。すなわち、一対の鍔40b、40c間の貫通部40dに溝を形成する。さらに発熱体20の下端を下段の吊り碍子30の上端位置に重なる位置に設け、発熱体20の下端の急冷パイプ40の貫通方向に対する動きを制限する。
【0026】
インナシェル50の裏面には冷却媒体流通通路としての水冷管59が設けられている。この水冷管59は、インナシェル50の外面に軸心方向に螺旋状に巻き付けられて溶着される。例えば給・排水経路59a,59bを介して冷却水等の冷却媒体を流すことによりインナシェル50の温度上昇を防ぎ、ほぼ一定に保つ。
【0027】
インナシェル50の外側には複数の接続碍子51を介して絶縁状態でアウタシェル60が取り付けられる。接続碍子51は絶縁性と耐熱性を有するアルミナ材で製作されているため、不測に発熱体20とインナシェル50とが接触し、インナシェル50に電流が伝わる等により例えば短絡しても、接続碍子51により電流がアウタシェル60に伝わることはない。
【0028】
接続碍子51の内側はインナシェル50に対し第一のボルト52で固定される。一方、接続碍子51の外側はアウタシェル60に対し絶縁耐熱材料としての環状中空状のカラー53を介して第二のボルト54で固定される。カラー53はアウタシェルの取付孔を貫通して設けられ、アウタシェル60の肉厚よりも厚く形成され、第二のボルト54の頭部下面と接続碍子51外面との間にクリアランス(隙間)を設けている。インナシェル50が熱膨張によって膨らんでも、その変形分をこのクリアランスにより吸収し、アウタシェル60に熱応力が作用することを防ぎ、アウタシェル60の変形を防止している。
【0029】
アウタシェル60のさらに外側には柱62を介して最外殻である側壁外層としての化粧パネル70が設けられている。この化粧パネル70はフランジを有する柱62を介してアウタシェル60と例えば金属製のリべット62aにより固定アウタシェル60の上部には円筒状の前記気道14に連通する開口61aが設けられ、この開口61aにパイプ61の一端が溶接される。パイプ61は化粧パネル70を貫通し、その他端が冷却ガス導入ダクト7yに連通している。なお、柱62、化粧パネル70は導電性を有する材料から構成されており、例えば、ステンレス材料等の金属材料から構成されている。このため、化粧パネル70とアウタシェル60とは柱62を介して導電する状態で接続されている。なお、アウタシェル60や化粧パネル70に対する導電を上述の如く防ぐことで基板処理装置全体への導電を防止し、作業時の感電等や基板処理装置内の電装品が破損することを防いでいる。
【0030】
次に、図3〜9を参照しながら、発熱体20とその保持構造ないし支持構造について説明する。
【0031】
発熱体20における蛇行状の上側折返部21は方形を呈し、折り曲げ加工により保持用の折曲部20aとされる。後述の突起32dによる移動制限を行い、発熱体の断線・短絡を防止し、寿命を延長させることが可能である。
【0032】
一方、発熱体の下側折返部22は、素線中腹部分と同じ帯幅、若しくはそれ以上の帯幅で円弧状とし、素線部23の質量を節約する。これにより、発熱体20全体の熱容量を減少させ、発熱体20全体の応答性を向上させている。
【0033】
吊り碍子30を構成する上碍子31及び下碍子32にはそれぞれピン貫通用の孔31a,32aが形成され、上碍子31の外側下面の凸部31bと下碍子32の外側上面の凹部32bとが嵌め合わされる。これにより、上碍子31の内側下面31cと下碍子32の内側上面32cとの間に先の折曲部20aを挟み込む隙間を形成する。上碍子31は内側縁部31dが下方に突出し、挟み込まれた折曲部20aの脱落を阻止するように保持する。
【0034】
下碍子32には、略四角柱形状の突起32dが設けられ、この突起の両側に先の内側上面32cが位置する。下碍子32は複数個が間隔を隔ててピン35に貫通され、隣り合う内側上面32c間に折曲部20aが配置される。発熱体20は円筒状のインナシェル50の内面の円弧方向Rに沿って配置されるが、折曲部20aの両端が先の突起32dにそれぞれ接当することにより、円弧方向Rに対する移動が制限される。また、吊り碍子30は、この円弧方向Rに対して間欠的に配置されるので、熱容量の大きな碍子の総量を減少させることにより全体の熱容量を減少させ、発熱体20全体の応答性を向上させている。
【0035】
前記急冷パイプ40は、インナシェル50の内面に対する直交方向であり前記発熱体20を貫通する方向である貫通方向Vに突出する。よって、急冷パイプ40で上下方向中腹の発熱体20の加熱装置径方向ヘの凸変形と凹変形を制限し、吊り碍子30で素線下端の凹変形を制限している。側壁材としてのインナシェル50は熱容量の小さなステンレス鋼等の金属製材料で構成され、大気雰囲気で使用できる発熱体20を絶縁した状態で固定することができる。
【0036】
支持金具としての下金具34は、全体としてL字状を呈し、フランジ34fとフランジ34fの後辺34sに取り付けられ垂直に伸びる三つの固定部34xとから構成される。このフランジ34fには、三ヶ所の貫通孔34bが略均等に配置されている。この貫通孔34bに前述のピン35を貫通させることで、碍子31,32は下金具34に取り付けられる。このピン35を貫通させ溶着させる貫通孔34b及びその近傍を碍子取付部と称する。固定部34xは、碍子取付部に対応する位置に設けられていると共に、取付孔34yが形成されている。これにより、下金具34はボルト36を介してインナシェル50に取り付けられる。このとき、フランジ34fとインナシェル50との間には、フランジ34fの後辺34s側に固定部34xにより後隙間34tが形成される。そのため、固定部34xとインナシェル50とは直接接触するが、フランジ34fとインナシェル50とは後隙間34tにより直接接触しない。
【0037】
図10に示す従来の下金具34’では、中央の貫通孔34b’の位置に対応して固定部34x’は設けられていなかった。従って、この中央の下金具34’近傍が発熱体20’で加熱されることにより熱変形が進行した。図7に示す本発明の下金具34では、中央の貫通孔34bに対応して固定部34xが設けられている。これにより、各貫通孔34bは全て固定部34xが対応して設けられ、矢印Aの方向に適度な吸熱がなされ、中央の貫通孔34b近傍の偏った過熱及び熱変形の問題は解消されることとなった。
【0038】
また、上述の如くインナシェル50とフランジ34fとは直接接触しないので、接触面積が減少しインナシェル50への過度の吸熱が減少する。固定部34xは、従来技術の矩形形状の固定部34x’から2つの斜辺34zを切り落として形成される多角形である。これにより、インナシェル50との接触面積がさらに減少し、過度の吸熱が抑制される。
【0039】
フランジ34fには、各貫通孔34b間に略均等にスリット34aが形成されている。そのため、発熱体20が加熱することにより、図7(a)に示す左右方向矢印の如くフランジ34fが熱膨張しても、その膨張長は矢印Sの如くスリット34aに吸収される。さらに、図7(b)に示すように、各下金具34間には、スリットとしての隣隙間34wが形成されている。よって、フランジ34fの熱膨張による伸び等の変形をスリット34a及び隣隙間34wにより抑制することが可能である。
【0040】
また、このスリット34aの幅は僅かで足りるため、図7(a)の符号Tに示す鉛直方向の如き熱対流は、フランジ34fで効果的に遮断することが可能である。よって、上下に積み上げられた発熱体20間の鉛直方向に対する均熱悪化を防止することが可能である。
【0041】
吊り碍子30の上金具33及び下金具34は剛性の点では上記円弧方向Rに連続していることが望ましい。しかし、発熱体20の加熱時の熱膨張による熱変形を防ぐため、分断の必要もある。そこで、適宜個数の吊り碍子30毎に上金具33及び下金具34を分断することで、捻り剛性を保ちつつ熱膨張による下金具34間の隣隙間34wを最小限に留めている。また、各下金具34間に各上金具33を跨らせることで、さらに捻り剛性を向上させている。
【0042】
ここで、急冷パイプ40の貫通孔40aは、反応容器309、延いては、その中のウエハを急速に冷却する。しかし、隙間50sは、急冷パイプ40に比べるとコンダクタンスも少ないため、冷却ガスの大部分は隙間50sから加熱空間に漏洩する。しかも、隙間50sはインナシェル50の分割体同士の間に位置し、急冷パイプ40の出口よりも反応容器309と隔たっている。特に反応容器309の手前には発熱体が存在するため、反応容器309への冷却が非効率となってしまう。これを防ぐために上記隙間50sを塞ぐ構造が必要である。この構造は、隙間50sの上下端ともフランジ50tを設けたり水冷管59を設けてもよいが、一方がフランジ、他方が水冷管の方が構造上無駄を生じずに優れている。
【0043】
次に、上記基板処理装置1の動作について説明する。
【0044】
ウェーハ305の処理は、このウェーハ305が装填された前記ボート300がボートエレベータにより前記反応管310に装入され、前記加熱装置3の加熱により所定温度迄急速加熱される。この加熱装置3により前記ウェーハ305を所定温度に加熱した状態で前記反応ガス導入管5xより反応ガスが導入され、前記排気管6xを介して排気ガスが排出され、前記ウェーハ305に所要の熱処理がなされる。
【0045】
通常、本加熱装置3は、600度以下の低温プロセスを目的とし、熱容量の低減を図っている。しかし、クリーニング等のウエハ処理を行う必要があるため、一時的に800度程度まで昇温させなければならない。ここで、クリーニング等のウエハ処理とは、成膜時に反応炉内にパーティクルなどの原因となる膜が付着するため、この反応炉の内壁に付着・体積した膜をClF3(三フッ化塩素)ガス等を使用してエッチングして除去する処理をいう。
【0046】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0047】
上記実施形態において、固定部34xは図7(c)に示すように矩形形状の従来の固定部34x’から斜辺34zを切り落として多角形とした。しかし、固定部34x’は接触面積の削減により熱伝導性を低下させれば足り、固定部34x’の輪郭を符号34cに示すように円弧状に形成してもよい。
【0048】
反応容器は、均熱管及び反応管の双方を備えるように説明したが、均熱管を備えずに反応管のみであってもよい。その他、2重管のみならず、1管や3重管以上の管数に構成されていてもよい。
【0049】
上記熱処理は酸化処理や拡散処理及び拡散だけでなくイオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフローおよびアニール処理等に限らず、成膜処理等の熱処理であってもよい。基板はウエハに限らず、ホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、光ディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。バッチ式熱処理装置および枚葉式熱処理装置に限らず、ヒータユニットを備えた半導体製造装置全般に適用することができる。上記インナシェル50及び反射体91の鏡面仕上げ部は、ステンレス鋼の研磨により鏡面とする他、金、白金等の貴金属によるメッキを施しても構わない。
【0050】
本発明の実施形態は上記の如く構成されるが、さらに包括的には次のような構成を備えてもよい。
【0051】
本発明の他の目的は、図10〜12に示すような従来の加熱装置における発熱体の均熱悪化を防止することにある。
【0052】
この他の目的を達成するため、本発明に係る加熱装置の態様は、前記固定部が前記フランジに略直交する板状であり、この板状部が多角形又は円弧状であり、及び/又は、この固定部以外のフランジと前記シェルとの間に空隙を有している。
【0053】
同構成によれば、固定部が多角形又は円弧状であるため、インナシェルとの接触面積が減り、過度の吸熱を抑制することができる。さらに、フランジとインナシェルとの間に空隙を有しているため、インナシェルとの接触面積が減り、過度の吸熱が抑制される。これにより、熱伝導性を低下させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、半導体集積回路装置(半導体デバイス)が作り込まれる半導体ウエハに酸化処理や拡散処理、イオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフローやアニール及び熱CVD反応による成膜処理などに使用される基板処理用加熱装置に利用することができる。本発明は、このような基板処理用加熱装置のうち、特に低温領域でプロセスに対して有効なものである。
【符号の説明】
【0055】
1:基板処理装置,3:加熱装置,4:主制御装置,4a:温度モニタ部,4b:加熱制御部,4c:反射制御部,4d:第一流量制御部,4e:圧力制御部,4f:第二流量制御部,4g:排気制御部,4h:駆動制御部,5a:流量制御器,5b:流量制御器,5x:反応ガス導入管,5y:冷却ガス供給ライン,6a:圧力制御器,6x:反応ガス排気管,7:冷却ガス供給ライン,7a:開閉バルブ,7b:急冷パイプ,7x:吸気アタッチメント,7y:冷却ガス導入ダクト,8:強制排気ライン,8a:排気ブロア,10:天井部,11:中間部,12:下部,13:端子ケース,14:気道(冷却媒体流通通路),18:加熱空間,20:発熱体,20a:折曲部,21:上折返部,22:下折返部,23:素線部,24:隙間,30:吊り碍子,31:上碍子,32:下碍子,33:上金具,34:下金具,34a:スリット,34b:貫通孔(ピン孔),34f:フランジ,34s:後辺,34t:後隙間,34x:固定部,34y:取付孔(ねじ孔),34z:斜辺、34w:隣隙間,35:ピン,36:ボルト,40:急冷パイプ,40a:貫通孔,40b:鍔,40c:鍔,40d:貫通部,42:急冷パイプ,50:インナシェル(側壁内層),50s:隙間,50t:第一フランジ,50u:断熱ブランケット,50x:第二フランジ,50y:断熱ブランケット,51:接続碍子,52:第一のボルト,53:カラー,54:第二のボルト,55a:開口(第一の開口),55b:箱(隔壁体),55c:鍔,55x:ねじ,59:水冷管,60:アウタシェル(側壁中層),60x:第三フランジ,60y:断熱ブランケット,61:パイプ,61a:開口,62:柱,62a:リベット,65:開口(第二の開口),65a:隙間,70:化粧パネル(側壁外層),71:ネジ,72a:底蓋,72b:コイルウケ,81:排気導路,81a:排気口,82:第一の開口,83:第二の開口,90:反射装置,91:反射体,91a:隙間,92:移動機構,93:シャフト,94:中央板,95:ボルト,99:アクチュエーター,100:取付構造,101:温度センサ(温度検出器),102:熱電対接点(温度検出体),103:保護管,103x:隙間,103y:隙間,104:碍子管,105:内鍔,106:外鍔,107:碍子,108:端子,109a:金属管,109b:止めねじ,111:第一パッキン,111a:孔,112:第二パッキン,112a:孔,120a〜c:ねじ,121:温度センサ(温度検出器),125:内鍔,126:外鍔,127:内箱,128:外箱,129:パッキン,131:温度センサ(温度検出器),132:温度センサ(温度検出器),133:保護管,135a〜c:鍔,300:ボート,305:ウエハ,308:処理室,309:反応容器,310:反応管,315:均熱管,317:均熱管内空間,320:L型温度センサ(温度検出器),321:接点(温度検出体),322:接点(温度検出体),330:温度センサ(温度検出器),Z1〜Z5:ゾーン,H1〜H3:貫通孔,R:円弧方向,V:貫通方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシェルと、このシェルの内周に吊り下げ支持されると共に基板を加熱するヒーターと、このヒーターをシェルに支持する支持金具と、支持金具にヒーターを取り付ける碍子とを備え、この支持金具は固定部を介してこのシェルの内周側にフランジを突出させるように固定される加熱装置であって、
前記フランジは、各支持金具間及び各碍子取付部間にスリットを有し、各碍子取付部に前記固定部を有している加熱装置。
【請求項2】
前記固定部が前記フランジに略直交する板状であり、この板状部が多角形又は円弧状であり、及び/又は、この板状部以外のフランジと前記シェルとの間に空隙を有している請求項1記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−134597(P2011−134597A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293177(P2009−293177)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(393000571)貞徳舎株式会社 (18)
【Fターム(参考)】