説明

加熱装置

【課題】基材を搬送しながら加熱する際に基材に与えられる熱量を速やかに変更してこの基材の温度を容易に調整することができる加熱装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る加熱装置は、搬送装置1と、加熱源2と、変更手段とを備える。前記搬送装置1は加熱対象である基材4を搬送する。前記加熱源2は前記搬送装置1で搬送されている前記基材4を輻射熱で加熱する。前記変更手段は前記基材4の搬送経路と前記加熱源2との間の距離を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の基材を搬送しながら加熱する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリプレグや積層板などの製造過程においては、長尺な基材を連続的に搬送しながらこの基材を加熱する加熱装置が、しばしば用いられている。このような加熱装置における基材の加熱方式としては、輻射熱により基材を加熱する方式、熱風の噴射により基材を加熱する方式、これらの方式が組み合わされた方式などがある(特許文献1〜4参照)
このような加熱装置によって基材が加熱される場合、基材の温度調整のために、基材に与えられる熱量が変更されることがある。この場合、例えば基材へ輻射熱を放射する加熱プレートなどの出力が変更されたり、基材へ噴射される熱風の温度が変更されたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−192861号公報
【特許文献2】特開2009−210168号公報
【特許文献3】特開2000−265368号公報
【特許文献4】特開平7−80835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、装置の規模や熱容量が大きい場合には、加熱プレートなどの出力が変更されたり、熱風の温度が変更されたりしても、このような設定変更時から、基材に実際に与えられる熱量が所望の量となって基材の温度が調整される時までには、大きな時間差が生じてしまう。その間は、基材は所望の条件で加熱されず、大きなエネルギーロスが生じてしまう。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、基材を搬送しながら加熱する際に基材に与えられる熱量を速やかに変更してこの基材の温度を容易に調整することができる加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱装置は、搬送装置と、加熱源と、変更手段とを備え、前記搬送装置は加熱対象である基材を搬送し、前記加熱源は前記搬送装置で搬送されている前記基材を輻射熱で加熱し、前記変更手段は前記基材の搬送経路と前記加熱源との間の距離を変更する。
【0007】
本発明に係る加熱装置が更に温度測定器を備え、この温度測定器は前記加熱源によって加熱された後の前記基材の温度を測定してもよい。
【0008】
本発明に係る加熱装置が前記加熱源を複数備えると共に温度測定器を備え、前記加熱源は前記搬送経路に沿って順次設けられ、前記温度測定器は前記基材が搬送経路上で各加熱源を通過する度に前記基材の温度を測定してもよい。
【0009】
本発明に係る加熱装置が前記加熱源を少なくとも一対備え、対となっている前記加熱源同士が前記搬送経路を介して対向していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基材を搬送しながら加熱する際に基材に与えられる熱量を速やかに変更してこの基材の温度を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す概略図である。
【図2】前記実施形態における制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の第二の実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明の第三の実施形態を示す概略図である。
【図5】本発明の実施例における変更手段の構造を示す概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一の実施形態]
図1に、加熱装置の第一の実施形態を示す。
【0013】
加熱対象である基材4の形状、材質等は特に制限されない。基材4は長尺でも枚葉状でもよいが、長尺な基材4の方が本実施形態における加熱対象として適している。
【0014】
基材4の一例として、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルムと銅箔等の金属箔とが積層して構成される積層体が挙げられる。このような積層体が加熱装置により加熱されるとフレキシブル積層板が得られる。
【0015】
本実施形態では、加熱装置は炉体6、搬送装置1、加熱源2、変更手段3、及び温度測定器5を備える。
【0016】
炉体6は隔壁7を備える。隔壁7は炉体6の内部と外部とを仕切る壁である。本実施形態では炉体6の一方の端部で隔壁7に導入口8が形成され、炉体6の他方の端部で隔壁7に導出口9が形成されているが、導入口8及び導出口9の位置は特に制限されない。導入口8及び導出口9は、炉体6の内部と外部とを連通する。
【0017】
搬送装置1は、基材4を搬送することでこの基材4を導入口8から炉体6内へ導入し、更に導出口9から炉体6外へ導出する。このようにして基材4が搬送されるのであれば、搬送装置1の構造は特に制限されない。
【0018】
本実施形態では、搬送装置1は繰出機10、搬送ローラ11、及び巻取機12を備える。繰出機10は基材4の搬送経路の始端に設けられる。この繰出機10は、長尺な基材4がロール状に巻き回されて構成されるロールを保持し、このロールから基材4を繰り出す。搬送ローラ11は基材4の搬送経路に沿って設けられている。この搬送ローラ11が、繰出機10から繰り出された基材4を搬送経路上に支持する。巻取機12は基材4の搬送経路の終端に設けられる。この巻取機12が、繰出機10から繰り出された基材4にテンションをかけながらこの基材4をロール状に巻き取る。
【0019】
本実施形態では炉体6は水平方向に沿った一方向に長い形状を有し、搬送装置1はこの炉体6内で基材4を水平方向に沿った一方向に沿って搬送する。但し、炉体6の形状や、搬送装置1による基材4の搬送方向は、本実施形態に限定されない。
【0020】
例えば、搬送装置1は基材4を上下方向に搬送してもよく、すなわち搬送装置1は基材4を上方に向けて搬送してもよく、下方へ向けて搬送してもよい。更に、搬送装置1は基材をまず上方に向けて搬送し、続いて下方に折り返して下方へ向けて搬送してもよい。炉体6の形状は、搬送装置1による基材4の搬送経路に応じ、この搬送経路を隔壁7で覆い得る適宜の形状に形成される。
【0021】
加熱源2は、搬送装置1による搬送中の基材4を輻射熱により加熱する。加熱源2としては、株式会社ノリタケカンパニーリミテッド製のプレートヒーターPLR、テーピ販売株式会社製のウルトラサーモUT等の、遠赤外線を放射する加熱プレートが挙げられる。加熱源2はこのような遠赤外線を放射する加熱プレートに限られず、その他適宜の輻射体であってもよい。
【0022】
加熱源2は炉体6内に設置されている。加熱源2は少なくとも一つ設けられる。本実施形態では炉体6内に複数の加熱源2が設置されている。加熱源2の設置位置は、基材4が加熱源2からの輻射熱により加熱されるのであれば特に制限されない。本実施形態では、加熱源2は炉体6内における基材4の搬送経路の上方と、この搬送経路の下方とに、それぞれ設置されている。これにより、二つの加熱源2が対となり、この加熱源2同士が搬送経路を介して対向している。このため、加熱源2による基材4の加熱効率が高くなっている。加熱源2は二つのみ(すなわち一対のみ)でもよいが、本実施形態では搬送経路に沿って複数対の加熱源2が順次設けられている。すなわち、本実施形態では搬送経路の上方に三個の加熱源2が順次設けられていると共に、搬送経路の下方にも三個の加熱源2が設けられ、合計六個(三対)の加熱源2が設けられている。
【0023】
これらの複数の加熱源2を、導入口8に近い側から順に(すなわち基材4の搬送方向に沿った始端側から順に)、1番目、2番目、…、N番目の加熱源2とする。Nは2以上の整数であり、本実施形態では3である。本実施形態では二つの加熱源2が対となっているから、1番目、2番目、…、N番目の各加熱源2として、それぞれ二つの加熱源2が存在する。
【0024】
温度測定器5は、基材4が加熱源2によって加熱される度にこの基材4の温度を測定する。本実施形態では複数の温度測定器5が設けられている。これらの温度測定器5が、搬送経路上の(n−1)番目(nは2以上N未満の整数)の加熱源2とn番目の加熱源2との間の位置、並びにN番目の加熱源2よりも後段の位置で、基材4の温度を測定する。基材4の温度が測定可能であれば、温度測定器5の機構は特に制限されない。温度測定器5の具体例としては、株式会社キーエンス製のデジタル放射温度センサーFT、株式会社チノー製の放射温度計IR−CD等の非接触温度センサーなどが挙げられる。
【0025】
変更手段3は、加熱源2と搬送経路との間の距離を変更する。変更手段3としては、例えば加熱源2を支持しながら、この加熱源2を搬送経路に近接する方向及び搬送経路から離間する方向に移動させる移動機構が挙げられる。本実施形態では、移動機構は搬送経路の上方に配置されている加熱源2を支持し、且つこの加熱源2を下方向に移動させることでこの加熱源2を搬送経路に近接させ、この加熱源2を上方向に移動させることで加熱源2を搬送経路から離間させる。また移動機構は搬送経路の下方に配置されている加熱源2を支持し、且つこの加熱源2を上方向に移動させることでこの加熱源2を搬送経路に近接させ、この加熱源2を下方向に移動させることで加熱源2を搬送経路から離間させる。このような移動機構としては、油圧・空気圧シリンダ、ボールネジ機構、或いはこれらとLMガイドとの組み合わせ、その他適宜のアクチュエータが挙げられる。
【0026】
尚、変更手段3によって加熱源2が移動される場合の加熱源2の移動方向は、基材4の搬送経路に応じて適宜設計変更される。例えば基材4が搬送装置1によって上下方向に沿って搬送されるのであれば、変更手段3は基材4の搬送経路の側方において、加熱源2を水平方向に沿って移動させることで、加熱源2を搬送経路に近接させ或いは搬送経路から離間させてもよい。
【0027】
本実施形態に係る加熱装置によって基材4が加熱される際には、まず搬送装置1が長尺な基材4を連続的に搬送する。この基材4は搬送経路上を移動して、まず炉体6の導入口8から炉体6内へ導入される。炉体6内では基材4は1〜N番目の加熱源2を順次通過し、加熱源2からの輻射熱により加熱される。続いて基材4は炉体6の導出口9から、炉体6外へ導出される。
【0028】
この加熱装置で基材4が加熱される際に、変更手段3が加熱源2と搬送経路との間の距離を変更すると、それに応じて加熱源2から基材4に与えられる熱量が速やかに変化する。すなわち、加熱源2から基材4への輻射熱の伝達効率は、加熱源2と基材4との間の距離に大きく依存するため、この距離が変動すると、基材4に与えられる熱量が速やかに変動するのである。この場合、基材4に与えられる熱量が変化するために要する時間と、加熱源2の移動開始時から移動終了時までに経過する時間とが同じであるため、基材4に与えられる熱量が変化するために要する時間は、非常に短くなる。これにより、基材4の温度が容易且つ速やかに調整される。
【0029】
本実施形態では、例えばN番目(3番目)の加熱源2よりも後段の位置での基材4の温度(すなわち、加熱装置による加熱処理が全て終了した直後の基材4の温度)が、予め定められている基準温度より高い場合には変更手段3が加熱源2と搬送経路との間の距離を大きくし、予め定められている基準温度より低い場合には変更手段3が加熱源2と搬送経路との間の距離を小さくする。これにより、加熱処理後の基材4の温度が速やかに調整される。
【0030】
更に、(n−1)番目の加熱源2とn番目の加熱源2との間の位置での基材4の温度に基づいて、(n−1)番目の加熱源2と搬送経路との間の距離が変更されてもよい。この場合、(n−1)番目の加熱源2と搬送経路との間の距離が、残りの加熱源2と搬送経路との間の距離とは独立して変更される。例えば、(n−1)番目の加熱源2とn番目の加熱源2との間の位置での基材4の温度が基準温度より高い場合には変更手段3が(n−1)番目の加熱源2と搬送経路との間の距離を大きくし、(n−1)番目の加熱源2とn番目の加熱源2との間の位置での基材4の温度が基準温度より低い場合には変更手段3が(n−1)番目の加熱源2と搬送経路との間の距離を小さくする。これにより、基材4が加熱装置で加熱される際の基材4の温度履歴が速やかに且つ精密に調整される。
【0031】
本実施形態に係る加熱装置は、温度測定器5による測定結果に基づいて変更手段3を制御する制御装置13を備えてもよい。制御装置13は、例えば図2に示されるように、制御部14と、駆動回路15と、記憶部16とを備える。制御部14はマイクロコンピュータ等で構成される。駆動回路15は、変更手段3を構成するアクチュエータなどを駆動させて変更手段3を作動させる回路である。記憶部16はRAMなどのメモリや記憶媒体などで構成され、後述する基準温度や閾値などを記憶している。
【0032】
制御装置13による制御動作の一例について説明する。基材4の温度が温度測定器5で測定されると、温度測定器5は測定結果の信号をA/D変換して制御部14へと送る。この信号が制御部14に入力されると、制御部14は温度測定器5で測定された基材4の温度と、予め定められている基準温度とを比較する。基材4の温度が基準温度より大きく、且つその差が特定の閾値を超えている場合には、制御部14は駆動回路15へ制御信号を送ることで変更手段3を作動させ、加熱源2と搬送経路との間の距離を、基材4の温度と基準温度との差に応じた長さだけ大きくする。基材4の温度が基準温度より小さく、且つその差が特定の閾値を超えている場合には、制御部14は駆動回路15へ制御信号を送ることで変更手段3を作動させ、加熱源2と搬送経路との間の距離を、基材4の温度と基準温度との差に応じた長さだけ小さくする。このようにして、温度測定器5で測定される基材4の温度が基準温度と一致するように、或いは基材4の温度と基準温度との差が閾値以下となるように、加熱源2と搬送経路との間の距離が調整される。
【0033】
[第二の実施形態]
図3に、加熱装置の第二の実施形態を示す。
【0034】
本実施形態では、加熱装置は炉体6、搬送装置1、加熱源2、変更手段3、及び温度測定器5を備える。
【0035】
炉体6及び搬送装置1は、第一の実施形態における炉体6及び搬送装置1と同一の構成を有する。
【0036】
加熱源2も、第一の実施形態における炉体6及び搬送装置1と同一の構成を有する。但し、加熱源2は、基材4の搬送経路の上方にのみ設けられ、複数の加熱源2が搬送経路に沿って順次設けられている。これらの複数の加熱源2を、導入口8に近い側から順に(基材4の搬送方向に沿った始端側から順に)、1番目の加熱源2から、N番目の加熱源2とする。Nは2以上の整数であり、本実施形態では3である。本実施形態では、1番目、2番目、…、N番目の各加熱源2として、それぞれ一つの加熱源2が存在する。
【0037】
温度測定器5及び変更手段3は、第一の実施形態における温度測定器5及び変更手段3と同一の構成を有する。
【0038】
更に、本実施形態に係る加熱装置は、第一の実施形態と同様に制御装置13を備えてもよい。
【0039】
本実施形態に係る加熱装置でも、第一の実施形態に係る加熱装置と同様にして、基材4に加熱処理が施される。これにより、加熱処理後の基材4の温度が速やかに調整され、或いは加熱処理の際の基材4の温度履歴が速やかに調整される。
【0040】
[第三の実施形態]
図4に第三の実施形態を示す。
【0041】
本実施形態では、加熱装置は炉体6、搬送装置1、加熱源2、変更手段3、及び温度測定器5を備える。
【0042】
炉体6及び搬送装置1は、第一の実施形態における炉体6及び搬送装置1と同一の構成を有する。
【0043】
加熱源2も、第一の実施形態における炉体6及び搬送装置1と同一の構成を有する。但し、加熱源2は、基材4の搬送経路の上方にのみ設けられている。更に、加熱源2の個数は一個のみである。
【0044】
温度測定器5は、加熱源2によって加熱された後の基材4の温度を測定する。本実施形態では加熱源2は一つのみであり、この加熱源2よりも後段の位置で、温度測定器5が基材4の温度を測定する。すなわち、本実施形態では温度測定器5は加熱処理が終了した後の基材4の温度のみを測定する。本実施形態では、温度測定器5は炉体6から導出された後の基材4の温度を測定する。
【0045】
変更手段3は、第一の実施形態における変更手段3と同一の構成を有する。
【0046】
更に、本実施形態に係る加熱装置は、第一の実施形態と同様に制御装置13を備えてもよい。
【0047】
本実施形態に係る加熱装置でも、第一の実施形態に係る加熱装置と同様にして、基材4に加熱処理が施される。これにより、加熱処理後の基材4の温度が速やかに調整される。
【0048】
本発明は上記第一から第三の実施形態に制限されず、本発明の目的及び範囲を逸脱しないのであれば、適宜の設計変更等が可能である。
【実施例】
【0049】
以下の実施例及び比較例において、基材4としてプリント配線基板用のエポキシ樹脂プリプレグ(ガラスクロス基材、幅1m、長さ4000m)を使用した。炉体6の寸法は1m×2m×10mとした。加熱源2としては、テーピ販売株式会社製の熱媒加熱パネル「株式会社ウルトラサーモUT」を用いた。加熱源2は基材4の搬送経路の上方において、或いは上方及び下方において、1.8m×9mの領域に設けた。実施例1,2及び比較例1,2では基材4の搬送方向に沿って加熱源2を三つに分割した。温度測定器5としては、株式会社チノー製の放射温度計IR−CDを使用した。
【0050】
以下の実施例における変更手段3の構造は、図5に概略的に示すとおりである。この変更手段3は、支持部材13、ボールネジ15、モータ16、及びLMガイド17を備える。支持部材13は上下方向に貫通するねじ孔14を備える。この支持部材13は加熱源2に固定される。ボールネジ15は支持部材13のねじ孔14に螺合されている。モータ16はボールネジ15を軸回転駆動する。LMガイド17は支持部材13の上下方向移動をガイドする。この変更手段3では、モータ16が駆動してボールネジ15が回転すると、それに応じて支持部材13がLMガイド17によってガイドされながら上方又は下方に移動し、これに連動して加熱源2が上方又は下方に移動する。
【0051】
[実施例1]
第一の実施形態と同一の構成を有する加熱装置を用意した。
【0052】
この加熱装置を用いて、長尺な基材4に加熱処理を施した。このとき、炉体6へ導入される前の基材4の温度は常温とした。搬送装置1による基材4の搬送速度は17m/minとした。発熱源の表面温度は全て190℃とした。発熱源と搬送経路との間の距離は全て300mmとした。
【0053】
このような条件で基材4に加熱処理を施すと、一番目の加熱源2と二番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度、二番目の加熱源2と三番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度、並びに三番目の加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度が、全て160℃であった。
【0054】
続いて、加熱源2の表面温度を変更させることなく、加熱源2を移動させることで加熱源2と搬送経路との間の距離を調整した。これにより、一番目の加熱源2と二番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を165℃、二番目の加熱源2と三番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を170℃、三番目の加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を180℃に、それぞれ調整した。第一の発熱源と搬送経路との間の距離は200mm、第二の発熱源と搬送経路との間の距離は100mm、第三の発熱源と搬送経路との間の距離は50mmとなった。
【0055】
この温度調整に要した時間は、1分間だけであった。
【0056】
[比較例1]
実施例1において、加熱処理条件を変更する際に、加熱源2を移動させず、その代わりに加熱源2の出力を変更することで加熱源2の表面温度を変更した。これにより、実施例1と同様に一番目の加熱源2と二番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を165℃、二番目の加熱源2と三番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を170℃、三番目の加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を180℃に、それぞれ調整した。第一の発熱源の表面温度は205℃、第二の発熱源の表面温度は215℃、第三の発熱源の表面温度は225℃となった。
【0057】
この温度調整には、40分間もの時間を要した。
【0058】
[実施例2]
第二の実施形態と同一の構成を有する加熱装置を用意した。
【0059】
この加熱装置を用いて、長尺な基材4に加熱処理を施した。このとき、炉体6へ導入される前の基材4の温度は常温とした。搬送装置1による基材4の搬送速度は17m/minとした。発熱源の表面温度は全て200℃とした。発熱源と搬送経路との間の距離は全て300mmとした。
【0060】
このような条件で基材4に加熱処理を施すと、一番目の加熱源2と二番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度、二番目の加熱源2と三番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度、並びに三番目の加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度が、全て160℃であった。
【0061】
続いて、加熱源2の表面温度を変更させることなく、加熱源2を移動させることで加熱源2と搬送経路との間の距離を調整した。これにより、一番目の加熱源2と二番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を165℃、二番目の加熱源2と三番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を170℃、三番目の加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を180℃に、それぞれ調整した。第一の発熱源と搬送経路との間の距離は150mm、第二の発熱源と搬送経路との間の距離は100mm、第三の発熱源と搬送経路との間の距離は50mmとなった。
【0062】
この温度調整に要した時間は、1分間だけであった。
【0063】
[比較例2]
実施例2において、加熱処理条件を変更する際に、加熱源2を移動させず、その代わりに加熱源2の出力を変更することで加熱源2の表面温度を変更した。これにより、実施例2と同様に、一番目の加熱源2と二番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を165℃、二番目の加熱源2と三番目の加熱源2との間の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を170℃、三番目の加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を180℃に、それぞれ調整した。第一の発熱源の表面温度は215℃、第二の発熱源の表面温度は220℃、第三の発熱源の表面温度は230℃となった。
【0064】
この温度調整には、50分間もの時間を要した。
【0065】
[実施例3]
第三の実施形態と同一の構成を有する加熱装置を用意した。
【0066】
この加熱装置を用いて、長尺な基材4に加熱処理を施した。このとき、炉体6へ導入される前の基材4の温度は常温とした。搬送装置1による基材4の搬送速度は17m/minとした。発熱源の表面温度は200℃とした。発熱源と搬送経路との間の距離は300mmとした。
【0067】
このような条件で基材4に加熱処理を施すと、加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度が160℃であった。
【0068】
続いて、加熱源2の表面温度を変更させることなく、加熱源2を移動させることで加熱源2と搬送経路との間の距離を調整した。これにより、加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を170℃に調整した。発熱源と搬送経路との間の距離は50mmとなった。
【0069】
この温度調整に要した時間は、1分間だけであった。
【0070】
[比較例3]
実施例3において、加熱処理条件を変更する際に、加熱源2を移動させず、その代わりに加熱源2の出力を変更することで加熱源2の表面温度を変更した。これにより、実施例3と同様に加熱源2よりも後段の位置で温度測定器5によって測定される基材4の温度を170℃に調整した。発熱源の表面温度は215℃となった。
【0071】
この温度調整には、30分間もの時間を要した。
【符号の説明】
【0072】
1 搬送装置
2 加熱源
3 変更手段
4 基材
5 温度測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置と、加熱源と、変更手段とを備え、前記搬送装置は加熱対象である基材を搬送し、前記加熱源は前記搬送装置で搬送されている前記基材を輻射熱で加熱し、前記変更手段は前記基材の搬送経路と前記加熱源との間の距離を変更する加熱装置。
【請求項2】
温度測定器を備え、この温度測定器は前記加熱源によって加熱された後の前記基材の温度を測定する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱源を複数備えると共に温度測定器を備え、前記加熱源は前記搬送経路に沿って順次設けられ、前記温度測定器は前記基材が搬送経路上で各加熱源を通過する度に前記基材の温度を測定する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記加熱源を少なくとも一対備え、対となっている前記加熱源同士が前記搬送経路を介して対向している請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21688(P2012−21688A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159060(P2010−159060)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】