説明

加熱調理器およびその調理方法

【課題】効率的かつ確実にふきこぼれを防止しつつ、内釜を最大限に加熱する。
【解決手段】内釜10を配設した調理器本体13と、調理器本体13に開閉可能に配設された蓋体39とを備え、加熱手段(誘導加熱コイル30)によって内釜10を加熱し、内釜10内で発生した調理物成分を含む蒸気を排気通路を通して外部に排気しながら調理物を調理する加熱調理器(炊飯器)において、気泡を破壊する回転体(羽根部材78)と駆動手段(モータ85)とを有する気泡破壊機構77を蓋体39に設けるとともに、回転体78の回転数Rtを検出する回転数検出手段(電流測定回路90)を設け、回転数検出手段90によって検出した回転体78の回転数Rtが、設定した駆動回転数Rt0より所定値低減(Rt1)すると、加熱手段30による加熱量を低下させる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器や電磁調理器などの加熱調理器およびその調理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱調理器は、調理物を収容する上端開口の内釜を備えている。この内釜の上端開口は、調理器本体に開閉可能に配設した蓋体により閉塞される。そして、調理器本体内に配設した誘導加熱コイルや加熱ヒータなどの加熱手段によって内釜を加熱することにより、内釜内の調理物を調理する。また、この調理の実行中には、内釜内で発生した蒸気を、蓋体に設けた排気通路を通して外部に排気する。
【0003】
加熱調理器の1つである炊飯器では、おいしい米飯を炊き上げるために火力を上げることが望まれる。しかし、火力を上げるほど、排気される蒸気中に飯米成分を含む泡状のおねばが増えるため、排気通路を通しておねばが外部に放出(ふきこぼれ)し易くなる。また、火力を上げると蒸気が増えることで排気圧も上がるため、おねばの外部への放出は一層顕著になる。
【0004】
ここで、ふきこぼれは、内釜にセットした飯米と水の量が適切であれば生じることはない。しかし、飯米量に対して水量が適切でない場合、および、炊飯容量を誤判別した場合に、ふきこぼれが発生し易くなる。例えば、4cupの飯米を炊飯する際に、水量誤差などによって5cupの炊飯容量であると判別した場合には、ふきこぼれが発生する可能性が高くなる。
【0005】
そこで、特許文献1の炊飯器では、蒸気筒内のおねばの上昇を検出するために、傾斜部を転がり自在に配設されたフロートと、このフロートの移動を検知するフロート検知部を有するおねば検出手段を設けた構成としている。そして、おねば検出手段の検知状態に応じて底加熱コイルへの電力供給量を制御する構成としている。
【0006】
この特許文献1の炊飯器は、蒸気筒内をおねばが上昇すると、このおねばによってフロートが移動するため、おねば検出手段によりおねばが発生していると判断し、底加熱コイルによる加熱量を低減するため、ふきこぼれを確実に防止できる。しかし、言い換えればふきこぼれが生じない程度の火力で加熱するものであるため、理想的な調理を行うことはできない。
【0007】
また、特許文献2の炊飯器では、炊飯中におねばが外部へ放出されることを効果的に抑制するために、排気通路の出口部分に貯留タンクを設けている。この貯留タンクは、外気取入孔と排気孔とを備え、排気孔の背部にモータによって回転されるターボファンを配設することにより、外気取入孔から外気を取り込んで排気孔から排気する通風機能が具備されている。そして、内釜から排出されたおねばを含む蒸気を、取り込んだ外気と攪拌させて冷却することにより、おねば含む結露水を貯留部に溜める。また、貯留部に溜まったおねばは、おねば戻し孔を通じて内釜内に戻される。
【0008】
しかしながら、特許文献2の炊飯器によってふきこぼれを防止するには、内釜内で発生した蒸気の排気量が大きく影響する。即ち、蒸気の排気量が少ない場合には、設計通り蒸気中の水分を結露させて滴下させることが可能であるように考えられる。しかし、このように構成するには、内釜の加熱量を上げることはできない。逆に、加熱量が高く蒸気の排気量が多くなると、おねばを含む蒸気がターボファンによる通風と一緒に外部に排気される可能性が高い。そのため、効率的かつ確実にふきこぼれを防止しつつ、内釜の加熱量を上げることは極めて困難である。また、おねばを含む蒸気は、取り入れた外気により結露されるため、外気中に含まれる塵埃がおねばに付着し、その塵埃を一緒に内釜内へ還流させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−262号公報
【特許文献2】特開2009−100889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、効率的かつ確実にふきこぼれを防止しつつ、内釜を最大限に加熱することが可能な加熱調理器およびその調理方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の加熱調理器は、内部に内釜を配設した調理器本体と、この調理器本体に開閉可能に配設され前記内釜の上端開口を閉塞する蓋体とを備え、前記調理器本体内に配設した加熱手段によって前記内釜を加熱し、この内釜内で発生した調理物成分を含む蒸気を前記蓋体に設けた排気通路を通して外部に排気しながら、前記内釜内の調理物を調理する加熱調理器において、前記排気通路の出口近傍に回転可能に配設されこの排気通路出口近傍で発生している気泡を破壊する回転体と、この回転体を回転駆動する駆動手段とを有する気泡破壊機構を前記蓋体に設けるとともに、前記回転体の回転数を検出する回転数検出手段を設け、前記回転数検出手段によって検出した回転体の回転数が、設定した駆動回転数より所定値低減すると、前記加熱手段による加熱量を低下させる構成としている。
【0012】
そして、この加熱調理器の調理方法は、調理器本体内に配設した内釜を蓋体によって閉塞した状態で、前記内釜を加熱手段によって加熱する一方、前記内釜内で発生した調理物成分を含む蒸気を前記蓋体内の排気通路を通して外部に排気するとともに、前記排気通路の出口近傍で発生している気泡を、気泡破壊機構を構成する回転体を駆動手段によって回転させることにより破壊しつつ、前記駆動手段による前記回転体の回転数が設定した駆動回転数より所定値低減すると、前記加熱手段による加熱量を低下させるものである。
【0013】
この加熱調理器は、気泡破壊機構を構成する回転体を駆動手段によって回転させることにより、排気通路の出口近傍に生じている気泡を破壊することができるため、効率的にふきこぼれを防止できる。よって、調理時に内釜に対して高い火力(加熱量)を加えることが可能になるため、調理プログラムを作成する際の自由度を高め、おいしく調理することが可能になる。
また、おねばを含む蒸気は、通常の水蒸気と比較して粘性が高い。よって、排気通路の出口近傍までおねばが排出されると、おねばが回転体に付着することにより、回転体の回転数が低減する。そして、回転体の回転数が低減すると、加熱手段による加熱量を低下させるため、確実にふきこぼれを防止できる。
即ち、本発明では、気泡破壊機構によって排気口からのふきこぼれを最大限に防止する一方、それでもふきごぼれが発生しそうな状況になると火力を低下させるため、内釜を最大限に加熱し、理想的な火力で調理を行うことができる。
【0014】
この加熱調理器では、前記加熱手段による加熱量の低下後に、前記回転数検出手段によって検出した回転体の回転数が所定値増加すると、前記加熱手段による加熱量を増大させることが好ましい。このようにすれば、ふきこぼれを生じさせることなく、最大限に内釜を加熱することができる。
この場合、前記加熱手段による加熱量を低下させる前記回転体の回転数の低減値は、前記加熱手段による加熱量を増大させる前記回転体の回転数の増加値より大きいことが好ましい。即ち、ふきこぼれの発生可能性が無くなると直ぐに、加熱手段による火力を増大させるため、内釜に対して多くの火力を加えることができる。
【0015】
また、前記回転数検出手段は、前記駆動手段への通電量によって前記回転体の回転数を検出することが好ましい。このようにすれば、回転体の回転数を直接検出することなく検出することができる。よって、排気通路の出口部分を着脱可能な蒸気口セットで構成し、この蒸気口セット内に回転体を配設する構成を実現できる。そして、この構成とすることにより、おねばが付着した排気通路の出口部分および回転体を容易に清掃できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、駆動手段によって回転体を回転させることにより、排気通路の出口近傍に生じている気泡を破壊することができる。また、おねばが回転体に付着することにより、回転体の回転数が低減すると、加熱手段による加熱量を低下させる。即ち、気泡破壊機構によって排気口からのふきこぼれを最大限に防止する一方、それでもふきごぼれが発生しそうな状況になると火力を低下させるため、内釜を最大限に加熱し、理想的な火力で調理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の加熱調理器である炊飯器を示す部分断面図である。
【図2】内釜と保護枠を示す分解斜視図である。
【図3】(A),(B)は保護枠への内釜の装着工程を示す断面図である。
【図4】図1の要部分解断面図である。
【図5】(A)は蒸気口セットの分解斜視図、(B)は蒸気口セットを開放した状態を示す斜視図である。
【図6】(A)は炊飯器の構成を示すブロック図、(B)は沸騰維持工程での通電制御を示す図表である。
【図7】炊飯処理時の通電制御と回転体の回転数の関係を示すグラフである。
【図8】マイコンによる沸騰維持工程の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る加熱調理器である炊飯器を示す。この炊飯器は、調理物である飯米を水と一緒に収容する内釜10と、この内釜10を収容する炊飯器本体13(調理器本体)と、この炊飯器本体13に回動可能に取り付けられた蓋体39とからなる。そして、本実施形態の炊飯器は、蓋体39内に形成した排気通路の出口部分にふきこぼれを防止するための羽根部材78を配設するとともに、この羽根部材78の回転数Rtに基づいて誘導加熱コイル30の加熱量を増減する構成としている。
【0020】
具体的には、内釜10は、図1および図2に示すように、鉄などの金属材料等を鋳造により形成したもので、誘導加熱コイル30に高周波電流を流すことで発生した磁界により渦電流が流れることにより誘導加熱される。この内釜10は有底略逆円錐筒状をなし、その上端に径方向外向きに突出するフランジ部からなる第1位置決め部11が設けられている。この第1位置決め部11は、その下側が収容部14の上端に形成された第1受部19に載置される載置面を構成する。また、内釜10には、第1位置決め部11を設けた上端と誘導加熱コイル30によって加熱される下側部分の間の中間位置に、径方向外向きに突出する第2位置決め部12が設けられている。この第2位置決め部12は、第1位置決め部11の外径より小さい外径の円環状に形成され、段状をなす下側が収容部14内に形成された第2受部25に載置される載置面を構成する。
【0021】
炊飯器本体13は、上下端を開口した筒状をなす金属(SUS430)製の胴体15と、胴体15の上端開口を閉塞する肩体16と、胴体15の下端開口を閉塞する底体21とを有する外装体を備えている。この外装体には、肩体16の一部と内胴22と保護枠23とで収容部14が形成され、この収容部14内に内釜10が着脱可能に収容される。
【0022】
図1に示すように、肩体16は、外装体の上側部分を構成するもので、胴体15の上端開口に内嵌して取り付けられる。この肩体16の背面側には、蓋体39を回転可能に取り付けるためのヒンジ接続部17が設けられている。また、肩体16には、図1中左側に位置する正面側に操作パネル部18が形成されている。さらに、肩体16には、収容部14の上端開口となる開口部が設けられ、この開口部の上端が、内釜10の第1位置決め部11を受ける第1受部19を構成する。また、肩体16の開口部の周囲には、円筒状をなすように下向きに突出する内胴取付部20が設けられている。底体21は、外装体の下側部分を構成するもので、胴体15の下端開口に内嵌して取り付けられる。
【0023】
内胴22は、金属製の円筒部材からなり、肩体16の内胴取付部20に内嵌して取り付けることにより、肩体16の開口部と連続した収容部14を構成する。
【0024】
保護枠23は、非導電性材料である樹脂からなり、内胴22の下端開口を覆うように配設することにより、収容部14の下側半分の領域を構成するものである。この保護枠23は受皿形状をなし、その底中心には、内釜10の底部の温度を検出するためのセンタセンサ取付部24が設けられている。また、保護枠23の内部には、内釜10の第2位置決め部12を受ける第2受部25が設けられている。この第2受部25には、中間層ヒータ33を受ける当接部材34を装着するための装着穴26が設けられている。第2受部25の外周縁には、内胴22の下端外周部を外嵌して受ける内胴受部27が設けられている。この内胴受部27は、内方に突出するガイドリブ28を備えている。内胴受部27の外周部には、底体21から突出したボスをネジ止めによって固定するためのブラケット部29が設けられている。
【0025】
図1に示すように、保護枠23の外面には、誘導加熱コイル30がフェライトコア31を介して固定されている。この誘導加熱コイル30は、内釜10の底を誘導加熱する第1加熱手段である。フェライトコア31は、誘導加熱コイル30から発生する磁界を収束させるもので、保護枠23に対してネジ止めにより固定される。そして、この保護枠23の底中央には、内釜10の底温度を検出するための第1温度検出手段として、保護枠23のセンタセンサ取付部24に底温度センサ32が配設されている。
【0026】
また、本実施形態の保護枠23の内部には、内釜10の中間層である第2位置決め部12を直接加熱する第2加熱手段として、中間層ヒータ33が配設されている。この中間層ヒータ33は、保護枠23の第2受部25に上下方向に移動可能に配設した環状の当接部材34の内部に配設した線状ヒータからなる。
【0027】
図2および図3(A),(B)に示すように、当接部材34は、断面略逆U字形状をなす樹脂製の枠体を備え、その上面に金属(アルミニウム)製の伝熱部材35を配設したものである。この当接部材34の外周部には、ガイドリブ28に対応するガイド溝36が設けられている。また、当接部材34には、保護枠23の装着穴26の対応位置に装着部材37が配設されている。この装着部材37は、当接部材34内に配設したスプリング(図示せず)により、下向きに突出する方向に付勢されている。このスプリングによる当接部材34の上向きの移動は、上側に位置する内胴22の下端に当接することにより停止される。
【0028】
また、本実施形態では、内釜10の中間層を加熱する第2加熱手段として中間層ヒータ33を配設しているが、内釜10の中間層の加熱量を確保するために、内胴22の外側に収容部14内の空間を介して内釜10の外周部上層を加熱する第3加熱手段として胴ヒータ38が更に配設されている。
【0029】
図1および図4に示すように、蓋体39は、上板40と下板41とを有する外装体を備え、炊飯器本体13の上部を覆うものである。この蓋体39を構成する下板41の背面側は、炊飯器本体13のヒンジ接続部17に開閉可能に装着されている。上板40の正面側には、蓋体39を開放するための開放操作部材42が配設され、その内部にロック機構(図示せず)が配設されている。また、蓋体39は、内釜10を覆う下板41の下側面に放熱板43を備えている。この放熱板43上には、内釜10の上部を加熱する第4加熱手段として蓋ヒータ44が配設されるとともに、内釜10の上部の空気層の温度を検出する第2温度検出手段として蓋温度センサ45が配設されている。
【0030】
蓋体39の内側面には、内釜10の上端開口を閉塞する内蓋46が着脱可能に配設されている。この内蓋46は金属製であり、その外周部に内釜10の上端開口の内周部を密閉するシール部材47を備えている。なお、この内蓋46には、図示しない周知の圧力投入機構(リリーフ弁)が配設されている。この圧力投入機構は、内釜10の内部を大気圧より高い圧力に昇圧可能とするもので、排気通路を構成する膨出部49内に配置される。圧力投入機構は、排気通路を連通および遮断可能な球状部材を備え、この球状部材が下板41上に配設したソレノイドによって移動される。ソレノイドのオフ状態では、球状部材を通気穴から離反させて排気通路が連通となる。また、ソレノイドのオン状態では、球状部材を通気穴上に転動させて排気通路を遮断し、内釜10内の圧力が許容値を超えると、その蒸気圧によって排気通路を連通状態とする。
【0031】
蓋体39には、内釜10の内部で発生した蒸気を外部に排気するための排気通路が形成されている。この排気通路は、内蓋46の略中央に設けた連通部48が入口を構成し、この連通部48が下板41に設けた膨出部49の内部に連通し、この膨出部49の下端が放熱板43と内蓋46の間の空隙部50に連通している。この空隙部50は、放熱板43の背面側に設けた通気部51、および、下板41に設けた接続部52を介して、上板40に着脱可能に配設する蒸気口セット57と連通する。通気部51と接続部52とはパッキン53によって気密にシールされている。また、上板40には、蒸気口セット57を配設する配設凹部54が設けられ、この配設凹部54に接続部52に連通する連通孔55が設けられている。この連通孔55と接続部52とはパッキン56によってシールされている。即ち、本実施形態では、内釜10内を臨む連通部48、膨出部49、空隙部50、通気部51および蒸気口セット57を経た経路が排気通路を構成する。
【0032】
蒸気口セット57は、排気通路の出口部分を構成するもので、図4および図5(A),(B)に示すように、下容器58に上カバー69を回転可能かつ着脱可能にヒンジ接続したものである。
【0033】
下容器58は受皿状をなし、連通孔55内に挿入され、パッキン56によってシールされる挿入部59を備えている。この挿入部59の上部には、上向きに突出する筒状の流入口部60が設けられている。この流入口部60は、外周壁の一部が軸方向に沿って貫通され、この貫通溝から蒸気が流入されるとともに、おねばを含む結露水を内釜10へ還流させる。また、下容器58には、背面側外周部に上カバー69を回転可能に組み付けるヒンジ接続部61が設けられている。さらに、対向する正面側外周部には、背面側に向けて移動可能なロック部材62が配設されている。このロック部材62は、上方に設けられたロック爪部63により上カバー69を係止して閉塞状態に維持する。
【0034】
下容器58の内部背面側には、蓋体39への装着状態でモータ85の上部に位置する気泡破壊機構77の配設段部64が設けられている。この配設段部64は平面視扇形形状をなし、その外周部に上向きに突出する外枠65が設けられている。この外枠65の中央部には保護カバー部66が設けられている。この保護カバー部66は、平面視十字形状の枠状をなすように、排気通路内である上方に向けて膨出するように設けられている。保護カバー部66の交差した中央部には、羽根部材78を回転可能に支持する支持部67が設けられている。また、外枠65の正面側の面には、保護カバー部66内に連通する通気孔68が設けられている。
【0035】
上カバー69は、蒸気口セット57を配設凹部54に配設した状態で、蓋体39の上板40と面一の外形をなすものである。この上カバー69には、下容器58の上端開口に嵌合する嵌合溝70が設けられ、この嵌合溝70内にパッキン71が配設されている。また、上カバー69は、配設段部64に外嵌する嵌合枠部72が設けられている。この嵌合枠部72内には、保護カバー部66の両側板に重畳する側板部73が更に設けられ、その間に排気通路出口である排気口74が設けられている。また、上カバー69には、背面側に下容器58のヒンジ接続部61に接続する接続部75が設けられるとともに、正面側にロック部材62に係止される被ロック部76が設けられている。
【0036】
気泡破壊機構77は、排気通路の出口近傍である蒸気口セット57の配設段部64に配設されている。この気泡破壊機構77は、配設段部64上に回転可能に配設される羽根部材78と、羽根部材78を回転駆動する駆動手段であるモータ85とを備えている。
【0037】
羽根部材78は、モータ85によって回転されることにより排気口74へ向かう気泡を、当接により破壊するとともに、排気口74からの排気方向を除く方向への送風により蒸気口セット57の壁面に衝突させて破壊する回転体である。この羽根部材78は、保護カバー部66に対して排気通路の外(下)側から装着されるもので、羽根部材本体79、第1磁性部材82および組付基板83を備えている。
【0038】
羽根部材本体79は樹脂製であり、保護カバー部66の支持部67に回転可能に支持される軸部80を備えている。この軸部80の外周には、4枚の羽根部81が等間隔で突設されている。第1磁性部材82は、モータ85との非接触式連結部を構成するもので、羽根部材本体79の下面に配設されている。この第1磁性部材82は、周方向にS極とN極とが交互に位置するように配設した磁石からなり、磁極の違いにより後述する第2磁性部材88に連動して回転可能としたものである。組付基板83は、羽根部材本体79を支持部67との間に回転可能に支持するとともに、保護カバー部66の下端開口を閉塞するもので、特殊ネジ(図示せず)を挿通する挿通孔84が設けられている。
【0039】
モータ85は、印加した電圧に比例して出力軸86の回転数が設定される直流モータからなる。このモータ85は、同一電圧が印加されている場合、トルク(負荷)が大きくなると、それに伴って出力軸86の回転数が低下する一方、通電される電流は比例して大きくなる。そして、本実施形態のモータ85の駆動回転数Rt0は、駆動回路87によって高速回転数となるように設定されている。モータ85の出力軸86は、配設段部64に配設した羽根部材78の軸部80と同一軸線上に位置するように、下板41上に配設されている。即ち、モータ85は、上板40と下板41とで構成される蓋体39内に配設されている。モータ85の出力軸86には、非接触式連結部を構成する第2磁性部材88が配設されている。この第2磁性部材88は、第1磁性部材82と同様に、S極とN極とを交互に位置するように配設した磁石からなる。
【0040】
この炊飯器は、炊飯器本体13内に制御基板(図示せず)が配設されている。この制御基板には、制御手段であるマイコン89が実装されている。図6に示すように、マイコン89は、予め記憶されたプログラムに従って、誘導加熱コイル30、中間層ヒータ33、胴ヒータ38および蓋ヒータ44の加熱(通電)制御を行い、予熱、昇温(中ぱっぱ)、沸騰維持、および、むらしなどの各工程を経て炊飯(調理)処理を実行するとともに、炊き上げた米飯を所定温度に保温する保温処理を実行する。
【0041】
また、マイコン89は、内釜10の内部で飯米成分を含んだ蒸気が多く発生する工程にて、モータ85を介して羽根部材78を回転させる。そして、内釜10内で発生した気泡が排気通路を通って排気口74の近傍まで排出されたり、排気通路内で発生した気泡が排気口74の近傍まで排出されたりした場合に、羽根部材78と当接することにより気泡を破壊する。または、羽根部材78の羽根部81による径方向外向きの送風により、気泡を蒸気口セット57の壁面に衝突させて破壊する。これにより、排気口74からのふきこぼれを防止する構成としている。
【0042】
さらに、マイコン89は、羽根部材78が設定した駆動回転数Rt0で回転しているか否かを、回転数検出手段である電流測定回路90で検出し、駆動回転数Rt0より所定値低減する(低速回転数Rt1)と、誘導加熱コイル30による加熱量を低下させる。また、加熱量低下後に羽根部材78の回転数が所定値増加する(中速回転数Rt2)と、誘導加熱コイル30による加熱量を増大し、通常の設定加熱量に戻す構成としている。電流測定回路90は、モータ85に電流測定用の抵抗値が極めて小さい抵抗91を接続し、この抵抗91の両端にかかる電圧をオペアンプによって増幅してマイコン89に出力するものである。
【0043】
本実施形態では、気泡破壊機構77を動作させる工程を、沸騰維持工程としている。この沸騰維持工程の誘導加熱コイル30の制御は、80%の通電量で、かつ、図6(B)に示すように、前の昇温工程にて判別した炊飯容量毎に通電率が設定されている。1cupの場合には、3/15の通電率、即ち15sec中3secオンし、12secオフする周期を繰り返す。2cupの場合には、5/15の通電率で加熱する。3cupの場合には、7/15の通電率で加熱する。4cupの場合には、9/15の通電率で加熱する。5cupの場合には、11/15の通電率で加熱する。
【0044】
そして、マイコン89は、電流測定回路90を介して羽根部材78が低速回転数Rt1まで低減したことを検出すると、1cupの場合には誘導加熱コイル30を1/15に通電率(加熱量)を低下させ、2,3cupの場合には2/15に通電率に低下させ、4,5cupの場合には3/15に通電率に低下させる。その後、電流測定回路90を介して羽根部材78が中速回転数Rt2まで増加したことを検出すると、誘導加熱コイル30を通常の通電率に増大させる。このように、本実施形態では、加熱量を低下させる低減値(Rt0−Rt1)は、加熱量を増大させる増加値(Rt2−Rt1)より大きい。
【0045】
ユーザが炊飯器を使用する場合には、炊飯処理および保温処理のいずれも実行していない待機状態で、蓋体39を開放して内釜10を取り出す。内釜10を炊飯器本体13の収容部14から取り出した状態では、図3(A)に示すように、第2受部25に配設した当接部材34が上向きに移動し、内胴22の下端に当接した状態をなす。この状態では、収容部14の上端から底までの間に、米飯などの異物が侵入する隙間がない。
【0046】
そして、ユーザは、内釜10に所定量の飯米と水がセットした後、炊飯器本体13の収容部14に装着する。この際、図3(B)に示すように、第2位置決め部12が当接部材34に当接し、この当接部材34が内釜10の重量で下向きに移動する。その後、第1位置決め部11が収容部14の上端の第1受部19に当接し、第2位置決め部12が収容部14内の第2受部25に当接部材34を介して当接した状態をなす。
【0047】
この収容状態では、第1および第2位置決め部11,12により、内釜10の荷重が第1および第2受部19,25で分散される。よって、収容部14の受部19,25に要求される剛性を低減できる。また、内釜10を収容部14に対して安定した設計通りの状態で収容できる。そのため、中間層ヒータ33による加熱は勿論、誘導加熱コイル30、胴ヒータ38および蓋ヒータ44による加熱の偏りを抑制できる。
【0048】
次に、マイコン89による炊飯処理について具体的に説明する。
【0049】
マイコン89は、操作パネル部18の操作により炊飯処理が実行されると、図7に示すように、予熱工程を実行する。この予熱工程では、誘導加熱コイル30と蓋ヒータ44を所定の通電率で通電し、底温度センサ32の検出温度が約40℃になるように温度調節(オンオフ制御)する。そして、選択された炊飯メニューに応じた移行時間が経過すると、次工程である昇温工程と容量判別工程とを並行処理する。
【0050】
昇温工程では、誘導加熱コイル30と中間層ヒータ33と蓋ヒータ44に対してフルパワーで通電し続ける第1昇温ステップを実行した後、誘導加熱コイル30だけを約80%の通電量に抑えて通電し続ける第2昇温ステップとを実行する。容量判別工程では、第2昇温ステップに移行し、かつ、底温度センサ32の検出温度が第1設定温度T1になるまで待機し、第1設定温度T1になると第2設定温度T2に昇温するまでの時間を計測する。そして、この計測時間と記憶された容量判別値から炊飯容量を判別する。そして、底温度センサ32の検出温度が約100℃になると、次工程である沸騰維持工程に移行する。
【0051】
沸騰維持工程では、炊飯容量に応じて誘導加熱コイル30の通電率を設定するとともに、他のヒータ33,38,44を100%の通電率として、内釜10を加熱する。また、羽根部材78の回転数Rtに応じて誘導加熱コイル30の通電率を増減する。そして、底温度センサ32の検出値Tsからドライアップを検出すると、むらし工程に移行する。なお、この沸騰維持工程については、後で詳細に説明する。
【0052】
むらし工程では、設定された炊飯メニューと判別した炊飯容量に応じて、全ての加熱手段30,33,38,44の通電率と移行時間が設定される。そして、設定された移行時間が経過すると、炊飯処理の全工程が終了し、保温処理に移行する。
【0053】
沸騰維持工程では、マイコン89は、図8に示すように、まず、ステップS1で、容量判別工程で判別した今回の炊飯容量を読み込む。ついで、ステップS2で、その炊飯容量に基づいて誘導加熱コイル30の通電率を設定し、他のヒータ33,38,44を含めて通電を開始する。また、中間層ヒータ33および蓋ヒータ44にも通電を開始する。また、ステップS3で、モータ85への通電を開始して羽根部材78を高速の駆動回転数Rt0で回転させる。
【0054】
ついで、ステップS4で、誘導加熱コイル30の通電率を低下させているか否かを示すフラグfが0(通常設定)であるか否かを検出する。そして、fが0である場合にはステップS5に進み、fが1(低下設定)である場合にはステップS8に進む。
【0055】
ステップS5では、電流測定回路90を介して羽根部材78の回転数Rtが低速回転数Rt1以下まで低減したか否かを検出する。そして、Rt≦Rt1である場合にはステップS6に進み、Rt>Rt1である場合にはステップS11に進む。ステップS6では、誘導加熱コイル30への通電率を炊飯容量に応じて低下させる。その後、ステップS7で、fに1を入力してステップS8に進む。
【0056】
ステップS8では、電流測定回路90を介して羽根部材78の回転数Rtが中速回転数Rt2以上まで増加したか否かを検出する。そして、Rt≧Rt2である場合にはステップS9に進み、Rt<Rt2である場合にはステップS11に進む。ステップS9では、誘導加熱コイル30への通電率を炊飯容量に応じて通常設定値に増大させる。その後、ステップS10で、fに0を入力してステップS11に進む。
【0057】
ステップS11では、底温度センサ32の検出温度Tsがドライアップ温度Ts1以上になったか否かを検出する。そして、Ts<Ts1である場合にはステップS4に戻り、羽根部材78の回転数Rtに基づいた誘導加熱コイル30の通電率の増減を繰り返す。また、Ts≧Ts1である場合にはステップS12に進み、モータ85への通電を遮断して羽根部材78の回転を停止させる。
【0058】
このように、本発明の炊飯器では、気泡破壊機構77を構成する羽根部材78をモータ85によって回転させることにより、排気通路の出口近傍に生じている気泡を、当接または壁面へ衝突させて破壊できるため、効率的にふきこぼれを防止できる。よって、従来であればふきこぼれを発生させないように加熱量を抑制していた沸騰維持工程においても、内釜10に対して高い火力を加えることが可能になる。その結果、調理プログラムを作成する際の自由度を高め、おいしく理想的な炊飯を実現できる。
【0059】
また、おねばを含む蒸気は、通常の水蒸気と比較して粘性が高い。よって、排気通路の出口近傍までおねばが排出されると、おねばが羽根部材78に付着することにより、羽根部材78の回転数Rt0が低減する。そして、羽根部材78が低速回転数Rt1まで低減すると、誘導加熱コイル30による加熱量を低下させるため、確実にふきこぼれを防止できる。
【0060】
即ち、本発明では、気泡破壊機構77によって排気口74からのふきこぼれを最大限に防止する一方、それでもふきごぼれが発生しそうな状況になると火力を低下させる。しかも、加熱量の低下後に、羽根部材78が中速回転数Rt2まで増加すると、誘導加熱コイル30による加熱量を増大させる。また、加熱量を低下させる羽根部材78の低減値(Rt0−Rt1)は、加熱量を増大させる羽根部材78の増加値(Rt2−Rt1)より大きくしている。即ち、ふきこぼれの発生可能性が無くなると直ぐに火力を増大させる。よって、内釜10に多くの火力を加えるように最大限に加熱できるため、理想的な火力で炊飯を行うことができる。
【0061】
また、羽根部材78の回転数Rtは、羽根部材78を直接検出するのではなく、モータ85に通電される電流によって検出する。そのため、排気通路の出口部分を着脱可能な蒸気口セット57で構成し、この蒸気口セット57内に羽根部材78を配設する構成を実現できる。そして、この構成とすることにより、おねばが付着した排気通路の出口部分および羽根部材78を容易に清掃できるため、衛生的である。
【0062】
さらに、本実施形態の炊飯器は、内釜10の中間層を中間層ヒータ33により直接加熱することが可能である。よって、内釜10の中間層にも十分な加熱を加えることができるため、内釜10を上層から下層に至るまで均一に加熱でき、調理ムラを防止した理想的な炊飯を実行できる。しかも、内釜10の第2位置決め部12は、円環状に形成されているため、この第2位置決め部12から下側部分を収容部14内で略密閉できる。これにより、内釜10の下部外側の放熱を抑制できるため、加熱効率を向上できるとともに、消費電力を削減できる。
【0063】
なお、本発明の加熱調理器およびその調理方法は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、前記実施形態では、羽根部材78の回転数Rtの検出手段を、モータ85への電流量を検出する電流測定回路90で構成したが、出力軸86に被検出部材を配設し、リードスイッチ、マイクロスイッチおよびフォトカプラなどの素子を用いて検出する構成としてもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、加熱量を低下させる第1しきい値(Rt1)と、加熱量を増大させる第2しきい値(Rt2)の2つを設定し、加熱量は通常設定値と低加熱設定値の2種を切り換える構成としたが、しきい値および設定値を多段階で設定し、多段階で増減できる構成としてもよい。
【0066】
さらに、前記実施形態では、本発明の加熱調理器として、炊飯器を例に挙げて説明したが、電磁調理器など、調理時に排気通路中を気泡が通過する加熱調理器であれば、いずれでも適用が可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
10…内釜
13…炊飯器本体(調理器本体)
30…誘導加熱コイル(第1加熱手段)
33…中間層ヒータ(第2加熱手段)
38…胴ヒータ(第3加熱手段)
39…蓋体
44…蓋ヒータ(第4加熱手段)
48…連通部(排気通路)
49…膨出部(排気通路)
50…空隙部(排気通路)
51…通気部(排気通路)
52…接続部(排気通路)
57…蒸気口セット(排気通路)
77…気泡破壊機構
78…羽根部材(回転体)
82…第1磁性部材(非接触式連結部)
85…モータ(駆動手段)
87…駆動回路
88…第2磁性部材(非接触式連結部)
89…マイコン(制御手段)
90…電流測定回路(回転数検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内釜を配設した調理器本体と、この調理器本体に開閉可能に配設され前記内釜の上端開口を閉塞する蓋体とを備え、前記調理器本体内に配設した加熱手段によって前記内釜を加熱し、この内釜内で発生した調理物成分を含む蒸気を前記蓋体に設けた排気通路を通して外部に排気しながら、前記内釜内の調理物を調理する加熱調理器において、
前記排気通路の出口近傍に回転可能に配設されこの排気通路出口近傍で発生している気泡を破壊する回転体と、この回転体を回転駆動する駆動手段とを有する気泡破壊機構を前記蓋体に設けるとともに、前記回転体の回転数を検出する回転数検出手段を設け、
前記回転数検出手段によって検出した回転体の回転数が、設定した駆動回転数より所定値低減すると、前記加熱手段による加熱量を低下させるようにしたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱手段による加熱量の低下後に、前記回転数検出手段によって検出した回転体の回転数が所定値増加すると、前記加熱手段による加熱量を増大させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱手段による加熱量を低下させる前記回転体の回転数の低減値は、前記加熱手段による加熱量を増大させる前記回転体の回転数の増加値より大きいことを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記回転数検出手段は、前記駆動手段への通電量によって前記回転体の回転数を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
調理器本体内に配設した内釜を蓋体によって閉塞した状態で、前記内釜を加熱手段によって加熱する一方、
前記内釜内で発生した調理物成分を含む蒸気を前記蓋体内の排気通路を通して外部に排気するとともに、前記排気通路の出口近傍で発生している気泡を、気泡破壊機構を構成する回転体を駆動手段によって回転させることにより破壊しつつ、
前記駆動手段による前記回転体の回転数が設定した駆動回転数より所定値低減すると、前記加熱手段による加熱量を低下させる
ことを特徴とする加熱調理器の調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−24458(P2012−24458A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168146(P2010−168146)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】