説明

加熱調理器

【課題】受け皿が冷却されて、発煙発火の恐れはなくなり、また、加熱調理器本体の周囲に外気が流入し、加熱調理器本体の温度上昇が抑えられる加熱調理器を提供すること。
【解決手段】筐体31中に上ヒータ34、下ヒータ35、受け皿36、焼き網37、排気通路A39、排気通路B43を設け、排気通路A39、排気通路B43は排気ファン41に繋がっており、排気通路A39中に触媒40を備え、排気通路B43は吸気口が受け皿36の下部または筐体31下部に臨んでいる構成とすることにより、受け皿36が冷却されて、発煙発火の恐れを防止できる。また、加熱調理器本体の周囲の空気が吸引されて、外気が流入し、加熱調理器本体の温度上昇が抑えられる加熱調理器を提供することとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は庫内に入れた食材を焼く加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、魚等を焼く加熱調理器はグリルまたはフィッシュロースターと呼ばれ、調理を行った時に発生する臭いや油煙を浄化脱臭する為に触媒を組み込んだ製品が一般的である(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された従来の加熱調理器であるフィシュロースターを示すものである。図7に示すように、食材を加熱する調理庫1と、食材を載せる焼き網15と、上部発熱体2と、下部発熱体3と、排気通路と、この排気通路に設けられた浄化装置12と、浄化装置12を加熱する触媒ヒータ4と、排気通路に連結した排気ファン16と、調理庫内の温度を検出する温度検出手段5と、制御手段7と、食材から発生した脂等を溜める受け皿9で構成されている。
【0004】
図8は、特許文献2に記載された従来の加熱調理器であるシステムキッチン組込み型のフィシュロースターを示すものである。図8に示すように、ロースター部22のロースター開口部22bにおいて、前記ロースター開口部22bとロースタードア22aとの接触面に空気流入口23を設け、前記ロースター開口部22b以外の面に臭いや油煙を脱臭するための触媒19を設け、前記触媒19の近傍に触媒加熱用ヒータ24を配置し、さらに、触媒19の下流側に排気ダクト21を接続した。上記構成で、焼き網25に載せた食材26は、上部及び下部発熱体で加熱調理され、食材から発生した臭いと油煙は触媒加熱ヒータで高温に保たれた触媒へ導かれ、浄化された空気が排気口、または、排気ダクトより排出される。
【特許文献1】特開2001−258761号公報
【特許文献2】特開2006−29596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、加熱調理器であるフィシュロースターを連続して使用する場合、受け皿の温度が上昇し、受け皿に溜まった脂が高温になり、最悪の場合は、発煙発火に至る恐れがある。また、フィシュロースター本体の周囲、特に、底面は、連続使用すると、高温になり、誤って手を触れた場合、危険であるという課題を有していた。
【0006】
特許文献2の構成では、フィシュロースターの上方に、IHクッキングヒータが設置され、IHクッキングヒータのコイルからの発熱を冷却ファンにより、外部へ放散しており、フィシュロースターの周囲は特許文献1の構造に比べ、さらに温度上昇するという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、受け皿が冷却されて、発煙発火の恐れはなくなり、また、加熱調理器本体の周囲に外気が流入し、加熱調理器本体の温度上昇が抑えられる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明は被調理物を載置する焼き網と、前記被調理物から発生した油等を溜める受皿と、前記被調理物を加熱する加熱手段と、前記焼き網と前記受皿と前記被調理物と前記加熱手段を収納する調理庫と、触媒と、排気ファンとを有する加熱調理器であって、前記加熱調理器は、前記加熱調理器外へ空気を排気する排気口と、前記受け皿の下部または/および前記加熱調理器の下部を通って空気を前記排気口から排出する第1排気通路と、前記調理庫、前記触媒を介して空気を前記排気口から排出する第2排気通路とを備え、前記第1排気通路と前記第2排気通路とは一部重複部分を有し、前記第1排気通路と前記第2排気通路の重複部分に1つの前記排気ファンが備えられていることを特徴とする加熱調理器を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱調理器は、受け皿が冷却されて、発煙発火の恐れはなくなり、また、加熱調理器本体の周囲に外気が流入し、加熱調理器本体の温度上昇を抑えることができる。
【0010】
さらに、第1排気通路と第2排気通路の重複部分に1つの排気ファンを備えることにより、第1排気通路内の調理庫、触媒を介して排出される高温の排気と、第2排気通路内の低温の排気とが交じり合い、排気温度を全体として下げることができるため、排気ファンに悪影響が生じるのを防止できる。また、1つの排気ファンにて排気量を調整するので、構成が容易であるとともに、排気量の調整が容易とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
請求項1に記載の発明は、被調理物を載置する焼き網と、前記被調理物から発生した油等を溜める受皿と、前記被調理物を加熱する加熱手段と、前記焼き網と前記受皿と前記被調理物と前記加熱手段を収納する調理庫と、触媒と、排気ファンとを有する加熱調理器であって、前記加熱調理器は、前記加熱調理器外へ空気を排気する排気口と、空気を前記受け皿の下部または/および前記加熱調理器の下部を通って前記排気口から排出する第1排気通路と、空気を前記調理庫、前記触媒を介して前記排気口から排出する第2排気通路とを備え、前記第1排気通路と前記第2排気通路とは一部重複部分を有し、前記第1排気通路と前記第2排気通路の重複部分に1つの前記排気ファンが備えられている構成とすることにより、連続使用時、受け皿が冷却されて、発煙発火の恐れはなくなる。また、加熱調理器本体の周囲の空気が吸引されて、外気が流入し、加熱調理器本体の温度上昇が抑えられる加熱調理器を提供することができる。
【0012】
さらに、第1排気通路と第2排気通路の重複部分に1つの前記排気ファンが備えることにより、第1排気通路内の調理庫、触媒を介して排出される高温の排気と、第2排気通路内の低温の排気とが交じり合い、排気ファンに悪影響が生じるのを防止できる。また、1つの排気ファンにて排気量を調整するので、構成が容易であるとともに、排気量の調整が容易とできる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、受け皿の上面の後端部が調理庫を構成する筐体内壁に設けた溝に嵌合し、また、受け皿の両側面が筐体の両側面に接触しながら摺動する構成とすることにより、受け皿の上面部の調理部分と受け皿下面部分離することができ、臭いや油煙が受け皿の下面部を通って排出されることはない。
【0014】
請求項3に記載の発明は、受け皿の両側面が調理庫を構成する筐体の両側面の設けた溝に嵌合して摺動し、受け皿の上面の後端部が筐体内壁に設けた溝に嵌合する構成とすることにより、受け皿の上面部の調理部分と受け皿下面部分離することができ、臭いや油煙が受け皿の下面部を通って排出されることはない。
【0015】
請求項4に記載の発明は、第2排気通路中に仕切り板を設け、排気通路を流れる風量を調節可能したことにより、風量の設定や調節が容易に行えるものである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、排気ファンのモータ軸を略水平に設置し、モータを本体後方中心から左右いずれかに偏らせて設置したことにより、加熱調理器の設置スペースを有効に利用でき、設置しやすく、余ったスペースに冷却ファン等の部品を配置することができるものである。
【0017】
請求項6に記載の発明は、排気ファンの噴出し口が連結する排気口の下部に開口を設け、排気ファンの噴出し口の上方にカバーを設けたことにより、誤って排気口に水を溢れさせた場合、水は、排気口の下部の開口から排出され、充電部に水が入ることはなく安全である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、空気取り入れ口を加熱調理器または/および調理庫の後方下部に設けた構成とすることにより排気通路を少なくでき、構造が簡単になるものである。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態について図1から図6を参照しながら説明する。加熱調理器の前面はドア32が設けられ、ドア32にはハンドル33が付いている。加熱調理器内には調理庫31が設けられており、調理庫31内には、被調理物を加熱する加熱手段(上ヒータ34、下ヒータ35)、被調理物から発生した油等を溜める受皿36が設置され、受け皿36の上には食材を載せる焼き網37が収容される。受け皿36の上面の後端部は調理庫を構成する筐体31内壁に設けた溝38に嵌合している。また、図3に示すように、受け皿36の両側面は、調理庫を構成する筐体31の両側面31aに接触しながら摺動する。図4は、受け皿36の両側面が、調理庫を構成する筐体31の両側面31aに接触しながら摺動する代わりに、筐体31の両側面31aに設けたスライド用の溝44を摺動する構成である。
【0021】
また、加熱調理器には、触媒40と、排気ファン41とが備えられている。さらに、加熱調理器は、加熱調理器内に空気を吸気する空気取り入れ口42と、加熱調理器外へ空気を排気する排気口49とを備え、空気取り入れ口42から取り入れた空気を、調理庫、触媒40を介して排気口49から排出する排気通路A39が設けられ、触媒40は上ヒータ34で加熱される。さらに、空気取り入れ口42から取り入れた空気を受け皿36の下部を通って排気口49から排出する排気通路B43とを備え、排気通路A39と排気通路B43とは一部重複部分を有し、排気通路A39と排気通路B43の重複部分に1つの排気ファン41が備えられている。
【0022】
図2は加熱調理器をIHクッキングヒータに組込み、システムキッチンに収納した構成を示す。図2において、調理庫の上方にはIH加熱コイル45、IH加熱コイル45の上方には加熱容器を載せるプレート46を備えている。47はIHクッキングヒータを設置する設置台である。図2の構成では、IH加熱コイル45からの発熱により、加熱調理器は放熱がされにくく、加熱調理器の周囲の温度が上昇する。そこで、空気を受け皿36の下部および加熱調理器の下部を通って排気口49から排出する排気通路C48を構成し、さらに、排気通路A39と排気通路C48の重複部分に1つの排気ファン41が備え、受け皿36の下部および加熱調理器の下部を冷却する。
【0023】
図5は図2の構成の後部の平断面図である。図5において、排気通路39内には仕切り板39aが設置され、仕切り板39aには穴が明けられ、触媒40を流れる空気量を調整する。排気ファン41はファンモータ48、ファン41c、ファンケースで構成され、ファンモータ48はモータ軸が略水平で加熱調理器の筐体の中心線より片側に寄っている。排気口49には排気ファン41の噴出し口41bが連結され、噴出し口41bの上方にはカバー50を設け、排気口の底面には排水用の開口51を設けている。
【0024】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0025】
まず、食材を焼き網37に載せて調理を開始すると、食材は上ヒータ34、下ヒータ35で加熱され、同時に触媒40は上ヒータで加熱され高温に保たれる。加熱時に発生する臭いや油煙は排気ファン41で吸引されて、触媒40を通過する際に酸化浄化されて、排気口49から排出される。空気取入れ口42から入る外気は食材の周囲を流れると同時に、受け皿36の下方を流れ、排気通路A39と排気通路B43の重複部分を経て、排気口49から排出される。または、空気取入れ口42から入る外気は食材の周囲を流れると同時に、受け皿36および加熱調理器の下方を流れ、排気通路A39と排気通路C48の重複部分を経て、排気口49から排出される。
【0026】
以上のように、実施の形態1の加熱調理器は、受け皿が冷却されて、発煙発火の恐れはなくなり、また、加熱調理器本体の周囲に外気が流入し、加熱調理器本体の温度上昇が抑えられる。さらに、排気通路A39と排気通路B43、C48の重複部分に1つの排気ファン41を備えることにより、排気通路A39内の調理庫、触媒を介して排出される高温の排気と、排気通路B43、C48内の低温の排気とが交じり合い、排気ファン41に悪影響が生じるのを防止できる。また、1つの排気ファン41にて排気量を調整するので、構成が容易であるとともに、排気量の調整が容易にできる。
【0027】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態について図6を参照しながら説明する。筐体31内には、上ヒータ34、下ヒータ35、受け皿36が設置され、受け皿36の上には食材を載せる焼き網37が載置される。受け皿36の両側面と後端部は筐体31の側壁と密着している。筐体31の後方下部には空気取り入れ口52を設けている。筐体31の後方の上面には排気通路A39が設けられ、排気通路A39内には触媒40を備え、触媒40は上ヒータ34で加熱される。排気通路A39は排気ファン41の吸気口41aに連結している。
【0028】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
まず、食材を焼き網37に載せて調理を開始すると、食材は上ヒータ34、下ヒータ35で加熱され、同時に触媒40は上ヒータで加熱され高温に保たれる。加熱時に発生する臭いや油煙は排気ファン41で吸引されて、触媒40を通過する際に酸化浄化されて、排気口49から排出される。空気取入れ口52から入る外気は同時に、受け皿36の下方を流れ、受け皿の前端部から食材の周囲を流れ、排気通路A39を通って、排気口49から排出される。
【0030】
なお、筐体31および加熱調理器の後方下部に空気取り入れ口52を設けるようにしてもよい。
【0031】
以上のように、実施の形態2では、空気取り入れ口を筐体の後方下部に設けた構成とすることにより、複数の排気通路を設ける必要がなくなり、構造が簡単になる。そして、受け皿が冷却されて、発煙発火の恐れはなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、受け皿が冷却されて、発煙発火の恐れはなくなり、また、加熱調理器本体の周囲に外気が流入し、加熱調理器本体の温度上昇が抑えられるので、このような構成であれば、特に調理器の方式に関係なく適用することができ、また大型の調理器にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における加熱調理器の断面図
【図2】同IHクッキングヒータに組込んだ状態を示す断面図
【図3】同要部の斜視図
【図4】同要部の断面図
【図5】同要部の平断面図
【図6】本発明の別構成の実施の形態における加熱調理器の断面図
【図7】従来の加熱調理器を示す斜視図
【図8】従来の加熱調理器を示す断面図
【符号の説明】
【0034】
31 筐体
34 上ヒータ
35 下ヒータ
36 受け皿
37 焼き網
39 排気通路A
40 触媒
41 排気ファン
43 排気通路B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を載置する焼き網と、前記被調理物から発生した油等を溜める受皿と、前記被調理物を加熱する加熱手段と、前記焼き網と前記受皿と前記被調理物と前記加熱手段を収納する調理庫と、触媒と、排気ファンとを有する加熱調理器であって、前記加熱調理器は、前記加熱調理器外へ空気を排気する排気口と、前記受け皿の下部または/および前記加熱調理器の下部を通って空気を前記排気口から排出する第1排気通路と、前記調理庫、前記触媒を介して空気を前記排気口から排出する第2排気通路とを備え、前記第1排気通路と前記第2排気通路とは一部重複部分を有し、前記第1排気通路と前記第2排気通路の重複部分に1つの前記排気ファンが備えられていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
受け皿の上面の後端部が、調理庫を構成する筐体内壁に設けた溝に嵌合し、また、前記受け皿の両側面が、前記調理庫を構成する筐体の両側面に接触しながら摺動する請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
受け皿の両側面が、調理庫を構成する筐体の両側面の設けた溝に嵌合して摺動し、前記受け皿の上面の後端部が、前記調理庫を構成する筐体内壁に設けた溝に嵌合する請求項1記載の加熱調理器。
【請求項4】
第2排気通路中に仕切り板を設け、前記排気通路を流れる風量を調節可能とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項5】
排気ファンのモータ軸を略水平に設置し、モータを本体後方中心から左右いずれかに偏らせて設置した請求項1記載の加熱調理器。
【請求項6】
排気ファンの噴出し口が連結する請求項1記載の加熱調理器。
【請求項7】
被調理物を載置する焼き網と、前記被調理物から発生した油等を溜める受皿と、前記被調理物を加熱する加熱手段と、前記焼き網と前記受皿と前記被調理物と前記加熱手段を収納する調理庫と、触媒と、排気ファンとを有する加熱調理器であって、前記加熱調理器は、前記加熱調理器または/および前記調理庫の後方下部に設けられた前記加熱調理器内に空気を吸気する空気取り入れ口と、前記加熱調理器外へ空気を排気する排気口と、前記空気取り入れ口から取り入れた空気を前記受け皿の下部または/および前記加熱調理器の下部を通り、かつ、前記調理庫、前記触媒を介して前記排気口から排出する排気通路を有し、前記排気通路に前記排気ファンが備えられていることを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−325620(P2007−325620A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156944(P2006−156944)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】