説明

加熱調理器

【課題】グリル装置を備え、使い勝手や調理性能を損なうことなく、グリル装置を内蔵して両面を同時に加熱する構成をとりつつ、より厚みのある調理物を調理することを実現し、清掃性の改善を実現すること。
【解決手段】グリル装置6は、上加熱体9と下加熱体10を配した両面焼きグリル装置6であり、上加熱体9と下加熱体10を内蔵した調理庫11と、下加熱体9の上方を覆うように設けた均熱加熱プレート12と、均熱加熱プレート12に載置する調理用加熱プレート13を配し、調理用加熱プレート13に直接調理物14を乗せて調理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭の台所や業務用の厨房等で使用される、グリル装置を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の加熱調理器におけるグリル装置の概略構成は、グリル装置内に調理庫を配し、調理物を載せる焼網を載置した受皿を収納し、加熱体としては調理庫に臨ませたシーズヒーターと呼ばれる電熱線のジュール熱を用いて加熱する方式のものが一般的であり、近年では特に両面を同時に加熱するものが一般的である。
【0003】
以下、従来の加熱調理器の構成、作用について図14を参照にしながら説明する。
【0004】
図14に示すように、従来の加熱調理器は、被加熱調理容器101を載置する天板102と、外郭を構成する本体103と、天板102の下方に位置し被加熱調理容器101を加熱する加熱手段104と、加熱手段104の下方に位置する上加熱体105と下加熱体106を内蔵する調理庫107および調理物108を載置する焼網109および焼網109を載置するとともに調理庫107より出し入れ自在に設けた受皿110および調理庫107の上方もしくは後方に排気筒111を備え、加熱調理した調理物108の出し入れを行う開口部にはグリル扉112が設けられている。
【0005】
その他、図示はしないが、本体103内部に配置した制御回路および駆動回路および冷却ファンと、本体103の前方あるいは上方には操作部が配置されている。
【0006】
このような加熱調理器において、上加熱体105および下加熱体106は、シーズヒーターと呼ばれ電熱線のジュール熱を用いて加熱する方式のものが一般的であるが、このようなシーズヒーターは主に加熱による輻射熱を利用して調理物108を加熱するため、シーズヒーターの表面温度は少なくとも500℃以上の温度に達するものである。
【0007】
このような場合、特に下加熱体106に滴下した調理物108の油脂分等から煙が多量に発生するとともに、調理物108に再付着し、食味を損なう等の不具合や、稀に下加熱体106に滴下した調理物108の油脂分等が発火し、調理物108もしくは受皿110にたまった油脂分等に引火する恐れがあった。
【0008】
また、調理物108から滴下する油脂分、水分、塩分を含んだ汁等が下加熱体106に直接触れるため腐食等の影響により寿命が短いという課題もあった。
【0009】
また、前述の発火等を鑑みて受皿110に水を入れる場合もあり、この水を入れるためには受皿110は、ある程度の深さが必要となるとともに、下加熱体106と調理物108の距離も、調理性能や発火ということを鑑みるとある程度は必要であり、調理庫107内に深さや距離の必要な構造物が配置されるため、結果として焼網109の上面部から上加熱体105までの距離が短くなり、厚みのある調理物108や加熱すると開く貝類あるいは加熱すると膨らむスポンジケーキ等は調理することが困難であるという課題もあった。
【0010】
また、この種の加熱調理器には2種類のタイプがあり、組込型と呼ばれるキッチンのカウンター内に組み込んで使用されるものと、据置型と呼ばれるキッチンに設置したテーブルに載置して使用するものとがある。一般家庭の台所においては、このキッチンにおいて
設置される製品高さがモジュールとして標準化されており、一般的に組込型の場合はキッチンカウンターを上面に220mm(製品高さとしては約230mm)の高さが一般的なサイズであり、据置型についてはテーブル面から180mmの高さが一般的なサイズである。特にこの据置型については前述のとおり組込型に比べて40〜50mmも製品高さが低いため、グリル装置を内蔵し両面を同時に加熱する構成をとりつつ、より厚みのある調理物108を調理することはさらに困難であった。
【0011】
また、下加熱体106は、極力、焼網109の上面部から上加熱体105までの距離を確保するために調理庫107の下方に配置されるものであり、下加熱体106が邪魔になり調理庫107の底面の清掃性が悪いという課題もあった。
【0012】
これらの課題を解決する方法として、上ボディーにより覆蓋された下ボディー内に設けた下ヒーター上に、プレート類を着脱自在に位置させ、このプレート類の側壁と前記下ボディー内側壁との間に空気流通路を形成してなる電気調理器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、同様に被加熱物を収容する加熱室と、この加熱室をその外方から加熱する発熱体とを具備するものにおいて、前記加熱室の壁部の外面に加熱室の内方に突出する突状部の成形を伴って溝部を形成し、前記発熱体を棒状として前記溝部に密接状態に挿入したことを特徴とする加熱調理器も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭58−019212号公報
【特許文献2】特開平10−169999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1ならびに特許文献2に開示された加熱調理器は、従来の構成とは異なり、どちらも下ヒーターの上方に近接もしくは接触させてプレート類を設け、そのプレート類の上で調理を行うものである。従来の構成のように調理物を載置する焼網があって、その下方に下加熱体があって、その下方に調理物の煮汁等を受ける受皿があるといったものではなく、焼網および受皿の代わりをプレート類が兼ねるとともに下ヒーターの上方に近接もしくは接触させてプレート類を設け、そのプレート類の上で調理を行うため庫内の寸法を大きくとることができ、より厚みのある調理物を調理することができるものである。しかしながら、本文献によれば庫内の寸法は大きくとることができても、この構成による肝心の調理性能について具体的な開示はなく、例えば、下ヒーターは棒状の発熱体、いわゆるシーズヒーターを使用(特許文献1については図中の上ヒーターから鑑みて)し、プレート類に近接もしくは接触して加熱(特許文献2については底板を介して加熱)し、調理することを開示しているが、近接部もしくは接触部の熱はプレート類に効率よく伝わるため特にプレート面上の温度分布が悪くなるものである。プレート類に熱伝導性の高い材料を選定すると顕著に起こりうる現象でもあり、その場合はプレート類の厚みを厚くして熱容量を上げる等の熱分散の対策が必要となるが、そのあたりの具体的な方法についての開示も見受けられないものである。プレート類については厚みを厚くすることで重くなり使い勝手が悪くなることが予測されるとともに、調理性能を確保するための均熱性を高めるために形状的な制約が必要となることが予測されるものである。
【0014】
また、清掃性についても、特許文献1については下ヒーターが邪魔になるものであり、特許文献2については加熱室の内方に突出する突状部の成形を伴って溝部を形成するものであり底板に凹凸ができ、清掃性が悪化するものである。
【0015】
したがって、特許文献1ならびに特許文献2に開示された加熱調理器では根本的な改善がなされたとはいえないものであった。
【0016】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、使い勝手や調理性能を損なうことなく、グリル装置を内蔵して両面を同時に加熱する構成をとりつつ、より厚みのある調理物を調理することを実現し、清掃性の改善された加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、外郭を構成する本体と、被加熱調理容器を載置する天板と、前記天板の下方に位置し前記被加熱調理容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の下方に位置するグリル装置と、前記グリル装置の上方もしくは後方に設けた排気筒と、前記グリル装置の開口を覆い開閉自在に配されたグリル扉を備え、前記グリル装置は、上加熱体と下加熱体を配した両面焼きグリル装置とし、前記上加熱体と前記下加熱体を内蔵した調理庫と、前記下加熱体の上方を覆うように設けた均熱加熱プレートと、前記均熱加熱プレートに載置する調理用加熱プレートを配し、前記調理用加熱プレートに直接調理物を乗せて調理を行うようにしたものである。
【0018】
このように下加熱体を覆うように均熱加熱プレートを設けることによって、一旦、下加熱体の熱を均熱に分布させる工夫を行うことができ、この均熱加熱プレートに載置して調理用加熱プレートを加熱し調理を行うことで調理用加熱プレートに対する加熱分布の均熱性を高めるとともに、調理庫内を着脱自在に出し入れする調理用加熱プレートは、均熱性を考慮する必要がないため軽量で使い勝手のよい自由な形状とすることができる。
【0019】
また、下加熱体についても均熱加熱プレートを工夫することによって制約がなくなるものである。
【0020】
なお、均熱加熱プレートを介して間接的に調理用加熱プレートを加熱し調理を行うため、調理物への加熱効率が悪いように思われるが、本発明のグリル装置は両面焼きを基本とし、調理物への加熱は下面だけではなく、上面や側面など全体を焼き上げるものであり、そのために消費する熱量については、庫内全体として消費するものであり、この均熱加熱プレートも調理庫内に配されており、調理物を加熱するための全体バランスを調整することでロスは最小限に抑えられるものである。
【0021】
また、この均熱加熱プレートの上面を略平面状態とすることによって調理用加熱プレートへの熱の伝わり方が向上するとともに、略平面状態であるため底面部の清掃性も向上するものである。
【0022】
また、この均熱加熱プレートをアルミ等の熱伝導性の高い材料にて構成することによって、さらに均熱性が高まるとともに、調理用加熱プレートへの熱の伝わりも効率的になるものである。
【0023】
また、この均熱加熱プレートに非粘着性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分や調理カス等の汚れが付着するのを防ぐことができるとともに、たとえ付着したとしても、被膜層の非粘着性によってふき取りやすくなるものである。
【0024】
また、この均熱加熱プレートに親水性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分や調理カス等の汚れが付着してこびり付いた場合でも、こまめに水等をかけてお手入れすることで、汚れと被膜層の間に水が親水し、汚れが浮くことで清掃性が向上するものである。
【0025】
また、この均熱加熱プレートにセルフクリーニング性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分が付着した場合、調理時の加熱によって油脂分を分解し自動で清掃するものである。
【0026】
また、この均熱加熱プレートと下加熱体をダイキャストもしくはブレージング等にて一体に構成することによって、下加熱体の熱が効率よく伝わるものである。
【0027】
また、この均熱加熱プレートの温度を検知する温度検知手段を設け、調理用加熱プレートの温度を300℃以下の任意の温度にてコントロールすることによって、調理物から出る油脂分等の発火温度(350〜370℃)よりも低い温度で調理できるため、安全性が高まるとともに、調理に最適な温度にコントロールすることによってオート調理が可能である。また、魚等の油脂分の多い調理物を調理する場合は、一般的に言われる発煙量の増加する温度(230〜250℃)以下の200℃程度でコントロールすれば、煙の発生量を抑制することができるものである。
【0028】
また、この調理庫の外周に遮熱ケースを設け、調理庫と遮熱ケースとの間に所定の寸法を確保した空気断熱層を設けることによって、調理庫内で消費する熱量が本体もしくは外部へ流出するのを防止することができ、効率よく調理することができるものである。
【0029】
また、この調理庫の外周に遮熱ケースを設け、調理庫と遮熱ケースとの間に断熱材を設けることによって、さらに調理庫内で消費する熱量が本体もしくは外部へ流出するのを防止することができ、効率よく調理することができるものである。
【0030】
また、この均熱加熱プレートに水を貯める凹部を設け、調理庫内に水蒸気を発生する水蒸気発生部を形成し、調理中に調理庫内に水蒸気を発生することによって、再加熱やあたため等の乾燥しやすい調理メニューでの乾燥防止や、肉まん、シューマイといった蒸し物調理なども可能となるほか、水蒸気によって調理物に含まれる不要な油脂分や塩分を洗い流し健康的でヘルシーな出来栄えを実現するとともに、水蒸気が庫内の酸素を追い出して抗酸化作用によって栄養素の破壊を抑えた、うま味成分の多く含まれた調理を実現することができるものである。
【0031】
また、この水蒸気発生部に水を供給する水タンクと、水蒸気発生部にて発生した水蒸気を循環させる循環ファンと、水蒸気を上加熱体に導く水蒸気ダクトと、上加熱体と調理庫内とを仕切る庫内仕切板を設けた過熱水蒸気発生部と、上加熱体の加熱によって発生した過熱水蒸気を調理庫内に再度導く過熱水蒸気ダクトを設けたことによって、過熱水蒸気が調理物に接触し、例えば魚であれば表面部近傍にあるたんぱく質成分を急激に加熱して凝固させ、魚の内部にあるうま味成分を流出させないで魚の内部に閉じ込めることができ、魚をおいしく調理することができるものである。
【0032】
なお、魚の表面近傍にあるたんぱく質は42〜62℃の温度で変性して凝固するので62℃以上の温度に急激に加熱することが必要となる。
【0033】
この過熱水蒸気が調理物の表面に接触すると、冷却されて魚の表面に結露水として付着し、水蒸気が結露水となるときに凝集熱が与えられて加熱されるので、魚の表面の温度は急激に上昇するものである。
【0034】
同時に水蒸気は、再加熱やあたため等の乾燥しやすい調理メニューでの乾燥防止や、肉まん、シューマイといった蒸し物調理なども可能となるほか、水蒸気によって調理物に含まれる不要な油脂分や塩分を洗い流し健康的でヘルシーな出来栄えを実現するとともに、水蒸気が庫内の酸素を追い出して抗酸化作用によって栄養素の破壊を抑えた、うま味成分の多く含まれた調理を実現することができるものである。
【0035】
また、この庫内仕切板に穴を設け過熱水蒸気の一部を直接庫内に排出することによって
調理物の上方、および過熱水蒸気ダクトを用いてあらゆる方向から均等に過熱水蒸気を調理物に接触させることができ、均一にムラなく調理できるものである。
【0036】
また、この水タンクをグリル扉内に設けることによってスペースの有効活用を図り、調理庫内を最大限大きく形成することができるものである。
【0037】
また、このグリル扉は、のぞき窓を設けずに全面において空気断熱層もしくは断熱材によって断熱性を高めることによって、グリル扉の高温部に不意に触れることによるやけど等を防止した安全性の高い調理器とすることができる。通常シーズヒーター等を用いたグリル装置の場合、グリル扉ののぞき窓の温度は約130〜180℃であり、この温度でも触れている時間によっては十分にやけどをしてしまうものであるが、調理庫内に排出される過熱水蒸気の温度は約300℃と想定され、このような過熱水蒸気が調理庫内に充満しており、さらにグリル扉の温度は高くなることが十分に予測され、人が開閉操作を行うグリル扉については特に温度低減対策が必要である。
【0038】
また、この水蒸気ダクトもしくは過熱水蒸気ダクトのどちらか一方のダクト内に触媒体を設けることによって、調理により発生した煙が触媒体を通過することで酸化分解反応を促進され発生する煙の量が低減し、快適な調理空間を実現するものである。
【0039】
また、この触媒体は触媒反応を高めるために専用の触媒加熱体を設けることによって、さらに酸化分解反応を促進することができ、さらに発生する煙の少ない、快適な調理空間を実現するものである。
【0040】
また、この水蒸気発生部は調理庫外に専用の水蒸気発生タンクと水蒸気発生加熱体を設けて形成し、水タンクならびに水蒸気ダクトと相互に連結したことによって、調理開始前に水蒸気発生タンク内に水蒸気を事前に貯めておき、調理開始と同時に一気に過熱水蒸気を調理物に接触させて調理物を焼き上げることができる。なお、過熱水蒸気を排出するタイミング等を調理物によって変えることにより各々の調理に最適なタイミングをコントロールすることができるものである。
【0041】
また、この調理用加熱プレートの上に焼網を載置し、この焼網の上に調理物を載せ、調理用加熱プレートからの伝熱と過熱水蒸気による対流熱による複合加熱をすることによって調理に合わせた最適な加熱方式を自由に選択することができるものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明の加熱調理器によれば、使い勝手や調理性能を損なうことなく、グリル装置を内蔵して両面を同時に加熱する構成をとりつつ、より厚みのある調理物を調理することを実現し、清掃性の改善された加熱調理器を実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
第1の発明は、外郭を構成する本体と、被加熱調理容器を載置する天板と、前記天板の下方に位置し前記被加熱調理容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の下方に位置するグリル装置と、前記グリル装置の上方もしくは後方に設けた排気筒と、前記グリル装置の開口を覆い開閉自在に配されたグリル扉を備え、前記グリル装置は、上加熱体と下加熱体を配した両面焼きグリル装置とし、前記上加熱体と前記下加熱体を内蔵した調理庫と、前記下加熱体の上方を覆うように設けた均熱加熱プレートと、前記均熱加熱プレートに載置する調理用加熱プレートを配し、前記調理用加熱プレートに直接調理物を乗せて調理を行うようにしたものである。
【0044】
このように下加熱体を覆うように均熱加熱プレートを設けることによって、一旦、下加
熱体の熱を均熱に分布させる工夫を行うことができ、この均熱加熱プレートに載置して調理用加熱プレートを加熱し調理を行うことで調理用加熱プレートに対する加熱分布の均熱性を高めるとともに、調理庫内を着脱自在に出し入れする調理用加熱プレートは、均熱性を考慮する必要がないため軽量で使い勝手のよい自由な形状とすることができる。
【0045】
また、下加熱体についても均熱加熱プレートを工夫することによって制約がなくなるものである。
【0046】
なお、均熱加熱プレートを介して間接的に調理用加熱プレートを加熱し調理を行うため、調理物への加熱効率が悪いように思われるが、本発明のグリル装置は両面焼きを基本とし、調理物への加熱は下面だけではなく、上面や側面など全体を焼き上げるものであり、そのために消費する熱量については、庫内全体として消費するものであり、この均熱加熱プレートも調理庫内に配されており、調理物を加熱するための全体バランスを調整することでロスは最小限に抑えられるものである。
【0047】
第2の発明は、特に、第1の発明において、均熱加熱プレートは、上面を略平面状態としたものである。この均熱加熱プレートの上面を略平面状態とすることによって調理用加熱プレートへの熱の伝わり方が向上するとともに、略平面状態であるため底面部の清掃性も向上するものである。
【0048】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、均熱加熱プレートは、熱伝導性の高い材料にて構成したものである。この均熱加熱プレートをアルミ等の熱伝導性の高い材料にて構成することによって、さらに均熱性が高まるとともに、調理用加熱プレートへの熱の伝わりも効率的になるものである。
【0049】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、均熱加熱プレートに、非粘着性を有する被膜層を形成したものである。この均熱加熱プレートに非粘着性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分や調理カス等の汚れが付着するのを防ぐことができるとともに、たとえ付着したとしても、被膜層の非粘着性によってふき取りやすくなるものである。
【0050】
第5の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、均熱加熱プレートに、親水性を有する被膜層を形成したものである。この均熱加熱プレートに親水性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分や調理カス等の汚れが付着してこびり付いた場合でも、こまめに水等をかけてお手入れすることで、汚れと被膜層の間に水が親水し、汚れが浮くことで清掃性が向上するものである。
【0051】
第6の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、均熱加熱プレートに、セルフクリーニング性を有する被膜層を形成したものである。この均熱加熱プレートにセルフクリーニング性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分が付着した場合、調理時の加熱によって油脂分を分解し自動で清掃するものである。
【0052】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明において、均熱加熱プレートと下加熱手段をダイキャストもしくはブレージング等で一体に構成したことものである。この均熱加熱プレートと下加熱体をダイキャストもしくはブレージングで一体に構成することによって、下加熱体の熱が効率よく伝わるものである。
【0053】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明において、均熱加熱プレートの温度を検知する温度検知手段を配し、調理用加熱プレートの温度を300℃以下の所定の温度にてコントロールするものである。この均熱加熱プレートの温度を検知する温度検知手
段を設け、調理用加熱プレートの温度を300℃以下の任意の温度にてコントロールすることによって、調理物から出る油脂分等の発火温度(350〜370℃)よりも低い温度で調理できるため、安全性が高まるとともに、調理に最適な温度にコントロールすることによってオート調理が可能である。また、魚等の油脂分の多い調理物を調理する場合は、一般的に言われる発煙量の増加する温度(230〜250℃)以下の200℃程度でコントロールすれば、煙の発生量を抑制することができるものである。
【0054】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの発明において、調理庫の外周に遮熱ケースを設け、前記調理庫と前記遮熱ケースとの間に所定の寸法を確保した空気断熱層を設けたものである。この調理庫の外周に遮熱ケースを設け、調理庫と遮熱ケースとの間に所定の寸法を確保した空気断熱層を設けることによって、調理庫内で消費する熱量が本体もしくは外部へ流出するのを防止することができ、効率よく調理することができるものである。
【0055】
第10の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの発明において、調理庫の外周に遮熱ケースを設け、前記調理庫と前記遮熱ケースとの間に断熱材設けたものである。この調理庫の外周に遮熱ケースを設け、調理庫と遮熱ケースとの間に断熱材を設けることによって、さらに調理庫内で消費する熱量が本体もしくは外部へ流出するのを防止することができ、効率よく調理することができるものである。
【0056】
第11の発明は、特に、第1〜10のいずれか1つの発明において、均熱加熱プレートに水を貯める凹部を設け、調理庫内に水蒸気を発生する水蒸気発生部を形成し、調理中に調理庫内に水蒸気を発生することによって、再加熱やあたため等の乾燥しやすい調理メニューでの乾燥防止や、肉まん、シューマイといった蒸し物調理なども可能となるほか、水蒸気によって調理物に含まれる不要な油脂分や塩分を洗い流し健康的でヘルシーな出来栄えを実現するとともに、水蒸気が庫内の酸素を追い出して抗酸化作用によって栄養素の破壊を抑えた、うま味成分の多く含まれた調理を実現することができるものである。
【0057】
第12の発明は、特に、第11の発明において、水蒸気発生部に水を供給する水タンクと、水蒸気発生部にて発生した水蒸気を循環させる循環ファンと、水蒸気を上加熱体に導く水蒸気ダクトと、前記上加熱体と調理庫内とを仕切る庫内仕切板を設けた過熱水蒸気発生部と、前記上加熱体の加熱によって発生した過熱水蒸気を前記調理庫内に再度導く過熱水蒸気ダクトを設けたことによって、過熱水蒸気が調理物に接触し、例えば魚であれば表面部近傍にあるたんぱく質成分を急激に加熱して凝固させ、魚の内部にあるうま味成分を流出させないで魚の内部に閉じ込めることができ、魚をおいしく調理することができるものである。
【0058】
なお、魚の表面近傍にあるたんぱく質は42〜62℃の温度で変性して凝固するので62℃以上の温度に急激に加熱することが必要となる。
【0059】
この過熱水蒸気が調理物の表面に接触すると、冷却されて魚の表面に結露水として付着し、水蒸気が結露水となるときに凝集熱が与えられて加熱されるので、魚の表面の温度は急激に上昇するものである。
【0060】
同時に水蒸気は、再加熱やあたため等の乾燥しやすい調理メニューでの乾燥防止や、肉まん、シューマイといった蒸し物調理なども可能となるほか、水蒸気によって調理物に含まれる不要な油脂分や塩分を洗い流し健康的でヘルシーな出来栄えを実現するとともに、水蒸気が庫内の酸素を追い出して抗酸化作用によって栄養素の破壊を抑えた、うま味成分の多く含まれた調理を実現することができるものである。
【0061】
第13の発明は、特に、第12の発明において、庫内仕切板に穴を設けて、過熱水蒸気の一部を直接庫内に排出することによって調理物の上方、および過熱水蒸気ダクトを用いてあらゆる方向から均等に過熱水蒸気を調理物に接触させることができ、均一にムラなく調理できるものである。
【0062】
第14の発明は、特に、第12または第13の発明において、水タンクをグリル扉内に設けることによってスペースの有効活用を図り、調理庫内を最大限大きく形成することができるものである。特に限定するわけではないが、キッチン等に組み込まれて使用される加熱調理器などは組み込まれるモジュールが標準化されている関係上、機器の有効スペースが限定されており、その中でいかにスペースを有効活用するのかが重要となる。
【0063】
第15の発明は、特に、第11〜14のいずれか1つの発明において、グリル扉には、のぞき窓を設けずに全面において空気断熱層もしくは断熱材によって断熱性を高めることによって、グリル扉の高温部に不意に触れることによるやけど等を防止した安全性の高い調理器とすることができる。通常シーズヒーター等を用いたグリル装置の場合、グリル扉ののぞき窓の温度は約130〜180℃であり、この温度でも触れている時間によっては十分にやけどをしてしまうものであるが、調理庫内に排出される過熱水蒸気の温度は約300℃と想定され、このような過熱水蒸気が調理庫内に充満しており、さらにグリル扉の温度は高くなることが十分に予測され、人が開閉操作を行うグリル扉については特に温度低減対策が必要である。
【0064】
第16の発明は、特に、第11〜15のいずれか1つの発明において、水蒸気ダクトまたは過熱水蒸気ダクトのどちらか一方のダクト内に触媒体を設けることによって、調理により発生した煙が触媒体を通過することで酸化分解反応を促進され発生する煙の量が低減し、快適な調理空間を実現するものである。
【0065】
第17の発明は、特に、第16の発明において、触媒体に触媒反応を高めるために専用の触媒加熱体を設けることによって、さらに酸化分解反応を促進することができ、さらに発生する煙の少ない、快適な調理空間を実現するものである。
【0066】
第18の発明は、特に、第11〜17のいずれか1つの発明において、水蒸気発生部に水を供給する水タンクと、水蒸気を上加熱体に導く水蒸気ダクトとを設け、前記水蒸気発生部は調理庫外に専用の水蒸気発生タンクと水蒸気発生加熱体とを設けて形成し、前記水タンク及び前記水蒸気ダクトを相互に連結したことによって、調理開始前に水蒸気発生タンク内に水蒸気を事前に貯めておき、調理開始と同時に一気に過熱水蒸気を調理物に接触させて調理物を焼き上げることができる。なお、過熱水蒸気を排出するタイミング等を調理物によって変えることにより各々の調理に最適なタイミングをコントロールすることができるものである。
【0067】
第19の発明は、特に、第11〜18のいずれか1つの発明において、調理用加熱プレートの上に焼網を載置し、この焼網の上に調理物を載せ、調理用加熱プレートからの伝熱と過熱水蒸気による対流熱による複合加熱をすることによって調理に合わせた最適な加熱方式を自由に選択することができるものである。
【0068】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0069】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の外観を示すものである。以下、図面を用いて説明する。
【0070】
尚、本実施の形態は天板下方に配した加熱手段が電磁誘導加熱式のものについてのものであるが、本発明がこの方式に限定されるものではない。また、本実施の形態は組込型の加熱調理器についてのものであるが、本発明がこの方式に限定されるものではない。
【0071】
本実施の形態における加熱調理器は、外郭を構成する本体1と、被加熱調理容器2を載置する天板3が配されている。天板3は高耐熱性のガラス等を用い、電磁誘導によって加熱されない材質で構成されている。トップフレーム4は、天板3の外周を囲み、本体1の天面の一部もしくは殆ど全部を構成しており、天板3を介して伝わる被加熱調理容器2からの熱に十分耐え、かつ外観部品として見栄えがよく、腐食にも強いステンレスやホーロー処理鋼板等の金属から成っている。天板3の下方には被加熱調理容器2を誘導加熱する加熱手段5が設けられ、図示はしないが本体1内部には、加熱手段5に高周波電力を供給する駆動回路や、駆動回路の出力を制御する制御回路や、それらの回路を冷却する冷却ファンを備え、本体1の前方あるいは上方には操作部を配置している。
【0072】
加熱手段5の下方に位置する略箱形状のグリル装置6を配し、グリル装置6の上方もしくは後方に設けた排気筒7と、グリル装置6の開口を覆い開閉自在に配されたグリル扉8を備え、グリル装置6は、上加熱体9と下加熱体10を配した両面焼きグリル装置6であり、上加熱体9と下加熱体10を内蔵した調理庫11と、下加熱体9の上方を覆うように設けた均熱加熱プレート12と、均熱加熱プレート12に載置する調理用加熱プレート13を配し、調理用加熱プレート13に直接調理物14を乗せて調理を行うものである。
【0073】
図2は、本発明の第1の実施の形態における均熱加熱プレートの詳細を示す斜視図であり、均熱加熱プレートの一部を断面にしてわかりやすくしたものである。図3、図4は均熱加熱プレートの詳細を示す断面図である。
【0074】
図2に示すように均熱加熱プレート12は下加熱体10を覆うように配置され調理庫11に、ネジもしくはカシメや溶接などによって固定されるものである。
【0075】
ここで上加熱体9と下加熱体10の加熱が開始されると、図3に示すように上加熱体9からの熱放射によって調理物14の上面側は調理される。この時、上加熱体9の温度は500℃以上の温度を示し、庫内温度としては約300℃前後でコントロールされるものである。これは庫内に配したサーミスター等の庫内温度検知手段15によって庫内温度を検知し、図示はしないが本体内部に設けた制御回路やリレー手段によって上加熱体9への通電制御を行うものである。ここで、下加熱体10の温度についても500℃以上を示し、熱放射および対流による熱伝達で均熱加熱プレート12を加熱するものである。この時、均熱プレート12は均熱性を高めるために種々の工夫がなされるものであり、たとえば天面部全体の厚みを増し、熱容量を大きくして温度の立ち上がりは遅れるものの、熱分散性を高めてさらに均熱性を高める方法や、図4に示すように下加熱体10の直上は厚みを増し、直上以外の部分は厚みを薄くして熱バランスをとる方法が考えられる。また、単純に下加熱体10と均熱加熱プレート12との距離を離していく方法も考えられるものである。
【0076】
この均熱加熱プレート12からの熱伝導もしくは対流による熱伝達によって調理用加熱プレート13は加熱され、調理物14に熱を与え加熱調理するものである。調理庫11内を着脱自在に出し入れするこの調理用加熱プレート13自体は、均熱性を考慮する必要がないため軽量で使い勝手のよい自由な形状とすることができるものである。図では波型のプレート形状であるが、これは、魚や肉類を調理する際に適しており、ある程度油を溝部に落として、加熱によって酸化した油の再付着を防止し風味を損なわないようにできるメリットがあるともに、油を落とすため油の採取を減らしたヘルシーメニューとも言えるも
のである。また、ピザやパイなどは底面をフラット形状にしたほうが適しているし、丸い凹部を設けてたこ焼き用のプレートにする等いろいろと考えられるものである。
【0077】
また、下加熱体10についても均熱加熱プレート12を工夫することによって加熱源の種類においても制約がなくなるものである。
【0078】
なお、均熱加熱プレート12を介して間接的に調理用加熱プレート13を加熱し調理を行うため、調理物14への加熱効率が悪いように思われるが、グリル装置6は両面焼きを基本とし、調理物14への加熱は下面だけではなく、上面や側面など全体を焼き上げるものであり、そのために消費する熱量については、庫内全体として消費するものであり、この均熱加熱プレート12も調理庫11内に配されており、調理物14を加熱するための全体バランスを調整することでロスは最小限に抑えられるものである。
【0079】
また、この均熱加熱プレート12は上面を略平面状態とすることによって調理用加熱プレート13への熱の伝わり方が向上するとともに、略平面状態であるため底面部の清掃性も向上するものである。
【0080】
また、この均熱加熱プレート12はアルミ等の熱伝導性の高い材料にすることによって、さらに均熱性が高まるとともに、調理用加熱プレート13への熱の伝わりも効率的になるものである。
【0081】
また、この均熱加熱プレート12はフッ素樹脂やシリコン樹脂などの非粘着性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分や調理カス等の汚れが付着するのを防ぐことができるとともに、たとえ付着したとしても、被膜層の非粘着性によってふき取りやすくなり清掃性が向上するものである。
【0082】
また、この均熱加熱プレート12に親水性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分や調理カス等の汚れが付着してこびり付いた場合でも、こまめに水等をかけてお手入れすることで、汚れと被膜層の間に水が親水し、汚れが浮くことで清掃性が向上するものである。被膜層を親水化する方法としては、フッ素系あるいはシリコン系の耐熱性の高い塗料にシラン化合物を配合することによって親水性の機能を持たすことは可能である。この親水性はシロキサン結合により形成された被膜層表面のシラノール基中のOH基に起因するものである。また、光触媒原料である二酸化チタンなどを配合することによって超親水性(水との接触角が10°以下)を示すこともできる。これは、二酸化チタンに光が当たると粒子表面に親水基であるOH基が生成されるためである。しかしながらこの場合、超親水性を発現させるためには光を照射させる必要があり、本発明の実施形態において実現性は低いものである。
【0083】
また、この均熱加熱プレート12にセルフクリーニング性を有する被膜層を形成することによって、調理時に飛散した油脂分が付着した場合、調理時の加熱によって油脂分を分解し自動で清掃するものである。ここで被膜層にセルフクリーニング性を持たす方法としては、例えば酸化分解作用を促進する酸化マンガン系の触媒種などを被膜層に配合する方法が考えられる。
【0084】
また、均熱加熱プレート12と下加熱手段10をダイキャスト(鋳造)もしくはブレージング(ロー付け)等で一体に構成することによって、下加熱体10の熱が効率よく伝わるものである。
【0085】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図である。以
下、図面を用いて説明する。
【0086】
本実施の形態におけるグリル装置6は、均熱加熱プレート12の温度を検知するサーミスター等からなる温度検知手段16を配し、調理用加熱プレート13の温度を300℃以下の所定の温度にてコントロールするものである。温度検知手段16は図に示すとおり、均熱加熱プレート12の温度を直接検知するよう配置し、上加熱体9や、調理用加熱プレート13や、調理物14の影響を受けにくい場所に配置することが望ましい。また、下加熱体10の影響を受けるようであれば遮熱用のカバーを設ける等の工夫が必要となるものである。なお、その他の構成は、実施の形態1と同一である。
【0087】
この均熱加熱プレート12の温度を検知する温度検知手段16を設け、調理用加熱プレート13の温度を300℃以下の任意の温度にてコントロールすることによって、調理物14から出る油脂分等の発火温度(350〜370℃)よりも低い温度で調理できるため、安全性が高まるとともに、調理に最適な温度にコントロールすることによってオート調理が可能である。また、魚等の油脂分の多い調理物14を調理する場合は、一般的に言われる発煙量の増加する温度(230〜250℃)以下の200℃程度でコントロールすれば、煙の発生量を抑制することができるものである。魚や肉の場合、脂肪の加熱分解温度は150℃から始まり、焦げ目がつき始めるのは約200℃であることから鑑みて、本発明の実施の形態によれば安全で、しかも風味あるいは食味に優れた調理が可能である。
【0088】
(実施の形態3)
図6、図7は、本発明の第3の実施の形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図である。
【0089】
以下、図面を用いて説明する。
【0090】
本実施の形態におけるグリル装置は、図6に示すように、調理庫11の外周に遮熱ケース17を設け、調理庫11と遮熱ケース17との間に所定の寸法を確保した空気断熱層18を設けることによって、調理庫11内で消費する熱量が本体1もしくは外部へ流出するのを防止することができ、効率よく調理することができるものである。静止空気の熱伝導率は0.0237W/m・K(at0℃)と低く、物質的には熱を伝えにくいものであるがあくまでも静止状態を保った場合に限るものであり、空気自体の熱移動は対流による熱伝達によっておおきく変化するものである。
【0091】
また、図7に示すように、調理庫11の外周に遮熱ケース17を設け、調理庫11と遮熱ケース17との間に断熱材19設けることによって、さらに調理庫11内で消費する熱量が本体1もしくは外部へ流出するのを防止することができ、効率よく調理することができるものである。断熱材としては有機系のものの方が一般的には熱伝導率は低いが、本実施の形態におけるグリル装置は温度が高く、使用温度範囲から見ると無機系のグラスウールやロックウールといった繊維状の断熱材やマイクロサームなどの粉末を固めたものとが考えられる。物によって熱伝導率的には0.03〜0.1W/m・K(at常温)と幅が広いが空気のように対流等による変化が少ないため扱いやすく、安定した性能が得られるものである。
【0092】
(実施の形態4)
図8は、本発明の第4の実施の形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図である。
【0093】
以下、図面を用いて説明する。
【0094】
本実施の形態における加熱調理器は、図8に示すように、均熱加熱プレート12に凹部
(水蒸気発生部)20を設け、調理庫11内に水蒸気を発生する水蒸気発生部20を形成する。調理開始前に庫の水蒸気発生部20に水を蓄えておき、調理をスタートすると均熱加熱プレート12が下加熱体10によって加熱され、水蒸気発生部20に蓄えられた水が水蒸気となって庫内11に充満する。このように調理庫11内に水蒸気を発生することによって、再加熱やあたため等の乾燥しやすい調理メニューでの乾燥防止や、肉まん、シューマイといった蒸し物調理なども可能となるほか、水蒸気によって調理物14に含まれる不要な油脂分や塩分を洗い流し健康的でヘルシーな出来栄えを実現するとともに、水蒸気が庫内11の酸素を追い出して抗酸化作用によって栄養素の破壊を抑えた、うま味成分の多く含まれた調理を実現することができるものである。水は調理メニューや調理物14の量によって最適な量を投入することができるとともに、投入するタイミングについても使用者が適選、調理メニューや調理物14の量によって最適なタイミングで投入することができるものである。
【0095】
(実施の形態5)
図9は、本発明の第5の実施の形態における加熱調理器の外観を示すものである。
【0096】
以下、図面を用いて説明する。
【0097】
本実施の形態における加熱調理器は、図9に示すように、水蒸気発生部20に水を供給する水タンク21と、水蒸気発生部20にて発生した水蒸気を循環させる循環ファン22(モーターを含む:図示せず)と、水蒸気を上加熱体9に導く水蒸気ダクト23と、上加熱体9と調理庫11内とを仕切る庫内仕切板24を設けた過熱水蒸気発生部25と、上加熱体9の加熱によって発生した過熱水蒸気を調理庫11内に再度導く過熱水蒸気ダクト26を設けたものである。水タンク21はグリル装置6の側方で前方から着脱可能に設け、水の供給を行う。また、はずして洗浄することも可能である。この供給された水は図に示すように水タンク21の下方に設けたパイプを通って調理庫11内に導かれ水蒸気発生部20に供給される。このとき図示はしていないがパイプの途中に流量調整弁もしくはポンプ等を設けて水蒸気発生部20に供給する水の量をコントロールすることによって水蒸気の発生量が調整でき、または発生するタイミングを調整することも可能である。図に示すように過熱水蒸気発生部25にて発生した過熱水蒸気は調理庫11の側方より調理庫11内に導かれ調理物14に均等に接触するように導出される。過熱水蒸気が導出される量や温度やタイミングは循環ファン22の動作もしくは回転数によって自由にコントロールできるものであり、調理の出来栄えやメニューによって適選調整されるものである。なお、このときの過熱水蒸気の温度は約300℃であるが、上加熱体9動作などでも調整は可能である。
【0098】
このように、過熱水蒸気が調理物14に接触し、例えば魚であれば表面部近傍にあるたんぱく質成分を急激に加熱して凝固させ、魚の内部にあるうま味成分を流出させないで魚の内部に閉じ込めることができ、魚をおいしく調理することができるものである。
【0099】
なお、魚の表面近傍にあるたんぱく質は42〜62℃の温度で変性して凝固するので62℃以上の温度に急激に加熱することが必要となる。
【0100】
この過熱水蒸気が調理物14の表面に接触すると、冷却されて魚の表面に結露水として付着し、水蒸気が結露水となるときに凝集熱が与えられて加熱されるので、魚の表面の温度は急激に上昇するものである。
【0101】
同時に水蒸気は、再加熱やあたため等の乾燥しやすい調理メニューでの乾燥防止や、肉まん、シューマイといった蒸し物調理なども可能となるほか、水蒸気によって調理物14に含まれる不要な油脂分や塩分を洗い流し健康的でヘルシーな出来栄えを実現するととも
に、水蒸気が庫内11の酸素を追い出して抗酸化作用によって栄養素の破壊を抑えた、うま味成分の多く含まれた調理を実現することができるものである。
【0102】
また、図9に示すように、庫内仕切板24に穴を設け過熱水蒸気の一部を直接庫内11に排出することによって調理物14の上方、および過熱水蒸気ダクト26を用いてあらゆる方向から均等に過熱水蒸気を調理物14に接触させることができ、均一にムラなく調理できるものである。
【0103】
また、図9に示すように、水蒸気ダクト23もしくは過熱水蒸気ダクト26のどちらか一方(図では水蒸気ダクト23)のダクト内に触媒体27を設けることによって、調理により発生した煙が触媒体27を通過することで酸化分解反応を促進され発生する煙の量が低減し、快適な調理空間を実現するものである。触媒体27に用いる触媒としては白金、パラジウム、マンガン等の酸化活性の高い物質が用いられるが特に白金については低温での活性度が高く有用である。触媒体27に用いる基材について発泡金属、金属ハニカム、セラミックハニカム等が用いられるがコストや性能等を鑑みて適選選択できるものである。
【0104】
また、図9に示すように、触媒体27は触媒反応を高めるために専用の触媒加熱体28を設けることによって、さらに酸化分解反応を促進することができ、さらに発生する煙の少ない、快適な調理空間を実現するものである。特に温度を上げることで酸化分解反応を促進し触媒物質自身も安価なものを選択することも可能である。また、調理初期等の調理庫11内の温度が低い場合でも、タイムラグを設けて事前に触媒体27が反応しやすい温度にまで専用の触媒加熱体28で加熱してから循環ファン22を動作して調理を開始することで調理初期から煙の発生を低減することも可能である。
【0105】
(実施の形態6)
図10、図11は、本発明の第6の実施の形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図である。
【0106】
以下、図面を用いて説明する。
【0107】
本実施の形態におけるグリル装置は、図10に示すように、グリル扉8は、前面を形成するグリルガラス32と、グリルガラス32を保持し、調理庫11内の調理物14の出来映えを確認するのぞき窓29を設けたグリルカバー30を調理庫11側に配し、グリル扉8の開閉の際の持ち手となる扉把手31とで構成され、グリル扉8の上方にやけど防止のガードを形成することも可能である。グリルガラス32は耐熱ガラスを強化処理したものであり、グリルカバー30は耐食性の高いステンレス鋼を用いたものである。扉把手31およびやけど防止のガードは樹脂で形成される。
【0108】
このように形成されたグリル扉8内に水タンク21を設けることによってスペースの有効活用を図り、調理庫11内を最大限大きく形成することができるものである。特に限定するわけではないが、キッチン等に組み込まれて使用される加熱調理器などは組み込まれるモジュールが標準化されている関係上、機器の有効スペースが限定されており、その中でいかにスペースを有効活用するのかが重要となる。また、グリル扉8は通常、洗浄を目的とし着脱可能に形成されるものであり、水を供給するための機能を持たすには利便性の高い構成である。また、グリル扉8内に水タンク21を設けることで調理庫11内の温度がグリルガラス32に伝わるのを防止する効果もある。
【0109】
また、図11に示すように、グリル扉8は、のぞき窓29を設けずに前面においてグリルガラス32に変えて、耐食性の高いステンレス鋼を用いたグリル正面カバー33を形成
し、全面において空気断熱層もしくは断熱材34によって断熱性を高めたものである。グリル正面カバー33は、断熱効果を高めるために空気断熱層もしくは断熱材34の厚みを増す必要があり、薄板でも強度のある材質を選択したものである。また、断熱材の材質や構成によっては樹脂やガラスでも同様の効果が得られるものでもある。このように構成することによって、グリル扉8の高温部に不意に触れることによるやけど等を防止した安全性の高い調理器とすることができる。通常シーズヒーター等を用いたグリル装置6の場合、グリル扉8ののぞき窓29の温度は約130〜180℃であり、この温度でも触れている時間によっては十分にやけどをしてしまうものであるが、調理庫11内に排出される過熱水蒸気の温度は約300℃と想定され、このような過熱水蒸気が調理庫11内に充満しており、さらにグリル扉8の温度は高くなることが十分に予測される。このように人が開閉操作を行うグリル扉8については特に温度低減対策が必要である。
【0110】
(実施の形態7)
図12は、本発明の第7の実施の形態におけるグリル装置の外観を示すものである。
【0111】
以下、図面を用いて説明する。
【0112】
本実施の形態におけるグリル装置は、図12に示すように、水蒸気発生部は調理庫11外に専用の水蒸気発生タンク35と水蒸気発生加熱体36を設けて形成し、水タンク21ならびに水蒸気ダクト23とを前記水蒸気発生タンク35を介して相互に連結ダクト37で流量調整弁38を介して連結したことによって調理の自由なタイミングで過熱水蒸気を発生させることが可能となるものである。たとえば、調理開始前に水蒸気発生タンク35内に水蒸気を事前に貯めておき、調理開始と同時に一気に過熱水蒸気を調理物14に接触させて調理物14を焼き上げることも可能であり、より急激に調理物14の温度を高めることができる。なお、過熱水蒸気を排出するタイミング等を調理物14の種類によって自由に変えることができるものである。
【0113】
(実施の形態8)
図13は、本発明の第8の実施の形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図である。以下、図面を用いて説明する。
【0114】
本実施の形態におけるグリル装置は、図13に示すように、調理用加熱プレート13の上に焼網39を載置し、この焼網39の上に調理物14を載せ、調理用加熱プレート13からの伝熱と過熱水蒸気による対流熱による複合加熱をすることによって調理に合わせた最適な加熱方式を自由に選択することができるものである。たとえば、調理物14の下に加熱水蒸気を排出することでより調理物全体の温度上昇が均一化されるとともに、特に蒸し料理等においてもふっくらとした仕上がりが得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、グリル装置を備えた加熱調理器において、使い勝手や調理性能を損なうことなく、グリル装置を内蔵して両面を同時に加熱する構成をとりつつ、より厚みのある調理物を調理することを実現し、清掃性の改善された加熱調理器を実現できるもので、グリルの加熱手段やグリル以外の調理機能に係わらず加熱調理器全般に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の第1の実施形態における加熱調理器の詳細を示す断面図
【図2】同均熱加熱プレートの詳細を示す斜視図
【図3】同均熱加熱プレートの詳細を示す断面図
【図4】同均熱加熱プレートの詳細を示す断面図
【図5】本発明の第2の実施形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図
【図6】本発明の第3の実施形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図
【図7】同グリル装置の詳細を示す断面図
【図8】本発明の第4の実施形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図
【図9】本発明の第5の実施形態における加熱調理器の詳細を示す断面図
【図10】本発明の第6の実施形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図
【図11】本発明の第6の実施形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図
【図12】本発明の第7の実施形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図
【図13】本発明の第8の実施形態におけるグリル装置の詳細を示す断面図
【図14】従来の加熱調理器を示す断面図
【符号の説明】
【0117】
1 本体
2 被加熱調理容器
3 天板
4 トップフレーム
5 加熱手段
6 グリル装置
7 排気筒
8 グリル扉
9 上加熱体
10 下加熱体
11 調理庫
12 均熱加熱プレート
13 調理用加熱プレート
14 調理物
15 庫内温度検知手段
16 温度検知手段
17 遮熱ケース
18 空気断熱層
19 断熱材
20 水蒸気発生部
21 水タンク
22 循環ファン(モーター含む)
23 水蒸気ダクト
24 庫内仕切板
25 過熱水蒸気発生部
26 過熱水蒸気ダクト
27 触媒体
28 触媒加熱体
29 のぞき窓
30 グリルカバー
31 扉把手
32 グリルガラス
33 グリル正面カバー
34 空気断熱層もしくは断熱材
35 水蒸気発生タンク
36 水蒸気発生加熱体
37 連結ダクト
38 流量調整弁
39 焼網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する本体と、被加熱調理容器を載置する天板と、前記天板の下方に位置し前記被加熱調理容器を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の下方に位置するグリル装置と、前記グリル装置の上方もしくは後方に設けた排気筒と、前記グリル装置の開口を覆い開閉自在に配されたグリル扉とを備え、前記グリル装置は、上加熱体と下加熱体を配した両面焼きグリル装置であり、前記上加熱体と前記下加熱体を内蔵した調理庫と、前記下加熱体の上方を覆うように設けた均熱加熱プレートと、前記均熱加熱プレートに載置する調理用加熱プレートを配し、前記調理用加熱プレートに直接調理物を乗せて調理を行うことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
均熱加熱プレートは、上面を略平面状態としたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
均熱加熱プレートは、熱伝導性の高い材料にて構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
均熱加熱プレートに、非粘着性を有する被膜層を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
均熱加熱プレートに、親水性を有する被膜層を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
均熱加熱プレートに、セルフクリーニング性を有する被膜層を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
均熱加熱プレートと下加熱手段とをダイキャストもしくはブレージングで一体に構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
均熱加熱プレートの温度を検知する温度検知手段を配し、調理用加熱プレートの温度を300℃以下の所定の温度にてコントロールすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項9】
調理庫の外周に遮熱ケースを設け、前記調理庫と前記遮熱ケースとの間に所定の寸法を確保した空気断熱層を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
調理庫の外周に遮熱ケースを設け、前記調理庫と前記遮熱ケースとの間に断熱材設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項11】
均熱加熱プレートに水を貯める凹部を設けて、調理庫内に水蒸気を発生する水蒸気発生部としたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
水蒸気発生部に水を供給する水タンクと、前記水蒸気発生部にて発生した水蒸気を循環させる循環ファンと、前記水蒸気を上加熱体に導く水蒸気ダクトと、前記上加熱体と調理庫内とを仕切る庫内仕切板を設けた過熱水蒸気発生部と、前記上加熱体の加熱によって発生した過熱水蒸気を前記調理庫内に再度導く過熱水蒸気ダクトを設けたことを特徴とする請求項11に記載の加熱調理器。
【請求項13】
庫内仕切板に穴を設けて、過熱水蒸気の一部を直接庫内に排出することを特徴とする請求
項12記載の加熱調理器。
【請求項14】
水タンクを、グリル扉内に設けたことを特徴とする請求項12または13に記載の加熱調理器。
【請求項15】
グリル扉には、のぞき窓を設けずに全面において空気断熱層もしくは断熱材によって断熱性を高めたことを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項16】
水蒸気ダクトまたは過熱水蒸気ダクトのどちらか一方のダクト内に触媒体を設けたことを特徴とする請求項11〜15のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項17】
触媒体に触媒反応を高めるために専用の触媒加熱体を設けたことを特徴とする請求項16に記載の加熱調理器。
【請求項18】
水蒸気発生部に水を供給する水タンクと、水蒸気を上加熱体に導く水蒸気ダクトとを設け、前記水蒸気発生部は、調理庫外に専用の水蒸気発生タンクと水蒸気発生加熱体とを設けて形成し、前記水タンク及び前記水蒸気ダクトを前記水蒸気発生部で相互に連結したことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項19】
調理用加熱プレートの上に焼網を載置し、前記焼網の上に調理物を載せ、前記調理用加熱プレートからの伝熱と過熱水蒸気による対流熱による複合加熱を特徴とする請求項11〜18のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−115473(P2010−115473A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75548(P2009−75548)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】