説明

加熱調理器

【課題】本発明は、加熱調理において熱損失を低減し調理するまでの時間の短縮し効率高く加熱するすとともに、エネルギー消費を低減することができる熱源を有する加熱調理器を提供すること。
【解決手段】加熱調理器において用いられていた発熱体ユニットが、加熱源として発熱体を有し、前記発熱体が炭素系物質を含む材料により板形状或いは帯形状に形成され、前記発熱体断面における幅広部が被加熱物に板面を対向するよう設けられた前記耐熱板の前記板面に対し鉛直方向に位置するよう配設することで耐熱板側を均一に加熱し、熱容量が少なく、優れた立ち上がり特性を有しており、ネルギーロスが少ない加熱調理が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理のための熱源として発熱体ユニットを備えた加熱調理器に関し、特に、炭素を含み帯状(板状)形状の発熱体を有する発熱体ユニットを備えた加熱調理器に関するものである。本発明に係る加熱調理器としては、例えば電気コンロ、オーブン、トースター、電子レンジオーブン、グリラー、及びこれらの機能を備えた複合商品等の熱源を必要とする機器が含まれる。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器には、その加熱調理器の加熱可能な位置に置かれた被非加熱物、例えば調理容器に対向する位置に配置された耐熱板と、その耐熱板を中間に位置せしめて前記調理容器と対向する側に設けられたコンロと、そのコンロに部形成されている前記耐熱板側を開口とした内部空間に配設された前記発熱体ユニットと、その発熱体ユニットにより加熱された前記内部空間の温度を検出するセンサ、そのセンサにて検出された検出出力により前記内部空間の温度を制御する制御回路とで構成されている。また、従来から前記発熱体ユニットに用いられる発熱体としてはタングステン材料により形成されたハロゲンヒータ、或いはニクロム線を用いたニクロムヒータが使用されている。(特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平4−236016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の加熱調理器の熱源として用いられているハロゲンヒータは、電力給電時の立ち上りが早いという利点はあるが、突入電流が大きく、ハロゲンヒータをオンオフ制御するためには大容量の制御回路すなわち複雑な制御構成となるとともに突入電流に応じた高容量の制御回路が必要となり、装置が大型化するとともにコスト的にも問題があった。更にヒータの制御により蛍光灯がちらつく(フリッカ現象)という問題も有している。
【0004】
また、ニクロムヒータにおいては、突入電流はほとんど発生しないため、発熱体への電力供給時に電圧が降下するという問題や、蛍光灯がちらつく(フリッカ現象)という問題は低減されるが、ニクロムヒータ自体の熱容量が少ないと言う問題や、ニクロム線材をコイル状にしてコンロに埋め込む方法がとられるためにコンロ側に熱をとられて立ち上がりに時間がかかることとなり、結果的に調理する温度まで到達する時間がかかってエネルギー消費が増えるなどの問題点があった。さらに、ハロゲンヒータ及びニクロムヒータともにコイル状に形成されており熱分布に指向性を有しない構成である為に被加熱物に対して均一な加熱が得られないと言う問題点があった。
【0005】
具体的に従来の加熱調理器の構成及び問題点について図7を用いて説明する。図7は従来の加熱調理器の構成の断面図である。
【0006】
図7に示すように従来の加熱調理器は、その加熱調理器の上面壁の一部として設けられた耐熱板11と、耐熱板11の下面側に、その下面に対し鉛直方向あるいは交差方向に沿って壁面が配置された側壁12aと前記下面にその壁面が対向するように壁面が配置された底壁12bを有することにより、前記下面側を開口とする内部空間を形成した凹部形状のコンロ12で少なくとも構成されている。すなわち、前記内部空間は、側壁12a、底壁12b及び前記開口を覆った耐熱板11によって囲まれることにより、コンロ12の外方空間からは閉鎖された状態で閉設されている。コンロ12の内部空間にはコイル状に形成された発熱体22を内包した容器21からなる発熱体ユニット20を2本並設し、前記並設された発熱体ユニット20の間に加熱調理器の温度として見立てた前記内部空間の温度を検出する為の温度センサ13が配置され、コンロ12内の温度を制御する構成となっている。
【0007】
従来の加熱調理器に用いられる発熱体ユニット20のハロゲンヒータ或いはニクロムヒータからなる発熱体22は指向性を有していない為に発熱体22単体として発せられる熱の分布は温度分布23となるが、コンロ12の側壁12aと底壁12b及び耐熱板11で閉設された空間である為にコンロ方向に発せられた熱の一部、すなわち温度分布23aの熱は、コンロ12の底壁12bに伝達され加熱に使用されない非効率な熱損失となる。また、コンロ12の底壁12bに伝達されない熱はコンロ12内で熱拡散され、最終的に加熱の為の熱分布は温度分布24となり発熱体ユニット20の上部及び下部近傍に集中した加熱状態となる。
【0008】
さらにコンロ12内部の温度分布の均一性においても並設された発熱体ユニット20の間に存在する隣接空間、或いはコンロ12の側壁12a付近の温度は低く、コンロ12内部に設置されるセンサ13の位置によってはコンロ12内部の温度に対し発熱体ユニット20の温度設定の追従性が遅く安全性に問題があるとともに、コンロ12の底面12bに伝達される熱が多くコンロ12底面12b外部の温度上昇も問題であり最悪の場合火災の恐れがある。
【0009】
本発明は、加熱調理において熱損失を低減し調理するまでの時間の短縮し効率高く加熱するすとともに、小型で安全性に優れかつ信頼性の高い熱源を有する加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点の加熱調理器は、加熱可能な位置に置かれた被加熱物に板面を対向するように配置された耐熱板と、その耐熱板を中間に位置せしめて前記被加熱物と対向する側に設けられたコンロと、そのコンロに形成されている前記耐熱板側を開口とし、かつ前記開口を覆う前記耐熱板により前記コンロの周囲空間より閉鎖された内部空間と、耐熱板を介して前記被加熱物を加熱するように前記内部空間内に配設された前記発熱体ユニットと、その発熱体ユニットにより加熱された前記内部空間の温度を検出するセンサが配設された加熱調理器であって、前記発熱体ユニットに設けられた加熱源としての発熱体は炭素系物質を含む材料により板形状或いは帯形状の長尺面状体に形成され、前記長尺面状体の長尺面の幅広部は少なくともいずれかの箇所において前記幅広部方向が前記耐熱板の板面に対し鉛直となるように配置されるように構成されている。このように構成された本発明の第1の観点の加熱調理器は、コンロ内部空間が加熱されて内部空間の温度分布が均一になるように上昇し、その上昇した内部空間の熱が前記開口全体から温度分布が均一な状態で耐熱板を介して被加熱物を加熱するため、立ち上がりが早く、エネルギー消費を低減することができる。さらに、前記発熱体の長尺面の幅広部が前記耐熱板の板面に対し鉛直となるように配置することにより、前記発熱体からの輻射熱がコンロ底壁方向に少なくなる構成となっている。
【0011】
本発明の第2の観点の加熱調理器において、前記第1の観点の前記内部空間内に前記熱体ユニットを複数個設けるとともに、前記発熱体ユニットの発熱体の幅広部のいずれか箇所と前記他の発熱体ユニットの前記発熱体の幅広部のいずれか箇所が互いの幅広方向が対向するように配置されように構成されている。このように構成された本発明の第2の観点の加熱調理器は、コンロの内部空間すなわちコンロ内の温度(熱)分布がより均一になるので、効率よく加熱が可能となり安全性に優れた加熱調理器となる。
【0012】
本発明の第3の観点の加熱調理器において、前記第1又は第2の観点の発熱体ユニットは、前記発熱体と、前記発熱体に電力を供給する電力供給部と、前記発熱体と前記電力供給部の一部を収納する容器を有し、前記容器内部に不活性ガスを充填し前記容器の端部が封止されるように構成されている。このように構成された本発明の第3の観点の加熱調理器は、不活性ガスを充填した発熱体の温度をより高温度に上げることが可能となるので、高い温度を必要とする加熱調理器を得ることができる。
【0013】
本発明の第4の観点の加熱調理器において、第3の観点の前記発熱体は、炭素系物質を含む材料により形成された層間構造を有するものである。このように構成された本発明の第4の観点の加熱調理器は、熱容量が少なく、かつ熱伝導性に優れて立ち上がりが早いとともに、制御に対する追従性が良い発熱体を使用することとになるので、高性能で高効率の調理が可能となる。
【0014】
本発明の第5の観点の加熱調理器において、第4の観点の前記発熱体は、通電による平衡点灯時の抵抗の値を未通電時の抵抗の値で除算した抵抗変化率の値が1.2〜3.5の範囲であり、発熱体温度と抵抗値が比例する正特性を有する。このように構成された本発明の第5の観点の加熱調理器は、発熱体温度による抵抗変化を抑えることができるので、発熱体への通電開始時の突入電流を低減しながら立ち上がりに優れた調理が可能となる。
【0015】
本発明の第6の観点の加熱調理器において、前記第5の観点の前記発熱体は、厚みが300μm以下の薄膜体である。このように構成された本発明の第6の観点の加熱調理器は、発熱体は熱容量が少なく、かつ立ち上がりが早い熱源となるので被加熱物を効果的に加熱できることとなり、エネルギー消費を低減した調理が可能となる。
【0016】
本発明の第7の観点の加熱調理器において、前記第5の観点の前記発熱体は、密度が1.0g/cm3以下の軽膜体である。このように構成された本発明の第7の観点の加熱調理器は、発熱体は熱容量が少なく、かつ立ち上がりが早い熱源となるので被加熱物を効果的に加熱できることとなり、エネルギー消費を低減した調理が可能となる。
【0017】
本発明の第8の観点の加熱調理器において、前記第5の観点の前記発熱体は、熱伝導率が200W/m・K以上の材料で形成される。このように構成された本発明の第8の観点の加熱調理器は、発熱体は優れた熱伝導を有するため、均一な温度分布と制御に対する追従性に優れた加熱が可能となる。
【0018】
本発明の第9の観点の加熱調理器において、前記第3の観点の前記発熱体は、炭素系物質と抵抗調整物質とを含み、焼成により形成するものである。このように構成された本発明の第9の観点の加熱調理器は、発熱体温度による抵抗変化を安定させるように発熱体を焼成することにより、発熱体への通電開始時の突入電流を低減し、また異常時における入力増にならないなど安全を考慮したものとなり、安全な調理が可能となる
本発明の第10の観点の加熱調理器において、前記第9観点の前記発熱体は、通電による平衡点灯時の抵抗の値を未通電時の抵抗の値で除算した抵抗変化率の値が0.8から1.2の範囲であり、発熱体温度と抵抗値が少ないフラット特性を有するものである。このように構成された本発明の第10の観点の加熱調理器は、発熱体温度による抵抗変化安定させるように発熱体を焼成することにより、発熱体への通電開始時のことで突入電流を低減し、また異常時における入力増にならないなど安全を考慮したものとなり、より安全な調理が可能となる
本発明の第11の観点の加熱調理器において、前記第1及至第10の観点の前記発熱体ユニットは、前記発熱体の長手方向に位置する端部の外方側に輻射される輻射熱を遮断する遮熱具が前記端部の外方位置に設けられている。このように構成された本発明の第11の観点の加熱調理器は、コンロ側の発熱体ユニットによる加熱をさえぎりコンロ側の温度上昇を防ぎ耐熱板側の加熱を促進した調理が可能となる。
【0019】
本発明の第12の観点の加熱調理器において、前記第1及至第11の観点の前記発熱体を介して前記耐熱板に対向する位置に反射体を配設し、発熱体からの輻射熱を前記反射体により前記耐熱板方向に反射せしめるものである。このように構成された本発明の第12の観点の加熱調理器は、コンロ側、特に記発熱体ユニットを介して前記遮熱板と対向するコンロの底壁の加熱を阻止しできるので、コンロ側の温度上昇を防ぎ、かつ耐熱板外方側の加熱を促進した調理が可能となる。
【0020】
本発明の第13の観点の加熱調理器において、前記第3及至第12の観点の発熱体ユニットの前記電源供給部分の一部が前記コンロを貫通してそのコンロの外方に位置するように配設されるとともに、前記コンロの外方に位置する前記電源供給部分の一部と耐熱板との間に板形状の遮光材が配置されている。このように構成された本発明の第12の観点の加熱調理器は、前記発熱体ユニット10の電源供給部分の一部から漏れる光が前記耐熱板11を通過して前記耐熱板11の外方に漏れなくする前記遮光材16の遮光効果により、コンロ外に発熱体ユニット10が見えることにより利用者が持つ不安感を取り除いている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、調理容器等の被加熱物を温度分布が均一な状態で耐熱板を介して加熱しで、且つ高温度に加熱することができる効率の高い熱源を有する加熱調理器を提供することが可能となる。特に、本発明によれば、立ち上がりが早く、エネルギー消費を低減した調理を行うことができる加熱調理器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る発熱体ユニットを用いた加熱調理器の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本発明者らは、従来の加熱調理器において用いられていた発熱体ユニットの発熱体が有するフリッカ現象や熱分布に指向性を有しないという欠点を解消する新しい熱源となる発熱体ユニットの開発に取り組んできた。その新たな加熱源としての発熱体ユニットにおける発熱体は炭素系物質を含む材料により板形状或いは帯形状に形成され、前記発熱体断面における幅広部が前記耐熱板に対し鉛直方向に位置するよう配設することで後述するように耐熱板側を均一に加熱するとともに、熱容量が少なく、優れた立ち上がり特性を有している。
(実施の形態1)
本発明に係る実施の形態1の加熱調理器について図1から図6を用いて説明する。
【0024】
実施の形態1の加熱調理器は、コンロ内に配設された発熱体ユニットは電力供給部から電力が供給され発熱し、コンロ内が高温度状態となり耐熱板を通して耐熱板表面に載置された被加熱物(以下、調理容器と言う)などを加熱し調理を行う。なお、コンロと耐熱板との空間はほとんど閉ざされておりコンロ内に発生した熱はコンロ内に配設されたセンサにより検知し所望の温度に制御することが可能であり効率よく調理を行うことができる。
【0025】
図1は 実施の形態1の加熱調理器の上面図であり、図2は図1のB−B断面図を示す。
【0026】
図1および図2において、実施の形態1の加熱調理器は、被加熱物(図示せず)と板面が対向する(本例では被加熱物を載置すると言う)ように配置された耐熱板11と、耐熱板11を介して被加熱物と対向する位置、すなわち耐熱板11の下面側に外周囲を囲うように側壁12a(耐熱板11に対し鉛直方向あるいは交差方向に沿った内壁面を有する壁)と底壁12b(耐熱板11に対し対向方向に沿った内壁面を有する底側に位置した壁)を設けて耐熱板11側を開口とする凹部形状の内部空間12cを形成したコンロ12と、その中央部に配置された発熱体2がコンロ12内、すなわち前記内部空間12c内に少なくとも配置され、端部がコンロ12の側面12aを貫通するように配置された棒状の発熱体ユニット10と、で構成されている。
【0027】
さらに、前記発熱体ユニット10は2本並設され、前記発熱体ユニット10の端部に設けられている電源供給部分の一部をコンロ12の外方に位置するように配設されることにより、外部電力源から供給電力を受けるようになっている。また、前記電源供給部分の一部と前記耐熱板11との間には前記発熱体ユニット10の電源供給部分の一部から漏れる光が前記耐熱板11を通過して前記耐熱板11の外方に漏れないように遮光材16が配設されており、この遮光材16の遮光効果によりコンロ外に発熱体ユニット10が見えることにより利用者が持つ不安感を取り除いている。
【0028】
また、コンロ12の内部空間12cは、内部空間12cの開口が耐熱板11により閉鎖されており、内部空間12cの熱が耐熱板11を介して被加熱物に伝熱されるようになっている。前記閉鎖の状態は、耐熱板11とコンロ12との間隙から外部に熱が伝熱されても外部に支障がない、あるいは内部空間12cの熱が耐熱板11を介して被加熱物に伝熱されることが阻害されず製品として支障が出ない程度であればよい。
【0029】
また、加熱調理の温度コントロールをするための温度センサ13は並設された発熱体ユニット10の間に位置しコンロ内の温度検出し制御するように配設している。
【0030】
なお、実施の形態1の加熱調理においては、発熱体ユニット10は直線上の棒状の形状での構成で説明するがU形状または一部円弧形状の湾曲形状で構成することも可能である。
【0031】
また、コンロ12の内部空間12cから発熱体ユニット10より発光される光の漏れを防止するためにコンロ12の側壁12aの外方側に位置する発熱体ユニット10における電源供給部の一部と耐熱板11との間に板形状の遮光材16を配置する構成で説明したが、発熱体ユニット10より発光される不用な光をコンロ12の内部空間12cから加熱調理器の外方に漏らさない、例えば、前記電源供給部の一部から漏れる光が耐熱板11を通過して耐熱板11の外方へ漏れ光を漏らさない構成であれば如何なる構造でも良く、たとえばコンロ12の側壁12a外方側に位置する発熱体ユニット10における電源供給部の一部に耐熱性の遮光材を塗布、蒸着等を施したり、或いは前記電源供給部の一部を覆うキャップ状の遮光材とすることも可能である。なお遮光材の材料としては光を吸収する黒色であることが望ましい。
【0032】
また、コンロ12の温度上昇を防ぎ、かつ被加熱物への加熱、例えば耐熱板11の外方側への加熱を促進した調理を可能とするために、発熱体2を介して耐熱板11に対向する位置、たとえば、発熱体2と底壁12bの間に位置する内部空間12cの下部空間(発熱ユニット10の後述する容器の内側空間から外筒外面までの空間も含む)、あるいは内部空間12c側の底壁12bの壁面に反射体(図示せず)を少なくとも配設し、底壁12bへの加熱を阻止する構成が採用できる。
【0033】
なお、発熱体2から輻射された輻射熱を反射体により耐熱板11の外方側へ反射する場合には、内部空間を均一に加熱するように反射の範囲を設定して前記開口全体から温度分布が均一な状態で耐熱板11を介して被加熱物を加熱できるようにすれば、コンロとしての立ち上がりがより早くなり、エネルギー消費を低減することできるものとなる。
【0034】
さらに、反射体の配設位置としては上述した内部空間12c側の少なくとも底壁12bの壁面に限定されるものではなく、内部空間12cの開口に対向する耐熱板11の被加熱物載置面に生じることとなる発熱体ユニット10近傍より低温となる低温領域、本実施の形態1においては、並設された発熱体ユニット10の間に対向して位置する低温領域、あるいは発熱体ユニット10と側壁12aの間(特に、発熱体ユニット10より離れる側壁12aの内壁側)に対向して位置する低温領域を、発熱体ユニット10から輻射された輻射熱を反射して加熱するために、並設された発熱体ユニット10の間、あるいは側壁12aと底壁12bとにより形成されるコーナー部等に第2の反射体を設けて耐熱板11における被加熱物載置面の低温領域への熱輻射量を増加させることにより、コンロ内部空間を更に均一に加熱することができエネルギー消費を低減することができるものとなる。
【0035】
図1および図2に示すように、コンロ12の内部空間12c内に配置された発熱体ユニット10は、容器1の内部に板形状あるいは帯形状の長尺面状体、すなわち固体状あるいはフィルムシート状によって形成された発熱体2が内蔵されており、長尺面状体の長尺面、すなわち発熱体ユニット10の長手方向に対して直交する方向に位置する発熱体2の断面における幅広部が耐熱板11に対し鉛直方向に位置するよう配設されているとともに、発熱体2が内部空間12c内に少なくとも位置するようになっている。
【0036】
また、並設された2本の発熱体2の幅広部が温度センサ13に向くように位置した構成としている。さらに、発熱体ユニット10の長手方向に位置する両端は側壁12aにそれぞれ設けられた孔部を貫通した状態で配置され、後述する外部リード線7がコンロ12すなわち側壁12aの外部空間にそれぞれ導出しているので、外部の供給電力源からの電気接続が容易となっている。
【0037】
また、実施の形態1において2本の発熱体2は略平行に並説された例で説明したが必ずしも略平行に配置される必要はなく例えば、発熱体の断面形状における幅広部分の延長面が交差する配置或いは発熱体の断面形状における幅広部分が発熱体長手方向に湾曲形状であって前記幅広部分の延長面が交差及び非交差の配置となるような断面形状の幅広部分が対向する構成であってもよい。
【0038】
なお、実施の形態1の加熱調理器においては発熱体ユニット10を2本、設けた構成で説明するが、本発明に係る加熱調理器においては2本に限定されず、単数あるいは複数本で加熱する構成でもよい。
【0039】
図3及び図4は実施の形態1の加熱調理器における発熱体ユニット10を示す正面図と側面図である。
【0040】
ここでは実施の形態1の加熱調理器において、発熱体2は帯形状であるフィルムシート状に形成された構成で説明するが板形状である固形状においても同様の構成となる。
【0041】
なお、図3及び図4に示す発熱体ユニット10の構成は、本発明に係る加熱調理器の熱源における一例であり、本発明はこの構成に限定されるものではない。本発明に係る加熱調理器における熱源としては後述するフィルムシート状の発熱体2を含むものであり、発熱体ユニット10におけるその他の構成は製品仕様などにより適宜設定される。実施の形態1の加熱調理器における発熱体ユニット10は、容器1と、細長い帯状の発熱体2と、この発熱体2を容器1内の所定位置に保持するために発熱体2の長手方向の両端部分に設けられ、発熱体2に電力を供給するための電力供給部8と、を備えている。
【0042】
発熱体2は容器1の長手方向に沿って延設され配置されている。発熱体ユニット10においては、容器1が透明な石英ガラス管により形成されており、石英ガラス管の両端部分が平板状に溶着されて容器1が封止されている。発熱体2及び電力供給部8の一部を収容する容器1内部には、不活性ガスとしてのアルゴンガスが封入されている。容器1内部に封入可能な不活性ガスとしては、アルゴンガスに限定されるものではなくアルゴンガスの他に、窒素ガス又はアルゴンガスと窒素ガス、アルゴンガスとキセノンガス、アルゴンガスとクリプトンガス等の混合ガスを用いても本願発明と同様の効果を得ることは言うまでもなく、目的に応じ適宜選択することが可能である。容器1の内部に不活性ガスを封入するのは、高温度で使用した際において、容器1内部の炭素系物質である発熱体2の酸化を防止するためである。なお、容器1の材料としては、石英ガラス以外であっても耐熱性、絶縁性及び熱透過性を有する材料であれば用いることができ、例えばソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等のガラス材、及びセラミック材等から適宜選択される。なお、封止は発熱体2の高温酸化を防止するための構成であるが炭化珪素等にみられるように発熱体表面に酸化防止被膜を構成する発熱材料には必要がないことは言うまでもない。
【0043】
発熱体2の両端に設けられた電力供給部8は、発熱体2の両端に取り付けられた保持具3、サポートリング4、内部リード線部5、モリブデン箔6、及び外部リード線部7を含んでいる。保持具3には内部リード線部5が固定されており、内部リード線部5は容器1の両端部分の封着部分(溶着部分)に埋設されたモリブデン箔6を介して、容器1の両端から容器外部に導出する外部リード線部7と電気的に接続されている。
【0044】
図3及び図4に示すように、内部リード線部5には、位置規制機能を有する位置規制部であるサポートリング4が取り付けられている。内部リード線部5は、一本の線材、例えばモリブデン線をコイル状に形成したものである。
【0045】
なお、実施の形態1における内部リード線部5は、モリブデン線により形成された例で説明するが、タングステン、ニッケル、ステンレス等を材料とした金属線(丸棒形状、平板形状)を用いて形成してもよい。
【0046】
また、遮熱具9は前記サポートリング4に接するように取り付けられているが、発熱体ユニット10がコンロ12の内部空間12c内に配置された際には、前記サポートリング4は遮熱具9が側壁12aの前記孔部の奥行き幅内、あるいは前記孔部近傍の内部空間12c内に位置するように配設される。したがって、遮熱具9は発熱体2から発せられる熱によって電力供給部8の温度上昇を防止するとともに、コンロ12内部から輻射熱の漏れを低減することが可能となる効果を有するが、その効果は側壁12aによる阻止により、さらに生かされることとなる。なお、遮熱具9の材質として放熱性と吸収性の高いカーボン板を用いたがフェルト状のカーボン、耐熱性を有す前述リード線に用いた材料や金属等の板、繊維状でも同様の効果を得ることができる。
【0047】
以上のように、実施の形態1の加熱調理器の発熱体ユニット10においては、保持具3、サポートリング4、内部リード線部5、モリブデン箔6、及び外部リード線部7により構成された電力供給部8が、発熱体2の両側に設けられて、発熱体2に電力を供給するととものに、発熱体2を容器内の所定位置に配設している。
【0048】
発熱体2と保持具3の保持構成として、発熱体2の端部は保持具3により発熱体2の幅広面の両面が挟持されている。また発熱体2端部及び保持具3にはともに貫通孔が設けられており、保持具3の略中央に形成された貫通孔と発熱体2の端部に形成された貫通孔が内部リード線部5の端部により貫通されている。内部リード線部5は、その端部が屈曲されL字状に形成されている。このL字に屈曲した内部リード線部5の先端が、発熱体2を挟んだ保持具3の貫通孔を貫通して突出している。
【0049】
加熱調理器の構成においては、保持具3の貫通孔から突出した内部リード線部5の突出端部5aには、抜け落ち防止手段(脱落防止手段)を施すことも可能で例えば、内部リード線部5の突出端部5aは、プレス加工、溶融等により塑性変形して潰された状態とし、内部リード線部5における突出端部5aが、保持具3の貫通孔の直径より大きな形状とすることで抜け落ち防止手段が施されている。
【0050】
発熱体ユニット10のサポートリング4は、内部リード線部5に巻き付けられて固定され、コイル状に形成されている。サポートリング4は、発熱体2に電力を供給するための内部リード線部5に巻着する構成であり、サポートリング4には外部リード線部7から発熱体2への電流径路が通らない構成である、即ち、サポートリング4は内部リード線部5における電流径路に介在しない構成である。このように、サポートリング4は発熱体2への電流が流れない構成となるため、その電流により発熱することがない。実施の形態1におけるサポートリング4は、発熱体2の位置規制機能を有するとともに、発熱体2から伝導してきた熱を放熱する放熱機能としても機能する。
【0051】
サポートリング4は、モリブデン線により形成された例で説明するが、発熱体2を位置規制できる剛性を有して、優れた熱伝導(放熱機能)と加工の容易な材料であれば、サポートリング4として用いることが可能であり、例えばニッケル、ステンレス、タングステン等の金属材料等を用いることができる。但し、サポートリング4は、発熱体2の長さ、容器1の内径と発熱体2との寸法差など、発熱体ユニットにおける構成及び仕様によっては必ずしも必要な構成要素ではない。
【0052】
発熱体ユニット10では、発熱体2の材料自体が伸縮性を有し、且つ発熱体2の形状パターンが伸縮性を有するため、発熱体2における膨張収縮による変化を吸収するための機構が不要である。特に、実施の形態1において用いた発熱体2は熱膨張率が小さいため、製造時に張力を加えた状態で配設(張設)された発熱体2は、発熱時の膨張を発熱体自体及び発熱体2の形状パターンによる伸縮性により吸収できるものである。
【0053】
本発明に係る実施の形態1の加熱調理器に用いた耐熱板11に使用する材料としては熱膨張率が低くく、耐熱性に優れた結晶化ガラスが好ましい。また結晶化ガラスの色として、例えば、被加熱物に対してより高温度を必要とする加熱調理器の場合においては白色とし、高級感をイメージしたい場合は黒色とするなど使用用途によって適宜選択することができる。なお、耐熱板11の材料として結晶化ガラスに限定されるものではなく加熱調理器の仕様、用途を満足する材料であれば適宜選択することができるものである。
【0054】
本発明に係る実施の形態1の加熱調理器の発熱体ユニット10において用いた発熱体2は、炭素系物質を主成分とし厚み方向において複数のフィルムシート素材の各層が互いに空隙を介して積層され、優れた二次元的等方向性の熱伝導性を有しており、熱伝導率が200W/m・K以上を有するフィルムシート状の材料で形成されている。したがって、帯状の発熱体2は温度ムラがなく均一に発熱する熱源となる。
【0055】
ここで、二次元的等方向性の熱伝導とは、直交するX軸とY軸で設定される面における、あらゆる方向の熱伝導率が略同じであることを示すものである。したがって、本発明において二次元的等方向性とは、例えば炭素繊維が同じ方向に並設して形成された発熱体における炭素繊維方向である1方向(X軸方向)、又は炭素繊維をクロスに編んで形成された発熱体における炭素繊維方向である2方向(X軸方向とY軸方向)だけを指すものではなく、フィルムシート状の発熱体2における面方向において同じ性質を持つことを言う。
【0056】
発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、高分子フィルム又はフィラーを添加した高分子フィルムを高温度、例えば2400℃以上の雰囲気中にて熱処理し、焼成してグラファイト化した耐熱性を有する高配向性のグラファイトフィルムシートであり、面方向の熱伝導率が200W/m・K以上であり、特に本発明に係る発熱体2の熱伝導率は600から950W/m・Kの特性を示す。
【0057】
本発明において用いられる発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、積層構造を有し、面方向の層表面が平坦な面、凹凸面或いは波うつ面等の各種の面形状を有しており、対向する各層の間には空隙が形成されている。このフィルムシート素材の積層構造において、各層間に形成される空隙の形成状態のイメージは、複数回(例えば、何十回、何百回)と重ね合わせるように折り曲げてパイ生地を作り、そのパイ生地を焼いて得た、パイの断面形状と類似している。即ち、発熱体2は、炭素系物質を含む材料により形成された複数の膜体が積層されて、積層方向が一部固着された層間構造を有しており、厚み方向に柔軟性を有するフィルムシート素材である。したがって、本発明における発熱体2の材料であるフィルムシート素材は、前述のように、面方向の熱伝導率が略同じである優れた二次元的等方向性の熱伝導を有する材料である。
【0058】
前述のように製造されたフィルムシート素材として用いられる高分子フィルムとしては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド(ピロメリットイミド)、ポリフェニレンイソフタルアミド(フェニレンイソフタルアミド)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(フェニレンベンゾイミタゾール)、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール(フェニレンベンゾビスイミタゾール)、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも一種類の高分子フィルムを挙げることができる。また、高分子フィルムに添加されるフィラーとしては、リン酸エステル系、リン酸カルシウム系、ポリエステル系、エポキシ系、ステアリン酸系、トリメリット酸系、酸化金属系、有機錫系、鉛系、アゾ系、ニトロソ系およびスルホニルヒドラジド系の各化合物を挙げることができる。より具体的には、リン酸エステル系化合物として、リン酸トリクレジル、リン酸(トリスイソプロピルフェニル)、トリブチルホスフェ−ト、トリエチルホスフェ−ト、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスブトキシエチルフォスフェート等を挙げることができる。リン酸カルシウム系化合物としては、リン酸二水素カルシウム、リン水素カルシウム、リン酸三カルシウム、等を挙げることができる。また、ポリエステル系化合物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などと、グリコール、グリセリン類との反応により得られるポリマー等を挙げることができる。また、ステアリン酸系化合物としては、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリブチル等を挙げることができる。酸化金属系化合物としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉛等を挙げることができる。トリメリット酸系化合物としては、ジブチルフマレート、ジエチルフタレート等を挙げることができる。鉛系化合物としては、ステアリン酸鉛、ケイ酸鉛等を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。ニトロソ系化合物としては、ニトロソペンタメチレンテトラミン等を挙げることができる。スルホニルヒドラジド系化合物としては、p−トルエンスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。
【0059】
前記フィルムシート素材を積層し、不活性ガス中において2400℃以上で処理し、グラファイト化の過程で発生するガス処理雰囲気の圧力を調整することにより制御してフィルムシート状の発熱体が製造される。更に、必要に応じて、前記のように製造されたフィルムシート状の発熱体を圧延処理することにより、さらに良質のフィルムシート状の発熱体を得ることができる。このように製造されたフィルムシート状の発熱体を本発明の発熱体ユニットにおける発熱体2として用いる。
【0060】
なお、前記フィラーの添加量は、0.2〜20.0重量%の範囲が適当であり、より好ましくは1.0〜10.0重量%の範囲である。その最適添加量は、高分子の厚さによって異なり、高分子の厚さが薄い場合には添加量が多い方がよく、厚い場合には添加量は少なくてよい。フィラーの役割は熱処理後のフィルムを均一発泡の状態にすることにある。即ち、添加されたフィラーは、加熱中にガスを発生し、このガスの発生した後の空洞が通り道となってフィルム内部からの分解ガスの穏やかな通過を助けるものである。フィラーはこのように均一発泡状態を作り出すのに役立つ。
【0061】
上記のように製造されたフィルムシート素材は、例えばトムソン型やピナクル型の抜き型、ロータリーダイカッタ等の鋭利な刃物、若しくはレーザー加工等により所望の形状に加工される。
【0062】
図3に示すように、実施の形態1における発熱体2の発熱部には、複数のスリット2aが発熱体2の長手方向に直交する方向に延設されている。発熱部に形成されている複数のスリット2aは、発熱部における電流の流れ方向を規制し、抵抗値を調整するものである。発熱部に形成されるスリット形状としては、その発熱体ユニット10が用いられる製品仕様及び用途等に応じて貫通した溝や、有底の凹部溝等がある。また、凹部溝においては、その厚み方向の深さを変更することにより発熱部の抵抗値を調整することが可能である。
【0063】
また、実施の形態1における発熱体2にスリットを形成することにより、発熱体自体の伸縮性と合わせて、このスリット形状による伸縮性により、発熱体2が大きな伸縮性を持つ特性を有するものとなる。
【0064】
以下、本発明に係る実施の形態1の加熱調理器において熱源として用いた発熱体ユニット10の発熱体2の構成における特長について図5を用いて説明する。なお、図1及び図2で説明した遮光材16については説明の都合上図5上には記載されていない。
【0065】
図5は実施の形態1の加熱調理器上面図である図1のA−A断面図を示すものであり、本願発明の加熱調理器のコンロ12内(内部空間12c)における温度分布を示すものであり、発熱体2は指向性を有している為に発熱体2単品として発せられる熱の分布14は、発熱体の長尺面を中心に鏡面対称に広がるとともに、熱の分布の広がりは発熱体の幅広部に対し直角な方向(耐熱板の板面方向)を中心軸として広がることとなる。しかしながら、コンロ12の側壁12aと底壁12b及び耐熱板11で閉設された空間である為にコンロ12方向に発せられた熱の一部、すなわち温度分布14aの熱は、コンロ12の底壁12bに伝達された熱は加熱に使用されない非効率な熱損失となるが、コンロ12の底壁12bに伝達されない熱はコンロ12内で熱拡散されて均一な温度状態となる。その結果、最終的に加熱の為の熱分布は温度分布15となって耐熱板11の広範囲な面が均一に加熱され、被加熱物が均等に加熱されることなる。
【0066】
本発明に係る加熱調理器に用いた発熱体ユニット10は、加熱源として発熱体2を有し、前記発熱体2が炭素系物質を含む材料により板形状或いは帯形状に形成されてあるため、発熱体2の断面における幅広部からの熱輻射量が発熱体2の断面における幅狭部からの熱輻射量に比べて非常に多く、発熱体2の断面における幅広部方向に高い指向性を有している。
【0067】
実施の形態1の加熱装置において、上述したように発熱体2の断面における幅広部が耐熱板11の板面方向に鉛直に配設されており発熱体2からの輻射熱は耐熱板11の板面方向に主に輻射されるため、図7の従来の加熱調理器の構成を用いて説明した指向性のないハロゲンヒータ或いはニクロムヒータと比較しコンロ12の底壁12bに対する非効率な熱損失となる輻射が低減される構成となり、発熱体2を単体で輻射された熱分布は温度分布14となる。しかしながら、耐熱板11及びコンロ12で閉設された空間である為にコンロ方向に発せられた熱14aは一部コンロ12の底壁12bに伝達されるが、大半はコンロ12内で熱拡散され最終的に温度分布15の様になる。
すなわち、図7を用いて上述で説明した従来の加熱調理器の温度分布と比較しても明らかなように耐熱板11に均一な温度分布15が可能となるとともにコンロ12内部についても均一な温度状態となりコンロ12内部とセンサ13からの検出される温度差がなく追従性、安全性に優れた加熱調理器となる。さらには、発熱体2からコンロ12の底壁12bに輻射される非効率な熱損失も少なくなることにより高効率で且つ安全性に優れた加熱調理器となる。
【0068】
以下、本発明に係る実施の形態1の加熱調理器において熱源として用いた発熱体ユニット10の発熱体2の特性と炭素を含んだ板形状の発熱体と従来のハロゲンヒータの特長について説明する。
【0069】
発明者らは、本発明に係る加熱調理器において用いられる発熱体ユニット10の発熱体2の一例である帯形状からなるフィルムシート状の発熱体(以下、フィルムシート状ヒータ)と、その発熱体2の他の例である炭素系物質を主成分とし抵抗調整物質を含み、焼成により形成された細長い板状の発熱体を用いる発熱体(以下、カーボンヒータと略称)と、及び従来技術としてハロゲンランプを用いる発熱体(以下、ハロゲンヒータと略称)と、に関して、100V、600Wの仕様のヒータに構成して、平衡点灯時の温度[℃]と抵抗[Ω]の関係を示す温度特性の比較実験を行った。
【0070】
図6は前述した各種発熱体における温度[℃]と抵抗[Ω]の関係を示す温度特性図である。図6において、実線Xが本発明に係る実施の形態1の加熱調理器に用いたフィルムシート状ヒータの温度特性である。また、破線Yがカーボンヒータの温度特性であり、一点鎖線Zが図7に示す従来例としてのハロゲンヒータの温度特性である。
【0071】
図6に示すように、本発明に係る実施の形態1の加熱調理器に用いた発熱体ユニット10の発熱体2であるフィルムシート状ヒータは点灯時の発熱体の温度が高くなるにしたがい抵抗が増加する正特性を有している。実験によれば、例えばフィルムシート状ヒータの温度が20℃(未通電時)のとき、抵抗値は9.2Ωであり、平衡点灯時の温度が1120℃のとき、抵抗値は16.7Ωであった。したがって、フィルムシート状ヒータの未通電時と平衡点灯時の抵抗値の変化率(抵抗変化率)は1.81である。なお、ここで平衡点灯時とは、発熱体に電圧(例えば、100V)を印加し電力が供給されて発熱体に電流が流れ、発熱体の発熱温度が一定となったときを言う。また、抵抗変化率とは発熱体への通電による平衡点灯時の抵抗の値を未通電時の抵抗の値で除算した値のことをいう。
【0072】
一方、破線Yで示すカーボンヒータの温度特性は、平衡点灯時の温度が変わっても略一定の抵抗値を示している。発明者らの実験によれば、カーボンヒータの温度が20℃(未通電時)のとき、抵抗値は15.9Ωであり、平衡点灯時の温度が1030℃のとき、抵抗値は16.7Ωであった。したがって、カーボンヒータの未通電時と平衡点灯時の抵抗変化率は1.05である。また、一点鎖線Zで示すハロゲンヒータの場合、温度が20℃(未通電時)のとき、抵抗値は1.8Ωであり、平衡点灯時の温度が1830℃のとき、抵抗値は16.7Ωであった。したがって、ハロゲンヒータの未通電時と平衡点灯時の抵抗変化率は9.28である。
【0073】
なお、実施の形態1の加熱用調理器に用いたフィルムシート状ヒータを用いて、平衡点灯時の温度を変化させた場合の未通電時と平衡点灯時の抵抗変化率を確認すると、平衡点灯時の温度が500℃になるように電力を供給した場合においても、図4において実線Xで示した立ち上がり特性であり、500℃のときの抵抗値は11.0Ωであった。したがって、このフィルムシート状ヒータの平衡点灯時の温度が500℃における未通電時と平衡点灯時の抵抗変化率は1.2(=11.0/9.2)である。
【0074】
また、実施の形態1の加熱調理器に用いたフィルムシート状ヒータを用いて、平衡点灯時の温度が2000℃になるように電力を供給した場合には、図4において実線Xに続く2点破線で示した立ち上がり特性であり、2000℃のときの抵抗値は32.2Ωであった。したがって、このフィルムシート状ヒータの平衡点灯時の温度が200℃における未通電時と平衡点灯時の抵抗変化率は3.5(=32.2/9.2)であった。
【0075】
上記のように、実施の形態1の加熱調理器に用いた発熱体ユニット10のフィルムシート状ヒータは、平衡点灯時の温度設定が高くなるにしたがい抵抗が増加する正特性を有している。上述の結果でも明らかなように、平衡点灯時の温度設定を500℃とした場合、平衡点灯時の抵抗値が11.0Ωとなり抵抗変化率が1.2であった。また、平衡点灯時の温度設定を2000℃とした場合、平衡点灯時の抵抗値が32.2Ωとなり抵抗変化率が3.5であり、平衡点灯時の温度と抵抗値が略比例した特性を示している。
【0076】
また、実施の形態1の加熱調理器に用いた発熱体ユニット10の発熱体2は、定格の通電による平衡点灯時の抵抗値を未通電時の抵抗値で除算した抵抗変化率が1.81であった。このように、本発明に係る加熱調理器に用いた発熱体ユニット10の発熱体2は、未通電時でもある程度の抵抗(9.2Ω)を有しており、未通電時と平衡点灯時との抵抗変化率が1.81である。
【0077】
本発明に係る発熱体ユニット10のフィルムシート状ヒータは、抵抗変化率を1.2から3.5の範囲内となるよう電力またはヒータ温度を設定することにより、所望の温度で高精度に発熱させることができるとともに、発熱体ユニット10の点灯時において、大きな突入電流を発生させることなく、発熱時の立ち上がりを早くする効果を奏する。すなわち、未通電時と平衡点灯時の抵抗値の変化率が1.2未満の場合、突入電流は少なく問題ないが、立ち上りが遅く更には温度が低いと言う問題があり加熱調理器としての仕様を満足出来ない。また、未通電時と平衡点灯時の抵抗値の変化率が3.5を超える場合、大きな突入電流が発生するため、信頼性を確保するため各構成要素のマージンを大きく設定する必要があり、構成要素の容量が増大して、製造コストの増大、装置の大型化という問題がある。したがって、本発明に係る発熱体ユニット10のフィルムシート状ヒータの場合、未通電時と平衡点灯時の抵抗値の変化率が1.2〜3.5の間あることが望ましい。
【0078】
一方、本発明に係る発熱体ユニット10の他の例であるカーボンヒータを熱源として用いた場合には、平衡点灯時の温度に関係なく抵抗値が略一定であるため、点灯時において突入電流が発生せず、略一定の電流が流れる。したがって、カーボンヒータを熱源として用いた場合には、発熱温度の上昇速度(立ち上がり)がフィルムシート状ヒータを用いた場合と比較して遅く、所定温度となるまでに時間がかかるという問題があるが、加熱調理器として高入力および高ワットの仕様において突入電流がない特性を持つカーボンヒータは接点溶着や制御不能など対策ができ安全性優れる。またカーボンヒータ材料は抵抗変化率を調整することが可能で0.8から1.2迄の範囲とすることで立ち上がり時のスピードと突入改善が可能となる。
【0079】
一方、炭素系物質と抵抗調整物質とを含み、焼成により形成されたカーボンヒータを熱源として用いた場合には、平衡点灯時の温度に関係なく抵抗値が略一定であるため、点灯時において突入電流が発生せず、略一定の電流が流れる。したがって、カーボンヒータを熱源として用いた場合には、発熱温度の上昇速度(立ち上がり)がフィルムシート状発熱体2を用いた場合と比較し若干遅く、所定温度となるまでに時間がかかるという問題があるが、加熱調理器として高入力及び高ワットの仕様において突入電流がない特性を持つカーボンヒータは接点溶着や制御不能など対策ができ安全性優れる。またカーボンヒータ材料は抵抗変化率を調整することが可能で0.8から1.2迄の範囲とすることで立ち上がり時のスピードと突入改善が可能となる。
【0080】
前述のカーボンヒータは、黒鉛等の結晶化炭素、抵抗値調整物質及びアモルファス炭素の混合物で形成された板状の発熱体が使用されており、カーボンヒータにおいては、炭素系物質の赤外線放射率が78〜84%と高いため、炭素系物質を発熱体として用いることにより、カーボンヒータからの赤外線放射率が高くなり、効率の高い熱源を構築することが可能となる。しかし、カーボンヒータに用いられていた発熱体は、厚み(例えば、数mm)を有する板状の発熱体であり、ある程度大きな熱容量を有いる。この材料構成、製造プロセスにおいて抵抗変化の調整を可能としている。
【0081】
発熱体ユニット10の発熱体2の固有抵抗値が250μΩ・cmであり、カーボンヒータのカーボンの固有抵抗値が3000〜50000μΩ・cmであり、ハロゲンヒータのタングステンの固有抵抗値が5.6μΩ・cmである。上記のように、カーボンの固有抵抗値が他のヒータの材料に比べて非常に高いため、電流変化の少ない設計とともに電力供給時の突入電流が発生しにくい設計が可能となる。また、発熱体2の固有抵抗値は、カーボンの固有抵抗値より小さいが、タングステンの固有抵抗値より大きいため、発熱体10においてはタングステンの発熱体に比べ設計が容易となる。
【0082】
また、発熱体ユニット10の発熱体2の密度が0.5〜1.0g/m3(厚みにより異なる)であり、カーボンヒータのカーボンの密度が1.5g/m3であり、ハロゲンヒータのタングステンの密度が19.3g/m3である。このように、発熱体2の密度及びカーボンヒータはハロゲンヒータの材料に比べて軽いため、また発熱体2は帯状の薄膜体であるため、他のヒータに比べて熱容量が非常に小さく、立ち上がりが早くなることが理解できる。
【0083】
上記のように、実施の形態1の加熱調理器において用いたフィルムシート状ヒータは、軽薄で熱容量が小さく、通電による平衡点灯時までの立ち上がりが早いという優れた特性を有している。このため、実施の形態1の加熱調理器においては、優れた応答性を有して効率高く加熱する発熱体を有する発熱体ユニットを用いているため、耐熱板上面領域の加熱が早くなり、省エネルギーを図ることができるとともに、クイックスタートを実現することができる。また、実施の形態1の加熱調理器において、フィルムシート状ヒータの代わりに炭素系物質と抵抗調整物質とを含み、焼成により形成されたカーボンヒータを熱源として用いた場合には、平衡点灯時の温度に関係なく抵抗値が略一定であるという優れた特性を有している。このため加熱初期の点灯時に大きな突入電流が発生せず、電圧降下の発生、蛍光灯がちらつくフリッカの発生という問題が解消されている。
【0084】
すなわち、加熱調理器の仕様、用途、目的に応じて、発熱体ユニット10の発熱体材料を、フィルムシート状ヒータ或いは炭素系物質と抵抗調整物質とを含み、焼成により形成されたカーボンヒータのどちらかより適宜選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、耐熱板表面方向にある調理容器、調理物などを均一加熱する発熱体構成にて熱ロスを低減し、且つ高温度に加熱することができる効率の高い加熱調理器を提供することが可能となり、加熱調理器分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る実施の形態1の加熱調理器における上面図
【図2】実施の形態1の加熱調理器におけるB−B断面図
【図3】実施の形態1の加熱調理器における発熱体ユニット正面図
【図4】実施の形態1の加熱調理器における発熱体ユニット側面図
【図5】実施の形態1の加熱調理器におけるA−A断面図おける熱分布図
【図6】実施の形態1における発熱体ユニット10の発熱体2における温度[℃]と抵抗[Ω]の関係を示す温度特性図
【図7】従来例の場合のA−A断面における熱分布図
【符号の説明】
【0087】
1、21 容器
2、22 発熱体
2a スリット
3 保持具
4 サポートリング(位置規制部)
5 内部リード線部
5a 突出端部
6 モリブデン箔
7 外部リード線部
8 電力供給部
9 遮熱具
10、20 発熱体ユニット
11 耐熱板
12 コンロ
12a 側壁
12b 底壁
12c 内部空間
13 温度センサ
14、14a、15、23、23a、24 温度分布
16 遮光材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱可能な位置に置かれた被加熱物に板面を対向するように配置された耐熱板と、その耐熱板を中間に位置せしめて前記被加熱物と対向する側に設けられたコンロと、そのコンロに形成されている前記耐熱板側を開口とし、かつ前記開口を覆う前記耐熱板により前記コンロの周囲空間より閉鎖された内部空間と、耐熱板を介して前記被加熱物を加熱するように前記内部空間内に配設された前記発熱体ユニットと、その発熱体ユニットにより加熱された前記内部空間の温度を検出するセンサが配設された加熱調理器であって、前記発熱体ユニットに設けられた加熱源としての発熱体は炭素系物質を含む材料により板形状或いは帯形状の長尺面状体に形成され、前記長尺面状体の長尺面の幅広部は少なくともいずれかの箇所において前記幅広部方向が前記耐熱板の板面に対し鉛直となるように配置されたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記内部空間内に前記熱体ユニットを複数個設けるとともに、前記発熱体ユニットの発熱体の幅広部のいずれか箇所と前記他の発熱体ユニットの前記発熱体の幅広部のいずれか箇所が互いの幅広方向が対向するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記発熱体ユニットは、前記発熱体と、前記発熱体に電力を供給する電力供給部と、前記発熱体と前記電力供給部の一部を収納する容器を有し、前記容器内部に不活性ガスを充填し前記容器の端部が封止される構成であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記発熱体は、炭素系物質を含む材料により形成された層間構造を有することを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記発熱体は、通電による平衡点灯時の抵抗の値を未通電時の抵抗の値で除算した抵抗変化率の値が1.2〜3.5の範囲であり、発熱体温度と抵抗値が比例する正特性を有することを特徴とする請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記発熱体は、厚みが300μm以下の薄膜体であることを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記発熱体は、密度が1.0g/cm3以下の軽膜体であることを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記発熱体は、熱伝導率が200W/m・K以上の材料で形成されたことを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記発熱体は、炭素系物質と抵抗調整物質とを含み、焼成により形成されたことを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記発熱体は、通電による平衡点灯時の抵抗の値を未通電時の抵抗の値で除算した抵抗変化率の値が0.8から1.2の範囲であり、発熱体温度と抵抗値が少ないフラット特性を有することを特徴とする請求項9に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記発熱体ユニットは、前記発熱体の長手方向に位置する端部の外方側に輻射される輻射熱を遮断する遮熱具が前記端部の外方位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記発熱体を介して前記耐熱板に対向する位置に反射体を配設し、発熱体からの輻射熱を前記反射体により前記耐熱板方向に反射せしめることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記発熱体ユニットの前記電源供給部分の一部が前記コンロを貫通してそのコンロの外方に位置するように配設されるとともに、前記コンロの外方に位置する前記電源供給部分の一部と耐熱板との間に板形状の遮光材が配置されたことを特徴とする請求項3乃至請求項12のいずれか一項に記載の加熱調理器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−91229(P2010−91229A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263793(P2008−263793)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】