説明

加熱調理器

【課題】表面だけ焼けて中心にまで火が通っていない調理ミスを防ぐことができ、また中心を十分に蒸した後は、表面の焼き色を早く付けること。
【解決手段】第1加熱出力で予熱終了後に餃子が鍋10に投入され鍋10底温度が予熱温度を超え、制御手段15は、水の投入を温度勾配により自動検知後、火力を第2加熱出力にダウンして蒸し、蒸し時間を時間計測手段16で計測し所定時間経過後に火力を第3加熱出力に上げて、表面の焼き色を早くつける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餃子の焼成において、餃子の中心までしっかり蒸すことができ、かつ表面の焼き色を早くつけることができる加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の加熱調理器は餃子と水を入れて、鍋を加熱する過程において、水の蒸発による水位の低下に伴って、食材が茹でと蒸し、あるいは蒸しと焼きという複数の調理作用を同時に進行させ調理時間の短縮を可能にしているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−248717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、水を投入してから蒸し工程を終了するまでの時間が決められていないため、特に冷凍餃子においては投入する水が少量の場合や、火力が強すぎて水の蒸発が早い場合、中心まで十分に火が通っていないにもかかわらず、表面に焼き色が付いているため、見た目には問題なく焼き上がっていることがあるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、水の投入を検知し、その検知から所定時間を蒸し焼き時間として確保することにより、表面だけ焼けて中心にまで火が通っていない調理ミスを防ぐことができ、また中心を十分に蒸した後は、表面の焼き色を早く付けることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、本体上面に載置される鍋の底面を下方から加熱する熱源と、前記鍋底温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知温度を入力して前記熱源の加熱を制御する制御手段と、視覚的又は聴覚的に報知する報知手段とを備え、前記制御手段は、餃子を自動的に調理するための制御モードである、餃子モードを有し、前記餃子モードで加熱を開始すると、第1加熱出力で前記鍋を加熱し、前記検知温度の温度勾配を測定するとともに、前記温度勾配が負となった場合に、前記温度勾配が負となった時の温度よりも、第1所定温度幅以上低下すると、前記第1加熱出力を前記第1加熱出力より低い第2加熱出力に変更し、前記第2加熱出力に変更してから第1時間経過すると、前記第2加熱出力を前記第2加熱出力より高い第3加熱出力へ変更するようにしたものである。
【0007】
これによって、餃子の蒸し時間が確保されるので、中心まで十分に火を通すことが可能となり、また餃子の表面に焼き色を早くつけることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱調理器は、蒸し時間が所定時間確保されるので、表面だけ焼けて中心には火が通っていないという調理ミスを防ぐことができ、かつ焼き色を早く付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における鍋底温度の変化図
【図3】本発明の実施の形態1における第1所定温度幅に関する図
【図4】本発明の実施の形態2における第1温度に関する図
【図5】本発明の実施の形態3における鍋底温度の変化図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、本体上面に載置される鍋の底面を下方から加熱する熱源と、前記鍋底温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知温度を入力して前記熱源の加熱を制御する制御手段と、視覚的又は聴覚的に報知する報知手段とを備え、前記制御手段は、餃子を自動的に調理するための制御モードである、餃子モードを有し、前記餃子モードで加熱を開始すると、第1加熱出力で前記鍋を加熱し、前記検知温度の温度勾配を測定するとともに、前記温度勾配が負となった場合に、前記温度勾配が負となった時の温度よりも、第1所定温度幅以上低下すると、前記第1加熱出力を前記第1加熱出力より低い第2加熱出力に変更し、前記第2加熱出力に変更してから第1時間経過すると、前記第2加熱出力を前記第2加熱出力より高い第3加熱出力へ変更する加熱調理器とすることにより水を投入してからの餃子の蒸し時間が確保されるので、中心まで十分に火を通すことが可能となり、また餃子の表面に焼き色を早くつけることができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明の、第1加熱出力から第2加熱出力へ変更する条件を、鍋底温度が第1所定温度幅以上低下することに代え、第1温度以下に低下することとすることにより、所定の温度幅ではなく、所定の温度で第1加熱出力を第2加熱出力へ変更することができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の鍋底温度を第2温度で一定に保つ温度調節機能を有するとすることにより、餃子の表面を焦がしにくくすることができる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の第3加熱出力を第1加熱出力と同じ加熱出力にすることにより、加熱出力は第1加熱出力と第2加熱出力の2つだけになる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の鍋底温度が所定の予熱温度に到達したことを報知することにより、最適な餃子の投入タイミングを知ることができる。
【0015】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の第2加熱出力で第1時間の加熱が終了したことを報知することにより、蒸し時間が終了したことを知ることができ、鍋蓋を取るタイミングが分かる。
【0016】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の鍋底温度が餃子の表面に焦げが生じる所定の第3温度に到達したことを報知することにより、餃子の表面を焦がしてしまう調理ミスを防ぐことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における加熱調理器の概略構成図を示すものである。図2は、本発明の実施の形態1における鍋底温度の変化図を示すものである。図3は、本発明の実施の形態1における第1所定温度幅に関する図を示すものである。図1において、餃子11が入った鍋10が本体12上面に載置され、操作部(図示していない)などから
の信号が制御手段15へ送られると、制御手段15の制御により熱源14は、鍋10の底部を加熱する。また温度検知手段13は鍋底の温度を検知し、その情報は制御手段15に送られる。また時間計測手段16により時間計測が行われ、その情報は制御手段15へ送られる。また報知する際は、制御手段15からの信号が、報知手段17で受信され報知を行う。なお、温度検知手段13の位置は図1に限定されず、鍋底温度が検知できる位置であればよい。
【0019】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0020】
図2に示すように、餃子モードが開始されると、速やかに温度上昇させるために、最大火力である第1加熱出力、例えば、2000Wで加熱を開始し、温度検知手段13で検知した鍋底温度は上昇していく。鍋10が温まったところ、例えば、200℃で、使用者が餃子を投入すると、図2に図示するt1:餃子投入ポイント、その後、鍋10底温度は少し低下するが、その温度低下幅は、水投入と判断された場合に、加熱出力を第1加熱出力から第1加熱出力より小さい第2加熱出力に変更する第1所定温度幅より小さいので、第1加熱出力のまま維持される。
【0021】
次に、使用者は、図2に図示するt2:水投入ポイントで水を投入する。水を投入するタイミングは、冷凍餃子では餃子を鍋10に並べてすぐに投入することが多く、冷凍以外の常温の餃子、例えば、ホームメイドの場合は餃子に焼き目をつけてから水を投入することが多い。
【0022】
水が投入され、鍋底温度の温度低下幅が第1所定温度幅以上低下すると水投入と判断し、高火力では短時間で水が蒸発してしまい蒸し時間が確保できないため加熱出力は第1加熱出力から第1加熱出力より低い第2加熱出力、例えば、1000Wに変更する、図2に図示するt3:第1加熱出力から第2加熱出力への切り替えポイント。そして、第2加熱出力は、時間計測手段16で計測される第1時間、例えば、300秒(5分)維持される。これにより、水が短時間で蒸発することを防ぎ、蒸して餃子の中心まで火を通すことができる。第1時間経過後、加熱出力は第2加熱出力より高い第3加熱出力、例えば、1500Wに変更する。これにより、餃子の表面の焼き色をより早く付けることができる。なお、第3加熱出力を第2加熱出力のままにすることもできるが、蒸し終わった後に残っている水分をいち早く飛ばし、短時間で餃子の表面に焼き色をつけるためには、できるだけ高い加熱出力で加熱する方が望ましい。
【0023】
次に、水が投入されたことを検知する水投入の検知方法を図3に示す。制御手段15は、餃子モード開始後、鍋底温度勾配測定を第2時間Δt、例えば、1秒毎に常に行う。水投入の検知方法は、鍋底温度勾配が負となり、鍋底温度勾配が負となった時の温度よりも、第1所定温度幅以上低下した時に、水投入と検知される。従って、水と比べて負荷が小さな餃子の投入(t1)では、鍋底温度が第1所定温度幅未満しか低下しないので、水投入と検知されない。次に、負荷の大きい水の投入(t2)では、鍋底温度が第1所定温度幅以上低下するため、水投入が検知されるポイント(t3)にて検知される。なお、餃子の焼成において、通常は、蒸し焼きにするために、水の投入後は鍋に鍋蓋(図示していない)を被せて蒸す。また蒸しが終了すると、鍋蓋を取り、余分な水分を飛ばして焼き上げる。
【0024】
以上のように、本実施の形態においては、餃子を自動的に調理するための制御モードである、餃子モードを有し、前記餃子モードで加熱を開始すると、第1加熱出力で前記鍋を加熱し、前記検知温度の温度勾配を測定するとともに、前記温度勾配が負となった場合に、前記温度勾配が負となった時の温度よりも、第1所定温度幅以上低下すると、前記第1加熱出力を前記第1加熱出力より低い第2加熱出力に変更し、前記第2加熱出力に変更し
てから第1時間経過すると、前記第2加熱出力を前記第2加熱出力より高い第3加熱出力へ変更することにより、餃子の蒸し時間が十分に確保され、また蒸した後に餃子の表面に焼き色を早くつけることができる。
【0025】
なお、第3加熱出力は第1加熱出力と同じであっても構わない。また、所定の予熱温度、例えば200℃、を設けておき、加熱開始後、鍋底温度が予熱温度に到達した時、報知手段17を使って、音声や表示などで報知することにより、使用者に餃子の投入タイミングを知らせることができる。また、蒸し時間である第1時間終了後に報知することにより、蒸し時間の終了、つまり鍋蓋を取るタイミングを知らせることができる。また、鍋底温度が、餃子の表面に適当な焦げが生じる所定の第3温度、例えば、230℃に到達したことを報知し、焼き色は好みであるが、使用者に加熱の停止を促すことにより、さらに加熱を継続して餃子を焦がして食べられなくなる失敗を防ぐことができる。
【0026】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における第1温度に関する図を示すものである。図4において、実施の形態1と相違する点は、温度勾配が負となった場合に、第1所定温度幅以上低下することに代えて、検知温度が第1温度以下に低下することにより、第1加熱出力から第2加熱出力へ変更する。つまり、餃子モード開始後は、実施の形態1と同様に、第2時間(Δt)毎に鍋底温度勾配測定を開始するが、実施の形態2では、第1所定温度幅は設けず、鍋底温度が所定の温度である第1温度以下になることにより水が投入されたと検知する。このことにより、所定の温度幅ではなく、所定の温度で第1加熱出力を第2加熱出力へ変更することができる。したがって、実施の形態1と同様に餃子の蒸し時間が十分に確保され、また蒸した後に餃子の表面に焼き色を早くつけることができる。
【0027】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における鍋底温度の変化図を示すものである。図5において、実施の形態1と相違する点は、鍋底温度の上限温度を適度な焼き目がつく温度である第2温度、例えば200℃とした、温度調節機能を有することである。温度調節機能を有することにより、餃子の表面を第2温度以下に抑え、長く焼き過ぎた場合でも、極端な焦げを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、餃子を焼成する場合に、最適な加熱出力が自動で制御されるので、誘導加熱調理器、ガスコンロ、及びホットプレート等にも適用できる。
【符号の説明】
【0029】
10 鍋
11 餃子
12 本体
13 温度検知手段
14 熱源
15 制御手段
16 時間計測手段
17 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体上面に載置される鍋の底面を下方から加熱する熱源と、前記鍋底温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知温度を入力して前記熱源の加熱出力を制御する制御手段と、視覚的又は聴覚的に報知する報知手段とを備え、前記制御手段は、餃子を自動的に調理するための制御モードである、餃子モードを有し、前記餃子モードで加熱を開始すると、第1加熱出力で前記鍋を加熱し、前記鍋底温度の温度勾配を測定するとともに、前記温度勾配が負となった場合に、前記温度勾配が負となった時の温度よりも、第1所定温度幅以上低下すると、前記第1加熱出力を前記第1加熱出力より低い第2加熱出力に変更し、前記第2加熱出力に変更してから第1時間経過すると、前記第2加熱出力を前記第2加熱出力より高い第3加熱出力へ変更する加熱調理器。
【請求項2】
制御手段は、前記温度勾配が負となった場合に、前記温度勾配が負となった時の温度よりも、第1所定温度幅以上低下すると、前記第1加熱出力を前記第1加熱出力より低い第2加熱出力に変更し、前記第2加熱出力に変更してから第1時間経過すると、前記第2加熱出力を前記第2加熱出力より高い第3加熱出力へ変更することに代え、温度勾配が負となった場合に、前記検知温度が第1温度以下に低下すると、前記第1加熱出力から前記第2加熱出力へ変更し、前記第2加熱出力に変更してから第1時間経過すると、前記第2加熱出力を前記第2加熱出力より高い第3加熱出力へ変更する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
制御手段は、鍋底温度を第2温度で一定に保つように加熱を制御する温度調節機能を有する請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
第3加熱出力を第1加熱出力と同じ加熱出力にする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
鍋底温度が所定の予熱温度に到達したことを報知する請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
第2加熱出力で第1時間の加熱が終了したことを報知する請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
鍋底温度が餃子の表面に焦げが生じる所定の第3温度に到達したことを報知する請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−120716(P2011−120716A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280265(P2009−280265)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】